すべて、未来のために -1-

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 人生山あり谷あり。生きていれば、いくつものピンチもあると思う。
 しかし、いくらなんでもこんなピンチはないだろう。
 夜の公園。この時間、元々人通りはあまりない。助けを求めようと叫んでも、おそらく誰も来ないだろう。
 そんな状況で、僕は砂利の混じった地面に背中をつける格好で寝そべっていた。いや、寝そべるしかないのだ。左の腿を『レーザー光線で』撃ち抜かれて、もう走れないのだから。
 痛い、と言うよりも熱い。あまりの痛さに脳が誤認を起こしているのかもしれない。そして傷口からはどくどくと血が流れ、制服のズボンを濡らしていく。
 ガシャン、ガシャンと音を立てて『そいつ』が近づいてくる。おそらく僕を殺そうと。黒塗りで、6本足。2つのハサミと上方に反り立った尻尾。サソリのようだが、本物のサソリは2メートル以上もないし鋼鉄でできてもない。ましてや、『空中にこっぽりと開いた黒い空間から稲光と共に出てくる』サソリなんか聞いたこともない。
 そして僕はわけもわからず『そいつ』に追い掛け回され、背後からレーザー光線を乱射され、気がついたら足を撃たれて転倒していた。見た感じでは、尻尾の先が光線の発射口になっているみたいだ。どうでもいいけど。血が抜けたせいか妙に冷静だな、僕。
 こんなのに狙われる理由なんてない。仲の良いクラスメートがいて、気になる女の子がいて、家族ともそれなりにうまくやっている平凡な生活。軍の機密をハッキングしたとか、要人に何かしたとか、そんな大それたことなんて一切やってない…はず。なのに、なんでこんなロボットみたいなのに殺されなけりゃならないんだ!
 僕は両肘と動く右足を使って必死に後ずさるように『そいつ』から離れようとしたが、『そいつ』は威嚇するかのように僕の耳元近くにレーザーを撃ちこんできた。地面がはじけてえぐれ、高熱のせいかそこから煙が上がる。だめだ、もう逃げられない。
 『そいつ』はガシャガシャと音をさせながらゆっくりと僕の近くまで寄ってくると、赤く光る目をチカチカと点滅させた。ターゲット捕捉、とでも言いたいのだろうか。さらに『そいつ』は両手のハサミをキイイ…と開閉させ、尻尾のレーザー口を僕に狙いをつける。見るからに絶体絶命。
 …でも、ああもうどうでもいいや。僕は疲れたよ…。血が抜けすぎて、逃げるどころか考えることも面倒になってきた…。目を開けているのも面倒になったので、僕はゆっくりと目を閉じた。
 こういう時に走馬灯のように人生を振り返る、って聞くけど、本当なんだ。思い浮かぶのは、仕事人間で滅多に家に帰ってこないけど必死で家族を支えてくれた父と、意地悪で散々僕のことをいじめてたけどやっぱり嫌いになれない姉のこと。そして、僕が生まれた直後に失踪したという、アルバムの中でしか見たことのない母さんの顔…はやっぱりよく思い出せないや。
 段々と意識が薄れてきた。殺されるより先に僕は死ぬみたいだ。まあ、それもいいかな…。とにかく、疲れたよ…。ゆっくりと休ませて………。

……………

…………

………

……

 目が覚めると、そこは夜だった。なんだ、天国にも昼と夜があるんだ。
 さっきと違って体を横にして寝そべっている僕は、何か柔らかみのある暖かい物に頭を乗せているようだ。胴から下は相変わらず地面の上っぽいけど。そして目の前にある2つの物体は…。

「あ、気がつかれましたか」

 安堵したような女性の声がした。意識がはっきりしてくると、その女性が僕を上から覗き込んでいる姿勢になっていることに気づいた。いや、これって…膝枕?
 その女性は、金色に輝く長い髪と、とても美しい容姿をしていた。簡単に言えば、僕の理想のタイプ。そんな女性が僕を介抱してくれている、というシチュエーションは素直に嬉しい。やっぱり天国はあったんだ。
 僕は動くようになった口で彼女に聞いてきた。

「あ、あの…ここは天国ですよね? あなたはもしかして天使?」
「いいえ、違います。ここは西暦2007年の地球。私は天使ではありません。トワ、とお呼びください」

 あ、そうなんだ。やっぱり天国じゃなかったんだ。残念。
 でも、冷静になるとおかしなことに気づく。僕は死ぬほどの大怪我を負ったんじゃないのか?
 僕は視線を足のほうに向けて、手を伸ばして傷口に当ててみる。ズボンは撃たれたように破れていたし、その周囲には血のあとどころか血液そのものがまだべっちょりと布地に吸い込まれている。でも傷口は全くない。綺麗さっぱりなくなっている。

「お怪我の方は間一髪のところで治癒延命用のナノマシンを注入して、体細胞を活性化させました。これにより今後、少々手足が切断されたぐらいなら、すぐくっつきますよ」

 不思議そうにぺちぺちと元傷口に手を当てている僕に、トワと名乗った女性が優しく説明してくれた。いや、ナノマシンって何? 切断されてもすぐくっつく? でも傷は治っているんだから、信じるしかない。服も直ってたら今までのこと自体が夢ということになるんだけど、そうでもないし。
 夢じゃないとすれば、もう一つ確認しないといけないことがある。

「そ、そういえば、あのサソリロボは…?」
「ああ、あれなら、ほらあの通り」

 トワさんがそっと僕の頭を持ち上げて足の方向を見せてくれると、そこにはスクラップ同然に破壊しつくされたサソリロボがあった。ぷすぷすとかすかに煙も上がっている。

「う、うそでしょ…。もしかしてこれ、トワさんが…?」
「はい、申し訳ございません。トラブルが起きずに、もう少し正しくこの時間に到着していれば、あなた様にお怪我などさせることはなかったのですが…」

 と、心底すまなそうに目を伏せながら言うトワさんに、僕は慌ててフォローした。

「い、いや、命を助けてくれたんだから、お礼を言うのはこっちですよ。ありがとうございます」
「いえ、私があなた様をお助けするのは当然のことです。私はそのためにこの時間に来たのですから」

 あくまで真面目そうに答えるトワさん。しかし、ほんと美人だよね…。
 僕の視界にあるのは、凛々しくも綺麗なトワさんの顔と夜空と…2つの柔らかそうな何か。その先端にはつんと尖ったものがある。えーっと、僕はトワさんに膝枕されてるんだから、見えているのは…。
 次の瞬間、僕は顔を真っ赤にして飛び起き、そして叫んだ。

「はははははは裸ぁ!?」

 そうなのだ。トワさんは上半身どころか全く何も着ていない。腰の辺りにベルトとホルスターのような物、腕に腕時計のような者を身につけている以外は、全くの全裸。FかGかと言いたくなるような大きく形の良いおっぱいが、どんとさらけ出されている。
 でも当のトワさんは、きょとんとした顔で正座したまま僕を見上げていた。

「あの、何か問題でも?」
「だだだって、その、服、服は!?」

 僕はトワさんから顔をそむけつつもちらっと横目で見たり見なかったりしながら、彼女に聞いた。

「時間を越える際には少しでも質量を軽くする必要がありますから、服など無駄な物は着用いたしません。それにそもそも服というものは、今はせい…」
「ちょっと待って。今『時間を越える』って言ったよね?」

 僕はトワさんの言葉をさえぎって質問した。相変わらず横を向いて、ちらっと視線を向けただけで。

「トワさん、君はどこから来たの? で、あのサソリロボはいったい?」

 トワさんはすっと立ち上がると、脚についた砂をぱっぱっと払った。あう、見えちゃった、見ちゃいけないとこ…。毛の一本もないすべすべとした…。不謹慎だけど、こんなの見せられたら起っちゃうって。
 そして、どぎまぎする僕に向かって、敬礼しながらこう言った。

「私は西暦3122年から、あなた様を守るために派遣されました」

 夜の公園で、しかも女性を裸にしたまま長話をするのは問題がありすぎるので、僕らは公園からすぐ近くの一軒家の自宅に逃げ込むようにして戻った。途中誰かに見つかるかと心配したけど、幸運にも誰にも見つからなかった…と思いたい。ちなみに、あのサソリロボの残骸は、トワさんが腕時計型の何かをぴぴっと操作すると、地面にぐるぐると渦巻くような黒い何かにずぶずぶと吸い込まれていって、跡形もなく消えてしまった。
 うちの父さんは長期の海外出張中、姉さんは今日は合コンで朝帰りする気満々だったから、しばらく家の中は僕ら2人だけ。とりあえず僕はトワさんを僕の部屋の中に押し込んでから、血だらけのズボンを適当に履き替え、姉さんの部屋に心の中で謝りつつ無断で侵入して、女物の服を適当に拝借した。トワさんよりは小柄な僕の服だと、完璧すぎるプロポーションのトワさんに入らない心配があったからだ。その点、うちの姉は口は悪いが見た目とスタイルはいい。
 もっとも、拝借した服もトワさんは当初は「そんな、畏れ多い」となぜか着ることを固辞していたが、最終的には「ご命令でしたら…」と渋々同意してくれた。そもそも、なんでこの人はこんなにも全裸であることに平然としてられるんだろ。僕、男として見られてないのかな…。
 着替え終わったトワさんには、全裸とはまた違った魅力があった。姉さんの好みの服なので少々派手めで、女性としてのセクシーさをより引き立たせていた。もっとも、腰にはさっきまでのベルトがあり、相変わらずホルスターがぶら下がっていたけど。
 落ち着いたところで、僕はトワさんから今回の事情を何から何まで聞き、そして僕は目の前でちょこんと正座している彼女にそれらを要約して言った。

「つまり、トワさんは1000年先の未来からタイムマシンで僕を守るために来て、あのサソリロボは22世紀初頭の反政府テロリストが僕を殺すために送り込んできた、と」
「はい、その通りです。信じていただけて助かります」

 トワさんがにこっと微笑みながら、正座したまま僕に軽く頭を下げた。
 僕はその笑顔に軽くときめきながら、照れ隠しに頭をかきながら言った。

「そりゃあんなの見せられたら、デタラメだなんて思えないよ…。でも、何で僕を狙って? 僕の子孫が未来で何かするの?」
「いいえ、あなた様自身がです」
「僕がぁ?」

 僕は裏返ったような声で聞き返した。僕が未来に重大な影響を与える何かをする? 平凡極まりない僕が?
 僕自身が何をするか聞いてみたかったんだけど、まず僕はふと思い出したことをトワさんに言った。

「あ、でもそれは言えないんだよね。映画だと未来のことを知るのは問題があるから、って」
「いいえ、問題ございません。あなた様は40歳で日本国首相に就任。65歳の時に地球共和国連合初代大統領に…」
「え、ちょ、ちょっと、僕が首相!?」

 トワさんが、すらすらと僕の『未来』を言っていく。
 僕が総理大臣になるだけでも驚きなのに、その15年後に『地球共和国連合』とやらの大統領? とんでもない出世じゃないか。それも僕が。

「しかし、その時代はあなた様のご威光が人類全体を照らしていなかった不幸な時代でした。連合の世界統一を良しとしなかったテロリストどもが各地で紛争を起こします。21世紀後半から22世紀中期にかけて、反政府勢力との戦いが続きます」
「さっきのロボットはその時代から来た、というわけだね」

 なるほど。テロリストにとっては、敵の大将である僕を守りの薄い今のうちに殺せば…ということか。

「しかしそれも無駄なあがきでした。2140年にはテロリストや共和主義者、フェミニスト等反国家的思想の者どもの掃討が完了し、名実共に地球及び月・火星植民地はあなた様の下に統一されます。あなた様はそれを機に神聖不可侵の太陽系皇帝に就任し、永久独裁政権を樹立。以後1000年近くに渡って人類全体の支配を…」
「え、えっ!? ちょっと待って!」

 話が変な方向に向かったので、確認のため僕はトワさんの未来史講義を中断させた。

「なにか?」
「トワさんの言い方だと、まるで僕が22世紀どころかトワさんの時代まで生きてるってことになるんだけど?」
「はい」

 トワさんは、さも当然のように答えた。

「歴史書や伝記では、あなた様は生まれつき不老不死であり、その弁舌は人々を魅了し、優れた科学技術をもって人類の発展に貢献したとあります。もっとも、あなた様のご誕生は1000年以上前のことですし、地球圏統一戦争によって21世紀以前の歴史が一部不明確になっていますので、多少の誇張や誤りは含まれておりましょうが…。いずれにせよ、現在の…いえ、西暦3122年現在の全人類は独裁者たるあなた様にひれ伏し、支配を望んで受け入れ、あなた様の忠実なしもべとして、身も心も全ての忠誠を誓っています」

 あ、なんか頭がクラクラしてきた…。僕が未来世界の独裁者だって?
 さっきはトワさんを信じるなんて言ったけど、さすがにこれは信じられない。人前で発表するのは苦手だし、理系科目は苦手だし、そもそも不老不死なわけないじゃないか。

「あのさ、トワさん…。その人、僕じゃないんじゃない?」
「いいえ、間違いございません」

 苦笑しながら言った僕に対し、きっと真剣な顔で答えるトワさん。こういう顔も綺麗だな…とつい見とれてしまう、がそうじゃなくて。

「いや、でもさ、僕が世界を支配だなんて、そんなことできるわけないしする気もないし…」
「いいえ、そうなるのです。私はこの『歴史』を守るために未来から派遣されたのですから」

 目は真剣なまま僕に答えるトワさん。使命感に燃えて、という表現がぴったりとくる雰囲気だ。
 トワさんはアニメのタイムパトロールと同じこと言ってるけど、『僕が独裁者になって人類を支配する』未来を守るため、って言われても! 完全に僕が悪役じゃんか。さっきのサソリロボを送り込んだ「テロリスト」にしても、見方を変えれば僕の世界征服に対しての抵抗活動かもしれないし…だからって僕が死にたいわけでもないんだけど。

「いや、でも独裁は良くないよ! 自由と人権と民主主義万歳だよ! トワさんも自由な方がいいでしょう? ね?」
「何をおっしゃいますか。自由も人権も過去の遺物です。人類の全てはあなた様のためにあり、あなた様ために働き、あなた様のために身体を捧げ、あなた様のために死ぬのです。これこそが生きる喜び、生きる全てなのです」

 反論してみたものの、トワさんは受け入れない。どこまで行っても平行線だ。自由と民主主義が正しいとされる時代に生きる僕と、僕による独裁こそが正しい時代に生きるトワさん。お互いに「正しい」と思っていることが全く違いすぎる。でも、未来の僕に何があったんだろう。僕を世界征服に駆り立てる何が。
 それはさて置いて、僕はトワさんに反論した。

「と、とにかく、命を助けてくれたことは感謝してるけど、独裁者にはなる気はないから! 世界征服のために戦争するだなんて、まっぴらだよ!」
「いいえ、世界はあなた様の下で統一されるべきなのです」
「だーかーらー…!」

 と言い合いになっていた時、不意に僕の背後のドアが乱暴に開かれた!

「…ったく、うっさいわねぇ! さっきから何騒いでんのよ!」

 そこには、いらいらとした表情で仁王立ちしている、合コン用の派手目な『勝負服』と本気モードのメイクでばっちりきめた姉さんがいた。完璧に整えて行ったはずのショートの髪がやや乱れているのが、姉さんの苛立ちを表しているようだ。それにしても、帰ってくるのが早すぎるよ。トワさんのこと、どう説明すりゃいいんだ。
 僕は冷や汗をかき、おろおろと女性2人を交互に見回しながら、姉さんに言った。

「ね、姉さん、お帰り…。は、早かったね…」
「医者って言うから気合い入れて行ったらとんだ大ハズレだったわよ! …じゃなくて、あんた、バカ弟のくせにあたしのいないうちに女なんか連れ込んで…」

 その言葉に、トワさんがぴくっと眉を動かしたのは気のせいだろうか。
 構わず姉さんは僕にイライラをぶつけ続ける。たぶん、そうとうハズレの合コンだったんだろう。姉さんのストレス発散の対象に僕がなるのはいつものことだけど、今回は間が悪すぎる。

「ったく、色気だけは一人前のつもりなんだから! おおかた…って、その服、あたしの服じゃない! 何考えてんのよ、このバカ弟!!」

 やっぱり気づかれた…!
 姉さんは僕にずかずかと歩み寄ると、首元をつかんで無理やり引き上げようとした。

「ひいっ…!」

 が、姉さんの手首をトワさんが素早くつかんでそれを阻止していた。
 思わぬことでより気分を害したらしい姉さんが、トワさんを睨みつける。

「…何よあんた」
「陛下に危害を加えることは許しません」

 静かな怒りを込めて、トワさんも負けずに姉さんを睨みつける。
 まずい。売られたケンカは高値でも買うタイプの姉さんにそんなことしたら激突必死だ。結果はどうあれ、この後大変なことになるのは間違いない。
 僕は狼狽しながらも、2人を止めようとなけなしの勇気を動員した。

「ね、姉さん…、トワさんも、や、やめようよ…」
「はあ? へーかぁ? あんた、頭おかしいんじゃない?」
「いいえ、私は正常です」

 ああ、完全に無視されたよ…。

「それに、あんたが着てるのあたしの服よ! さっさと脱ぎなさいよ!」
「脱ぐのは構いませんが、陛下が私に着ろと命ぜられましたので」
「何なのよあんた、さっきから陛下陛下って。ま、バカ弟が連れ込むような女だから、どうせ…」

 姉さんの言葉が不意に途切れる。僕もあっけに取られた。
 なぜなら、姉さんの額にトワさんが銀色の銃のようなものを突きつけていたからだ。いつの間に腰のホルスターから抜いたのか全く見えないほどの速さで。

「ちょ、ちょっと…、なによ、これ…」

 姉さんの声が小刻みに震えている。無理もないけど、こんな脅えたような姉さんを見るのは初めてだ。
 姉さんは自分に言い聞かせるように、トワさんに向かって必死に強気を保って言った。

「ど、どうせオモチャでしょ…。さ、さすがバカ弟の…」
「陛下への度重なる暴言、看過できません」

 トワさんが、今までの温厚さのかけらもない、ぞっとするような冷たい声で言った。
 表情にこそ出してないけどトワさんは本気で怒ってる、と悟った僕は、声を振り絞ってトワさんに叫んだ。

「トワさん、やめてよ! 僕は別に暴言だと思ってないから!」
「いくら陛下の姉君であっても、不敬罪に値します。よって『調整』します」

 そう言うなり、トワさんは迷わず銃の引き金を引いた。
 あっ、と声を上げる間もなく、姉さんの頭部を緑色の光線が貫いた。
 僕はどうすることもできなかった。ただ呆然と、

「トワさん…、なんてことを…」

 とつぶやくことだけしかできなかった。
 が、よく見ると、不思議なことに撃たれたはずの姉さんは、ずっと立ち尽くしたまま。血が飛び散ることもなく、全くの無傷だ。
 なるほど、SF映画の光線銃によくある『殺傷モード』と『気絶モード』の切り替えができるようになっているのかな。僕はその時はそう思った。
 しかし、何か様子がおかしかった。姉さんの目はうつろで、口も力なくぽかんと開いている。立ってはいるものの、腕はぶらんと垂れ下がっているだけ。
 そんな姉さんにトワさんが近づいていくと、耳元で何事か優しくささやきだした。

「私の声が聞こえますか…?」
「………はい、きこえます…」

 先程までの険悪なムードは一切なく、姉さんはトワさんの言うことに素直に答えている。でも、目がうつろな状態なので何となく様子が変だが、さっきのショック覚めやらぬ僕は、トワさんの行動をただ見守るだけだった。

「あなたの名前は…?」
「………沙耶香といいます…」
「では沙耶香。あなたは陛下、いえ、弟君のことを嫌っているのですか…?」
「………いいえ。家族ですから、嫌いではありません…」
「ではなぜ、あのような態度を…?」
「………好きだ、ってことを態度に出すのが恥ずかしくて、照れくさくて、つい意地悪を…。本当は、弟のことが大好きです…」

 姉さんの思いがけない言葉に、僕はどきっとさせられた。嫌われているわけじゃない、とは思っていたけど、『本当は大好き』って言われたら悪い気はしない。
 さらにトワさんは姉さんの背後に回り、後ろから軽く抱きしめるようにして、さらに優しく声をかけていく。

「そう。でも本当に大好きな人ならば、隠す必要はありませんね。態度を改めましょう…」
「………はい」

 …あれ?

「これからは、あなたの大好きなあのお方は、あなたの『ご主人様』です。『ご主人様』に仕え、『ご主人様』のために奉仕することが、あなたの幸せであり、あなたの全てです。『ご主人様』にいただける物は何であれ、あなたにとって至高の物です…」
「………だいすき…ごしゅじんさま…ほうし…しあわせ…」

 え、ええ? ちょ、ちょっと!?
 姉さんも、なに幸せそうに顔を赤らめてるの!?

「さあ、ご主人様にお詫びをしましょう。あなたがその身をとてもいやらしく差し出して、ご主人様に抱いていただければ、あなたの大好きなご主人様はきっと許してくれますよ…」
「………ごしゅじんさま…いやらしく…だいて…ゆるしてくれる…」
「でも、抱いていただけなければ、あなたは不要ということです。あなたは生きる価値を全て否定されたも同然です。死に等しい絶望感をあなたは味わいます…」
「………いや…いや…ごしゅじんさまぁ…」

 姉さんは号泣しそうな顔で、必死に首を振って悪い想像を振り払おうとしているように見える。
 さすがにやってることが変だと思い、僕はトワさんを止めようと一声かけた。

「トワさん、ちょっと何やってるの? 姉さんの様子が変だよ…!」
「だから、ご主人様に愛されるよう全身全霊を込めて奉仕しましょう…」
「………はい、ほうしします…」
「さああなたは『正気』に戻りますよ。しかし、今私が言ったことは決して忘れてはいけません。では私が手を叩いたら、あなたは『ご主人様』の忠実な『奴隷』になります。はい!」

 トワさんがパン!と手を叩くと、姉さんがはっと我に返った。瞳には光が戻り、緩んでいた口元もまた結ばれた。しかし、次の瞬間、

「ご主人様! 申し訳ございませんでした! 暴言を吐いたばかりか、手までかけようと…。どうか、どうかお許しください!」

 姉さんは僕の足元で土下座して、泣きそうな声で叫んでいた。あのわがままで傍若無人で、僕のことを散々いじめていた姉の姿はどこにもなく、雨に濡れた捨て犬のようにじっと僕の目を見つめている弱々しい『奴隷』がそこにいた。
 姉さんのあまりの豹変振りに、僕はただただ驚くばかりだ。

「ねねね姉さんっ!? そんな、土下座なんてやめてよ!」
「そんな、私はもう姉ではありません。ご主人様の奴隷です! 犬です! どうか沙耶香と呼び捨てに…、いいえ、メスブタと罵っていただいても…!」
「ちょ、ちょっとトワさん! 姉さんに何したの!?」

 救いを求めるように僕に必死にすがりついてくる姉さんに対処しながら、僕はトワさんに向かって問いただした。
 しかし、当のトワさんは涼しい顔で、

「あなた様に対し不敬な言動がありましたので、忠実な奴隷として『調整』しただけです。この『洗脳銃』を使えば造作もないことですので」

 と、銃を持ち上げながら当たり前のように言ってのけた。あの銃にはそんな機能があったのか!

「そんな! 僕の姉さんになんてことを!」
「血縁者でありましょうが、あなた様以外の人間は全て奴隷も同然。全ての女は生まれた瞬間から、あなた様の肉奴隷として、精液便所として、あなた様のおチンポから射精していただくために生きているのです。射精していただく価値のない女なぞ、生きる資格はありません」

 トワさんの綺麗な口から、とても淫猥で残酷な言葉が発せられる。この一言で、僕が作ったという未来社会がどんなことになっているのか、何となく想像がついた。自由も何もない、地球、いや太陽系規模の僕のためのハーレム。それもちょっといいな…じゃなくて良くない!

「ああ…、ご主人様ぁ…。私を抱いて、抱いてください…」

 気がつくと、姉さんが床であられもない格好をして僕を『誘って』いた。びしっと決めた勝負服は脱ぎ去られ、たぶん勝負下着だったんだろう黒のレースのブラジャーとパンティ、それにガーターベルト姿で、大きく股を開いていた。ブラジャーは全体が上にたくし上げられ、トワさんに負けないほど大きく柔らかなおっぱいが丸見えになっていた。両手はあそこに添えられ、片手で黒のパンティをずらし、もう片方の手でくちゃくちゃとあそこをいじっている。
 正直、僕も男だから、こんな痴態を見せられたら生唾を思わず飲み込んでしまう。
 さらに姉さんは涙目で、僕に懇願する。

「ご主人様ぁ…。卑しい奴隷の沙耶香を、どうかお許しください…。ご主人様に抱いていただけなければ、私は生きていけません…」
「い、いや、姉さん、ほら、僕たち姉弟だしさ…」

 僕は思わず出た常識論で姉さんの説得を試みたが、トワさんが話に割って入った。

「近親相姦は、21世紀末にテロリスト集落の手っ取り早い人口増産手段として利用されたのを機会に、23世紀以降は遺伝子治療の発達もあって問題視されなくなっています」
「未来では良くても今はだめなの!」
「それに、西暦3000年代には『製造された遺伝子(デザイナーズジーン)』でゼロから新たに生産された女以外の全ての者は、何かしらあなた様の遺伝子を保持しています」
「…へ?」
「25世紀に、成人の通過儀礼として容姿試験をパスした全ての女は、あなた様に処女を捧げることが義務化されました。その際に平均63%が懐妊し、その子や孫も処女を捧げに宮殿に参内することがままあるので、もはや近親相姦の善悪を語ること自体が無意味です」

 めちゃくちゃだよ、未来の僕! もう泣きたくなってきた…。

「さて、この女はどうされますか? 不要でしたら未来に送り返して母乳プラントなり奴隷製造用の子宮として、あなた様のお役に立てることもできますが…」

 トワさんが床に寝たままの姉さんを指差して、やはり当然のようにさらっと言うが、言葉の響きからしてどう考えても非人道的な扱いを受けるのであろう。僕は慌てて首を横に全力で振って叫んだ。

「だめだめだめだめ! 僕の姉さんなんだから!」
「ですが、このまま放置すれば、沙耶香は死にも等しい苦しみを受けますよ。ただの奴隷の一人ですから、私は構いませんが…」
「僕は構うの!」
「それに、あなた様自身が我慢できますか?」

 えっ?と問い返そうとしたその瞬間、下腹部にズキンと痛みが、それも心地よい痛みが走った。それと同時に、体が燃えるように熱くほてりだす。体中に力がみなぎり、そして僕のある一点…ペニスが、ズボンを突き破りそうな勢いで硬く熱く勃起していた。こんなの、今までなかったぞ! 全裸のトワさんを見て思わず興奮した時とはわけが違う。
 僕の心が体の異変に戸惑っていると、体の方が欲求を訴えてくるのを感じた。女を、犯したい。このペニスを、肉穴に入れて射精したい。女の身体を隅から隅まで蹂躙して、白く染め上げたい。次々と沸き起こってくる性欲の奔流に、僕の心は押し流されそうになりながらも必死でそれを押さえ込んだ。
 でも、押さえ込むだけで精一杯だ。

「活性化された体細胞が、そろそろ欲望のはけ口を求める頃だと思いました。ご安心ください、正常な反応です」
「…これが…、正常…だって…?」
「はい、精嚢と言えども体細胞の一つ。ナノマシンで活性化した精嚢は今までの10倍以上の射精量と回復力をあなた様に提供いたします。どうぞ、お楽しみください」

 脂汗をかきながら呼吸も荒くトワさんに聞く僕に対し、トワさんは嬉しそうに微笑んで言った。彼女にしてみれば、僕のためになることだと言いたいのだろう。
 トワさんはそんな僕にすっと近づくと、

「さあ、こんなお召し物は脱ぎ捨てて…。我慢してもお辛いだけですよ?」

 手早くズボンのベルトを外し、パンツごとズボンを引き下ろした…!
 当然2人の視線に、僕のいつも以上に硬く大きくなったペニスがさらされる。

「ああ…、ご主人様の、おちんちん…、おチンポぉ…」
「ふふっ、さすがは陛下。ご立派でいらっしゃる」

 姉さんが欲情に潤んだ目を輝かせ、トワさんも目を細めて微笑む。
 ああ、見られちゃった…。毛が生えてからは姉さんにも見られたことないのに…服の上から踏まれたことはあるけど。でもなぜか、恥ずかしいという気持ちは全くない。むしろ、『女』に見せつけて褒め称えられた満足感すらある。
 トワさんは、着ていた姉さんの服をするすると脱ぐと、また全裸の姿に戻った。もう見慣れた…と言っても、僕の理想の顔つきと抜群のプロポーションなのだから、つい目が行ってしまう。僕はもう、恥ずかしがって彼女から視線をそらすことができなくなっていた。むしろもっと見たい。
 さらにトワさんは、床に寝ていた姉さんを伴って僕の足元にひざまずくと、

「さあ、沙耶香。一緒にご奉仕いたしましょう。体全部を使って…」
「はい…、ご主人様に、奉仕します…。おチンポに、ご奉仕…」

 見るからに幸せすぎて夢うつつの姉さんと一緒に僕のペニスに顔を近づけていった。
 そして………、

「…ちゅっ」

 2人同時に、両側から僕のペニスの先端に口付けした。それだけで今までに感じたことのない快感が僕の体の中を電流のように走り、思わず射精してしまいそうになる。

「うふふっ、気持ちよかったですか、陛下?」
「ご主人様ぁ…」
「う、うん…、いっちゃいそうだった…」

 今ので僕の心の防壁が決壊したようだ。もう僕は、この2人といやらしいことがしたくてたまらなくなっていた。もっともっとと言いたいかのように、僕のペニスはぴくぴくと跳ねる。
 それに答えるように、さらにトワさんと姉さんは、僕のペニスにキスの雨を降らせ、ぺちゃぺちゃと音を立てて舐め始めた。きたない場所のはずなのに、むしろそうすることが嬉しくてたまらないという感じで、特に姉さんは熱心に僕に『奉仕』していた。ペニスから伝わってくる刺激と、あの姉さんを目下に見ている征服感が、より僕にぞくぞくとした快感を与える。
 僕は2人にされるがままに、快感をむさぼった。

「んちゅっ、んんっ、はぁっ、ご主人様ぁ…。ちゅっ…、んふっ…」
「じゅるっ…、んんふっ…。ああ、陛下の睾丸を口に含めるなんて、身に余る光栄です…。ちゅるっ、んっ、んんっ…」
「す、すごいよトワさん…。そんなとこ舐めるなんて…。ああっ、姉さんも、そこっ、ぺろぺろって、気持ちいいよ…。もっとして、もっと…」

 とろけたような僕の言葉を聞いたトワさんが、一旦僕の睾丸から口を離して、名残惜しそうな僕の顔を見てくすりと笑ってから言った。

「ふふ、それでこそ我らの陛下。では、このような趣向はいかがでしょうか…?」

 トワさんが姉さんに視線を送ると、アイコンタクトだけで理解できたのか、2人は僕をベッドに腰掛けさせるよう誘導した。そして2人とも膝立ちになって、たわわなおっぱいを両手で持ち上げると…僕のペニスをそれで挟み込んだ。計4つのマシュマロが、僕の棒を優しくもきっちりと包み込む。

「うあ…!」
「ああ…、ご主人様のおチンポぉ…、熱ぅい…」
「では、私どものパイズリをお楽しみください」

 そう言うと、トワさんはもにゅもにゅと柔らかな胸を上下に動かして、僕のペニスをこすり上げ始めた。姉さんもやや遅れて、それに続く。
 あまりの気持ちよさに、僕は思わず声をあげてしまう。

「すっ、すごいよっ…! こんな気持ちいいの、はじめて…っ!」
「女の体の全てはあなた様を悦ばせるための物。どうぞお好きなようにお楽しみください。これからも、ずっと…」
「ぜんぶ…、ぼくのもの…? ああっ、出ちゃう、出ちゃいそう…!」

 もっとこのパイズリを楽しみたかったけど、さっきからの刺激につぐ刺激で、僕はもう射精をこらえきれなくなっていた。このままだと2人の顔を汚してしまいそうなので、よけてもらうよう僕は目線で訴えた。
 が、

「うふふっ、お気になさらず、私たちにかけてください」
「えっ…、でも…ううっ…!」
「ご主人様の、精液…ほしいですっ…! ああっ、くださいっ、かけてっ、かけてっ!」

 トワさんはそれを拒絶せず、姉さんに至っては必死で願っていた。
 そして確実に顔にかかるようにさらにペニスに顔を寄せてきた。トワさんの端正な顔も、姉さんの欲情に緩んだ顔も。
 ああ、そんなことされたら、もう、もう…。

「ああっ、もう出る、出る出る、出るーー!」

 僕は吼えるように叫ぶと、堰き止めていたものを一気に開放した。
 ぴゅっ、ではなく、どぷっ!どばっ!という勢いで、僕の先端から精液が放出される。それはたちまち2人の顔に降り注ぎ、白く汚していく。それも、出すぎじゃないかという量が、後から後からどんどん出てくる。勢いよくあふれ出した精液が、顔だけじゃなく髪や胸も汚していった…。
 奔流が止まると、2人は僕のペニスからおっぱいを離した。顔どころか、顔や胸から垂れた僕の精液が、体や腿を汚している。しかしトワさんは満足そうに、姉さんは両手を頬に当ててうっとりしながら、

「陛下のお元気な精液をいただけて、光栄です…」
「ふあああ…っ、ご主人様の、精液がぁ…! 嬉しいですっ! くさくて、おいしい精液を、こんなに…!」

 口元の精液をぺろりと舌で拭うだけに飽き足らず、体のあちこちから指で掻き取ってはぴちゃぴちゃと舐めしゃぶったり、

「うふふっ…、おいしいですよ。沙耶香のほっぺたの、陛下の精液…。ちゅっ…じゅるっ…」
「はあっ、ぴちゅっ…、欲しいです、もっと…、ご主人様の精液…」

 やがてお互いの顔に残っている精液を、猫がじゃれあうように舐めあい始めた。しまいには口の中にある精液を求めて、女同士で舌を絡めあうディープキスまで…。身を寄せ合い、抱き合った腰を官能的にくねらせて、お互いを求め合う2人。
 そのあまりのいやらしい光景に、僕はまた股間が熱くたぎってしまった。そういえば、回復力も10倍以上になったんだっけ…。
 レズビアンショーを僕に散々見せ付けていたトワさんは、復活した僕のペニスに気がつくと、姉さんから唇と舌を離して言った。

「さあ陛下、まだ物足りませんよね?」
「う、うん…」
「これまでは単なる前菜。メインディッシュをお出しいたしましょう」

 その言葉が意味することを僕は想像して、ごくりと唾を飲み込んだ。

「沙耶香、ベッドの上で横になって、あなたのご主人様をお迎えする準備をなさい。おまんこを良く濡らしておくのですよ?」
「…は、はいっ!」

 トワさんの情熱的なキスにあてられたのか、どことなくぼーっとしていた姉さんが、その言葉に喜色満面の表情を浮かべて、大急ぎでベッドに飛び乗ってくる。
 姉さんは仰向けになって僕の枕に頭を落とすと、両脚を持ち上げていそいそと黒のパンティを脱ぎ捨てた。べちょっ、とした風に床に落ちたことから、既にびしょびしょになっていることがうかがえた。

「はいっ、もう先程から、ご主人様の精液の匂いを嗅いだだけで私のおまんこは濡れ濡れです! いつでもご主人様のおチンポをぶち込んでいただけます! ご主人様、お好きなように私を犯してくださいっ!」

 膝の裏に両手を添え、足をM字を書くように大胆に開いて、ぷっくりとしたあそこもお尻の穴も僕に全てを見せる姉さん。あそこの毛が綺麗に整えられているのも丸見えだ。それにしても、全裸もいいけど、ガーターベルトとストッキングだけ身に着けているのも、なんかいいな。
 僕の心は、姉さんを犯したくてたまらなかった。自然と呼吸がはぁはぁと荒くなっていく。美人で、スタイルが良くて、性格も良くなった女が、僕を誘っている。こんな状況で我慢できるわけないじゃないか。
 僕はベッドの上を膝立ちで、姉さんに歩み寄っていった。不意にトワさんがすっと僕の後ろに回り、ぴったりと僕の背中に身を付けた。柔らかなおっぱいの感触と、意外と冷たい体温が感じられた。
 トワさんは背後から両手を僕の前に回すと、僕の肉棒をしごきつつ、もう片手で睾丸をもにゅもにゅと優しく揉みながら、僕の耳元にささやきかけた。

「…陛下、女性の経験はおありですか?」
「い、いや、その…、はじめて…」

 僕はさすがに恥ずかしくなって、少しうつむいた。

「ご安心ください。陛下のおチンポはこの世で最高の物です。これを突き入れられて悦ばない女は存在しません。自信をお持ちください」
「あ、ありがとう…」

 変な激励を受けて、僕は姉さんのすぐ近くまでやってきた。あと少しで体と体が、あそことあそこが触れ合う至近距離。姉さんの濡れたピンク色のあそこは、僕を受け入れようとひくひくと息づいていた。

「姉さん、入ってもいい…?」
「ああ、ご主人様…! 奴隷の沙耶香をメチャクチャに犯してくださいっ! そのおチンポで、何回でも! おまんこも、お尻の穴も壊しても構いませんから…」

 僕は緊張から、ややおっかなびっくりに姉さんに伺いを立てると、姉さんはこの上ない笑顔で答えてくれた。こんな笑顔、見たことない。言ってることはめちゃくちゃだけど。
 僕は、背中のトワさんに誘導されるように、ゆっくりと腰を姉さんに近づけていった。姿勢が姉さんに覆いかぶさるようになったので、姉さんを潰さないように両腕で僕自身の体重を支えさせる。トワさんは後ろから、僕のペニスがちゃんと姉さんに入るように細い指で狙いをつけてくれている。
 姉さんの期待と欲情に満ちた視線が僕と交差する。

「姉さん、いくよ…!」

 その声を合図に、僕は姉さんの中に腰を落としこんだ。

「ふああああ、ああ、あああっ…!」

 姉さんが甘い悲鳴を上げるのと同時に、僕のペニスに何かを突き破ったような感触が感じられた。まさか、これって…。
 僕は挿入を一旦止めて、姉さんに聞く。

「姉さん、もしかして…」
「…ああっ、あっ…、ご主人様、処女は、お嫌いですか…?」
「いや嫌いとかそうじゃなくて、姉さん、初めてなんだなって。意外と…」
「今までその機会がなかったんですが、よかった…ご主人様に処女を捧げられて…」

 痛みのせいか感激のせいか、涙ぐみながらけなげなことを言う姉さん。あう、トワさんの洗脳のせいとはいえ、こんなこと言われるとついついときめいちゃうじゃないか。
 今まで処女を捨てられなかったのは、たぶんあの性格のせいだろうな。

「それよりも、痛くないの?」
「ああこんな奴隷なんかにお気遣い、ありがとうございます…! 痛いのも、気持ちいいのも、すべて、ご主人様にいただける物全てが嬉しいんです。だから、もっと痛くしてください、ご主人様が気持ちよくなってください」

 嬉しいことを言ってくれる姉さんに甘えて、僕は再び腰を動かした。今度は遠慮なく、強く突きこむ。

「ああああーーーっ! ご主人様がっ、中にぃっ!」

 この上なく嬉しそうに叫ぶ姉さん。あの姉さんが僕の思い通りになることが楽しくて、僕は腰の動きをどんどんと早めていった。ギシギシとベッドがきしみ、それに合わせて姉さんが叫び、悦びの声を上げる。

「あっ、ああっ、あっ、あふんっ!」
「あははっ、姉さん、さっきまで処女だったのに、もうそんな声出しちゃって」
「あはんっ、は、はいぃっ、私はっ、ご主人様の淫乱メス奴隷、ですっ! だからっ、ご主人様におチンポっ、おチンポ入れていただけて嬉しいです…っ! ああああん!」

 それにしても、姉さんの中は暖かくてきつくてとても気持ちがいい。たぶん、トワさんの中も。そして、他の女の人の中も…。そう考えると、僕の中にその方向の好奇心が沸いてくるのを感じる。
 でも、今は姉さんだけに集中しなきゃ。余計なこと考えるのはもったいない。

「姉さんっ、いいよ…。姉さんの中、すごく気持ちいい…」
「ああ、私なんかで気持ちよくなって、あんっ、いただけて、光栄ですっ…! もっと、奴隷まんこで気持ちよくなってください…!」
「ああっ、すごいよ、ここ。うねうねって僕にからみつくようで…」
「あっ、ああああん、あはあっ! ご主人様、ごしゅじんさまぁっ!」

 ご主人様、って持ち上げられるのもすごく気分がいい。ましてや、あの僕を何かといじめ続けた姉さんから言われるのは格別だ。未来の僕が世界支配に走ったのも、何となくわかるような気がする。人を支配するのって、楽しいかも。
 そんなことを考えながら散々姉さんを突き上げ、犯し、悦ばせているうちに、また僕の下半身にこみ上げてくるものを感じた。これが早いのか遅いのかはわからないけど、少なくとも今の姉さんがそれをなじることはおそらくないから安心だ。
 とりあえず僕は、姉さんにそれを告げることにした。

「姉さん、そろそろ出しちゃうよ」
「いいっ、あんっ、ごしゅじんさまの、せいえき、中にっ! 中に、出してください! おまんこの中に、たくさん、たくさんっ! あはぁっ!」

 気持ちよくなりすぎたのか、欲情でだらけきった顔をしている姉さんが、僕に媚びるように射精をねだる。
 そうこうしているうちに、僕の方も限界が近づいてきた。思わず声が漏れる。

「あっ、出るよっ。出そう…」
「あっ、あっ、あっ、ああっ、ごしゅじんさま、ご主人様っ!」
「ああ出る、出る、出る出る出るぅ!」

 そして、さっきに負けない勢いで、僕の尿道を精液が怒涛のように駆け上り、姉さんの子宮めがけてびくっ、びしゅっと盛大に発射された。
 それを感じたのか、姉さんもぶるぶると身を震わせて、

「あああっ! ご主人様の精液が! 出てる、中に出てるぅ! いくっ、いっちゃいます! 奴隷まんこに中出しされて、いっちゃう、いっちゃううう!」

 今まで以上に大きな甘い叫び声を上げると、びくびくと痙攣しながら、やがて満足したかのように目を閉じて体から力を抜いていった。

「はぁっ、はあっ…、せ、セックスって、すごい…」

 力が抜けた僕は、後ろに尻餅をつくようにして、姉さんからペニスを引き抜いた。血が混じってピンク色に染まった精液がどろりとまとわり付いていて、グロテスクでもありエロチックでもあった。そして、僕という栓を失った姉さんのあそこからは、大量に出されて収まりきらなかった僕の精液が、ごぽっ、ごぽっと溢れ出してきていた。

「いかがでしたか…? 初めての女の味は…」

 トワさんが僕の背中から抱きしめるようにして、耳元に甘く話しかけてくる。
 あまりの快感にショートしかかってる僕は、大胆なことを口走っていた。

「すごかった…。でも、もっとしたいな。今度はトワさんと…」
「ふふふっ、お命じのままに。陛下のおチンポも、まだ満足なさっておりませんから」

 指摘されて股間を見下ろすと、僕のペニスはまだ硬く立ったままだった。僕の息子も同感らしい。
 トワさんは、弛緩しきっている姉さんの上に覆いかぶさると、ぴったりと体を合わせた。まるで二枚貝が合わさるように、あそことあそこがくっつきあっている。今まで見たことのないいやらしい光景に、僕は思わずそこを凝視し、ペニスがぴくりと反応する。
 トワさんは僕の方を振り返ると、

「さあ、私のおまんこでもお尻の穴でも、お好きなようにお使いください…」

 と軽くお尻を振って僕を誘う。
 そこまで言われたらもう我慢なんてできない。僕はさかった犬のようにトワさんに近づくと、彼女のきゅっとしたお尻を持って、遠慮なくトワさんのあそこにペニスを差し込んでいった…。

< つづく >

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