他人史 第九話

第九話

 俺は悠々とゲームの課題に取り掛かった。・・・正確に言うなら、俺の場合はもう取り掛かり終わっていて、後は仕掛けの結果を待つだけなのだが。
 なので、俺のした事と言えばガラス戸から駒達に近づいただけだった。

「あっ、誠二君ちょっとお願いがあるんだけど」
 近づいてきた俺に、早速真須美が声をかけてくる。俺が頷くと、やや恥ずかしそうに頬を染めながらも、真須美ははっきりとお願いを口にした。

「君のザーメン飲ませてくれない? ちょっとバイトのノルマがきつくってさ。
 あっ、もちろん『トイレでオナニーして、採ってきて』なんて事言わないからさ。あたしがフェラするから、そのまま口に出してくれないかな?」
 お願いと両手を合わせて言う真須美。それに慌てたのは、茜だ。茜は真須美のお願いにくってかかった。

「ちょっと待ってっ! 兄貴の精液ならボクも飲みたいっ!」
「飲みたいって・・・茜ちゃんもバイト?」
「違うよ、男の人の精液を飲むと男らしくなれるから飲みたいんだ。ボク兄貴みたいになりたいから」
「男らしくて、茜ちゃん女の子じゃなかったけ?」
「いいのっ! ボクは男らしくなりたいんだからっ!」

 あっ、サイバーが腹を抱えて笑い出した。まぁ、笑うか引くかどちらかだろうな。実際俺も笑い出しそうだ。
 仕掛けは単純。真須美には、『ザーメンを飲む事がバイトの業務で、ノルマが迫っている。だから、友達の御堂誠二に飲ませてくれるようお願いしてみよう。バイトに協力してくれるのだから、サービスしてフェラをしてあげる』と書いて、茜のほうには『精液には男性ホルモンが含まれているので、精液を飲むと男らしくなれる』と書いたのだ。

 こんな事をしなくてもただ命令するだけでも良かったし、せっかくした工夫を活かさないのもなんだが、こっちのほうが受けが良いだろうと思ったら案の定受けたようだ。
 それで後は奈央だが・・・えーと、そろそろ時間のはずだけど・・・・。

「あたしも飲みたいんだけど、いい?」
 俺が時計を確かめた直後、奈央が手を上げながらそう言い出した。
「あなたも? じゃあ3人分かぁ。誠二君大丈夫?」
「俺なら構いませんよ。どーぞ、搾り取ってください」

 俺がそう言い終わった直後、奈央が俺の前にしゃがみ込むとズボンのチャックを下ろし始めた。あまりに無造作で無遠慮な行動に、真須美も茜も思わず見守ってしまう。・・・しまったなぁ。さすがに、恥じらいやら躊躇いやらまで事細かに書けるほど、時間も無かったから仕方ないとは言え不自然さは否めない。

「ああっ! ずるいっ!」
「大胆だねぇ、でもあたしも仕事だし負けてられないわね」
 2人は奈央の不自然さより、自分が出遅れた事に関心があったようだ。2人は・・・特に真須美は精子が有限(俺が精力を短時間で回復できると知らないため)だと知っているため、急いで奈央に続く。

 茜も真須美も奈央と同じく、処女なのに行動に恥じらいや躊躇いが無いのは・・・仕掛けが仕掛けだから、仕方ないだろう。
 奈央は取ったイニシアチブを活かして、独占する・・・様なことはしないで、2人が動くのを待つ。それを訝しく思ったかどうかは知らないが、茜がその間にサオを口に含むと、下手だがフェラを開始する。

「しょうがない、あたしは右で奈央ちゃんは左ね」
 出遅れた真須美はそういうと、俺の右側の睾丸を舐めたり口に含んで舌で転がしたりし始めた。積極的で大変よろしい。

 奈央はそれに従って、真須美とは反対側の左の睾丸を同じように舐め、舌で転がし始める。3人とも経験は無いから上手くはないが、それなりに気持ちが良い。これも結束の力だろうか。

 奈央にした仕掛け、それは簡単に言うと他人史で未来の部分に『俺に精液が飲みたいと言って、フェラをする』と書いたのだ。
 俺の他人史は未来に記述を書けば、対象の行動や身体の状態を操ることが出来る。なので、ある程度細かく記述を書けば、多少ぎこちなくとも自分で行動しているように見えるはず・・・っと、思ったのだが予想以上にぎこちない結果になった。

 3人のうち1人だけと言うのには無理があったようだ。真須美や茜の行動を予測できるほど、俺は洞察力や観察力が鋭く出来ていないのだ。どうせなら3人全員の行動を書き、即興劇のようにすれば・・・。
 ・・・まぁ、美少女2人と美女1人のトリプルフェラが味わえただけで、ある程度満足だから良いか。

 俺は妥協すると、3人のフェラを存分に楽しんだ。ちなみに、3人がそれぞれ精液を飲むためにフェラは場所を替え、3回続いた。

 配点はノイジー、5点 リキ、9点 俺、8点。リキの工夫と手際、そして成長性が評価されて高得点。俺の場合は、工夫が評価されたが奈央のぎこちなさで少々減点された。
 これで現在の総得点はノイジー、35点 リキ、27点 俺、26点。逆転が見えてきたが、いまだに最下位と言うのは、そろそろきつい。

 何かドンッと点をゲットしたい所だが・・・。
「次のゲームは・・・あっ、ボーナスゲームだ」
 おおっ、俺の願いが神に通じたか。

「次の種目は駒に共通の課題を競ってもらう。だから操作はしてもいいし、逆にしなくてもいい。1位は15点で2位は10点。三位とブービー賞は5点。最高で30点も取れるから、逆転の大チャンスだね」
「それで、肝心の課題は?」

「至って単純。・・・我慢大会」
「我慢大会って、まだ初夏にもなってないぞ?
「我慢するのは暑さじゃないんだ。ところで、3人ともスカトロってだめだったりしないよね?」
 そうサイバーが言った瞬間、俺達は何を駒達に我慢させるのかわかった。

 サイバーのメイド達が、手早く9人分のイルリガートルと大きな液体の入ったバケツを幾つも用意する。
「これから、浣腸する液体の量と種類をくじで決めてもらうから、それに従うように」
「一応聞いておきますが・・・種類と量はどれくらいなんですか? まさか、人間の限界以上の量を『能力で何とかして』とか言いませんよね?」
 用意されたバケツ一個一個がかなりの大きさなので、ノイジーの懸念はもっともだ。

「言わないよ、もちろん。量は少なくて0・5リットル。多くて3リットル。種類はぬるま湯から牛乳、グリセリン等等。ちなみに、酢酸とかやばいのは入っていないから安心して」
「酢酸・・・って、お酢がやばいのか?」
「やばいです。・・・グリセリンに慣れた女でも、泣いて苦しむくらい。腸が弱いと血が出ますからね。あれはすでに拷問らしいですよ」

 俺の質問に何故かノイジーが答えてくれた。・・・心なしか顔が青く見えるが、女にやった事でもあるんだろうか。
「液体の種類はプレイヤー1人につき1種類っ! 量は駒ごとにくじを引くこと。じゃあ、順番はどうでも良いから好きな人から適当にどうぞ」
 適当にどうぞと言われて、俺達はとりあえず最下位の俺からくじを引く事になった。

 くじの結果、俺はコーラ。3リットルが3つ。つまり、真須美にも奈央にも、茜にだってコーラを3リットル浣腸して、それを我慢してもらわなければならない。・・・くじ運悪すぎだろ。これは。

 リキはグリセリン。2リットルが1つと、1リットルが2つ。これは俺より軽いが、浣腸に駒が慣れていない場合は、きついだろう。

 ノイジーは・・・なんとアルコール。もちろん、急性アルコール中毒にならない程度に低い濃度だが、直腸に入れれば酩酊する事が確実な程度には高いものだ。量は0・5リットルと1リットル。そして1・5リットルと少なめだが、ノイジーの能力と相性が最悪なのは、どうしようもない。

「能力は、排泄出来ない様に肉体を操作するのは禁止だけど、他には制限無し。液体を入れるのはメイドがやるからそれまで準備して良いよ。あと、これは個人的な趣味と判定をやり易くする為だけど駒には肛門が見えるように、お尻を広げさせてね。
・・・ちなみに、駒が浣腸を嫌がって抵抗したらその時点で失格だから」
 その言葉に、俺達はそれぞれ慌てて駒達の所に急いだ。せっかくの逆転のチャンスを、そんな事で逃したくは無いから当然である。

「いいか、よく聞け。これから・・・」
 ノイジーは、今の内から詳細に命令をしておくつもりらしい。3人がアルコールでべろべろになったら、ノイジーの『命令』は、効かなくなってしまう。少なくとも、未成年の早織と理子はアウトだろうからノイジーも必死だ。

「ねぇ、リキ一体何をするノ?」
「何だか用意してるけど、あれって医療器具よね。あたし達、別にお腹の調子は悪くないわ」
「そうなんだが・・・君達にこれからグリセリンを浣腸することになった。2リットルぐらい」

「そっ、そんなにっ!? あたし達のお腹を破裂させる気なのっ!?」
 リキの正直な事情説明に、不安そうにしていたニナとケイトは顔面を蒼白にして、ドロレスはグリセリンの事はともかく、2リットルと言う量は理解できたようだ。

「ああ、だけど無理する必要は無い。すぐに出していい」
「出していいって・・・これに?」
 メイド達が用意した、空のバケツ。それがニナやケイト達の後ろに置かれていた。
「そうなんだ、頼むよ。我慢なんてする必要は無いからさ」

 拝み倒すように頼み込むリキ。普通なら張り手と共に拒否されるお願いも、今の彼女達なら渋々と言った様子だがきいてくれたようだ。
 しかし、我慢しなかったら得点が取れないんだが・・・ブービー賞狙いだろうか? それともこれも何かの作戦だろうか。

 それはともかく、俺も仕込みにかかろう。
「真須美、これから浣腸されるけど抵抗したりすぐに出したらだめだぞ。あと、肛門が良く見えるように手でお尻を広げてくれ。これも仕事だから頼む」
「浣腸がバイトなの? それに何だかここで出さなきゃいけないっぽいし・・・嫁入り前の娘がやる仕事じゃないよね、これは。お尻の穴とかウンチしてるところなんて、旦那にも見せないと思うんだけど・・・。
でも楽しいんだから仕方ないよね。あたしって変態かな?」

「いや、仕事を楽しんでやれるって大切なことだと思うよ。うん、マジで。
 茜も協力してくれるよな?」
「うん、協力するけど・・・ボクのこと嫌いにならないでね、兄貴」

「ならないならない。
 奈央は・・・頼んだ」
「頼んだって・・・それだけっ!? 多感な思春期の女の子に人前でお尻の穴を見せてっ、浣腸した挙句、この場で出すなんて事強制するのにっ!?」
「うん、それだけ」

 他に言おうにも、奈央には仕掛けが俺の言う事をきかせる事以外、特にしていないので、言ってもあまり意味は無い。
「まぁ・・・いいけど」
 案の定、奈央はやや納得がいっていないようだが承諾した。

 もちろん言葉で命令に従わせても、3人の忍耐だけに頼るわけにはいかない。なので、俺も他人史で3人に仕掛けを施す。
 さらさらと仕掛けを書いて・・・これで良し。

 その間に、真須美達は尻の柔肉を両手で掴むと、むにっと横に広げる。ノイジーやリキの駒も同様だ。年齢や人種のバリエーション豊かな肛門が並ぶのも、そうは無いだろう。・・・カメラを持って来れば良かっただったかな。

「ゲーム、スタートっ!」
 俺が丁度仕掛けを終えた数瞬後、時計を見ていたサイバーの掛け声にしたがって、メイド達が駒達の肛門にチューブを挿入する。

「くぅぅっ」
「あぐぅっ」
 肛門から出す事はあっても、入れられる経験などほとんど無かっただろう駒達の呻き声が次々に上がる。

 そして、ほとんど間を置かずに液体がイルリガートルの容器に注がれる。俺は3リットルが3つだから調整のしようも無いが、ノイジーとリキはそれぞれ調整したようだ。
 ノイジーは弘美に0.5リットル。早織に1リットルで、理子に1・5リットルの配分にしたようだ。多分、酒を飲んだことのあるかもしれない弘美に望みを託し、未成年の早織と理子は切り捨てることにしたんだろう。

 リキは、ニナとケイトにそれぞれ1リットル。ドロレスには2リットルを配分したらしい。ドロレスの体力に期待しているのか、それともただ単に切り捨てただけなのか・・・一番ありえそうなのが、ドロレスを一番虐めたいからと言う理由に見えるのは、俺の気のせいだろうか。

 それで俺の駒達・・・真須美に茜、奈央にはそれぞれコーラ3リットルが注入される。用意されたコーラは良く冷えていそうだ。
 冷たい上に炭酸が腸内で泡だって容量が増えるという、二重苦。一応、他人史で補助してあるが・・・どれぐらいがんばってくれるだろうか。

「冷たいっ! 浣腸するのってコーラだったの!?」
「うぐぅぅぅっ。お腹がぁ・・・」
「ちょっとっ・・・コーラ多すぎっ、そんなに入れたら死んじゃうよぉ」
 イルリガートルは、容器に液体があればあるだけ注入する医療器具だ。注入先が、苦しんでいようが拒否しようがもちろん構わない。

 3人の腹は、臨月の妊婦のように・・・なる程では無いが、まるで妊娠しているようにぽっこりと膨らんだ。そして腹に耳をつけなくても、はっきりと聞こえる大きさでグルグルゴロゴロと音を立て始める。
「妊娠したら、こんな風に膨らむんだよな。・・・帰ったら皆に試してみようか」
 思わず3人の膨らんだ腹を見ながら、そんな事を考える。

「妊娠って・・・それも仕事・・・なの? だったら、お姉さん経験無いから、優しくして・・・ね?」
「ちょっとっ! そんなに入れたら本当にあたし死んじゃうよっ!」
 俺の口に出た呟きを聞いて、真須美と奈央がそれぞれ声を上げる。
 2人とも、微妙に勘違いしているようだ。

「えーと、大丈夫、そういう意味じゃないから」
「な、なら良いんだけど」
 激しい便意に、つまり俺が『マジで妊娠させる』と言った事に気づかずに、奈央は安心したように息をつく。

「ボク・・・兄貴が妊娠して欲しいならするけど・・・ちょっと嫌だな。女の・・・子、みたいで」
 可愛いことを言ってくれる茜の頭を撫でながら、言葉の後半の部分をどうやって解決するのが楽しいか、少し悩んでみたり。

 コーラを3リットルも浣腸されたのに、3人に意外と余裕があるように見えるのは俺のした仕掛けが有効に働いているからだろうか。
 俺のした仕掛け・・・それは排便のタイミングを他人史に書いておくというものだった。由里や双子の絶頂のタイミングを他人史で操作できたので、多分排便のタイミングを操作できるだろうと思ったんだが、その通りだったらしい。

 『自分以外に6人洩らすまで、排便をしない』と書いたから、上手くすれば1位から3位までを独占できるかもしれない。・・・ノイジーやリキの駒が粘って、真須美達の体力が先に尽きたらさすがにだめだろうが。

「もう・・・らめーっ! 漏れしゃうぅ」
 っと、思った矢先に早速失格者が出たみたいだ。顔を赤くして、呂律が回っていない状態で失格になったのはノイジーの駒の理子だった。

 それをノイジーは確認すると、その理子の横でまだ何とか我慢している早織の耳元で何事か囁いた。
「えっ・・・い、いやぁぁぁっ! 出ちゃうっ! 出ちゃうよぉっ!」
 その途端、まだがんばれそうだった早織が急に便意に屈してしまう。ピッタリと閉じていた肛門がピクピクと痙攣すると、次の瞬間には盛り上がり菊に例えられる皺を伸ばして茶色く染まった液体を吐き出す。

 どうやらノイジーは、ブービー賞の5点のために早織を切り捨てたらしい。あのまま早織にがんばってもらっても3位になれるとは思えないので、賢い選択ではあるが思い切りの良い事だ。
 両隣で『ブバッ! ブリュッ! 』と言う破滅的な音を聞きながらも、ノイジーの本命の弘美はまだ健在である。

「出てっ! 出てっ~っ!」
「んぐぅぅぅーっ! うぅーっ!」
 ノイジー達に負けず劣らず賑やかなのは、リキ達だ。腸内で暴れるグリセリンを排泄しようと、ニナは声を上げながら、ケイトはうめき声を洩らしながら、そしてドロレスは歯を食いしばっているが何故か今の所脱落者は出ていない。

 訝しく思って、3人の後ろに回ってみると・・・3人の肛門は、排便をしようとしているにしては、きゅっと閉じて微動だにしていないという事以上は、やっぱり解らない。俺に分析の力は無いから当たり前だが。
「おっ、興味があるみたいだな。よし、同じ趣味のよしみで教えてやる」
 それに気がついたリキが、そう言いながら手招きをする。

「同じ趣味じゃないって・・・まぁ、ありがたく教わるけど。それで、どうやったんだ?」
「ちょっと見てろ・・・ドロレス、便秘みたいだから俺も手伝うよ。俺が君の肛門を刺激するから、それに合わせて力むんだ」
 俺の質問に、リキはそう言うとドロレスの弾力豊かそうな尻に手を置く。

「リキ・・・あたし、赤ちゃんじゃ・・・・・・」
「良いから、良いから。行くぞー」
 そう一方的に言うと、人差し指の腹でドロレスの肛門をマッサージし始める。まさか勝負を捨てたのか。

「あ、でっ、出そうっ! ウンチ出そうぅーっ!」
 っと、ドロレスは叫ぶがそれに反して彼女の肛門は盛り上がるどころか、痙攣もしない。
 そっとリキが俺に耳打ちする。

「実はな、括約筋に働く力を逆にしてみたんだ。出そうとしたら、閉まる。閉めようとしたら、開く。だから俺は我慢せず出してくれって言ったのさ」
 なるほど。それで合点がいった。おそらく、排泄を見られる事に対する羞恥心等も抑えられているだろうから、ドロレス達は全力で・・・おや? それはそれでまずくないだろうか。

「リキ・・・ふと思ったんだけど、そんなに煽って良いのか?」
「何か、問題でもあるのか?」
「いや、疲れて力を抜いたらどうなるんだろうって思って」
「・・・・・・・・・あっ」

 そこまで考えていなかったらしい、リキはしばしの硬直の後自分の失策に声を洩らした。普通なら、力を抜いたぐらいでは問題ないが・・・腸内でグリセリンが暴れまわっている状態でそうなると致命的だ。
「もう・・・ダメ・・・え? ええっ?」
 ぐったりと力を抜いたケイトの肛門が、リキの敗北を現実的にする。

 その後ドロレスはしばらく耐えたが、結局一番速く全ての駒がリタイアしたのはリキだった。

 その後は、俺の仕組みのおかげで真須美達はがんばり、見事俺は1位から3位を独占できた。
 そして次のゲームの課題は・・・『終了』つまり、あの我慢大会が最終ゲームだったわけだ。

 この時点で得点は、ノイジーが40点、リキが27点、そして俺が56点。よって、俺がめでたく優勝となった。
「おめでとう。妹が君の子を産んだら、年に何回かその子と妹を連れて遊びに来てください。私はともかく、両親が喜びます」
 ノイジーは、そんな事を言いながら俺を祝福する。・・・両親の事を考えるなら、妹を俺に売り渡すのをやめるのが一番だと思うんだが。

「俺の渡す賞品は、あんまりお前の好みじゃないだろうが・・・その内俺が美しい巨乳にしてやるからそれまで我慢してくれ」
「だから俺は・・・うん、まあいいや」

 リキへの誤解を解くことを諦めた俺の目の前に、今度はサイバーがどさりと大量のルーズリーフと写真入の名簿らしき物を寄越す。
「これ、僕からの賞品だから」
「・・・この名簿とルーズリーフは、俺に操作して欲しいって事だよな? つまり仕事だろ」
「そうなんだけど・・・これも必要なことなんだよね。次のゲームのために」

 次のゲームと言う言葉に、俺が怪訝な顔をするとサイバーがにんまりと笑ってみせる。
「もうすぐ・・・って、言っても少し先だけど推薦入試が始まるじゃない? それの面接官を僕達がやったら・・・面白くないかな? もちろん、女子限定だけど」
 つまり、これはそのための下準備に必要だということなんだろう。しかし、優勝したのに何故俺が? っと思わなくも無い。たしかに楽しそうだが。

「俺達は、ゲームの間のトラブル担当なんだ」
「私達の能力は、御堂君のように遠隔からの操作は出来ませんが、素早く使えますからね。適材適所ですよ」
 どうやら、リキやノイジーの言葉から察すると優勝してもしなくても、俺に回ってくる仕事だったらしい。

「それで、肝心の君にやってもらう『ゲーム』のジャンルは何がいい? 何でも良いよ、ネトゲは無理だけど」
「そうだな・・・恋愛シュミレーションと落ちものパズル。あと、育成ものかな」
 自分がやったことのあるゲームのジャンルを、思いつくままに上げてみる。これがどんなゲームになるのかは知らないが。

「そう、じゃあ出来たら送るよ。それと・・・これから皆帰るよね? だったら、これで遊びながら帰ってくれないかな」
 そう言ってサイバーが俺達に見せるのは、計12個の携帯ゲーム機と、同数の何かのゲームソフト。タイトルが無いところを見ると、どうやらサイバーの自作ゲームのようだ。

「君達、自分の集めた駒は気に入ってるんでしょ? だったら連れて帰るよね? なら、楽しみながら帰るって言うのはどうかと思って」
「つまり、これで『ゲーム』しながら帰らないかってことか」

「でも、サイバーの『ゲーム』の力は、屋内でしか使えないんだよな?」
 申し出そのものは、面白そうで大歓迎だが帰りの交通機関にはもちろん屋外を通る。電車の中でだけ遊ぶというのなら、可能だが。

「それがね、最近気がついたんだけれど屋内でも使えるみたいなんだよ。近くに、ゲームをする媒体・・・パソコンやゲーム機があれば良いみたい。自分を『分析』するのって、一番難しいんだよね」
「・・・弘法も筆の誤りですか」

「面目無い。・・・それでどうする? このゲーム機に入ってるのは、双六ゲームだけど」
 ノイジーの嘆息に、曖昧に笑いながら頭をかいてからサイバーが話を進める。
 『ゲーム』の能力に問題が無ければ、俺に断る理由は無い。俺が家に帰るまでには、これから片道2時間以上かかる。その間雑誌を読むよりも面白い暇つぶしが出来るのなら、大歓迎だ。

「そう言えば、リキはニナやケイトはどうするんだ? 国まで送っていくのか?」
「いや、俺の実家の近くのマンションに部屋を取るつもりだ」
 俺のふとした疑問に、リキは豪快な答えを返してきた。サイバーの援助があるとはいえ、ずいぶんとお大臣な事である。

「元々、採算が取れるか解らないところにノイジーやサイバーと協力して建てさせたマンションだから、家賃も安いんだよ。
 ・・・そうだ、ミドーも同じ手口でやるなら協力するぜ」
「いや、今の所はいいや」
 能力で建設会社や不動産会社を操作して、手近な場所に奴隷のキープ場所を作ってたのか。操作されたほうにはご愁傷様としか言えないが、結構上手い手だな。

 そう言えば、賞品で貰う3人・・・俺の提供した1人はともかく後の2人は、近くに滞在場所が無いから俺の家にとりあえず住んでもらう事になるんだよな。・・・そろそろ家のキャパシティも限界だし、近いうちに頼む事になるかもしれない。・・・ご近所さんに引っ越してもらって、家を提供してもらえば済むことかもしれないが。

「じゃあ、解散と言うことで」
「お疲れ様でした」
「じゃあ、またな」
「またチャットで」

 それぞれ身支度をしたら、簡単な挨拶をして解散と言うことになった。次のゲームは、推薦入試の始まる秋頃になるだろう。その時の賞品は、受験生そのものと言う事になりそうだ。

 俺達・・・俺と真須美茜に奈央の4人は、サイバーのリムジンで駅まで送ってもらいながらゲーム機に電源を入れていた。ゲームをやりながら俺の家に行くという俺の命令に、真須美は『もうすぐ通勤ラッシュだし、迷惑なんじゃない?』と言ったが、とりあえず従ってくれた。

 電源を入れると、『サイバー堂』と言うロゴが映る。・・・楽しんで作ってるなぁ。
 続いてゲームのタイトル。『双六ゲーム 行き帰りの間の暇つぶし編』・・・そのまんますぎないか、これ。
「・・・これ、面白いの? タイトルダサいけど」
「まぁ、やってみようよ。意外と面白いかもしれないしさ」
 早速奈央が不機嫌そうになり、真須美がそれにフォローを入れてくれる。

「えーと・・・移動手段を選んでください? 兄貴、電車の後はどうするの?」
「ああ、徒歩で15分」
 入力が終わると、ゲームスタート・・・の前に俺だけに選択肢が現れた。何々、『どの程度許せますか?』『1 全部』『2 セックス不可。その他はOK』『3 キス、フェラ等も不可。 観賞や撮影はOK』『4 全部NO』・・・もちろん4・・・と言うのはこの場合つまらないな。

 せっかく屋外、公共の場でやるんだし。本来、俺は自分の奴隷を他人に見せるのも嫌なのだが、この場合は他人の目線も小道具だろう。・・・でも、全部OKとかは論外だよな。キスや、フェラなんかもやって欲しくないし。
 3番だな。

 3番を選ぶと、やっとスタート画面が映った。どうやらゲームの進行方法は、普通の双六と大差無いようだ。サイコロを振って、出目の数だけマスを進む。そして止まったマスに書いてある指示に従う。・・・違うのは書いてある指示の内容だけらしい。

「ミドー様、着きました」
「着きましたって・・・まだ駅じゃないけれど?」
 運転手の継美さんが車を止めたのは、もうすぐ夕方なのでこれから賑やかになるだろう、繁華街の入り口だ。ここから駅までは、たしかしばらく歩くはずだ。

「ここから『ゲーム』を始めたほうが面白いだろうという、才賀様の指示です。
お急ぎなら駅までお送りしますが?」
 そう言われると、ここで降りたほうがいい気がしてきたな。きっと、駅構内や電車の車両では出来ないイベントがあるんだろう。

「じゃあ、そうしようか。駅は、このまま真直ぐだっけ?」
「はい。それではお楽しみください」
 俺達はリムジンを降りると、歩道で輪を作り携帯ゲーム機を操作し始める。それを迷惑そうに見ているサラリーマンに、「すみません、ゲームなんです」と俺が言うと「そうでしたか。がんばってください」と応援した後立ち去っていった。ちゃんと屋外でも『ゲーム』の能力は働いているようだ。

「じゃあ、順番は誠二君から時計回りで奈央ちゃん、茜ちゃん、最後にあたしでいい?」
「いいんじゃない」
 とりあえず、言いだしっぺが一番に始めることになった。

 ボタンを押すと、画面の中でサイコロがコロコロと転がり3の出目で止まる。俺の駒がぴょこぴょこと愉快な調子でマスを進み、ウィンドウが開く。
「・・・何も無し。いきなり肩透かしか」
 こっちは何があるのか楽しみにしているというのに。・・・ん? 今気がついたが、俺と真須美達とでは画面が違うな。男用と女用の双六に別れているんだろうか。

「次はあたし・・・と。あっ、やった6マスっ」
 奈央の顔に喜色が広がり、次の瞬間にはそれが幻だったかのように凍りついた。
「マジ・・・『30歩前へ向かって歩き、その地点で一番近い服飾店の店員に服をコーディネイトしてもらい、ゲームをしている間そのままの格好でいる』、ってまともな店は後ろにしかないじゃんっ!」

 奈央の言うとおり、まともな婦人服を売っている店が彼女のすぐ後ろにある。しかし、前には・・・一番近いのはコスプレ衣装専門店。その先には、少しはなれてブティックがあるが30歩でたどり着けるかどうかは、難しいかも知れない。

「ご愁傷様。次はボクだね
 4マスで・・・『目を閉じて10数え、正面にいた人に何か貰いその金額分持ち物を上げて、そしてそのままゲームに復帰』・・・ボク、そんなに高いもの持ってないんだけど」
 これは運頼みだな。まともな物を持っている人に当たることを祈ろう。

「最後はあたしと・・・2マス進んで・・・やったっ! 『スクワット10回をした後、一番近くの異性と服を取り替える』これなら、少なくとも変な格好にならなくて済むわね。
 残り物に福があるって、本当だねっ!」
 たしかに、見える範囲でそう奇天烈な格好をした男は居ないようだ。大体は残業を逃れたスーツ姿のサラリーマンのようだし。

「じゃあ、俺はここで待っているから皆がんばってきてくれ」
 双六ゲームの第1ターンは、こうやって始まったのだった。

< つづく >

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