洗脳薬 後編

~後編~

「ふあぁあ」

 大欠伸をしながら俺は一階のリビングへ向かう。

 階段を下りる間、台所の方からカチャカチャという食器の音と共になんとも言えない良い匂いが漂ってくる。
 どこかほっとする懐かしさを持ったお味噌汁の香りと、玉子焼きの甘い香り。

 どうやら今朝は和食みたいだ。
 その香りを嗅ぎつけた腹の虫がぐぅと音を立てて餌をよこせと鳴き声をあげた。

「あら、おはよう樹君」

 朝食の準備をしていた香苗さんが俺の姿を見て、にっこりと微笑む。
 朝日のように爽やかで、柔らかい香苗さんの笑顔は、眠っていた頭をすっかり目覚めさせてくれる。

「おはようございます、香苗さん・・・・・・あれ? 歩ちゃんは?」
「少し前に起こしてはみたんですけど、また眠っているのかしら。あの娘朝が弱いから」

 そう言って苦笑を浮かべながら、エプロンを外した香苗さんはお玉を片手に歩の部屋へと出て行く。
 お玉は置いておいてもいいと思うんだが。まさか殴るわけでもないだろうし。

 俺は香苗さんが出て行くのを目で見送ると、椅子に座って並べられた朝食に目を向けた。

 テーブルの上には白い湯気を立てる純白の炊き立てご飯に、甘そうなカボチャの実が入った味噌汁、大根おろしが添えられた玉子焼き、おまけに香苗さんが漬けた自家製の胡瓜の漬物がセンスの良い小皿に添えられていて食欲をそそる。

 それから別の小皿に乗った、美味しいと有名なお取り寄せの、ついさっき炙られたばかりの海苔が磯の香りを漂わせている。
 朝食としては完璧なメニューだ。

 家政婦が家にいた頃はあまり朝食を取らずにいた俺だったが、香苗さんが来てからというもの朝食をきちんと取るようにと頑として譲らない彼女の手によって、朝にはきちんと腹の虫が鳴く体質へと改善させられてしまっていた。

「ふぁぁぁ・・・おはよー・・・お兄ちゃん・・・・・・」

 今日のメニューを確認して、二人を待つ間新聞でもと思い三つ目の記事に目を向けようとした丁度その時、パジャマ姿の歩が目を擦りながら降りてきた。

 背中を香苗さんに押されながらふらふらと歩き、ようやくの事で俺の隣に座った歩はまだ寝ぼけているらしく振り子のように頭を揺らしている。

「この娘ったら・・・樹さんの前で恥ずかしいでしょ? いい加減しゃんとなさい」
「ん~、お兄ちゃんの前だったら平気だもん」
「もう。仕方ない娘ねぇ・・・・・・ごめんなさいね樹さん。毎朝毎朝お見苦しくて」
「いえ構いませんよ。懐いて貰って嬉しいくらいですから」

 と、俺は手を伸ばして歩の寝癖の付いた頭を撫でた。

 頭を俺の手に包まれた歩は目を細めて、喉下をくすぐられる猫のように気持ち良さそうな声を出す。

 この家に来た頃では考えられない光景だ。

 すっかり実の兄弟のように打ち解けた俺達を見て、香苗さんは母親の顔で嬉しそうに微笑んだ。

「さぁ、冷めちゃうといけないから頂きましょう」
「はぁい。いただきますっ」

 なんと微笑ましい光景だろう。

 他の家庭のことは知らないが、話を聞く限りこれほど暖かな家庭はそうないだろうと思う。
 家族揃って朝食を取るヤツは今では珍しいらしいし。

「そういえば歩、昨晩も樹さんの部屋で遊ばせて貰っていたでしょう」
「うんっ」
「うん、じゃないの。樹さんも忙しいんだからあまり迷惑をかけちゃ駄目よ?」
「いや、全然迷惑じゃないですよ。俺も・・・・・・楽しんでますし」

 しかし、この中の人間は皆、醜悪な顔を隠した仮面を被っている。

 本性はどこかで潜んだまま巧妙に姿を隠しているが、顔を見せるのも時間の問題だ。

 きっかけがあればすぐにでもこの関係は崩壊してしまう。

 そして、いずれ崩壊するなら今にでも壊れてしまえば良い。

 心からそう思う。

 朝食を食べ終えると、制服に着替え学校へ行く準備を済ませた歩と一緒に玄関に立った。

 講義まではゆうに二時間以上間があったが、香苗には話さず学校まで歩を送るという良い兄を演じて揃って家を出る。

 そして玄関先まで見送りに出た香苗に二人で手を振り、仲良く歩き出して家が見えなくなった頃。

 俺は態度を変えて、歩に話し始めた。

「今日は分かってるな?」
「・・・・・・はいぃ」

 二人きりになると、歩は一転したように大人しくなる。

 だがそれは脅えているせいではなく、性的興奮を催しているせいだ。

 俺は並んで歩く歩の小さな尻に手を伸ばし、その膨らみを撫でてやった。

「はぁ、ぁぁん・・・んぅぅ・・・・・・」

 たったそれだけの事で歩はまたくすぐったそうな声を上げる。

 頭を撫でられた時とは違って、同じ猫でも今度は発情した猫が上げる声だ。

「こんなのが気持ち良いのか?」
「はいぃ・・・お股がむずむずして、はぁ・・・気持ち良いです・・・」

 顔を真っ赤に火照らせて、すっかり潤んだ瞳で歩が俺を見上げる。

 声に出さなくても、歩が何が言いたいのかは俺には良く分かる。

 お尻を撫でていた手の中指を尖らせると、衣服越しに歩のアナルに指を埋めていく。

 歩の拡張されたアナルはショーツとスカートをそのまま飲み込んで、ずぶずぶと指が沈んでいった。

「あ、ぁぁぁ、ん、ん・・・・・・指ぃ、いいですぅ・・・」

 甘えた声を上げて、身をくねらせる歩。

 もっと悶えさせてやろうと指を深く差し込もうとするが、第一関節を過ぎた辺りで指の先に硬いものが当たり、それ以上指が進まなくなる。

 その硬いものを強引に歩の肛内の奥へと押し込むと、一瞬だけ甲高い声を上げて歩の動きが止まった。

「イッたのか、豚?」
「ぁ・・・はぁ・・・あ、ぁぁぁ・・・はいぃぃ・・・イきましたぁ・・・」

 見ると内股がぷるぷる震えて、今にも膝から崩れ落ちそうになっている。

 笑いが零れそうだった。

 朝一番から、人目の付く通学路で卑猥な行為をしているなど誰が想像できるだろうか。

 それもこんな小さな子がアナルを弄くられてイってるなんて。

「あ、あ、お願い、します・・・・・・」

 熱っぽい吐息を吐きながら、虚ろな目で歩が俺に懇願する。

 開発されたいやらしい体が刺激に耐えられないのだ。

 だが俺は歩の願いとは逆に尻の穴から指を引き抜いた。

 残念そうな声を上げる歩を無視して、尻の穴に埋まった生地を引き抜き、背中を押して歩くように促す。

「こんな所でするつもりか?」
「で、でも・・・もう我慢できないんですぅ、んっ・・・アレをどうにかして欲しいんですぅ・・・」
「帰ってからだ。ちゃんと上手く出来たらご褒美をやる。だから・・・・・・分かってるな?」
「はいっ。頑張りますっ」

 快楽の虜となってしまった歩は、今股を開けといえばおそらく恥も外聞もなく言う通りにするだろう。

 身体の疼きを鎮めるため、いやそれでなくても昨日何でもすると快楽を与えながら約束させた。

 歩に与えた指示もごく簡単なもので、失敗はありえない。

 数時間後に果たされるであろう作戦の成功を想像した俺はほくそ笑んで、もじもじと内股をこすり付けて歩く歩の頭を撫でた。

「ねぇ、お母さん」

 夕方。

 買い物から帰ってきて、お茶を飲みながら一息つく香苗に急ぎ足で二階から降りてきた歩が声を掛ける。

 両手を後ろに回しているところを見ると、何か隠しているらしい。

 何か怒られるような事でもしてしまったのだろうか。

 点数の悪いテスト、それとも何か壊してしまったのか。
 もしかすると生き物を拾ってきた可能性もある。

 ここ最近では珍しく表情に影を作っているのに首を傾げながら、香苗が優しい口ぶりで歩に問いかけた。

「どうしたの歩? 後ろに持っているのはなぁに?」
「あゆ、お部屋で変なもの見つけたの」
「変なもの? 歩の部屋の中で?」
「うん・・・・・・これなの」

 得体の知れないものに戸惑う顔つきで、歩が出したものを見て香苗が絶句する。

 手にしたお気に入りのティーカップが机に落ちて割れてしまったのも気にせずに、表情を変えて椅子を蹴り上げた。

 戸島浩一郎の名前が表に記されたファイル。

 それは、香苗が血眼で捜し求めていたものだった。

「あ、歩、それをどこで見つけたのっ」
「あのね、あゆの部屋の一番大きなくまさんのぬいぐるみの中にあったの」
「くまの・・・ぬいぐるみ?」

 確かに歩の部屋の中には彼女の身長と同じくらいの大きなくまのぬいぐるみがあった。

 戸島家に来て間も無くの頃、樹が商店街の抽選で当てた景品だ。

 欲しかったのは2等のMPプレイヤーでぬいぐるみは自分には必要ないから、と欲しそうな目を向ける歩に快く譲り、義兄からの初めてのプレゼントという事もあって、それ以来ぬいぐるみは歩のお気に入りの品として自室に飾られている。

 ”くまちー”と密かに名前をつけ、話しかけている所をドアの隙間から見たこともある。

 歩には可哀相だが、その大きなぬいぐるみの綿を少し抜いて、中心にファイルを押し込めば残った綿が外部からの衝撃を全て吸収してしまう。

 硬いファイルが中に入っているとは言え、およそぬいぐるみをちょっとやそっと触ったくらいでは分からず、歩が見つけたのも全体重をかけて飛び付きでもしたからなのだろう。

 歩に発見されたのも偶然に近く、知っている人間でもない限り、大人にはけっして分からない場所だ。

 香苗にとってはまさに幸運だった。

「ね、ねぇ歩。お母さんにそれを見せてくれるかな?」
「うん。でも、これなぁに?」
「お母さんも分からないから、中身を見てみるの。ね、だから早くこっちに渡して?」

 あくまで冷静に、普段と変わらない母親としての優しい態度を見せながら香苗がそっと手を差し出した。

 しかしいくら取り繕っていても、香苗の様子がどこかおかしいことは幼い歩の目にも明らかだった。

 そしていつも同じ立ち居振る舞いを続けてきた香苗だからこそ、そんな些細な仕草の一つ一つが違和感を感じさせていた。

「さあ、歩」
「お母さん、なんだか恐い・・・・・・」

 萎縮して、ファイルを胸に抱きこんだ歩を見て香苗が見えないように歯を噛み締めた。

 焦燥感が湧き出し、ぎらぎらとした目を向けながら一歩、歩の下へと踏み出す。

 と、そのタイミングを見計らい、偶然を装いながら俺がリビングに顔を出した。

「何か割れる音がしましたけど、何かあったんですか?」
「・・・・・・・・・っ!?」

 俺の姿を目にした瞬間、ぴくっと香苗の体がたじろいだ。

 当然だ。

 幼い歩ならともかく、俺が歩の手にしたファイルを目にすればその全貌を知られるのは時間の問題。
 もしハイエナのように四六時中噂の匂いを嗅ぎ付きまわっているマスコミに公表でもされたら、核より恐ろしい武器を与えてしまう事になる。

 香苗の立場としてはそれだけは絶対に避けたい事であり、しかも運が悪く歩との位置は俺の方が圧倒的に近い。

「お兄ちゃん・・・」

 歩が何かを訴えかけるような目で、俺の方を見る。

「歩っ!!」

 俺にファイルを手渡そうとした歩に向かって思わず叫んでしまった香苗が俺を見て、しまったという顔をする。

 同じ家で過ごしながらも、絶えず優しい母の仮面を被り続けていた演技派の香苗らしくないミスだった。

「あ・・・あの・・・何でもないのよ樹さん。物音はちょっとカップを落としてしまっただけだから・・・・・・破片が飛び散ってるといけないわ。すぐに片付けてしまうから二階に上がってて?」
「・・・そうですね。じゃあ、歩ちゃんも」
「え、ええ。けど、歩には・・・その、少し話があるものですから」
「話? そういえば、さっきから大事そうに何を持ってるの?」

 さも今気付いたように小芝居を打ちながら、俺は歩の持つファイルに目を向けた。

 その最悪のパターンに香苗は皺が出来るくらいにギュッと服を握り締めた。

「これ・・・あゆの部屋の中で見つけたの・・・」

 事情を何も知らない歩が、手に持ったファイルを俺に差し出したとき、香苗の顔はいよいよ苦虫を噛み潰したようになっていた。

 奪い取る事は可能だが、それは水面に石を投げるように、これからの生活に大きな波紋を作る。

 だが事態を収める良い考えも浮かばなかったようで、ついに策略を練ることを諦めた香苗は短く嘆息すると、今までに聞いたことのない真剣な声で静かに言う。

「歩、少し二階に上がっていなさい」

 先ほどから見る、普段と違う母の様子に戸惑う歩は不安げな顔で俺の方を見る。

 歩からファイルを受け取った俺は、ここに歩がいる必要はなくむしろ邪魔で、香苗の意思を汲んだほうが良いと思い、歩に二階へ上がるように言う。

 沈んだ顔でとぼとぼとリビングから歩が出て行き、二階から扉を閉める音が聞こえたのを確認すると、香苗は微笑を口元に浮かべて俺に向かい合った。

 ここからが本気らしい。

「それを・・・渡していただけますか、樹さん?」
「戸島浩一郎・・・・・・表に父の名前が書いています」
「ええ。でもそれを樹さんが知る必要はありません。知ってはいけないものです。お願いですから、何も言わずこちらに早く渡してください」

口調も変わらず、表情も崩さない。

だけど二人の間の空気はピリピリと張り詰めている。

「・・・・・・ふぅ。まぁ、いいですよ。実はもう中身を知ってますし」

 その言葉を聞いて、香苗の目蓋がピクンと跳ねるのを俺は見逃さなかった。

 細い目の奥の眼光に一瞬だけ”素顔”が垣間見えたが、すぐにまた仮面を被り直した香苗はいつものように笑顔を浮かべて俺に優しい口調で話し始めた。

「そう、ですか。あの人を失ったばかりの樹さんには衝撃が強いだろうと思い・・・・・・出来る事ならこのままずっと隠しておきたかったのですが・・・」
「香苗さんの言う衝撃、というのは父が行ってきたことですか。それとも自分の正体のことですか?」
「そんな事まで・・・・・・いえ、そうですよね。確かに、私は政府の人間です。だけど、浩一郎さんとは本気で愛し合っていました。ですから彼の息子である樹さんを守る為にもそのファイルは私に処分させていただけないでしょうか?」

 口先と、態度と雰囲気と。

 もし先にファイルを読んでいなければ、胸に手を当てながら悲しそうに目を伏せる香苗さんに呑まれて大人しく言う事を聞いていたかもしれない。

 誰を信じるかなんて言うまでもない、と素直にファイルを手渡し、後日事故を装って消されてしまっていたに違いない。

 だが俺は香苗さんの巧みな弁舌を疑う事が出来る。

 飲み込まれないように気を引き締め、目に力を込めて言う。

「処分するのはファイルじゃなくて俺でしょう。・・・・・・・・・父と、同じように」

 その言葉を聞いて、香苗は言葉を詰まらせた。

 香苗の目的も、この家に来た理由も、父にした事も全て俺に知られていると理解した。

 そして耳に何か、そう張り詰めた糸のようなものが切れる音を俺は確かに聞いた。

「いい加減・・・・・・・・・・・・殺しますよ?」

 ぞっとするような冷たい声で答えると、香苗は温和な笑顔を無機質な表情に変えて俺を見た。

 顔はじっと俺に向けたまま、テーブルの上の割れたティーカップの破片を拾い上げた香苗は、その尖った先端を自分の指に押し付けて傷を作った。

 ぷくっと浮き出た血の塊が、白い指先に筋をつけて流れ落ちていく。
 逆らえば次は、という事だろう。

「威嚇ですか?」
「ええ、そうですよ」
「そんなもので俺を殺したら、いくらなんでも歩ちゃんだって何が起きたか理解できるでしょう」
「その記憶を操作するための薬じゃないですか。・・・ところでそのファイルの中身、誰かに話したりしました?」
「さぁ。話したような、そうでないような」
「うふふ。大人をからかうのも大概になさいね樹さん。聞き分けのない子供って、本当に嫌いなんですよ私」
「その大人が、子供に脅しをかけて恥ずかしくないですか?」

 部屋の中の気温が下がったと錯覚してしまうように、体の体温が奪われるようだった。

 俺の挑発を受けて仮面を外した香苗はそれほどまでに冷たい目をしていた。

「そう。そこまで言うならお互い腹を割って話しましょう?」
「あはは、まさか。話し合いなんて必要ないですよ」
「あ、そ。折角”仲の良い”親子の最後の会話を楽しませてあげようと思ったのに・・・・・・」

 ネズミを追い詰めた猫のような尖った目をして、陶器の破片を手にした香苗の足が床を蹴り上げようと、動いた瞬間。

「動かないで下さいね」

 そう言った俺の言葉に、香苗の体は魔法をかけられた様に動かなくなる。

「凄い薬ですよね。少量を摂取するだけで無意識の内にこんなにも被暗示性が高まるなんて。あなたの属する組織が欲しがるのも無理はありませんよ」
「か、体が・・・・・・摂取・・・何で・・・?」

 眉をひそめて戸惑う香苗に、自分から近づきながら俺は説明を続ける。

 優雅に、歌うように。

「実はあのポットの中に薬を混ぜていたんですよ。だからそのお湯を飲んだ人間は自動的に薬を摂取してしまうことになるんですよね」
「お湯・・・」

 はっとした顔でテーブルに零れた紅茶を見て、香苗は悔しそうな顔をする。

 俺が見る顔は笑顔か泣き顔だけだった事を考えると今の香苗はなんと多彩な感情を浮かべる事だろう。

「私に何をするつもりなの・・・・・・言っておいてあげるけど、馬鹿な考えは持たない方が良いわよ。私に異変が起きたら仲間がすぐにでもこの家に押しかけるようになっているのよ」

 キッと俺を睨み付ける香苗の眼前に、ポケットから取り出した小さな注射器を突き出す。

 中身は俺の元に残された粉末を溶かした高濃度の洗脳薬だ。

「何かあったらと言うことは、何も無ければ俺には害はないってことですよね」
「・・・・・・何も、無ければ・・・・・・ま、まさか貴方」
「これから貴女という人間を作り変えてあげますよ・・・・・・どういう事かはもう言わなくても良いですよね?」
「や、止めなさいっ。それがどんなに危険なものか、ファイルを読んだなら分かっているんでしょうっ!?」
「だから、ですよ」

 青ざめた顔で俺を見る香苗の腕を取り、悠然とした手つきで尖った注射器の先端を近づける。

「ひぃっ」

 短い悲鳴を上げた香苗は必死に逃げようとするが、体は暗示通り金縛りに遭ったみたいに動かない。

 しかしなまじ意識がはっきりしているだけに、感じる恐怖が普通より強いのが不幸だった。

「や、止めなさい・・・やめ、嫌ぁ、止めて、止めてぇっ」

 この薬がどれほど強力なものか知っている香苗だけに、体は石像の様に硬直しているものの残された声での抵抗は激しい。

 だが、俺は不敵な笑みを浮かべたまま、香苗の腕を手に取り、無慈悲にも針をその柔肌に突き立てた。

 顔面が蒼白になり、脅え混乱する香苗の顔を十分鑑賞してから、少しでも恐怖が長引くようにとゆっくりとした手つきでピストンに親指を置いた。

 そしてピストンを押して悪魔の薬を香苗の体に注入する頃、もう香苗はまともな言葉を出せず、口から出るのは意味を成さない搾り出すような呻き声だけだった。

 歩で試した時もそうだったが、この薬は体内に吸収されてほんの数十秒で効果が現れる。

 薬が体を蝕む苦しみの声を上げていると思えば、次の瞬間にはプツッと糸が切れたように体から力が抜けて生気が身体から消えていく。

 経験から、予め抱きかかえていた香苗の体が少しだけ重くなったように感じる。

 意識がなくなった証拠だ。

 これなら次の段階に踏み出しても大丈夫。

 俺は香苗の頭を膝の上に乗せ、改めて大人しくなった香苗の顔を見つめた。

 まるで感情を失ってしまったかのような顔、僅かに開かれた目蓋から覗く虚ろな目は俺の顔に向けられているが、認識はしていない。

 人形のようになってしまった美しい香苗の顔を見るとそれだけで欲情してしまいそうだった。

「貴女が戸島の家に入り込んだ目的は何ですか?」

 この薬は人間の深層心理を引きずり出す効果があるために、効果が持続している間は自白剤の代わりにもなるらしい。

 俺の問いかけに、香苗が機械の様に抑揚のない声で答え始めた。

「研究所から・・・持ち出された日誌を・・・見つける為・・・。必要なら・・・戸島家の人間を殺害する・・・」
「じゃあ貴女は政府の人間ですか?」
「・・・はい」
「戸島浩一郎を殺したのは何故ですか?」
「完成した薬を・・・彼が奪い去った疑惑がわいた・・・から。日誌さえ見つかれば・・・薬は作れる・・・」

 なるほど。
 ということはファイルに付けられていた薬以外にはこの世に存在しないという事になる。

 考えてみれば他にあるのなら父を洗脳して手駒するなりしたほうが利益になるのだから、殺した時点でそれを疑うべきだった。

「もし、戸島樹がファイルの存在を知っていたら殺していたんですね?」
「・・・はい」

 仮面を剥ぎ取られた、心からの本音。

 ずき、と胸が痛み口が勝手に開いた。

 馬鹿、止めろ。

 その先はお前が傷つくだけだろ。

「・・・・・・躊躇いは、ないんですか?」
「・・・ありません」

 あまりに愚かなな質問をした、と思った。

 答えを聞く前に分かっていたはずなのに、それでも聞かずにいられなかった。
 自分で傷口にナイフを突き立てて肉を抉っただけだ。

 だけど、知らず知らずに募らせていた母への想いがこんなに強かったなんて思いもしなかったんだ。

「・・・・・・っ」

 熱くなる目頭を堪えて、頭の中で渦巻く”邪念”を払拭する。

 もう、決めたことだ。
 後戻りは出来ない。

 この人は母親なんかじゃない。
 もう俺には家族はいない。

 そうだ。
 迷いは、ない。

「戸島樹は貴女の実の子供です」
「・・・樹・・・はい。子供、です」
「戸島樹は愛しい息子」
「・・・愛しい・・・です」
「そして貴女は政府の人間ではなく、一般的な主婦です。政府の人間であった時の記憶は一旦どこかに置いてきましょう」
「・・・はい。置いてきます・・・私は、主婦」

 まるで催眠術をかけるようなやり取り。

 だが洗脳薬で引き出した意識化に訴える強制力は比べ物にならないくらいに強い。

 言葉はそのまま記憶となり、頭の中身を本人の意思とは関係なく作り変えてしまう。

「樹と歩、二人が仲良くすることは貴女にとってとても幸せな事だ」
「はい・・・幸せ、です」
「たとえ二人がどんな行為をしていても、それが二人の仲を深めるなら貴女は疑問に思いません」
「疑問に・・・・・・思いません」
「そして、貴女との仲を深める為でも同じく、どんな事でも貴女は嬉しく感じます」
「はい・・・・・・仲を深める・・・・・・嬉しい、です」

 とりあえずはこれで良いだろう。

 香苗を手中に収め、滞りなく記憶の操作も完了し、俺の頭のもやもやも晴れてくる。

 これが俺の本性なんだ。

「おっと・・・忘れてた」

 最後にもう一つだけ植えつけておく事にする。

「香苗さん、貴女は―――――――――」

「ご飯まだ?」

 肉の焼ける香ばしい香りが立ち上る台所に顔を覗かせて、尋ねる。

「ふふ。もうすぐ出来るから歩も呼んで来て?」

 フライパン片手に振り返った香苗の顔は晴々としていて、言葉遣いもどこか他人行儀なものではなく歩と話す時と同じである。

「了解」

 歩を呼びに消えていく姿を見送ると、香苗はフライパンで炒めていた生姜焼きを鼻歌交じりに皿へ盛り付けていく。

 今日はいつにもなく頭がすっきりして、清々しい気分だった。

「あら・・・?」

 いつの間にか自分の指に巻かれた絆創膏を目にして、少し頭の片隅にしこりができたが、その些細な疑問も煮立ち始めたスープの音ですぐに掻き消された。

 コンソメの良い香りが漂う付け合せのスープも程よく煮えたようで、鍋が噴いてしまわないうちにコンロのスイッチを切って器に注ぐ。

 これで料理は全て出来上がった。

「さて、と・・・」

 香苗はエプロンを台の上に畳んで置くと、また歌を口ずさんで出来上がった料理を隣のリビングへ運ぶ。

 丁度テーブルの上に料理が並び揃った頃、階段を降りる小さな音が響いてきた。

 目を閉じてその音を察する所、その足取りは歩に間違いない。

 箸を並べ、コップにお茶を入れていると、案の定小さな影がリビングにひょっこりと顔を出した。

「あー、いっぱい動いたからお腹すいちゃった」

 呑気な声を上げながら部屋に入ってくる歩の姿を見て、香苗は夕食の準備をしている手を止めた。

 顔こそ歩が本来持つあどけない天使のような純粋な笑顔だったが、体は布一枚も身に付けていない、おおよそ食事の場には相応しくない姿だ。

「歩・・・・・・手は洗ってきたの?」

 だが香苗には歩の姿に違和感を感じた様子はなく、普段と変わらぬ素振りで歩と話をする。

「あ、いけない。すぐ洗ってくるね」
「ふふ、また樹と二人で遊んでいたの?」
「うん・・・あは・・・ほら見てお母さん・・・あゆのくっさいケツ穴の中」

 歩はそう言いながら大股で、腸液が漏れ出しっぱなしの緩みきったアナルを手で開いて香苗に中を見せた。

 開いたアナルの中はテニスボールほどの大きさの丸い球に埋め尽くされ、その球にくっついたピンクの細い紐が肛門の外へと垂れ落ちてぷらぷらと揺れる。

 しかしそんな壊れた娘を見ても、香苗は平然として変わらず笑顔を浮かべて食事の用意をしている。

「そう。樹に入れてもらったの、それ?」
「うんっ。お尻がみりみりっていって、はぁ、はぁ・・・すっごく気持ち良いんだよ。あゆ何度も豚さんみたいな声出してイっちゃって・・・ほら、乳首がたったまま元に戻んないの」
「良かったわね。きっと出す時もお尻が裂けちゃうくらい気持ち良いわよ」
「あはっ・・・そんな事言われたら、あゆまた体がじんじんしちゃうよぉ」
「うふふ。そうね、御免なさい」

 そんな和やかな二人の会話に聞き耳を立てていた俺は、微笑を浮かべながらリビングに顔を出した。

「何、何の話?」
「何でもないのよ。樹はいいお兄ちゃんねって言ってただけよ。ね、歩?」
「うんっ。あゆこんなお兄ちゃんがいて幸せ・・・大好きっ」

 そう言いながら歩は俺の体に飛びついてくる。

 仲睦まじい兄妹の姿を見て、香苗も幸せそうに目を細めている。

 俺は歩の体を抱きしめながら、尻尾のようにお尻から伸びた紐を引く。

「んああっ・・・ぁ、あっ・・・駄目ぇ、せっかくまた中に入れたのに、んっ、外に出ちゃうよぉ、ああっ」
「出たらまた入れてやるよ」
「本、当っ? うれしい・・・ひぃあああっ、あ、あぎっ、ぎぃぃっ」

 力を込めて紐を引くと、みちみちと音を立てて歩の尻の穴が膨らみ始めた。

 歩もただ与えられる快楽に酔うだけではなく、喘ぎながらも排泄物をひり出す時のように息む。

 そうしたほうがもっと気持ち良くなれることを知っているのだ。

「あ、あ゛あ、お゛っ・・・・・・お尻が壊れちゃう、んぎぃぃっ」

 二人の共同作業の結果、ようやく球状の白い塊の表面が外気へと晒されるまでに引き出された。

 だが知っての通り、球は中心に行くにつれて大きくなる。

 先端だけ抜けたとしても、まだまだ愉悦の時間は続く。

 陶酔した目で、喘ぐ歩を喜ばせようとますます力を込めて紐を引っ張ると、小さな体は激しい電撃を浴びているみたいに大きく震え始めた。

 苦しみが混じった声が大きくなり、みしっと不気味な音を立てて肛穴が拡がりだす。

「ぐひゃぁぁぁあっ、あ、おじりっ、あ、んおおおっ・・・おじり壊れ、るっ、ぎもぢよくて、壊れるぅっ、ひぎゃうううっ」

 ボールの中心が入り口に引っかかり、ぐいぐいと紐を引くたびに歩は幼い体を震わせて絶頂を迎える。

 この辺が頃合だろう。

 そう思った俺は紐を強く握り締めて、全力で引く。

 壊れる一歩手前まで開いたアナルから、ぐぽおっと激しい水音と共にボールが抜け落ちて、歩の体は踊り狂ったように激しく跳ねる。

「ぎひぃぃっ、ん゛ぁぁっ、ああああああっ・・・・・・あ、あはっ・・・あへ、へ・・・・・・」

 完全にイッた目で涙や鼻汁でぐちゃぐちゃになった顔を狂気の笑みで染めた歩は、そのまま膝から崩れ落ちた。

 脳がショートしてしまったみたいに満ち足りたようなアクメ顔を浮かべたまま、気を失って床に倒れこむ歩を見て、香苗が困ったような顔で溜息を吐いた。

「仲が良いのは良いけど、ご飯冷めちゃうわよ?」
「冷めても美味しいから大丈夫だよ・・・それより」

 俺は台所へ向かおうとする香苗の側まで近づくと、その体を後ろからいきなり抱きしめた。

 柔らかい肌。
 鼻に当たる艶やかな黒髪からはシャンプーの良い香りが漂う。
 そしてうなじは白く、しゃぶりつきたくなるほどに俺を誘惑しているように見えた。

「あん・・・どうしたの、樹」
「急に恋しくなっただけだよ」
「ふふ。もう、仕方のない子ねぇ」

 自分より体の大きな男に抱き締められても、香苗は嫌がる仕草を一つも見せずにただ為すがままになる。

 慈愛に満ちた顔で、ふわふわとした胸を揉みしだく俺の手に自分の手を添えたまま大人しくしている。
 手に力を込めなくても形が変わるほどに柔らかく大きな胸を思う存分弄ぶのが愉しくて仕方がない。

 そして、俺はそんな香苗の耳元で一言だけそっと囁いた。

「シアワセノクスリ」

 意味不可解な俺の言葉に反応して、香苗の端整な眉が一瞬跳ね上がった。

 そしてそれを機に、にこやかにしながら好き放題俺に体を弄られていた香苗の表情が見る見るうちに強張っていく。

「なっ・・・に・・・」

 だが俺はお構い無しに香苗の胸に手を埋めて、ぐにぐにと捏ね繰り回す。

「あ・・・な、何をしているの・・・止めなさいっ」
「えぇ? そんな口調だけ強く言っても怖くないですよ、香苗さん」
「・・・くぅっ」
「それより、薬の効き目はどうでしたか?」
「・・・自分が被験者になるなんて思いもしなかったけど、効果は認めるわ。だけど、貴方が自由にして良いものじゃないって分かったでしょう?」
「分かりませんね。逆に俺は身を守る為に必要なものだと再認識しましたよ」
「・・・・・・いいわ、貴方に手を出さない事を誓うわ。組織にも手は出させない。約束するわ。だから、残った薬とあのファイルを渡しなさい」
「まだ自分がどういう立場なのか分からないんですか?」
「ふざけないでっ。歩にした事だって、今なら子供のした事だと胸の内に・・・」

 これほど立場を悪くしても優位に立とうとする香苗に冷笑を浴びせると、俺は香苗の体を突き飛ばした。

「ぐっ・・・何を・・・」

 俺に背中を押され、床に突っ伏した香苗の体はお尻が高く持ち上がった卑猥なポーズとなって、目の前にはでかでかと張りのあるヒップが晒される。

 そんな恥辱的な姿勢に顔を赤らめながら、香苗が俺をキツく睨みつける。

「すいぶんいやらしいお尻ですね。こんなに高く突き上げて恥ずかしくないんですか?」
「それは貴方がっ・・・すぐに体を自由にしなさいっ」

 香苗の叫びを心地よいBGMにしながら、俺は香苗のスカートを捲り上げた。

 思わず息を飲んでしまいそうな、布で隠されていた大人の色気が詰まった美尻を両手で掴む。

「止め・・・なさいっ。何をしているのか分かってるのっ」
「分かってますよ。・・・へぇ、相手もいないのに紫なんて派手な色の下着を付けてるんですか」
「黙りなさ・・・んぁぁっ」

 ぷっくりと膨れ上がった大陰唇を指でなぞると、自ら出した悩ましい声に反駁は掻き消されてしまう。

 色っぽい声だと思った。

 歩の嗜虐心を満たすような喘ぎ声とは違い、脳幹を直接刺激し、耳にまとわりつくような艶やかな声に、ペニスが熱く反応する。

「久しぶりだから、感じやすくなってるんですか?」
「う、うるさ・・・ん、んんっ・・・はぁっ・・・触らないでっ」
「そんなに嫌なんですか?」
「当たり前でしょうっ、ふぁあ・・・ひぃ、んっ」
「それじゃあ・・・・・・ユメミルクスリ」

 人格の転換を示すキーワードと共に、一瞬にして香苗本来の人格は意識化に押し込まれ、偽りの人格が表へ出る。

 本来の香苗が心の底で自分の行動を観察しているのとは逆に、穏やかな母を演じる人格は眠っている時の記憶を持たない。

 ぱちくり、と視線を漂わせ状況を理解しようとする香苗が、あろう事か”母”である自分の大事な部分に手を伸ばす光景を目にした。

「樹・・・?」

 意識がまだ少し混濁していて、疑問の声を投げかける香苗の割れ筋に指を差し込んだ。

「ん、んぁぁっ・・・い、樹・・・どうしたの、あ、ぁっ・・・?」
「変かな?」
「そ、それは・・・ぁ、ん・・・私は樹の母親だから・・・ふぅんっ、どうして、こんな事を・・・」
「体を合わせたら仲が良くなるらしいって聞いたからさ。どうしても嫌なら止めるけど?」

 仲が良くなる。

 その言葉で香苗の表情がふっと緩んだ。
 今この瞬間から、俺の行為は香苗にとっては当たり前で、嬉しく感じるように認識されたのだ。

「ううん・・・んくっ・・・いいの。樹がそんな事考えてくれているなんて・・・」
「じゃあ、こんな事をしたら?」

 邪悪な感情を表に出す事無く、とぼけた風に俺は香苗の下着をずり下ろした。

 しかし、性的な行為目当てのその行動も香苗は微笑んで容認する。

 まじまじと穴が開くほどに見つめられても嫌悪感は感じない。
 息子との仲が深まる事がむしろ好意を持って感じられる。

 俺は香苗の剥き出しになった秘部を目にして、思わず唾を飲み込んだ。

 歩のとも、俺が付き合った彼女のものとも違って、香苗のそこは少し色が沈殿して、濃い毛に隠されている。

 男と交わり子供を産んだ事で、大陰唇が開き、変形したそこは熟れた卑猥な形をしている。
 成熟した大人の女の女性器がこれほど官能的な形に歪んでしまうとは思ってもいなかった。
 中はどんな具合だろう。そう考えると早くこのいやらしい肉を試してみたいと体が疼いた。

「ここから俺と歩が産まれたの?」
「え、ええ・・・んっ・・・ふぅ、ん・・・そう、よ・・・そこから二人が、産まれたの・・・」
「・・・そう」

 そんな事あるはずないのに、と笑いを誤魔化すようにして俺は縮れた毛に覆われた淫部に舌を伸ばした。

「あ・・・あ、はぅ・・・どうしたの、樹?」
「もっと喜ばせてあげようと思ってさ。・・・嬉しい?」
「はぁ、あ・・・あ・・・樹は本当に優しい子ね、んっ・・・お母さん、嬉しいわ・・・あぁっ」

 相手を気遣うように舌先でクリトリスを突き、体を喜ばせる。

 大陰唇に舌を割り込ませ、ピンクの粘膜を刺激し、零れだした愛液を啜る。

 まるで恋人同士のようだった。

「セックスしようよ」
「セックス・・・・・・ええ、いいわ。お母さんとセックスしましょう」

 異常な会話だ。

 熱心な信仰家が聞けば卒倒しそうな内容も今の香苗には何の疑問にも感じられない。

 この会話を聞いている”香苗”は今どう思っているのだろうか。

 泣き叫び、頭を振って悲痛な声を漏らしているかも知れない。

「ぁぁ・・・樹の、おちんちん・・・いつの間にそんなに立派に・・・・・・」

 今の香苗がこれから自分の中に入り、喜ばせるペニスを見て喉を振るわせた。

 久しぶりのセックスが楽しみなのだろうか。

 それなら期待に沿えるようにたっぷりと喜ばせてあげないといけないな。

 しとどに濡れる膣穴に亀頭を宛がい、ゆっくりと少しずつ先端を女体の中へと潜り込ませる。

「うっ・・・・・・」 

 今まで感じたことのない感触に口から勝手に声が漏れた。

 ザラザラと、無数の襞が男性器に吸い付いて離れない、出会った事のない極上の名器だった。

 一人の子供を産んだとは思えない締まりも加わって、ぐにぐにと甘美な刺激を与える肉壷は病み付きになりそうな中毒性を持っている。

「ん、はぐぅっ」

 少し動いただけで声を漏らす所、感度も十分。

 数日間休まずに交わり合えばお互い肉の虜になってしまいそうだと思った。

 ずぶ、ずぶぶぶぶぶぶ。

 肉棒を埋め、根元まで肉襞の感触を満喫したところで本番が始まる。

 手はしっかりと香苗のくびれた腰を掴んで固定し、絡み付く膣壁から名残惜しくペニスを抜き、今度は勢いをつけて女性器に打ち付けた。

 腹筋に力を込めて、リズム良く腰を振りたくる。

「あっあっ、あっ、あんっ、っく・・・い、いきなり、激しいっ、ひあああああっ、駄目っ、感じすぎ、ちゃう・・・もっとゆっくり、んあっ、あっ、あっ」
「ふふ。シアワセノクスリ」
「――――――くぁぁあああっ、ああっ・・・・・・嫌ぁっ、んっ、ぬ、抜いてぇぇええっ」
「抜いて? どうしてですか、香苗さん」
「ひぁぁぁっ、あっ、ああ、んくぅ・・・こ、この・・・大人しく言う事を・・・はぁっ」
「ユメミルクスリ」

 電灯のスイッチを切り替えるように人格が、感情が入れ替わる。

 母は淫売のように大きな尻を振り、義母は火照る体を抑えながら苦悶の声を上げて支配された体を動かす。

 その対照的な反応が、目の前の牝を支配した気分にさせて、興奮する。

「シアワセノクスリ」
「んああっ・・・はぅっ、や、止め・・・」
「ユメミルクスリ」
「あああっ・・・い、樹っ、もっと、ふああっ、突いてぇっ」
「シアワセノクスリ」
「ひぃぃぃぃぃっ」

 人格の切り替えの連続で、二種類の喘ぎ声が部屋の中に響き渡る。

 偽者の人格が感じる、息子と繋がる嬉しい気持ち。

 全ての記憶を持った香苗がその偽りの感情を整理する余裕もなく、幸福感だけが胸に植えつけられていく。
 犯され、蹂躙されているはずなのに、どこかセックスを楽しもうとしている自分が現れ始めたことが何よりも香苗を戸惑わせた。

「ユメミルクスリ」
「あぁっ、気持ち良いっ、あ、あああっ・・・久しぶり、だから・・・樹、もっと・・・いっぱい、お母さんのいやらしいマン肉突いてっ、串刺しにしてぇぇっ」
「シアワセノクスリ」
「んぁあああああああああっ、ち、違う・・・違うぅぅ・・・ひぃっ、こんなの私じゃないぃっ、私、そんなこと思ってない、あふっ、はぁっ」
「ユメミルクスリ」
「い、いいのっ・・・ぐちゃぐちゃしてぇっ、あああっ、いいっ、いいぃっ、すっごく、感じるぅっ」

 幸せから、絶望へ変わるはずのサイクルに歪が生じてくる。

 沸き立つ幸福感と、体が痺れるほどの快感に身を包まれ、香苗の理性は溶け始めた。

 ただ頭を振って自分の気持ちを否定する事で精一杯な為に、本当は自分がどれほどしまりのない、緩んだ顔をしてよがっているのか、俺の動きに合わせて自発的に腰を振っているのかも気付いてはいまい。

「シアワセノクスリ」
「あ、おおっ・・・ひ、いい・・・気持ちいぃ・・・あぁっ、違うぅぅ、こんなっ、気持ちよくなんか」
「ユメミルクスリ」
「あ、あぁぁ、あああああっ、子宮が、びりびりするっ、おちんちん、硬くて・・・気持ち良いっ」

 パンパンッと音を立てながら肉を打ち合わせ、香苗は生き生きとして淫語を口にしていた。

 淫乱極まりないその姿に今はまだ泣きながら首を振るが、淫豆を弄くられると膣は正直に反応する。

 いま自分はどっちの人格なのか。

 意識を保とうと歯を食いしばってみせても、太いペニスに蹂躙され、球袋が鞭のように尻を叩き、女としての喜びが頭を痺れさせる。

 また人格が入れ替わったのか、そうでないのか。

 分からないまま気がつくと我慢は決壊して香苗の口からは素直な言葉が溢れ出していた。

「シアワセノクスリ」
「感じるぅっ、い、樹ぃっ・・・もっと、んはぁっ、気持ち良いぃ」

 俺を樹と呼んで喘ぐ香苗はもう自分がどちらの人格なのか分からなくなってしまっているらしい。

 身体が求めるままに快楽を貪り、楽しむ事を優先した。

 快楽に酔いきった香苗の締め付けが急に良くなり、射精感が波のように押し寄せる。

「そんなに強く締め付けられたら・・・ぐっ、もうっ」
「い、イクっ・・・私も、ひぃいぃっ、もうだめぇっ、イク、イクっ、イクぅぅぅっ」

 きゅうぅぅっと締まる膣壁にペニスを圧迫されて、堪らず俺は香苗のお尻に腰を押し付けた。

 最奥目掛けてドクッ、ドクッと熱い精を放つ。

 目が眩んで、気を失ってしまいそうなほど激しい射精感だった。

 今までで一番気持ち良い。

「あぁぁぁぁ、精液ぃっ、子宮に入るぅぅっ、あ、ぅあ、熱い、子宮が、溶けるぅぅっ」

 一滴も外へ零すまい、と香苗の腰を掴み体を密着させる。

 精子が子宮口を叩いている間、香苗は必死に唇を噛み締めて耐え、こちらも子宮に注ぎ込まれる精液を一滴も逃すまいと締め付ける。

 そして全て出し尽くした後、それまでの激しい動きが嘘のように香苗は静かに床に崩れ落ちた。

 軽く気を失っても、絶頂を迎えた膣肉が弛緩し、達したばかりのペニスに心地よい微刺激を与えてくれる。

 その感触を楽しみながら、俺は我を失って無防備なイキ顔を晒す香苗を見た。

 残酷な本性を知り、犯しぬいた一人の女性。

 もう憧れも思慕もない。

 俺は柔肉からペニスを抜き、香苗のスカートで粘液を拭うと”香苗”に対する最後の言葉を放つ。

「ユメミルクスリ」
「・・・ぁ・・・ぁ・・・」

 再びキーワードを受け、香苗の人格が消える。

 汚辱を受けながら快感に咽び泣いていた香苗ではなく、また穏やかな母としての人格が表面に現れる。

 愛する息子との交尾を終えて、満ち足りた表情で幸せそうにしながら呼吸を整えている。

「さあ、また記憶を変えてあげるよ。手を出して」
「ん、ふ・・・・・・こう?」

 余韻に浸ったまま、俺の指示に従って香苗が腕を突き出した。

 意識化に沈んだ香苗も快楽の余韻で、自分が何をしているか理解できていないだろう。

 さよなら、初めてのお母さん。

 そして、こんにちは。

 愛しい―――――。

エピローグ

「ただいま」

 長時間の講義の疲れを長い溜息で誤魔化して、俺は靴を脱ぎ散らかした。

 どうせ後で勝手に整えるのだから、わざわざ自分の手で片付ける必要はない。
 靴のことよりもまず、ストレスを発散したかった。

「・・・・・・お帰りなさいませ」

 目線を下げると、玄関のマットの上にはいつものように香苗が三つ指をついて俺を出迎えている。

 ただし服らしい服は着ておらず、ただ素肌の上に一枚純白のエプロンを付けているだけ。

 だからふくよかな乳房が作る谷間もはっきりと見え、香苗がもう少しでも顔を上げたなら尖ったいやらしい乳首も顔を出すだろう。

 前はまだなんとか隠れているだけましで、後ろはむき出しになった美しい背中のラインも、むっちりとふくらんだ魅惑のヒップも丸見えだった。

 それでも香苗は恥らう事無く、それが当然と言ったように変態的な姿を義理の息子に惜しげなく見せ付けている。

「・・・ふん」

 すっかり従順になった義母を冷たい目で一瞥すると、その真っ白な背中を強く踏みつけた。

「あぁぁぁ・・・・・・はぁぁぁぁ・・・・・・」

 しかし踏み潰されて、床に顔を押し付けられても香苗の口から漏れるのは悦びの吐息だった。

 俺は嬉しそうに目を細める香苗を見ながら、背中に乗った足に体重をかけて痛みを与える。

 形の良い豊乳がグッと力を込める度にぐにゃりと形を変えて潰れ、香苗の官能的な声に一層の艶がかかる。

「嬉しいのか?」
「はい、御主人様に踏みつけられて・・・あぁぁ、この上ない喜びが身を包んでいます」

 香苗の言葉に嘘は無く、屈辱的な台詞を吐く香苗の頬に赤みがさした。

 俺は喜びの声を上げる香苗の背中から足をどけると、爪先で横腹を突き立つように促した。

「変わった事は?」
「あ、はい。向こうから連絡がありましたので、いつものように報告しておきました」

 俺はあの日から少しずつ香苗の記憶を改竄し続けていた。

 俺の事を血を分けた実の息子と認識させながらも、体と心は俺を崇拝する奴隷として毎日毎日少しずつ記憶を塗り変えた。

 俺の身の回りの世話をする時、そして組織から俺の身を守る時は母のように強く優しく。

 それ以外の時は俺の性処理を生きがいとする淫靡な肉奴隷として。

 何度も調整して少しでも気に入らない部分があればその都度作り変えて、完璧と思える出来まで質を上げた。

 そしてそれと同時に、男を受け入れなくなって久しい熟れた体を俺好みに開発していった。

 毎日濃い精液を受け続けた体は丸みを帯びて、熟れた秘裂はいつでも俺のものを咥え込めるように常にてらてらと濡れている。

 気を失うほどの快楽を毎日与え続けてやった体は、今ではむんむんと色気を放つようになって、香苗の目の奥にはいつも静かに情欲の火が爛々と輝くようになった。

 フェラチオも仕込んだし、あと特筆すべき部分をあげるなら、いつまでも取れる気配のない腕の絆創膏くらいだろうか。

 俺は剥き出しになった重量感溢れるヒップを欲望のまま鷲掴みにする。

「あ、んっ・・・」

 肉厚のある尻を思うがままに掴み、爪を立て、捏ね繰り回す。

 その刺激に打ち震える香苗は、うっとりとした目を向けて美貌を俺の顔に近づけた。

 艶っぽい湿った唇が、俺の耳たぶに触れる。

 ちろちろと蛇のように香苗の舌が耳をくすぐるたびに背筋に淡い痺れが走り、淫猥な空気に身が包まれるようだった。

 張りのある尻を弄んでいた手を下げ、湯気が立つほど熱を持ったヴァギナに指を運ぶ。

 くちゅっ。

「ん、はぁぁ・・・ぁ、あ・・・ぁんっ」

 耳元でダイレクトに響く甘い吐息や、ねちゃねちゃといやらしい唾液の音を聞くと脳が蕩けたようで、俺の体も興奮し始めてきた。

 発情した香苗の熱に侵されたようで、突き入れた二本の指を欲望のままに掻き混ぜる。

 ぐちゃぐちゃと音を立てるヴァギナから飛び散る愛液の飛沫が俺の指を濡らし、香苗の半裸の体がもどかしく動く。

 指を鉤状に曲げて、膣口から三センチ奥の香苗の弱い部分を擦ってやるともう堪らない。

 今にも腰を抜かしそうなほどに足を震わせて、弾力のある胸を俺の体に押し付けながら香苗が俺にしがみ付いてくる。

「ひぃ・・・ぃ、あぁっ・・・御主人様ぁ・・・そこは、ああ、お許し下さいっ・・・」
「そこっていうのはここの事か?」
「ああっ、ちが、はぁ、んぁっ・・・そこじゃ、意地悪しないで、あ、でもっ、そこも気持ち良いですっ」
「止めて欲しいんじゃないのか?」
「あ、あああっ、も、もうしわけ、ありませんっ、下さい、お慈悲をっ・・・・・・んはあああああっ、そ、そこですっ、そこが一番感じますっ」

 声の質が変わった部分を重心的に指で強く擦り付けてやると、香苗は声のトーンを上げながら俺の首筋に舌を這わせ始めた。

 むせ返るような淫臭が鼻を付き、手首まで垂れた愛液が糸を引いて床へ落ちる。

「イきそうなのか?」
「あぁ、はい・・・んちゅ、んん・・・ああっ・・・ん、もう、我慢できません・・・イってしまいそうです・・・ひっ、んあっ」
「じゃあ、激しくしてやるよ」

 絶頂間近の嬌声を耳元で聞きながら、俺は指を鉤状にしたまま激しく出し入れする。

 掻き出された透明な粘液が俺のズボンに飛び散ろうが、床に飛散しようがお構い無しだ。

「ひっ、ひぁ・・・あ、ぁああっ、あ、激しいっ・・・ひぃ・・・イ、イクぅ・・・イっくうううっ」

 香苗の声と共に俺の体に回されていた手にぎゅっと力がこもる。

 ぶるぶると体を振るわせた香苗は、割れ目からぷしっと愛液の潮を吹いて脱力する。

「上手く誤魔化せたご褒美だ」
「あ、ぁ、ありがとう・・・ございます・・・お優しい、御主人様・・・・・・」

 うっとりと声を出す香苗の体を押し退けて、俺は玄関での痴情を終了する。

 すたすたと廊下を歩き出した俺の後ろを、壁に手を付きながらふらふらと何とか香苗も付いてくる。
 股から透明な雫を落として、まるでナメクジのようにぬめった跡を付けながら。

 リビングに来ると、そこでは歩がぽつんと一人で椅子に座って俺の帰りを待っていた。

 そう、朝からずっと同じ格好でその場にいるのだ。
 まともな思考を持つ人間がこの家からいなくなってしまったために、歩は学校にすら行かなくなってしまっている。

 唇の端から涎を垂らして死んだ魚のように濁った目で一点を見つめながら、ぐったりとして椅子に座る歩は魂の抜け殻がそこにあるように錯覚させる。

 だが、椅子に出来た愛液と腸液がミックスした液体が作る水溜りは、今尚溢れ続けてかさを増している。

「・・・・・・・・・」

 どうやら誰かが部屋に入ってきた気配に気付いたようで、沈んだ黒い瞳がこちらに向けられる。

 それが俺だと気付いた歩は生気のない顔に初めて感情を浮かべ、急いで俺の方へと駆け寄ってくる。

 だが、二本足ではなく四つん這いで。

 動物は人間のように歩いてはいけないと言うのがこの家の決まりだ。

「はっはっはっはっはっはっは」

 舌を出して、発情した豚が俺の足に体を擦り付けてくる。

 何かを期待した様な目をしながら、主人に媚を売る。

 俺は冷たい目で自我を失った歩を睨み付けると、絡みついた歩の体を足で乱暴に振りほどく。

 他人目には俺が歩の事を憎んでいるように思われても仕方がない光景だが、俺は俺なりに歩の事を愛している。

 だから毎日可愛がってやるし、それはきっとこれから先も変わらない。

「歩、ちんちん」
「はぁいっ」

 俺の掛け声で、すぐに起き上がった歩は芸を始めた。

 半立ちのまま、股を見せ付けるようにして開く。

 そう、犬がする例のポーズだ。

 だが歩はこれでも人間。

 犬に負けないようにと腰をゆっくり回して誘ういやらしい芸を一つ追加している。
 俺が教え込んだ歩自慢の芸の一つである。

「伏せ」
「はぁい」

 元気の良い大きな返事をして、歩がその場に伏せる。

 よく出来ました。

 芸にはきちんとご褒美をやらないといけないな。

 俺はズボンを脱いで、下着も下ろすと共に硬く勃起したペニスを取り出した。

「あ・・・ぁぁ・・・・・・」

 大好物のペニスを見て、歩の目が輝いた。

 半開きの口から涎を垂らし、のろのろと四足で近づいてくる。

「待て」

 歩の舌がペニスに触れる間近で、手の平を突き出して制止する。

 あと少しという所で止められた歩が子犬のような声を出して、悲しげな目で俺を見る。

「香苗。お前もこっちに来い」

 リビングの入り口で、従者のように佇んでいる香苗を呼び寄せ、歩と同じように四つん這いでペニスの前に誘導する。

 大きく隆起したペニスを目の前にして、香苗の目もとろんと蕩けている。

「まだだ、待て」

 1分、2分、3分と長い時間をかけて焦らす内に、興奮で母娘豚達の肌に汗の球が浮き上がってくる。

 二人が二人ともペニスの先端に触れるギリギリまで鼻を近づけてふんふんと鼻を鳴らして臭いを嗅ぎ、突き出した舌も合図と共にしゃぶりつく為に触れないようにしながらも限界まで近づける。

 はぁ、はぁと発情した二人の荒い息が亀頭に当たってくすぐったい。

「まだだ」

 さらに焦らすと、二人はもどかしそうに内腿をこすり合わせ始めた。

 許可さえあればすぐにでも自分で自分を慰めそうな勢いである。

 興奮が頂点に達して、二人は俺の顔色を伺うのも忘れて、目の焦点が完全にペニスに向き出した。
 聴覚だけを研ぎ澄ませて、あとは銀銀に勃起したペニスに釘付けになっている。
 まだか、まだか、と二人の心の声が聞こえてきそうだった。

「・・・・・・良しっ」

 我慢の末、やっとでた主人の許可を受けるや否や、食い千切らんばかりの勢いで二人がペニスに貪りついた。
 大小二つの舌を絡め、口に溜まった唾液をペニスに垂らしながら、独占しようと争いあっている。

「んぶ、んちゅ、んっ、んっ・・・ちゅ、ちゅうっ」
「はむ・・・ん、ぺろ、ぺろ、ちゅっ・・・は、あむっ」

 仲睦まじい母娘の関係はどこへ行ったのか、二人は頬をこすり合わせながらペニスを奪い合う。

 少しでも自分が俺を喜ばせるため、そして大好物を味わう為に。
 体を押し付け、頭をぶつけ合い、それでも一瞬たりともペニスからは舌を離さない。

「ん・・・ん、じゅ、じゅぼっ」

 ペニスを巡っての争いはやはり体の大きな香苗に軍配が上がり、亀頭を正面に迎える事に成功した香苗は艶やかな唇を開けてペニスを飲み込んだ。

 一度口に含んでしまえば敏感な亀頭は自分のものだった。

 奪い取られる心配なく、口内で好きなように舐り、味わう事が出来る。
 しかも喜ばせられるだけでもイってしまいそうなのに、後には精液と言うご褒美が待っている。

 香苗にとっての至福の時間の始まりだった。

「んぅ・・・じゅ、ごひゅじんはまの、んふっ、ぺにふ・・・おいひいでふぅっ・・・じゅるっ」

 咥えながら喋ろうとするので、香苗の口内に溢れた唾液がじゅるじゅるといやらしい音を立てる。

 これほど美味しいものはない、とこれ見よがしに喉を鳴らす香苗は幸せそうだ。

 そんな目を細めてペニスを咥え込む母の、憎きライバルの姿を見て歩が身を奮わせた。

 本当なら自分の芸のご褒美であったはずなのにいきなり現れた母親に奪われ、香苗を恨みがましい目で睨みつけたが、せめてお零れにあずかろうと幹に舌を伸ばすが、それを邪魔するように香苗はペニスを根元まで飲み込んだ。

「ん、じゅぶっ、はぶっ・・・ん、ちゅ・・・じゅぼっじゅぼっ」

 タイミングを見計らい、何度舌を伸ばしても香苗によって阻まれてしまう。

 その動きはまるで我が子を外敵から守る母ライオンのようであった。

 守るべきものは逆のはずなのだが、香苗は優先すべきもの、価値観がすっかり変わってしまっていた。

 待ちに待ったペニスを母に奪い取られ、あり付けないまま悔しそうな目を向けていた歩だったが、不意に良いアイディアを思いついたようで妖しい目つきで俺の背後へと回った。

 そして、俺の尻の割れ間に顔を埋めると可愛らしい舌をアナルへと伸ばした。

「ちゅぱっ・・・んんっ・・・あ、んんっ」

 前が駄目なら後ろと、アナル狂いの歩らしい発想だった。

 肛門を舐める事で自分がそうされている事を重ね合わせているのだろうか、行為を続けるうちにだんだんと歩の舌の動きに熱が入ってくる。

 アナルの皺一本一本に丁寧に舌先を差し込み、唾液をまぶす。

 そして皺がほぐれると歩は一層顔を押し込んで、穴の中に尖らせた舌を突き入れた。

 舌に苦いものが当たってもお構い無しだ。

「んん、んぢゅっ、ぢゅ、ぢゅぢゅぢゅ、んぅぅっ」

 短い舌を精一杯押し込まれ、汚れを舐め取られながらも激しく吸い立てられて、思わず俺は声を漏らした。

 俺のその声を聞いて、完全に優位に立ったと思い込んでいた香苗が表情を変えた。
 今のは苦悶ではなく聞き慣れた、喜びによる声。

 唾液をまぶし、自慢の舌技で舐り、最上の快楽を与えられていたはずなのに俺が反応したのは自分の口技によるものではない。
 一番の奴隷は自分でなければならない。
 小さな娘なんかよりもっと、自分の体に狂って貰いたい。

 そう感じ取った香苗は娘に対抗心を燃やし、より激しくペニスを吸い立てた。

「んちゅ、は、あ、あ・・・はむ・・・んん、んんんんっ」

 どこを責めれば俺が喜ぶか、覚えた知識を総動員して感じるポイントを徹底的に刺激する。

 淫肉で締め付けるが如く口を窄めて竿を扱き、舌の先を鈴口に突き刺して愛撫する。

 その熟練の動きに呻き声を漏らすと香苗が目を細め、今度は歩の舌の動きが早くなる。

 にちゃにちゃ、ぐちゃぐちゃ、と粘っこい音に挟まれながら強くなる愛撫を受け、頭がびりびりと痺れ出した。

「出すぞ・・・香苗っ」

 射精する直前に香苗の髪の毛を掴み、ペニスから口を離させると香苗は心得た動きで代わりに長い指を竿に絡みつかせて、口を大きく開いた。

 歩には尻の穴を舐めさせたまま、香苗には柔らかい両手でペニスを扱かせて、俺は香苗の口にめがけて精液を出した。

 ビュク、ビュクッ。

 白濁液が香苗の口内へ次々と収められ、香苗は青臭い精液を舌の上で味わいながら、さも美味しそうに飲み込んでいく。

 射精中も絶えず肉棒を這う指使いに快楽は長く続き、出し尽くした後も根元からぐにぐにと指が尿道に残った精液を押し出して、垂れ落ちた残りカスを香苗は舌を伸ばして受け止めた。

 全ての精液を飲み干した香苗は、赤いルージュの引いた唇を舌で舐め、恍惚とした表情を浮かべる。

 如何でしたか御主人様、と瞳を潤わせる香苗の表情は色っぽく、その肉厚の唇を貪り、舌を絡め合わせたいと思ったが今は我慢する。

「さて・・・・・・歩」

 名前を呼ぶと、歩は肛門から口を離して俺の正面へと回りこんでくる。

 次は精液にあぶれた者用のご褒美が与えられる番だからだ。

 当然イッたばかりのペニスからはまだ精液は出ないが、代わりに出るものがある。

 歩は四つん這いのまま、上を向いて期待に潤んだ瞳を俺に向けた。

 そしてペニスの先端を歩の顔に向け、大きく開いた口に別の液体を放った。

「んっ・・・ん、ごくっ、ごくっ・・・んぐ、んぐ・・・あはっ」

 勢い良く迸る、黄金色の液体を歩が喉を鳴らして飲み込んでいく。

 じょぼじょぼ、と弾け飛んだ黄金水が顔にかかるのも構わず、ようやくご褒美にありつけた喜びに顔を綻ばせている。

 全てを胃に収め、笑顔を浮かべると、歩は貪欲にも床に飛び散った液体に舌を這わし始めた。

「ぴちゃ・・・ん・・・ん、ん・・・」

 喜悦の表情で汚水を舐め取る歩を見て、香苗が羨ましそうな顔をする。

 貪欲なのは遺伝らしい。

「二人とも、こっちに尻を向けろ」
「「ぁ・・・はぁい・・・」」

 二人は同時に返事を返すと、即座に並んで俺に向けて大小異なる尻を突き出した。

 まだ毛も生えていないつるつるの恥丘と、艶やかな毛に覆い隠された開いたヴァギナ。

 歩の処女マンコは湿ってはいるが硬く閉じていて、代わりに上の、もはや菊門とは呼べない程に広がった穴がひくひくと妖しく蠢いている。

 香苗の方は真逆に、戻らなくなった大陰唇からビラビラがはみ出して、膣穴まで丸見えになった淫らな形をしている。

 先ほど指でイかせてやったせいか、そこはぐちょぐちょに蕩けていて、なおも湧き出る愛液で溢れかえっている。

 どちらのも美味しそうで迷う。

「よし・・・そうだな。上手くおねだり出来たほうに、今日は注射もしてやろう」

 ああぁ、と短い声を漏らした二人は仲良く同時にブシッと潮を噴いて軽く達し、そして情欲する。

「はっぁぁぁ・・・注射ぁぁ」
「はひぃぃぃぃ、んぁぁ、御主人様ぁ、おねだり、頑張りますぅっ」

 爛々と目を輝かせて懸命に尻を振る二人の姿は浅ましく、いやらしい。

 二度と戻れないほどに堕ちた母娘を見て、俺は満足げに微笑んだ。

 これからもずっと三人で暮らしていこう。

 誰にも邪魔されず、一緒に堕ちながら・・・・・・。

< 終わり >

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