誰が為に銃声は鳴る エピソード2「紺碧の女神」(前編)

エピソード 2 「紺碧の女神」(前編)

プロローグ

 ・・・・・・・・・雨が・・・雨が降っていた。
 しとしとと降り続く小雨は世界中を灰色に染め上げようとしているようだ。
 雨を吸い込みじっとりと湿った空気は人々を陰鬱な気分にさせる。
 ましてその場所が墓地ならなおさらの事だった。

 町外れの共同墓地、そこでレミィは所在無さげに立ち尽くしている。

 レミィの視線の先には喪服を着た一人の女性が地面を見つめて立っていた。・・・その頬を伝うのは雨だろうか、涙だろうか。
 黒いヴェールの陰からちらりと覗く金髪は、結い上げているとはいえその美しさを少しも損なう事は無く、太陽の無いこの世界を照らす光にすら見えた。

「勇敢なる保安官、ジュリアス・レットの魂が主の下へ導かれ、永遠の安らぎを得ん事を・・・・アーメン」
 神父の言葉にレミィは理不尽な怒りを覚える。
(・・・安らぎなんか得られる訳無いじゃない。・・・だって・・・・・だってジュリアスは殺されたんだから!)
 周りから漏れるすすり泣きの声をレミィはどこか冷めた心情で聴いていた。

「あたし賞金稼ぎになろうと思うの」
 ジュリアスの埋葬が行われた次の日、レミィは保安官事務所を訪ねクリスにそう告げた。
「・・・今、なんて言ったの?レミィ」
 机で書き物をしていたクリスはゆっくりと顔を上げる。一晩中泣き明かしていたのだろう、瞼は真っ赤に腫れ、目は充血し、涙の後が幾筋も見えた。
 せっかくの美人が台無しだが、恋人が殺されたのだ、当然だろう。
 レミィの胸は激しく痛んだが、構わず話を続けた。
「だから賞金稼ぎになるって言ったの」

 ガタン!
 椅子をひっくり返さんばかりの勢いで立ち上がり、クリスはレミィに詰め寄る。

「何を言ってるの?レミィ!そんな・・そんな事認められる筈無いでしょう!?」
「なんで?」
 努めて冷静にレミィは聞く。
「なんでって・・・まだあなたは子供じゃない、そんな危ない事させられる訳ないでしょ?」
「・・・クリスがあたし位の時にはもう保安官助手やってたじゃない」
「それとこれとは話が別よ!」
「全然別じゃないじゃない。それにあたしはガルシアーノを探すって目的があるしさ。賞金稼ぎがやっぱり一番手っ取り早いと思うんだよね」
「レミィ・・・」
 クリスは呆れたように溜め息をつく。
「あなたまだそんな事言ってるの?・・・いい?そういう事は私達、保安官とか州警察の仕事なの。お願いだからもうそんなバカな考えは捨てて?」
「・・・賞金稼ぎの仕事でもあるよね」
 わざと無視した可能性をあえて指摘されてクリスは怒りを覚える。
「レミィ!」
「クリスがどう言おうとあたしは賞金稼ぎになるよ。・・・・・あたしはクリスのペットじゃないんだから」

 パン!
 乾いた音が響く。クリスがレミィの頬を平手で打ったのだ。
 叩かれた方のレミィは平然とし、叩いた方のクリスは呆然と自分の手を見ていた。

「クリスなんか大っ嫌い!べ~~~~っだ!」
 レミィはクリスに向かって思いっきり舌を突き出すと、保安官事務所を飛び出して行く。
 クリスはそれを見送る事しか出来なかった。

 レミィは今自分の住んでる孤児院に向かって走っていた。息は切れ、心臓はバクバクとうるさかったがそれでも全力疾走を止めなかった。
 走りながらレミィは泣いていた。

(ご免なさい、ご免なさい、クリス)

 自分を孤児院に入れてから毎日のように様子を見に来てくれたクリス。殺されたジュリアスの事もレミィは大好きだった。きさくな人物でレミィに保安官事務所に遊びに来るように言ってくれ、色々な話をしてくれた。
 レミィにとって彼らは凄く素敵なカップルで、いつか自分にも好きな人が出来たらあんな風になりたいと思っていた。
 そういった理由からジュリアスが殺されて以降、レミィはクリスの力になりたいとより強く思うようになっている。

(でもあたしには力が無い。クリスの為になにもしてあげられない)
 ガルシアーノを追うため賞金稼ぎになることはずっと前から決めていたが、今すぐと決めたのはジュリアスの事件があったからだ。
 クリスを守りたい、クリスに頼りにされる人間になりたい。
(待っててクリス、あたしは絶対強くなって帰ってくる。その時ちゃんと謝るから)
 ・・・その日の内に荷物をまとめ、レミィは孤児院から姿を消す。

 ―――――賞金稼ぎになったレミィがクリスの常駐する町に戻り、そこを拠点に活動するようになるのはそれから一年後の話だ。

第1章

 ―――――レミィが孤児院を飛び出して三年後、現在。
 
 ・・・・・クリスはゆっくりと瞼を開ける。いつの間にかまどろんでいたようだ。机の上には書き終えた書類が山と積まれている。
 最近激務が続いていたとはいえ、いつ命を狙われてもおかしくない保安官が事務所の机で居眠りなんて考えられない。
 クリスは自嘲気味に苦笑いを浮かべると、好物のブラックコーヒーを淹れるため席を立つ。

(ダメね、私ってば。そろそろ本格的に助手でも雇おうかしら)

 助手が居ない事がクリスの激務の原因である事は明らかだった。書類整理やスケジュール管理、情報収集や事件現場付近の聞き込みなどやるべき事は山ほどあった。
 その上いざ事が起こったら戦いもこなさなければならない。現在の仕事量をこなせているのが不思議な程だった。

 ・・・でも、とクリスは思う。視線の先に今は座る者のいない、しかし毎日綺麗に磨かれいる保安官デスクがある。
 クリス自身は未だ助手用のデスクを使っていた。くだらない感傷だとは分かっている。しかしどうしてもクリスはその机に座ることが出来なかった。

 もしクリスが本気で助手を募集したらきっと両手の指では足りない数の男達が集まるだろう。それほどクリスは美しかった。腰まで伸ばした透き通る絹糸のようなストレートの金髪、南の海やサファイアに例えられる澄んだ青い瞳、整った鼻筋、形の良い唇、それに・・・大の男の掌にも余りそうな豊かな胸。それでいて体つきは決して大柄では無い。・・・しかしそういった容姿の問題だけでは無かった。
 クリスは誰しもを安心させる空気を持っていた。老若男女問わず彼女の側にいるとホッとし、リラックス出来た。もしかするとそれが彼女の一番の魅力だったかも知れない。

(とりあえず助手問題は後にしましょう、レミィも頑張ってくれてるし)

 レミィの事を考えクリスはさっきまで見ていた夢を思い出す。・・・ジュリアスが生きていてレミィは普通の女の子でチョコ・ケーキをお茶菓子にコーヒーのお茶会、たわいない会話に花が咲き、皆幸せそうだった。・・・・・4、5年前までは普通にあった光景だ。
 自分のあまりの感傷趣味にまたも苦笑してしまう。
 全て変わっていく。取り戻せる過去などないのだ。・・・そう考えて小さく溜め息をつく。

 レミィが賞金稼ぎになって戻ってきた二年前、なし崩し的に認めさせられてしまったが今でも心の中ではそんな仕事は止めて欲しいと思っている。
 実際レミィは有能で彼女のおかげで解決したような事件も少なくない。それでもクリスはレミィに危ない事は止めて欲しかった。レミィには普通の女の子として生きて欲しかったのだ。
 三年前のあの日・・・なんで上手く引き止める事が出来なかったのか。・・・どうしてもっと冷静に話し合わなかったのか。
 
(いえ・・・やっぱり無理だったわね)
 ・・・既に何度も出している結論にまた達する。
(あの日、ジュリアスを失ったばかりで私は冷静に議論できるような状態じゃなかった。あの子はそれを見越して話を切り出してきたんだわ。・・・・昔から勘も頭も鋭い子だったもの)
(・・・いずれにせよあの子はもう、ガルシアーノを殺すまで止まる事は無いでしょうね)

 そう考え、机の上に目を向ける。そこには近隣の町のいくつかでガルシアーノらしき男を見た者がいるという情報が書き付けられていた。これはレミィにはまだ教えてない情報だ。
(これを見たら飛び出して行きかねないわね、レミィって頭が良いくせに勘や衝動で行動しちゃうんだから)
 くすりと笑う。レミィとは逆にクリスは合理的で理性を重んじていた。おっとりした外見と優しい性格のせいでなかなかそうは思って貰えなかったが。
(まず目撃者を探して、それぞれがガルシアーノをどこで見たのかをなるべく正確に思い出して貰う。その後、日時を考慮しながら地図で重なる範囲を円状に調べて・・・・)

 クリスはガルシアーノを自分の手で捕まえるつもりでいた。これ以上レミィの手を血で汚させたくはなかった。
 レミィは怒るかもしれないが復讐なんかしないに越した事はない。
 それにもしかするとこれはレミィが普通の女の子に戻るチャンスかもしれない。
 取り戻せる過去はない。・・・だけど切り開ける未来はある。
 そう考えるとクリスは保安官事務所を足早に出て行くのだった。

 捜査は思ったより難航した。・・・というよりも全く進展しなかった。ガルシアーノを見た奴がいるらしい。そういう情報は手に入る。
 では実際に誰がガルシアーノを見たのか、そういう話になってくると肝心の目撃者に全く辿りつかないのだ。
 クリスは足を棒にして歩き回ったが全く成果は上がらなかった。クリスがとりあえず聞き込みを切り上げて、自分の町の近くに帰りつく頃には時刻はもう夜の10時を過ぎていた。

(オークランド牧場か・・・こんな時間には通りたくないのよね・・・)
 町の人々が『お化け牧場』と呼ぶこの牧場、ご多分に漏れずクリスも苦手だった。
 足早に通りすぎようとした時、前方に立っている白い服を着た少女に気づく。

「ッ!」
 一瞬悲鳴を上げそうになるのを何とか堪える。そして道の真ん中に立ってこちらを見ている少女を観察する。どうやらインディアンの少女らしい。羽飾り、バンダナ、そして幽霊の白ワンピースに見えた、簡素な貫頭衣。冷静になってみるとどこからどう見てもインディアンだ。
「どうしたの?こんな時間に」
 優しく声を掛ける。クリスはインディアンに偏見のないタイプの人間だった。あるいは彼女自身が孤児出身といった出自も関係していたかもしれない。

 しかし少女が背中に手を廻し、そこから彼女の頭程もある手投斧(トマホーク)を両手に握り出してきた時には正直驚いた。
 月の光を受け銀色に輝くトマホークは、刃の先と木製の柄に繋がる金属部分が上下半円状に繰り抜かれているものの、それでも充分重そうで少女の華奢な腕で振り回せるとはとても思えなかった。
 冴え冴えとした月光を浴びながら、両手に銀色に輝くトマホークを持ちこちらを睨み付けるインディアンの美少女は、ある種絵画のようなの美しささえ感じさせる。

 少女に気を取られすぎたのがクリスの敗因だった。
 パァン!
 背後からの突然の銃撃はクリスの背中に命中した。その銃弾はクリスの体に一瞬で浸透する。
 そしてクリスは自分の体が自分の意思では全く動かせなくなっている事に愕然とするのだった。

「お前、クリステル・オーバーレインだよな?・・・声〝許可〟」
 背後の干草の陰から現れた男は油断無くクリスを見据えながら、インディアン少女の方へ歩み寄る。

「・・・そういうあなたは?」
 内心の動揺を悟られないように低い声で言う。
 既に人相書きで知っていたが、会話を引き伸ばせばこちらの知らない情報を喋ってくれるかもしれない。
「質問に質問を返すなよ。礼儀に反するぜ?・・・・まあいいや、俺はレックス・ガルシアーノだ。知ってんだろ?」

(大物気取り、自意識過剰、傲慢、知能高め)
 クリスは瞬時に分析をする。こういう奴は怒らせない限り大丈夫だ。
「ええ、知ってるわ。さっきの質問の答えならYESよ。・・・それで私になにか用かしら?」
「その状態でそんな口叩けるってだけ大したもんだ。ま、お前ってより、元々はレミィの方に用があったんだがな。レミィに近い人間としてお前を調べてたら、面白い事が分かってよ」

 クリスはガルシアーノの言葉に疑問を感じた。最近かなり有名なレミィの事は調べればすぐ自分の過去に関わりのある人間だと分かるだろう。それならレミィが自分を探してる事もすぐ分かるはずだ。普通なら命の危険を感じて身を隠すのではないか?
 それでも姿を現し、なおかつリスクを冒しても会いたいって事は・・・・・・絶対に勝つ自信がある?
 それは今私に起こってる状態の事だろうか?・・・それに面白い事って?

 次のレックスの言葉はクリスが全く予想もしていなかったものだった。

「お前、ジュリアス・レットの女だったんだってな?」
「・・・・・どうしてあなたが彼の名前を知ってるの?」
 レックスは皮肉げに唇を笑みの形に吊り上げながら答えた。
「そりぁあ、忘れる訳ねぇだろう、俺のどてっ腹に風穴開けてくれた野郎の名だ。・・・・最も、俺は野郎の心臓に風穴開けてやったがね」
 そう言っておかしそうに笑う。

 クリスは衝撃の余り、くらくらと目眩を感じた。・・・・三年間・・・・あれだけ・・・あれだけ探して見つからなかった恋人の仇が今、目の前にいる?・・・そしてそいつはレミィが命を懸けて探してたレックス・ガルシアーノだっていうの!?
 合理主義者のクリスは咄嗟にその話を信じる事ができなかった。そんな都合の良い話があるだろうか?私を動揺させる為の策略ではないのか?
 疑うクリスにレックスは淡々と言葉を続ける。

「三年前、俺は何もかも上手く行かなくなってケチなこそ泥をしてた。ロドリゴ宝石店・・・知ってるだろ?店の鍵こじ開けようとしてたら、夜間パトロールをしてたあのクソ野郎に鉢合わせって訳だ」
「奴の弾は俺の腹に当たって、俺の弾は奴の右腕に当たった。ラッキーな事に奴は落とした銃を拾おうとしやがった。そこへ狙い済ましてズドン・・・それでオシマイさ」
 レックスは得意げにまるで狩りの自慢話のように語る。
「さすがに腹撃たれちゃ宝石は盗めねぇからな、俺は逃げたよ。・・・後の事はお前の方が詳しいんじゃねぇか?」

 そう、クリスは知っていた。確かにジュリアスはロドリゴ宝石店の前に倒れていた。そして右腕と胸・・・心臓に弾痕が、そしてジュリアスと撃ち合った犯人であろう人間の血痕が町の外まで点々と続いていた。
 ・・・そして最後にレックスは決定的な台詞を吐く。

「奴は最期に言ってたよ。・・・・クリス・・・ってな。・・・・・まぁ恋人の名前かなんかだろうとは思ったがね」
 さもくだらないという風にレックスは冷笑する。

「・・・そう」
 クリスは短く返事をする。その瞳から一筋の涙が流れていた。それは悲しみの・・・・・そして歓喜の涙だった。
 その顔から表情が消える。レミィも見たことがない、本気になったクリスの顔だった。
「レミィの前じゃなくて私の前に現れてくれた事に感謝するわ、ガルシアーノ。レミィの為、・・・そして私の為にあなたを生かしておく訳にはいかない」
「そうかよ。で、どうする?」
 クリスは歯噛みする。確かに奴の言う通りだ、今の自分には何も出来ない。今はチャンスを窺う時だ。
「私に何をしたの?」
「さあな。でもせっかく珍しい経験が出来てんだ、別なのも経験してみろよ」

 レックスは腰のホルスターからクリスが見たこともないリボルバーを抜き出すとシリンダーを回転させる。
「・・・魔弾№.3<発情>」
 パァン!
 リボルバーから目に見えない弾丸が発射される。それはクリスの下腹部に命中すると拡散し、彼女の体に劇的な変化をもたらした。
 
「・・・・あっ!うくぅん、んあっ!」
 クリスは自分の体に起こった変化にとまどっていた。撃たれたというのに痛みはない。それどころか全身が熱っぽく火照り、甘く切ない衝動が突き上げてくる。
「んぁっ!・・・くぅっ、なに、これぇ・・・」
「まぁ気にすんな。つーか気持ちよくして貰ってんだから、感謝して欲しい位だぜ」
 レックスは冷たく笑うとクリスの様子を観察する。
 既にクリスの体はじっとりと汗が浮き出し、秘裂からはじわりと透明な液体が流れ出そうとしていた。
「んっ、んんっ、あっ、あぁん・・・・・」
(あぁっ!、なんで?なんでこんなに気持ちいいのっ、んあぁっ)
 クリスの明晰な頭脳は自分に起こった現象をなんとか分析しようとする。
(あっ、これがさっきの弾のせいだったとしたらっ、あんっ、また撃たれたら・・・)

「大抵の女は一発で参っちまうんだが、耐えてるみてぇだな。・・・・精神力か憎しみかは知らねぇが」
 レックスはそう言ってクリスの元に歩み寄ってくると服のボタンに手をかける。
「あぁっ、いやぁん・・・、やめてぇっ、んっ、やめなさいぃ・・」
 本人は必死に抵抗しているつもりだがどうしても甘ったるい声になってしまう。
 クリスの抗議の声は無視され、保安官制服のボタンは全て外された。さらにその下から現れた品の良いブラもあっさりと剥ぎ取られる。
 月明かりを受けて白くふるふると輝く豊満な乳房は艶かしく、この世のものとは思えない美しさだった。

 クリスは怒りで顔を紅潮させ、レックスを睨みつける。しかし、固くしこった乳首を指で弾かれるとそれだけで甘い嬌声をあげてしまう。
「あくぅぅっっん!」
 レックスは無感動な様子で今度はクリスのガンベルトを外すとズボンに手を掛ける。
「あぁっ!やめてぇっ!」
「・・・ごちゃごちゃうるせーな。・・・声〝禁止〟だ」
 それきりクリスの口は開いたまま動かなくなる。そしてレックスは躊躇なくズボンとパンツを膝まで引き降ろしてしまう。
 
「こうしないと狙い付けづらいってのが<発情>の弱点だな」
 膝まで下げられたズボンとパンツ、胸は剥き出し。女性としての大事な部分を全て晒されクリスは羞恥と屈辱で気が狂いそうだった。
 しかもそれをしたのは彼女の恋人を殺した憎い男なのだ。
(許さない、ガルシアーノ。殺してやる・・・絶対に殺してやるわ)
 それでもクリスの秘所は男に見られている事に自然に反応し、愛液を漏らす。

 憎しみの炎を蒼い瞳に宿しながら秘所を濡らしている美人保安官の姿を楽しげに見返しながらレックスは説明を始めた。
「俺の魔弾は殆どが一日一発しか使えねぇんだが、この№.3だけは特別製でね。途中で他の魔弾に変えたりしない限り、一日六発まで使える」
「最初の一発は全身に効いて性感を飛躍的に上昇させるんだが、面白いのはここからでよ」
 そこで言葉を切り酷薄な笑みを浮かべる。
「二発目以降は特定の部位の性感を一発目とは比較にならねぇ程、上昇させんだ。・・・こんな風によ!」

 そう言ってクリスの剥き出しにされ快楽で固く尖った左乳首に銃弾を撃ち込む。
(あっ!?あぁっ、ああぁぁぁぁっっ!!)
 弾丸を撃ち込まれそれが左乳房に拡散した瞬間、クリスは達してしまう。今まで味わった事がない快感が左胸中心に駆け巡る。しかもその快感はイッた後も収まる事無く、なおも切なく激しい刺激を発し続けていた。
「どうだ?俺からのプレゼントは。せっかくだから全部受け取ってくれよ」
 そう言うとレックスはクリスの右乳首、舌、陰核、・・・そしてアヌスに次々と魔弾を撃ち込んでいく。

(ああああぁぁぁぁっっっっ!!!!・・・あはぁぁぁっっ!!あぁっ、あっ、はああぁぁん!)
 クリスはなす術も無く絶頂の嵐に巻き込まれていく。
(ッッダメェェッ!おかしくっ、なるぅ、私っ、あぁんっ、おかしくなっちゃうぅぅっっ!!んあっ!)
 クリスはあまりの快感に泣いていた。体からは珠のような汗がポタポタと垂れ、秘裂はいやらしく収縮を繰り返しときたま白濁した液体を噴出していた。体はひっきりなしにビクビクと激しく痙攣していたが、魔弾の効果で倒れることも出来ない。
 特に快感が激しかったのは口だった。普段それほど性感を感じることも無い口が今は第二の膣になったように感じられる。
(くちがぁ、くちきもちいいのおぉ、ああんっ、舌ビリビリするのぉっ!)

 何度も何度も達し、快楽の源はまだ体で疼いているものの彼女がなんとか多少落ち着きを取り戻した所でレックスは冷淡に告げる。
「・・・用件は終わりだ。今日はもう帰っていいぜ・・・声を〝許可〟する」
 その言葉にショックを受け、そしてショックを受けている自分に気づき、クリスはようやく自分が底知れない暗闇に足を踏み入れている事を知るのだった。

「・・・今、帰っていいって言ったの?」
「ああ、そう言ったぜ。・・・それとも帰りたくない理由でもあるのか?」
 レックスは嘲るように問い返す。
「そう。じゃあ今日の所は帰らせせて頂くわ。・・・でも体が動かないんじゃ帰れないわね」
 未だに体は甘く痺れ、気を抜くとイッてしまいそうになるがクリスは毅然とした態度で言い放つ。なるべく舌を動かさないように喋るのでかなりの小声ではあったが。
「太ももまで濡らしながら言う台詞じゃねぇぞ。ま、返すっても条件があるがな。・・・今日ここであった事を誰かに話したり、何らかの手段で人に伝える、またはそれらの素振りをする事を〝禁止〟する。それ以外の行動は全て〝許可〟する」
 体が自由に動くという事がこれ程有難い事だったとは。クリスは深く安堵する。
 のろのろと服を着込みそれらが魔弾を撃ち込まれた場所に触れるたび軽い絶頂感を覚えながら、なんとか正気を保つ。

(・・・ダメよクリス、耐えなさい!・・・・・あいつは一つ大きなミスをしている。そのチャンスまでは・・・)
 わざとゆっくりとした動作でガンベルトまで着け終えると・・・・・次の瞬間には出来るだけ速く腰のピースメイカーを抜いていた。
 引き金を引きながら撃鉄を左手で連打する。『ファニング』と呼ばれるテクニックだ。
 運動能力こそレミィに及ばないものの、銃の扱いならクリスの方が上だった。
 ファニングの速射力と正確性でクリスは誰にも負けた事は無い。

 ガキキキキキィィィィィィィンン!!!!!!

 だがクリスは信じられないものを見た。
 銃を抜いた瞬間、疾風のように飛び込んできたインディアンの少女が構えたトマホークがクリスの銃弾を全て弾き飛ばしたのだ。
 レックスを守るように彼の前に立ち、彼の心臓の位置でトマホークを交差させた少女は不敵に言う。

「お前、狙い正直すぎ。軌道さえ分かれば落とすの簡単」
(・・・・・ありえない。)
 クリスは思った。
(いくら軌道を読んだからって、銃弾の嵐の中に躊躇なく飛び込んでそれを弾くなんて・・・・・・・)
 しかしクリスの思考は途中で中断される。
 目の前の少女がトマホークを振りかぶっているのが見えたからだ。

 弾丸もかくやというスピードだった。
 少女の手から放たれたトマホークは唸りをあげてクリスの耳のすぐ横を通過する。
 風圧でクリスの髪は大きくなびき、その絹糸のような美しい金髪が数本切り飛ばされ宙に舞う。
 トマホークはクリスの遥か後方で大きく弧を描くと、まるで糸でもついているかのように正確に少女の手の中に戻ってきた。

「戦う時は正々堂々。それが掟。だからユーナ実力見せた。早く弾込めろ。次は本気でいく」
 びりびりとした殺気を纏うユーナにレックスが割って入る。
「まあ、待てよ。二言目には殺す殺す言いやがって。ちょっとは融通を利かせやがれ」
「でもこいつ、ご主人様殺そうとした!ユーナ許せない!」
「使えねぇ奴はいくらぶっ殺してもかまわねぇが、使える奴は生かしとくんだよ。・・・・正直こいつがここまで使えるとは思わなかったしな」
「でも・・・」
 なおも抗弁しようとするユーナにレックスは冷たい視線を向ける。声にもさっきまでの軽さはない。
「ユーナ・・・俺の言うことが聞けねぇのか?」
 
 途端にユーナの顔が蒼白になる。殺気など消し飛び、持っていたトマホークを取り落として跪く。
「ご、ご免なさい、ご主人様っ。ユーナなんでも言う事きくっ。なんでもするっ。だから嫌わないでっ。捨てないでっ!」
 大きな瞳からポロポロ涙をこぼしながら必死に哀願する。
「しょうがねぇな。・・・オラ、仲直りの印だ」
 そういってブーツをユーナの方に向ける。
「ありがとう、ご主人様!」
 ユーナは心底嬉しそうな笑顔を浮かべ、その小さな舌でぺろぺろと丁寧にレックスのブーツを舐めてゆく。

 クリスにその異常な行為を見ている余裕は無い。ファニングを使ったとき無理をして擦れた胸の疼きが、緊張のほぐれた今になって急激に襲って来たのだ。
「んぅっ!くうぅっ!あああぁぁん!!」
 自らの豊満な胸に邪魔をされた格好になる。ファニングが普段の半分程度のスピードだったのもそのせいだったろう。
 身をくねらせ座り込んでしまう。
「俺を攻撃する事を〝禁止〟しなかったのは確かにマヌケだったよ。・・・しかし<発情>六発喰らって反撃してきた女は初めてだぜ」
 少し感心したようにレックスが言う。
「だがどうする、もう弾切れだろ?それとも、もう一回チャンスがあると思うか?」
 チャンスはもう無い。それはクリスにも分かっていた。
「俺たちはしばらくここに居る。いつでも遊びに来いよ」
 勝ち誇ったように言うレックスにクリスは精一杯の憎しみをぶつける。
「残念だけどガルシアーノ、次に私がここに来るのはあなたを殺しに来る時よ」
「そうかよ。まぁどっちでも同じようなもんだ。・・・あぁそれと、お前の口は口マンコでケツの穴はケツマンコだ。いずれ使う言葉だからよく覚えておけよ」
「・・・ふざけないで」
 既に何度も達し、戦闘の緊張と体から湧き出る快感が限界に達していたクリスはそう答えるのがやっとだった。

「そこまで根性が座ってんなら念の為だ」
 そう言って最後にクリスに<恋慕>の魔弾を撃ち込んでからレックスはようやくクリスを解放した。

< 続く >

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