第4話 追憶(中)
「瑠璃・・・」
遠くで誰かが、自分を呼ぶ声がする。
それはどこか暖かく、悲しげな声。
「・・・ん・・・」
その声に引き寄せられるように、瑠璃はゆっくりと瞼を開いた。
「瑠璃様!お目覚めになられましたか!」
「摩耶・・・」
霞んだ視界の中には、侍女である上月摩耶(こうづきまや)の涙顔が映る。
その先には、見慣れた天井。
そこは、瑠璃の自室であった。
-帰ってきた-
だが、その事実は安堵よりも、一人の人物を想起させる。
「姉様・・・っくぅっ!・・・げほっ、げほっ!」
瑠璃は体を起こそうとしたが、全身を襲う激痛に、その身を固くし、激しく咳き込む。
「瑠璃様、無理をなされてはいけません!さあ、横になって・・・」
「私は、どうでもいいの。・・・姉様を、姉様を・・・」
「瑠璃様・・・」
痛みに身を捩らせながらも、摩耶の手を振り解き、寝所から這い出そうとする瑠璃。
自分の身を顧みず、ただ姉の身を案じ、自ら救出に向かおうとする姿に、摩耶は払われた手を握り締め、言葉を詰まらせる。
丁度その時であった。
「瑠璃様は今、お休みになられています・・・お待ちください、沙夜子様、沙夜子様っ!」
バンッ
「沙夜子様!?」
勢いよく開かれた襖から、沙夜子が姿を現し、
「瑠璃姉ちゃん!」
瑠璃に駆け寄ると、瑠璃の体を抱き締め、
「良かった、本当に良かった・・・」
そう言いながら、感涙に頬を濡らしたのだった。
「沙夜ちゃん・・・」
その姿に瑠璃は痛みを堪えつつも微笑みながら、優しく沙夜子の頭を撫でつける。
だが、次の沙夜子の言葉に、その身を凍り付かせた。
「瑠璃姉ちゃん、翡翠姉ちゃんは?」
「沙夜ちゃん、姉様は・・・」
瑠璃は沙夜子の問いにどう答えるべきか、逡巡した。
この娘が翡翠を慕っていることを、瑠璃は十二分に理解している。
翡翠が妖魔に邪界へ連れ去られた、という残酷な真実を告げるべきか・・・
妖魔に攫われる、ということは退魔師にとって最大の屈辱である。
一部の退魔師には依然として、虜囚となるよりは死を選ぶ、とする者さえいる程。
まして、女性の翡翠が邪界でされるであろうことを考えれば、それは尚更の事だ。
確かに、翡翠を戦死扱いにすれば、翡翠の名誉と神凪の家の体面は守ることができる。
しかしそれは-
だが瑠璃の機先を制し、沙夜子の問いに答えたのは、摩耶であった。
「翡翠様は妖魔との戦闘中、落命されました」
「摩耶!?」
その思い掛けない答えに、瑠璃は思わず摩耶を見返す。
しかし摩耶は無言のまま、強い眼差しで沙夜子を見つめるのだった。
「嘘だっ!翡翠姉ちゃんが、翡翠姉ちゃんが妖魔なんかに殺されるはずなんかない!・・・ねえ、そうでしょう、瑠璃姉ちゃん!」
「沙夜ちゃん・・・」
瑠璃の体を揺さぶり、必死にそう問い掛ける沙夜子。
その姿に瑠璃は、肉体の激痛よりも激しい、心の痛みに苛まれる。
だが瑠璃は、口を開くことができぬまま、沙夜子に身を委ねるだけであった。
「沙夜子様っ!」
パシンッ
そう叫ぶと摩耶は、沙夜子の頬を叩いた。
「摩、耶・・・?」
沙夜子は何が起きたか解らない、そんな表情で、頬を押さえつつ摩耶を見つめる。
だが摩耶は、その瞳を逸らさず、確かな口調で沙夜子に語りかけた。
「落ち着いてください、沙夜子様。信じたくはないでしょうが、事実は事実です。翡翠様は・・・神凪の守人として敵の大将と戦い、当主の瑠璃様を守られたの
で
す。そして・・・」
「・・・私は信じない、信じないっ!」
「沙夜ちゃんっ!」
沙夜子はそう叫び、両の耳を手で塞ぐと、
バタンッ
部屋の外へ駆けだしていったのだった。
その後には、気まずい静寂だけが残される。
「摩耶、ごめんなさい。貴女に、辛い役回りを押しつけてしまって・・・」
「いえ、そんなことはお気に召さず・・・それよりも、無茶をして、私に心配をかけないでください」
瑠璃の謝罪に摩耶はそうおどけて応じると、背を支えながら瑠璃を床へそっと寝かしつける。
「・・・有り難う、摩耶」
この騒ぎで平静さを取り戻した瑠璃は、摩耶の献身を素直に受け容れた。
だがこれで、苦悩まで晴れたわけではない。
「姉様があんなことになってしまったのは私の・・・」
「瑠璃様、それは」
沈痛な面持ちで切り出した瑠璃の言葉を、摩耶はそう遮ろうとした。
だが、瑠璃は首を振り、それを微笑みながら制する。
「いえ、いいの、摩耶・・・姉様を攫われてしまったのは私の責任。私の力が足りなっかったから、自分も姉様も、守ることができなかった」
「瑠璃様・・・」
その瑠璃の言葉を聞いた摩耶は、心痛を隠せぬ表情で、主の顔を見つめる。
だが、そんな摩耶の手に自分の手を重ねると、
「でも必ず、私は姉様を救い出してみせる。そしてまた二人で、いえ沙夜ちゃんと三人で、笑い合う。・・・その日まで、私は戦い続けるわ。だから摩耶、貴女
も私を助けて」
そう、摩耶の手を強く握ったのだった。
「う・・・ん・・・」
翡翠は全身に感じる冷気に、意識を引き戻された。
「ここは・・・」
ゆっくりと開いた瞼の先には、剥き出しの岩の天井が広がっている。
意識は取り戻したものの、頭は霞がかかったように重く、体も鉛のように重い。
だがそんな中でも、時間が経過するにつれ、ポツ、ポツとコマ送りのように、記憶が蘇ってくる。
邪淫皇との戦闘。
敗北。
陵辱。
そして、瑠璃の叫び声-
「瑠璃!」
一番大事な、最愛の妹の事を思い出し、翡翠はその場から跳ね起きようとした。
ギシッ
「・・・痛っぅ!」
だが、何かに拘束された体は動かず、拘束された箇所に激痛が走るだけだ。
僅かに動く首周りを動かし、周囲を見回してみたが幸いなことに、瑠璃の姿は見当たらない。
「ふぅっ・・・」
その事実に、翡翠は安堵の溜息を漏らす。
-自分は兎も角、瑠璃は無事だ-
己が虜囚になっている、ということよりも、この場に瑠璃が居ないことに、翡翠は安堵したのだった。
それならば、ここから脱出しなければ-
退魔師にとって妖魔に囚われる、ということは最大の屈辱である。
その屈辱を回避するために死を選ぶことは、簡単なことだ。
だが、自分はどんな屈辱に塗れようとも、守らねばならぬものがある。
翡翠は静かに目を閉じる。
瑠璃-
最愛の妹の姿を瞼の裏に浮かべた翡翠は、その決意を新たにしたのだった。
翡翠は、己の置かれた状況を確認しようと、再び首を巡らした。
衣装は全て剥ぎ取られ、分娩台のような台に、四肢を触手で拘束されている。
首の下から爪先まで見渡してみたが不思議なことに、邪淫皇との戦闘と陵辱で生じた傷は無くなっており、痛みも感じなくなっていた。
「治療、された?」
翡翠は、敵であるはずの自分を治療した、という事実に気味の悪さを感じながらも、肉体面での安全を確認したことにより、探査の対象を自分を取り巻く環境
へと移した。
翡翠が拘束されている場所は岩壁が剥き出しになった、20畳ほどの空間であり、その壁には雑多な器具が掛けられていた。
その器具を一通り見渡した翡翠は、あることに思い当たる。
「これは・・・」
それらは形状こそ微妙に異なるが自分が見慣れたもの-医療器具-に類するものに違いない。
そこから導き出される仮説は、一つ。
「ここは、『処置室』?」
自分が口にした『処置』という言葉に、悪寒が走る。
壁の右端に掛けられた、メスのような刃物が放つ鈍い光に不吉なものを感じた翡翠は、視線を別の方角へ移した。
部屋の両端は別の空間へと続いているようで、一方は通路、もう一方には複数の大きな水槽がある。
水槽の中には、何かが浮いているのがぼんやりと見えた。
「何なの、アレは?」
翡翠が目を凝らして、その中身を確かめようとした時、
「やっと目覚めたか」
通路側の闇の中から、嗄れた声がした。
その声の方向へ視線を巡らすと、小柄な老人風の妖魔が歩み寄ってくるのが見える。
「お前は?」
「儂は『邪謀』。邪淫皇様の軍師じゃ。・・・お前さん、『アレ』に興味があるかの?ひひひ、いいじゃろう、儂自慢のコレクションを見せてやろう」
そう邪謀が言うと、水槽が青白く光り出し、その中身が鮮明に映し出される。
燐光に映し出された水槽の中には、女の生首、胸、腕・・・人間の女体のあらゆるパーツがコードのようなものに繋がれ、ふわふわと漂っていたのだった。
「うぷっ・・・」
翡翠は思わず吐きそうになるのを、胃の腑に力を入れてなんとか堪える。
「ひひひ、どうじゃ、儂のコレクションは?」
だが翡翠の反応など関係ない、とばかりに邪謀は、子供が玩具を自慢するように喜色を浮かべてそう自慢すると、翡翠のすぐ近くまでやって来た。
「ひひひ、しかし良い乳をしておるのぉ」
ムニュムニュ
邪謀は、皺だらけの枯れ木のような手で翡翠の胸を掴むと、肉と肌の感触を楽しむように捏ね回し始める。
「この乳なら、『人形』の良いパーツになるのにのぉ。まこと、残念なことじゃ」
『パーツ』
という言葉の響きに、翡翠は戦慄した。
この妖魔は人間の肉体を、部品程度にしか感じていない-
思わず、水槽の中身に視線が泳ぐ。
自分もあの中へ・・・首、手足、胴体をバラバラにされ、『コレクション』の一部となった己の姿を想像し、翡翠は背筋を凍らせる。
だが、その翡翠の不安を解消したのは意外にも、邪謀であった。
「安心せい。お前さんはバラしたりはせぬわ。・・・どの様なわけか、邪淫皇様がお前さんの事をいたくお気に召されての。殺すな、との仰せじゃ」
「・・・どういうこと?」
『気に召す』という言葉に嫌悪感を抱きながらも、翡翠はそう聞き返す。
「その代わり、淫乱な肉体へ徹底的に改造せよ、とのご命令じゃ。ひひひ、バラされたほうがマシかもしれぬのぉ」
なるほど、『気に召す』とはそういうことか・・・
自分は最後まで邪淫皇に抵抗したのだ。だからその代償として、私を嬲ろう、ということなのだろう。
「悪趣味な・・・例え肉体を改造されたとしても、私はお前達の思い通りにはならないわ」
翡翠はそう言い放つと、邪謀を睨み付けたのだった。
「ひひひ、勇ましいのぉ。じゃが、そんなことを言っておられるのも今のうちだけじゃろうて。・・・おい、入って参れ」
邪謀が闇の中に声をかけると、
「はい、ご主人様」
一人の女性がその中から姿を現した。
「貴女は・・・菱沼さん!」
それは、1月程前の退魔業の際、行方不明になった上級退魔師の、菱沼梢(ひしぬまこずえ)であった。
だが、ここに現れた彼女の姿は、翡翠の記憶にあるものとは大きく異なるものであった。
殆ど隠すところのない卑猥なメイド服を身に纏い、極太の注射器が載った金属製の盆を持って現れた彼女には、表情が無い。
そして、首筋や胸、腹・・・と全身に、手術跡のような傷跡があ
る。
「まさか・・・」
翡翠は『まさか』という『否定的』推論の言葉を口にしたが、その推論を『肯定』するための状況証拠は、余りに揃いすぎている。
翡翠は口で否定しつつも、心の中では証拠のピースが『結論』という形を取りつつあるのを明確に感じていたのだった。
『・・・だって、彼女の胸はこんなに《豊か》ではなかったはずだもの』
「どうじゃ、儂の傑作、『淫梢』の出来は?」
邪謀はそう言って『淫梢』を抱き寄せると、
グチュッグチュッ
徐に、股間をまさぐり始めた。
「あはぁっ・・・」
すると、無表情だった彼女の頬に紅が差し、艶のある吐息が漏れ始める。
「貴様ぁっ!」
この卑劣な妖魔は哀れな犠牲者の肉体を、まるでパッチワークでも作るかのように繋ぎ合わせ、自分の奴隷として使っている-
人を『殺す』だけでは飽きたらず、『死者』をなおも陵辱し続ける邪謀の卑劣さに、翡翠は激昂したのだった。
「ひひひ、そう怒るでない。ホレ、こんなに悦んでおるではないか」
だが、邪謀は淫梢を背後から抱き寄せると、翡翠を挑発するように、彼女の股間と胸を一層荒々しくまさぐったのだった。
「ああんっ、ご主人様ぁ・・・」
翡翠の憤怒とは裏腹に、邪謀の性奴隷に墜とされた淫梢は必死に盆を支えつつも、下半身はただ、主人の愛撫に身を任せ、濁った瞳を潤ませつつ、快楽
を貪欲に受け容れようとする。
「くそぉっ!」
ギシッギシッ
翡翠はその侮蔑的な行為を止めさせようと、必死に四肢を動かそうとするが、殺気の籠もった視線を送ることしかできなかった。
ヌプッ
「・・・ひひひ、戯れはこの程度にするかの」
淫梢の感触を存分に楽しんだ邪謀はそう言うと、淫梢の股間から手を離した。
淫梢の股間からは愛液がしとどに流れ、太股を白く汚している。
「それでは、施術を始めるとしようかの。淫梢、施術の介添えをせい」
「はい、ご主人様」
主人に呼ばれた淫梢は再び表情を無くし、注射器が載った盆を持って邪謀のもとへ歩み寄る。
その盆の上に載った2本の注射器を手にした邪謀は、シリンダーを押して、注射器の感触を確かめた。
ビュッ
それにあわせて、注射器に充填された毒々しい緑の液体が、注射針の先端から飛び散る。
邪謀はそのまま翡翠の脇に歩み寄ると、注射器の先端を翡翠の乳首に押し当てた。
「や、やめろっ!」
「ひひひ、暴れると針を折ってしまうぞ」
ズブッ、ズブッ!
邪謀は躊躇することなく、両の注射器を翡翠の乳首深くへ突き立てると、一気にシリンダーを押し込んだ。
チュゥゥッチュゥゥッ
「ひ、ひいぃっ!」
未知の液体が乳房の中に入ってくる感覚に、翡翠は身悶える。
だが邪謀は止める気配もなく、大量の薬液を翡翠の中へ流し込んだのだった。
チュゥッ・・・チュプッ、チュプッ!
最後に残った薬液を押し込むと、邪謀は両の乳首から注射器を引き抜いた。
「あひっ!?」
乳腺が捲りあがるような感覚に、翡翠は思わず声をあげた。
大量の薬液を流し込まれた乳房は、毛細血管が浮き出るほど腫れ、むず痒さを翡翠に伝えてくる。
だが、それ以上の変化は、特に感じられず、そのことに、翡翠は気力を取り戻すのだった。
「ひひひ、どうじゃ、儂特性の毒液の味は?」
その邪謀の言葉に、
「こんなもの効かない」『わ』と言葉を継ごうとした翡翠の体に、
ドクン
と一つ、心臓が脈打つような感覚が走る。
それに翡翠は一瞬、目を眩ませた。
「ああっ!」
体の芯から、沸き上がるような感覚が全身に広がる。
それは先程までの『むず痒さ』などではなく、『熱』、と呼ぶべきものであった。
その『熱』から逃れようと、翡翠は身を捩るが、
ギシッ
「ああんっ、何、これぇっ!?」
触手と肌が擦れた部分から、先程の痛みが反転したかのような、産毛を撫でられるようなゾクゾクとした感覚が、翡翠の背中を走った。
「ひひひ、効果覿面のようじゃの」
「はぁはぁ・・・お前、私に何を打ったの?」
体に走る快感に耐えながら、翡翠はそう言うと、気丈にも邪謀を睨め付ける。
「お前さんには淫魔の体液から抽出した、毒素を打ったんじゃ。血から小便に至るまで体液が皆媚薬になるな・・・どうじゃ、ホレ、たまらんじゃろう?」
邪謀はそう言うと、
ムニュッムニュッ
翡翠の胸を軽く愛撫した。
「ああっ!」
翡翠は胸を2、3度愛撫されただけで、軽い絶頂に達してしまう。
「ひひひ、これでお前さんの肉体は、始終発情しっぱなしじゃ。じゃが、これはまだ下準備・・・この感触、そろそろじゃの」
翡翠が絶頂に達してからも執拗に、翡翠の胸を愛撫していた邪謀がそう呟いた瞬間、
「え?え?何これ・・・む、胸がっ!」
ムクムクムク
水風船を膨らましたかのように、翡翠の胸が肥大を始める。
そしてそれはやがて、メロンほどの大きさにまで成長したのだった。
「い、嫌ぁ・・・私の胸が、胸がっ!」
「ひひひ、大きいだけではないぞ。ホレ、こうすると・・・」
ギュッ
「ひぎいっ?」
ブビュッ
邪謀が翡翠の乳房を僅かに握り締めただけで雌牛から搾乳したかのように、乳首から母乳が勢いよく飛び出した。
そしてそれは、
「ああっ、嫌ぁっ、胸が、胸が気持ちイイっ!」
例えようもない解放感と快楽を翡翠に送り込み、忽ちのうちに、絶頂へと追いやってしまうのだった。
「ひひひ、気に入ってもらえたようじゃの。搾乳でイクとは淫らな女じゃのぅ」
「はぁはぁはぁ・・・」
邪謀の嘲りにも反論する気力がない程、この女は感じている、その結果に邪謀は大いに満足していた。
その証拠に、翡翠の秘所からは愛液が零れ落ち、内股をしとどに濡らしている。
その様子に、邪謀は少なからず興奮し、矮小なイチモツを固くしていた。
女をいたぶることが至上の喜びである邪謀にとって、気丈な女が墜ちてゆく様を見ることは、何事にも代え難い喜びであった。
今回邪淫皇から与えられたこの女は、彼が今までいたぶってきた女達とは比較にならないほど、肉体的にも精神的にも上物であり、『徹底的に』改造できる喜
び
に、邪謀は打ち震えていのだった。
どこまでこの女を惨めに、そして淫らな『作品』に作り替えられるか、その喜びに-
「お前さんには、もっと淫らな体になってもらわなくてはいかんのでな・・・淫梢、『アレ』を持って参れ」
「はい、ご主人様」
淫梢は邪謀に深々と頭を下げると、やって来た暗闇の中へ姿を消した。
「ひひひ、次も、儂が腕によりをかけて施術してやろう。どうじゃ楽しみじゃろう、ん?」
「あんっ、触るな、この下衆め・・・ひんっ!」
邪謀は手慰みに、翡翠の胸を責め立てる。
それに対して翡翠は辛うじて悪態をつくが、醜い老人の手管で感じていることを隠すことはできず、その痴態を、邪謀に堪能させるだけであった。
「・・・ご主人様、持って参りました」
「よし、持ってきたか・・・ひひひ、今からこれをお前さんに寄生させてやろう」
「ひぃっ!?」
淫梢が盆の上に載せて持参したものは、言葉で敢えて形容すれば、『肉の芋虫』、そう呼ぶに相応しいもの。
肉色の体をビクビクと震わせ、粘液を吐き散らす、見るにおぞましい存在に、翡翠は短い悲鳴を漏らした。
「これは『猿性戯』と言ってな、クリトリスに寄生する下級妖魔じゃ。ひひひ、これに寄生された女は、淫悦に耽る牝に成り下がる・・・お前さんはどんな痴態
を見せてくれるのかの」
ビチャッ
そう言うと邪謀は翡翠の腹の上に、猿性戯を放り投げる。
ヌルヌルヌル・・・
猿性戯は、粘液を吐き散らしながら翡翠の腹の上をのたくり、一点を目指し這ってゆく。
「い、嫌、気持ち悪いっ!」
その感覚の気色悪さに、翡翠は思わず悲鳴をあげた。
だが猿性戯は、宿主となる女の意志とは関係なく、ただひたすらに、本能に従うだけだ。
やがて猿性戯は翡翠のクリトリスに辿り着くと、
ズブズブズブッ
「ひぎゃぁっっ!」
潜り込みながら神経の根を張り始める。
そしてそれは翡翠の神経、細胞に癒着すると、
ムクムクムクッ
翡翠の『男根』として変化を遂げ、本人の意志に抗うように、逞しく屹立したのだった。
「い、嫌ぁ・・・」
女性にあるべかざる器官を『生やされた』翡翠は、醜く蠢くイチモツの様に、顔を歪ませる。
胸、クリトリス・・・女の象徴的な器官を次々に改造され、淫らな肉体へと墜とされゆく己の命運に、翡翠は失意を隠すことができずにいた。
失意に打ちひしがれる翡翠を、邪謀は喜悦の表情で眺める。
『ひひひ、良い顔をするのぉ。これからが楽しみじゃ。さて・・・』
そして、彼女を『失意』から『絶望』に追いやるため、更なる姦計を巡らすのだった。
「ひひひ、しっかり癒着したようじゃの。お前さんの筆おろしは・・・淫梢、お前が相手をせい。まずは、下準備かの」
「はい、ご主人様」
邪謀に命じられた淫梢は、虚ろな瞳のまま翡翠のイチモツに顔を寄せる。
「お願い、菱沼さん、正気に戻って!」
「さあ、淫梢、その女のモノに奉仕せい」
「はい、ご主人様・・・あむっ、んふっ」
翡翠の叫びを無視し、淫梢は一瞬うっとりとした表情を浮かべると、食いつくように翡翠のモノを含んだ。
チュパッチュパッチュパッ
亀頭を飲み込んだ淫梢は、舌先でチロチロと、尿道を微妙なタッチで刺激し続ける。
「ああんっ、嫌ぁっ、こんなモノで感じるなんて!」
邪謀への奉仕で仕込まれた淫梢の娼婦のような舌使いに、翡翠は忽ちのうちに、その奔流に飲み込まれそうになる。
神凪の一族として、部下だった者へのプライドが、辛うじて翡翠を堪えさせるが、
レロォッジュルッチュルッ
「いひぃっ!?」
淫梢の性技がそれを上回るのに、さほど時間はかからなかった。
「・・・あんっ、ダメぇ、こんなの・・・でも、感じちゃう、感じちゃうのっ!」
一度悦楽の波に飲み込まれてしまえば、今の翡翠にそこから抜け出す余力はない。
大波に翻弄される小舟のように翡翠は、ただ悦楽に身を任せるしかないのだ。
「ひひひ、淫梢、まずは一出しさせてやれ」
「はひ、ごひゅじんさま・・・あむっ・・・ジュルッジュルッ」
邪謀が命じると、淫梢は翡翠のモノを咥えながらそう答え、尿道の中から全てを吸い出すように激しく啜りたて始めた。
「ああんっ、中から吸い出されちゃう・・・ダ、ダメェっ・・・イ、イクぅっ!」
既に極限まで高められていた翡翠は、淫梢の責めに堪らず、絶頂に追い詰められる。
ドプッビュルッビュルッ
「あはぁっ!」
そして、絶頂とともに、大量の精液を淫梢の口内に吐き散らした。
「んぐっ、んぐっ・・・」
淫梢は喉を鳴らし、吐き出された精液を飲み込むが、飲み干しきれない精液が口の端から溢れ、喉元を伝って彼女の豊かな胸を白く汚してゆく。
だが、それだけ大量の精液を放った後も翡翠のイチモツは、硬度を失わず屹立し続けたのだった。
「ひひひ、どうじゃ、自分のチンポの味は?」
「はぁはぁはぁ・・・」
翡翠は絶頂の余韻で、ただ荒く息をつくことしかできない。
しかし、その秘穴から溢れ続ける愛液の量が口よりも雄弁に、翡翠の肉体が淫悦に溺れたことを物語っていた。
「ひひひ、しっかり感じているようじゃの・・・さて、それでは本番に入ろうかのぉ。・・・淫梢、相手をしてやれ」
「ちゅるっ・・・はい、ご主人様・・・」
己の胸についた精液を舐め取っていた淫梢は、潤んだ瞳を主人に向けると、翡翠の上に跨り、翡翠のモノを掴む。
そして潤みきった秘所に、翡翠のモノを擦りつけた。
既に潤みきった淫梢の秘所から、零れた愛液が、ポタポタと翡翠のイチモツを伝い落ちてゆく。
「お願い、止めて・・・」
翡翠は弱々しい声でそう淫梢に哀願するが淫梢は、
ズブズブズブ・・・
わざと焦らすように、そして味を確かめるようにゆっくりと、翡翠のイチモツを肉壺の中に飲み込んでいったのだった。
「はあぁっ・・・」
淫梢は背をのけぞらせ、だらしなく口を開きながら、その悦楽に浸る。
「あはんっ、熱い、熱いの・・・」
一方翡翠は、肉棒がじっとりと肉壁に包まれる感覚に軽い絶頂を感じ、その先端から先走り液を滲ませた。
その翡翠の反応を膣越しに感じた淫梢は、
「うふふ、はあぁんっ・・・」
ジュプッジュプッジュプッ
淫らな水音を立てながら、緩急をつけた腰の動きで翡翠を責め立てる。
淫梢の巧みな腰の動きと、ギュウギュウと締め付ける膣肉の刺激に翡翠は、
「あっ、ああっ・・・凄い・・・お腹が、お腹が溶けちゃいそう・・・」
下腹部が焼け付いてしまいそうな感覚に襲われていた。
執拗な快楽の波は、翡翠の理性を磨り減らし、牝としての本能を呼び覚ましてゆく。
いつしか翡翠は、更なる快楽を得るため無意識のうちに、淫梢の膣口にグリグリと、不自由な己の腰を押しつけるのだった。
「ひひひ、すっかり牝の顔になりおって・・・よかろう、お前さんの望むままに犯すが良い」
邪謀はその変化を見逃さず、翡翠の腰回りに巻き付く触手の拘束を解く。
腰回りの拘束を解かれた翡翠は、
ズプッズプッズプッ
より深く、大きなストロークを淫梢の中に叩き付け始めた。
「あんっ、気持ちイイっ、子宮口が、子宮口がコリコリして気持ちイイのぉっ!」
淫欲への抑制を解放された翡翠は欲望のままに、淫梢の奥深くへ腰を打ち付ける。
「はひっ、すごひぃっ!・・・子宮が、子宮が破れちゃうっ!」
翡翠の激しい突き上げに淫梢も、翻弄されずにはいられない。
狙い通り、淫欲に溺れる獣になりつつある翡翠の姿に、邪謀は嗜虐の光をその眼に浮かべていた。
「ひひひ、余興を呉れてやろうかの・・・淫梢よ、『その眼に、光を取り戻せ』」
そう邪謀が言った瞬間、生気のなかった淫梢の瞳に、すっと明かりが蘇る。
「・・・あっ、あふっ、ひ、翡翠様!?」
翡翠の激しい責めにその肢体を揺らしながら、『淫梢』は『菱沼梢』としての意識を取り戻した。
「ひ、菱沼さんっ!?貴女、意識が・・・」
それに、翡翠は驚愕の表情を浮かべ、一瞬腰の動きを緩めたのだが、
「あっ、あんっ、翡翠様、そんなに突き上げないで・・・い、嫌ぁ、腰が、腰が勝手に動くのぉっ!」
『菱沼梢』は翡翠にそう哀願する一方で、その腰使いを止めることはなかった。
まるで、頭とそれ以外の部分が別の生き物であるかのように-
そう、邪謀は、かつて『菱沼梢』であった部分-頭部-の意識のみを解放し、『淫梢』としての肉体は、依然として自分の支配下に置いているのだった。
「ひひひ、どうじゃ、かつての仲間を犯す気分は?・・・『淫梢』よ、『その女を徹底的に責め立てよ』」
ジュクッジュクッ
そう邪謀が命じると、『淫梢の』首から下の肉体は、より淫猥な、より激しい腰使いで翡翠を責め立て始める。
「あひぃっ!?」
その責めに、辛うじて腰の動きを緩めていた翡翠も再び淫欲に飲み込まれてしまう。
「・・・ごめんなさい、菱沼さん・・・私、私、もう止められないのっ!」
かつての仲間、部下であった者を犯す罪悪感に苛まれながらも、『牡』の本能に突き動かされるまま、『淫梢』を激しく突き上げるのだった。
ジュプッジュプッジュプッ
「はぁんっ、イイっ、菱沼さんの中、イイのぉっ!」
「あっ、あんっ、スゴイっ、ゴリゴリ奥でいって、スゴイのぉっ!」
接合点から激しい水音を立てながら、淫欲の虜となる二人。
そして、激しい交合は、翡翠を忽ちのうちに追い詰めてゆく。
「あっ、はっ、嫌ぁ・・・何か、何かが来るっ!」
翡翠は男根の根本に、強烈な迸りを感じるが、
「あんっ、翡翠様ぁ・・・」
「!!」
『菱沼梢』が己の名を呼ぶ声に理性を取り戻し、下腹部に力を入れ懸命に堪えた。
だが、
「ひひひ、まだ耐えよるか。見上げたもんじゃのぅ・・・じゃが無駄な足掻きじゃ。・・・『淫梢』よ、『その女から精を搾り取れ』」
邪謀がそう命じると、
ギュウゥッ
「ぎひぃっ!?」
『淫梢』の膣肉がきつく、翡翠を中から搾り取るように締めつける。
ギリギリギリ・・・
既に射精寸前にあった翡翠のイチモツにとってこれは、止めの一撃となった。
ビクッビクッビクッ
極限まで精液を溜め込んだイチモツが脈動するのを、翡翠は確かに感じ、再び下腹部に力を入れ、破局を懸命に堪えようとする。
だが、
ビュッビュッ
懸命の努力を嘲笑うかのように、イチモツの先端から精液が溢れ出す。
それが、翡翠の限界であった。
「あがぁっ、ダ、ダメぇ、妖魔に生やされたモノなんかで・・・でも、もう我慢できない・・・イ、イクぅっ!」
そう翡翠は叫ぶと、
グイッ
反射的に腰を淫梢に押しつける。
「ああっ、翡翠様ぁっ!」
ドクッドクッドクッ
そして、ダムが決壊するように翡翠のイチモツから大量の精液が、淫梢の子宮に流し込まれた。
ビュルッビュルッ
それと同時に、乳首からも射精するかのように、母乳が吹き出される。
「はぁっ、あはぁっ・・・・」
ビュクッビュクッ
翡翠はだらしなく表情を弛緩させ、射精の解放感に浸る。
今の彼女には、神凪一族としての誇りや、退魔師としての使命感はない。
イチモツから来る快感と、下腹部の解放感だけが、翡翠の全てを支配していた。
『はぁ、なんて気持ち良いの・・・みんな、流れ出してしまいそう・・・』
その感覚通り、翡翠の意識は真っ白に塗り込められ、急速に薄れてゆく。
ドプッドプッ
「はっ、あっ!」
そして、最後の射精を終えたところで、翡翠は意識を失った。
「はぁ、はぁ・・・」
淫梢は、翡翠との接合部から白濁液を溢れ出させながら、翡翠の上で荒い息をついている。
「よくやった、淫梢よ・・・『その眼を、闇に閉じよ』」
邪謀がそう命じると、
ビクッ
淫梢は一瞬その身を痙攣させ、再びその瞳を濁らせる。
「淫梢、その女の後始末をせい」
「はい、ご主人様」
ヌプッ
淫梢は立ち上がって、翡翠のモノを引き抜くと、秘所から白濁液を滴らせることも厭わず、命令のままに別間へと去っていった。
再び、部屋の中に翡翠と邪謀のみが残される。
邪謀は、翡翠へと視線を移した。
極限まで膨らみ、母乳に汚れた胸。
未だ更なる快楽を欲するかのように、精液を吐き続ける、汚れた男根。
そして、己のものとも、淫梢のものともつかない白濁液で汚れきった下半身・・・
今や、翡翠の肉体は性を貪る浅ましい牝へと変貌しつつある。
だが、淫猥な肉体に改造され、汚液に塗れながらも、翡翠の美しさは汚されないままでいる。
そのことが、邪謀の嗜虐心を再び煽り立てた。
「ひひひ、お前さんの調教はまだ始まったばかりじゃ。もっと淫乱で、放恣な肉体に変えてやるわい・・・ひひひひひっ!」
部屋の中に、邪謀の哄笑が木霊する。
翡翠の受難は、まだ終わらない-
< 続く >