老教師の午後 1

-1-

 ――良い、天気です。

 抜けるような蒼穹が、次第に茜色に染まって行き、雲一つ無い春の空が、遥か彼方から軽やかな微風を運んで来ます。

 弾ける様な、さざめく様な、生徒達の声が微かに聞こえます。
 夕刻も迫り、がらんとした廊下には、もう人影もまばらで、窓から差し込む日差しの角度も深くなってきました。

(もう、春も過ぎようとしていますね……)

 この時間になっても、風には冷たさを感じなくなって来ました。
 私はその爽やかな風に目を細めながら、「生活指導室」と銘打たれた部屋の扉を開きます。

 本格的なお嬢様学校でありながら、本校の校風は基本的に自由であり、生徒の自主性を重んじています。
 この部屋もここ数年、巷の学校に溢れているような、問題行動に対する指導という形で使われた事はほとんどありません。
 もっぱら生徒の相談の場として、悩みを打ち明ける生徒が時折訪れるくらいです。

(今日は、相談者も居ないようですね……)

 公立中学校の教師として三十数年、定年退職を迎えた私を、古くからの友人であったここの校長が迎えてくれ、早3年が経ちました。
 どうやら私は、有難い事に子供に好かれる性質であるようで、現役時代も現在も子供達は「じーちゃん先生」などの愛称で呼び、接してくれます。
 私なりに、誠心誠意を掛けて教育に尽くした数十年。
 それに生徒達の好意という形で応えて貰えた私は、本当に幸せな教師だと思います。

(では、用意に入るとしますか……)

 現在は非常勤講師として、国語科、社会科全般と、生活・進路指導という名の悩み相談を受け持っています。
 生粋のお嬢様の集まる、純粋培養とも言える本校で、私のような男性教師が生徒の相談に乗るというのも、ある部分で気後れしたのも確かなのですが……。
 十数年前に先立った妻は、常々私は「人畜無害を具現したような人」と言っておりました。
 その印象は大体の方々も同じようで、怪しげな目で見られるどころか、最近は年若い女教師の方々の相談まで受けるようになってきています。

(これでいいでしょう)

 新入生を迎えて早一ヶ月、浮ついてい校内の雰囲気も大分落ち着いてきました。
 新入生の子供たちの反応も概ね良好で、素行に問題のある生徒も居ないようです。
 そこで私は――。

 コンコン。

「開いていますよ、入っていらっしゃい」
「はい……」

 おずおずとこちらを伺いながら入ってくるこの生徒の名前は、
 遠野奈々(とおの なな)。大人しい印象の新入生です。趣味はピアノで、コンクールに出場するほどの腕前とか。

「あの、先生、お呼び……ですか?」
「ああ、大した用事ではないよ、ちょっと気になったもので悩みでもあれば、と思ってね」
「悩み……ですか……」
「まあ、座りなさい」
「は、はい……」

 奈々は俯きながら逡巡しています。
 古風な家風なのでしょうか、腰近くまで伸ばした艶やかな漆羽の黒髪が夕陽に映えます。
 ほっそりとした身体つき、大きなくりっとした目に伏せがちな長い睫毛、綺麗に通った鼻梁、ふっくらとした柔らさを持った唇。
 日本人形のように美しい顔貌。
 
 美しい――。そう思わずには居られない少女です。

「まだここに来て一月程だけど、入学当初に見られた明るさが最近影を潜めているように見えてね」
「……」
「私に解決できることなら、相談に乗るよ」
「……あの、私、悩みなんて――」

 遠慮からか、警戒からか、奈々が席を立とうとしたとき、

 私は彼女の、その大きな瞳を、覗き込みます。

 さあ――

 「狩り」の、開始だ。

「――?」

『――魔眼、魅了』

 老教師は奈々に視線を合わせ、絡めさせ、その奥に潜む精神に忍び込む。
「……っ」
 びくり、と奈々の身体が揺れた。その瞳が、急速に霞んで行く。
 少女の精神に、何かが混ざり、溶け込んでいく。
「あ……」
 ほどなくしてその顔に、好意と羞恥の、赤みが差した。

 単なる老教師としてしか見ていなかったはずの男が――

 前から少し憧れていた老教師が――
 
 ずっと憧れていた、初恋の先生が――

 ――目の前の男が、たまらなく恋しくなっていく。焦がれていく。

 奈々の意識が、瞬く間に書き換えられていく。
 

「さあ、遠慮せずに話してごらん」
「は……はい……!」
 奈々は恥ずかしそうに俯きながら、上目遣いで教師を見た。

「――コンクールが、怖いんです……」
 奈々は、ぽつりぽつり、話し始める。
「ピアノのかな?」
「はい……練習ではうまく弾けるのに、会場に行くと足が竦んじゃって……一回、失敗してから、もうどうにもならなくなっちゃって……」
 ぎゅっ、と、彼女の両手が膝を握り締める。
「なるほど……緊張してしまうのか」
「はい……もう、今はもう、コンクールに出ることが、怖くなっちゃって……」
「うんうん、それで元気が無かったわけだ。――なら、私が緊張しないお呪いを教えてあげよう」
「おまじない……ですか」
 きょとんとした表情の奈々の瞳を、老教師は再び覗き込む。

 ――より強く、より深く。

『――魔眼、依存・盲従』

「――っ!!」
 奈々が、声にならない悲鳴を一瞬上げ掛け――代わりに、熱い吐息を漏らした。
 驚きに見開かれた眼が、同じ瞬間に、とろんと蕩けて行く。
「そう、お呪いだ。私がいつも傍に居る、そう思うだけでいい、そう感じるだけでいいんだ」
「あ……!!」
 まぎれもない喜びが、奈々の瞳に宿る。
「そうすれば何も怖くない。何も心配する事もない。いつでも私が、君を護る」
「は、い……」
 その貌に、うっとりとした笑みが浮かぶ。
「大丈夫、私に全てを任せて。それだけでいい。私を信じるんだ。何も――何も、疑う必要は無い。いいね? ――奈々」
「はい……はい!!」
 憧憬と崇拝の入り混じった表情で、少女はすがるように老教師を見上げていた。

「さあ、これで大丈夫だと思うけれど、もう一つ念の為に緊張を抜くマッサージをしてあげよう」
「はい……」
 老教師を見上げる奈々の瞳には、もう疑念の欠片もない。
 完全に目の前の男を信じきった、純粋な好意を隠そうともしなかった。
「では、上着を脱いで、背中を向けなさい」
「はい」
 奈々は言われた通りに制服のブレザーを脱ぎ、傍らに置く。
 老教師は奈々の背中に回り、背中を揉み易いように――と見せかけて、
 実は隠しカメラからスカートの中が上手く見えるように、奈々の身体の向きを変えていく。
「じゃ、いくよ……」
「はいっ」
 テーブルの脚に巧妙に隠したカメラが、しっかりと奈々の股間を捉えているのを確認しながら、老教師は少女の肩に両手を伸ばした。

 ぎゅっ、ぐっ、ぎゅっ……
 最初は極普通のマッサージ。肩と首から肩甲骨にかけてを、少し強めに揉み解す。
「ふぅ、ふう、ふぅっ、きもちいい……」
 揉むリズムに合わせて浅く吐息を零しながら、奈々は無防備にそう囁く。
「これは普通のマッサージと違って、気持ちよさに重点を置いてリラックスさせる特製のマッサージだ」
「はい……」
 ぐっ、ぐっ、ぎゅっ……
「急に動くと危ないから、なるべく力を抜いて、目を閉じていなさい」
「は、い……」
 奈々は言われた通りに瞳を閉じ、全身の力を抜いていく。
 その声は次第次第に虚ろになり、顔にはとろんとした、蕩けそうな笑みを浮かべ始めていた。
 老教師は肩から背中を下がり、腰を重点的に押し始める。
 ぎゅっ、ぎゅっ、ぐっ、ぐっ……
「ふ、ぅ、うぅ……せんせい、気持ち、いい……」
「大分リラックスしてきたね。じゃあ、ここからが本番だ」
 腰を押していた手が、徐々に脇腹へと動いていく。
「ふあ、あ……せんせい、それ、くすぐったい……」
「我慢我慢。ほら、暴れるんじゃない。息を吐いて、力を抜いて」
「だ、だって……うぅ、ううぅぅ……」
 タッチは軽く揉むように、くすぐるように。
 ――そして、撫でるように、舐めるように、少しずつ動きに厭らしさを加えていく。
「くすぐったいだけじゃないだろう? 少しだけかも知れないが、身体がゾクゾクするような気持ち良さがあるはずだ――ほら」
「きゃんっ!!」
 ワイシャツの上から、一瞬だけ、老教師の指が乳首に触れ――奈々は、弾かれた様に身体を跳ねさせた。
「ほら、気持ちいいだろう? この気持ちよさを受け入れて、集中しなさい」
「せっ、せんせ……っ、これ、だめぇ……っ!!」
 羞恥にまみれた表情で、奈々は老教師の愛撫から逃れようと暴れ始める。だが、思いのほか強い老人の力に抱き留められ、逃れられない。
「いやぁぁぁ……」
「ふん、まだ羞恥が勝るか――奈々、いいから落ち着きなさい。先生の言う事が聞けないのか?」
 身をよじりながら涙を零して嫌がる奈々を無理やり振り向かせ、老教師はその瞳を覗き込む。
「――――!!!」

 ――先程よりも更に強く、深く、少女の精神の奥底まで。

『――魔眼、服従・触覚鋭敏』

「あぁ……ぁ…………ぁ……」
 途端に奈々の身体から、くたくたと力が抜けていく。
 先程と同じ、恍惚とした笑みが、再び奈々の表情を支配し始めていた。
「力を抜け……そう、何も怖がる事はない、全てを私に任せるんだ……」
 そう言いながら、老教師は奈々のワイシャツのボタンを外して行く。
「……は、ぃ……」
 奈々は、潤んだ瞳で老教師を見上げ、頷く。
 老教師の手はそのままワイシャツの中へと侵入し、純白のキャミソールの上から奈々のふくらみをやわやわと揉み解し始める。
「はぁ、あ、ぁ、ぁ……せんせい、くすぐったい、よぅ……」
「ほらほら、もっと集中しなさい。くすぐったさの奥にある気持ちよさを感じるんだ。なんとなく分かるだろう?」
「でもっ、よく、分かんな――――ひぃぃぁっ!!」
 ふに、と左右の乳首を優しく擦った瞬間、少女の身体はバネ仕掛けの様に跳ね上がった。
 奈々の困惑した返事に、老教師は愛撫を乳首へと集中することで応えたのだ。
「ほら……ここなら、分かるだろう?」
 ふに、ふに、ふに、ふに、ふに、ふに……
「あ、あ、あ、あ、あ、ああ、あぁぁ、いや、せんせ……あああっ!!」
 他に形容する言葉が無いほどに柔らかく、甘美なる感触を返していた乳首が、程なく微妙な硬さを持ち始める。
 くに、くに、くに、くに、くに……
「あ……ひぃ、ひんっ、ひ……せんせ、せんせえ、変、なんか、へんだよぉ……ひぃんっ!!」
 キャミソールの薄い布地越しの絶妙な感触に、奈々は感電したように背を反り返らせていく。
 乳首は今や、明らかな硬さを持って指に応えていた。
 老教師はそれを、摘み、転がし、挟み、扱き……老練の手つきで弄ぶ。
「そうだ、そう……その心地よさに集中して、身を任せるんだ。もっともっと、気持ち良くなれるぞ」
 くり、くりゅっ、くり、きゅっきゅっ、くり、くりくりっ、くりっ……
「き……ひぃぃっ、うあ、ああ、ああああっ、せんせっ、おかし……おかしいよぉっ!!」
「もっともっと、集中しなさい。そうすれば、緊張も怖さも全て吹き飛ぶ、本当のリラックスが待っているぞ」

 普段から物静かで、精緻な日本人形のような美しさを持つ少女が、乱れ、花開いていく。
 すらりと伸びた肢体が仰け反り、引き攣り、愉悦の叫びを上げ始めるのだ。

 ――彼女は今、老教師の「魔眼」による支配下にある。
 羞恥心のみを残し、少女の感情も敏感さも、理性すらも、彼の思うがままに操られているのだ。
 老教師のしている事をおかしいと疑う事も無く、
 いつの間にか感覚すら鋭敏にされている事にも違和感を抱かず、
 ただただ未知の気持ちよさと、恥ずかしさに身悶えるだけの、奈々。
 その先に待ち構える淫靡な罠に、彼女はまだ気付いていない……。

「いいぞ、その調子だ……さあ、続きは寝かせてするよ。ワイシャツとスカートを脱いで、横になりなさい」
「はぁ、はぁ、はぁ…………はい……」
 奈々はのろのろと立ち上がり、制服を脱ぎ始めた。
 するりと落とすようにワイシャツを脱ぎ捨て、スカートもホックとファスナーを緩めただけで、すとんと落とす。
 ――白い木綿のショーツと、揃いのキャミソールが、露になっていた。
 細身の、白磁のような裸身を隠しているのは、今やこの薄布2枚だけなのだ。
「はぁ……はぁ、はぁ……」
 奈々は荒い息をつきながら、ソファに仰向けになる。脱ぎ捨てた制服を畳む余裕はもう、残っていないようだ。
 その混乱の隙を突く様に、老教師は彼女の足元にビデオカメラを置いていた。――無論、彼女の視界には入らないように。
「最後の仕上げだ。とても大事な部分だから、できるだけ快感に身を任せて、気持ち良くなる事だけを考えるんだ。いいね?」
 老教師は奈々の頭を優しく撫でながら、そっとキャミソールをめくり上げる。
「はっ、はい、分かりました――っああぁっ!!!
 ふくらみ始めたばかりのなだらかな双丘に、薄いピンク色の乳首が、きりりと勃起している。
 小粒ながらも、精一杯にその存在を主張するかのようなその光景を見た瞬間、老教師は少女の返事も待たずに乳首にむしゃぶりついていた。
 ちゅぅっ、ちゅ、べろ、ちゅぅぅ、ちゅぱ、ぺろぺろぺろ……
「ひゃぁぁぁっ、ああぁっ、先生、そんな、はずかし……っ、ひぃ…………っ!!!」
 巧みな舌と唇、更には歯で滅茶苦茶に攻められ、乳首は完全に屹立してしまう。
 老教師は応えずに、ただひたすらに左右の乳首を貪り続けていた。
 べろっ、べろっ、べろっ、べろっ、ちゅぅぅっ、ちゅる、べろっ、べろ……
「ああっ、ああああっ、と、溶けちゃう、ちくび、とけちゃうよぉ、溶かされちゃうよぉ……」
 奈々は恥ずかしさに顔を覆いながら、激しく首を振ってその快感を訴えている。

 それは、奈々が生まれてこの方味わったことも無い快楽の連続だった。
 今までに数度、秘めやかな行為に及んだ事はあった。だが、そのときの快感とはとても比べ物にならない。
 このような快感が、気持ちよさが存在するのだと、その事自体に奈々は驚いていた。
 「憧れの」老教師の、熱い、熱い、ざらついて、ぬるぬる、ぬめぬめとした、舌。
 乳首を舐める度に、吸い付き、舐り、転がされ、舌先で潰される度に、気の遠くなるような快感が奈々の脳裏に揺れ惑う。
 (おかしくなる――本当に、このままされたら、おかしくなる、戻れなくなる――)
 消え入りそうになっている理性が、辛うじて、そう警鐘を鳴らしている――が、もう、奈々自身にもどうしようもなかった。
 このまま、流されていくしかないのだ。老教師の、思いのままに。
 ――恐らくはこの先に待つ、快楽の大渦へと。


 
 数分もして、ようやく老教師が奈々の胸から顔を上げた時には、彼女は息も絶え絶えになっていた。
 嬌声を上げすぎて声は掠れ掛かっているし、興奮に呼吸が追いつかずに軽い酸欠状態にもなっている。
 視界は高熱を出した時のように歪み、銀色に彩られ、時折覗き込む老教師の瞳以外、何も分からなくなっていた。

 ――だから、老教師がそっと奈々の身体を持ち上げ、ショーツを下ろした時も、
 靴下と靴、捲り上げられたキャミソール以外は完全な裸にされ、その上で大きく両脚を広げられた時も、
 消え入りそうな恥ずかしさに身悶えするだけで、気付かなかった。
 
 老教師が大きく開いた両脚の間に身体を滑り込ませ、片手に隠し持っていたビデオカメラを、彼女の性器の目の前に置いた事を。
 液晶のファインダーには愛液に濡れる奈々の秘裂が大写しにされ、ビデオテープには刻々とその淫靡な光景が刻まれている事を。
 他にもビデオカメラが各所に仕掛けられ、その全身の蠢きを、ぷるぷると震える小さな胸を、快楽に彩られていく表情を、永遠に記録され続けている事を。

 奈々はただ、老教師のする事に何も疑いを持たず、受け身に恥ずかしさを感じて、悶えるのみ。
 何も気付かず、何も思い出せず、ただただ目の前に巻き起こる出来事に、羞恥の声を上げ続けるのみ。
 ショーツが脱がされた時に、既にその花弁は熱く潤ってしまっていて、脱がされた布地との間に、べっとりと染み付いていた愛液がアーチを描いているのを指摘され、
 ――両手で顔を隠したまま激しく首を振る事しか出来なかったのだ。

 くちゅ……

 厭らしい音を立てて、奈々の大陰唇が広げられる。
 雪のように淡く白い肌――瑞々しく、滑らかな、少女特有のほっそりとした太腿の間で、
 薄い薄い桜色、穢れを知らない無垢な秘肉が、老教師の視線に晒されていた。
 産毛と殆ど区別の付かない、淡い淡い翳りの下で、既に肉鞘からクリトリスがむくりと頭をもたげている。
 とろ、とろり、と、膣口からは愛液が湧き出し、会陰を伝っていた。
「おお……これが、これが夢にまで見た、奈々のアソコか……」
「せんせ…………、はすか、し……」
 両手で顔を覆ったまま、奈々はもう首を振ることしか出来ない。
「美しい……こんなにも美しいものがこの世にあったとは……」
「う、あ、あぁぁ……」
 見られている。その事実が、奈々をどんどん思考の迷宮へと追い込んでいく。
「奈々……マッサージの最後は、ここだ……ここに、思いっきり刺激を加えて、信じられないほど気持ち良くなって、マッサージは終わる……いいね?」 
「……は…………い…………」
 先程の魔眼の行使で効果は充分のはずだが、老教師は念の為に奈々の耳元に囁く。
「恥ずかしいだろうけど、これはちっともおかしい事じゃない。先生の言う事だから、100%信じられる。そうだね?」
「……、はい……」
「では、いくぞ……甘美なる快楽の世界を、お前に教えてやる。めくるめく快感の渦を味わうんだ」
「は…………あっ、っ、っ、――――――――――――――――――っ!!!!」
 返事をしようとした奈々は、いきなりクリトリスに吸い付かれ、声も出せずに悶絶していた。
 絶叫の形に広がったまま口は固まり、時折すすり泣く様な鼻での呼吸音だけが聞こえてくる。
 ちゅぅぅぅぅぅっ、ちゅっ、くりくりくり――ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!
「ひぃ……………………っ!!!!!」
 老教師が、包皮を剥いたクリトリスを、直接、思いっきり吸い、唇で挟み、舌先で転がし、そしてまた思いっきり、吸う。

 ――――そして、甘く、噛んだ。

「か…………………………っ、」

 音が、全て、消えた。
 声が、出ない。息が、出来ない。
 視界が、極彩色に染まっていく。
 ぼろぼろぼろ、と、涙だけが、とめどなく零れていく。

 かくんかくんかくん、と、腰を揺らし、
 膣口からはどっと白濁した愛液を溢れさせ、
 限界を超えるほどに背筋を弓なりにしならせて、
 

 奈々は、絶頂を迎えた。

「か…………………………っ、うぁ、うぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

「くくっ、くくくくっ、イッた、イッたぞ!!!」
 奈々の、生まれて始めての、絶頂。
 それは彼女の今までの人生を、価値観を、簡単に打ち砕く凄まじい快楽の爆発だった。
「美味い……これが、奈々の蜜の味か……この味を知ったのも、私が初めてという事だな……くくく……」

 全てが、真っ白に染まっていく。
 全てが、快楽に塗り替えられていく。
 ――真っ白に、汚されていく。

 そして、それは、一度では終わらなかった。

「は…………はぁ、はぁ、はぁ…………あ!?」
 つぷっ。
 絶頂の余韻に荒く息をつく奈々に、老教師は全く容赦なく攻めを再開していた。
「まだ……まだだ! せっかくここまで上手く行ったのだ、くくく、ありったけの快楽を刻み込んでやる!!」
 絶頂にわななく膣口に指を潜らせ、片や完全に勃起してしまった少女のクリトリスを、指で摘み、扱き始めたのだ。
 くにゅ、くりゅっ、くりゅっ、くりゅっ、くにゅ、くりゅっ……

「や、やぁ、はっ、だっ、だめっ、またっ、またっ、きちゃ……ぁぁあああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 いともあっけなく訪れる、二度目の絶頂。
 全身から、甘酸っぱい彼女の汗と、愛液の匂いが立ち昇る。
 がく、かくん、がく、と、タガが外れたかのように跳ね回る奈々の腰を、しかし老教師は無理やりに押さえつけ、更に攻める。
「くくくく、もっと、もっとだ!! 絶対に忘れられないように、よおく味わえ!! これが快楽だ、これが女の、悦びだ!!」
 もう、未熟な少女の身体への気遣いなど欠片もなく、老教師はGスポットとクリトリスで膣壁を挟み、奈々にトドメの攻めを加えていく。
 クリトリスは右手の親指の腹で、グリグリとすり潰すように。
 Gスポットは左手の人差し指で、コリコリと抉(えぐ)るように。
 奈々の喉が、ひいっ、と鳴った。

「だっ、だめっ、もうだめっ、あああっ、あーーーーーーーーーっ!! あああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 がくっ、がくんっ!! と、壊れたゼンマイ仕掛けのように身体を痙攣させた後、奈々は突然叫び声を途切れさせ、失神した。
「あ、…………ぐぅ………………」
 余りに桁違いの快感の奔流に、神経のブレーカーが落ちたのだ。
 そして――

 ぷしゃっ。ちょろ、ちょろちょろちょろちょろ……

「ひひっ、ひひひっ、失禁だ!! 奈々の、おしっこだ!! やった、やったぞぉっ!!!」
 だらりと弛緩し切った奈々の身体には、もう尿を留める力も残っていなかったのだ。
 奈々の意識が途切れたのを幸いに、老教師は嬉々としてビデオカメラを構え、少女の失禁シーンを接写モードで撮影する。
 絶頂の余韻にひくひくと蠢く桜色の花弁から、まるで宝石のように零れ続ける、レモン色の液体。
 少女にとっては恥辱の極みであろうその光景を、老教師は余すところなく撮り続けた。

「……は、ぁ…………」
 ぐったりと、その身をソファに投げ出す奈々。
 失禁を終えてからも、彼女は目を覚まさなかった。余程イキ狂いのショックが強かったのだろう。
「いい機会だ。このまま奈々の身体を記録させてもらおう。隅々まで、余すところ無く、な……くっくっく」
 老教師はカメラを構えたまま、少女の身体を舐めるように撮り始める。
 乳房を、乳首を、彼女の滑らかな素肌の全てを――。
 大きくその両脚を開き、その中心にある性器までも指で大きくくつろげて、その細部を、奥の奥までを。
 絶頂と失禁でぐちゃぐちゃの、淫液と尿の残滓を纏わせた膣がぱっくりと口を開け、大きくファインダーに映し出される。
「おお、処女膜だ、処女膜が見えるぞ……くくく、くくくく、凄い……素晴らしい光景だ、これは一生物だな……」
 時折指先を伸ばして弄りながら、老教師はテープが無くなるまでその光景を撮り続けた。

『奈々、よく聞くんだ。
 今日の出来事を、お前は絶対に忘れられない。
 お前の心が、身体が――乳首が、クリトリスが、膣が、子宮が――この快感を刻み込まれ、覚えてしまったのだ。
 お前はもう、この快感無しでは生きていけない――そう、もう、私無しでは生きていけないのだ。
 もう、他の男など目にも入らない。汚らわしいだけだ。
 いつも頭の片隅で、私の事を考えろ。私に好かれ、愛される事を考え続けろ。
 そうすれば、何も怖い事はない。ピアノも緊張することなく、完璧なコンディションで弾けるようになる。

 私に全てを委ねるのだ。
 何も疑う事はない。不安に思う事もない。
 全てを、私に任せ、従うのだ。
 そうすれば、私はいつまでもお前を傍に置いてやる。いついかなる時でも、愛し、護ってやる。嬉しいだろう?

 さあ、奈々――。

 私に、「支配」される事を望むか?』

 ――朦朧とした夢心地の世界で、私は天にも昇る思いで、その声に頷いていた。

「あ……」
「気が付いたかい?」
 再び奈々が意識を取り戻した時には、もう沈みかけた太陽が部屋中を茜色に染めていた。
 彼女は最初、きょとんと周囲を見回していたが、
「マッサージはこれで終わりだよ。どうだい? 緊張も抜けたし、何より気持ちよかっただろう?」
 と言うと、全てを思い出したのか、顔を真っ赤に染めて掌で顔を覆った。
「あ……っ!!!」
「可愛かったよ、奈々……」
「は……んっ!!」
 私が彼女の耳元にそう囁くと、奈々は全身をゾクゾクと震わせる。
 そしてチラッと私の方を見て目線が合うと、また顔を隠して、ぶんぶんと首を振った。
 その、羞恥と媚びと、被虐の入り混じった表情に、私もクラクラしてきた。可愛過ぎる。
 流石、私が見込んだ生涯一の美少女――。
「せんせ……」
「ん?」
 奈々の言葉に、私は我に帰った。
 これが彼女の地なのか、奈々は少し舌っ足らずな口調で呟く。
「私、嬉しかった……」
「先生も嬉しかったよ、奈々のあんなに可愛くて、エッチな姿を見ることが出来たのだから」
 かぁぁぁぁぁぁっ、と、真っ赤だった奈々の顔が、更に耳まで朱に染まっていく。
 私は微笑みながら、彼女の肩を抱いて立ち上がらせ、服を着るよう促した。

 先程までの痴態の痕跡は全て片付けてある。
 当然、ビデオカメラも回収済みだ。
 ビデオカメラはあの部屋用なので、そのまま部屋に隠し、テープは無論、これから持ち帰って編集だ。
 今日は大収穫だった。さぞや良いコレクションになるだろう。

 私達は進路指導室を出てカギを掛け、昇降口に向かった。

 廊下には人影も無く、静かだ。
「あの、せんせ……」
「ん?」
 二人の足音だけが、やけに大きく廊下に反響している。
「私、コンクール、頑張ってみようと思うんです。だから……また、緊張してきたら、その……」
 奈々はもじもじと胸の前で指を組みながら、真っ赤の顔のまま、言った。
「その、マッサージ……して、ほしいんです……」
 自分から誘いの言葉を発するとは……。
 先程目の前の少女と交わした『魔眼』の最終形態、『支配』の契約は、絶対的な効力を持っているようだ。
「ふふ、勿論だよ。奈々の時間さえ取れるなら、毎日でもしてあげよう。でも……」
 廊下を奈々と並んで歩きながら、私は言葉を続ける。
「このマッサージの事は誰にも喋ってはいけないよ。これは、私と奈々、二人だけの秘密だ。分かったかい?」
「はい……!!」
 秘密と言う言葉に反応したのか、奈々は嬉しそうに微笑んだ。
 その仕草に突然、たまらない愛しさが込み上げる。
(少し早いかも知れんが……)
「奈々」
「はい? ――あ! ……んっ……」
 私は奈々の頤を軽く持ち上げ、屈んでそっと唇を重ねた。
「ん、ふ――――ふぁ、せんせ……すき、大好き……」
 唇を離し、そのまま頬を触れ合わせ、私は彼女の耳元に囁く。
「済まないね……恥ずかしかっただろう。あまりに奈々が可愛くてね、調子に乗ってしまったよ」
「いいえ、いいんです。私、先生なら、わたし……」
 うまく言葉にできない思いをぶつけるように、奈々が自分からキスをしてきた。
「――ふふ。そんな嬉しい事を言われると、もっとエッチな事をしたくなってしまうよ?」
「えっ、えぇっ!? あ、あの、えっと、わたし、そんなつもりで、でも、嫌とかじゃ、ないけど……ううぅ」
 恥ずかしくて混乱して失神寸前、という奈々の頭を、私は優しく撫でてやった。
「先生としては、もっともっとエッチな奈々を見たいけどね?」
「せんせ……」
 再び顔を真っ赤に染めて、奈々は俯いてしまった。
「嫌じゃなかったら、また明日にでも指導室に来なさい。今日よりももっと気持ち良い事をしてあげよう」
 私はその耳元に、そっとキスをしながら囁く。
「……、はい……」
 奈々は消え入りそうな声で、そう、答えた。

 彼女の肩を抱きながら、窓から見える空を見上げる。

 雲一つ無い、茜から蒼への巨大なグラデーションの中に、宵の明星が輝き始めている。

 ――良い、天気だ。

『どうだ? 上手く行ったろう?』
『俺と契約しさえすれば、いつでもこの力を使えるんだぜ?』

『それだけじゃない。その枯れた身体の中に、かつての若さを蘇らせてやるよ』
『いくら出しても枯れることを知らなかった、あの頃の精力を取り戻してやるぜ?』
『これだけのイベント見ても、そんな半起ちしかしないフニャチンじゃ挿入も出来ねえだろ?』

『なあ?』
『奈々を、犯したいだろう?』
『犯して犯し尽くして、ぐちゃぐちゃにしたいだろう?』

『奈々だけじゃない』
『これだけの能力があれば、どんな女だって、どんな人生だって思いのままだ』
『そして――』

『孕ませたいよな?』
『産ませたいよな?』
『作りたいんだろう? お前の子供を』

『残したいんだろ? お前の、生きた証をよ』

『さあ、チャンスは今だけだ』
『どうする?』
『お前のこれまでの、教師としての功績と引き換えに、俺と契約するか?』

『さあ――』

『どうする?』

< つづく >

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