つい・すと 3日目・午前

3日目・午前 忘我

 俺達四人は、昨日の昼飯の時と同じ場所にシートを並べた。昨日と同様、日焼け止めクリームを塗る。

「やっぱり、いい手触りだな……」
 千晶の背面をクリームで撫でながら、俺はつぶやく。
 いい手触りは肌もそうだが、水着もだった。昨日の水着もつるりとして触り心地が良かったが、今日の水着はそれだけでなく、少し生地が薄い感じがする。その代わり、その生地は千晶の身体にピッタリと密着していた。
 続いて、千晶を仰向けにする。昨日と同様、千晶のおっぱいにクリームを塗ろうとしたときだった。
(ん?)
 水着の上部から少しだけ指を突っ込んだときに、その事実に気づいた。
 ブラジャーのカップ部分。それが、とても薄い。その上、カップとしてはとても柔らかく、申し訳程度のものにしかなっていなかった。
 これじゃあ、少しでも何かあったら、外から分かってしまうんじゃないだろうか。
(……まあ、いいか)
 もしかしたら、このカップも最新素材で高性能なのかもしれないけれども……仮にそうでなくても、ここには四人しかいないわけだし、殊更に咎める必要はない。
 それに……外で乳首を尖らせた千晶が見られるなら、それはそれで眼福だと思ってしまった。

 空は青く、日差しが強く照りつけているのも昨日と変わらない。しかし、昨日と違うのは天気予報だった。ミリアが言うには、今日は早い時刻から激しい雷雨が襲うかもしれない、という予報らしい。平坦な土地である海岸で雷に襲われるのは危険だ。すぐにコテージに戻れるよう、遠出はしない方がいい、というアドバイスをもらっていた。
 俺達も最近の気候はよく理解しているので、そのアドバイスに異存はなかった。

「ねえ、俊ちゃん」
「ん?」
「今日は、一緒に遊ぼ?」
 準備運動を終えると、千晶が珍しく誘ってきた。もちろん拒む理由は無い。マコトとの勝負は昨日やったし、千晶の機嫌をとるのも大事だ。ああいや、千晶と遊ぶのが楽しいのは当然だぞ。というか、見ているだけで楽しい。動きが可愛いし。

「じゃあ、私達は私達で遊びましょう」
「うん。まあ近くで遊べばいいよね」
 千晶の提案を受けて、叶とマコトも足並みを揃えた――そのタイミングで、腰から音がした。
 スマホの通知だった。

 俺達はスマホケースからスマホを取り出す。昨日と同様、三人は太ももに、俺だけは腰にケースを巻いていた。通知を開いた。

『次のアトラクションのための準備です。クーラーボックスの中に紙袋が入っていますので、その中にある物体を一人一つずつ、水着の股間部分にあるポケットに入れて下さい。』

 スマホをしまった俺は立ち上がり、クーラーボックスを開けた。
「あれ?」
 俺は首をひねった。理由は二つあった。なぜ俺はクーラーボックスを開けようと思ったのか。そして、なぜクーラーボックスの中に謎の物体があるのか。
 クーラーボックスには、俺達の昼食が入っている。しかしその端に、それらとは様子が全く違う、茶色の紙袋が入っていた。
 俺はそれを取りだし、クーラーボックスを閉める。
「何だそれ」
 気づくとマコトがのぞき込んでいた。マコトのおっぱいが正面から目に入り、一瞬ビビる。
「何だろうな」
 動揺を隠すように、目を紙袋に移して、俺はそれを開けた。

 そこには、四つの卵形の物体と、カードが入っていた。色は、白が二つ、紫と赤が一つずつだ。カードには、女性らしい字で「青紫のものは俊一様用、赤紫ものは真琴様用、白いものは千晶様と叶様用です。水着に装着して下さい」と書かれていた。おそらく、ミリアの字だろう。
 「装着」という二文字で、思い当たった。

 さっき、水着を選ぶときに、よく分からない点が一つあった。股間部分の布が二重になっているのは普通だが、どの水着もポケットのようになっており、内側から小さい物体が入るようになっていたのだ。てっきり女性用水着はそういうものなのかと思っていたが、どうやらこれを着けるためだったらしい。
 俺はマコト達に、その物体を一つずつ渡した。

 俺達はバラバラに木陰に入った。他の三人から見えなくなったのを確認して、俺は水着を少し下ろす。
 その物体は、形状だけなら、それなりの経験者なら大体想像がつくものだ。ただ、コードらしきものは全く見あたらない。それに、よく触ってみると、感触はプラスチックや金属の類ではなかった。例えるならば、錠剤をものすごく固くして、表面をつるつるに磨いたような感触だった。
 ポケットのサイズはその物体に対してぴったりで、それを入れるだけでしっかり場所が固定された。そして水着を元に戻すと、その物体はマンコの上部に密着した。自分のマンコの構造は直接見ていないが、そこがクリの位置であることは間違いない。その事実は、俺がこのあとどういう目に遭うかをほとんど明示していた。

 ……どういう感覚なんだろう……
 背中を冷や汗が流れる感覚のように、その意識が身体を流れる。

 性の道具は、千晶に何度か使ったことがある。千晶は機械からの刺激も平気で貪るタイプだった。バイブを乳首に押しつけたときは、喘ぎ声が止まることなく漏れた。マンコに挿入したときは、腰を突き上げて悦んでいた。そして、それをクリに押しつけたときは……狂ったような嬌声を上げ、ブリッジの体勢で絶頂し、潮を噴いていたのを覚えている。

 もしかしたら。
 その感覚を、もしかしたら俺も味わうことになるのだろうか。

 俺の身体は、すでに完全に女だ。その身体が、快楽に仰け反る様子が頭に浮かぶ。
 考えたくない。しかし、考えたくなってしまう。
 その時、俺はどんな顔をしているのだろうか。どんな声を出してしまうのだろうか。

 俺の背中を汗が伝う。それは緊張のせいなのか……あるいは期待のせいなのか、自分でも分からない。

 俺が集合場所に戻ったときには、千晶と叶がすでにいた。二人の股間にはぽっこりと、その物体分だけの膨らみが見える。そして、
「っ!」
 案の定、水着のブラジャー越しに千晶の、そして叶の二つの突起が見えた。叶の水着も、どうやらカップが薄いようだ。そして二人のそのカップは、「おっぱいの外見を守る」という役目を完全には果たせていなかった。
 二人の胸元は、興奮しているという証拠だ。二人も、股間に取り付けた物体がどういうものなのか、予想がついたのだろう。俺は、思わず目を逸らしてしまった。
 そこで、はたと気づく。
 下を向く。そこにも、二つの突起が、立ち上がっていた。茶色とピンクの中間のような色だった。

「お待たせ」
 最後にマコトが戻ってきた。マコトも俺達と変わらず、物体大の股間の膨らみと、勃起した乳首を携えている。
 四人が四人とも興奮しているという事実に、俺の身体の奥がかっと熱くなる。何か言おうとしたが、何も言えなかった。千晶達も、明らかにその事実には気づいているのが、目の動きでわかる。気まずい沈黙だった。
 誰かが二言三言しゃべっただろうか。とりあえず俺達はスマホケースを外し、波打ち際に近づいた。――歩きながら、俺は考える。

 身体が女になったというのに、なんで俺には抵抗感が薄いのだろう。
 自分の身体が自分の知っているものと全く違うものにされた上、さらに狙い澄まされたようにエロい予感を抱かされているのに、――多少の不安は感じるものの――なぜ、こんなに冷静でいられるのか、と思う。
 自分の身体に、「男として」興味がある。それは事実だ。旅行のアトラクションだと思っているのも事実だ。でも、それだけではないという感覚がある。

 数秒考えて。思い当たる節は、あった。ただ――それは深く考えてはいけないということに気づき、思考を止めた。

 ばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃっ。
 バタ足で必死に泳ぐ千晶の横を、俺は平泳ぎでついて行く。

 せっかくだから千晶も泳いだらどうだ、と提案したら、こうなった。
 千晶は泳げないわけでは決してないが、ちょっと心配なので波打ち際ギリギリの浅瀬を泳がせている。万が一力尽きても足がつくところだ。

「ぷはっ」
 波打ち際にたどり着いて、千晶は顔を上げた。海岸仕様の大きい三つ編みが揺れる。あとついでに黄色のバラも。
「よくできました」
 ポン、と頭を軽く叩いてやる。千晶は大きな息をつきながら、俺にしがみついてきた。
「うわっ」
 引きずられて、すっ転ぶ。ばちゃん、と大きな音が上がった。
「仕返し」
「仕返しじゃねーよ、お前がやるっていったんだろ!」
 「仕返し」とはつまり、「何であたしにこんなに泳がせたの!」という意味なんだろう。といっても、二十五メートルも泳いでないし、本人も本気じゃないとは思うが。
「逃げる!」
 さらに絡まれそうだったので、俺は来た水路を平泳ぎで戻り始めた。千晶はとっさの判断で、再びバタ足で俺を追いかけてくる。
 俺は千晶が溺れないか、後方を十分に注意しながら、追いつかれないように元の位置近くまで戻った。

 千晶が無事にたどり着き、立ち上がった。黄色のビキニはやはり刺激的で、でも千晶にはよく似合っていた。そしてその股間には、先ほどと変わらない膨らみがあった。もしかしたら海水で溶けるものじゃないのかと少し思ったが、杞憂だったようだ。
 マコト達に目を向けると、俺達から五メートルほど離れたところで叶がビーチボールと戯れていた。ビーチボールは昨日使ったものと同じだが、今は波打ち際にビーチボールを浮かべ、叶がしがみついている。叶はそのまま波に乗り、波打ち際に座っていたマコトに突っ込んでいった。
「うぉっ」
 ビーチボールがマコトに直撃し、マコトがひっくり返る。
「あはは」
 叶が、そして千晶が声を上げて笑った。
 その時だった。

 ぼぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………
 どこからか、汽笛のような音が、聞こえた。

「はうっ」
 その音に脳を揺さぶられるように、急激に意識が混濁した。
 同時に、股間がじわり、と熱くなる。
 全身から力が抜け、崩れ落ちるように座る。辛うじて、水に突っ込んではいけないという判断だけはできた。

 頭の中が灰色になり、まともな思考ができなくなっていた。その一方で、全身がビクビクと震える感覚がある。
「ああ……っ」
 バイブだ。バイブが小さく震えていて、俺のクリをピンポイントで炙っている。
 数秒のうちに、クリからの刺激が上半身に、全身に伝わり、身体が火照っていく。
 一瞬だけ、周りが目に入った。千晶は砂浜に座り込み、マコトと叶は転がっていた。そして、頭上の花が白く光っている気がする。直射日光と、朦朧とした意識のせいで、確信は持てなかったが。ただ、三人とも、波で窒息しそうな位置ではないことだけは分かった。

 一瞬の安心が、油断になった。

(気持ちいい……)
 不意に、思考が快楽に囚われた。
 ぼうっとした頭は、夢の中にいるような感覚をもたらしていた。全身がふわふわとして、現実感がなくなっていく。それでいて、クリからの刺激は急激ではなく、心地よい感覚が全身を包んでいた。うたた寝に落ちるときのように、急激に周りのことがどうでも良くなり、そのまま、何もせずに茫然としていたくなった。

 俺は目を閉じて、快楽の虜になるのを自覚した。

「はぁぁ……っ」
 僕はうつぶせに倒れたまま、感覚に戸惑っていた。
 水着に入れた小さな物体が何かは、さすがの僕でも何となく気づいていた。今、その物体からの刺激が、おまんこを、クリトリスを捉えて放さない。
 だけど、僕の戸惑いはそれだけじゃなかった。
「うあぁっ、ダメだ……っ」
 おまんこだけではない。全身が既に、火照りきっていた。
 いつもなら、僕が本気になるまではかなりの時間がかかる。その前に強い刺激を受けても、気持ちよくならないどころか、気分が悪くなってしまうことすらある。
 でも、
「ダメだ、感じる……っ!」
 僕は、あっという間に気持ちよくなっていた。とてもまずい状況のはずなのに、頭の中にモヤがかかって、思考が働かなくなってくる。その上、身体がとてもだるくて、なかなか力が入らない。
 どうすればいいかも分からないまま、必死の思いで、身体を動かそうとする。のっそりと、何とか右腕が動いた。
 その時だった。

「…………なつ……」

 声が聞こえた。聞き慣れた声のような気がしたけれど、一瞬誰だか分からなかった。

「……まことさん……」
 二度目の声で、わかった。
「かな、え……っ」
 声のする、叶の方向に、手を伸ばした。
「ぁっ……」
 伸ばした手に、柔らかい感触が触れた。その瞬間。

「ぁぁぁぁ……っ!」
「はぁんっ!」
 手から、僕の全身に、痺れるような快感が襲った。同時に、クリトリスの刺激が、急激に高まる。とたんに、思考がすっぽ抜けて、自分が何を考えているのか分からなくなった。

「おおお……」
 どれほど時間が経っただろう。
 
 膝を折り、足が横に開いている。女の子座りになっていることを、身体の感覚でやっと理解した。
 快楽は全身を包むように柔らかく、それでいて時に刺すような刺激がある。身体の芯が激しく熱を発し、じゅくじゅくと蕩けていく。指一本すら動かす気にならない、あまりに退廃的な悦楽。
 意識が全身の悦びに吸い寄せられて、他のことに頭が回らない。考えたいとも思わない。
「あうぅ……」
 口から、勝手に声が漏れた。音程の高い声と、ろくに働かない意識のせいで、自分から出た声なのに、自分の声だと思えなかった。
 上を向いているはずなのに、口の端から涎が垂れていく。しかし、それを拭う気にも、つばを飲み込む気にもなれない。
(気持ちいい……)
 それは、果てしない快楽。俺の身体は、どこまでも、どこまでも堕ちていく。

(あ……)
 不意に。
 身体の奥に何となく、寂しいような、切ないような感覚が生まれた。お腹のあたりに、少しずつ隙間が広がっていくような感覚。身体の芯が蕩けるごとに、その隙間が大きくなっていく。全身が快楽に蕩けているのに、その部分だけ、空洞のような、秘められた場所。
 埋めたい、と思った。
 そこさえ埋めれば、身体の全てが、快楽で埋め尽くせると思った。
 そこを埋めるものが欲しかった。
 そう、例えばそこに、何かこう、太くて、固くて、長いものを――

 はっとして、俺は両目を開いた。
 ――俺、今、何を考えようとしていた?
 血の気が引くような感覚が、俺の正気を引きずり出した。危なかった、と思う。

 一瞬できた余裕で、目を走らせた。千晶は耐えきれなくなったのか、仰向けに倒れ、身体を揺らしている。びくんびくん、と上半身が震えて、おっぱいが揺れている。
 俺は、動かぬ身体に鞭を打って、両腕を前に伸ばして、千晶の元に向かおうとした。

(うあっ)
 だがその動きは、予想外の衝撃で出鼻をくじかれた。
 四つん這いをしようとしたものの、腕に力が入らず、上半身ごと砂浜に倒れてしまう。
「はうっ!」
 途端に、全身を強烈な刺激が襲った。
(……マジかよ……)
 信じられないことに――砂に擦れただけで、上半身が快楽を訴えた。
 しかし、千晶が苦しんでいる以上、俺がへこたれるわけにはいかない。気合いを入れて、そのままほふく前進を始め、

「あっ、あっ、ああああぁっ」
 ……三歩しないうちに、失敗を悟り始めていた。
 砂が上半身を――特に女乳首を擦る刺激は、今の俺には強すぎた。それに、クリは今もバイブに炙られ続けている。
(やっぱり、気持ちいい……)
 せっかく取り戻した自分の理性が、音を立てて崩れていくのを感じる。全身が挟み撃ちの快楽に染まっていく。それは昨晩味わった快楽より濃密で、一瞬、自分が「メスにされる」という危機感を覚えた。しかし、その危機感も、快楽の波を浴びせられるたび、砂浜に書かれた文字のように薄くなっていく。
 そして、その文字が消える直前に、自分の間違いに気づく。
 「メスにされる」じゃない。今の俺はもうとっくに、
(頭の中が、メスになってる……!)
「ああああ、あ、ああ、ああっ、きもちいいっ」
 俺の口が、勝手に快楽を漏らす。身体はとっくに、快楽を全面で受け入れている――そのことに、気づいてしまった。そんな生物が、メスでなければ、何だというのだろう。

 そのような思考に囚われ、もう、なぜほふく前進をしているのか、分からなくなりかけた頃。やっとのことで千晶にたどり着いた。
(なんとかしなきゃ……)
 何をしていいかも分からないまま、俺は必死の思いで千晶に覆い被さった。
 その瞬間。
 クリを襲うバイブの威力が、急激に上がった。
「ああああああああああっ!」
「あん、ああんっ!!」
 俺の理性が力尽き、頭の中が完全に灰色になった。

 俺の身体に触れた女体は、俺と同じくらい火照って、すべすべしていた。砂が擦れて落ちていき、肌が擦れ合う。それだけで、俺の全身が快楽の悲鳴を上げる。
「あ……あっ……」
 言葉が出ない。白と黒が混ざる灰色の、白い部分が濃いピンク色に染まっていく。
 相手の女体がうごめくだけで、水着が、肌が俺の肌に擦れ、身体が悦楽に爛れていく。クリバイブの快楽で覆われた全身に、さらなる刺激が重ねられ、火を噴くように全身が燃え上がる。
「はんっ!」
 相手のブラジャーの裾が俺の女乳首に引っかかり、悦楽の火花が飛び散った。
 クリへの刺激との相乗効果で、全身が痙攣する。それは紛う事なきメスの快楽だったが、俺はそれを理解することすらできなかった。
「はうぁっ!!!」
「あんっ! あんっ! ああああんっ!! 気持ちいいっ!!!」
 声が耳に入るが、誰のものか分からない。どころか、何の声かも分からない。とにかく気持ちよくて、気持ちよくて、キモチヨクて、きもちよかった。
 必死で胴体を擦りつけ、擦過の快楽を求める。手足を動かすなんて、頭になかった。マンコがドロドロになって、さらに熱くなるのだけが分かった。

 僕は柔らかい女体に覆い被さって、胸を押しつけていた。
 何が起こっているのか分からない。相手が誰なのかも分からない。だけど、僕のおまんこが熱くて、熱くて、快楽を皮膚から昇華することで頭がいっぱいだった。
 相手の胸は大きくて柔らかくて、完全勃起した僕の乳首にぶつかるたび、激しい快楽が僕を貫く。
「おおおおおおおっ」
「ひいいいっ」
 水着のショーツの中で、クリトリスがピンポイントで刺激されて、全身の快感がクリトリスに同化していく。クリトリスに思考を支配されたみたいに、快楽が全てになる。
「おおおおおおっ! あおっ! あはあああああっ!!!」
 身体の奥の熱が限界を超え、僕は頂点に走り出した。こんな快楽は初めてだった。だから、頂点に届いたら僕が壊れちゃいそうな気がして、頭が期待で真っ白になった。

 その時だった。

「あっ!? うおおおおああああああああっ!!!」
 ただでさえ熱かったおまんこが、灼熱にさらされる感じがした。
「あああああああああいあいいいいいいいいいっ!!!!」
 誰か他の人の声も耳に入る。
「お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおお」
 その灼熱こそが、凄まじい快美だった。おまんこの細胞一つ一つが激しい快楽に包み込まれて、全身が痙攣するのを辛うじて感じた。
「おほおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 おまんこが蕩ける。錯覚じゃなくて、本当に形が変わっていく感覚。
 その感覚を最後に、僕は快楽の獣になった。おまんこから何か噴き出すような、漏れるような感覚が、幸せとしか感じなかった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
 僕は全身から快楽を噴き出させて、気を失った。

 ぼぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………

 遠くから汽笛が響き、がばっ、と俺は起き上がった。急激に意識がはっきりして、強い危機感と共に目覚めた。
 俺の身体の下には千晶がいた。五メートルほど向こう側には、マコトと叶が組み合っている。全員目を覚ましていて、マコトは俺と同様、こちらを見ていた。

 ……自分の身に起こったことは、はっきり覚えている。

 俺達は全員、バイブに襲われたのだ。そして、感じまくった。俺も、女の快楽に打ちのめされた。そして同時に、頭の中がメチャクチャになった。途中から、目の前にいる人間が千晶だということが、全く分からなくなっていた。多分、俺以外の三人も同じ状況だったのだろう。
 開放的な環境でありながら、気まずい空気が充満していた。何を言えば、何をすればいいのか、全く分からない。

 その空気を打ち破ったのは、人間ではなかった。

 ごろろろろ……

 その音に、俺達は空を見上げた。
 正午になってもいないのに、既に空の半分を入道雲が覆っていた。沖の方が煙っている。打ち寄せる波も不自然なくらいに泡立っていた。
「ヤバいぞ」
 ありゃあ酷い雨だ。昨日の比じゃない。
「コテージに帰ろう!」
 マコトが大きな声を上げた。

 立たない腰に無理を言わせながら、荷物を素早くまとめ、俺達はコテージに引き返した。しかし、既に雨が落ちる音が聞こえており、豪雨に襲われるのは時間の問題だった。俺とマコトで荷物の大半を抱え、コテージに走った。

< つづく >

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