淫魔 (1)

(1) 淫 魔

 暖冬の影響か、3月半ばというのに桜のつぼみが今にも咲きそうに膨らんでいる。気象庁の予想では例年よりかなり早くなりそうだ。そんな桜の木が街路樹に並ぶ都内のある繁華街の駅前の広場。その広場のベンチに先ほどから一人の男が座り、行き交う人の流れを遠い眼差しで眺めている。土曜日の朝という事もあり、人の流れは大半が駅から街の方向へ向かっている。映画でも見に行くのか、若いカップル達の姿が多く目につく。また、これからナンパでもしに行くつもりか、男どうし数人でまわりを物色しながら歩くグループもいる。男の目はそんな風景は目に入っていないのか、何か思いにふけっているようだ。
 身長は180cm程あろうか、かなりの長身である。何かスポーツでもしているのか肩幅もがっしりとした筋肉質の体型に精悍顔立ち。一見、柔和そうにも見えるが時折見せる何かを見つめる目つきは異様に鋭い。男は胸ポケットから愛用のマルボロを1本取出し口に咥えて火をつけた。そして、紫煙をくもらせながらつぶやいた。
「ふっ、明美もここらが捨て時だな。1ヶ月前までは男を知らない清純な処女だったのに、今ではすっかりチ○ポ狂いの淫乱女になりざがってしまったな」
 男の名は神山直人、32歳。明美というのは都内の某大学に通っている20歳の女子大生である。明美は直人の持つ特殊能力の毒牙にかかり、それまで男性経験もなく清純な少女だったのを、わずか1ヶ月で変態の淫乱雌奴隷に人格改造されてしまったのである。昨夜も直人は明美の部屋に泊まり込み明美を犯し続けたのである。深夜には浮浪者の溜まり場である公園に連れて行き、公園で浮浪者5人に相手をさせた。人格改造された明美はそんな状況の中でも激しく男を求め、口・膣・アナルの3つの器官を浮浪者の男根に貫かれよがり狂った。浮浪者の腐りきった男根にも嫌がる素振りもみせず、激しく顔を上下させしゃぶりつくその姿を見て明美の調教は完成したと直人は確信した。その後、浮浪者5人を明美のマンションの自室まで連れ帰り乱交をさせた。今、こうしている間も、まだ乱交は続きハメ狂っているはずである。
 ふと目をやると駅の反対側からどこから沸いてきたのか、昨夜とは違う浮浪者が十数人近づいてきた。
「ふふふ、来たな。それでは最後の仕上げをしておくか」
 浮浪者達は直人の前に集まり、正面に立った一人の浮浪者が話し掛けた。
「兄さん、言われたように仲間を連れてきた。18人いる。本当に俺達に宿を提供してくれるのか」
「ああ、宿だけじゃない。女も提供してやる。今からこのマンションに行ってこい」
 直人はそう言って、明美のマンションの住所を書いた紙を手渡した。
「その部屋に一人の女性が住んでいる。名前は高原明美、21歳の可愛い女子大生の女の子だ。だが明美はかわいそうな事にセックス依存症という病気に冒されている。この病気の治療法はその欲望が満たされるまで、ただひたすらセックスをするしか方法がない。今、君達の仲間の浮浪者5人が彼女の相手をしているが、わずか5人では彼女の性欲を満足させる事はできないだろう。そこで君達にも手伝って欲しいんだ」
 常識では考えられない事だが、直人の話を浮浪者達は疑うことなく聞き入っている。そう、神山直人の特殊能力とは思念により人の脳に働きかけ、人の精神を操作する事ができるのだ。明美も直人により精神操作され変態淫乱女へと改造されたのだ。今では明美への精神操作は全て解いてあるが、何度も繰り返し性調教を受け、快感をむさぼり続けた結果、本当の淫乱女になってしまったのである。
 直人は続けた。
「君達で協力して明美を犯してあげてくれないか。もちろん避妊などする必要はない。口、オマ○コ、アナル…どこでも好きな場所に生で挿入して中出ししてやって欲しい。その方が明美も喜ぶ。君達も久しく女を抱いた事はないだろう。明美はオマ○コとアナルはかなり使い込んでいるが、まだまだ形はきれいで締まりもいいぞ。フェラのテクニックもプロ級だ。これはいわば人助けなんだ、人助けをしながらいい思いができるんだから、こんないい話はない。君達が気に入れば何週間でもそこに泊り込んでもかまわない。部屋は2DKで20数人が住むには少し狭いが、外で寝るよりはずっと快適だろう。条件は明美を休ませずに犯し続ける事だ」
「わかった…人助けにもなることだしな…」
「ただ、食事だけは与えてやってくれ、それもセックスしながらだ。明美はそんな状態だから食事の準備もする事ができない。残飯あさりは君達得意だろう。明美は残飯でも何でもセックスしながら喜んで食べる。ただ、喉を詰まらせてはいけないから出来ればよく噛んだ後、口移しで食べさせてあげて欲しい」
「食いもんは大丈夫だ。この街には食堂やレストランから出るゴミ袋にいくらでも食いもんはある。女の食事はまかせておけ」
 そう言って浮浪者達は明美の部屋に向かっていった。
「ふふふ……楽しみだな……しばらくしてから様子を見に行ってやるか。明美もこれで終わりだな。淫魔のやつも満足だろう」
 直人は不敵な笑いを浮かべながら、浮浪者たちが去っていくのを眺めた。
 直人が口にした淫魔とは・・・

 直人のこの特殊能力は元々あったものではない。それは12年前直人が20歳の頃である。元々直人には身寄りがいない。物心つく以前より施設で育ち、両親は亡くなったと聞かされてきた。中卒で鳶の仕事についたが長続きせず、ボクサーになるためジムに通い始めプロ資格をとったものの暴行事件をおこしジムを追放された。その後は職にもつかず不良グループとつきあうようになり、万引き、空巣、恐喝、と犯罪に手を染めるようになっていった。レイプも常習的になり、その日も深夜人気のない公園にまよいこんできたカップルを襲った。
 男は彼女を守ろうと果敢に立ち向かってきたが、元プロボクサーの直人にかなうはずがない。
 直人は男の顔面の急所に渾身のパンチを入れ、たった一発で相手を気絶させた。直人は男をKOした後、逃げ走る女をなんなく捕まえ押し倒した。泣き叫ぶ女の顔を平手で容赦なく張り飛ばし抵抗を失わせると、着ていた服を強引に引きちぎり無理やり男根を挿入した。恐怖と恥辱に歪む女のすすり泣く顔を見ながら、直人は余裕で腰を使い自慢の男根を女の秘部に叩き込んだ。嫌がる女の反応を楽しみながら射精が近づいてきた事を感じたその時、直人の後頭部を強烈な衝撃が襲った。
「てめえ……」
 気絶させたはずの男がいつのまにか背後に忍び寄り、憎悪の視線を直人に向けていた。手には血痕のついたこぶし大の石を持っている。
「この野郎、ふざけやがって……」
 直人は女から離れ男に立ち向かっていこうとしたが、身体が思うように動かない。そして目の前が急に暗くなってその場に崩れ落ちていった。
 どれくらい時間がたったのだろう。直人は身体が宙に浮くような妙な感覚にとらわれ目覚めた。いぶかしげに周りを見渡すと、下半身裸で頭から血を流し倒れている自分がそこにいた。
(何だこれは……俺は死んだのか……いやそんなはずがない、誰かいないか……救急車を呼んでくれ)
 直人は状況がよく飲み込めないでいると、向こうから直人に近づいてくる人影か見えた。老人のようだが、かなりみすぼらしい格好をしている。老人は直人のすぐ前まで来て立ち止まった。
(おい、助けてくれ!)
 直人は必死で叫んだが声にならない。老人は黙って直人を見下ろしている。
(おい、聞こえないのか!救急車を呼んでくれ!)
『直人』
 老人が直人に話しかけてきた。いや、話しかけたように思えたが老人は声を発していない。直人の脳に直接語りかけているのだ。
『直人』
 再び老人が呼び掛けた。
(誰だ、何故俺の名を知っている)
『そんな事はどうでもいい……直人、お前はすでに死んでいる』
(………)
『生き返りたいか?』
(あたりまえだ……助けてくれるのか)
『生き返るとまず何がしたい』
(決まっている、さっきの女を探し出してもう一度犯ってやる……あの野郎、ふざけやがって……男の方もただじゃおかねえ)
『ふふふ……合格だ。ではその手助けをしてやろう』
(お前、何者だ)
『お前達人間は悪魔と呼んでいるようだ』
(何?)
『悪魔にもいろいろあるが、俺は人間の性欲を貪る淫魔だ』
(淫魔?)
『この身体は古くなってもう使い物にならん。お前のその若く逞しい身体が欲しい。その代わりお前にもいい思いをさせてやる』
(俺にとり憑くつもりか)
『とり憑くというのは少し違う。共生するといったほうが正しい。お前は自分の欲望のまま女を犯すだけでいい。お前のその貪欲な性欲が俺の食料になる』
(なんでもいい……助かるのならな)
『では取引成立だな』
 老人がそう言った瞬間、目の前に閃光が走り直人は目を覚ました。ぼーっとしてまだ頭がはっきりしないながら、無意識に後頭部の傷口に手をまわしてみると、血糊は残っているものの傷口は完全にふさがっている。すぐ横には朽ち果てたような老人の死体があったが、直人は見向きもせず衣服を整えると闇の中に消えていった。
 直人は淫魔と共生する事により様々な能力を得た。思念により人間の脳を操作し、思考や、痛み、快楽といった感覚も自在に操る事ができるようになった。また、直人自身の身体にも変化がみられ、それまでも自慢だった男根がさらに巨大化し射精も自分の意志でコントロールできるようになった。淫魔がそれを欲しているのか、以前にも増して性欲が強くなりその気になれば何度でも射精が可能になった。
 直人がその能力を使って自分を殺したカップルに復讐したのは言うまでもない。男は記憶を失って廃人になり、女はさんざん犯したあげく男狂いの淫乱女に改造して、東南アジアの現地人専用の安物娼婦として売り飛ばした。
 その後も直人は淫魔の力により次々に美女を毒牙にかけていった。狙われた女は例外なく、最後は人間以下の肉便器への道をたどり、発狂するかまたは死んでいった。しかしこれらは世間に公になることはなく、全てただの失踪事件として扱われてきた。
 コンビニでアルバイトをしていた女子大生の明美も、たまたま店に立ち寄った直人に狙われた。明美はこれから毎日20人以上の浮浪者に寝るまもなく犯され続ける事になる。いずれ明美もまた人間便器となり一般社会から消えていく事になるだろう。

 直人はそんな明美の痴態を脳裏に浮かべながらニヤリと笑った。その時一人の女性に直人の視線を釘付けにした。年は24~25歳くらいだろうか。ふくよかな胸のボデイラインがはっきりわかるピンクのニットシャツの上に、淡いベージュのジャケット。ジャケットと揃いのプリーツスカートから伸びるスラリとした脚線は細すぎず理想的だ。清純派女優を思わせるような整った美しい顔立ちにバランスの取れた体型、また肩にかかる程度のストーレートの黒髪が実に眩しい。
「上玉だ……」
 女はキャスターのついたブランド品のバックを転がしながら、人の流れとは逆に駅の方に向かって歩いている。彼女と行き違った男は例外なく、通り過ぎたあと振り返った。
 直人は立ち上がり、商売道具の入ったショルダーバックを肩にかけ女の後をつけていった。女はやはり電車に乗るようで駅の改札を通り構内へ入っていった。直人は自動改札を避け、駅員を思念で操作して切符なしで改札をなんなく通り抜け女の後を追った。

< つづく >

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