-3-
「天使」と「悪魔」の争い――。
それはとどのつまり、人々の精神・感情のせめぎあい、なのだそうだ。
人の魂と言うものは、その一番の中心、一番の奥で、一人一人が、「神」に繋がっているらしい。
つまりは、極々一部だが、人はそれぞれに「神」の一部を抱えているのだ。
そしてそれは、人々の感情や心理状態によって大きな変化を「神」にもたらすと言う。
人心乱れる魔の世になれば神の力は衰え――
平和で平穏な世の中になれば神の力は増していく。
――「天使」と「悪魔」の争いは、その人心の上下を争う代理戦争のような物だと、悪魔は、言っていた。
生物はそもそも神の作った物で、神の一部も抱えている為、悪魔側はその「生物の存在そのもの」には介入できない。
人を「いなかった事」にする事は、悪魔側にはできない。
――よって、功績を残している人間を堕落させ、契約して、その人が積み上げてきた功績を消したり、
または単に悪行を助長させたり、集団心理を煽って戦争を起こさせたりして、世の崩壊を目論む。
一方で神や天使側は、その契約を「なかった事にする」事で対抗する。要は契約者に改心を促すわけだ。
また最終手段として、そういう悪人を「いなかった事にする」事もできる。が、
その事で波状的に発生する「矛盾」の解消に奔走しなければならないし、
(人一人いなかった事にすると、悪魔の「契約」とは桁違いのレベルの矛盾が発生する、らしい)
何より人間の消滅そのものが、神の存在の一部を消す事に他ならないため、おいそれとは人を消す事もできない。
いつもは小さな奇跡を起こしたり「正直者が馬鹿を見ない」よう、小さな偶然の天秤を傾けたりするのがせいぜい、だそうだ。
人はそうやって二つの勢力の駒として弄ばれ、それに気付きもしないで日々を生きている。
◇
「は…………ぁ…………」
やがて、オナニーの絶頂に突っ張っていた全身から、少しずつ力が抜けた。
しどけなく、両脚を大きく広げた格好のまま、だらりと力を抜いて、奈々はソファの背に身を投げ出している。
無防備に晒されている少女の性器が、まるで紅い宝石のように、白い肌の中心に息づいていた。
「――気持ちよかったかい? 奈々」
「――――っ!! あ、ああっ!!」
その言葉に我に帰ったのか、ぼうっと焦点を失っていた奈々の瞳に、一気に光が戻る。
ばばっ、と、両手で胸を隠し、脚を閉じて秘部を隠した。
(――そう、それでいい。その羞恥心を忘れるなよ、奈々……)
内心の嘲笑をおくびにも見せず、老教師は宥める様に、労いの言葉を掛ける。
「ふふ……先生に見られて興奮してしまったかな? 可愛かったよ、奈々……」
「あ、あああぁぁ……」
顔を真っ赤に染め、両手で顔を覆う奈々。
だが、指の隙間から伺うような、救いを求めるような上目使いを感じ、彼は優しい微笑で答えた。
「さあ、復習はこれで合格だ。よく出来たね、奈々」
「せんせ……」
老教師はそう言いながら、奈々の両手を、そっとどかす。
(ついに今日、私はこの美しい少女を、犯すのだ――)
甘えるような笑みを見せる少女に、彼はそっと唇を重ねた。
◇
――一方で老教師は、奈々の声無き叫びをも、聞いていた。
『でも……足りない、足りないよぉ……』
『あんなに気持ちよかったのに……やっぱり、先生じゃないとダメなんだ……』
『は、やく……さわって、ほしい……』
『さわって……せつない、身体が、せつないの……』
『早く、はやく、さわってぇぇ……』
「支配」の絆を通じて、小さな胸に宿る、ドロドロの情欲が伝わってくる。
そして――老教師の男性器は、ダイレクトにそれに反応してしまっていた。
(まだ、まだだ……)
彼は、滾る肉棒を必死に諫める。
(処女である奈々を弄べるのは今だけなのだ。まだ、奪うには少し早い……もう少し、あと少しの辛抱だ……)
◇
「では、褒美をあげよう」
薄く汗を纏わせた、掌に収まるほどの、小さくてなだらかな双丘の頂点。
未だ固く尖っているそこを、私は優しく口に含んだ。
「え――きゃぅっ!!!」
ちゅるっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ――
「あああああぁ、ああああぁ、ああっ……せんせ、せんせぇ……」
『先生の、舌が……舌、が…………』
絶頂の余韻も収まっていない奈々の身体は、容易く燃え上がっていく。
「奈々、気持ち良いか? 気持ち良いなら、きちんとそう言うんだ。でなければ、ここまでにしてしまうぞ」
「凄い……凄く、気持ちいい、です……んく、ううっ!!」
もう口ごもる事も無く、奈々は素直に答えていた。
興奮から白い肌を薄桃色に染め、少女は荒い息をつきながら目を瞑り、ふるふると弱々しく首を振る。
口舌の攻めに、乳首は天を向いてきりりと屹立していた。
『もう、もう、ちくびだけじゃ……やだ……』
奈々から伝わる思念も、快楽に時折途切れがちになり、切羽詰った様子を見せ始めている。
――ふふ、分かっているさ……だがな、私はお前に、おねだりをさせたいんだよ……。
攻める側の余裕から、私は執拗に乳首だけを刺激し続ける。
奈々が、憶悩に負けるのに、そう時間は掛からなかった。
「せんせ、もう、もう……」
『せつないよぉ……がまん、できないよぉ……』
(来たか……)
もどかしそうな奈々に、私はニヤリと口の端を吊り上げる。
「くく……素直に言えば、と言っただろう? ――言うんだ。私にどうして欲しいのかを、な」
――そして、どういうポーズでお願いするのかも、もう分かっているよな?
「身体が……熱い……熱いよぉ……」
そして、奈々の理性は、ついに折れた。
「……お願い……せんせぇ、ここ、触って……もう、我慢できないよぅ……」
『恥ずかしい……恥ずかしいよぉ……』
言った――とうとう、このお嬢様を堕としたのだな、私は……。
ついに、彼女の口から快楽をねだる言葉が出た事が、私を有頂天にさせていた。
奈々は体育座りの形で軽く両脚を広げ、その中心に息づく性器を指先で、くぱ、と開いていく。
肌と、黒髪と、黒のハイソックス。
白と、黒と、そして――紅の、コントラストが、私の目を射抜いていた。
「お願い……はやくぅ……」
口調が乱れている。もう、敬語を選ぶ余裕は無いか……。
ニヤニヤと笑いながら、私は顔を奈々の股間に近づける。
――同時に、顔の脇にビデをカメラを構える事も忘れない。これからのシーンを、つぶさに、間近で撮影する為に。
淡い淡い、とても陰毛とは呼べないような産毛の陰りを、優しく逆撫で、愛でる。
「ふふ、それでいい。では、お願いに応えてやろう――指をそのまま、動かすなよ」
「は……い……」
羞恥にふるふると震えながらも、奈々はその白魚のような指で、割れ目を拡げ続ける。
「思うが侭に、乱れ狂え……」
そう言い、私は、いきなり奈々のクリトリスに、吸い付き、吸い込んだ。
ちゅるっ、と、小さな音が響く。
「ひぁ………………っ!!!」
『いやああぁ……ま、また、アソコ、舐め、舐められ――――』
途端に電気ショックが走ったように、奈々の腰が跳ね上がり、そのままワナワナと震え始めた。
姿勢を戻す事も出来ないのか、無垢な花園を私に押し付けるような姿勢のまま、私の口舌に蹂躙されていく。
『ああぁ、でも……やっぱり、凄い……凄い、凄い、凄い凄い凄い凄い凄い凄いぃ……』
悦楽に浸るような奈々の心の声に私は勢い付き、攻めを更に激化させた。
肉鞘を上唇で押さえつけて捲り上げ、舌先で突起を転がしたあと、唇で挟んで左右に擦り、歯先で甘く甘く噛み、思いっきり、吸う。
『――――っ!! ――――っ!! ――――――っ!!!』
奈々の思考が、言葉を成さなくなって行く。悲鳴のような快楽の叫びを、ただ上げ続けていた。
そんな肉声と心の声をハーモニーのように聞き合わせながら、私はトドメの攻めを肉芽に加えていく。
もっと強く――もっと、イヤらしく。
「ひぃ…………っ!! あぁ………………っ、き、ぃ……………………っっっ!!!!」
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!!』
眼をカッと見開き、わなわなと震える唇から舌先を覗かせ――。
「あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
長く尾を引く叫び声と共に、再び奈々は絶頂を迎えた。
びくん、び、くん、びくん、びく……
こぽこぽと音を立てて、白濁した蜜液が溢れ出す。
「は……ぁ、はぁ、はぁ、はぁ、は……あ…………」
「どうだ、気持ちよかったか、奈々?」
汗だくになり、全身で息をする奈々に、私は優しく囁き掛けてやる。
その視線が溢れ出ている少女の蜜を、好色そうに捉えてしまうのはまあ、ご愛嬌だ。
「はい……」
私の視線に気付いているのかいないのか、奈々はうっとりとした、無防備な笑顔で答える。
『きもち……よかったぁ……』
私はその頭をそっと撫で、つい、と頤を持ち上げてその唇を奪った。
素晴らしい。調教は、これ以上ない程に順調に、着実に進んでいる。
「ん……ぅ……」
舌を差し込み、熱く、蕩けるような奈々の口腔を弄びながら、私は指先を彼女の死角から近づける。
――でもな。調教は、まだまだ終わりじゃあないんだよ、奈々。
きゅっ。
「――ひぃっ!!」
ぴゅっ。
いきなりの刺激に膣が収縮し、愛液が勢いよく噴き出す。
びっくりして、奈々唇を無理やり引き剥がし、は可愛い悲鳴をあげて仰け反っていた。
「くくく、いきなりクリトリスを摘まれるのは、きつかったかな?」
「やっ……!! せ、せんせ、せんせぇ、わたし、わたしまだ、イッてる、イッてるの……」
奈々はガクガクと震えながら、私に哀願の視線を送ってくる。
だが、私は意地悪に、その視線に違う解釈を返してやる。
「ふふふ、これだけイカせても、まだイキ足りないのか……欲張りな娘だな、奈々は」
「ちが……っ!! ああぁ…………っ!!!」
奈々の返事を封じるように、くりくりとクリトリスを弄ぶ。
彼女の言う通り、絶頂の痙攣を続けていた膣は、滾々ととめどなく愛液を零し始めた。
「なんだ、勿体無い。折角の奈々の蜜だ……どれ、私が舐めてやろう」
ざらり。
私は奈々の股間に顔を近づけ、どろり、と溢れ出ていた蜜を舐め取った。
「――――っ!!!」
『いやああぁぁぁっ!!! そんな、そんな、そんな……』
溢れ出る奈々の蜜を余さず味わうように、膣口に深く舌先を差し入れる。
一方で、親指の指先で包皮を捲り上げて、ドロドロの愛液をたっぷりとクリトリスに塗(まぶ)し、るりるりと弄り始めてやった。
じゅる、じゅぷ、じゅるる、じゅぷ――
股間にいきり立つ怒張は、今も、焦りにも飢えにも似た欲求を突き上げている。
――が、これが処女である奈々の蜜をすする、最後の機会なのだ。
処女を失い、男を知ると、女の蜜は微妙にその味を変えていく。
その前に、たっぷりとその蜜を味わい、覚えておかなければ勿体無い。
『あ……ああぁ、舐められてる、先生に、愛液、飲まれて……る……』
奈々は歯を食いしばって快楽に耐えている。が、その抵抗はもう、か細く、弱々しい。
数分もしないうちに、わなわなと震えながら、少しずつその口を開けて行き、悶えるような声が漏らし始めていた。
私の頭を引き剥がそうとして、押さえつけていた手の力も、押し寄せる快楽に力を失っていく。
「は…………あああぁぁ、あああああっ!! ひ、ぃ…………んっ!!」
『ひ……いぃ……先生の舌が、舌が、ざらざら、ざらざら、してぇ……っ!!』
私は限界まで舌先を伸ばして差し込み、引き抜く時には舌を微妙に曲げ、樹液を掻き出した。
ねじりこまれた舌先の感触に、奈々はまた敏感に反応して、滾々と愛液の量を増やしていく。
私はわざと大きな音を立てて、その極上の蜜を、啜った。残らず、舐め取った。
ずちゅ、ずりゅ、ずちゅぅぅ、ごく……ずっ、ちゅぅぅぅ、ずちゅ……
「いやぁぁぁぁぁ、音、たてないで、イヤらしい、イヤらしいよぉぉ……」
「くくく、美味いぞ、奈々……最高の味だ……」
顔を上げてそう言ってやると、奈々は長い黒髪を振り乱して首を振る。
羞恥に消え入りそうな、奈々の心の声が聞こえてきた。
『ああ……ああぁ…………わたし、わたし……わたし……もう、もう…………』
果ての無い快感に翻弄され、奈々は次第に瞳の力を失っていく。
――そろそろか。さあ、思いっきりイッてしまえ!!
私は奈々にとどめの快楽を打ち込むべく、攻め手を激しくしていく。
親指でぐりぐりとクリトリスをすり潰し、舌を無茶苦茶に動かして奈々の膣を掻き回す。
『あああ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、溶けちゃう、溶けちゃうぅ、わたし、溶けちゃうよぉぉ!!!』
奈々の喉が、ひぃっ、と鳴り、全身が仰け反り、頭を掴む手が、くしゃっと私の髪を握り締めた。
もう二度も絶頂を迎えてしまっている少女の身体は、堪えようもなく、快楽の海へと飲み込まれ、翻弄され――。
「――あああぁぁ、もうやだあぁぁ、ああああっ、あああああああーーーっ!!!!! ひ、ぃ…………ひ…………………………………………………………っ!!!!!」
叫び声は、途中で途絶えた。
イッっている最中に、更にクリトリスを強く摘み、思い切り膣を吸引してやったのだ。
結果、横隔膜までも引き攣らせた奈々は、呼吸すらできずにのたうち回る。
「かっ…………はぁっ…………」
少女の相貌に浮かぶは、苦悶。
歯を食い縛り、ぎゅっと目を瞑り、眉を寄せたその様子は、ともすれば苦痛に耐えている様にも見える。
ご、ぽっ……
どっ、と、白濁した愛液が溢れ出ていた。
奈々の蜜の、極み。絶頂にわななく膣から溢れる、最後の処女蜜。その、味を――。
――しっかりと、覚えたぞ、奈々よ……。
「――――っ!!! は……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、う……ううぅぅ…………」
ようやく息をつき、荒い呼吸を繰り返しながら、奈々は幼児のように声を上げて泣き始めてしまった。
「もう、もう私……お嫁に行けない……酷いよ、酷いよ、せんせ……」
『き……嫌わないで、嫌わないで、嫌わないで、嫌わないで……』
激しい絶頂を迎えてしまった羞恥から、嫌われてしまうと思ったか……。
先刻の脅しが効きすぎているのだろう――私は、奈々を抱き寄せて胸に抱き、優しくその髪を撫でた。
「酷いものか。可愛いの全てを――そう、汚い所も恥かしい所も全て、見たいと思うのは当たり前の事だ――」
言いながら、老教師は奈々の耳元に口を寄せ、そっと囁く。
「でっ、でもっ、わたし、こんな、こんな……イヤらしい……」
「だから言っただろう? お前が、イヤらしい部分を曝け出してくれたのに、嫌う筈がないだろう、と」
戸惑うように、縋るように見上げる瞳を、私は指先でそっと閉じさせ、目蓋に口付けた。
「――奈々、私は君が、欲しいのだから……」
◇
どきんっ、と、奈々の心臓が跳ね上がる。
「え……?」
驚きに目を開き、見上げる彼女に、老教師は真摯な表情で答えた。
「そう――、私は、君を抱きたいと、思っている」
「あ……」
「君のヴァージンが欲しいんだ、奈々」
ともすれば、恐怖に引き攣るかと思われたその表情は、嬉しそうな微笑みに変わった。
「はい……せんせ……わたしを、貰って……」
『う……嬉しい、嬉しい……嬉しいよぉ……』
奈々は嬉しそうな微笑の中で、急に芯のある、真摯な光を瞳に浮かべる。
「わたしを、先生のお嫁さんに……して、ください……」
『一生、先生の、物に、して……』
「お願い……」
『絶対、後悔、しないから……』
(――――!!)
老教師は、突然のその言葉に、決意を秘めた瞳の力に、大きな衝撃を受けていた。
操られていようが、誘導されていようが、それは、少女の一生を懸けた真摯な願いだった。
本当ならば、他の誰かが受け取っていたはずのその想いを、もぎ取り、奪って、彼は今此処に立っているのだ。
老教師は改めて自分の罪深さを思い知り、激しい動揺に陥りかけた――が、それでも、その動きを止めることは無かった。
(もう、後戻りはできないのだ……)
既に悪魔と契約し、教師としての功績を全て売り渡した今、彼に残っているのはこの夢だけなのだ。
この、目の前の美しい少女を、手に入れ、我が物とし、思うが侭に弄ぶ為に。
そして愛する子供を産ませ、愛し、慈しみ、育む為に。
それに、「魔眼の支配」は他の能力のように一時的な物ではない。
これも「契約」と言う表現を使うだけあり、その効力は悪魔との契約にも劣らない、術者が「死んでも」続くほどの、強力な「魂の隷属」だ。
これを打ち消せるのは神や悪魔など、因果に直接介入する力を持つ者だけ――つまり、術者もしくは術を「無かった事にする」しかない。そこまで強力な結び付きなのだ。
――既に、それほどまでの事を、彼は目の前の少女に施したのだ。今更後に引ける訳が無い。
(そうだ、かつての妻との、あの愛欲の日々を取り戻すのだ……)
だが、少し厳粛な面持ちにはなった。
表面だけにせよ、彼女への配慮を見せながら、記念すべきロストヴァージンにしてやろう――そう、思ったくらいには。
「分かっているよ、私もいい加減な気持ちで君を抱こうと思っている訳じゃない」
「あ……ああぁ、せんせ……」
『嬉しい……嬉しい……』
あまりの嬉しさに、奈々の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「法律の上での結婚は、勿論当分は無理だろう。だが――近い内に、私は君と一緒に住みたいと思っている」
「……」
奈々は熱のこもった視線で、真剣に聞き入っている。
「恐らくはこの1~2年のうちに、私はこの学園を去るだろう。その時には、君を連れて行きたいのだ」
「はい……嬉しい、嬉しいです、せんせ……」
『わたし……幸せ……』
二人は、涙にまみれた濃密なキスを交わした。
◇
抑えきれない「若さ」の衝動は、今朝からずっと、私の中で爆発しそうなまでに膨れ上がっていた。
しかし――私は、記念すべき最初の精を、どうしても奈々の子宮に放ちたかった。
身体的に無理があるのは分かっている。しかし、気が狂わんばかりのこの欲求は、どうにも抑えられそうに無かった。
ただ――。
いざ挿入を前にすると、感慨深い物がある。
生殖行為――。
考えてみれば、簡単な事なのだ。
男のペニスを、女の膣に埋め込み、子宮に射精する――考えてみれば、たったそれだけの事だ。
――それだけの事に、私はこの数十年、憧れ続けてきたのか……。
だが――そこに、信じられない程の情欲を覚えるのだ。
いざ、処女を目の前にして見ると、それを単なる行為だとは、どうしても思えない。
そこには重要で神聖な、何かがある気がした。
――それが、奈々の感じている覚悟なのかも知れんな……。
「――奈々、君のヴァージンを奪うぞ」
「はい……きて、せんせ……」
奈々の手を握る。
彼女は、しっかりと握り返す。
それが、言葉とは別の、二人の最後の確認だった。
そして私は、熱く滾る肉棒を、奈々の処女に突きつけた。
ぬ、ち……
「う……っ」
恐怖から、無意識に力が入るのか――奈々の膣口はきつく締まり、意外な程の弾力で侵入者を弾き、逸らそうとする。
だが、そこは昔取った杵柄、それを許しなどするはずもない。
ぐに……
先端で正確にその入り口を捉え、少しずつ少しずつ、めり込んで行く。
ぐ、ぐ、ぐっ――
「奈々、――力を抜け」
「はっ、は、い、――――――っ!!」
そして――
みし、みし、みし――――ず、ぐんっっっ!!!
ゴムチューブに挿まれたような、ぎゅっととした抵抗を突き抜けると、怒張は一気に、奈々の処女を貫いていた。
「うぁ………………………………………………っ!!!!!」
夢見る少女の表情が、一瞬にして苦痛に歪む。
その全身が、痛みに引き攣り、硬直した。
信じられないような握力で、手を握り締めてくる。
――奥に突き入れる途中で、ぶつりと何かを突き破る感触があった。
音こそ聞こえなかったが、あれが奈々の破瓜だったのだろう。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
『い……た、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃーーーーーーっ!!!』
私達は言葉も無く、貫いたままの姿勢で硬直していた。
奈々は、身を裂かれるような激痛に。
私は、どくどくと波打つ男根から伝わる、目も眩むような快楽に。
そこは熱い熱い、蕩けるような肉襞の坩堝(るつぼ)だった。
きつくて、それでいて柔らい、ゴム毬のような粘膜が、男根に絡み付いてくる。
「うっ……くうぅっ、いっ……た…………」
『痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いよぉぉ…………』
背中に爪を立てる奈々。見れば、膣口からは真っ赤な処女の証がぽたぽたと流れ、ソファを汚していた。
彼女が感じているのは、ただ純粋な苦痛、それだけだろう。
それなのに、今私を包んでいるのは、思わず叫び出しそうな程の、快感なのだ。
――不公平な話だな……だが、痛いのは今回だけだ。次からは思いっきり善がらせてやる、今回の分もな……。
「……奥まで、届いたぞ、奈々……」
「あ……」
『当たって、る……熱くて、硬いのが…………』
痛みを気遣い、一番奥まで突き入れたまま、動きを止める。
奈々にもその感触は伝わったのか、苦痛に呻きながらも、奈々は嬉しそうな微笑を浮かべた。
――愛しい。今まさに、この美しい少女は、身も心も私の物になったのだ。
老教師は汗で張り付く前髪をそっとかき上げ、そのまま奈々の頭を何度も撫でてやる。
「う……ふふ…………わ、わたし、これで、先生の恋人に、なれたんだね……うれしい……」
『痛いけど……嬉しい……よかった、先生に、初めて、してもらえて……』
そんな奈々のいじらしさに胸を締め付けられ、老教師はそっと奈々の頬を撫でる。
「そんなに無理して笑うことはないんだ、奈々……今は痛がるのを我慢しないで、泣き叫んでいい」
そう言い――私は、いきなり容赦なく動き始めた。
「はぐっ……ぐっ、い、たぁぁ……」
『――――――――――――――っ!!』
あまりの快楽に、私の視界はバラ色に彩られ――一方で、奈々の悲鳴は言葉を成さない位に高まっていく。
だが、止まらない――いや、止まれない。
あまりの快楽に、私は完全に暴走してしまっていた。
ずっ、ぐっ、ずっ、ちゅっ、ずっ、ぐっ、ずっ、ちゅっ……
「はは……はははは、ははははは!!! 締め潰されるようだっ、凄い、凄いぞ奈々っ!!!」
「くぅぅ…………ぅ…………」
ぶちりと、テレビのスイッチを切ったように、奈々の心の声が途切れた。あまりの苦痛に、精神のブレーカーが落ちたのだ。
失神同然の状態の奈々に、構わず私は語りかける。
「痛いか……すぐに、終わらせてやるからな――ああ、駄目だ、もう、出る――出てしまう――」
ストロークはどんどん深く、そして早くなっていく。
あまりの快感に、目の奥で火花が散った。腰の奥から、尿道を、熱い滾りが込み上げて来る。
「さあ、行くぞ……おぉ、久しぶりの、射精だ……記念すべき復活の子種を、受け止めろっ!! 奈々っ!!」
そして――
「うぉおおおおおおおっ!!!!」
「うぁ…………ぁ………………」
『………………………………っ!!』
どくっ、どくっ、どぷっ……、どく……ん……
視界が真っ白に染まるほどの、快感。
考えられないほど大量のスペルマが、奈々の子宮へと注がれていく――。
「くくく、もう渡さん、もう誰にも渡さんぞ、奈々……」
◇
奈々は、後始末をする間も、茫然自失の状態だった。
「あ……」
指先に掬った、どろりとした狂乱の残滓を、ただぼうっと眺める少女。
「……せんせ、の、せいえき…………」
嫌悪も、羞恥すらも無い、無垢な子供のように――それでいて、どこか陶酔するような悦びを滲ませ、精液と破瓜の血を見つめ続けていた。
気だるげだが、どこか満足そうなその様子に、老教師の怒張が不意に勢いを取り戻す。
が――奈々の門限の時間は、とっくに過ぎてしまっている。残念だが今日は、ここまでだ。
「遅くなってしまったからね、今日は車で送ろう」
「そんな、悪いです……」
「ははは、もう奈々は私の恋人だからな。ご両親にそれとなく挨拶しておくさ」
「……」
奈々に、異論があろうはずがない。
恥ずかしそうに、そして嬉しそうに、頷いた。
少し高めの中古車に乗り込む二人。
その光景を、グラウンドから見つめる視線が、あった。
(じーちゃん先生と、奈々ちゃんが、なんで……?)
その光景に、何か嫌な物を感じ、彼女は走り去る車をじっと見つめていた。
◇
――――。
「――さて、今から先生の質問に正直に答えて下さい。嘘はダメですよ」
「「「はい」」」
老教師の「魔眼」の支配下にある生徒達は、いっせいに声を揃え、頷いた。
他教室のざわめきが聞こえてくるほどに、静まり返った教室。
無表情で身じろぎすらしない、ロボットのような女生徒達。
「まずは、この中で男性経験のある者は手を上げなさい」
ちらほらと、手が挙がる。
「ふむ……やはりお嬢様学校とはいえ、3年ともなると経験者が目立ってくるな……」
そう言いながら、老教師は名簿に印を付けていく。
「……処女で、候補にできそうなのは3人か……藤原さん、鎌田さん、吉浦さん、立ちなさい」
「はい」
「はい」
「はい」
呼ばれた三人は、無表情のままぴしりと立ち上がった。身じろぎすら、しない。
「スリーサイズを言いなさい」
この3人は以前から、美しいと目に懸けていた少女達だ。流石にその名前は覚えている。
もう一人、候補になりそうな少女がいたのだが、手を挙げているので残念ながら失格だ。
「80・56・78です」
「78・55・75です」
「84・59・83です」
「次にオナニーの頻度とやり方を、簡潔に言いなさい。正確にね」
「週に一度くらい、服の上からペン先でクリトリスを刺激します」
「3日に一度ほど、指で乳首と性器を弄ります」
「生理が近い時に何日か連続で、ローターをクリトリスに押し付けます。生理じゃない時期はほとんどしません」
女生徒達は無表情に、淡々と質問に答えていく。
「――よし。最後に、好きな男性や気になる男性がいるならば、言いなさい」
「通学途中に一緒の車両になる、○高の人が気になっています」
「いません」
「許婚の、■家のお兄様が好きです」
「ふむ……分かりました。では、皆さんにお知らせしなければならない事があります。よく聞きなさい」
「「「はい」」」
老教師は少女達の返答を全て書き取り、パタンと手帳を閉じた。
「私は、この学園の主(あるじ)です。この学園の誰よりも偉く、誰よりも正しい。皆さんは絶対に、主である私の命令に従わなければなりません」
「「「はい」」」
「皆さんは私に、心の底で憧れています。私に気に入られ、行く行くは私の所有物となる事が、あなた達の一番の幸せです。いいですね?」
「「「はい」」」
「繰り返しますが、私はこの学園の王様で、あなた達は私に従わなければなりません」
「「「はい」」」
「そして、この学園にはいくつかルールがあるのです。そのルールをこれから説明します。良く聞いて下さい」
「「「はい」」」
「まず一つ。君達は私の事を――」
――――。
「……皆さんは今回の私の話を、表面上は忘れてしまいます」
老教師は穏やかな笑みのまま、言葉を続ける。
「けれども心の底にはこの事が刻み付けられていて、無意識のうちにそう思い、ルールを守ります。いいですね?」
「「「はい」」」
「今はあなたたちに、3年生の生活としての心得のお話をした。そう覚えておいてください」
「「「はい」」」
「では、私が手を叩くと皆さんは目を覚まします。表面上は忘れて、心の底にはしっかり刻んで下さいね――はい!!」
パン、という拍手の音と共に、ハッと生徒達が目を覚ました。
きょろきょろと辺りを見回す生徒達に、老教師は張りのある声で宣言した。
「さて、私の話は以上です。――先生、授業に戻って下さい」
「はい」
傍らに立ち尽くしていた女教師が、老教師に促されて壇上に立つ。
老教師に丁寧に一礼してから、彼女は生徒達に向き直った。
「――では、授業に戻ります」
< つづく >