恋する呪文

(1)

「絶対、欺されているだけだからやめときなって。悪いこといわないからさあ」
「うるさいなあ。後もう少しで、落とせそうなんだよ。ほっといてくれ」

 僕と同僚の香川はモニターを前にそんな会話をしていた。

 僕の名前は高田健介(たかだけんすけ)、不動産会社の経理部に勤めるしがないサラリーマンだ。
 身長は160センチ、体重は75キロ。お世辞にももてるとはいえない体型だ。
 そのうえ、服とかにも興味はなくいつも母親が買ってくれた服を着ている。
 何より、致命的なのは人の目を見るとどもって話せなくなってしまうことだ。
 そういうわけで、31歳になるこの歳まで彼女どころかガールフレンドすら出来たことがない。
 母親が心配して見合いも探してくれたりはしたのだが、基本的に会ってもらえたためしがない。
 2回ぐらい会うところまでいったが、年増のものすごいブスでデブな女に二度と会いたくないっていわれたらしい。
 そんな僕でも人並みの性欲はある。しかし、風俗はなんか不潔な気がして嫌だった僕はいまだに女の子を知らない。
 必然的に給料の大半をアダルトDVDにつぎ込んでいた。

「お前、この間も必ずやれるとかいう出会い系サイトに10万円ぼられたんだろ」

 そういう風に、興味半分冷やかし半分に僕に忠告してくる香川は身長180センチのやせ形で顔は今時のイケメン風、おしゃれだし女にももてる。
 実際、この会社で香川と噂になった女の子は僕が知るだけでも4人もいる。
 今は今年経理部に配属された赤瀬千尋(あかせちひろ)を狙っているらしい。

「先輩たち、何してるんですか? はやく仕事してください。もう月末なんですから」

 そう赤瀬さんがパソコンの前で話している僕と香川に注意してきた。
 かわいい…。
 僕自身いろんなタレントや女優を見てきたが、こんなにかわいい子は初めてだ…。
 この会社にも20人以上の女子社員がいるが、こんなかわいい子がこんな会社に勤めるなんて本当に信じられなかった。
 性格も最高で、ほとんどの雌ブタどもが僕に挨拶もせずお茶もいれてくれないなか、毎日きちんと挨拶を僕にしてくれお茶も煎れてくれた。
 まあ経理部全員に煎れているのだが…。
 なんでも秘書課配属が決まっていたらしいのだが、秘書課の行かず後家ババァが嫉妬に狂って経理部にとばしたらしい。
 あんな糞ババァでもたまには役に立つ。
 僕は赤瀬さんを本気で好きになってしまったが、そうそう話しかけることも出来ずもっぱら香川が赤瀬さんに仕事を教えているのを横目で見ているだけだった。

 で、僕と香川が何を見ていたかというとインターネットのオークションサイトだった。

「どんな女の子でもこの呪文を唱えるだけであなたのもの。今話題の…」

 合法非合法いろんなものが出品されている中で、僕は何故だがこの呪文という言葉に惹かれていった。
 絶対眉唾だ。
 欺されるな。
 と心の中で思いつつももしかしたらという思いで、安ければ欺されてもネタになる、ネタを語る相手もいないのにそう自分に言い聞かせながら最初1万円で入札してみた。
 それから1週間、バカバカしい絶対欺されているっていう心の声ともしかしたら本物かもしれないじゃないかこれに賭けなきゃ一生女となんてできないぞっていう心の声が戦いを続けるなか、僕は入札価格を85万円までつり上げていった。

「これで最後、これでダメだったら、あきらめるから」
 
 僕はそういうと、あきれ果てて自分の席にもどった香川を目で追いながら最終入札価格90万円と入力した。
 そして、僕は午後からの業務にもどっていった。

(2)

「落札できた…。87万5千円か…」

 帰ってから家のパソコンを見ると、僕宛に落札確定の通知と振込先の情報や今後の取引方法を記したメールが届いていた。
 僕は興奮して何時間もその落札通知を見続けた。
 その晩僕は、ハーレムの王になった自分を想像し、それをおかずにオナニーをしてしまった。
 次の日、絶対欺されているよなあ、そんなことを考えながら僕はお金を振り込み通知のメールを指定されたアドレスに送った。
 それから1週間なんの音沙汰もなく、結局欺されたんだ僕と思い始めていた頃そのメールが届いた。

『恋の呪文DX、落札有難うございます』

 そう題されたメールには、恋の呪文の使い方や注意などが記されていた。

 『呪文は……です。
 絶対に人にばらさないでください。この呪文が出回ってしまうとどうなるかは想像できると思います。
 この呪文は両手をむすんで相手の額に両方の人差し指を当て唱えると効果が発揮されます。
 解除方法はないので、厳選の上使用していただくようお願いします。
 (調子に乗って使ってしまい何十人もの異性に追いかけ回された例や面白がって実験したために同性や自分の好みでない異性に効果が出た例が報告されています)
 複数の人間が同時に使った場合は相手の好みが反映されます。
 ……
 ……
 では、この呪文で楽しい恋愛生活を送っていただけるようお祈り申し上げます』

 そこまで読むと、僕は誰に使ってみようかを考えた。
 秘書課の…。
 同級生だった…。
 …赤瀬さん。
 いや、彼女はダメだ。
 僕は彼女のことが好きだし、こんな手で彼女を何とかするのは違うような気がした。
 まあ、この呪文があればいくらでも女がよってくるはずだ慌てずゆっくり考えよう…。
 僕は、僕のことを好き好きいいながら迫ってくる赤瀬さんを頭で打ち消しながら数少ない知り合い一人一人について考えを巡らせていった。

(3)
 
 いざとなると、僕は誰にどのように呪文を使えばいいかわからなくなった。
 道ばたで誰かに使おうかと思ったが、いくら呪文が短いとはいえ額に人差し指を当てるなんてとてもじゃないが出来ない。
 じゃあ、知り合いはと考えても額に指を当てられる女友達なんて一人もいない…。
 だいたい、もし偽物だったら会社にいられなくなるかもしれない。
 そんなことを考えながら、2週間がすぎていった。
 もういいやと思い始めたある日トイレから出てきた僕は給湯室で女社員たちのうわさ話を偶然耳にした。

「千尋、香川さんからコクられたって本当?」
「え、まあ」
「で、どうすんの」
「香川先輩って、あんまりいい噂聞かないし…」
「なにいってんの、千尋なら大丈夫。香川さん大事にして絶対浮気しないって。だいたい千尋自身は香川さんのことどう思っているの。好きなの嫌いなの?」
「そりゃあ、まあ嫌いじゃないですけど…」
「他に気になる人いるとか? 経理部の高田とか、はははっは」
「まっさかあ。先輩気持ち悪いこといわないでくださいよ。高田先輩なんて、地球上に二人きりになったとしても、ノーサンキューですよ。例えにしても酷すぎます」
「ははは、ごめんごめん。で、どうなの。返事は…」
「内緒です」
「断るなら、すぐに言うよね。これはミャク有りだな」
「もう、じゃあ、あたしは経理部にお茶を持っていきまーす」

 そんな会話を耳を真っ赤にしながら僕は聞いていた。
 香川に赤瀬さんがとられる。
 地球上に僕と二人になっても付き合わない。
 気持ち悪い…。
 赤瀬さんの言葉一つ一つが頭の中にリフレインした。
 呪文を使ってやる。
 怒りで頭が真っ白になった僕はメールに書いてあった呪文を頭の中で繰り返した。

「赤瀬さん。ちょっと…」
「は、はい。なんですか? 先輩」
 
 お茶を経理部に持っていこうとしていた赤瀬さんは僕に後ろから声をかけられ、びっくりしたように振り向いた。
 素早く両手を結ぶと僕は人差し指を赤瀬さんの額に当て、

「赤瀬さん……」

 呪文を唱えた。

「へ、先輩。どうしたんですか…?」
「い、いや、なんでもない。ご、ごめんなさい」

 偽物だ…。
 やっぱり偽物だったんだ…。
 呪文が効かないと思った僕はひたすらあやまり続けながら、席へともどっていった。

「はい、先輩」

 赤瀬さんがコーヒーをいれてくれたが、僕はまともに顔を見ることも出来なかった。
 その日の午後は頭を上げることも出来ず、ひたすら下を向きながら書類整理をし続けた。
 そして、仕事が終わると僕は飛び出すように会社を出た。

「せ、せんぱーい。高田せんぱーい。待ってください」

 会社から駅まで歩いていると、後ろの方から赤瀬さんが僕を呼び止める声が聞こえた。

「な、なんですか。あ、赤瀬さん」

 突然呼び止められた僕は昼のこともあり顔も見れず緊張したように答えた。

「明日、ドライブに連れて行ってくれません」
「……」
「ダメですか? ねぇ、せ・ん・ぱ・い」

 赤瀬さんが急に胸を僕の腕に押し当てながら、色っぽく僕に聞いてきた。
 僕は緊張と混乱で頭の中がおかしくなりそうになって黙り込んでいた。

「……ってない。車…。軽しか…」

 それだけ答えると僕は耳まで真っ赤にしてうつむいた。

「車なんて、どうでもいいですよ。先輩。あたしは、先輩とドライブに行きたいんです」
「な、なんで…」
「もう、うざったいなあ、チュッ」

 それだけいうと赤瀬さんはまわりを見渡し、まだ会社から誰も出てきていないのを確認するといきなり僕の唇にキスをしてきた。

「じゃあ。明日10時、駅前のロータリーで待ってますから、絶対来てくださいね」

 赤瀬さんは会社の方に走ってもどっていった。
 キス、キス、キス、ファーストキス。
 生まれて初めてキスをした僕はどうやって家に帰ったかもわからなかった。

(4)

「あ、赤瀬さん。お、お待たせ…」

 どんな格好をしたらいいのかわからず僕はグレーのスーツ姿で白い軽自動車に乗って、赤瀬さんとの待ち合わせ場所に行った。

「先輩。こちらこそお待たせしました…」

 そういって車の助手席に乗り込んだ赤瀬さんは、白いジージャンを脱いで車の後部座席にそれを放り投げた。

「し、私服の赤瀬さんも綺麗…」
「先輩はいつも通りですね。それとも、あたしとデートだからスーツ着てくれたんですか。だったら、ちょっと嬉しいな」

 ピンクでノースリーブのセーターに白いミニスカート姿の赤瀬さんは、それだけいうといきなり僕にキスをしてきた。

「せ、先輩。す、好きです。いつからか…わ、わからないけど、ずっと好きでした。先輩の唇、あ、甘いです…」
「あ、赤瀬さん」
「ち、千尋って呼んでください。お願い…」
「ち、千尋ちゃん。人が見てる」

 いきなりのキスにとまどいながらも僕がそういうと、赤瀬…千尋ちゃ…千尋は耳を真っ赤にしながら

「先輩…じゃあ、行きましょうか」

 優しく唇を放しそう返してきた
 それから僕は彼女のお薦めするイタリア料理の店まで車を走らせた。
 その間も、千尋は僕の左足にずっと右手を添えながら照れたような顔で僕に話しかけ続けていた。

「それで…香川先輩ってあたしに指輪なんか渡して、今までの子は遊びだったけど、君には本気だって言うんですよ。馬鹿ですよね。あたしには健介先輩っていう心に決めた人がいるのに…」
「はっはははははははは。ひいひひひひい」
「ど、どうしたんですか先輩。急に笑い出したりなんかして」
「いやあ。ごめんごめん」

 千尋、お前は僕のことを心から好きだと思っているが全部呪文の力なんだよ。
 本当にお前が誰のことを好きだったのか、誰がお前のことを好きなのか僕は知らない。
 しかし、今はもう僕のことしか目に入らない…。
 この呪文は凄い…。
 そんなことを考えると、笑いが止まらなくなった。
 とりあえず85万円分は楽しませて貰う。
 まずは千尋、お前だ。
 昨日まで全くもてなかった自分がまるでジゴロか何かにでもなったかのような錯覚を僕は覚えた。
 女の子の態度一つで人はここまで変れるんだ…。
 イタリアンレストランに着くと今度は僕の方から千尋の肩に手をかけた…。

(5)

 会社の話なんかをしながら初めて二人きりで食事をした後レストランを出ると

「千尋ちゃん、これからどうする」

 僕は聞いた。

「先輩…。千尋…連れって…下さい…」
「どこに…」
 
 聞き取れなかったかのように僕が聞きかえすと千尋は泣きそうなになりながら、

「つ、疲れたか…ら。ど、どこ…どこか、静かな、ば、場所で…きゅ、休憩しません…」

 としどろもどろに答えた。

「ああ、ぼ、僕も、そ、そう思ってった…」

 僕も緊張しながら、そう答えた。

「せ、せん、先輩…。千尋初めてだから…ちゃ、ちゃんと…リードしてく…ださいね」

 そう千尋がいってきたが、まさか自分も初めてだといえず僕は黙って彼女の手を握った。

「…」
「……」

 とりあえず、ビデオとハウツー本の知識で乗りこえよう…。
 僕は黙ったままで運転を続け、何とかラブホテル街にたどり着いた。

「えーと。あそこでいいかなあ…」

 何とかこなれたふうを装ってINと書いている看板の方に車をやり駐車場に車を止めた。

「さ、さあ、行こうか」

 僕は千尋の手を握ってホテルの中に入っていくきフロントの受付らしきところで、

「お、大人二人。チェ、チェックイン。お、お願いします…」

 と、勇気を振り絞って座っているおばちゃんに声をかけた。

「あそこのパネルで好みの部屋のボタンを押して、矢印に従って下さい」

 初めてなの、ば、ばれた…。
 千尋を見るとうつむいて耳まで真っ赤にしていた。
 どうにか千尋の手を引いてパネルの前に行き

「ど、どの部屋にする。千尋ちゃん…」
「せ、先輩に…お任せ…し…ます」

 僕はパネル全体を見ながら、一番無難そうな部屋を選んだ。
 か、簡単じゃ、ないか…。
 ボタンを押すと足下のエレベーターの方までひかり、僕たちを部屋まで導いた。
 部屋につくまでの間、千尋は僕の腕に顔を隠すようにずっとしがみついていた。

(6)

「なんだろう。このボタン」

 ボタンを押してみると部屋の電気が消え赤い照明がともり急に淫靡な雰囲気になった。
 僕は慌ててボタンを元に戻した。

「初めてですけど。こんなふうになってるんだ。すごーい。なんで天井の鏡なんですか」

 二人きりになると千尋は緊張が解けたのか部屋の中を散策し始め、そんなことを僕にいってきた。

「いやー。そ、それは。しているところを自分たちで見るためだよ。自分たちが自分たちに見られたり、自分たちを見たりしてると思うと興奮するじゃない」
「えー、そうなんですか? 男の人って…」
「い、いやあ、男とは限らないよ…。下に来るのが、ち、千尋ちゃんだったら…。上の鏡を見るのは、ち、千尋ちゃんだからね」

 僕はしどろもどろになりながら、思いつくままに答えていった。

「そ、それとも…千尋ちゃんは…う、上に、な、なるのが…好きなのかい?」
「へ? も、もう先輩ったらエッチ…。先輩のリードに、ま、任せます…」

 ダブルベッドの脇に腰をかけた僕は手招きで千尋を横に座らせると、
 肩を抱いていきなり口づけを求めた。

「あ、せ・・先輩。シャワーは?」

 いきなりのキスに照れた顔をしながら千尋は僕にそう聞いていた。
 シャ、シャワーか…。僕は頭の中で様々なことを思い描いていた。
 大丈夫、今のところ呪文の効果は完璧だ…。
 相当なことをしても千尋は僕のことを好きでいてくれるはず…。
 僕は千尋のピンクのセーターの上から胸を鷲掴みにすると

「そんなの、うそうそ。どこで得た知識だい、千尋ちゃん。男と女ってのはお互いの臭いでフェロモンを感じ合うんだ」

 そう嘯いた。

「あ…。アン…。イヤーン。せんぱ…い。そ、そうなんですか…。先輩に任せます…」

 千尋は声にならない声で僕にそれだけいうと、唇を激しく僕にあわせて僕の口の中に舌を入れてきた。
 舌を口にいれられた瞬間、僕はガーリックの臭いを消すためにガムを噛んでいたのをまだ捨てていないことに気がついた。
 そうだ…。
 僕は、噛んでいたもう味のしないガムを彼女の口の中に舌で押し込んだ。

「え、えー」

 彼女がびっくりしてはき出そうとするので

「僕のプレゼントをはき出すの? ニンニク臭いよ。ガムでも食べなきゃ…」

 僕は耳元でそう囁き、ノースリーブの脇に手を入れブラの上から胸を弄りはじめた。

「も、もう…。先輩…の…へんたい…」

 彼女はそれだけいうとガムをいとおしそうにかみ始め、キスの途中で僕の口の中にガムを返してきた。

「先輩も…におい…。おかえし…で…す…」

 彼女は顔を真っ赤にしながらいってきた。

 ガムを口の中に返されて興奮の頂点にきた僕はいきなり千尋のセーターの裾を掴むと一気に脱がそうとした。

「いやん。で、電気消して…。恥ずかしい…」

 千尋はそういいながらも両手を挙げて僕になされるままに服を脱いでいった。
 僕が両手でスカートをつまんで足から引き抜こうとすると、千尋はおしりを上げて僕が脱がせやすいようにしてくれた。
 靴下を脱がすと上下おそろいのうすいブルーの下着姿になった千尋が恥ずかしそうにベッドによこたわった。

「せんぱい…。で、電気…」

 そういう千尋を無視して…僕はブラを上にずらすと彼女の胸にしゃぶりついた。
 右手は自然に彼女の股間を下着の上から擦りつけていた。

「あ、あーん。せ・せ・ん・ぱ・い…。ヒィー」

 感じながら声を出していた彼女がいきなり悲鳴を上げたので、僕はびっくりして

「ど、どうしたの。ち、千尋ちゃん…」
 
 て、聞くと、

「乳首…。噛まないで…。お、ねがい。優しくして」

 千尋が涙目で僕に哀願してきた。

「も、もう。ち、千尋ちゃんは本当に子供だなあ。こんなんじゃ、激しいプレーで、できないぞ」
「え、先輩。こ、これが普通、なんですか」
「そうだよ。千尋ちゃん…」
「が、我慢しますんで。先輩、千尋の噛んでください」
「千尋ちゃんのな、なにを?」
「え。ち、千尋のち、ち…く…び…です」
「はははは。いいよ、いいよ、千尋ちゃんはまだ、子供なんだから…じょじょに覚えていこう」

 僕はなにをしても僕を信頼して信じてしまう彼女を見ながら、呪文の効果の恐ろしさを感じ始めていた。
 この呪文をみだりに使ってはいけない。
 当面は千尋だけだ。
 そのかわり千尋を僕好みの…エロ本とエロビデオごときの知識しかないが…変態女に変えてやる。
 まだ童貞も捨てていないのに、なにをしても許してくれる千尋を前に僕は妙な自信がつき始めていた。

「さあ、千尋ちゃん。今度は君が僕をよろこばす番だ。僕の服を脱がして、僕の体中を舐めるんだ。脱がしているあいだじゅう僕の体から口を離しちゃいけないよ…」

 僕がそういうと、子供扱いされて耳まで真っ赤にして背を向けていた千尋は

「はーい」

 嬉しそうに返事をして、僕の唾でべとべとの胸をブラにしまい、僕の口にキスをしたり耳たぶや鼻の頭をあまがみしながら僕の上半身を裸にし舌の位置を首筋から僕の乳首に移動させてきた。
 しばらく僕の乳首を舐め続けた後、千尋は僕のあそこを優しく触ってズボンを脱がしてきた。

「あ、あん。ち、乳首を噛んでいいのは男の方からだけだからね」

 情けない声を出しながら僕は千尋に指示を出した。

「さあ、千尋ちゃん…。男の子を舐めるのはわかるかい…」

 僕がそういうと

「はあい。いただきまーす」

 ちょっとふざけた感じの声で返事をして、僕のあそこを握りしめ舐めようとしてくるので

「違うよ。本当に雑誌とかでしか知識がないんだなあ。本当の大人のカップルは足から舐めるんだよ。わかってないなあ」

 僕はむっとしながら、千尋にそういった。

「へ?、そ、そうなんですか?千尋なんにもわかってないですよね。ご、ごめんなさい」

 僕はソファーに腰をかけると千尋を手招きし左足を彼女の顔の前に投げ出した。

「千尋ちゃん…。大人の女はただ舐めるだけじゃダメなんだよ…。ちゃんと言葉でも男を喜ばせないといけない。僕のことが好きなら、どういえば僕が喜ぶか考えながら舐めてごらん」

 余裕の出てきた僕は右足を千尋の股に入れ込みながらそう要求した。

「あん、やだー。先輩のえっちー」

 僕の右足を両方の太ももで挟み込んで股を擦りつけるようにしながら左足をとり

「せ、先輩。ハア、ハァ…足を、な、舐めさせていただきます」

 彼女なりの色っぽい顔でそれだけいうと、僕の足の裏を舐めはじめた。
 僕は彼女に足の裏から親指、指の股と舐めるところをどんどん指示していった。
 千尋は素直に従いながら、腰の動きを速めていった。

「はあ、はぁ、はあ、さあ両手は僕の乳首を刺激しながら、僕のチ○チ○を舐めてごらん」

 彼女は両手を万歳のかたちにすると僕の両胸の乳首を弄り、舌を出しながら僕のあそこを舐めだした。

「先輩…。美味しい…。千尋…幸せ…」

 そんなことを言いながら彼女は、僕のあそこを唾液まみれにした。
 興奮しきった僕は彼女の頭を両腕で抱えると、

「咥えて、噛んじゃダメだよ…」

 そういって咥えさせ両腕で頭を激しく前後させた。

「ア、ア、ア、ア…アーン、チュウ、チュッ」

 彼女は吐きそうになるのをこらえるように、きっちりと僕のあそこをくわえ込んでいた。

「じっとしてないで、両手はおしりとか乳首を刺激して、口の中で舌も使う」

 僕が指示すると素直にそれに従い、両手をおしりにまわしたり乳首を弄ったりしながら口の中で動く僕のあそこに長いめの舌を巻き付けてきた。

「ア、ア、イキそう。ごめん」

 僕はそれだけいうと、両手で掴んでいた頭を後ろに押しやってあそこを口の中から出すと精液を千尋の顔にぶちまけた。

「ご、ごめんね…」

 僕は目を開けることもできない彼女の顔を見ながら

「美しいもを見ると汚したくなるんだ」

 わけのわからない言訳をした。
 その瞬間、僕はちょっとした悪戯を思いついた。

「ちょっと、いい」

 それだけいうと、彼女の下着を右手で掴んで足からとると彼女のあそこが当たっていた部分…多分生地が厚くてびちょびちょの所…を表にするとそれで千尋の顔を拭いた。
 いきなりなことでわけもわからずきょとんとしている彼女に精液で汚れたうすいブルーのパンティを見せつけると、

「これを今日履いて帰ったら、妊娠しちゃうかも」

 意地悪そうに千尋にいった。

「いやーん。せ、先輩。もし、そうなったら責任とってくださいね」
「責任…?」
「ち、千尋を、せ、せ、先輩の、お、お嫁…さんに…して…もらい…ますからね、ヤッ」

 か、かわいい…。

「それより、千尋ちゃん、あそこ丸見えだよ。へへへ」

 僕がそういうと、彼女は体中を真っ赤にしてベッドの方に行き布団に潜り込んだ。
 お嫁さんって言葉が妙にツボにきた僕は

「いよいよ、千尋ちゃんを、ぼ、僕の、お、お嫁さんにしてあげるよ」

 それだけいって布団に潜り込み彼女のブラを荒々しくとりベッドの外に投げ出した。
 僕のそこは完全に回復していた。というより萎えていなかった…。
 キスをしながら左手を彼女の首にまわし右手をあそこに持っていき、十分に濡れているのを確認すると僕はいきなり入れようとした。

 わ、わからない…。
 初めてで、全然わからない。
 何とかしよう、ここか…入らない…。
 しょ、処女は多少無理しないとダメなのか。
 そんなことを考えていると、頭が煮詰まっていきだんだんとあそこが萎えていくのを感じた。

「せ、先輩。どうかしました…?」

 彼女は雰囲気を察したのか僕に問いかけてきた。

「い、いやあ、千尋ちゃんの痛がる顔見ていると、なんだか、かわいそうになってきて…」
「そんなに、痛そうでした? あまり痛みは感じなかったけど…。やっぱり初めてって痛いんです…か…?」
「僕が知る限りは、そうだったよ」

 処女喪失ビデオでしか知らないけど…。

「先輩…。あ、ありがとう…。気をつかってくれて…。でも、大丈夫です。先輩のものになるのだったら、千尋…我慢できます…」

 そうはいっても萎えきってしまったし…。

「そうだ。千尋ちゃん…。僕はもう年だからきついんだ。わかる?」
「うん、ごめんなさい、先輩…どうしよう…またに…しますか」
「ううん。せっかくここまできたんだ。僕は…千尋ちゃんのものだよ。千尋ちゃん、今度は千尋ちゃんが上になって、自分で僕のものを大きくしてごらん。あそこを舐めたり、玉を舐めたり、お尻の穴を舐めると、大きくなるよ。僕も千尋ちゃんのためにがんばるし」

 そういうと僕は千尋とベッドの間にわって入り、彼女を持ち上げると両手でまわして僕との上下を逆転した。
 僕の上になった彼女は、一生懸命に右手で僕のあそこを握りながら乳首を舐めたりして何とか僕のものを奮い立たせようとした。

「お尻の穴を舐めて…くれる」

 僕が凄いことを要求しても千尋は文句も言わず

「クン、クン、ベチャ、ペチャ」

 音を立てながら腰を上げた僕のおしりの中に顔を入れて穴を舐めはじめた。

「手を休めないで」

 千尋の右手が動き出すと、僕のものはみるみる回復していった。

「さあ、千尋ちゃんの痛がる顔見てしまうと…できないんだ。今度は自分でしてごらん。上の鏡で見ていてあげる…」

 僕は寝ながら千尋を引っ張り上げ、顔に千尋の頭を持ってくると撫でながらそう呟いた。

「はい。せ、先輩。ち、千尋…がんばるから、絶対…してください。お願いします」

 それだけいうと、千尋は僕にまたがり右手で僕のものを掴み左手で自分のものの位置を調整しながらそっと腰を落とした。

「い、いたーい。ひぃー。た、助けて…。ううん、痛くないです…。フウ、フウ、フン、フン、フウ、ハア」

 痛いのを我慢した顔で千尋は僕とつながると必死に腰を動かした。
 あまりの気持ちよさに僕は…

「も、もうイキそう。す、すまん」

 一瞬にしてイッテしまった…。

「ご、ごめんね…」
「い、いえ、ち、千尋の方こそ…無理を聞いて貰って…」
「あー。ひ、避妊するの忘れてた…」
「多分、今日は大丈夫です…。でも、ほんとにそうなったら責任とってくださいね。せ・ん・ぱ・い」
「ああ、絶対約束するよ」

 そんな会話をした僕たちは、その後もシャワーで洗いっこしたり服を着せ合ったりして、遊んだ。

「先輩のブリーフ。なんか。ゴムゆるんでますよ。ずれないかなあ」
「気にしない、気にしない。それより、本当に赤ちゃんができたら大変だろう」

 僕にいいなりの千尋は、妊娠の危険があるから下着を取っ替えこして帰ろうっていう僕の提案にも素直に従った。

「ちょっと、もごもごして、気持ち悪―い。でも、先輩のなんですよね。なんか…嬉しい」
「はははは、帰ろうか」

 精算を済ますと僕らは車に乗り込んだ。
 もう空は夕暮れ時だった。

(7)

「こ、これから夜ご飯でも食べに行きます? 先輩」
「いやあ、今日はもう疲れたし…。家で食べるよ…」

 釣った魚には餌をやらない。
 僕はおかしなぐらいの自信を持って、そんなことを頭で考えていた。

「わかりました。今日は、我慢します、でも…、先輩」
「なに?」
「気が向いたらでいいですけど…。来月の3連休、温泉にでも行きません。お願いします」

ものすごく上目遣いのかわいい眼で彼女は僕にそう頼んできた。

「うーん。気が向いたらね」
「絶対ですよ。明日予約しますよ。断られたら損する覚悟で…」
「そこまで、いうのだったら…。そうだ。だったら週末はデートとかするとして来月までに勉強してきてくれるかい?千尋ちゃん」

 僕は千尋にちょっとした提案をした。

「勉強?」
「そう、勉強。ちょっと僕の家に寄ってから、送るよ」

 そういうと、僕は自分の家に車を飛ばした。

「おかえり、健介。早かったね」

 家に帰ると母親が僕にそういってきた。

「ただいま。でもすぐに、友達家まで送ってくるから」
「へえ。珍しいね。晩ご飯は?」
「すぐに帰ってくるよ。家で食うから、用意しといて」

 会話もそぞろに僕は自分の部屋に飛び込むと、DVDのコレクションから

 『社内恋愛大全』
 なんか、残業中にデスクの下であそこを舐めさせたり、仕事さぼって公園のトイレでしたりするやつ。
 『痴女スペシャル』
 男がマグロ状態で痴女に襲われるやつ。
 『コスプレX』
 説明するまでもない…千尋、学生時代の制服とか水着持ってないかな…。
 この3枚を選ぶと車にもどった。

 紙袋に入れたDVDを千尋に渡すと僕は

「今日から、この中の3枚のDVDを毎日1枚ずつ見て勉強するんだ。3日たったら最初にもどって続けること。毎朝屋上で内容確認するからね。まだ、あけなくていい。これの中身を完全にマスターしたら、温泉に一緒に行ったげる。わかった?」
「なんだかわからないですけど…。DVDの中身を完全にマスターすればいいってことですよね。千尋がんばります。明日予約入れてきますから、お願いしますね。先輩」

 そういうと千尋はなんの疑いもなくDVDの入った紙袋を抱え込んだ。
 帰ったらびっくりするだろうけど、今の状況なら大丈夫なはずだ。
 明日の朝が楽しみだ…。
 そんなことを考えながら車を運転していると、だんだん興奮してきてあそこが立ってきた。

「ち、千尋ちゃん…」
「なんですか。先輩」

 僕は黙って千尋の右手を僕のあそこに持っていった。
 千尋はだまったまま、ズボンのチャックを下ろした。

「あ、ち、千尋の下着だから、あいて…ないんだ…」

 顔を真っ赤にしてそれだけいうと、自分の下着の横から僕のものを出し優しくしごきだした。

 頭がぼーとしてくる…。

 ガッシャーン。

 意識がもうろうとしていた僕はブレーキを踏み忘れてしまい、おもわず前の真っ赤な高級車のオカマを掘ってしまった。
 あわてて、千尋の右手を離すとチャックを閉めて車を降りた。

「あなた、この車がお幾らなのかわかってらっしゃるの」

 凄い剣幕で妙齢のものすごい美人が車から降りてきた。
 年の頃は30代半ばくらいか。

「そんなボロ車で、保険にはちゃんと入ってらっしゃるんでしょうね。この車の修理、数十万じゃ聞きませんことよ」

 ものすごい剣幕で詰め寄られた僕はあまりの怖さに

「……」

 おもわず両手を組んで人差し指をこの人の額に当て呪文を唱えてしまった。

「あら、よく見ると、いい男じゃない。とりあえず、わたくしの家でお話ししましょうか」

 お金持ちの美女がものすごい色っぽい目つきで僕にそういってきた。

「なに、いってるんですか。早く警察呼びましょう。お体大丈夫ですか?とりあえず、わたしが…」

 なにかただならぬ気配を感じたのか、千尋が車から降りてきて僕と美女の間にわって入りそう捲したてた。

「あら、あなた関係ないじゃない。これはわたくしと彼の問題よ。お嬢ちゃんはご無事そうだからおうちに帰ったら? はいこれ、タクシー代」
「なにいってるんですか。おばさん」
「おばさんですって。キィー」
「…………」
「………」
「…」
 
 だんだんと大きくなっていく野次馬の環もはばからず一人の男のことで喧嘩し続ける美女二人を
 僕はどこか他人事のように思いながら眺め続けていた。

< 終 >

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