AA 第三話

「瑛一・・・昨日はサボりか?」
「いや・・・違うけど・・・お前痩せた?てかクラス全員ぐったりしてるような・・・」
「お前がサボったせいでな・・・鬼頭さんの授業が・・・10kmってレベルじゃ・・・ねー・・・」
 清清しい朝・・・・のはずが、教室内の空気は暗い。
 それの原因は、生徒達の顔が死人のように青かったりするからだろう。
 机に突っ伏したり、目を開けたままブツブツ言っている。
「ヒドい・・・誰がこんなことを」
「お前だお前」
「おかしくね?休んだくらいでこんな・・・・」
「さぁ・・・今日補習するってさ」
「げ・・・」
 友の口から無常にも告げられた余命宣告。
 帰宅部にとって、放課後は自由に使える時間なのに・・・
 ”鬼”の補習ということも、マズさに拍車をかけている。
「逆に考えるんだ・・・ムチムチの体育教師と二人きり・・・放課後・・・・」
「お前達のやつれ方を見ればそんな甘くないのもわかるだろ・・・」
「だよな。てかあの鬼がそんな隙見せるわけないか・・・」

「誰が・・・鬼だと?朝田」

 後ろに立っていたのは黒髪、長身、ジャージ姿・・・体育教師・鬼頭奈々、その人だった。
 表情は笑顔だが、目が笑っていない・・・睨まれるよりもよっぽど凄みがある姿だった。
「いや、俺じゃな」
「鬼って何だ?化け物じゃないの?」
「俺じゃないですよ。悠で・・・あれ」
 信頼していた友人、もとい発言の張本人は瑛一の隣から忽然と消えていた。
「どこに烏丸が?ほら、どこにいるんだ、言ってみろ」
「いや・・・その・・・違・・・・」
「放課後、覚悟しておくんだな」
「・・・・・・・はい」
 それだけ言うと、鬼頭はそのまま行ってしまう。
 さながらモーゼが海を割るかのごとく、彼女を避けて道ができていた。
 理不尽だ。休んだだけなのに・・・。

「瑛一君、大変だね~」
「吉野・・・平井もか。なんで元気なんだ・・・」
「まぁ一応陸上部だし」
 クラス中で唯一笑顔を保っているこの女は、幼馴染の吉野恵だ。
 一応・・・と本人は言っているが、全国確実と言われている学校のエースだ。
 もちろん本人にはそういう自覚がない。
 その隣の平井香も、同様に陸上部だった。
 副部長を務め、部員に甘く自分に厳しいので慕う者は多い。
 それと同様に長髪黒髪、そして跳ねる胸を見に集まる男子共も多い。
「橘とか了一は?」
「返事が無い。只の屍みたいだ」
 橘桐乃、田村了一。二人共瑛一と同様、帰宅部なので体力が無い。
(死ぬかもな・・・放課後。)

 無常にも時は流れ・・・・放課後。
 教室からぞろぞろと出て行くヒトの群れに加わって、瑛一も外へ出る。
 行き先は体育館脇に位置する体育教官室だ。
 体育教官は数名いるが、ここを使用するのは鬼頭奈々のみ。
「失礼しまーす」
「朝田か。まぁ座れ」
 もう既に茶が用意され、白い湯気を立てている。
 他の先生なら問題ないだろうが、やけににこやかな顔が怖い。
「まず・・・昨日は何をしてた?」
「え?昨日は・・・その・・・」
「私の授業をサボるなんて、よっぽど大事な用事だったんだよなぁ?」
「・・・・・・」
(・・・体力だけじゃなく精神力まで搾り取るつもりか)
 黙っている瑛一を睨んでいるが、明らかに楽しげな表情だ。
 この辺りで反撃しないと本気で搾り取られるかもしれない。
 瑛一は”力”を使うべく、湯飲みをとろうとした鬼頭の手に触れる。
「先生。何で僕を呼んだんですか?」
「? 何って・・・」
 奈々の目が急速に眠そうなとろん、とした目に変わる。
 その状態のまましばらく間をとってから、瑛一は口を開いた。
「聞こえるか?鬼頭奈々」
「はい・・・・聞こえます」
「ふぅ・・・上手くいったみたいだな」
 精神操作・・・一般的な”それ”は、他人の意識を書き換えたりするものだ。
 しかし、その能力は今のところ使用できない。ならば、他の方法・・・催眠術を使う他無い。
 脳波を安定させ、心地よい状態へ移行させる事は簡単にできる。
 最も、これが成功するかは全くの賭けだった。
 脳内の情報は非常に多い。
 洗脳は精神操作としてよく挙げられるが、これは何回もの反復による思考停止状態を作る必要があるために時間と回数が必要だ。
 外的なショックや過度なストレス等、こちらが用意するにはまだ不十分な要素も必要になる。
 そこで、脳を極めてリラックスした状態にさせる。
 つまり外からの情報に極めて受動的になるように、体を操作する―――。
 それが瑛一の行った強力な催眠誘導である。
 この状態は通常の会話による催眠誘導以上の効果を持つため、今の奈々には外部からの情報がたやすく浸透してしまう。
「では奈々先生。今、貴方が聞いている声には絶対従わなければいけない」
「はい。従います」
 普段では見せない従順な態度が、やる気をアップさせる。
「この声を聞いている間、お前は心地いい状態になれる」
「はい」
「ちなみに処女だよな?」
「はい」
 性格に難があるからだろう。手を出すと切り刻まれそうだ。
「朝田瑛一を呼んだのは性欲を発散させるためだ」
「はい」
「快楽を与えてくれる只一人の人間だ。その人の言うことは絶対正しい」
「はい。絶対正しいです」
「逆らうことは絶対できない。いいな?」
「はい」
(これだけだけだとつまらないな・・・)
「奈々、名前で呼ばれるのは嫌いだな?」
「はい・・・好きではありません・・・」
「お前は朝田瑛一が”奈々”と呼ぶと、感度が上がってしまう」
「はい」
『手を叩くとこの状態に・・・・』
「朝田瑛一が手を叩くと、またこの心地いい状態へ戻れる」
「はい」
「じゃあ10秒で元の状態に戻る。だが、心の底では朝田瑛一に服従している」
「わかりました」

「先生、どうかしましたか」
「え・・・いや、なんでもない」
 瑛一が声をかけると、奈々は我に帰ったようだ。
「じゃあ始めましょうか、補習」
「ああ」
「先に三回イッた方の負け・・・そういうルールでいいですよね」
「そんなっ・・・・」
「負けた方は絶対服従、そうですよね?」
「そう・・・です」
 無茶なルールだが、これが瑛一の口から出た時点で真実となる。
「じゃあ先攻ということで」
 すっと近づくと、おもむろに口付けをしてやった。
「な・・・むっ・・・・・ん・・・・・・・」
 本人は何が起こっているのか理解できていないだろう。
 実際技も何も無い、荒い口撃だが、それを体は快楽だと置換してしまう。
「むっ・・・くう・・・・ふぅっ・・・ごくっ・・・あむ・・・・」
 舌を激しく動かして口内を舐めまわし、同時に唾液をとろとろと流し込んだ。
 その唾液を嚥下する度に、段々と思考の幅を狭められていく。
「はんっ・・・んぁっ・・・んふっ・・・んちゅ・・・」
 気付けば奈々から舌を絡めるようになっていた。
「むふぅ・・・ちゅ・・・んん・・・・ちゅ・・・あぁ……」
「あれ、先生?いいんですか?負けちゃいますよ?」
「んあ・・・・そうだった・・・・・」
「しょうがないな~じゃあ先生の番ですよ」
 そう言って瑛一は顔を離した。
「私の番・・・・?」
「ほら、自分で」
「自分で・・・」
 知識が無いのか、奈々は何もする気配が無い。
「ほんとしょうがないな・・・じゃあもうずっと俺のターンで」
「え・・・ひゃっ!!」
「先生が攻めないなら俺がずっと攻めててあげるよ」
 瑛一の手が、ジャージの上から奈々の胸を掴む。
「あんっ!!」
「あーあ、ジャージに涎垂れちゃってるね、先生。脱がしたげるよ」
「ん・・・強くっ・・・揉むな・・・・・」
「そんな事言っても、ねぇ。ほら、乳首立ってるのわかっちゃうし」
「あぁ・・・ん・・・っ・・・!!」
「何もなしでぶち込むとか、嫌いなんですよ俺」
「んああっ!!」
 奈々の体を後ろから抱きすくめながら、両手で胸を愛撫する。
 顔を黒い髪に埋めると、汗と煙草の香りがする。そして、発情した女の香りも。
 敢えて頂点には触れず、脇からのラインを撫でてやると、奈々は耐え切れず声をあげてしまう。
「ふぁ・・・やぁっ・・・何かキて・・・んんっ!! あああああああ!!!!」
「はいこれで一回」
 まだ名前という鍵を発動させていないにも関わらず、奈々は胸だけでイッてしまった。
 当然まだ攻守交替するつもりはない。
「じゃあ続きをやろうか、”奈々”」

「・・・・・・ひゃああああああ!!!」
 鍵を発動させた後は、かなり簡単に済んでしまった。
 そのまま胸で数十回果てるまで、秘部にすら触れることなく攻めて続けた。
 さらにその後胸を余すところなく指で弄りつくしたので、もう失神寸前といったところだろう。
 これだけ胸を弄ったのは、個人的な嗜好もあるが何より身体操作のテストでもある。
 そもそも、胸というのは脂肪だ。
 実際に感じるのは乳腺であり、頂点の乳首である。
 しかしそんな状態から、胸で感じる刺激を全て脳内物質の分泌と関連付ければ・・・
 その胸だけで異常なほど感じる、鬼頭奈々の出来上がりだ。
 名前を呼ぶ、という条件も、その関連付けのテストであった。
 実際、適量というのは勘で掴むしかなかったためになかなか苦労した。
 1時間はこっちを弄って、計算し、つねって・・・を繰り返していたため、体力が結構きつい。
「ふぅ・・・本来ここは犯す所なのに・・・」
 昼の時点ではそう考えていたが、普段見せない巨乳を目の前にするともうどうしようも無かった。
「おい、奈々、聞こえるか?」
「は・・・はいっ!!」
「いいか、これから放課後に胸をやってやる。いいな?」
「本当か?」
「ああ。ただし、もう少し知識をつけたらだ」
「知識・・・?」
「せめてフェラくらいは覚えろ。AVでも借りればいいだろ」
「エー・・・AV・・・・」
「また可愛がって欲しいなら・・・わかるだろ」
「わかりました」
「ふぅ・・・こんな時間か・・」

 家に帰ると叔母さんに叱られたのは言うまでもない。

< つづく >

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