TEST 5th-day Vol.8

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【 台場 DEX内 にゃんにゃんハウス(裏店)】

 それは奈緒達の姿が舞台のそでに消えた直後だった。

 店内に流れていた音楽が軽快な音楽に変わる。
 ジュンが言っていた『ファンタジータイム』の到来だった。
 それと同時にまるで遊園地遊具の『コーヒーカップ』のように客の座る椅子が回りながら分離していく。
 皆が1人ずつの個別シートへ振り分けられた恰好だった。
 併せて仔猫たちの乗るテーブルも分離していく。
 仔猫たちは手馴れたもので一匹いっぴきが個々のテーブルにのった。

 1人シートと1匹テーブル、1人シートと1匹テーブル。
 まるで観光バスか列車の指定席のように全員のシートが大液晶のある舞台方向に並んで向き始めた。

「なんなんだ、これは・・・・」
 思わず奈津美が声を出した。石原も加藤も奈津美の後ろに並ぶようにシートが動き出して視界から消えた。

「阿部ちゃんよぉ、驚くなよ。これからがこの店のお楽しみだぜぇ、大それた仕掛けだろ?」
 石原の声はうわずっている。
(まさか、2人は潜入捜査にかこつけて自我のない彼女たちをわざわざ指名してもて遊ぼうって魂胆だったんじゃ・・)
 奈津美は猜疑心が拭いきれない。

「せ、せんぱぁい!なんなんですか、聞いてないっすよ、オレ!」
「だからお前は初心(ウブ)だって言うんだ!ピンサロで客同士が面着き合わせて楽しめるか?」

「ぴ、ピンサロって・・・」
 奈津美は二の句が出ない。
「お楽しみタイムなんだから、みんなお気に入りのネコちゃんと楽しむのにヤローがツルむ必要ないだろ、うろたえんなよ」

「うろたえてなんか・・・」
 石原は暗がりの中から当たり障りのない言葉で奈津美に落ち着いて行動するように諭しているようだった。

『お客様、当店自慢のファンタジータイムのお時間です。魔法にかかった猫たちの魅惑の時間をどうぞお楽しみください』

 心地よい照度に照明が落とされる。ファンタジックな音楽に店のナレーションが続く。
『にゃんにゃんハウスの地下にある別世界『キャットパラダイス』は猫たちの楽園。皆様方人間の愛を猫たちはとても快く思っています。そしていつしか自分達の感謝の思いをご主人様に伝えたいと思っていました。でも猫たちは人間の言葉はわかっても人間の言葉は喋れない。ネコたちは必死にご主人様からの愛に態度で示そうと努力していました。ある日、そのけなげな猫たちのの思いを不憫に思った魔法使いが1日に昼と夜の一回だけ。猫たちが「人間語」を喋れるように魔法をかけてくれました。それがファンタジータイム、猫たちのご主人様への感謝の饗宴!どうぞ存分にお楽しみください!!!」

 ナレーションと共にハーブの折り重なる美しい音色が響き渡った。

 一瞬の出来事だった。
 ハーブの音色がやんだ途端のことだった。
 猫達は一斉に四つんばいから半身を起こして各々客の前で股を開いて身を投げ出すように座る。
 さらに店内にベルが1回短く鳴った。
 テーブルに埋め込まれていた液晶時計のカウントダウンが始まる。

「ご主人さま~。あなたのペット、仔ネコの『ネロ』でっす。発情期が来てしまいましたニャ、『ネロ』のイヤらしいオナニー見てくだニャい」

 ネロはそう宣言するとレザーのショートパンツのチャックを開くとすでに濡れ始めた秘部になまめかしく指を這わせ始めた。

 石原と加藤の前の猫たちも、他のテーブルの猫たちも同じポーズで喘ぎ始める。
「あ、あんん、ふ、あふ、あふ、はぁ、はぁ~ん。いい、気持ちいいよぉ」

 店員達が『ファンタジータイム専用のおもちゃです』と言って各テーブルごとに置いていくそれは紛れもないバイブだ。

 見上げる奈津美に店員は鋭い視線を投げかけている。
 人物チェックを受けていると奈津美は直感した。
 おもちゃを配りながら不審人物の潜入がないか、念のため人の目による簡単なチェックをしているのだ。

「あっ、あん、あああん、触って、いじって、ご主人さまぁ、『ネロ』を可愛がってくださいぃぃ。それでぇ、そのおもちゃでぇぇ挿れてぇ」

 潤んだ目をして奈津美を「主人」と呼び、刺激を求めて懇願する『ネロ』はネコ耳・シッポのおもちゃをつけた見知った顔、巡査の熊田友子に間違いなかった。

「コ・コ・にっ」
 友子は恥らうこともせず両足をテーブルの両サイドを挟むように開いたかと思うと両方の人差し指で自分の陰唇をパックリと開いて見せた。

「見てくださいぃ、ご主人さまぁ。もうヌレヌレでこんなにツルツルしちゃってるんですよぅ」
 そう言うやいなや友子はトロトロと浮き出てきる愛液をなぞるように指で刺激し始めた。
「あん、あっ、あぁん、あん。ねぁ、はやくぅ。ふうううぅぅぅ~ん、ご主人さまぁぁ」
 彼女は演技とは思えない仕草で奈津美にねだっている。

「は、恥ずかしくないのかっ」
 思い余って奈津美は悔しさをこらえきれずに喉の奥から搾り出すような低く震える声で友子を睨みつける。
 奈津美の本音だった。
 できることなら目を覚まして欲しい、我に帰って欲しいと願う気持ちが声になってしまった。

「えへっ、ご主人さまの前なら、『ネロ』なんだってできちゃうんです。こんなことだってっ!」
 そういうとネロこと熊田友子は奈津美の手指をとって自分の濡れそぼったヴァギナに導いて両手を絡ませて唇を重ねてきた。

「うっ・・・」
 あまりの大胆さに奈津美は思わず体を固くする。
「ねっ、ご主人さまぁ~、動かして、ご主人様の指でネロの中をクリクリして感じさせてくださいよぅ~にゃんにゃん!」

 すでに自分を失い、『仔猫』としてなりきっているのか、別人格を植えつけられているのか、少なくとも署内で見た熊田とはまったく別人だと奈津美は思い、組織のもつ得体の知れない『力』に背筋が凍る。

「チームの中にいるスパイ、『子猫』の名の由来がなんとなくわかったような気がしないか」

 石原が奈津美のシートまで身を乗り出して奈津美の耳元で小声で訴えかける。
「ご主人様ぁ~、テーブルに乗ったり、他の人と話すのはファンタジータイムでは禁止なんですよ~う。にゃおんっ!」
 石原のペット、変わり果てた小椋優子が胸をあけっぴろげにして内腿を濡らし、石原をシートに引き戻そうとする。

 奈津美は何も言葉を返せずに表情を固くするだけだった。

「それではお客様、存分にお楽しみください。勿論本番等は一切禁止ですのでご了承を。間違ってそれらの行為に至った場合、仔猫は遠慮なくご主人様を噛み殺すように教え込んでありますからご注意を」

 ジュンの意味深な店内放送のあと店内の照明が落ち、ナノライトとミラーボールだけの状態になる。

「あん、あん、そこ。もっと、もっと、奥までぇ~、奥まで突いてくださぁいいぃぃ」
「・・・感じちゃう、感じちゃってますぅぅぅ、ご主人さまぁ、大好きなご主人さまぁーっ、あぁぁぁ」
 そこここで、ネコ達の喘ぎ声が大きく、激しくなる。
 『ネロ』となった熊田友子はテーブルの上からのしかかるように奈津美にしがみついてきた。
 胸が奈津美の顔を覆う。

「ご主人様ぁ、はやくぅ、はやく可愛がってください。ネロはもうヌレヌレなんですニャぁ~。そのオモチャでネロの感じるトコ、ツンツンしてくださいぃぃよぅ~」

 友子の手が奈津美の股間へと伸びてきた。
 奈津美の右の耳に友子が舌先を這わせる。

「あん!」
「あぅっ!」
 暗がりの中で石原と加藤の方からも優子たちの嬌声が漏れる。
 奈津美はいたたまれない気持ちに心が潰されそうな思いだった。
 2人の男は仕事と称して、被害者として絡めとられた署員の若い女性に今何をしているんだろうと思わずにはいられない。

 2人の行き過ぎた行為は、問い詰めても理由はあとでいくらでも自分勝手な言い分が立てられる。
 捜査の名の下に彼らが小椋たちを弄んだとすれば奈津美は彼らを断じて許すつもりはなかった。

「うっ」
 奈津美の耳元で友子のかすかな呻き声が漏れる。
 いきなり友子の全体重が奈津美にのしかかってきた。
「えっ・・・」
 明らかに動きの鈍った友子の体が重くのしかかってきたことで奈津美は何が起こったのか把握できずにいた。

「しゅんま(瞬間麻痺剤)だよ。効き目はちょうどショータイム分。おたくらが仕事で使ってるのよりは効き目を抑えたやつね」

 耳元で石原の声がした。

「あっ・・・」
 奈津美は石原が操られた署員たちを麻痺させたのだ。
 見かけはノック式4色ボールペンだが、黒以外は即効性麻痺剤を仕込んだの注射針になっている。

「動きも思考も鈍く緩慢になるけれどヤツラの呪縛を解いたわけじゃない。そこんとこ忘れずに注意は怠らないでね」
 石原が囁いた。

「何の処置をされたの原因が突き止められないうちの『解毒』行為は危険だと判断している。身柄の安全確保が第一だかんね、精神面も含めて」

「・・・了解、我慢しがたいが、その判断は適切だと理解する」
 事務的に奈津美は言ったが、重くのしかかっていた彼らへの信頼感が増した。

「おれ達、激しく可愛がりすぎて3匹とも昇天ってトコ。しばらく上下に揺り動かしときな、意味わかるよね」

「うん・・・あ、ありがとう」
「おれ達も良識はあるだろ、な」
 石原は普通に聞こえる声で言った後、もう一度奈津美の耳元で囁く。

「でも役得だから触ったりしちゃったりってね。ウフフフ・・・・、イテ!怪しまれないくらいのH行動は許容範囲だろ、あくまでソフトタッチだけ・・感情を抑えんのたいへんあんだよなぁ、年頃の男は。ケモノだから」

 奈津美に軽く叩かれて石原の遠ざかる気配がした。
 危惧していた不安を奈津美は石原の明るいおどけた言葉に拭い去ることができた。
(彼は『呪縛』と言った・・・彼女たちを、これだけ多くの女のコたちを強固なまでに服従させているのはあの忌まわしい潮招きの神の手なのか。見渡しただけでも『仔猫』はかなりの人数いるはずだ)

 動きが鈍っても奈津美に擦り寄り、舌や胸や手、腰を使って性的刺激を与えようとしている熊田友子の行動を観察しながら奈津美は冷静に考えようとした。

 (チームの中の『子猫』も、もしかしたらlここで・・・・)
 奈津美は思わずにはいられない。

 加納美香がもし『子猫』で、グスタボ(2nd-day「新たな線」)が言うようにチーム内の情報漏えいに加担させられていたとすれば、美香はここで取り込まれたに違いないと思った。

 舞台のそでで「潮招き」は苦虫を潰したような表情で舌を「チッ」っと鳴らした。
 カモフラージュのマスクからは、その渋い表情も他人にはわからない。
「失敗したよ、ファンタジータイムのおかげで『お湿り』の匂いが仔猫たちの分まで蔓延したじゃないか、これじゃアタシの鼻も利きゃしないよ」

 客席に立ち込めたただ1人の女の存在、潮招きがそれを探し当てることが不可能になったことを意味する。

「茶なんぞを啜ってる場合じゃなかったね。どうするか。上に知らせたモンかねぇ」
 半ば諦め加減で潮招きは不穏分子の存在を報告すべきかを思案しだしたその時だった。

「いやぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっ!なにぃっこっれぇーっ!」
 悲鳴は奈津美たちのいるシートのより前方から突然発せられた。

【 台場 DEX内 ワインバーガーDEX店 男子更衣室 】

「タリラリラ~ン・・・・」
 哲郎は上機嫌でロッカーからユニフォームを引き抜いてロッカーの扉にひっかけた。
 奈緒をとうとう陥落して手中に収めた満足感が哲郎に音痴な鼻歌まで口走らせた。
(グフフフフ、今夜は予約してある台場パークロイヤールホテルのスイートで奈緒と抜かず3連発からスタートっかな、グフフフ笑いが止まんないぜぃっ)

 出入り口のカギが内から施錠される音に哲郎は気づかない。

 店のユニフォームの袖に左腕をを通した時、更衣室の出入り口の扉から音がした。
 哲郎は何も気にしない。誰か上がりかな・・程度の気持ちしかない。

 背後から聞こえたドアの閉じられる音に哲郎は慌てて振り向いた。
 すでに着替えを済ませてユニフォーム姿に戻った奈緒が哲郎の後ろで目を潤ませている。
「およよよ、どうしたんだい。ココがどこだかわかってんの」
「奈緒、我慢できない。今日の上がりまで哲郎様に何もしていただけないなんて、奈緒気が狂っちゃう」

 スカートをめくりあげてノーパンの下半身を哲郎にさらけ出す。
 内腿は愛液が濡れしたたり、秘部の唇は大きく膨らみきってぱっくりと開いている。

「グフフフ、言ってくれるぢゃないかぁ。今日はホテルをおさえてるんだ。夜は寝ないで楽しむぞ」

「あなたが私をこんな女にしたんですよ」
 奈緒はそう言って哲郎にしっかりと抱きついた。
 哲郎の右腿に濡れきった股間を擦りつけている。
「恨んでる?」
「・・・・・いいぇ、目覚めさせてくれたのが、うれしくて・・」
 甘い香りと奈緒の胸の弾力に哲郎はとろけそうな気分になる。
 征服した者の快感だ。

「どうしようか、すぐに店にスタンバらないと誰か来ちゃうぜぇ、グフフフ」
「いいじゃないですか、5分くらい。なら、奈緒に哲郎様をしゃぶらせてください。それで今は我慢します」
 そういうが早いか奈緒は一気に哲郎のズボンのチャックを押し下げて自らの手で哲郎自身を出すとすぐさましゃぶりついた。

「はぁぷ、ん・・・ん・・ん、うれしい、奈緒の舌で、奈緒の口で、哲郎様が固くなって下さるなんて・・・」

「フフフ。その言葉、昼休み前の奈緒先輩に聞かせたいっす」
「あん、言わないで。奈緒は哲郎様のこと今は全身で愛しています。私のすべてはもう哲郎様のものです、なんでも好きにしてくださいね。あむぅ~」

 奈緒はしゃぶりつくすように哲郎のモノを奥まで入れたり、舌先でチロチロと嘗め回す。

「ちょっとっ!そこで何してんのよっ!」
 哲郎は一瞬身を強張らせる。
 奈緒は呆けた表情で振り返りながら、手は哲郎をしごき続けるのをやめない。

「なんだぁ。マネージャーじゃないかぁ、びっくりさせるな、もう」
 哲郎は視界に入ったのがショップマネージャーの佐野和泉だとわかると緊張して強張らせた肩の力を抜いた。

「奈緒ちゃん!あんた、今、自分が何をしているかわかってるの!」
 相当な剣幕で和泉は出入り口から迫って来る。手にはマネージャーが責任者として所持する店各所のキーの束が握られていた。

「ほっといてよ!マネージャーには関係ありません!私は自分でしたくて哲郎さんのことをしゃぶらせてもらってるんです!」

「独り占めするなんて許せないわ。私だって哲郎さんのモノ、ずっとしゃぶっていたいのにっ!!!」

「えっ?」
 奈緒の隣にしゃがみ込むと奈緒を横に押しやって和泉はせわしなく制服の上をはだけるとその大きな胸で哲郎のモノを挟み込むようにして口で奉仕を始めた。

「あん、ああん、哲郎さん。感じてくれますかぁ~。和泉のこと嫌いになっちゃイヤですよぉ。あん、はむ、はむぅ~ん」
「グフフフ、嫌いになんかならないよぉ。和泉ちゃんは我輩を奈緒先輩と同じクルーにしてくれたじゃないかぁ」

「あん、覚えていて下さってるんですね。そうです、わたし、哲郎さんが喜んでくれるためならぁ~何だってする女なんですよぅ」

「もしかして、マネージャーも哲郎さんの・・・」
「グフフフ、そうだよ、奈緒。和泉ちゃんも我輩の仔猫なのさ」

「はいぃ。和泉は、和泉はぁ、てふろうさんに尽くして、尽くして、つくふぃひゃう、従順なぁ、こねこでふぅぅ」

 和泉は舌で何度も舐めあげては哲郎にしゃぶりついて離れない。

「グフフフ、奈緒。そういうわけだから、この和泉とも仲良くしてね」
「は、はい。うれしい、マネージャーも哲郎さんの仔猫だなんて」
「私も、わたしも、奈緒ちゃんが哲郎さんのモノになってくれてうれしいわぁ」

「そういうわけだ、2人とも可愛い仔猫なんだから、このシチュエーションのときも『哲郎様』と呼ぶんだ」
「ふあい、てふろうさまぁ。いずみはぁ。和泉は哲郎さまの仔猫ですからふぁぁ」
「奈緒も、奈緒もです。いいでしょ、マネージャーが舐めてるんだったら、哲郎さまぁ、奈緒にはお口舐めさせてくださいよぉ」

「グフフフ、いいだろう。でも舐めるんじゃなくて、奈緒、それはキスだろう?」
「はい、はぁい、キスですぅぅ」

「ひどいっ!和泉さん!すぐに呼んでくれるって言ったのにぃ!沙織のこと無視してっ」
 ヒステリックな声に振り向くとそこには泣きそうな顔の沙織が立っていた。

「怒るなよぉ沙織。お前だって潮招き様に目覚めさせてもらった直後は激しくて大変だったんだからなぁ、わかってるだろ。さ、おいで、沙織」
 哲郎はにやけて表情が緩む。
 哲郎に呼ばれて不機嫌だった沙織の顔が喜色に満ちた表情に一転した。

「はいっ!奈緒も仲間になったんだね。うれしい、これからは一緒に哲郎さんに御奉仕できるね」
 沙織は言うが早いかさらけ出した両胸を寄せて哲郎の顔に押し付ける。

「沙織、沙織も哲郎様の仔猫なの?」
 奈緒は驚きを隠せない。
「そうだよぉ、和泉さんも私も、奈緒が哲郎さんの仔猫になるために哲郎さんにお仕えしてたのよ」
 沙織は嬉々として言った。
「グフフフフ、奈緒と我輩が接近するためのシチュエーションはこの2人に作らせたのさ」
「あん、悔しい。私だって、もっと早く哲郎様に愛してほしかったのにぃ~っ」
 奈緒は悔しそうにして目を吊り上げた。

「ねぇ、哲郎様。マネージャー室に行きませんか。ここでは落ち着きませんよ」
「グフフフフ、名案だね。我輩も今夜は奈緒だけじゃなく2人にも来てもらうかな」
「はい!和泉は喜んでおつきあいさせていただきます」
 和泉はうれしそうに返事をする。
「うれしい、哲郎さん、沙織、目一杯ご奉仕します」
「OK、OK。沙織、この4人でいるときも『哲郎様』だ。いいな」
「はい。哲郎様」
 沙織は素直に答えた。
「いやだぁ、なんで私だけにしてくれないんですかぁ、哲郎さまぁ。この2人だって以前に哲郎様と2人の時間で可愛がってもらってるんだったら、私だって2人っきりがいいですぅ」
「グフフフ、奈緒、今日はお前を1番可愛がってやるよ。それでいいだろ」
「は、はいっ!きっと、きっとですよ!」
 4人は更衣室をあとにする。

「グフフフ、奈緒。仕事、どうしようか時間だよ」
「あん、いやぁ、私もマネージャー室行きますぅ。じゃなかったら、哲郎様だって一緒にお店に出るんじゃないですかーっ」
 奈緒は本気で悔しがっている。

「大丈夫です、哲郎様。和泉がすべて調整してありますから。午後シフトがあると思っていたのは奈緒さん・だ・け。午後は別クルーが入ってます」
 和泉はそう言いながら微笑んだ。
「グフフフ、さすがマネージャーだね。奈緒、そういうことだぁ」
「いやん、くやしい、どうして、そんな意地悪するんですかぁ」
「ウフフフ、あなたが哲郎様のモノになるために、あのお店に昼休みにいけるためにそうしたんじゃない。感謝なさいよ」
 沙織が奈緒の肩を叩く。

「さぁ、みんなマネージャー室へ」
「いや、だったら、もうホテルへ行こうか。少し早いけど、金出せば早めに入れてくれるよ、なんたってスイートさ」

「うれしい。和泉も呼んで頂けて」
「ありがとうございます、哲郎さま。奈緒のこと可愛がってください」
「いやん、哲郎様ぁ、沙織のこともォーっ」
「イテテテテ」
 沙織は思い切り哲郎にしがみついた。
 そんなたわいのない沙織の隷従の仕草に哲郎は意味のない怒りを覚える。

「グフ?沙織っち、HANG!」
「きゃぁっ!」
 哲郎の言葉に沙織はいきなり両手を上に上げて手首を合わせてつま先立ちになった。
 まるで鎖か何かで吊るし上げられているような恰好だ。
「違うでしょ、沙織っちのキャラは。グフフフ」
「あっ、あは、うれしい、いぢめてくれるんですね、哲郎様ぁ~」
 沙織の顔に恍惚とした劣情の表情が浮き彫りになる。
 沙織は哲郎にかまってもらえることがうれしくてたまらない。

「沙織っちはさぁ、いっつも我輩のこと馬鹿にしていじめて、蔑んで、見下して・・・いっつも、いっつも」
「あんんん、反省してますぅ、私は、私は、悪いコでしたぁ。哲郎様の素晴らしいところを何一つ理解していなかったんですぅ」

 沙織はそう言いながらもわくわくゾクゾクしているように言葉の端々から悦びが滲み出ている。
「和泉、外で監視。誰も入れちゃいけない」
「はい、哲郎様。和泉は誰も中に入れません」
 そう言うと和泉は服装を正してすぐに外に出て行った。
「沙織は悪いコです。だから哲郎さまぁ、沙織のこと叱ってくださいぃぃ。お仕置きしてください。沙織がイイ子になるようにぃ~」

 沙織は「吊るされポーズ」のまま、子どもがねだるような甘い声で懇願する。

「奈緒、沙織っちはいつもこんなだったかなぁ」
 哲郎は奈緒に話をふった。
「・・・いいえ。沙織はいっつも気が強くて、男らしい人が好きで哲郎様のことを・・・」
「そう、苛めてたんだ。沙織っちはこんなデレデレなんかしてないよねぇ」

「あんんん、いじわるぅ。私、わたしだって哲郎様にこのカラダをイヤらしく開拓していただいたんですよぉ」

 つま先立ちで両手を見えない鎖で吊るされた沙織は身をくねらせて哲郎に訴える。
 これからの展開に乳首を固く尖らせて、内腿を濡らして愛液がしたたっている。
 哲郎は奈緒に背中越しに隠れるように言った後、沙織に一言つぶやいた。

「沙織っち。チェンジ00」
 その言葉で沙織の表情は豹変した。
「はっ・・て・・に、日暮里ぃーっ!お前!お前!早く私の鎖を外せーっ!」
「グフフフフ、わかりやすく怒ってますな、沙織先輩」
「うるさいっ!はやく下ろせ!ただじゃおかないからな、このヲタ野郎ーっ!」
「はいはい、静かに静かに。男子更衣室ですよぉ、女性が大声出す場じゃないっす」
「うるさいっ!ただで済むと思ってんのっ!こんなことしてっ!」
「思ってますよぉ~。沙織先輩、今日はあれからさらに2日経ってます。見てください制服着てるでしょ。バイト中ですじゃ」

「そ、そんな。ど、どうして・・私」
「ぐははは、これはこれは、もうなんとなく我輩にいい様に操られてる自覚が出てきてるぢゃないですか~」

「お前、こんなことして、こんあ非人間的なことしてなんとも思わないのかっ」
 沙織の表情からは憔悴しきりの色が見てとれた。
「思いますよぉ~、楽しいなぁーって。だって鎖なんかどこにもないし、吊るす場所もないでしょ、ココ」
「そ、そんな・・・」
 あらためて沙織が仰ぎ見ると縛り上げられているはずの手は何ものにも拘束されてはいなかった。

「紹介しますよ、沙織先輩。我輩の新しい仔猫の奈緒です」

「にゃん、奈緒でーす」
 奈緒がおどけて哲郎の背後から抱きついたまま顔だけ出した。
「な、奈緒!ま、まさか、お前、奈緒までっ!」
「はい、はい。奈緒、我輩のことどう思うかなぁ、沙織先輩に言ってあげて。いつもの奈緒先輩でね」
「うん。沙織、私ね、哲郎様のこと誤解してたの。大好きよ、偽りのない気持ち。これからは哲郎様に心を込めて尽くして行こうと思うの」

 奈緒は笑顔で言い切った。

「奈緒!違う!違うわ!あなたはコイツに騙されてる!変なヤツのまやかしにカラダを弄られて狂わされてるだけ!しっかりして」

「えーっ、だって沙織も一緒じゃない。さっきまで哲郎様にしがみついてしゃぶってあげてたんだよ」
 奈緒が屈託なく、いつものように話しかける内容に沙織はぞっとする。
「ち、ちがう!あれは私じゃない!私じゃないの!奈緒!あなただって今のあなたは本当のあなたじゃない!」

 沙織は必死に奈緒に訴えかける。
「ふうん、でもこんな私になるように仕向けたのは沙織、あなたじゃない」
 奈緒の表情が冷たい表情に変わる。
「えっ・・・・」

「グフフフフ、そうだよ、そうだよ。我輩とケジメつけるために食事に行くように奈緒に諭したのは他ならぬ沙織っちだね」

 哲郎はほくそえんだ。
「そ、そんな。わたし、わたしが・・・・」
 沙織の背中に冷たいものがはしる。
 自分が哲郎の掌中で踊らされているのをすでにイヤというほど味わっていた。
 途切れ途切れの断片的な記憶、この男はそうやって自分を弄んだ。
 従順な奴隷にしては沙織の体を貪り食い、支配を緩めては自由にならない体とまともな精神をとどめる自分を辱めた。

 おそらくは、奈緒を罠に嵌めるために、この男は精神までを完璧に支配した沙織をいいように操ったに違いなかった。

「グフフッフ。喜んで沙織っちは引き受けてくれたよ。奈緒も同じ我輩の仔猫にしてあげるってね。奈緒、怒って見せるんだ。今から言う言葉のときだけ沙織を心から憎め。憎んで素のままの奈緒の心に戻って責めるんだ」

「・・・あぅ」
 奈緒の表情が複雑な変化を見せて艶美な表情が消え、怒りに満ちた表情に変わる。

「ひどいっ!ひどいよね、沙織。あなたの言葉信じてたのに。あなたのアドバイスで、あなたのせいで私、哲郎の仔猫としていま弄ばれているのよっ!カレとも無理やり別れさせられたのっ!私のカラダ、コイツにいいように弄ばれてるのっ。これからもきっと弄ばれるのっ!心ごとよっ!私の本当の気持ちはあっという間に沈んで哲郎に言われるがままになっちゃう!自分ではどうすることもできないのっ。あなたにせいよっ!あなたが私を嵌めたんだわ!」

「そ、そんな、わたし、わたし・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 沙織にとって信じたくない事実だった。
「ひどい!日暮里ぃーっ!おまえ、クズだ!」
 続けざまに沙織は哲郎を罵倒する。

「あっれぇ、また我輩を蔑むか、沙織っち。ねぇ、奈緒先輩。沙織先輩あんなこといってますよ~ォ」

 哲郎の言葉に奈緒は先ほどまでの冷たく憎悪のこもった表情ではなく、まるで子どもの喧嘩になやむ先生のような表情を浮かべる。

「困ったもんネェ。だめよぉ、沙織。哲郎様に楯突くなんて、私達は哲郎様に可愛がられる仔猫なのにぃ」
「奈緒!奈緒!奈緒!しっかりして!私もあなたもコイツに変な細工をされて操られてるの!あなただって気持ち悪いって言ってたじゃない!相手にしたくないって困ってたじゃない」

 沙織は必死になって訴える。
 つま先立ちの足が震える。
 縛り上げられた腕が痙攣する。
 本当は自由のはずなのに体がこの男のなすがまま『吊るし』を演じているのがわかっているのに自分ではどうしようもなかった。

「沙織ぃ~。わたし、やっと気づいたの。いいえ、哲郎様が気づかせてくれたの。私の大切なヒトはこの日暮里哲郎さまだったの。私は身も心も哲郎様に喜んでいただくために捧げるの。そのために私生まれてきたんだわ、きっとそうよ」

 哲郎への隷従を妄信して疑わない奈緒を沙織は見るに堪えなかった。
(そんな奈緒にしてしまったのは、この私なんだ・・・・)
 心が張り裂けそうだった。

「グフフフフフ、我輩を苛めてくれた罰を与えるって言ってあったでしょ。こういうことなのさっ、沙織先輩いい気味っ、グフフフフ」

「ひどい!酷いわ!わたしに、私に親友を貶めるようなことさせるなんて。あなた人間じゃない!」
「ホラ、また我輩の悪口を言う。奈緒先輩、何とか言ってよ。グフフフ」

 奈緒の目が一瞬で釣る上がる。
 奈緒の感情は哲郎の言葉でいとも簡単にコントロールされている。
「沙織っ!いくらあなたでもこれ以上哲郎様の悪口言うの許さないわよ!」
 奈緒の語気が荒くなるのがわかる。
 今まで親友として喧嘩もしたけれど、これほど怒りの感情をあらわにしている奈緒を沙織は見たことがなかった。

(奈緒、奈緒、本当にそう思ってるの?あなた、操られてるんだよ・・)
 沙織の目に涙が浮かぶ。

「グフフフ、だめぢゃないかぁ~沙織先輩泣くなんてぇ。せっかくのキュートな顔が台無しだよォ。こっちの楽しみ気分が萎えちゃうよぉ」

「くっ・・・お前のせいで、お前のせいでぇーっ!」
 沙織は哲郎に対する怒りで全身が熱くなり体を震わせた。
「グフフフフ、知ってますよぉ。沙織先輩、ゼミのほかにウチの大学の女子空手部に稽古つけてるでしょ。子供の頃から空手やってんだってねぇ。付属高校時代はいい線行ってたけど故障で大学での入部を諦めたとか」

 哲郎は下卑た笑いでなにかたくらんでいるようだった。
「そうさっ!今に見てろ!お前なんかいつか絶対私がぶッ倒してやるんだからっ!」
 もはや強がる言葉だけしか沙織には哲郎に向けるものがなかった。

「グフフ、沙織先輩の男勝りはココから来てんだねぇ。ほ、ほ~う。だったら、今その機会を与えてあげようぢゃないかぁ~」

「なんだって」

「沙織先輩を自由にしてあげる。この狭い更衣室内で我輩を倒したならね」
 そういうやいなや哲郎はパチンっと指を鳴らす。
 その効果は絶大だった。沙織のかかとは地に着き、両手は一瞬にして腰まで下がった。

「テェイャーっ!」
 自由になるやいなや沙織は一気に攻勢に転じた。
 制服のスカートを気にもせずに前蹴りを哲郎に繰り出す。

「哲郎様に痛い思いなんかさせないっ」
 奈緒が身を挺して沙織との間に割ってはいる。
 沙織の蹴り上げる中途の右足が奈緒の膝上に入って奈緒が崩れる。

「奈緒!邪魔しないでっ。あとで謝るからっ!」
 崩れる奈緒を押しのけて狭いロッカーの突き当たりにまで哲郎を追い込む。

「あなただけは絶対に許さない!許すもんか」
「ひ、ひーっ。いやだ、痛いのやだよーぅ!」

「その不細工な鼻へし折ってやるっ!」
 正拳で思い切り哲郎の鼻っ柱を突いた沙織の拳は哲郎の鼻のさきで動かなかった。

「そ、そんな・・・か、体が・・・・」
 沙織がいくらもがいても全身がまるでフリーズしたように動かない。

「ふぅ~、おっかねぇ。本当に当たるかと思っちゃった」
 哲郎は急に余裕綽綽の態度で一息ついた。

「こんな、こんな・・・・」
「グフフフ、飼い猫に手を噛まれる様なことさせるとおもうぅ?いっつもこうやって遊んでたの沙織っちは忘れちゃってるんだよネェ~。我輩に楯突いて攻撃を繰り出して当たる瞬間にフリーズするように暗示がかかってる」

「う、ウソだ!」
「ウソなら動いてみなよ。グフフフフ」

 固まったままの沙織の胸を右手で揉みながら哲郎はゆっくりと沙織ににじり寄った。

「や、やめろっ!さ、触るなぁーっ」
「グフフフ。こうやって、『沙織っちをシラフで怒らせて失意のどん底に叩き落しごっこ』第5回、松崎奈緒初競演編。楽しませてもらいましたよ」

 哲郎は沙織のスカートの裾からゆっくりと手を入れる。
「や、やめろーっ!この変態っ!」
「せっかく奈緒先輩を手に入れたから奈緒先輩と遊ばして見たかったんだ。いつも和泉ちゃんとばっかりだったからマネージャー室まで我慢できなかったし。割とイイね、更衣室ってのも」

 哲郎の指が沙織のパンティに侵入していく。
「ひっ、や、やだ!触るな、触んないでよ!キモイ、キモイよー!このヲタ!」

「グフフフフ、飽きないんだよね、こういうシチュエーション。さてそろそろ時間っスね」
「私を自由にしろっ!」
「グフフフ、するする。これからみんなでホテル行って楽しむんだから」
「行くもんか!お前なんかの好き勝手にされてたまるかーっ!」
「うんうん、いいよいいよ。沙織っち。忘れてるかもしれないけれど、沙織っちの我輩への憎悪、これを最後は我輩への忠誠と異常なまでの偏愛に転化するんだよ」

「やめろ。そ、そんなことされてたまるか。お前を許さない、絶対絶対許すもんか」

「はい、はい。どんどん憎んでくださいな。そうすることで沙織っちは今夜異常なまでに我輩の上で燃えまくるんだからなぁ」

「い、いやーっ。た、助けてーっ。だれか、だれかーっ」
 沙織は正拳突きのポーズのままとうとう悲鳴を上げた。

「さぁ、奈緒先輩も起きて。大丈夫、痛くないよ。痛いのいたいの飛んでケーっ。どう?」
「はいっ!哲郎様のおかげで急に痛みが消えました」
 奈緒は痛みにしかめていた顔を一瞬にして笑顔に戻した。

「さぁ、沙織っち。自由にしてあげるよ。殴りたければ殴ってごらん。逃げたければ逃げてごらん。我輩のキーワードを聞くまでは沙織っちは自由になれる」

 パチンっと哲郎が指を鳴らすと沙織は崩れるようにその場にひざまづいた。
「グフフフ。逃げるかな?殴るかな?」
 哲郎が言うや否や沙織は今までよりさらに素早い動きで哲郎に蹴り込む。

「沙織っち、チェンジ01」
「はぅっ、あぁぁぁ」
 沙織の憎悪に満ちた顔がだらしなく歪むと蹴り上げた足はゆっくりと地に着いた。
「あんんんんんんん、ふんんんんんんんん。哲朗ぉさまぁ~私の哲朗ぉさまぁぁぁ」
 哲朗の足元にひざまづいて沙織は哲朗の靴を舐めだした。
 
「グフフフフフ、靴舐めですか。いいよ、いいよ沙織っち。さぁみんなでホテルに行ってズッコンバッコン」

「はい、奈緒も、奈緒もぉ」
「哲郎さまぁ~、沙織の大事な大事な哲郎さまぁ、可愛がって、私をいっぱい、いっぱい可愛がってください」

「じゃあ、もう一回マネージャー室行ってみんなで私服に着替えようかネェ~。ちょっとストリップダンスもしてもらおっと」
「はい、奈緒いやらしいステップお見せします」
「はい。沙織も、さおりもぉ」
 奈緒も沙織も従順な返事を返した。

「ぐふふふっふ、いいよ、いいよ、我輩の可愛い仔猫たち。グフフ」
(うーん、これじゃぁ和泉ちゃんと沙織っちの2人の隷属期間も延長しっちゃおうかなぁ~)
 哲郎は鼻の下を伸ばしながら考えをめぐらせていた。

< To Be Continued. >

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