誰が為に銃声は鳴る エピソード1「大地の守護者」(前編)

エピソード 1 「大地の守護者」(前編)

プロローグ

 一攫千金を狙った男達の夢の跡……そこでユーナとレックスは対峙していた。

 山肌にいくつも掘られた坑道、木造の宿泊施設や見張り小屋。
 マリッサの拠点の都市から少し離れた場所にある、ギラギラと太陽の照りつける掘りつくされ、うち棄てられた廃鉱前の広場。そこが二人の決戦の舞台だった。

「何の警戒も無く来やがって……まぁ、ちょっとは予想してたけどよ、少しは人を疑ったりしねぇのか?」

 レックスが呆れた様に問う。
 実際、レックスのアジトと聞き及んだこの場所にやって来たユーナだったが、マリッサの偽情報に見事なまでに踊らされていた。
 レックスとユーナの間には銃を持った男達がレックスを守るように並んでいたし、レックスの側には肌の浅黒い妖艶な美女が佇んでいる。
 その女の服装は異様だった。限界まで切り詰めたような黒い革製のビキニは動くとそれだけで乳首がこぼれ出そうだ。
 ジーンズはローライズどころではなくずり下げられ、後ろから見ると尻の割れ目など容易く見えるだろう。
 まるで服というものを拒絶しているような着こなしだ。

 無警戒に真正面から乗り込んできたユーナだったが、その目は自信と誇りに満ち溢れていた。堂々と言い返す。

「罠とかそんな物、関係ない!真の勇者はどんな時でも汚い罠に屈したりしない!」
「……筋金入りのバカだな。そんなんだからお前らインディアンは全滅するんだよ」
「ッ!お前が仲間の!部族の事悪く言うな!最低の卑怯者、ユーナ絶対にお前許さない!!」

 ユーナを怒らせ感情を揺らす為発したレックスの言葉に、素直に反応し彼女は激昂する。
 肩を震わせ、荒く息をつく。
 レックスの言う事はある種正しかった。ここに辿り着くまでに何度騙され売り飛ばされそうになった事か。
 その度に強引に脱出してきたユーナだったが、今、全てはこの時の為にあったのだと考えていた。
 この日の為に、この時の為に、探してきた憎い仇をありったけの憎悪を込めて睨みつける。
 しかし次のレックスの言葉はユーナにとって全く予想外のものだった。

「お前、運命ってやつを信じるか?」
「……何言ってる?」
「だから運命ってやつを信じるかって聞いてるんだよ」
「……信じる。今ここでお前殺して仲間の名誉、部族の誇り守るのが、ユーナの運命!」
「そうかよ。人がせっかくロマンチックな話してんのに、情緒のねぇ女だ。……まぁいいや、それじゃそろそろ始めようぜ」

 ―――――それが開戦の合図だった。

第1章

 レックスとユーナを隔てていた十人の男達がユーナを取り囲む様に半円状に展開する。同士討ちを避ける為だ。
 ユーナを攻略する為レックスは三段階の作戦を用意していた。
 一段階目は取り囲み退路を絶っての一斉射撃。これで大抵はカタがつく。
(見ものだな)
 そうレックスは考えていた。

 ユーナの顔に微笑が浮かぶ。それはまだ幼さの残る小柄な美少女のものではなく、戦いの高揚に昂る戦士の微笑みだった。
 その凄惨ともいえる微笑みを消すと、ユーナは突然男達の方へ向かい走り出す。そのスピードは目で追うのがやっとな程だ。
 まさか真っ直ぐ突っ込んでくるとは思ってもいなかった男達は慌てて、銃を構える。
 男達の手の動き、銃口の位置から弾道を読むと、ユーナは走る勢いを利用して地面をスライディングする。

 パパパパパパパァァァァァァァンンンンン!!!!!!!

 ほんの少し前までユーナの居た場所に銃弾が次々と着弾する。
 足を狙うといった温情のある奴が一人も居なかった事はユーナにとって幸運だったかもしれない。
 地面の滑走から立ち上がった時、既にユーナは自分の真正面に居合わせた男の眼前にいた。
 そのまま斧を自分の手足の様に振り回し、正面、そして左右にいた男の手から拳銃を弾き飛ばす。

「うぐぁっ!」「ぐうぅっ!」「あっ、ぐぁっ!」

 硬く握り締めていた銃を突然物凄い力ではね飛ばされ、男達の利き手の人差し指や手首はありえない角度に折れ曲がっていた。
 地面に落ちた銃はひしゃげ、もはや使い物にならない。
 たまらず膝をつく男達には一切構わず、図らずも分断された形になった右手の三人の男達に向けてユーナはシルバー・ファングを投げ、左手の男達にはもう片方のシルバー・ファングを手に回り込みながら突っ込んでいく。
 右の方向にいた男達は物凄いスピードで飛来したトマホークになす術も無く、銃を弾き飛ばされ同じ様に苦悶の悲鳴を上げながら地面に転がる。
 斧の到達が遅れた者はなんとか銃を撃つ事が出来たが恐怖と焦りでろくに狙いも定めずに撃つ為、ユーナの左方向にいた男の一人に銃弾が命中し、あれだけ避けようとしていた同士討ちを招く有様だった。
 残った三人はパニックを起こしかけながらも突っ込んで来るユーナに照準を合わせようとするが、ユーナの接敵速度はそれ以上に速く一人、また一人と銃を弾き飛ばされていく。
 後ろ手に廻したユーナの右手にトマホークが弧を描きながら戻って来た時、十人いた男達は既に最後の一人になっていた。

(速いな。予想以上だぜ)
 レックスは<遮断>の装填をした銃を構えながら心の中で呟く。
 だが、ここまでの展開はレックスも織り込み済みだった。その為にユーナと自分との間に距離を作り、男達に盾役をやらせたのだ。
 最初の作戦は二段階目の布石といっていい。最後の一人を倒した時、レックスを確認する為必ず一瞬動きが止まる。そこを狙い撃つ。
(出来れば三つ目のは使いたくねぇが)
 ユーナが最後の一人を倒し、こちらを振り返る瞬間に合わせ照準をつける。

 結論から言うとレックスの思惑通りにはならなかった。ユーナは最後の一人を倒し終わると目の端に銃を構えているレックスを捉え、振り返りざまトマホークを投げて来たのだ。
 だが、その後に起こった事に驚愕したのはレックスではなく、ユーナの方だった。

「ご主人様ッ!!」

 唸りを上げ飛来したトマホークは、彼を庇う様に飛び出したマリッサの胸に深々と突き刺さる。
 レックスにとっては予想通りの事だったが、ユーナにとってはそうではなかった。胸を血に染めゆっくり崩れ落ちるマリッサを呆然と見ている。
 集落での何度かの会話でレックスはユーナがまだ人を殺した事が無い事、そして力の弱い者、特に女子供に暴力を振るう事を極端に嫌う性格である事を知っていた。

 完全に動きが止まり棒立ちになったユーナにレックスは<遮断>の魔弾を撃ち込む。―――――それで勝負はついた。

 ユーナが動けなくなったのを確認すると、レックスはマリッサを見下ろす。
 胸に斧が深々と突き立っているのだ。どう見ても助かる様な怪我では無い。
 レックスにとってマリッサを失う事は痛手ではあったが、彼女のスピードが無ければ盾になる事すら、不可能だった筈だ。

「ご……主人……様……」
「喋るな、楽に死ねねぇぞ」

 まだかろうじて息のあるマリッサにレックスは短く答える。
 しかし、マリッサは苦しい息の元、漸く首を振ると話を続ける。

「こうなる……事は……薄々……分かってたんだ……でも……後悔なんてしてないんだ……ホントだよ?」

 レックスは黙ってマリッサを見下ろしていた。マリッサの瞳から命の輝きが急速に失せていくのがわかる。

「ご主人様の……牝犬になって……あたしは幸せだった……だから……だから最後に手を握ってくれないかい?……ちょっと寒いんだよ……」

 マリッサの傍らに膝をつくと、レックスは両手でマリッサの右手を握る。

「ありが……とう……ご……しゅ……じん……さま……あいし……て……る……」

 それきり永遠に動かなくなったマリッサの瞼を、レックスはあくまで無感動に閉じさせる。
 動けないユーナの元に近寄り声を〝許可〟すると、レックスは冷酷に勝利宣言をする。

「俺の勝ちだな。……なにか言う事はあるか?」

 ユーナは可愛らしい顔を憎しみで歪め、吐き棄てる。

「卑怯者!女、盾にするなんて人間じゃない!」
「人間じゃねぇのはお互い様だと思うがな。ま、考え方の違いって奴だ。俺は使えるものは何でも使う。それだけの話だ。それに……」

 そこで言葉を切り、ユーナを眺めながらレックスは呟く。

「俺とお前は案外似てると思うぜ」
 
 大きな瞳を驚愕に見開き、レックスの言葉を否定しようとするユーナだったが、レックスの魔弾の方が早かった。

「魔弾NO.4<操作>」
 ユーナの胸に新たな魔弾が撃ち込まれる。しかしこの時点では体には何の変化も無い。
「俺の後について来い、ああ、武器は落してな」
 地面に突っ伏し苦鳴をあげている男達を追い返すと、レックスはユーナに背を向け歩き出す。
 ユーナは自分の身体に起こった変化に愕然としていた。レックスの言う事なんか聞くつもりは全く無かったが、体が勝手に言われた通りレックスの後を追って歩き出す。
(ユーナの体、勝手に動く! これがこいつの力か!?)

 混乱しながらもレックスの後に付いていかざるをえないユーナだったが、その瞳から強い意志の光は失われていなかった。
(すぐ殺さないなら、まだチャンスある。ユーナ絶対に皆の仇とる!)

 レックスは近くの廃坑の一つに入っていく。しかし、そこは正確には廃坑では無かった。
 多少の修理は必要だったが、奴隷の脱走者、反乱を企てたものを投獄する即席の牢獄はここが使われなくなってからもなお、堅牢なままだ。
 ここを決戦の舞台にしたレックスの思惑には、この場所の存在も含まれていた。
 日の当たらない暗い牢の一つに入るとレックスはユーナを振り返る。
 嫌々ながらもユーナはついて行かざるを得ない。

「そこで止まれ」

 レックスの言葉通り牢獄に入った所で動きが止まったユーナだったが、その時体が自由に動く事に気づく。
 戦士としての本能から次の瞬間にはレックスに飛び掛っていたが、シルバー・ファングを手放し普通の人間レベルになっているユーナの急襲はあっさりかわされる。

「ちっ、体を動かす事を〝禁止〟する」

 レックスは<遮断>の効果でユーナの動きを止めると苦々しげに呟く。

「命令を実行し終わると後は自由に動けちまうのが、<操作>の弱点だな。危ねぇとこだったぜ」

 対象になんらかの行動を強いる<操作>だが、行動の抑止、禁止には使えない。……ある一点を除いてだが。
 レックスは顔を歪めて見せたが、<操作>の切り札については黙っていた。
 ユーナに少しでも希望を与える為に。……トリックのタネを全部教える手品師はいない。
 そしてユーナに屈辱的な命令を出す。

「さてと、とりあえず服を脱げよ。そしてそれ以外の行動を〝禁止〟する」

 抵抗しようとするユーナだったが命令の強制力は圧倒的だった。歯噛みしながら貫頭衣を脱ぎ捨てる。
 まだ膨らみかけといった小さな胸が桃色の乳頭と共に露わになる。そしてそれを隠す間も無く指が下着にかかり、一気に引き下ろされる。
 日に焼けた健康的な肌は屈辱と羞恥に紅潮し、大きな瞳はレックスを睨みつけキリリと整った眉を吊り上げている。
 左右に分けられ三つ編みにされた濡羽色の黒髪は、怒りの余り今にも逆立ちそうだった。
 出来る限り体を隠しながら、怒りを全身から発散しているユーナの姿にレックスは興奮を覚える。

「まずは……そうだな。キスでもして貰うか」
「誰がするか!」

 勇ましく答えたユーナだったが、足は自然にレックスの方向に向かい歩き出す。レックスの所に辿り着くとつま先を掲げふるふると震える唇を突き出す。

「キスしたら元の位置に戻って、それ以外行動〝禁止〟だ」

 そう言いながらレックスはユーナとキスを交わす。ユーナにとってキスは初めてだったらしい。乱暴に押し付けてくるだけの強引なものだったが、ひんやりとした柔らかな唇の感触は心地良いものだった。
(許さない、ユーナ、絶対にこいつ許さない!)
 自分の体をいいように弄ばれ、憎悪に身を焦がすユーナにレックスは酷薄な質問をする。

「俺の質問には正直に答えろ。……オナニーした事はあるだろ?」

 突然のレックスの不躾な質問を当然無視しようとしたユーナだったが、口が勝手に動いて屈辱的な答えを返してしまう。

「……そんなのした事無い……」
「マジか? お前の年でか? ムラムラした時はどうすんだ?」
「そんなの、運動すれば吹っ飛ぶ!」
「……ははっ、スゲェな、やっぱりお前は筋金入りだぜ。……とはいえやり方位は知ってんだろ?やって見せろよ」

 その言葉と同時にユーナは地面にストンと腰を下ろし、おずおず胸と股間に指を這わせてしまう。
 どうしてもレックスの言葉に逆らえない。ユーナは自分自身への怒りとレックスへの憎しみに身を焦がす。
 しかし、指の動きは止まる事は無い。おぼつかない動きで性感帯への刺激を繰り返す。

 指の動きは激しく、淫裂を擦り上げ乳首を摘み回転させるように動かしてはいるが、ユーナは全く感じてはいなかった。
 憎い仇に強制され、自分の性感も分からない初めての自慰で感じる訳が無い。快感よりレックスへの怒りでユーナの体はどうにかなりそうだった。

「あまり乗り気じゃあねぇみたいだな」
「当たり前だ!」
「じゃあ、もうちょっと乗り気にさせてやるよ……〝停止〟」

 レックスがその言葉を発した途端、ユーナの動きがピタリと止まった。といっても気絶した訳では無い。目は見開き目の前のレックスを睨みつけている。
 しかしその瞳からはユーナらしい強い意志の力が消えうせ、まるでガラス細工の様だ。

 これが魔弾NO.4<操作>もう一つの力、意思剥奪だった。肉体を命令が完遂されるまで操る<操作>だが、肉体の一部には当然脳も含まれる。
 <洗脳>のように忠実な奴隷にする力は無いし、<誤認>のように常識を書き換える程の力も無いが、一時的に脳の機能をシャットダウンする位の事は出来る。
 本人が聞かれたくない心の秘密を自らの口から喋らせる事も。

 ユーナはまるで彫像のように動かない。
 自慰行為の姿勢のまま、自分を光の無い瞳で見上げている美しいインディアンの少女を冷めた視線で見下ろしながら、レックスは呟いた。

「さあ、これから楽しいマジックショーの開演……って奴だ」

 そして<発情>の魔弾をユーナの体とまだ膨らみかけの右乳房の上に所在無さげについている薄桃色の乳首に撃ち込む。

「……〝再生〟」
 
 レックスがそう言うと同時にユーナにとっては望まぬオナニーショーが再開される。しかし意思剥奪前後ではそこに劇的な差があった。

「ん、ふぅっ、んっ」

 顔を赤らめ身を捩るユーナ。なるべく性感帯に指が触れないよう気を遣っているようだ。

「どうした?」
「な、なんでもないっ!ちょっとくすぐったいだけっ!」

 魔弾の効果でバカ正直に答えるユーナだが、その答えはレックスにとって少し予想外だった。 
 <操作>で記憶を飛ばされた状態のユーナは突然やって来た快楽の波に全身を支配されている状態の筈だ。
(なるほどな、性的に未開発だと<発情>2発撃ち込んでもこの程度って事か。……だが、まあいいさ、時間はたっぷりある)

「ああ、くすぐったい所を重点的に弄れよ、右の乳首も念入りにな」
「このっ……」

 なにか言いたげなユーナを無視してレックスは側にあった木製の古びた丸椅子に座り、ポケットから手巻き煙草の材料を取り出した。ブーツの踵でマッチに火を点けた時、ある人物の言葉を思い出す。
(ご主人様、煙草は止めた方がいいよ。残り香がいつまでも残るからこっちから居場所を教えてる感じになっちゃうし……)
 あの時レックスはだったらてめぇが死ぬ気で俺を守れと返した。それをなし遂げた人物はもう、ここにはいない。
 どうしてそんな事をしようとしたのか分からない。レックスはユーナにそのままオナニーを続けるように命じると、放置されていたスコップを片手に外へ出て穴を掘り始めた。
 小1時間程掛かっただろうか、墓標がわりのナイフを眺めながらレックスは考える。……単にヒマだったからだ、と。

 戻ってみるとユーナの変化はさらに劇的になっていた。

「あっ、くふっ、んっ、あふぅっ、んぁっ」

 相変わらず指の動きはぎこちないが、さっきよりは激しくなっている。乳頭は硬く膨らみ、太腿の濡れ具合は汗だけでは無さそうだ。
 頬には赤みが指し、口からは涎が垂れている。濡羽色の美しい黒髪は汗で湿り気を帯び、松明の淡い光を反射しててらてらと艶めかしく輝いていた。
 床には汗が染みを作っている。それでも這いつくばったままのユーナの視線は憎しみを込めてレックスに注がれていた。

「ま、飲めよ。脱水起こして死なれても困る……飲んだ後は動く事は〝禁止〟だ」

 レックスが投げ寄越した水袋を無視しようとしたユーナだったが、魔弾の能力がそれを許さない。のろのろと掴むとゆっくり口をつける。しかし一度口をつけると喉を鳴らして飲み始めた。空になった水袋を持ち口を開く。

「……ユーナに、何した……」
「ああ?なにがだよ」
「お前ユーナに何かした!こんなふうなのおかしい!」
「だからなにがだよ」
「こんな……気持ち……気持ちいいのおかしい!おまえ絶対ユーナに何かした!」
「何回も言わせんな、なにかってなんだよ。この部屋に入ってから俺はお前に指一本触れてねぇだろうが」
「………………」

 ユーナは押し黙ったが納得していないのは火を見るより明らかだった。レックスは更に畳み掛ける。

「で、お前はどうすんだ?気持ちよくて降参か?」
 
 その言葉はユーナを激昂させ、同時に瞳に強い意志の力を甦らせた。

「馬鹿にするな!真の勇者はどんな時にも屈しない!」
「……そうか、じゃ真の勇者サマにはもうちょっと頑張って貰うぜ」

 ユーナの返答を聞き終わるより速く、<操作>で彼女を無力化させ、<発情>を今度は左乳首に撃ち込む。
 その後目覚めさせたユーナにレックスは再度の自慰行為を命じた。

「ひあっ、あっ、あっ、やぁっ、やだっ、あっ、やめろぉっ、あん、こんなっ、ふうなのはっ、あっ、ひきょぉっ、あんっ」
「どうした?真の勇者はどんな卑怯な罠にも屈しないんだろ?」
「あっ、あたっ、りまえだっ!あん、こんなの、ユーナっ、なんでも、なぁっ、いっ!」

 強がるユーナだったがその姿は虚勢以外の何ものでもなかった。体は火照り、汗が噴き出し、今日までオナニーすらしたことが無くぴったりと閉じていた秘裂から、とろりと蜜が零れだす。性的に未開発とはいえ<発情>を3発も撃ち込まれれば当然の反応だろう。むしろレックスが多少なりとも感心したのは、その状況下にありながらユーナの瞳に力が失われていない事だった。相変わらず怒りと憎しみと抗議を込めた視線でレックスを睨みつけてくる。

「ま、頑張ってくれ。俺は疲れたんでまた明日遊ぼうぜ。ああ、オナニーは続けてろよ」
「あっ、明日っ?」
「ああ、明日の朝には美味い水も飲ませてやるから心配すんな、じゃあな」

 レックスは踵を帰すと、苦しい息の下、卑怯者、戦えなどと叫ぶユーナの訴えを背に受けながら、牢獄を後にするのだった―――――

 ―――――次の日の朝、夜明け前レックスが牢獄に戻ってみると、ユーナはレックスの言いつけ通り、いや正確には魔弾の効果通り自慰を続けている。
 そこには誇り高いインディアンの女戦士の姿は無かった。

「あふぅ、ひゅぅ、はあ、あっ、ふぅっ」

 一睡もしないでのオナニーはかなりのダメージをユーナに与えていた。体は汗まみれで小便は垂れ流し、動きもかなり鈍い。それでも指の動きは止まっていないし、最も快感を得られるポイントを執拗に自らの手で嬲り続けていた。それでも……いやそれだからこそか、白濁した意識の中レックスの存在を認め、焦点の合わぬ瞳で睨み返してくるユーナはレックスには何故か美しいとさえ思えた。

「よう、調子はどうだ?勇者サマ」
「ふぅっ、こんな、ことで、ゆーな、はっ、まいったしない!あぁっ、ぜえったい、おまえ、ころす!」
「そうか、ま、頑張ってくれ。……<発情>解除」

 発情を解除されたユーナは一気に体が楽になるのを感じた。さっきまでの地獄の快楽が嘘のようだ。依然として体は甘く痺れているが、それは一晩で開発されてしまった体と未だ自分の意思とは無関係に動き続ける指のせいだ。ユーナは不思議な面持ちでレックスを見る。そして信じられないモノを目撃する。
 レックスがジーンズのジッパーを開き陰茎を取り出していたのだ。

「約束通り、美味い水をやるよ。ユーナ、俺の小便を飲め。四つん這いでな。その他の行動を〝禁止〟する」
「やっ、やだっ、いやだぁっ」

 初めてユーナの口から年相応の少女に相応しい悲鳴が放たれる。それでもユーナの意思とは無関係に体は四つん這いの姿勢でじりじりとレックスの方に近づいていく。
 ユーナの集落にトイレなどあるはずも無く、男の陰茎を見たのは初めてではない。それでも間近で見るそれはグロテスクで吐き気さえ感じられた。
 レックスの下に辿り着くと引き絞っていた柔らかそうな唇がゆるゆると開かれる。目の前には憎い仇の……屈辱のせいかユーナの体は小刻みに震えていた。

「そんなところに座ってるだけじゃ飲めやしねぇだろうが。ちゃんと咥えろ、咥えたら腰に手を回せ……一滴も零すなよ」

 レックスの指示は的確かつ残酷だった。ユーナの身長ではやや膝立ちになり陰茎を喉の奥まで迎え入れないと腰に手を回す事は出来ない。
 ユーナはその通りにせざるを得なかった。初めて嗅ぐ男の、雄の匂い。ユーナの小さな口には大きすぎる剛直。
 おずおずと口を開き鈴口からゆっくり巻き込むように陰茎を飲み込んでゆく。吐き気が何度も襲って来たが、魔弾の効果は生理現象すら凌駕していた。

 圧倒的な征服感にレックスは酔いしれていた。まともに戦えば俺はこいつに勝てないだろう。だがそんな女が俺の前に跪き、俺の小便を飲もうとしている。
 俺の力だ。
 これこそが俺の力だ。

「そろそろ出すぞ、飲み終わったら全ての行動を〝禁止〟する」

 勢いよく出始めたそれを飲み下しながら、ユーナは泣いていた。泣くまいと思ったが止められない。屈辱、惨めさ、怒り、そしていくら喉が渇いて死にそうだったからといって、こんな汚らしいものを美味しいとちょっとでも感じてしまった自分への絶望、いろいろな感情が混ぜ合わさり言葉では形容できない涙が溢れる。
 そういえば最後に泣いたのはいつ以来だろう。
 両親を流行り病で亡くした時か?―――――違う。
 力を手に入れる為、地獄の痛みと苦しみを味わった時か?―――――違う。
 もっと後にもあった気がするが思い出せない……。
 混濁しかけた頭をレックスの言葉が現実に引き戻す。

「どうだ?俺の小便は美味かったか?」
「お前、殺す」 
 
 動かぬ体では涙を拭う事も出来ず、ぶっきらぼうにそれだけ告げる。そうだ、自分は何も変わっていない。部族の英雄は真の勇者はどんな時にも屈しない。こいつを殺すまで、ユーナは死なないし、どんな拷問にも耐えてみせる。

「はは、そうだな。そうじゃなきゃいけねぇ。全く俺とお前はよく似てやがる」
「似てない!」

 こんな屑と、悪魔と似てなんかいない。こいつは頭がおかしい。
 その様子を面白そうに眺めるとレックスは新たな魔弾<誤認>をユーナに撃ち込んだ。

「何をそんにカッカしてんだよ」
「ふざけるな!お前汚いもの飲ませた!ユーナは……」
「あっあ~、待て待て。ありゃあお前専用の飲み物だろうが。なに言ってんだ?」 
「そうだ!でも汚い!……え!?ユーナ専用?」
「ああ、お前専用のスペシャルドリンクだ。お前はそれが今まで飲んだ飲み物の中で一番美味かった」
「美味しかった!でもユーナ、お前なんかの施しは受けない!」 
「そりゃあ残念だな。だがお前は俺の小便を飲まないと死んじまう体って事を忘れてねぇか?」
「……し……ぬ……?」
「当たり前だろ、お前は俺の小便か精液を飲まねえと死んじまう奇病なんだ。しかしその両方とも大好物ってのがお前にとって不幸中の幸いだったな」
「でも、美味しいけど……飲まなきゃ死んじゃうけど……」

 ユーナは必死に考える。なにかおかしい。でもなにがおかしいのか分からない。もともと学が無く、頭もあまり良いとはいえないユーナは、なにをどう考えればいいのかも分からなかった。そしてレックスがその事を知っていたのがユーナにとって致命的だった。レックスは決定的な台詞を吐く。

「このまま死んじまったら、仲間の仇も討てねぇよなぁ。お前それでいいのか?」
「良くない!悔しいけど……殺したいけど、ユーナお前の飲む!」
「飲むってなにをだよ」
「……精液としょ、小便」
「お前精液ってなにか知ってるのか?」 
「知らない!」

 妙な自信を漲らせて答えるユーナに流石のレックスも一瞬呆然とする。

「くっ、くっ、そうか。精液なら今出そうだぜ。後学の為に飲んどくか?」
「分かった!さっさとユーナに精液飲ませろ!」
「さっきと同じ要領だ。チンポ咥えて今度は舌で舐め回せ、歯ァたてんじゃねぇぞ」

(皆ごめん、ユーナ精液飲まないと死んじゃう体だった。今はこいつの言う事聞くけど、全ては復讐の為。絶対にこいつは殺す。その後ユーナが死んじゃっても構わない)
 そんな事を考えながらレックスの陰茎におずおずと舌を伸ばす。言われた通り咥えた後舌で舐め回すが、その動きはテクニックなど欠片もない滅茶苦茶なものだった。
 レックスに特にロリコン趣味は無かったのでこんな若い女にフェラチオをさせるのは十代の頃以来だった。
 どうしていいのか分からない滅茶苦茶な舌の動きや、不安げにこちらを見上げてくる顔に嗜虐心をそそられる。
 レックスは自分が思ったより早く達しそうなのを感じていた。

「そのまま先っぽを舐めろ。上下になるべく早く、だ。右手はこうやってチンポをしごいてろ。左手はタマだ、柔らかく揉め」
「んっ、ぅんぁっ、ふうっ」

 みるみる口の中で大きくなっていく陰茎にユーナは明らかに慌てていた。今日この時まで勃起した剛直など見た事がなかったのだ。それでも<操作>の効果もあり、ユーナの体は与えられた指示を的確にこなしていた。

「そろそろ出るぞ、そのまま咥えて離すんじゃあねぇぞ」

 いい終わるやいなや、ユーナ口目掛けて大量の精子を放出する。

「んっ、こくっ、ごくっ!んぶっ、ごくっ、んぶぅっ、けふっ、けふっ、けふっ」

 かなりの分量を飲み込んだものの、後半は飲み込みきれず咳き込む。目に涙を浮かべ鼻から精液を零しながら、それでもユーナはどこかうっとりとした顔をしていた。

「これが精液ってやつだ。どうだった?」
「美味しい!こんな美味しいものユーナ飲んだ事無い!……お前の事は殺すけど、これ美味しい!」

 鼻から垂れてくる精子を美味そうに口に運ぶユーナを見ながら、レックスは冷淡な微笑を浮かべていた。

< 続く >

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