第159話「悲しみよこんにちは」
「すみませんっ、ほんっとーにすみません!」
両手を床につけんばかりの勢いで平謝りする俺。
「まあ…、色々とご事情があるのはわかりますけど…」
見るからに俺を困ったような表情で見ている女性。
自室のドア周辺で、ちょっとした修羅場が繰り広げられていた。
男女の恋愛のもつれならちょっとしたドラマだが、そんな高尚な物じゃない。
単に、
「でも、もうお家賃を半年も滞納されてますから、そろそろ払っていただかないと…」
アパートの家賃の回収に来た大家と、払えずに謝るしかない住人という、ただそれだけの関係だった。
女性の名前は千草さん。このアパートの住人からは、名前ではなく「管理人さん」と呼ばれている。まだ年齢は20代半ばのはずだが、しっとりとした大人の雰囲気を漂わせている美人だ。
それもそのはず…と言っていいのかはわからないが、千草さんは未亡人だ。元々千草さんは、ここの大家をしていた独身の爺さんの介護ヘルパーとして毎日のように管理人室を訪れていたのだが、そこで年齢50歳差を越えた愛が芽生えてしまったのか、ある日突然ゴールインしてしまったのだ。
普通、極端な年齢差のカップルといえば愛情以外の打算の面も勘ぐるのが常だが、爺さんにはこのアパートぐらいしか資産がなく、それ以上に千草さんの誰にも明るく優しい慈愛に満ちた人柄が、無粋な邪推をあっけなく打ち消していた。爺さんがうらやましいほどに、千草さんは美しくて穢れのない、理想的な女性だったのだ。
人間、70を越えても春ってやってくるものだなぁ、と、もてない男のひがみも込めて、管理人室の縁側で幸せそうに二人寄り添っている姿を遠くから眺めていたのだが、その爺さんはあっけなく新婚1年経たずして急逝してしまった。病院に駆けつけたアパートの連中と奥さんである千草さんに看取られて息を引き取ったその姿は、それは幸せそうだった。
以後、千草さんはこの築数十年のボロアパートに管理人として住み続けている。まだ若いんだからと、周囲から再婚を勧める話もあったらしいが、彼女はそれを拒んでいた。まるで亡くなった爺さんの形見を守るかのように。
そんな千草さんのことが、俺は好きだった。色白で少したれ目で癒し系の風貌が、朝玄関の掃除をしながら「いってらっしゃい」と微笑んでくれるその姿が、たまにおかずのお裾分けをしてくれるその優しさが、亡き爺さんと同じ名前をつけて飼い始めた野良犬を可愛がっている時のどことなく寂しそうな横顔が、後ろで束ねた長い髪が体の前に流れた時にちらりと覗くうなじが、普段から着用を欠かさないエプロンの上からでもわかる細身なのに意外とグラマラスなスタイルが…、それらをひっくるめて、管理人さんの全てが好きだった。
そんな管理人さんを、俺は自室の玄関先で困らせているのだ。元々低収入だからこそ、安さだけが売り物のこのアパートに入居していたのだが、折からの不況で日雇いの仕事すらなかなか見つからない有様。日々の食事にも苦労するような状態で、管理人さんの限りない優しさに甘えるような形で、ずるずると家賃の支払いを滞らせてしまっていたのだ。
それも半年ともなると、さすがに請求せざるをえなくなったのだろう。管理人さんは実に申し訳なさそうにその話を切り出したのだった。いや、申し訳ないのは俺の方ですってば。
しかし、残念ながらないものは払えない。となると打つ手は一つしかない。
とにかく謝り倒すしか。
「すみません! 仕事見つかったらちゃんと払いますから! どうかもう少し待ってください!」
「…わかりました。その、生活が大変そうなのはわかりますので…、そうですね、では半年分まとめてでなくてもいいので、千円でも2千円でもいいですから、少しずつ払っていただく、というのはいかがでしょう?」
誠意が通じた、というよりは無い袖は振れないことが通じてしまい、管理人さんは目を細めて俺を元気づけるかのように助け船を出してくれた。
ああ管理人さん、あなたのことが女神に見えます…!
「わかりました、ありがとうございます! きっと、払いますから!」
「では、よろしくお願いしますね」
そう言って管理人さんは、俺に軽く頭を下げて静かにドアを閉じた。本当なら乱暴に閉められても文句言えない俺に対してもあくまで優しくしてくれる、そんな管理人さんの人柄が表れていた。
俺は部屋の奥に戻ると、畳の上にどっかと腰を下ろし、そして深くため息をついた。
「はーーーーっ…。これからどうしたものか…」
日雇いの仕事は運さえ良ければ明日にでも見つかるが、運が悪ければそれもない。パチンコとかのギャンブルで稼ぐのは、仕事を見つける運がない俺には無理そうだ。お金になりそうな物は大体売ってしまったし、借金できそうな友人はいないし、残る手段は闇金融…ああなんかどんどん人生のどつぼにはまっていきそうだ…。
とマイナス方向に思考が向かっていると、
「わっかりましたの! お兄さんが家賃を払えればお悩みは解決ですの!」
いつの間にか、目の前に小さな女の子がいた。アニメの魔法少女のようなピンクのコスチュームに、手にはステッキ。首からは五円玉のようなペンダントをして、とどめに肩には4色の猫のような生き物まで。
「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん! どこから入ってきたの!?」
「お嬢ちゃんじゃありませんの! 魔法少女ですの! ああ、お隣の部屋の壁に穴が開いてなくて通れなかったので、窓からお邪魔いたしましたの」
「穴? それはともかく窓って…、ここ2階なんだけど」
開けっ放しの窓に近寄って周囲を確認するが、少女が昇ってきたような梯子もロープも見当たらなかった。じゃあどうやってこの子はここに侵入したんだか。
「まあまあ、そんなことより」
自称魔法少女の女の子は、まるでこの部屋の主かのように俺を落ち着かせて座らせると、自らもちょこんと正座して話を続けた。
「お兄さんのお悩みは、お家賃が払えなくて困っている、でいいですの?」
「いやまあそうなんだけど、もしかして君が立て替えてくれる…わけないよね?」
「もちろんそんなお金はありませんの。でもヒプノの魔法でばっちり解決してみせますの!」
そう言って立ち上がって胸を張って何やら決めポーズを取った、ヒプノと名乗った女の子。
魔法、ねえ…。そんなのがあればどれだけ楽か。しかし、でないとこの子が二階の窓から入った、という説明もつかないし。いや本当は俺の気がつかないうちに玄関から入ったかもしれないけどさ。
「でもさ、代わりにお金とか請求されても、俺、払えないよ? あ、もしかして魂を持ってくとか…」
「悪魔と一緒にしないでほしいですの。ヒプノは人間界の皆さんが幸せになってくれるよう、日々お困りごとをを解決して回ってますの。お礼なんか必要ありませんの」
少しむっとしたような表情で答えるヒプノちゃん。子供相手に悪いこと言っちゃったかな。
まあこれが子供のごっこ遊びなのか本当に魔法使いなのかはわからないけど、頼んでみてこれ以上事態が悪くなることはなさそうだ。というか、これ以上見知らぬ女の子を部屋に入れている所を他の住人に見られたら、通報されたりして大変なことになるかもしれないし。
「じゃあ、頼むよ。魔法で家賃のことを解決してくれないかな」
「わっかりましたの! ヒプノにおまかせですの~!」
そう言うなりヒプノちゃんは、
「ま・じ・か・る、ジャーーンプ!」
と景気良く助走から両足で踏み切って、開けっ放しの窓から空中に飛び出していった…!
いや待ってここ2階だから! と大慌てで俺は少女の後を追ったが、
「あ、あれ…?」
窓の縁に手をかけて外をどんなに見回しても、既にヒプノちゃんの姿はどこにもいなかった。窓のすぐ下にある管理人さんの手入れの行き届いた芝生にも、もちろん空中にも。
「夢…、だったのかな?」
まるで狐に化かされたかのように、俺はぽかんとするほかなかった。
翌日の夜、俺は久々に体を動かして疲れた体を休める間もなく、管理人さんの部屋の前に立っていた。手には今日の労働の対価、の一部である5千円を持って。
あの魔法少女が幸運を運んでくれたのか、たまたま日雇いの仕事が見つかったのだ。今後の生活費も残さないといけないが、昨日管理人さんに悪いことをしてしまった、という後ろめたさもあって、思い切って5千円を家賃の支払いに充てようと持ってきたのだった。もちろん5千円じゃ全然足りないのだけど。
管理人さんの部屋から明かりが漏れているし、かすかにテレビの音声も聞こえるので、中にいて起きているのは間違いないだろう。俺は軽く木製のドアを叩いて、部屋の中に呼びかけた。
「管理人さん、夜分すいません。少しですけど、家賃、持ってきました」
「あ………」
中から管理人さんの声がしたものの、次の言葉が返ってくるまで妙に時間があいた。
「………あ、はい…。すぐ着替えますから、ちょっと待っててくださいね…」
ありゃ、お風呂上がりとかで他人には見せられない格好だったのかな。口調も何となくいつもより艶やかというか、色っぽいというか…お酒でも飲んでたのかも。
「あ、まずかったら後で出直しますけど」
「いいえ、すぐに着替えますから待っててください…」
そう言われてしまったら仕方ない。俺はおとなしくドアの前で管理人さんを待つことにした。
それにしても、『着替え』かぁ。若くて美人でしかも未亡人な女性が、そんなに厚いとは言えないこの壁の向こうで着替えてる、と想像すると、ついつい顔がにやけてしまう。いや、健康な男子なら誰でも思うでしょ、少しぐらいは。
そんなピンク色の妄想を膨らませていると、
「お待たせしました、どうぞ…」
と鍵の開く音と共に、管理人さんの声がした。
「じゃ、失礼します」
と俺はドアノブを回して、ドアを開くと…、
「か」
管理人さんのかの字を言おうとして、俺はフリーズしてしまった。
玄関先に管理人さんは確かにいた。予想通り湯上がりらしく、ほのかに肌が上気している。いつもは後ろで束ねている長い髪が、普通のロングヘアになって肩から背中へと流されている。
そして、管理人さんは普段ではありえない格好をしていた。
レースとフリルをふんだんにあしらい、胸の上のリボン1ヶ所で前側を留められている黒のネグリジェは、生地が薄すぎて彼女の肢体をほぼ全て透けて見せていた。元々細い腰をさらに引き締めている高級そうな黒いコルセットは、おへその窪みをセクシーに強調するかのようなデザインだった。黒いガーターベルトがこれまた黒のストッキングを吊っているのが見えるが、本来着ているべきブラジャーもパンティも全く見えなかった。
つまり、予想以上にふっくらとしたバストも、予想すらしたことのないアンダーヘアも、全てネグリジェから透けて見えていた。
明らかに『寝るための』ものではなく、『見せる』いや『魅せるための』装いだった。
「す、すみません! 失礼しましたっ!」
見てはいけない物を見てしまい、全身の血が顔に集まったかのようにカッと火照ってしまった俺は、大あわてて回れ右してその場から去ろうとした。
が、
「もう、だめですよ…」
管理人さんは俺の手をがっちり握ると、ぐいぐいと部屋の中に俺を引っ張り込んでしまった。普段なら振り払って逃げられたと思うが、パニックになっていた俺はなすがままに管理人さんの部屋の中に引きずり込まれてしまった。
そしてバランスを崩して、俺は尻餅をついてしまう。
「うふふ…、逃げちゃだめじゃないですか」
どこか楽しそうに俺を見下ろしながら、後ろ手でドアと鍵を閉める管理人さん。その笑顔は、とても妖艶で、普段からは考えられない色気を発していた。
俺は心臓をばくばくさせながら、やっとの事で口から言葉を発することができた。
「ああ、あ、あの…、管理人さん…?」
「お家賃…、払いに来たんですよね?」
「あ、は、はいっ、5千円だけですけど、ほら、この通り」
そう言って俺は、先程の騒ぎで握りしめてしまってくしゃくしゃになった5千円札を管理人さんに差し出した。
「あの、少ないですけど…」
「ええ、少ないですね」
管理人さんはにっこりと、でもどこか俺をたしなめるかのように言い、そして床に膝をつけた。相変わらず尻餅をついたままの俺との視線の距離が、その分縮まる。
「滞納しているお家賃、これだけじゃないですよ…」
「は、はひっ、わかってますっ。またお金ができたら、すぐ持ってきますからっ」
四つん這いの格好で、まるで雌猫のようにしなやかに俺ににじり寄ってくる管理人さんと、その視線に射すくめられるように身動きのとれない俺。どう見ても家賃の催促の会話にふさわしくない姿勢で、俺たちは会話を交わしていた。
「もう、私…、我慢できないんですよ…」
この状況では色々な意味に取れそうな絶妙なニュアンスの言葉を発して、実に色っぽく上から俺にしなだれかかってくる管理人さん。胸の膨らみが自らの重みで押し潰され、形を変えていく。目のすぐ前には、管理人さんの情欲に潤んだ瞳があった。
そして甘い吐息と共に、管理人さんの艶やかな唇が開かれる。
「ふふっ、着ることもないと思ってましたけど、こんなことで役に立つとは思いませんでした…」
「こ、この服ですか?」
「ええ、結婚式の時に友達が悪ふざけでプレゼントしてくれた物なんですけど…、似合ってませんか…?」
「い、いいえっ、とっても似合ってますっ!」
「そう。喜んでもらえて良かったです…。ほんと、こんなに…」
そう言って管理人さんは、俺の股間をズボンの上からなでていく。言うまでもなく、俺の股間は緊張とは別の理由でカチコチになってしまっていた。
管理人さんは両手で俺を顔をそっと捕まえると、
「そうそう、お家賃のお話でしたね」
「え、ええ…」
「では…、そのお話を始めましょう。お口とお口で…」
次の瞬間には唇を唇で塞がれていた。
それは、甘いキスなんてものではなかった。熱く、激しく、まるで俺の精も魂も全て吸い尽くすかのように、管理人さんは俺の唇に食らいついていた。
「んっ…、んんっ…、ふうっ、ちゅっ…」
「んふっ、むうっ、かんいひん、さぬっ…!」
「ちゅっ、ずちゅっ、んふうっ、はふぅ…」
管理人さんの両手は俺を求めると同時に逃がさないかのようにきつく背中に回され、固くなった股間には管理人さんの肢体が擦りつけられて刺激される。舌が絡み合い、まるで口の中を犯すかのようにねぶり回される。
あまりの官能と心地よさに、俺は正直流されていた。憧れの女性にここまで情熱的に求められたら、状況はどうあれ拒む男がいるだろうか。いやいない。
「ふあっ…」
嵐のような激しいキスに一段落つけ、管理人さんは俺から唇を離した。一瞬、二人の間を細い唾液の橋が渡り、ぷつりと切れた。
「管理人さん…」
「うふふ…」
管理人さんは、キスの衝撃で呆然としている俺に熱っぽい視線を向けて笑みを漏らすと、密着させた体を俺の下の方へとずらしていく。同時に、器用に俺のズボンのベルトを外し、下着ごとずり下ろす。
気がつけば、仰向けに寝転がった俺の肉棒が、管理人さんの目の前でそそり立っていた。本来なら隠してしまわないといけないものなのに、俺は熱にうかされたように何もできなかった。
いや、心のどこかで見てもらいたがっていた。これからどんなことをされるのだろうと、期待すらしていた。
「ふふっ、立派ですね…」
そう言って管理人さんは、俺のモノをもてあそぶ。獲物をいたぶる猫のように、指一本でつい…と筋をなぞり、至近距離から熱い吐息をふっと吹きかける。
「はううっ…!」
その度に俺は絶頂しかねない快感に襲われ、体をびくびくと震わせる。
そして管理人さんは、俺の玉を片手で持ち上げ、たぷたぷと上下に揺さぶった。
「くすっ…、こちらの『おやチン』も随分溜まってますね」
あの清純な管理人さんが下ネタ!? 普段とのあまりのギャップに俺はくらくらとさせられてしまったが、そんな俺にお構いなしに、管理人さんは次の行動に移していた。
「よいしょ…っと」
胸の上で留めていたリボンをするっと抜くと、はらり…とシースルーのネグリジェが左右に分かれ、ふっくらとして柔らかそうなおっぱいも、つんと立っている乳首も、今まで透けて見えていたとはいえ全て露わになる。さらに、俺の腰の上に上半身を預けるようにうつ伏せになり、そして…、
「では、『おやチン』いただきますね」
豊満な胸の谷間に俺の肉棒を挟み込むと、両手でぎゅっと両側から圧力をかけ、もにゅもにゅと上下に動かし始めた。
こっ、これはあのパイズリ…!
好意を寄せていた女性にこんなことまでされて、嬉しいやら恥ずかしいやら何だかわかがわからなくなっている俺だが、股間から伝わってくる快感だけはしっかりと認識できていた。
「管理人、さんっ、やわらか…っ」
「ふふっ、どうですか?」
「さ、最高ですっ」
「そうですか、では…」
そう言うと、管理人さんは首をくいと下の方に向け、舌を伸ばして、胸の谷間からわずかに出た俺の肉棒の先端を、ついと舐めた。
「はふうっ!」
電撃が流れたかのような刺激が全身を貫き、俺はもう管理人さんのなすがままとなってしまった。
管理人さんは両手で胸を道具のようにして俺のモノをしごき立て、亀頭を舐め上げる。俺が快感によがっている表情を確認しては、満足そうにさらに刺激を強める。一秒ごとにふにゅふにゅと複雑に形を変えていく胸も、ちろちろと動く舌も、全てが俺の快感を煽っていた。
管理人さんの指摘通り、溜まっていたのは事実だから、俺の股間はもう決壊寸前だった。さすがに粗相をしてしまうのは申し訳なく、俺は何とか口を動かして管理人さんにそれを伝えようとした。
「はあっ、管理人、さんっ…、俺、もう、出そうだから…」
「わかりました。ではお口にどうぞ…」
管理人さんは応えるなり、おっぱいを肉棒から外し…、今度は口の中に奥深くそれを頬張った。
そうじゃなくて顔をどけてほしかった、と言う間もなく、さらに強烈な快感が俺をのけぞらせる。髪を時折かき上げながら口をすぼめて上下に動かされる管理人さんの口内で、俺は舐めしゃぶられ、唇でしごかれる。
「ちゅぱ…っ、んっ、んんーっ、じゅっ、じゅるっ…、ちゅううぅ…っ!」
「あ、あっ、そんなことされたら、もう、出ますっ、出るっ!」
限界を超えた俺の肉棒は、管理人さんの奥めがけて、びゅっ、びゅくっと欲望を吐き出していく。管理人さんは、それを嫌がりもせず受け止めていく。
やがて嵐のような快感が去ると、管理人さんは俺から唇とするっと抜き取り、
「んっ…、んんっ…」
目を閉じて少し上を向き、こくり、こくりとあれを飲み干していく。その色っぽい仕草を、俺は荒い息をしながらただただ見つめているだけだった。
「管理人さん、何でこんなこと…」
管理人さんが俺のを飲み切って口を開いたのを見計らって、俺は管理人さんに聞いた。
「何で…って、あなたがお家賃を滞納するのがいけないんですよ」
管理人さんは、めっ、と子供をしつけるように可愛らしく俺を軽く叱るように言うと、
「ですから、お金で払えないんでしたら…」
相変わらず仰向けになったままの俺の腰の上をまたぐように立ち上がった。
俺を見下ろす管理人さんにはいつもの清楚さが見られず、とても淫靡だった。少し乱れた濡れた黒髪、蛍光灯の光で輝いているしっとりと汗ばむ肌、大胆に開け放たれ肩にかかっているだけのネグリジェ、腰をきゅっと締め付けながらボディラインを引き立てているコルセット、ももから下が見えていないのに素足よりも魅力的に見えるストッキング、そして本来は隠されているはずの部分が逆に見せられているという倒錯的なコーディネイト。胸の二つの膨らみはぷるんと存在感を見せつけ、両脚が作り出している三角形の頂点であるデルタゾーンは、どことなく潤んでいるように見えた。
いやらしくも美しい、そんな管理人さんの姿に、俺は目を奪われていた。まるで魂を抜かれたように。
そして管理人さんは、俺ににこやかに宣告した。
「…体で、払ってもらいますね♪」
管理人さんはゆっくりと腰を下ろし、俺の股間の上で両脚でM字を作るようにしゃがみ込む。見せてはいけない股間が丸見えになるあられもない姿にも関わらず、彼女はそういうはしたない格好をする自分に酔っているかのようだった。
そして、俺の肉棒を片手で支えて狙いを定めると、じわじわと腰を沈めていく。
「管理人、さんっ…!」
「ふあああっ、入ってくる、うぅっ…!」
お互いに背筋を反らして、結合部から送り込まれる快感に酔いしれる。
こうなってしまったら、もう止まらなかった。
「あんっ! あはんっ! あん! あん! ああん…!」
「あああっ、管理人さんの中…、ねっとりして、すごいぃぃ…」
「ええ、私も、とても、いい、いいですっ…! いいっ、ああ、いいっ!」
どちらがリードしているのかわからないほど、管理人さんは大きなおっぱいをゆさゆさを振るわせながら激しく上下にグラインドし、俺も管理人さんの細い腰に両手をあてて、かくかくと腰を動かす。
「あんっ、はあんっ、結婚してから、ご無沙汰だったから、いいっ、おちんちん、いいのぉっ!」
「じゃ、じゃあ、爺さんとは…」
「だって、あんっ、あの人、のことっ、愛してましたけど、夜は、んんっ、起たなかったから…、ああ~んっ!」
そりゃ70過ぎの爺さんがビンビンに絶倫、ってのもそれはそれで怖い。ということは、夫ですら抱けなかった若妻を今俺が抱いている、という歪んだ独占欲がさらに俺の快感を燃え上がらせる。
「管理人さんっ! じゃ、じゃあ俺が、爺さんの分まで気持ちよくしてあげますよ!」
「あはぁ、あん、あんっ! してぇ、もっとしてぇ。もっと私を、気持ちよくして下さい…ぃ、いいっ、いいのぉ!」
「管理人さん、ああ管理人さん!」
「あっ、ああんっ、いい、いいですっ! おちんちん、が、ぐりぐりって、いいっ、私、おまんこ、いいっ!」
「管理人さん、も、そんないやらしい言葉、言うんです、ね…っ」
「い、いい、言いますぅ! 私だって、女だから、ああんっ、いやらしいこと、言いますっ! おまんこ、ぐちゅぐちゅって、おちんちん、もっと、ずぼずぼって、してぇ!」
「はい、しますっ。管理人さんも、ぎゅって締め付けて、気持ちいいですっ!」
いつの間にかお互いの手と手を両手ともぎゅっと握りしめ合いながら、俺たちは繋がっていた。チンポとおまんこが、繋がれた手と手が、交わされる言葉が、まるで二人を溶け合わせるようだ。
永遠にこのままでいたい、という願いもむなしく、終わりを告げるあの衝動が徐々に俺を包み始めた。さすがにこのままではまずいと思い、俺は表情の緩みきった管理人さんに呼びかけた。
「管理人さん、そろそろ、俺、出そうだから…」
「はひっ、出してください、んんっ、中に、いっ!」
「だめですって、中なんか出したら…」
「だって、これは、お家賃の徴収れすもんっ! 絶対、に、いいっ、おまんこで、受け取らせてもらいますうぅっ!」
いや管理人さんそれはまずいですって!と腰の引ける俺を逃がさないように、腰の動きはそのままに管理人さんがぎゅっと体重をかけてくる。さらに、もっともっととねだるかのように、膣がぎゅっと締め付けてくる。
ああっ、もうだめだ…!
「管理人さん、出ちゃいます!」
「はい、どうぞ、おちんちんに溜めたお家賃、たっぷりっ、払ってください、いっ、いい、いいっ!」
「出ます! あっ、ああっ、あーーっ!」
俺は、今まで管理人さんに対して溜め込んでいた想いと共に、彼女の中に全てをぶちまけていた。どくっ、どくっと、何度も、何度も…。
こんなに気持ちいい方法で家賃を払えるなら、これからもお世話になりたいな、と、気だるい恍惚感の中、俺は思っていた。
「あ、あの…、管理人さん…?」
俺はかすれるような声で管理人さんに聞いた。耳に聞こえてくるのは、窓の外で鳴いているスズメの鳴き声と、近所を回っている新聞配達のバイクの音。明らかに朝を告げる音たちだ。
そして、管理人さんがじゅるじゅると俺の肉棒を口ですすり上げているいやらしい音。
「もう、全然大きくならないんじゃないですか。もう少し頑張ってください」
口を離して少しむくれたように管理人さんが、もはや力無くしおれてしまった俺のモノをきゅっと握って、こすこすと上下に刺激させながら言う。
俺はもはや、半分泣いたように答えるしかなかった。
「そ、そんなぁ~。昨日から一晩中ずっと出し続けて、もう無理ですよぉ」
「私、まだ5回しかいってないですし、お口にだって2回しか出してもらってないんですよ? こんなんじゃ、1ヶ月分のお家賃にもなりませんっ」
ひ、ひいいい! もう数え切れないほど出したのに、今からあと6倍出せと!? そんな殺生なぁ~!
「いや、む、無理ですって! もう一滴も出ませんよ…!」
「しょうがないですねぇ…。じゃあ…」
そう言って管理人さんはいたずらを思いついた子供のように微笑むと、するするストッキングを脱いでいく。あの淫猥なコスチュームの他のパーツは何度も交わっているうちに脱ぎ捨てていたが、ストッキングだけは両足で俺のモノをしごいてくれた時の小道具として使われて、そのままになっていたのだ。
脱いでいる間、ごぽり…とあそこから俺の出しまくった精液があふれ出してくるが、管理人さんはそれを気にせず、全裸になった。
そしてもはや身動きする気力すらない俺をよそに、管理人さんはいつものように長い髪を後ろで束ねると、壁に掛けられた布を身にまとい始めた。てきぱきと身につけ、腰の後ろできゅっと紐を結ぶ。
まさか、それは…。
「管理人さん、それって…」
「うふふっ、男の人って素肌にエプロンだけ、って好きなんですよね? あの人も見せてあげたら喜んでくれましたもの」
くそっ、爺さんうらやましいぞ…じゃなくて。
「ほら、そそりませんか? どうですか?」
管理人さんは俺を挑発するかのように、裸にエプロンだけを身につけた身体をくるりと回してみせた。ふわっとエプロンの裾がなびいてももから下が丸見えになるのも、横からこぼれそうなおっぱいも、クロスさせた紐以外何も隠されていない背中も、ぷりんとした魅惑のヒップラインも、一瞬にして全てが俺の脳裏に焼き付き、心をショートさせる。
「気分を変えたらまたできますよね? いいんですよ、お尻でもおまんこでも、未払いのお家賃の分だけ私を満足させてくれたら、いくらでも…」
むっちりとしたお尻をこちらに向けて、とろけるような流し目で誘惑してくる管理人さん。だめだ、この視線に、このポーズに抵抗できる男なんかいるわけがない!
俺はふらふらと、まるであのお尻に魅了されたかのように、いや実際に魅了されているけど、徐々に近づいていった。管理人さんの言う通り、視覚の新鮮さに惑わされて股間の肉棒に固さを取り戻しながら。
気力も体力も精力も限界に達しつつある俺は、天国のような無間地獄に向かう道中で、最後の力を振り絞って言った。
これだけは言いたかった。
「そんなのってないよーー…!」
< ギャフン >
人間界の風習で、お金が払えなくなったらエッチなことをして返済する、というのがあるらしいですの。それに、『未亡人』って人は欲求不満で淫乱、ってどのマンガもそんな感じだったので、これでお膳立てはバッチリですの~!
そういえばあのお姉さん、前にお爺さんが「結婚相手がほしい」って悩んでた時に魔法をかけた人でしたの。偶然って不思議ですの~。