平凡男のMC日記 第3話

第3話

「んんっ…」

 何やら良い香りに誘われるように、目が覚める。

「何の匂いだ…?」

 寝起きの頭で暫く考えると、ようやくそれが味噌汁の匂いだと理解できた。
 台所の方に視線を移せば、綾が朝食を作っている姿が見て取れる。
 そんな俺の視線に気が付いたのか、綾はその手を止め、俺の元にやって来る。

「あ、ご主人様、おはようございます。お目覚めになられましたか…」

 昨日のままのスーツを纏い、俺でさえどこにあったのかも思い出せない、黄色のエプロンを付けた綾が恭しく頭を下げながらそう言う。

「やけに早いじゃないか。それにどうした、味噌汁だなんて…」
「いえ…、ご主人様に食べていただこうと思いまして…。あの…、和食はお嫌いでしたか…?」
「いや、俺は朝食は和食と決めているからな…」
「そうなんですか…、よかった…」

 俺のその返事を聞いて、綾は胸をなでおろす。

「さて、起きるか…」

 俺はそう思いながら、ベッドから出ようと身体を起こす…。

「んっ!?」

 昨日の情事の激しさのためか、起きようとした俺は思わずよろめいた。

 綾の方がよっぽどタフなのかもしれないな…。

 そう思うと、俺は苦笑するしかなかった。

「ごちそうさん」

 それから暫くして、俺は朝食を食べ終えた。

 しかし、冷蔵庫のあの残り物だけでよくあれだけの物が作れたものだ…。

 俺は綾の料理の腕前に感心する。

 そんなことを思いながら、ふと綾を見ると、俺の方を見て幸せそうな顔をしている。
 作った料理を俺が残さず食べたことが嬉しいのだろうか。
 そして、俺は食べ終わった食器を台所へ持って行こうとしたが、それは綾に止められた。

「あ、片付けは私がしますから…。ご主人様はゆっくりなさっていてください」

 自炊はあまりしないとはいえ、一人暮らしが身体に染み付いている俺は、半ば条件反射的に動く自分に苦笑する。
 結局、食器の片付けは綾に任すことにし、俺は傍らのソファに腰を落ち着ける。

 一方、綾も朝食を終えると、早速食器を洗い始めた。
 俺のために、俺の身の回りの世話をする綾の顔は、とても嬉しそうに見える。
 もしかしたら主人に仕える以外の感情にも、喜んでいるのかもしれない。

「アイツもやっぱり女だな…」

 俺は綾には聞こえない小さな声で、そう呟いた。

「ピロロロロロ、ピロロロロロ…」

 朝食を終えた俺は、新聞に目を通していた。
 だが、そんな朝の穏やかな雰囲気を壊すかのように、突如携帯が鳴り始めた。

 誰なんだ、休日の朝早くから一体…。

 そんな事を思いながら携帯を取る。
 見たことのない番号だったが、もし緊急な仕事上の用事だったら困るので、一応出ることにした。

「もしもし…、どちら様ですか…?」
「あの…、東條…雅史さんの電話でよろしいのでしょうか…」
「はぁ、そうですが…」

 だが、この声は聞いたことがある。間違いない、猪口だ。

「猪口…だな?」
「はい…、猪口です…」
「どうした?俺に電話なんて…。今まで掛けてきたことなんてなかったのに…」
「いえ…、あの…、率直に言います、今日お暇ですか!?」

 声を振り絞るようにして、美雪が俺に言う。
 俺の側には綾という存在が居る…、それを解っていつつも、美雪は尋ねてきたのだ。
 俺は、綾に対しての多少の後ろめたさを感じつつも、美雪に言う。

「夕方からなら空いてるぜ」
「えっ!?」

 断られると思っていたのだろう、美雪から驚いたような声が上がる。

「じゃ、17時に駅前の噴水のところで待ち合わせな」
「あ、あの…」

 俺は一方的にそう言うと、電話を切る。

 しかし…、なぜアイツが俺の番号を知ってたんだ?

 俺はふと不思議に思ったが、よく考えれば従業員の名簿を見るなりすれば、俺の番号を知るのはいとも簡単なことだろう。

「楽しくなりそうだ…」

 もはや口癖ともなったその台詞を、俺は無意識に呟いていた。

「綾…、もう終わったのなら帰れ」
「えっ!?」

 全ての用事を終わらせ、俺の傍でくつろいでいた綾に言う。
 俺がそう言うと、綾は驚きの声を上げる。

「疲れたから、今日は一人にさせてくれ…」

 それを聞いた綾の顔が寂しそうな物に変わる。
 そして暫くの沈黙の後、綾が言う。

「解りました…。でも…、ご主人様は…、私だけのご主人様ですよね…?」
「……」

 俺は、その質問に答えることができなかった。
 次の瞬間、綾は少し悲しげな顔をして言った。

「すみませんでした、それはご主人様が決めることなのに…、でしゃばったことを言ってしまって…」

 綾がそう言うその気持ちは解るのだ。
 俺が美雪に現を抜かしている、というのを直感的に感じて、恐らく自分は捨てられるのではないかと不安でたまらないのだろう。
 それでついそう確認するかのように、奴隷という立場を超えてそう聞いてしまったのだ。

「お前は良い奴隷だから俺の言うことは聞けるよな…」
「はい…」

 そう言う俺の精一杯の問いかけに、綾はそう言って静かに頷いた…。

「あ、東條さーん、こっちこっち!」

 駅前に着くと、俺を見つけた美雪が俺の名を呼ぶ。
 待ち合わせ時間の10分前だが、すでに美雪が待っていた。
 ソフトプリーツのミニスカートに、グレーのニットのキャミソール、その上にはファーの付いた薄ピンクのダウンジャケットを羽織っている。そして足元にはベージュのブーツと、手に丸めの白いバッグ。

 それを見た俺は、やはり年頃の女の子だなと思わず感心してしまう。

「どうした、やけに早いじゃないか…」
「はい…、まさか東条さんが来てくれるとは思わなくて…。でも、来てくれるって言うから、私嬉しくなっちゃって…。それで居ても立っても居られなくて、思わず早く着いちゃったんです」

 美雪は心底嬉しそうに俺を見つめながら言う。

「まあ、ここで突っ立っているのも何だから、どこか行くか。何か食べたい物あるか?」
「私は東条さんの連れて行ってくれるところなら、どこでもいいです」
「解った。じゃ行くか」

 そうして俺達は、そのまま夜の街へ消えて行った。

「イクぅー、もうダメぇ、イっちゃいますっ!」

 そう言って美雪は襲い掛かる快楽の波に身を震わせる。
 
 夕食を済ました俺達は、近くのラブホテルに向かい、こうして行為に耽っているのだった。

「東条さん…」

 暫くして落ち着いた美雪は、俺の名を呼びながら俺の胸に寄り添ってくる。
 そんな美雪の体温を感じながら、俺は静かに囁く。

「どうだ、一晩経って…。俺の事、嫌いになったか?」
「いえ…、逆です。私…、ますます東條さんのこと好きになっちゃいました」

 笑顔でそう言う美雪だったが、次の瞬間、ふと真顔になり、俺に尋ねる。

「あの…、東條さんは桃谷主任のこと…、どう思ってるんですか?
 何言われても驚きません…。だから、もしよかったら教えてほしいです…。」

 俺は美雪から発せられた、その言葉に驚いた。
 だが、暫し考えた後、意を決したように言う。

「綾は…、俺の奴隷なんだ…」
「奴隷…?」

 美雪の顔は困惑していた。俺の言っていることが理解できないのだろう。まあ無理もない。

「綾は…、奴隷…、俺の言うことには決して逆らわず、俺のために尽くし、俺のために生きている。
 そしてそれが綾の喜びだ…。その代わり、俺は綾の主人として、最大限の愛情を持って接している…。
 どうだ…?俺はこんな人間だ。失望しただろ?」 
「いえ…、私は…、私は…それでも桃谷主任が羨ましいです…。それって東條さんの愛を目一杯受け止められるって事ですよね。それに…、私だって、東条さんが喜ぶことなら何だってしてあげたい…。 だから…、私も、桃谷主任と同じ東條さんの奴隷にしてください…。それで東條さんに、主任に負けないぐらい私の事、想って欲しいんです…」
「勘違いするなよ。奴隷ってのはお前が思っているようなもんじゃない。恋人気分ならお門違いだ。
 お前は綾とは違う…」

 綾とは違う、という言葉に反応したのか、俺が最後まで言い終わらないうちに、美雪が声を荒げる。

「違いませんっ!私も東條さんのことは誰にも負けないぐらい想っています。東條さんのためなら何でもしてあげたい…、その気持ちは嘘じゃありません。
 もし…、私が、私が奴隷になることで、東条さんが私のことを想ってくれるというのなら、私…、東條さんの奴隷に…、なります…」

 そう言った美雪がふと一瞬見せた、諦めとも取れるような表情を俺は見逃さなかった。

 だが、言うだけなら簡単だ。いくら俺を好きだといっても、人格の書き換えもしていない美雪が、俺の思う通りになるとは思えない。

 だが俺は、それでも何故かそんな美雪を突き放すことができなかった。
 それが何故なのかは解らない。俺の心が変化しているということなのだろうか…。

「解った…。お前にそこまでの気持ちがあるのなら、俺の奴隷にしてやる。ただ忘れるなよ、俺はお前が思っているような人間じゃない。お前の事だって気に入らなければすぐに捨てるぞ。
 そして、俺はもうお前の主人だ。だから俺のことはご主人様と呼べ」
「ふふ、心配してません。本当はとっても優しい人だって知ってますから…。ですよね?ご主人様…?」
「全く、コイツは…」

 俺を見透かすような美雪の態度にも、今はなぜか腹も立たなかった。
 俺はそんな気持ちに戸惑いながら、それを悟られまいかとするように美雪の前髪をくしゃっと撫でる。

「美雪…」

 俺にそう呼ばれた美雪の顔は、嬉しそうとも恥ずかしそうとも見えた。

「嬉しいです…。これからは、ちゃんと美雪って呼んでくださいね…」

 そう言って俺を上目遣いで見る美雪は、妖艶、そのものだった。

 まあ、こういう形になってしまったが、これはこれで良かったのだろう…。
 俺はそう自分に言い聞かせる。
 問題は美雪を綾とどういうように馴染ませるか…。

 だが、その答えを導く暇もなく、俺達はそのまま明け方近くまでお互いを求め合ったのだった。

「おい、美雪、起きろ」

 そう言いながら、未だ小さな寝息を立てている美雪を揺すって起こす。
 なかなか起きる様子を見せないが無理もない。時計を見ればまだ8時前だ。

 一方俺は習慣なのか、いつも通りに目が覚めてしまった。
 そして一度目が覚めると、もう寝れない性格なのだから質が悪い。
 チェックアウトまでまだ時間があるとはいっても、一人こうして待っているのも時間がもったいない。
 早く美雪を起こして、家に帰るのが得策だろう。

「んんっ…」
「はら、早く起きろ。帰るぞ」

 なかなか起きない美雪に業を煮やした俺は、文字通り叩き起こす。
 そうして何とか起きた美雪に素早く帰り支度をさせると、俺達はまだ朝早い電車に揺られながら、俺の家に向かったのだった。

「ふぅ…」

 電車を降りた俺は、ふと溜息を付く。
 傍には美雪が居る。美雪は俺の家が何処か知りたいと言って付いてきたのだ。
 一人になりたいとも思ったが、家を知らせておいた方が今後都合が良いかと思い、追い返さずこうして連れて来たという訳だ。

 俺のアパートがようやく見えてきた頃、アパートの近くに立っている人物がいた。
 よく見てみると…、それは綾だった。
 綾は帰ってきた俺を見て嬉しそうな顔をしたが、俺の横に美雪が居るのに気づき、すぐに顔色が変わった。

「ご主人様…」

 綾は未だにその光景を信じられないのか、そう言うので精一杯のようだった。
 しかし、驚いているのは何も綾だけではない。俺自身も突然の綾の登場に驚いていた。

「綾…、どうしてお前がここに…?」

 俺は驚きのあまり、ろくに言葉にならなかった。

「ごしゅじんさまぁ!!ごめんなさい、ごめんなさい!!」

 綾の方は今にも泣き出しそうな顔で、呪文のようにそう繰り返す。

「昨日の夕方から、電話させていただいているんですけど、出てくださらないので、私…、ご主人様の許可もなしに勝手に来てしまいました…。すみません…。でも、私…、もしかしたら捨てられるんじゃないかって、不安で不安で仕方なかったんです…」

 そういえば、携帯の充電、昨日の晩からずっと切れてたな…。

 などと思いつつ、綾の追い詰められた姿を見て、俺は「やはり、そうだったのか…」と思った。

 綾の俺への依存が極限まで高まっているためか、俺の言動、行動に対して、神経質になっているのだろう。さらにそれに追い討ちを掛けるような美雪の存在…。
 ただ、主人である俺のすることに文句は言えないから、ずっと一人で悩んでいたのだ。
 俺が次に発する言葉を、怯えるように俯いて待っている、そんな綾に俺は言う。

「綾…、お前も来い」
「ええっ…!?い、いえ…、ありがとうございますっ…、ご主人様…」

 綾が驚きながらも喜ぶその一方で、美雪が少し不満げな顔をしたが、俺はそれをあえて無視する。

 俺はドアの鍵を開けると、そんな2人を従えるように、部屋の中に入る。
 そして3人が部屋に入った途端、綾は美雪に詰め寄った。

「猪口さん…?あなた、どういうつもりなの?」
「私も主任と同じ、ご主人様の奴隷にしていただいたの。だからこうして奴隷がご主人様と一緒に居るのは当然じゃないかしら?ねぇ、主任?」

 そんな美雪の言葉に、綾の顔が驚きと怒りで染まる。しかし次の瞬間、

「私はご主人様のためだったら、どんなことだってできるわ。この命すらご主人様次第というぐらい、ご主人様に全てを捧げているの。
 あなたにもその心構えがあるっていうの!?」

 綾は美雪が同僚であることなど、忘れているかのように捲くし立てた。
 だが、綾のその剣幕にも動じることなく、美雪は静かに言う。

「私だって…、主任以上にご主人様を想っているもの…」

 そう言うと、美雪はその潤んだ瞳で俺を見る。
 俺はその意図を理解すると、顎で合図する。

 それを見た美雪は俺のズボンのベルトに手を掛ける。
 俺は一切何もしない。全て美雪にさせる。
 美雪は素早くズボンを下ろすと、ブリーフも下ろす。

「とても…、大きいです…」

 そう言って美雪は俺に媚びる。

「はぁぁぁぁ、ご主人さまぁ…」

 深い溜息とともに、美雪は俺のモノに舌を這わしてくる。
 その光景を呆気に取られて見ていた綾も、気を取り直して俺の間近に寄ってくる。

「ご主人様、私にも…、私にもご奉仕させてください」

 綾が必死の形相で俺に懇願する。

 二人同時か…。それも面白いかもしれないな…。

 そう思った俺は美雪と綾を一緒にさせてみることにした。

「よし、綾、お前もやれ」

 俺がそう言うや否や、先に俺に奉仕している美雪を掻き分けるように、綾が俺の股間に顔を埋めようとする。綾のいきなりの行動に美雪は若干驚いたようだったが、すぐに気を取り戻し、再びその行為に没頭する。

「ふふ、良い眺めだ」

 俺は笑いが止まらなかった。
 伝わってくる刺激はたいしたことはないが、美女2人が競い合うように、俺の股間に顔を埋めている…。
 その事実に俺は興奮を隠せなかった。

 昂ってきた俺は、自らのモノの両側に二人が来るように誘導し、そして2人の頭を押さえつけて固定する。
 ちょうど俺のモノを二人の口で挟み込んでいるような状態だ。
 2人は若干戸惑った様子だったが、俺ががっちりと頭を押さえつけているので、抵抗もできず、俺のなすがままにされている。
 俺に好意を寄せている2人が、文字通りお互いの目の前で俺に奉仕しているのだ。
 この状況では、興奮しない男の方がおかしいだろう。
 俺はそんな襲い掛かる欲望を収めるが如く、その状態のまま、身体を前後に動かす。

「んっ!?」

 2人の柔らかい唇は、俺に独特の刺激を与えてきた。
 俺の行動に初めは驚いた2人だったが、普通では考えられないこんなおかしな状況でも、2人は俺に喜んでもらいたいと言わんばかりに、限られた姿勢の中で最大限の刺激を与えてくる。

「もうイきそうだ…」

 あまりの気持ちよさと、その征服欲を満たす独特の光景に、俺はすぐに達しようとしていた。
 俺がふと呟やいたその一言に、2人は自らに与えて欲しいと言わんばかりに、さらに舌の勢いが増す。
 限界を迎えた俺は、腰を引くと2人の顔にめがけて、放つ。

「あぁ…」

 そう夢見心地に呟いた2人の顔は、白濁の液にまみれながらも、なお妖艶な笑みを見せていた。
 それを見ていると、一度出したとはいえども、全く衰えを感じなかった。

「ほら、お前達、尻をこっちに向けろ」

 俺がそう言うと、2人共素早く俺の方に尻を向ける。
 2人の秘部では、大量の愛液でショーツが濡れそぼっていた。
 それらを下げさせると、二人の秘部からは大量の愛液が流れ落ち、その上もう待ちきれないと言わんばかりに、それはぱっくりと開いて俺を待っている。
 2人は早く挿れて欲しいのか、お互いに腰を艶かしく振って俺を誘っている。
 美女2人がこうして俺に挿れて欲しいと尻を向けて、上目遣いで媚びた表情を向けてくるこの光景に、俺はもう我慢の限界だった。

「まずはお前からだ」

 俺はそう言うと服を脱がすでもなく、後ろからいきなり綾に挿入する。

「あんっ」

 綾が嬌声を上げる。
 それを心地よく思いながら、俺はゆっくりと前後に動かす。

「あっ…ん、ご主人さまぁ、気持ちイイです。ご主人さまも、あっ、もっともっと気持ちよくなってくださいっ」

 そんな可愛い事を言いながら、綾は徐々に自らも腰を動かす。

 私の方がご主人様の奴隷として優れているのよ…。

 美雪を見る綾の顔が、まるでそうとでも言いたげに、少し得意そうに見えたような気がした。
 もしくはそれが俺に対する、この状況へのささやかな抵抗ということなのだろうか…。

 そんな綾の姿を見て、美雪は待ちきれないように声を上げる。

「ご主人さまぁ、私もご主人さまのモノをくださいぃぃ!もう、切なくて仕方ないんですっ!」

 そう言う美雪だったが、俺は美雪をさらに追い詰める。

「美雪、お前は本当にワガママだな。どうして綾が先に挿れてもらえたかをよく考えてみろ」
「ごめんなさい、ごめんなさい…。私、我慢しますから、私を嫌いにならないで下さいっ」

 美雪は涙ながらに、そう俺に懇願する。
 俺はその状況を楽しみつつ、いきなり美雪の秘部に指を突き入れる。

「ああっ!」

 いきなりの指の挿入に驚いた美雪だったが、すぐにそれを認識すると、少しでも多く快感を得ようと腰をくねらせる。

「卑しいヤツだな…」

 そんなことを呟きながら、俺は密かにほくそえむ。

 突然、俺は自らのモノを綾から抜き、美雪に挿入した。

「んん!?」

 突然のことに、美雪は驚きの声を上げる。
 だが、すぐに俺を求めてきた。

「ご主人さま…、あン、嬉しいです。もっと…、もっと私の中を楽しんでください…」

 その言葉通り、俺は激しく動き始める。
 綾のほうに目をやると、いきなり中断された快楽に訳が解らないと言った顔をしている。
 しかし、すぐさま俺に懇願してきた。

「ご主人さまぁ、お願いしますっ!私に、私に挿れてくださいっ!」
「そんな顔をするな…。ほらっ」

 俺は指を今度は綾に突き入れた。

「あんっ、ご主人さま、ご主人さまぁ!」

 俺から与えられる物は全て残らず手に入れようと言わんばかりに、綾は激しく腰を動かす。
 俺はそんな綾を見て、さらに指の動きを早めていった。

 それから俺は綾と美雪に、俺のモノと指を交互に挿れては二人の反応を楽しんだ。
 ただ、そう焦らしながらも綾と美雪は次第に呼吸が荒くなり、確実に絶頂へと追い詰められているのが解る。

「もう、イきそうですっ!あっ、ご主人さま、イっても…、イってもいいですかっ!?」

 俺に突かれている綾が、切羽詰った声で言う。

「私も、もうダメですっ、もうイっちゃいますっ!」

 俺の指に掻き回されている美雪も、綾に続くように切羽詰った声を上げる。

「俺も…、もうイきそうだ。膣内に出すぞっ!」
「出してぇ!ご主人さまの熱い精液を私の中に注いでくださいっ!!」
「イくぞ!」

 俺は躊躇うことなく、綾の膣内にぶちまける。

「あぁぁぁぁぁぁ、ごしゅじんさまぁぁぁぁぁ!!!」
「ああっ、イっちゃう、イっちゃいますぅ。あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 そうして2人も同時に絶頂を迎え、床に倒れこんだ。
 俺も凄まじい快感に、思わず腰が砕けそうになる。

 それから暫くして、まだぐったりしているままの2人を起こす。

「!?」

 目を覚ました2人は、お互いの存在に気付き、すぐに手で自分の身体を隠そうとする。
 そして互いの顔を見ないかのように、そのまま俯いてしまった。
 綾と美雪、互いの前で果ててしまったことが恥ずかしいのだろう。

 そんな2人に向けて俺は言う。

「ま、こういう風になったわけだが、2人とも…、大切な俺の奴隷だ。難しいとは思うが、喧嘩しないで仲良くやっていけ」

「解りました…、ご主人様のご命令ですから…、従います。
 猪口さん…?これからよろしくお願いしますわね」

 綾は皮肉たっぷりに、そう美雪に言った。

「主任。これからどちらがよりご主人様を想っているか、思い知らせてあげますね」
「ふん、こっちこそ望むトコロよ…」

 俺が言った傍から、早速始まった女の戦い。

 これじゃ、先が思いやられるぜ…。

 そう思うと、俺は苦笑するしかなかった。

 その後俺は綾と美雪をそれぞれの家に帰らせることにした。
 そうしなければ、さすがに俺の体力が持たないからだ。
 だいたいこの週末だけで、俺は何回イったか解らない。

 そして、2人を帰らすと、明日からの職場内で起こるであろう出来事に少々思いやられながら、その夜は早々と眠りについたのだった。

「起きたかの…?」
「アンタは…!?」

 見覚えのある老人、紛れも無くあの夢の老人だった。

「いや、お主がようやく力に目覚めたのを感じてな、こうしてもう一度出さしてもらったというわけじゃ…。どうじゃなこの力は?」
「ふん、アンタが何企んでんだか解らないけど、お蔭様でこうして刺激のある毎日を過ごさせてもらってるよ」
「そうか、それはよかったの…」
「で、アンタがまた俺の夢にこうして出てきたってのは、何かあるわけだろ?まさか、いまさらこの力の代わりに寿命でも取られるってか?」
「ふぉふぉふぉ、心配するでない、そんなことではない。今回はお主に本当のことを伝えようと思ってな…」
「本当のことだと?」
「左様。まず、わしはお主の先祖じゃ。お主の今いる時代から約140年前ぐらいかの。生きておったのは」
「ほう…、アンタは俺のじいさんのもっともっと上って事かい」
「簡単に言えばそうなるの。で、じゃ。我が家系は時代が乱れるたびにわしやお主のように、特殊な能力を持った者を生み出すのが掟なのじゃ。時代が乱れるというのは、ある者が裏で糸を引いておるからなのじゃが、そやつを我が家系の力で無害な者に変えるのが、我が家系の宿命じゃ。ただ…、その相手の存在は確認できたのじゃが、肝心な年齢はおろか、男女の性別も解らん。また、いつお主の存在に気づいて、消そうと襲ってくるやも知れぬ。だがそれも宿命じゃ。そして、お主はそれに選ばれたというわけじゃ」
「宿命…ねぇ…。ま、何かあるとは思ってたから、いまさら何も言われても驚きはしないぜ。だが、もしそれを断ったらどうなるっていうんだ?」
「断ることはできないじゃろうて。何せお主に襲い掛かってくる輩がいるのじゃからな」
「なるほど…。初めから答えは一つしかないってことか…。で、俺は、どうしたらいいんだ?」
「さっきも言ったように、お主の力を使って、その者を無害な者に変えてしまうのじゃ。とは言ってもそういう奴らはそんな簡単に落ちるような奴らでは無い。その落とす方法はお主自身で見つけてもらうほか無いが、その来るべき時に備えて、まずはもっと力を使いこなせるようになるのじゃ。いいな、くれぐれも言っておくが、下手をするとお主は死んでしまうのじゃからな。そこを忘れるでないぞ」
「ああ、解ったよ。少し無責任な気もするんだが…、ま、要は襲ってくる敵を倒せばいいんだろ?本当は今でもよく解ってないんだが…。まぁ…、何とかなるだろ」
「ふぉふぉふぉ、頼もしい奴じゃて…」

 そこまで聞くと、いきなり俺の意識は途切れてしまった。

「あの爺さん、またとんでもない事言いやがって…」

 翌朝、目覚めた俺は昨夜の夢について考えを巡らせていた。
 だが、これから俺の身に襲い掛かることを、その時点で俺は知る由もなかったのだった。

< つづく >

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