○○なあたし02 第2話のろく

2のろく(2日目・夕方) 忠犬ミヤコ

 がらがら
 あーさっぱりした。

 催眠で寝かされた1時間後、やっぱり催眠ですっきりと起こされたあたしは、涼と一緒にホテルの部屋に戻ってきた。
 日陰は涼しいと思ってはいたけど、それでも涼にひっついていただけあって、起きたときにはかなり汗をかいていた。そういったわけで、あたしは本日3度目のお風呂になった。……と言っても、今回はシャワーで汗を流しただけだけど。

 ホテルの人が替えてくれた新しいバスタオルで、さっさと身体を拭く。

 で。
 足下に置いてある洋服を見て、あたしは心の中でうなる。
 これはさっき着てたやつで、別に変でも何でもない。
 問題なのは、今のあたしがこれを「着られない」ということだ。

 涼がトランクス姿で洗面所から出てきて、入れ替わりであたしが入ろうとしたときに、涼に「都、お風呂から出てくるときはショーツ一枚で出てきてね」と言われてしまった。
 当然あたしは抗議したけど、涼が聞いてくれるわけもなく。
 というわけで、あたしは洋服の中から黄色のショーツだけを取り出して、とっとと履く。涼の催眠に抵抗しようとするのは無駄なので、そこら辺はお風呂場でとっくに諦めている。
 ……これで、身支度が終わってしまった。早い。
 あたしは気になって、ふと洗面台の鏡を見る。
 そこには、もちろんショーツ一枚、胸も丸出しでたたずむ女の子が一人。
 ……こ、これで、涼の前に立つのかよ……!
 言うまでもなく、とっても恥ずかしい。
 今までも裸を見られたことはあるけど、それはエッチの成り行きでそうなったのがほとんどで、いきなり裸を……特に胸を見られたことはない。それなのに、あたしはこのあと、この格好で涼のいるところに戻らなきゃいけない。
 ……かあああああぁぁぁぁぁっ
 考えただけで、顔が真っ赤になる。
 って、あ、忘れてた。涼からもらったペンダント。
 これは、涼もつけることを許してくれた。
 これで身体が隠せるわけじゃないけど、ないよりはマシかもしれない。そう思って、あたしは星形のペンダントを着ける。
 そして、もう一度鏡を見る。

 ……うわぁ、こんなに違うんだ。
 鏡を見たあたしは、印象の違いに思わず息を呑んでしまった。
 胸元にペンダントの輝きを加えたあたしの身体は、さっきとはかなり違って見える。自分で言うのも何だけど、「彼氏と情事を働く彼女」って感じかな?
 もっと簡単に言うと……なんだか、さっきよりいやらしく見えるのだ。

 ぞくっ
 そう思った途端、あたしの背中に甘い痺れが走る。
 思わず、涼に身体を触られて、なまめかしく悶えるあたしを想像してしまった。
 その想像に、あたしの身体が素直に反応してしまったのだ。
 ……ダメだ。このままじゃ発情しちゃう。
 あたしは観念して鏡に背を向け、涼の元に向かうべく、脱衣所の扉を開けた。

「都ちゃん、かわいい」
「やぁ……」
 あたしが出てくるのを見て、ベッドに腰掛けていた涼は立ち上がり、あたしの前に立つ。
 涼はさっきのトランクス姿だ。それと、三日月のペンダント。
 下着一枚とペンダントで、あたし達は立ったままお互いを見つめている。
 涼はにこっと笑って、あたしは羞恥心で顔を真っ赤にしながら。

 あたしは涼と顔を合わせられず、その結果涼の身体を目の当たりにすることになる。
 涼は線が細いから服を着ているとわからないけど、運動部ということもあって、けっこう引き締まった身体をしている。いつもは女の子のようにも見える涼も、裸になると途端に男っぽく見える。
 ……涼が近づいてきて、そのままあたし達は抱き合う。
 あたしは、そのまま、自分の手を涼の背中に回した。
「あったかい……ふにふにしてる」
「……それ、太ってるってこと?」
「違うってば。女の子っぽい身体だってこと」
 そんな風に言われて、赤くなりながらも満更じゃないあたし。

 思うんだけど、涼ってあたしを「女の子扱い」するのがすごく上手い。
 あたしは普段、女の子っぽい格好もしないし、言葉も行動もはっきり言って雑な方だ。流のような女の子女の子した態度とはほど遠い。
 でも、涼の前に立つと、あたしは自然に「普通の女の子」に変えられてしまう。
 今もそうだ。あたしの身体はそんなに女っぽくはないけど、引き締まった涼の身体と比べれば、あたしはどう頑張っても「女の子」にしかなれない。

「都ちゃん、両手、僕の首に回して」
「え? ……こう?」
「そう。ちゃんとつかまってね」
 そう言って、涼が少しかがむ。
「わっ」
 突然身体が持ち上げられて、あたしは慌てる。
 気づいたときには……
「どうですか、お姫様」
 そう、あたしは涼に「お姫様だっこ」をされていた。
「こ、こわっ、怖いよこれ!」
「えっ、そう?」
「何か、落ちそうっ」
「ちゃんとつかまって」
 言われるまでもなく、あたしは涼の首にしっかり腕を巻き付ける。
「大丈夫?」
「う、うん……」
 あたしが落ち着いたのを見て、涼はあたしの顔をのぞき込む。
「姫様、お気分は?」
「だ、だいじょぶ」
 涼のこれ見よがしの敬語に、思いっきり間抜けな返事をするあたし。
「よかった」
 そう言って涼は笑う。
 ああ、やっぱり涼は男だ。あたしはそう思った。
 涼は、あの細い身体で、決して軽くはないあたしの身体を軽々と持ち上げた。
 そんな「男」の涼を見つめるあたしの目は、
「どうしたの? そんなにうっとりしちゃって」
 当然のように、「女」になっていた。
「んー……なんか、きもちいいなぁ、って思って」
「だったら、いつでもお姫様だっこしてあげるよ?」
 あたしが答えを言う前に、あたしの身体はベッドの上にゆっくり降ろされていた。
 降ろされた瞬間、涼が上に乗ってくる。
「……う~ん、ダメだ、もう都ちゃん襲いたくなってきた」
「むぅ……」
「ほんと、都ちゃんかわいすぎ。僕、すぐ我慢できなくなる」
「……それ、ほめてんのか?」
「もちろん」
 そう言う涼の目は、確かにかなり発情した目だった。
 もっとも、あたしの方も、涼に見つめられて、どんどん身体の芯が熱くなってきている。
「でも……今はちょっと我慢しないとね」
「え?」
「これ」
 そう言って取り出したのは、さっきの紙袋だった。
「都ちゃんをペットにしてから、おいしく頂こうかと」
「あ……」
 そうだ、すっかり忘れてた。
 あたし……これから、涼のペットにされるんだ……
 どくん。どくん。
 あたしの心臓の動きが、途端に速くなる。
 それが、怖いからなのか、それとも期待しているからなのかは、今のあたしにはわからなかった。
 ごそごそと、涼が紙袋の中から首輪を取り出す。
「ちょっと、起きあがって」
 あたしが起きあがると、涼は取り出した首輪を、あたしの目の前にぶら下げた。
 あたしは、首輪を見つめる。
「これ、犬の首輪。
 だから僕は、都ちゃんを、これから、犬にするよ。
 僕の言うことに喜んで従う、僕のペットに」
 そう言う涼は、すでに激しい興奮を隠しきれないようだった。
 涼の目の中に、「獣の色」が混じり始めている。
「都ちゃん、大丈夫? 怖くない?」
「ち、ちょっと、怖い……」
 涼の目が……という言葉は、ちょっと悩んで、結局飲み込んだ。
「……僕も、ゆっくりやるから、ダメだと思ったらすぐ止めてよ」
 多分、涼は自分が暴走寸前だってことを自覚しているんだと思う。あたしに念を押すように言ったのは、きっとそのせいだろう。
 そして、涼は宣告する。
「まず、着けるよ」
 涼が、後ろに腕を回す。そのまま腕をあたしの首元まで持ち上げて、手前に引く。首輪があたしの首の後ろに触れ、そのまま少しずつ巻き付けられていく。涼があたしの首の前で手を交差して、留め金に首輪を通す。そして……
「もし苦しかったら言ってね」
 そう言って、首輪を絞る。
 最後に留め金をセットして、あたしに首輪が着けられた。
「……かわいい」
「……」
 あたしは顔を真っ赤にして、ちょっとうつむく。
 首輪を着けた姿がかわいいというのは、喜んでいいのかどうか。
 そう思っていると、涼があたしを抱きしめた。
「都ちゃん、いくよ」
 一瞬迷ったあと、覚悟を決めて、あたしはうなずく。
「『夢の家にようこそ』」
 あたしの意識が、ふぅっ、と遠ざかった。

 涼が、あたしのせなかをさする。
「どう? 催眠は気持ちいい?」
「うん……きもちいい……」
「まだ、怖い?」
「ん……だいじょぶ、こわく、ない」
 うん。こわくない。
 涼が、いるから、だいじょうぶ。
「都ちゃん、僕の犬になりたい?」
「……きょうみ、あるけど……わかんない」
 涼のことばが、いっしゅん止まる。
「都ちゃん、これから都ちゃんは僕のペットの犬になってくけど、都ちゃんが『ヤダ』って言ったら催眠が全部止まって、都ちゃんは目を覚ますよ。わかった?」
「うん……」
 あたしのせなかをとん、とん、ってたたいて、涼はしゃべりだす。
「ペットってさ、飼い主がいるよね?
 飼い主の言うことに、ペットが従うのは当然だよね?」
「……うん」
「だから、ペットは飼い主の言うことに、喜んで従わなきゃダメだよね?」
「……うん」
 うん。ペットは、飼ってるひとの言うことは聞かなきゃダメだ。
「都ちゃんは僕のペットになるから、僕の命令には喜んで従うようになる。 僕の命令に従うと、おま○この奥がきゅってなって、気持ちよくなる。
 ほら、僕が背中をなでると、どんどんそうなってくよ」
 すりすりすり、涼がせなかをなで回す。
 涼のコトバが、せなかからあたしのカラダにしみこんでいく。
「はい、これで都ちゃんは、僕の命令に従うと気持ちよくなっちゃうようになった。
 ちょっと、やってみようか。
 都、右手を挙げて」
 そういわれて、あたしは右手をゆっくりもち上げる。
「……ぁ……」
 手をあげると、あたしのカラダのおくが、きゅぅっ、とあつくなった。
「どう、気持ちいい?」
「うん……きもち、いい……」
「どこが気持ちいい? 言ってごらん」
「……おま○こ、が、きもちいい……ぁん」
 そういうと、またカラダがあつくなる。
「都、手を下ろして」
「ん……ぅぁ……」
 また、あつくなった。
「OK、次。
 都、犬は普通、服を着たりしないよね?」
「……うん」
「都は犬になるんだよね?」
「……ぅん」
「だから都は、服を着なくなる。都は犬になるから、服を着ないのが当たり前だ。
 ほら、ショーツ履いてるのはおかしいよね? 服を着ないのが当たり前だから、着てるのが段々変な感じになってくるよ」
 そういわれると、なんかこしのあたりがムズムズしてくる。
 ショーツのかんしょくが、だんだんイヤな感じになってきた。
 ……あたし、なんでこんなのはいてるんだろう。
「都、ショーツ脱ぎたくなったら、脱いでいいよ」
 涼がそう言ってくれたから、あたしは手をしたに回して、ショーツをおろした。
 涼が、おろすのをてつだってくれる。
「あ、ペンダントと首輪は服じゃないから、着けてても変な感じはしないよ」 そう言われて、あたしは今、ペンダントとくびわをつけてるんだ、って思いだした。
「よし、次。
 都、エッチ大好きだよね?」
「うん、すき……」
 うん。えっちは、だいすきだ。
「都はセックス大好きな淫乱娘だよね?」
「……うん、いんらん、むすめ……」
 うん、あたしは、インランだ。
「人間の都がインランなんだから、都は犬になっても当然淫乱でしょ?」
「うん……」
「だから、都は犬になっても淫乱だ。それどころか、犬になると、人間の時よりもっと淫乱になる。
 いつでも僕のお○んちんをおま○こに入れて欲しくなる、ド淫乱になる。
 都、気持ちいいこと好きでしょ?」
「うん……きもちいいの、すき……」
「ド淫乱になるといっぱい気持ちよくなれるよ。ド淫乱になりたい?」
「うん、なりたい……」
 どインランになれば、いっぱい、きもちよくなれる……
 きもちいいこと、すき。
「じゃあ、こう言ってごらん。『都は、犬になるとド淫乱になります』って。
 そう言ったら、都は心も身体もド淫乱になれる」
「……みやこは……いぬに、なると、どいんらんに……なります……あぁぁん」
 言ったしゅんかん、あたしのカラダがきゅうぅっとふるえる。
 きづいたときには、カラダが涼のお○んちんをほしがっていた。
「どう? お○んちん欲しくなった?」
「うん……ほしい……」
「でも、都が発情しても、僕が発情してるとは限らないよね?
 そうしたら、都はかわいそうだよね?」
「うん……」
 それは、こまる。
「だから、都は、首輪をしている間は、おま○こにずっと僕のお○んちんが入ってる感じがする。
 本物じゃないけど、本物が入ってるときの半分くらい、気持ちよくて、幸せになれる。
 そうだな、都が歩けるギリギリくらいの気持ちよさ。
 僕がおま○こに手を当てると、僕のお○んちんが入ってる感じになるよ」
「ん……はああぁぁぁあん」
 は、はいってきたぁっ……!
 きもち、いい……っ!
「でも、本物じゃないから、このお○んちんじゃイケない。
 イクためには、本物を入れてもらうか、オナニーしなきゃダメだよ」
「うん……っ!」
 あたしは、こしをふりながら、涼のコトバを聞く。
「普段、ニセモノのお○んちんは動かない。都の中に入ってるだけだ。
 でも、それじゃ物足りないでしょ?」
「うん……たりない、かもぉ……っ」
 入ってるからきもちいいけど、すぐ、たりなくなっちゃう。
「だから、都に特別に、お○んちんを動かす呪文を教えてあげる。
 『おま○こじゅぽじゅぽ』って言うと、お○んちんが、ええっと、5秒くらい動いてくれるよ。
 やってごらん」
「んぁ……おま○こ……じゅぽじゅぽっ……ふぁあぁっ!」
 うごいたぁっ!
「あん! あん! あん! あんっ!」
 は、はげしい……! きもちいい……っ!
「あん! あ……ふぅ……」
 とまった。
「どう、気持ちよかった?」
「はげ……し……きもち、いい……」
「都、激しいのが好きなんだね。
 僕、激しく動くなんて言ってなかったのに」
「うん……はげしいの、すき……」
「ふふ。でも、本物じゃないから、やっぱりイケない。
 だから、ニセモノが動くと、止まったあとにもっと物足りなくなって、もっと本物が欲しくなる。
 ほら、どんどん欲しくなってくるよ」
「……やぁ……っ」
 きもちいいのに、どんどん、おま○こがさみしくなる。涼の、ホンモノがほしくて、たまらなくなってくる。
「どう? 欲しい?」
「うん……っ! お○んちん、ほしいっ」
「あとでいっぱい食べさせてあげるから、もうちょっと我慢して。
 ……そういえば、都ってさあ、本当はものすごく甘えん坊じゃない?」
「ぇ……」
「都、本当はもっと普段から僕に甘えたいんじゃない?」
「……ぅん……あたし、ほんとは、あまえたい……ぁぅん」
 そうだ。あたしは、もっと涼にあまえたい。……きもち、いい。おま○こ。
「何で、普段は甘えないの?」
「……はずかしい……」
 涼に、あまえたいけど、はずかしい。
「でも、ペットは飼い主に甘えるのは当たり前だよね?」
「……うん」
「だから、都も犬になったら、恥ずかしがらずに甘えられる。
 エッチなことは恥ずかしいけど、甘えるのは恥ずかしくない。
 都、僕のほっぺにすりすりすると、甘えるのが恥ずかしくなくなるよ。
 やってみて」
 涼がそう言うから、涼のほっぺに、あたしの顔をすりすりする。
 すりすり。すりすり。
 すりすりすると、はずかしいキモチが、涼のほっぺにとけていく。
「……どう? いっぱい甘えられそう?」
「うん……いっぱい、あまえたい……」
 あまえたい。
 あたしはもう、ココロも、おま○こも、どろどろだ。
「よし……都、僕の目を見て」
 あたしは重い頭をあげて、ぼうっと、涼のかおを見る。
「『おはよう、朝だよ』……『僕の操り人形』」
 涼が、催眠を変えた。
 頭が一瞬すっきりする。
 でも、すぐにおま○この熱さにあぶられて、あたしの脳みそは熔け始めた。 にこっと笑いながら、涼があたしに問いかける。
「どんな感じ? 正直に言ってみて」
「……きもち、よくて……おま○こ熱くて、涼のお○んちん欲しくて……いっぱい、あまえたい」
 腰が落ち着かなくて、あたしは気を紛らわすように腰を振る。
 触ってもいないのに、おま○こからエッチなお汁が流れ出して、グショグショなのがわかる。
「今の都ちゃんは、犬になる準備ができてるけど、まだ人間だ。
 今なら、まだ戻れる。
 でも、最後の催眠をかけると、都ちゃんは人間じゃなくなる。犬になって……僕のペットになる。
 都ちゃんは、首輪をしている間、犬になる」
 涼が、あたしを見つめる。
「どうする?
 僕のペットに、なる?」
 火を噴きそうな頭で、あたしは考える。
 インランなカラダが、あたしに訴える。
 おま○こ、きもちいい。
 涼のが、ずっと、入ってる。
 犬になれば、ずっとセックスできる。
 おま○こ、じゅぽじゅぽできる。
 マゾなあたしが、脳を灼く。
 涼が、あたしの全部を支配する。
 ココロも、カラダも……おま○こも、涼のカタチになる。
 犬になれば、全部が涼のモノになる。
 ココロを、涼に犯してもらえる。
 ほんのちょっとだけ残った、女の子のあたしが、声を上げる。
 犬になるなんて、はずかしい。
 でも、涼に、甘えたい。
 もっと、甘えたい。
 決まった。
 あたしは。
「……ペットに、なるっ……!」
 こく。涼がうなずく。
「都ちゃん、これから都ちゃんは犬になる。
 都ちゃんは、心が作り替えられるのがわかるけど、もう抵抗できない。
 心が作り替えられるのは、とっても気持ちいい。
 催眠が終わったら、もう都ちゃんは犬になってる。ご飯もトイレも人間と同じにできるし、人間の言葉も話せるし、二本足で歩けるけど、都ちゃんはもう犬だ。首輪を着けている間は、人間には戻れない。
 いいね?」
「……うん」
 あたしは、はっきりとうなずく。
 どく。どく。どく。どく。
 あたしの心臓が、早鐘を打つ。
「目、つぶって」
 目をつぶる。
「頭の中で、『人間』の都ちゃんを想像してごらん。
 あ、全身ね、顔だけじゃなくて」
 ……。
 とりあえず、昨日の朝、鏡で見たいつものあたしを想像する。
 ジーンズとシャツを着た、男の子のような、あたし。
「想像した?」
「うん」
「じゃあ次。『犬』の都ちゃんを想像して」
 ……
 …………。
「そりゃ、難しい……」
「あ、そか」
 そう言って黙る涼。でも、すぐに涼はこう言った。
「じゃあ、こういう姿を想像して。
 首輪を着けてる都ちゃん。裸で、四つんばい。
 おしりを突き上げて、セックスしたがってる」
 うわ、恥ずかし……!
 犬になったあたしは、そんな姿なんだろうかと思って、あたしは赤面する。
 でも、今のあたしには、そのいやらしい姿が、とっても魅力的に見えてしまっている。
 あたしは思わず、涼のお○んちんを求めて、いやらしく腰を振るあたしを想像してしまった。
「どう、想像できた?」
「うん」
「それが『犬』の都ちゃんだ。
 じゃあ、もう一回『人間』の都ちゃんを想像して。
 一回、『犬』の都ちゃんは消していいよ」
 あたしはまた、さっき思い浮かべた「普段のあたし」をまぶたの裏に映す。「それは、都ちゃんの中にある『人間』の部分だ。
 今、「人間」の都ちゃんは、ここにいる。
 都ちゃんの、心の場所」
 そういって、涼はあたしの心臓をつつく。
 まぶたの裏にあった「あたし」の姿が、心の位置に移動する。
「今から十数えると、心にいる都ちゃんは溶けてなくなってしまう。
 目の前の都ちゃんが溶けると、都ちゃんはもう人間じゃなくなる。いいね?」
「うん」
「いくよ……いち」
 どくん。
 心の「あたし」が、揺れた。
「……に」
 「あたし」が、倒れ込む。
「……さん」
 「あたし」の服が、はじけ飛ぶ。
「……よん」
 「あたし」の腰がはねて、あそこからいやらしい汁を飛ばす。
「……ご」
 「あたし」が、恍惚の表情で絶頂する。
「……ろく」
 絶頂の熱で、下半身が熔け始める。
「……なな」
 胴体が、光に包まれる。
「……はち」
 上半身が、光にとけていく。
「……きゅう」
 残骸が、光を失っていく。
「……じゅうっ」
 そこには、もう何もない。
「……全部溶けた?」
「……うん」
「これで、都ちゃんは人間じゃなくなった。
 今の都ちゃんは、人間じゃないイキモノだ」
 そう言われて、あたしの心の中にあった「芯」みたいなのが、消えていることに気づいた。
 「あたしは人間だ」っていう、当たり前のものが、あたしからなくなっている。
 今のあたしは、人間じゃない。
 人間でなくて、犬にもなれない、中途半端なイキモノ。
「今度は、十からゼロまで数える。
 そうすると、心の中に『犬』の都ちゃんができてくる。
 ゼロになると、心の中の都ちゃんが完成して、──その時には、都ちゃんは犬になってる。いくよ?」
 ……。
「……じゅう」
 何もないところが、突然盛り上がる。
「……きゅう」
 「山」が、肌色になる。
「……はち」
 「山」が浮き上がって、四本足が現れる。
「……なな」
 「山」が、光を放つ。
「……ろく」
 光の中から、胴体ができる。
「……ご」
 首輪を着けた、顔が現れる。
「……よん」
 身体ができあがる。
「……さん」
 あたしの顔が、急に快感に蕩ける。
「……に」
 あたしのおま○こが、エッチなお汁を噴く。
「……いち」
 あたしがおしりを突き上げる。
「……ゼロ」
 「それ」が、あたしに重なった。 
「目を開けて」
 ……あれ?
 何かおかしい。さっきと視界が違う。
 数秒考えて、気づいた。座って抱きついた格好だったはずなのに、いつの間にか一緒に寝っ転がっている。
 さらに自分の身体の感覚をたどると、どうやら今のあたしは、想像した「犬」のあたしと同じような格好をしているようだ。
 首輪着けて。手は突いてないけど、四つんばいみたいな格好で。おしりを持ち上げて。
 そして……
「どう?」
 目の前の……涼、が、あたしに問いかける。
 あたしは、自分の心に問いかける。
 ……
「すごい……不思議な感じ」
「どう? 人間じゃない、って感じ?」
「うん……人間じゃ、ないみたい」
 本当だ。人間じゃない。
 さっき消えた心の「芯」の部分に、新しい「芯」が入ってきていた。
「犬に、なってる……」
「……犬って、どんな感じなの?」
「ええっと……何か、心の奥の方から、『あたしは犬だ』って感じが、どんどん出てくる……すごく、変な感じ」
 さっきまであったところに、新しく入った「芯」。
 そこから、あたしは……涼、に、飼われてるペットだっていう気持ちが、さっきまでの「あたしは人間だ」というのと同じように、自然にわき上がってきている。
 あたしはペット。あたしは犬。飼い主に尽くす、……涼、の、ペット。
「ふ~ん……わん、って鳴いてごらん?」
「……わん」
「どう? 自然に出た? 恥ずかしくなかった?」
 ちょっと考えて、
「うん、大丈夫だった」
 って答える。
「多分……今の都ちゃんの状態が、都ちゃんのイメージの中にある『ペットの犬』なんだと思うよ」
「うん……」
 そうかもしれない。
「これで、都ちゃんは、完全に犬になった。首輪を取ると、都ちゃんは元の人間に戻る。でも、首輪をしている間は、都ちゃんは犬だ。名前は……カタカナで『ミヤコ』にしよう。『君は君のもの』」
 催眠が切られて、いきなり頭をなでられた。
「よしよし」
 暖かい。
「くぅ~ん」
 あたしは、鼻を鳴らして、……涼、に甘える。
 と、そこで、あたしの中の違和感に気づいた。
 あ、そっか。それが引っかかってたのか。
 あたしは思ったことを、そのまま口に出す。
「あの、さ、お願いがあるんだけど」
「ん?」
 あたしは、顔を見つめて、言う。
「『ご主人さま』って、呼んでいい?」
「ぶっ!」
 あ、何かダメージ受けてる。
「いや、あの……何か変だと思ったら、すごく呼び捨てに違和感があってさ。
 『犬』のあたしは、どうも……その、キミのことをそう呼びたいみたいで」
 呼び捨てにやっぱりものすごい違和感があったので、使ったこともない「キミ」なんて言葉を使ってしまった。
「いい?」
「……いい、けど」
「ありがと、ご主人さま」
 うん、こっちの方が自然に出てくる。
 これがペットなのかあ、という、なんだか訳のわからない感慨に浸るあたしと、……顔が真っ赤っかのご主人さま。
 ご主人さま、照れてる。まるであたしみたいだ。
 ……でも。
「……はぁぅぅ」
 今のあたしにはもう、そんなご主人さまをじっくり観賞している余裕はなくなってきていた。
 心が落ち着いた途端に、あたしのおま○こが激しくうずき出したのだ。
「ご主人さまぁ……おま○こが、熱いですぅ……」
「……ん、どう、気持ちいい?」
「きもちいいです……でも、ホンモノが欲しいです……」
「そ……ミヤコ、ちゃんと頭上げて、四つんばいの姿勢になって。よいしょっ」
 といって、ご主人さまはあたしの下から抜け出る。
「うわ……いやらしいな、ミヤコの格好」
「はぅ……」
「ミヤコ、もっとおしり上げてごらん」
「はい……」
 あたしは、おしりを限界まで上げる。
「……ミヤコ、おま○こグショグショだよ?
 僕、全然触ってないのに」
「だって……ご主人さまのが入ってる感じがして、きもち、よくってぇ……」
「ド淫乱だね」
「……はいぃ……ミヤコはド淫乱ですぅ」
 真っ赤になりながら、あたしはご主人さまの言葉を受けいれる。
「ミヤコ、犬らしく、このまま入れるよ? おねだりして見せて?」
「はい……っ」
 めっちゃくちゃ恥ずかしいけど、ご主人さまに命令されたのが嬉しくて、そしてとにかく早く入れてほしくて、あたしは必死でセリフを考える。
「ご主人さまぁ……ミヤコのぐちょぐちょのおま○こに、後ろからお○んちんを食べさせて……ミヤコを、いっぱい気持ちよくして……セックスしか考えられないカラダにしてくださいぃ!」
「……都ちゃん、良くそんなの思いつくよね」
 あ、「都ちゃん」って……
 ずぶずぶ……っ
「くあああぁぁぁっぁあああんんん!」
 きたぁ……!
 お○んちん、きたぁ!
「くっ」
 ああぁ……ぁ…
「ミヤコ、気持ちいいよ…………あれ? ミヤコ?」
 きもち……いい……
「ミヤコ!」
「ぅえ?」
「気持ちよすぎて、うっとりしてた?」
「はぃ……ごしゅじんさまので、あたま、まっしろですぅ……」
「僕も、すぐイキそう……」
「ごしゅじんさまぁ……せいえき、ください……せいえきで、いっぱい、イキたいですぅ……」
「ん……その前に」
「ふぇ?」
「ミヤコは、イクまで四つんばいの姿勢でいられる。だけど、僕がイクまで、ミヤコはイクのを我慢しなきゃいけない。イキたくてもイケないんじゃなくて、イクのを我慢するんだ。わかったね?」
「はい……」
「じゃあ、激しくするよ!」
「はいっ! ……ふぁ、あん! あん! あんっ!」
 い、いきなり、はげしっ!
「あん! あん! あん! あん! あん! ごひゅ! じん! さま! らめ、れすっ! もう! いっ! ひゃい、ますっ!」
「まだダメ! おま○こに力入れて、我慢だっ!」
「はいぃっ! くぅ! ふああっ! くぁん! だめ! だめ! もっ、と! きもひ、よふっ! な! ひゃぅう!!」
「僕も、気持ちいいよっ! おま○こ、限界まで我慢しなっ! すぐ、イクからっ!」
「らめっ! らぇっ! ぅああっ! おまん! こ! こわっ! こあれ! ひゃうっ! ちゃっ! らめぇっ! いっ! いき! ぃああっ! たい! いき! たいぃ! おま! こっ!」
「うりゃっ! イクぞっ!」
 びゅっ! びゅるぅぅっ!
「おああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!」
 どさっ
 ……し……しあ……わ……せ……

「首輪、外すよ」
 そう言って、ご主人さまは首輪に手をかける。
 留め金が外れて、首輪があたしの首から離れて……「ぽこん」と音を立てるようにして、あたしの心が元に戻る。
 目の前には……涼の、いつもの笑顔だった。
 ふと、涼がつけてるペンダントが目に入る。
 あたしも、ペンダントをつけている。
 首輪を着けている間も、ペンダントはあたしの首にあった。
 どんな催眠がかかっても、あたしは涼の彼女。
 なんとなく、あたしはそう思った。
「どうだった?」
「……」
 ……ありゃ、まだ完全に戻ってないかもしれない。
 ……まあ、いいや。
 抱きっ
「うわっ」
「涼……だいすき……」
「どうしたの、突然」
「いいじゃん……涼、愛してる」
「うん、僕も愛してる。……絶対、誰にも渡さない」
「ありがと……」
 涼に抱きついて、うっとり、うとうと。

 あたしがいつもの調子に戻って、涼を罵倒し倒したのは、これから10分くらいあとの話だ。

< つづく >

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