第46話「お尻まで愛して」
情事の後の火照った体を冷ますように、俺たちはベッドの中でまどろんでいた。横では、薄い布団に身を包んだショートカットの彼女、亜季が目を閉じて横になっている。地肌に直に接している布の稜線は、亜季の自慢のボディラインをあらわにしていた。
俺は、愛しい彼女に身を寄せていった。ぴたりと肌を合わせ、亜季が嫌がらないのを見ると、俺は体を横にしてシーツの中から彼女の胸に手を伸ばしていった。
柔らかな胸の感触を楽しみつつ、亜季の耳元でささやく。
「なあ、もう一回…」
「もう、またしたくなっちゃったの…?」
口調は呆れていたが、彼女もまんざらではなさそうだ。何しろ、夜はまだまだこれからだ。
すると、不意に俺の下半身に彼女のひんやりとした手の感触があった。その手が目的のものを探り当てると、軽い快感に俺は軽く身を震わせた。
「まったく…、もうこんなに硬くしちゃって…」
「いいだろ? まだ1回しかしてないんだから。1週間もお預けくらって、これっきりってことはないだろ?」
俺と彼女のスケジュールの都合上、会えるのは週末だけ。だから土曜の夜は溜まった物を吐き出すかのように二人とも朝まで燃え上がるのが常だ。
そして、俺はその日常に新たなスパイスを効かせようと思っていた。
「もう、仕方ないわね…。今度は私が上? それとも…」
「いやさ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なに?」
「前から思ってたんだけど、一度でいいからさ、お尻でさせてくれよ」
その瞬間、甘ったるい空気が一瞬にして凍りついたが、情欲に負けてテンションの高かった俺はそれに気づかなかった。
「…ちょっと、本気?」
今にして思えば、どうしてこの時の亜季の表情に気がつかなかったのだろう。大抵のことは許してくれた、ナースのコスプレだって渋々やってくれた亜季の、あの露骨に嫌そうな表情を。
「うんうん、本気も本気。だってお前、尻の方でしたことないだろ?」
「当たり前じゃない! そんなとこでするわけないでしょ!」
「だからさ、俺も興味あったんだよ。な、いいだろ? 新しい快感に目覚めるかもしんないしさ…」
俺は嫌がる亜季の裸身に身を摺り寄せ、熱くたぎった肉棒を彼女の臀部にこすりあてた。
「ちょ、ちょっとやめてよ! やめてったらぁ!」
「いいだろ、な、な。口ではそう言ってても…」
今までだって何だかんだ言って俺の好きなようにさせてくれたんだから、今度だって…。
その思い上がりが、命取りだった。
「ふざけんじゃないわよ、このバカーーー!!」
「…で、ほっぺに痣ができるほど引っぱたかれた、ということですの?」
「うん、まあそう」
俺は日中の公園のベンチで、事情聴取を受けていた。だが、相手は警官ではない。どう見ても小学生ぐらいの、おまけにピンク色のひらひらしたコスチュームに身を包んだ、ご丁寧に謎の猫型生物を肩に乗せた、自称魔法少女だった。
亜季が怒り狂ってホテルからずかずか出て行くのをただ見送るしかなかった俺は、翌日、公園でぼんやりと愚行を悔やんでいた。そこへ突如として現れたのがこの子。
「お兄さん、悩み事があるんですの? だったら、このヒプノが解決してあげますの!」
と言って現れたヒプノちゃんとかいう魔法少女に、俺は昨晩の出来事をいっさいがっさい喋らされた。子供相手に聞かせられる内容でもないはずなのだが、ヒプノちゃんが左右に揺らす五円玉のようなペンダントを見ているうちに、段々と話したくなってしまったのだ。その卑猥な内容を、少女は平然とメモ帳らしきものにかりかりと記述していっている。
「えーっと、つまり、お兄さんの悩み事は、彼女さんとお尻の穴でエッチなことがしたい、ということでいいですの?」
「い、いやまあそうなんだけどさ…」
こうも子供にあけすけに言われてしまうと、こっちが恥ずかしい。誰かに聞かれたら、警察沙汰間違いなしだ。俺はきょろきょろと周囲を確認し、今の言葉を誰も聞いていなかった事を確認すると、心の中で胸を撫で下ろした。
「それに仲直りもしたいよ。あいつ、むちゃくちゃ怒ってたから。携帯に電話入れてもメール入れても返事すらしてくんないんだ」
「わっかりましたの! 彼女さんとお尻の穴でエッチして、今まで以上に仲良しさんになれればいいんですの!?」
「だーかーらー大きな声でそんなこと言わないでくれって、頼むから…!」
俺は慌てて少女の口を手で押さえた。さすがのこの子も、黙ってうなずいていた。
ヒプノちゃんが俺の言う事、大声で喋らないことの方、を聞いてくれたことを確認すると、俺は少女の口元から手を離した。こんなとこ目撃されたら、通報されかねないからな。
「…ぷはあ。では、彼女さんに魔法をかけに行ってくるですの~! 果報は寝て待て、ですの~!」
ヒプノちゃんはそう言うなり、公園の外へと駆け出していった。あっけにとられる俺をほっといて。
亜季の居場所がわかってるのか、亜季の人相とか全然言ってないのに魔法かけられるのか、そもそも魔法なんてあるのかなどなど、様々な疑問がわいたが、子供の言うことなので気にしないことにした。
俺は軽くため息をついて、空を見上げ、つぶやいた。
「そんなに尻でされるの、嫌かなぁ…」
その夜、俺はもう一度亜季の携帯に電話を入れた。数回のコール音の後、やっとつながった。
俺は神妙な気持ちになって、話を切り出した。
「もしもし、あの…今、いいかな」
『う、うん…』
「そのさ、昨日はごめん。調子に乗りすぎた…」
『あ、その、あたしも、ちょっとやりすぎたかな…って』
いやにしおらしい。これもあの魔法少女のおかげだろうか。まさかね。
「でさ、また土曜日に会えるかな。あ、いや、忙しいとかならいいんだ」
『んっ、んんっ、大丈夫…っ。土曜は、空いてるから…っ』
何か、妙にくぐもったような声に感じたのは気のせいだろうか。
「? お前さ、何か声変じゃないか?」
『えっ、えっ、そうかな、そそ、そんなことないよ』
「病気なら早めに寝た方がいいぞ」
『う、うん…っ、ありがとう…、そうするね。じゃ、あたし、もういくね…っ』
「ああ、じゃあな。また土曜日に」
俺は終話ボタンを押して通話を切った。
どことなく様子がおかしかったような気もするが、何はともあれ別れ話にならなくて良かったと思う。俺は大きく息を吐いて安堵した。
土曜の昼。いつもの待ち合わせ場所、いつもの待ち合わせ時間。
いつもと違うのは、珍しく亜季が遅れていて、俺の方が待っていること。さすがにあの気まずい出来事の後で遅刻するのはまずいと早めに着くようにしたんだが、あの時間にうるさい亜季が遅刻とはねぇ…。何かあった、というよりやっぱり機嫌を損ねて会いたくなくなった、とかそういうんじゃないだろうな。俺は最悪の事態を想定してしまって、思わず身震いした。
さすがにちょっとおかしいなと思い、連絡つけようと携帯電話を手に取ったその時、
「ごめんね、遅くなっちゃって…」
やっと亜季が来たようだ。
「珍しいな、亜季が遅れるなんて」
「う、うん。ちょっと準備に手間取っちゃって…」
そういう亜季の様子は、どこかおかしかった。動きやすいズボンルックを好んでいた彼女が、今日に限ってどういう風の吹き回しか膝丈のスカートをはいているのはともかく、顔は上気して真っ赤で、どう見ても熱っぽそうだ。視線もあまり定まっておらず、ふわふわと漂っているような印象がある。額にはうっすらと汗もかいているようだが、この様子だと急いで走ってきたから、という訳ではなさそうだ。
心配になった俺は、亜季に呼びかけた。
「おい、亜季。お前、熱あるんじゃないか?」
「ううん、違うの…。熱があるんじゃなくて…」
「病気なら無理して来なくてもいいんだぞ。そうだ。何なら、今から帰って俺が看病ってのはどうだ? 前に風邪引いて看病してもらった時のおかえしで、な?」
冗談めかして俺が提案すると、亜季は急に俺の方にふらりと倒れこんできた。
慌てて、抱きとめる。
「お、おいっ。ほんとに大丈夫か!?」
「ねえ…、お願い…」
熱っぽい頬と、潤んだ瞳で俺を見上げる亜季。その表情が、いつになく色っぽい…って、何考えてるんだ、こんな時に俺は。
しかし、その尋常でない甘いオーラに、俺は圧倒されるように答えた。
「…な、なに?」
「ホテル…、行きましょ? お願ぁい…」
「ホ、ホテル!? 今から!?」
俺は持ち前のエロ知識を総動員して、そう遠くない場所のラブホテルを確保した。そこに向かっている最中に、亜季は歩くのもしんどそうなぐらいにふらふらになってしまっていたので、家まで連れて帰るよりも正解だったかもしれない。
ちょっとでも気を抜くと倒れてしまいそうな亜季の肩を支えつつ、俺は適当に取った部屋のドアを開けた。
「ほら、とりあえずベッドに寝るんだ」
「んんふぅんっ、ありがとぉ~」
もはやろれつが回らない状態になっている。熱でここまでなるか? それに、亜季から発せられるどことなくエロチックな雰囲気はいったい…。非常事態なのに、何で俺こんなことばっかり考えてるんだろ。せっかくの再会で今日まで禁欲生活を送ってたせいか?
亜季は俺の手を離れると、ふらふらとした足取りでベッドに向かって歩き出し…、腰の部分で折れ曲がるように、ベッドに頭から突っ込んだ。
「お、おい、ほんと大丈夫か!?」
「も、もう、だめへぇぇ~…」
「亜季、どうしたんだ!? 吐きそうなのか、それとも何だ!」
「出る、出りゅうぅぅ~! 見てぇ、出ちゃうとこ見てぇぇ~!!」
そう言うなり、亜季はその姿勢のまま両手でスカートをたくし上げ始めた。あまりのことに俺が制止できずに成り行きを見守っていると、亜季はスカートを完全に上げ切ってしまい、彼女の臀部を、それも何も身に着けていない生尻をあらわにしてしまった。
そして、パンティのない代わりに、俺のナニぐらいの太さのディルドーがゆっくりと、振動しながらながらぬるりと肛門からひり出されていき、床にゴトンと落ちた。
「・・・・・・」
「あはぁ~…、出ちゃったぁ~。しあわせぇ~…」
床でブルブルと震え続ける太いディルドーを前に、あまりのことに口をぱくぱくさせて声も出ない俺とは対照的に、彼女は実に幸せそうによだれをたらしながら余韻に浸っていた…。
「…事情を説明してくれないか、亜季」
「うん。先週、あなたをぶって帰った後…ううんっ、次の日、家で、あんっ」
「頼むから、尻の穴をいじりながら喋るのはやめてくれ…」
俺は隙あらばアナルオナニーを敢行しようとする亜季の腕を取りながら、ベッドの縁の彼女の横に座った。亜季は一瞬ふくれっ面を見せたが、すぐに話の続きを始めた。
「次の日、どうしてだかわかんないけど、あなたがあれほどまで言うならお尻ってどんな感覚なのかな…って、指で試してみたの」
「…そしたら見事にはまった、と?」
「そうなの! 何でこんな気持ちいいこと拒んじゃったんだろうって! あなたから電話かかってきた時も指でぐりぐりーってしながら話してたら、もっと気持ちよくなっちゃって~」
…なんでそんなに生き生きと猥談を、恋人とはいえ男の前で喋れるんだ、亜季よ。
しかし、これであの時の違和感の謎が解けた。少なくとも、亜季はテレフォンセックスにはまるような女じゃなかった。ということは…やっぱり魔法のせい? 魔法ってすごいな。
亜季に「小さな女の子が来てなかったか」と聞いてみたい気もするが、下手に聞いて俺のせいだとばれるのも嫌なので、ここは黙っておくことにした。
「それで、アダルトショップとか通販とかでお尻用のバイブレータとかローションとかいっぱい買い込んで、暇さえあればずーっとオナニーしてたの。外出るときもお尻に何か入ってないと物足りないし、トイレで…その…出すだけでいけるようになっちゃったの」
亜季さん、それははまりすぎですってば。
内心ドン引き一歩手前の俺を前に、アナルオナニーの気持ちよさを、バイブレータを尻に挿入したままノーパンで外を歩く楽しさを、必要以上に熱心に語り続ける亜季。ヒプノちゃんよ、何もここまでしてくれとは頼んでないよ…。エロいのはそりゃいいけどさ。
「…ねえ、あたしの話、つまんない?」
「い、いや、そんなことないよ!」
不意にこちらを覗き込むように亜季が聞いてきたので、思わず俺は返事してしまった。先週の負い目もあるし、俺がヒプノちゃんにお願いしたせいでアナルマニアになってしまったんだから、ここで突き放してしまうわけにはいかない。
「あ、そっか…」
急に、こちらに媚びるような視線を送る亜季。う、エロすぎる。さっぱりとした性格が売り物だった亜季の別の一面が表に出て、逆にそれが俺の情欲をかき立ててしまっている。
「したいんでしょ? あたしと…」
「亜季…」
「もちろん、こっちの方で…」
亜季はベッドの上で四つんばいになると、スカートを脱ぎ去ってむき出しにした下半身を俺の方に向け、誘うように尻を振った。その淫靡な光景に、俺は思わず息とつばを飲んでしまう。
そして、両手でむっちりとしたヒップを割り開いていく…。
「ねえ、入れて…。おちんちん入れてぇ…。あたしのお尻まんこに、ずぶずぶ~って入れてぇ…」
後方の俺をちらちらと見ながら甘い、とにかく甘い声で誘う亜季。発情しきった表情、うっすらと桜色に上気した魅惑の桃尻。興奮しきってどろどろになっているあそこ。
そして、俺を待ち望んでひくひくと息づいている禁断のすぼまり…。
「ねっ、お・ね・が・い…☆」
その一言で、俺は我慢の限界点をついに越えてしまった。乱暴にズボンと下着を脱ぎ捨て、上半身も裸になるのももどかしく、俺は先ほどからたぎりっぱなしの剛直を亜季の背後から押し当てた。
「あっ、はっ、来てぇ、生おちんちん、来てぇ~!」
「い、入れるぞっ、亜季っ!」
「あっ、はあぁぁぁぁぁっっ!!」
亜季の中に入った瞬間、彼女はびくびくと身を震わせて絶頂していた。元々感じやすい方だったが、ここまでの反応は初めてだ。
「しゅごいぃぃ…、熱い生ちんちんで、いっちゃったよぉ…。あはぁ~」
メロメロになりながら、感想を漏らす亜季。
それにしても、同じ亜季の中なのに、前と後ろでは大違いだ。包み込むような暖かさのあった前と違って、きつく締め上げるような感覚が、それよりもアブノーマル行為をしている背徳感がより俺を興奮させた。
「動く…からなっ」
俺はそう伝えてから、腸液だかローションだかでどろどろ状態の亜季のアヌスの中で前後した。
その度に亜季は、悲鳴にも似たあえぎ声をあげる。
「あひゃああっ、出りゅぅ、入るっ、れる、ひゃいるぅ!」
「うっ、亜季の中、マジで気持ちよすぎ…」
「いいのぉ、ちんちん、いいよぉ! おひり、好きぃ、しゅきぃ! あはあん、もっとお尻、おひりで動いてぇ!」
確かに俺だって排泄のときに快感を感じることがある。亜季の場合はそれが数十数百倍と増幅された上で、俺が動く度に連続して強烈な快感が発生しているのだろう。この乱れっぷりも肯けるような気がする。
それにしても、ケダモノの交尾のような格好で繋がっている俺たち。しかし、やっていることはケダモノ以下だ。
だが、それがいい。
俺は、亜季の背中にぴったりと体を合わせるようにして彼女に耳元に口を寄せると、やや意地悪な口調でささやいた。
「亜季っ、そんなに尻がいいか、っ?」
「うん、うんっ、お尻、好きぃ! あんっ、ああんっ!」
「尻の穴でセックスするなんて、ケダモノ以下だな」
「あうんっ、そうなのっ、亜季は、どーぶつ以下なのっ、お尻の、あなでせっくすするのが大好きなっ、変態メスなのぉっ!」
今までの付き合いでこんなセリフ一つ言わなかった亜季が、歓喜の涙とよだれを垂れ流しながら蕩けきった表情で淫語を連呼するエロさにたまらず、俺は亜季の頭を横に向けさせ、無理な姿勢から強引に唇を奪った。そしてそれはどちらからともなく、舌と舌を絡めあうディープキスとなった。
じゅるじゅるといやらしく唾液の交換をしながらも、俺の腰は彼女の尻を打ち据えていた。病み付きになりそうなぐらいの快感が、俺の下半身から全身に回っている。
やがて、あまりの快感にいつもより早く、俺の方が限界に達しそうになってしまっていた。
「亜季っ、俺、もう出そうだっ」
「うん、出してぇ、お尻まんこにせーえき出してへぇ~! 精液、せーえきぃ!」
「おっ、うっ、い、いくぞっ!」
「いくの? あたしもいくっ、いくぅ、いぐぅ、いっちゃう、いっちゃうぅぅ~」
「う、うおおぉっ!?」
亜季の叫びとともに、俺のものが今まで以上にきゅんきゅんと締め付けられる。その感覚にたまらず、俺はいつも以上の勢いで、びくっ、びくっと、亜季の直腸に精液を流し込んでいた。
「あっ、あっ、ああああーーーっ!!!」
びくびくと背をのけぞらせ、失神寸前の表情でそれを受け入れる亜季。
「あはっ、あっ、あちゅい、せーえきが…、びくびくって…、いいよぉ…、せーえきの、おかんちょぉ、もっとして、してぇ~…。あふぅ…」
そして、力なくベッドに倒れこみながらも、亜季は夢うつつの様相で、甘ったるくつぶやき続けていた…。
…それからというものの、俺たちの週末デートの様子は一変した。
亜季がこれまで以上に俺を愛してくれるのは嬉しい。やたらと尽くしてくれるし、ベッドの上ではこれまで以上に情熱的だ。ただし、アナルセックス限定で。
あれほど嫌がっていた男の浪漫『裸エプロン』だって、
「そうね、お尻が丸見えの方が後ろからずぷずぷ~って入れやすいものね。うん、するする! お尻におちんちん入れてくれるんだったら、何でもしてあげちゃう!」
と、あくまでアナルセックスのためにOKするほどの変わりようだ。
一番変わったのは、待ち合わせ場所で合流するなり、まず物陰に連れて行かれ、亜季がカバンの中から取り出したでっかい注射器を渡される。針こそ付いていないが、とにかくでかい。
次に、中にグリセリンとかいう液体を入れ、それをスカートをめくり上げて期待に満ちた表情で生尻を突き出して待っている亜季の尻の中にリットル単位で流し込む…つまり浣腸だ。
「んっ…、はっ、はぁっ、入ってくるぅ~…」
快感に身を震わせながら、液体を貪欲に受け入れていく亜季。
そしてまるで妊娠5ヶ月かというぐらいに腹が膨れてから、アヌスストッパーで栓をしてからようやくデートの開始となる。
亜季が言うには、
「お浣腸ってね、何時間もずーっと我慢してから、どばーーって出すとすっごく気持ちいいの! 普通の5倍ぐらいいけちゃう感じ。おなかの中も綺麗になるし、おちんちんも入れやすくなるし、一石二鳥三鳥ってとこね。それに、外で浣腸されるなんて、ドキドキしちゃう!」
とのこと。俺にはもはや付いていけない世界だ。ちなみに、どばーーって出す瞬間は、俺が土下座してまでトイレの中でやってもらうことを約束させた。何しろあの日以来、亜季はアナルセックスだけでなく露出願望すら目覚め始めてきているのだ。いつ俺の前で恍惚の表情を浮かべてぶちまけるかわかったもんじゃない。だから、念を押しても押したりないほどだ。
「あっ、そうそう、それでね…」
亜季がやや苦しそうに腹をさすりつつ、でも顔は興奮で上気させながら俺に言った。
「今日こそ、あなたにもお尻の良さをわかってもらいたいの」
俺の背筋をぞぞっと冷たいものが駆け抜ける。
確かにあれ以来、亜季の尻穴に対する興味は尋常ではないレベルに達していた。最近では自分だけではなく、俺の尻にも興味を持ち、後ろから肛門に舌を差し込んで俺を刺激しつつ、手コキで俺をいかせる技も身に付けてしまった…いや、これはこれで気持ちいいんだが。
でも、男としてアナルセックスに目覚めるわけにはいかない。そう、男として。
「女だって男だって、お尻の穴があるのは共通なんだから、きっと気持ち良くなれると思うの!」
と、目をきらきらさせながら持論を熱弁する亜季。俺は慎重に後ずさりしながら、亜季の説得を試みた。
「い、いや、俺、そんな趣味ないし…」
「あたしだってなかったもん。でも、今はもうお尻以外じゃ感じないぐらいだし…あ、お尻に入れてもらいながらおまんこの方をくりくりされるのはちょっといいかな…、ってそれは置いといて、とにかく…、ほら、お尻の穴で繋がる用のディルドーとか買ってきてるから、ね☆」
ね☆、ってカバンから凶悪なサイズの両頭ディルドーを取り出して可愛く言われても、入れるのは好きでも入れられるのは勘弁してくれぇ!
そんな俺の心も知らず、亜季はそのディルドーを手にしたまま、かすかにぐるぐるぐる…と腹の音をさせながら、晴れやかな笑顔で俺に言った。
「それでね、そういうと思って、今日は助っ人を呼んであるの」
「す、助っ人!?」
もしかして俺の知らないところで別の男と…、という嫌な予感が頭をよぎる。それは嫌だ、絶対に嫌だ。
その時…、
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン、ですの~! 助っ人参上ですの!」
俺たちの前に現れたのは、あの魔法少女ヒプノちゃんだった。なんだ、男じゃないのか、良かった…と胸を撫で下ろしている場合じゃない! もっと厄介な子じゃないか! あの亜季をアナルマニアにした魔法を使えるんだぞ。だったら俺にだって…!
亜季は俺から離れると、腰をかがめてヒプノちゃんににこやかに頬を寄せた。
「この魔法少女さんがね、あなたがお尻大好き~☆になるように魔法をかけてくれるんですって! 嬉しいな、これで一緒にあんなことやこんなことができるんだぁ…」
「はいですの。ヒプノにおっまかせですの~!」
ドンと胸を叩いて自信満々のポーズを見せるヒプノちゃん。その顔には「彼女に魔法をかけたことはちゃんと黙っててますの」とでも言いたげな共犯者の表情が。いやいや、共犯者なら俺を助けてくれぇ~。
冷や汗をだらだらとかきながら、俺は亜季に向かって言った。
「…あ、亜季さん。もしかして、怒ってる? 俺のこと実は嫌い?」
「なんで? あたしにお尻の良さを教えてくれたんだもん。大好きだよ☆ 大好きだから、一緒に気持ちよくなりたいの。新しい快感に目覚めるのって、とっても素敵なことよ…」
天使のように無邪気に微笑みながら、わくわくとした視線で俺を見つめる亜季の横で、ヒプノちゃんがバトンを振るって魔法の呪文らしきものを唱え始める。もう逃げられない。本能で悟った。
俺は、空に向かって涙混じりに叫んだ。
「そんなのってないよ~~~~~~!」
< ギャフン >
やっぱり、カップルさんは共通の趣味があった方が長続きしますの。
これでお二人さんはいつまでもラブラブ~、ですの☆