四神戦隊メイデン・フォース 第16話

第16話 羽化(中)

 バシャンッ、バシャンッ
 力強い波音を立て、青い影が水面を疾走する。
 そのしなやかな影はやがて、コンクリートの岸へ辿り着くと、顔を上げた。
「南原さん、またタイム更新ね。おめでとう」
 朱美は水中メガネを外しながら、涼子の祝福に、
「有り難う御座います」
 そう、満面の笑顔で答えた。

 リレーのメンバーに選出されてから一層、朱美のタイムは向上を見せている。
 このままいけば、個人戦でタイトルを取ることも不可能ではない-
 そう自信を深める度、これまでにない充実感を感じるとともに、涼子への信頼も、大いに高めていた。
 涼子が練習に取り入れてくれた『ストレッチ』のお陰か、泳ぎに硬さが無くなり、フォームにゆとりすら感じる。

 ザバッ
 プールから上がった朱美は、キャップを脱ぐと、デッキ・チェアに掛けたタオルで手早く、肢体に付いた水気を拭き取ってゆく。
 朱美がタオルで髪を拭き始めた時、
「南原さん」
 涼子にそう、背後から声を掛けられた。
 その声を聞いた朱美は反射的に、
 キュウンッ
 下腹の奥底を熱くする。

 ゆっくりと振り返った朱美に涼子は、その引き締まった腰に手を当てながら、
「『クール・ダウン』してあげるから、準備して」
 そう、命じた。
 朱美は、タオルをデッキ・チェアに掛けると、
「はい・・・」
 仰向けに横になり、
 スッ
 ゆっくりと股を開く。

 すると、その前に涼子が屈み、朱美の股を覗き込む様な体勢になる。
 そして、
「うふふ、体の力を抜いてね・・・」
 そう言うと、
 ツゥッ
 朱美の股布へ人差し指を差し入れた。
 そのまま横へ股布をずらすと、
 ニチャァ
 蒸れた牝の臭いとともに、粘液に塗れた朱美の秘裂が現れる。

「・・・うふふ、なぁに、期待していたの?」
 涼子がそう指摘する通りこの『クール・ダウン』は、朱美の密やかな愉しみとなっていた。
 結果を伴う泳ぎの高揚感と、性的な愉悦。
 メイデン・フォースの闘いにも似たそれは、朱美の精神を着実に侵している。

 涼子は、
 クチュッ、クチュッ
 指先で朱美の秘裂を弄びながら、
「・・・このままじゃ、プールを汚してしまうわね・・・」
 そう言うと、
「・・・んふっ・・・はむっ、ちゅるるっ」
 朱美の熟れた果実へかぶりつき、その果汁を貪り始める。

 朱美は、その無遠慮な仕儀に、
「・・・んっ、はぁっ・・・せんぱいっ!」
 あられもない嬌声を上げた。
 最早、衆人環視の中で性行為を行うことに何ら抵抗のない朱美にとって、この
『クール・ダウン』はただ、その悦楽を愉しむものでしかない。

 朱美は本能的に、
 グイッ
 腰を、涼子の顔に押しつけるように突き出すと、
 クイッ、クイッ
 更なる奉仕を催促するかの如く、それを僅かに上下させた。

 涼子はその朱美な不躾な行為にも、怒りを見せることすらせずそれどころか、
「・・・んふふっ・・・ぬっ、ぬふっ」
 舌先を秘肉の中に潜り込ませ、溢れ出る甘露を搾り取る。
 性への欲望を露わにすることはこの『部活』において、何ら恥じるべきでも、躊躇うべきものではない。
 涼子は、朱美が恥じらいや躊躇を見せる度、悦楽でそれらを剥ぎ取ってきた。

 グチュッ、ヌチュッ、ズルルッ
 処女膜すら破ってしまいそうな激しい舌技に朱美は、
『・・・ん、あ・・・処女膜・・・破られちゃうっ』
 アイデンティティーを喪失するスリルを愉しみながらも、
『でも・・・ホントに破られちゃったら・・・どんな感じなんだろ・・・』
 一抹のもどかしさを感じ始めていた。
 しかし、
『・・・って、私何を!?・・・私は、四神の巫女、なのに・・・』
 その淫らな妄想を、頭を振って消し去ろうとする。
 だがその葛藤も、
「・・・んっ、はぁっ!?」
 ヌッ、ヌルゥッ
 涼子の舌技の前にはやがて、霧散してしまうのだった。

 ピチャッ、ピチャッ
「・・・ふふ、これでいいわ・・・『クール・ダウン』、おわり」
 朱美の潮を舐め取っていた涼子はそう言うと、汚れた口許を手で拭いながら立ち上がる。

 朱美は悦楽の残滓に身を震わせながらも涼子に、
「・・・んっ・・・部長、有り難う、御座います・・・」
 そう感謝の言葉を述べる。
 朱美にとってこの行為はあくまで、『部活』の一部なのだ。

 その様子に涼子は微笑みながら、
「南原さん、体を解す方法は、すっかり身に着けたようね。良い傾向だわ」
 そう、朱美を賞賛する。
 だが、その笑顔の裏では、
『・・・うふふ、本当に可愛い娘・・・自分が調教されているとも知らないで・・・』
 己の成果に邪悪な笑みを浮かべていた。

 丁度その時、 
 キュウン
 子宮の奥が熱くなり、
 ドブン
 快楽物質がその中へ排出される。
「うえへぇっ!?・・・はぁぁんっ!」
 唐突な刺激に涼子は、嬌声を上げ、だらしないアヘ顔を浮かべた。

 『特殊工作用』のセックス・ドールとして改造された涼子の肉体は、邪水晶達、邪界のなすがままとされている。
 この与えられた悦楽は、涼子に対する『褒美』であり、これ以上の成果を挙げれば、妖魔の『寵愛』を受けられるという予兆でもあった。
 『教育』の過程で何度も繰り返され、彼女の肉体に染みついた感覚-
 それに涼子は、
 ジワッ
 小便を漏らしたかの如く、股を濡らす。
 その涼子の頭中に、
『ザッ・・・』 
 邪界からの指令が飛んだ。 
 涼子はそれに、
「・・・了解しました・・・」
 小さな声でそう答えると、朱美の許へ歩み寄る。

 涼子の変調に朱美は、情事の余熱に浮かされながらも、
「・・・先輩?」
 訝しげな表情を浮かべるが涼子は、 
「何でもないわ・・・そう言えば、明日、男子が帰ってくるわね・・・」
 そう言うと、顔に手を当て思案顔になり、朱美の言葉を遮った。

 涼子の言葉のとおり、遠征に行っていた男子部員が明日、このプール・サイドに帰ってくる。
 朱美は、それに胸の高まりを感じていた。
『先輩・・・』
 涼子とは別の意味で憧れる星野に、自分の成長した姿を見て貰える-
 そう、考えていたからだ。
 鍛え抜いた己の技と、この『ストレッチ』があればきっと大丈夫、とも。

 しかし、朱美のその浅薄な考えは見透かされたかの様に、涼子の言葉によって打ち砕かれた。
「・・・そうね、明日から『ストレッチ』を止めましょう」
「えっ!?どうしてですかっ!?」
 朱美は、自信の拠り所となっていたものが突如崩され、慌てて涼子に食ってかかる。

 それに涼子は苦笑を浮かべ、
「もう、そんなに慌てないの・・・貴女、『ストレッチ』は十分会得したでしょう?・・・今度南原さんには、『ストレス』に耐える訓練をしてもらうわ。『ストレス』は勝負事につきものだからね」 
 食いかかる朱美を両の手で止める仕草をしながら、窘めるような調子でそう、朱美に諭すのだった。
 
 涼子の話に一理を感じ、彼女に信頼を寄せる朱美は、
「・・・『ストレス』って・・・どういうことですか?」
 努めて冷静に、動揺を押し殺しながらそう、尋ねる。
 涼子の考えることであれば、深い考えがあることなのだろう。
 そう、考えてのことだ。
 だが、涼子から返ってきた答えは、朱美の想像だにしないものだった。

「・・・ふふっ、南原さん、貴女、星野君のことが好きなんでしょう?」
「・・・なっ!?」
 唐突に図星を突かれた朱美は、顔を真っ赤にして、デッキ・チェアから身を起こす。

 そんな朱美にも涼子は涼しげな顔で、
「うふふ、みんな知ってるわよ・・・貴女は隠していた積もりでしょうけど」
 そう言うと、今度は悪戯っぽい表情で微笑んだ。

 朱美はそれに、バツの悪そうな表情になると、
「う・・・」
 真っ赤な顔を伏せて押し黙る。
 それに涼子は、
「うふふ、別にいいじゃないの・・・みんな初々しいって、応援してるわよ?」
 そう、励ましの言葉を掛けながら朱美の肩を叩いた。
 しかし、朱美は矢張り、羞恥に顔を伏せるばかりだ。

 涼子はそんな朱美へ畳み掛けるように、
「・・・それでね、南原さん・・・貴女、星野君に抱かれたい、って思ったことはない?」
 とんでもないことを口にする。
 朱美は、 
「そんなことはっ!?」
 ガバっと顔を上げ、懸命になって涼子にそう、抗弁した。
 だが涼子は、
「あら、そう?・・・星野君って、結構いいモノ持ってるって評判よ・・・南原さんも、彼の水着姿でわかるでしょ?」
 そう言うと、本心を覗うかの如く、朱美の瞳を覗き込む。

 朱美は涼子の言葉に、星野の水着姿を思わず想像してしまう。
 鍛え抜かれた肉体、そしてそれを僅かに包む布-
 その盛り上がった水着の下に潜む、逞しい『モノ』を想像した朱美は無意識に、
 ゴクリ
 と唾を飲み込んだ。
 同時に、キュン、と締め付けるような疼きが子宮に走る。
 それは涼子に『ストレッチ』をされる直前、感じるものと同じものだった。

 その証に、
 ジワリ
 彼女の股が潤むのを、涼子は見逃さない。

 涼子は、
「・・・南原さん、星野君に抱かれたい、って思うことは恥ずかしいことではないわ・・・だって、私達だって抱かれたい、って思ってるわよ・・・ねぇ、前田?」
 そう、絵美との『ストレッチ』を終えた明里へ、水を向ける。
 明里は、
「ええ、『雌』だったら抱かれたい、って思うのは当然だと思いますよ・・・朱美も『雌』なんだし、当然じゃないの?」
 朗らかにそう答えると、朱美に柔らかい笑顔を投げ掛けた。

 朱美は、
「えっ、『雌』って・・・」
 涼子と明里の言葉に眉を顰めるが、
「『私達』はみんな『雌』じゃないの・・・南原さん、貴女だってそうでしょう?」
 『私達』を強調する涼子の言葉に、
「・・・え、あ、そうです、ね・・・」
 どことない違和感を感じながらも、表情を和らげる。

 涼子への信頼と、それに応える、十分過ぎるほどの成果-
 この2つが、朱美の涼子に対する警戒心を、グズグズに崩し始めていた。
 その結果として、『私達』というキー・ワードを与えてやりさえすれば、涼子の言葉を無条件に信じるようになりつつある。
 それは最早、『信頼』の域を超え、『依存』若しくは『従属』の域にすら達しつつあるものであった。

 涼子は朱美の反応が上々であることを確かめながら、次のステップへと移る。
「それで、『ストレス』のトレーニングの話なんだけど・・・南原さん、仰向けになってくれるかしら。ちょっと、お尻を突き出す様な感じで」
 涼子の急な話題転換に戸惑いながらも朱美は、
「・・・え、はい、わかりました」
 そう言うと素直に、デッキ・チェアに寝そべる様に、体勢を入れ替えた。

「うふふ・・・」
 涼子の眼前には、極薄の水着に包まれた臀部が、供物の桃の如く鎮座している。
 『新素材の水着』-邪界が開発した『調教具』であるそれは、朱美の肌に貼り付き、その肉体美のみならず、尻の割れ目や菊座などの『恥部』すらも余すところ無く、露わにしていた。

 涼子は、
「南原さん、これから何があっても振り返っては駄目よ・・・わかった?」
 そう命じると、
 ムニッ
 朱美の尻肉を両手で掴む。

 それに朱美は、
「ひゃうんっ!?」
 過敏に反応し、その身を起こそうとした。
 涼子は朱美の反逆に、
「もう、駄目だって言ったじゃない・・・藤田、前田」
 顎で二人にそう命じると、絵美と明里は無言で頷き、左右から、
 ギシッ、ギシッ
 女性のものとは思えない力で、
「痛いっ!?」
 朱美をチェアに押しつける。

 涼子は、二人が朱美の動きを確実に封じたのを見て、
「・・・そう、それでいいわ・・・ふふっ、それにしても綺麗なお尻ね」
 そう言うと、
 サワッ、サワッ
 朱美の尻肉を撫で回した。

 その微妙な感覚に朱美は、
「ひゃうんっ!?」
 甲高い声をあげ、背を仰け反らせようとするが、
 ガシッ
 絵美と明里によって、身じろぎすらできない。

「うふふ・・・」
 朱美の尻肉を堪能した涼子は邪な笑みを浮かべ、
 グイッ
 桃を割るかの如く、朱美の尻肉を左右に割く。
 そして顔を寄せると、形がくっきりと見えるようになった菊門へ、
 ピチャリ
 と舌を這わせた。

 朱美は、自由にならぬ体を震わせながら、
「ひゃぁっ!・・・ぶちょう、何をっ!?」
 そう叫ぶ。
 涼子はそれに答えず、
 ピチャッ、ピチャッ
 なおも朱美の蕾を舐め回し、水着が透けるほど唾液を塗すと漸く顔を上げ、
「んふ・・・南原さん、これからここへ入る『モノ』を、星野君の『モノ』だと思って受け容れてね」
 そう言うと、己の股布をずらし、
「・・・ふぅっ!・・・」
 グチュリ
 指を秘所の中へ突き入れた。

 グチュッ、コリッ
 そして膣中で何かを掴むと、
 ズルズルズルッ
 その『モノ』を一気に引き出す。
 ブルンッ
 産声を上げるが如く、粘液を飛び散らせながら現れた『モノ』が、涼子の股間に荒々しく屹立した。

 獲物を前に、鎌首を擡げた赤黒い蛇は、
 ブビュル
 その先から『猛毒』の汚液を吐き出す。
「「うはぁ・・・」」
 朱美を取り押さえる絵美と明里は、かつて彼女達を散々に嬲ったその『味』を思い出し、だらしなく口許を緩ませると、
 ジワリ
 股を潤ませた。

「うふふ・・・」
 涼子は邪な笑みを浮かべながらその醜悪な凶器を、
 グニィッ
 未だ固く門を閉ざす、朱美の未開の地へと押し当てる。

 己の中心に生々しい熱源を感じた朱美は、
「・・・先輩?」
 背中越しにそう声を掛けた。
 しかしその返答の代わりに涼子は、
 ズッ、ズブブッ!
 妖魔の精液で布の役目を放棄したボディー・スーツを、己が剛直で破きながら、朱美の奥底へとそれを叩き込む。

 鉄串を突き刺されたかの様な感覚の激流と、挿入とともに、臀部にのし掛かった涼子の重みが相まって朱美は、
「・・・うはぁはぁあっ!」
 肺に溜まった空気を全て吐き出しながら嬌声とも、悲鳴ともつかぬ声を上げた。

 涼子は、恍惚とした表情を浮かべながら、
「んふっ、南原さんのココ、とってもいいわぁ」
 そう嘯きつつ、
 ゴリッ、ゴリッ
 朱美の処女地を犯す。
 その凶器の先端からは、
 ビュッ、ビュッ
 女を狂わす『魔薬』が絶え間なく、腸壁に吐き出され続けていた。

 朱美は、
 メリッ、メリッ
 今まで排泄物以外の存在を受け容れたことのない器官に感じる、強烈な異物感に、
「・・・くうっ・・・ぐわぁああっ!」
 悲鳴にも近い声を上げ、苦悶の表情を浮かべていたが、それもやがて、
 グチュッ、グチュッ
 接合部から粘液質な音が漏れ始めると、
「・・・ん・・・はぁっ・・・」
 艶を帯びたものへと変わる。
 そして朱美の表情も、
「あっ、はぁんっ・・・」
 『クール・ダウン』を受けている時と同様に、『リラックス』した状態へ転じていった。
 腸壁から吸収された『魔薬』は朱美の肉体を発情させるだけではなく、性悦を従順に受け容れるようになった精神をも弛緩させる。

 明里は絵美に目配せすると、涼子の肛虐を甘受し、抵抗の意志を失った朱美の眼前に屈み、彼女へ己の顔を寄せた。
 そして、
「・・・うふふ、朱美ったらすっかり『雌』の表情ね・・・どう、朱美、チンポって気持ち良いでしょ?・・・今朱美の中に、コレが入ってるんだよ」
 そう言うと、肉色の卑猥なバイブを朱美の顔の前に翳しながら、笑顔で親友の瞳を覗き込む。

 朱美は性の熱に浮かされるように、
「・・・ん、はぁ・・・チン、ポ?・・・うん、気持ちいぃ・・・」
 明里の言葉を反復した。
 その朱美の反応を受け明里は、
「うふふ、そうだよね・・・でも、星野先輩のチンポって、もっと良いらしいよ?」
 そう、世間話でもするかの如く、親友に吹聴する。

 朱美は友の言葉に触発され、
「・・・星野、先輩、の・・・」 
 星野の水着姿を再び、脳裏に思い浮かべた。
 その姿は、
 グチュッ、グチュッ
 肉体の直接的な快楽と結びつけられ、やがて、
「ん、あ・・・先輩・・・」
 愛する人が己を抱く幻想へと変わる。
 厚い胸板に抱かれた朱美を背後から、逞しき分身で貫ぬく愛しき人。
 幻覚作用を含む、涼子の精液に侵された朱美の知覚は、眼前にちらつく淫具と、愛する人の秘めたる器官を結びつけながら、行為の主すら置換させてゆく。

 朱美は、
「・・・はぁっ・・・先輩・・・好き・・・もっと、もっと・・・」
 そう、譫言の様に呟くと、自ら涼子の動きに合わせ腰を振る。
 グチュッ、グチュッ
 夢にまで見た逢瀬に溺れるまま朱美は、底知れぬ悦楽の深みへと沈んでゆくのだった。

「ん・・・」
 ヌプッ・・・グププッ
 涼子は朱美から己自身を引き抜くと、ゆっくり体を彼女から引き離す。

 涼子の形のまま開いて、締まりのない朱美のアヌスからは、
 ドロリ
 濃厚な精汁が零れ落ちた。
 零れ落ちた滴は、小さな流れとなって、朱美の引き締まった臀部を汚してゆく。
 
「うふふ・・・」
 涼子はその淫行の証を、歪んだ口許で見送っていた。
 初めてのアナル・セックスにして、嫌悪感は始めだけ、最後は涼子のペニスを貪る様に腰を振る、という淫らさは、朱美への調教が順調に推移している証とも言えるだろう。
 それに、と、朱美との情事を思い出した涼子は、
 ビンッ
 彼女の醜き肉棒を、再び滾らせる。

 『セックス・ドール』として改造された涼子ですら、その味に耽ってしまう程、彼女の腸壁は『名器』であった。
 『調教具』たるボディー・スーツによって、淫らな肉体に改造されているとは言え、アナル奴隷の素質は、生来のものなのだろう。
 再び犯してしまいたい-
 涼子は、朱美のヒクつくアナルに再び手を伸ばそうとする。
 しかし、涼子の未だ硬度を失わない肉棒を、
「「ちゅぱ」」
 左右から伸びた、生温い肉の蛞蝓が押しとどめた。

「・・・ん、ふぅ・・・本多ぁ、こっちも相手してくれよ」
「・・・む・・・ぷはぁ・・・そうですよ、部長」
 絵美と明里が、涼子のモノから滴る白濁を舐め取りながら、媚びるような視線でそう、訴えかける。
 涼子と同じく『セックス・ドール』として洗脳・改造された彼女達にとって、涼子が体内で生成する妖魔の精液は、何にも勝る『御馳走』なのだ。

 涼子は、絵美と明里に己がモノをしゃぶらせながら、
「・・・」
 再び朱美を覗い見た。
 未だ彼女のアナルはビクビクと震え、涼子が吐き出した精液を垂れ流し続けている。
 再び肛虐に及べば、性の饗宴に狂い、良い声で泣き喚くだろうが、彼女を『我々』の様に、ただの性奴隷にすることが最終目的ではない。
 この悦びを餌として、更なる淫獄の深淵に彼女を沈めることこそ、目的なのだ。

 涼子は、
「ちゅぱっ、ちゅぱっ・・・」
 己の肉棒を懸命にしゃぶり、浅ましくも甘露を得ようとしている絵美の姿に、
『今日のところは・・・この程度でいいかしらね・・・それよりも、この娘達に
『ご褒美』をあげたほうが・・・』
 そう思案した。
 この作戦の実行責任者は涼子であり、絵美も明里も『部下』という立場である。
 彼女達に『褒美』を与えるのも、『上司』としては当然の事であるのだ。

 涼子が、
「・・・わかったわ、藤田・・・前田も、思う存分しゃぶっていいわよ」
 グイ
 腰を突き出しながら彼女達にそう告げると、
「「!!」」
 目の色を変えた絵美と明里が、
「はむっ・・・じゅぷっ・・・」
「れろぉっ、じゅるっ・・・」
 争う様に、涼子の肉棒へ貪りつく。

 涼子は、
「うふふ・・・」
 そんな二人を『上位者』として見下ろしながら、彼女達の水着が白くデコレーションされるまで、精を与え続けるのだった。

「・・・朱美、朱美ってば」
 朱美は、聞き慣れた声が己を呼び、
 ユサッ、ユサッ
 些か乱暴に揺り動かすのを感じ、目を開いた。

「・・・う、ん・・・」
 朱美が目を見開いた先には、『チーム』の3人が居る。
 先程までの情事が急に朱美の脳裏へ蘇り、
「ひあっ!?」
 その気恥ずかしさで、素っ頓狂な声を上げてしまった。

 だが、反射的にかい抱いた胸からは、
 サラッ
「え・・・?」
 予想外に、乾いた布の感触がする。

 気付けばいつの間にか、朱美は競泳水着をきっちりと纏い、性の残滓と呼べるものも綺麗に拭き取られていた。
 まるで、涼子との性交が幻であったかのようだ。
 しかし、身じろぐと、
 ヌチャリ
 肛内にまとわりつく粘液の感触が、涼子との交合が確かであったことを知らしめる。
 それは、
「・・・うふふ・・・南原さん、『ストレス』の味は、どうだったかしら?」
 涼子からもたらされた言葉でも、確証を得ることができた。

 朱美は涼子の問いに、
「・・・あ・・・はい、気持ち、良かったです・・・」
 素直に答えると、頬を赤らめた。
 『ストレッチ』で快楽を得ることには慣れたが模造品とは言え、『男性器』で
『性交』するのは初めてのこと。
 朱美はそれで感じてしまったことに些か、羞恥を感じていた。

 だが涼子は、そんな初々しい朱美を、
「・・・そう、でもこれを味わえるのは今回だけよ」
 そう言って突き放す。

 『ストレス』である肛虐を『ストレッチ』の代替手段と認識しつつあった朱美は、
「・・・え・・・それは・・・どうしてですか?」
 涼子の言葉の意味が俄には理解できず、混乱する。

 涼子は更に突き放す様に、冷たい視線を朱美に呉れると、
「・・・私は、貴女に『ストレス』を与える、と言ったはずよ?・・・貴女を悦ばせるだけでは、『ストレス』にはならないじゃないの・・・違う?」
 と詰問した。

 朱美は道理を得た涼子の言葉に、
「・・・はい・・・」
 と力なく返すしかない。
 
 そんな朱美に畳み掛けるように涼子は、
「・・・はぁっ、どうなんだか・・・それと、星野君との接触は大会後まで禁止するから」 
 朱美にとって、如何なる咎よりも過酷な通告を下した。

 涼子に従順な朱美でも、その通告には、
「そんなっ!?」
 口許を抑え、泣き出しそうな顔になりながらも、抗議する。
 星野には、自分の成長した姿を見て貰い、そして褒めて貰いたかった-
 淫らな欲望はまだしも、朱美のそんなささやかな望みさえも砕かれてしまったのだから。

 だが、涼子の命令は絶対だ。
 自分に逆らう術など、ない。
 涼子に抗弁しながらも、
「・・・そんなぁ・・・ぐすっ・・・ひぐぅっ・・・」
 朱美はただ悲嘆に暮れるしかなかった。

 そんな朱美に涼子は、漸く表情を和らげると、
「・・・もう、そんな顔しないの・・・大会が終わったら、星野君とイチャつくなり、アナルにハメて貰うなり、何でもしていいわ・・・それに、『ストレッチ』も、 今日の『気持ち良いこと』も、いくらでもしてあげる・・・だから、私の言うことを聞いて、全力で頑張りなさい」
 そう言って朱美の肩を叩いた。

 朱美は、
「ぐすっ、ぐすっ・・・」
 鼻をぐずりながらも、涼子の言葉に、静かに頷く。
 確かに涼子の言うとおりだ、と。

 涼子は、幼子の如く従順な朱美の姿に、慈母の様な笑みを浮かべると、
「・・・南原さん、これは大会で勝つための試練なの。『みんな』も『ストレス』を乗り越えてきたんだから、貴女も頑張らなきゃいけないわよ」
 優しくそう諭し、子供をあやすかの如く、ポンポンと朱美の背をさする。

 それに朱美は、目尻浮かんだ涙を手の甲で拭うと、
「・・・ぐすん・・・済みません、部長・・・私、頑張ります・・・」
 無理に笑顔を作りながら、涼子にそう宣言をする。

 それに絵美と明里も、朱美の肩を抱く様な姿勢で加わり、
「南原、これは誰でも通る試練なんだ・・・大丈夫、お前だったら乗り越えられるさ」
「そうだよ、朱美・・・『チーム』として一緒に頑張ろっ!」
 口々に励ましの言葉を贈ると朱美は、
「・・・みんな有り難う・・・私、頑張るねっ!」
 先程よりも力強い笑顔で、『チーム』の『友情』に答えるのだった。

 ザシュッ
 朱美は舞を舞うが如く、軽快にステップを踏んでは、
 ザシュッ
 下魔を一体、また一体と切り刻んでゆく。
 その死の舞を舞う朱美の顔には、
「うふふ・・・」 
 これまでに見せたことのない、妖艶な笑みが浮かんでいた。

 ザシュッ
 己が太刀を振るい、妖魔の命を奪うごとに、
 ビクビクッ
 ゾクゾクする様な快感が背筋を走り、尾骨へと抜ける。

 朱美は、
「・・・うふふ、そうよ・・・もっと、もっと・・・かかってきなさい!」
 そう叫んでは刀を上段に構え、下魔の群を挑発した。
 全身に妖魔の鮮血を浴び、刀から命の滴を零し続けるその姿は、修羅の如き様相を呈している。
 しかし、胸甲に隠れた胸は痛い程張り、既に用を為さなくなった股布からは愛液がしとどに溢れ、内股を汚していた。
 朱美にとって妖魔を斬る事は最早、快楽を得る手段に過ぎない。
 妖魔を狩ることは『使命』であり、『快楽』を得ることは恥ずべきものではない-それらは何よりも、『仲間』の雪が認めてくれていることなのだ。

 既に退路を断たれた下魔達は、僅かな可能性-実際にはゼロであるもの-に賭け、
「「グワォオオッ!」」
 怒声を上げながら朱美に殺到する。
「うふふ・・・」
 それに朱美はどこか歪んだ笑みを浮かべると、
「・・・あははっ!」
 やがてそれを哄笑に変じさせながら、妖魔の群へ飛び込んでいった-

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 荒く息をつき、立ち尽くす朱美の周りには、切り刻まれた妖魔の死骸が、撒き散らかしたかの如く、転がっている。
 だがその陰惨な光景と相反する様に、
 ピチャ、ピチャ
 朱美のスカートの中では雪が、朱美の火照った体の『クール・ダウン』を始めていた。

「・・・雪、もっと、奥っ・・・くぅんっ!」
 朱美は雪の上品な顔へ秘部を押しつけると、甲高い声を上げる。 
 部活での『クール・ダウン』を封じられ、星野との接触を禁じられた今となっては、これが朱美の最高の愉しみとなっていた。

 当初は『チ-ム』の皆と約束した手前、雪の『クール・ダウン』を朱美は拒絶したが、
『・・・部活での約束はわかりました・・・でも、メイデン・フォースとしての活動は、それとは別です・・・朱美さんの状態を最高にしておくことが、メイデン・フォースの『仲間』としての、そしてサポート役としての、私の責務なんです』
 との言葉には、折れざるを得なかったのだ。
 しかし、些かのやましさを感じていた朱美もいつしか、雪の『クール・ダウン』の『効果』に、疑問すら抱かなくなっている。
 

「れろぉっ・・・じゅっ、じゅるっ」
 雪が朱美の中へ舌を伸ばし、溢れる果汁を啜り始めた丁度その時、
 ガサッ
 右脇の茂みから突然、人影が現れた。
「・・・朱美?」
 疑問形の言葉を投げ掛けながら姿を現したのは、蒼乃であった。

 戦闘後の『クール・ダウン』は『秘め事』として、朱美と雪だけで愉しんでいる。
 如何に水泳部で痴態を晒しているとは言え、ここは命の遣り取りをする『戦場』-性質が全く異なる空間なのだ。
 それに、己の内面を打ち明けていない雪以外の『仲間』に、この事を晒す覚悟はまだ、朱美にはない。
 今日も、蒼乃と沙夜子が残敵の掃討で離れたことを確認し、戦線に復帰するまでの所要時間まで考慮したうえで事に及んだのにどうして-
 朱美は蒼乃の顔を見つめながら体を強張らせる。

 しかし蒼乃の反応は、
「あら、ごめんなさい・・・いいところを邪魔しちゃったかしら?・・・ふふっ」
 朱美の想像を超え、極めて軽いものだった。

 そればかりか、
「朱美ったら、そんな気持ち良さそうな顔をしちゃって・・・私も、戦闘があると興奮しちゃうの・・・ほら、こんな風に・・・」
 そう言うと、
 ファサッ
 群青のフレア・スカートを捲る。
 
 すると、咽せるような雌の淫臭とともに、
 ニチャァッ
 彼女の言葉の通り、興奮を示す淫らな粘液で濡れそぼった、ボディー・スーツが露わとなる。
 ボディー・スーツで吸収仕切れない淫液は、
 プクッ、ヌルゥッ
 股布の脇から時折泡立ちながら吐き出され、蒼乃の内股をしとどに汚していた。

 蒼乃はどこか陶酔と羨望が入り混じった、熱っぽい表情を浮かべながら、
「・・・私もね、時々雪にそうしてもらっていたのよ。みんなには内緒でね・・・ふふ、朱美、雪に舐めて貰うと気持ち良いでしょう?」
 そう言って、雪との『情事』を思い出したのか、
 ニチャッ、ニチャッ
 粘液で穢れた内股を擦り合わせる。
 その表情は『戦士』のものではなく、水泳部で見慣れた、『雌』のものだ。

 朱美がその姿に、
「蒼乃・・・」
 二の句を継ごうとした時再び、
 ガサガサッ
 茂みを越える人の気配を感じた。

「・・・お前達、何をしているんだ?」
 茂みの中から姿を現した沙夜子は、淫らな宴に興じる戦友を睥睨しながらそう言うと、腕を組み、仁王像の如く朱美達の前に立つ。

「・・・っ!」
 朱美は、沙夜子の様子に、再び体を強張らせる。
 蒼乃は自分と同じだ、と言って呉れたが、沙夜子がそうである確証はない。

 しかし、朱美の不安と裏腹に、蒼乃は、
「あら、やっぱり沙夜子だったのね・・・うふふっ、朱美、沙夜子のほうがもっと凄いわよ」
 そう言って、悪戯っぽい微笑を浮かべると、漆黒に彩られた沙夜子のフレア・スカートを手にする。

「蒼乃、何を・・・」
 朱美の疑問が蒼乃へ完全に届く前に、
 ファサッ
 蒼乃は沙夜子のフレア・スカートを捲り上げた。
 その瞬間、
 ムワァッ
 蒼乃の時とは異なる、強烈な性臭が、朱美の鼻をつく。

 だがその噎せ返るような『牡』の性臭よりも朱美は、
「~~~っ!」
 目に飛び込んできた光景に、声にもならぬ驚愕の呻きを上げる。

 フレア・スカートの下に覗く沙夜子の下半身では、星野と同様、いやそれ以上の膨らみが、薄布を盛り上げていたのだ。
 沙夜子は、朱美の無遠慮な視線に、
「・・・不覚にも妖魔との戦闘中に、寄生されてしまったんだ・・・祓うことはできないし、藤崎先生の話では、神経に癒着して切除もできないらしい・・・恥ずかしい限りだ・・・余り、見ないでくれ・・・」
 そう言うと、恥辱に頬を染め、朱美から顔を逸らす。
 しかしその少女の様な態度とは裏腹に、彼女の密やかな肉塊の先端からは、
 ビュクッ、ビュクッ
 何かを期待する汚汁が溢れ出し、腹の周りに大きな染みを作っていた。

 蒼乃は朱美に柔らかな微笑を向けながら、
「ねっ、凄いでしょう?・・・沙夜子も、私達と同じで、戦闘で感じてしまうの・・・ふふっ、朱美はどうなのかと思っていたけれど、一緒だったのね」
 そう言うと、沙夜子のフレア・スカートは離さずに、
「・・・沙夜子、朱美に貴女のソレ、見せてあげたら?・・・『仲間』なんだし、良いでしょう?」
 催促の言葉を投げ掛ける。

 沙夜子は、一瞬逡巡の表情を見せたが、
「・・・解った・・・」
 そう短く答えると、股布を脇にずらし、
 ヌルッ
 粘液で滑るボディー・スーツの中に手を差し入れた。

 沙夜子は、
「んっ・・・」
 グニッ
 肉棒の先端を掴むと、
 ヌルッ、ズヌルルッ
 一気にそれを、薄布の外へ引き出す。

 抑圧から解放された醜き肉塊は、
 ブルンッ・・・ブビュッ、ビュッ
 姿を現すなり、マグマの如き熱い塊を、辺りに撒き散らし続けた。 
「やだ、敏感になってる・・・」
 沙夜子は羞恥の対象から顔を逸らしてはいるが、それを握る手は、離さない。

 その噴火の一沫が、
 ピチャッ
 呆然と見つめる朱美の頬に散る。
 それは牡の生殖液特有の、生臭い臭気を強烈に放っていた。

 いつの間にか朱美から離れた雪が、
「沙夜子さん、勿体ないですよ、もうっ・・・」
 そう頬を膨らませながら沙夜子の許へ歩み寄ると、
「は~むっ・・・ちゅっ、ゴクッ、ゴクッ」
 肉棒を口一杯に頬張り、精液を飲み干し始める。

 朱美は眼前で繰り広げられる淫らな宴に、ただ驚愕するだけだ。
 今まで己が秘めてきた『情事』など、児戯にすら感じる。
 そんな朱美の許へ蒼乃はゆっくりと近づくと、
「・・・朱美、どうしたの?・・・『私達』は『雌』じゃない。貴女も私も・・・ほら・・・」
 そう言い、朱美の右手を取ると、
 クチュ
 己の濡れた秘所へそれを導く。
「あ・・・」
 そこはかつて雪に触れた時と同じく、熟れ、火傷しそうなほどの熱を帯びていた。

 蒼乃は朱美の手で自慰をするかの如く、己の敏感な場所に触れさせながら、
「あんっ・・・朱美、『雌』は素直に、気持ち良くなってもいいの・・・それに
『私達』は四神の巫女・・・妖魔を倒すのが使命なのよ?・・・その成果に快感を感じても、何らおかしいことはないわ」
 朱美に含ませる様に、言い聞かせる。
 そして、
 グチュ
 彼女に負けぬ位熱い、朱美の秘所に触れた。

「蒼、乃・・・」
 涼子達によって性悦に従順となり、『仲間』との障壁を著しく削られた朱美の
『理性』は、一番の親友である蒼乃の言葉を、『好意的』に解釈する。
「・・・う、ん・・・いいんだよね、私達・・・妖魔を殺して・・・気持ちよくなっても・・・『雌』、なんだし・・・」
 朱美は、どこか虚ろな目でそう、ポツリ、ポツリと言の葉を零す。

 蒼乃は内心、朱美のその反応にほくそ笑みながら、
「そうよ朱美・・・それに『雌』は、淫乱でも良いの。それが自然なことなのだから・・・『私達』は巫女であることさえ守れば、何をやってもいいのよ」
 『仲間』であることを強調しながらそう、朱美の背を押した。

 邪水晶に第二の楔『仲間を無条件に信頼する』-を進言したのは他ならぬ、蒼乃である。
 仲間想いで、正義感の強い娘-
 その朱美の性格を蒼乃は、十二分に知っている。
 彼女の『正義感』が洗脳を邪魔するのであれば、『正義』そのものである『仲間』に絶対の信頼を寄せさせ、その二つを『同化』させてしまえば良いのだ。
 邪水晶と蒼乃の目論見通り、朱美の『同化』は順調に進行している-
 蒼乃は朱美が真の『仲間』になることを確信し、
「うふふ・・・」
 邪な笑みを浮かべた。

 蒼乃は、
 ヌチュッ
 濡れそぼる己の泉から、朱美の右手を離すと、
「・・・ねえ、朱美・・・沙夜子のソレに触ってみたらどう?・・・うふふ、私達のココと、違う感触がするわよ」
 そう言って、そそり立つ肉の塔へ導く。
 そして、重ねた手を、朱美の手の甲を折るようにして、
 ギュッ
 沙夜子の肉棒を握らせた。

「「・・・あ・・・」」
 朱美と沙夜子からは、それぞれ意味合いの異なる、短くも熱っぽい吐息が同時に漏れる。
 それを聞き届けた蒼乃は、
「・・・藤崎先生の話だと、沙夜子のコレって、男の人と同じ機能を持っているんですって・・・だから、ホラ、こうすると・・・」
 そう言うと、朱美に重ねた手を動かし、
 グニィッ
 沙夜子の肉棒を擦らせた。

「・・・んあっ!」
 沙夜子は、普段のクールさからは窺えない『雌』の表情を浮かべ、朱美の『手淫』に喉元を仰け反らせる。
 そのしどけない表情と痴態は、
「・・・ん・・・」
 朱美の奥底に潜む、嗜虐心を刺激する。

 コシュッ、コシュッ
 朱美は、蒼乃に導かれるまでもなく『手淫』の速度を早め、沙夜子を責め立てる。
 すると、
「・・・んっ、はぁっ、朱美ぃ、だめぇ・・・」
 先程よりも弱々しく艶やかな嬌声が、沙夜子の喉から漏れ始めた。

 沙夜子とはそりが合わないとは言え朱美は、彼女を憎んでいるわけではない。
 彼女も大事な『戦友』であり、大切な存在だと強く思っている。
 しかし、今彼女の眼前で弱々しく鳴き声を上げる沙夜子は、凛々しい『戦友』ではなく、ただの『雌』にしか見えない。

「うふふ・・・」
 今度は確実に、朱美の瞳に嗜虐の色が浮かぶ。
 朱美は、握り潰すかの如く、
 ギュムッ
 沙夜子の肉棒を握る手に力を込めると乱暴に、
 ゴシュゴシュゴシュゥッ
 扱きあげ始めた。
 それは『愛撫』などではなく、『陵虐』そのものである。 

 突然の陵虐に沙夜子は、
「あひぃっ!?」
 腰を浮かせ、逃れようとするが、
 ガシッ
 両肩を蒼乃と雪に押さえられてしまう。

 朱美は、
「はははっ・・・」
 ピキッ
 肉棒が熱と硬度を増す程、
「・・・うっ、はぁっ・・・ひぐぅっ!?」 
 凛々しさや理性を失う、沙夜子のコントラストに酔いしれ、
 グニッ、グリュッ、ヌリュッ
 玩具を弄ぶかの如く、
「あははっ、沙夜子、無様ね・・・仲間の手でこんなに固くするなんて・・・まるで種馬みたいよっ!」
 沙夜子への『性的虐待』に狂喜するのだった。

 やがて、肉と布の摩擦熱だけではなく、肉槍そのものの熱が朱美のグローブの内に籠もり始めた頃、
「・・・やっ、ダメっ・・・イ、イクゥゥッ!」
 沙夜子は、
 ビュルッ、ビュルッ、ビュルッ
 朱美の薄紅色のグローブを白濁に染めながら、果てた。
 
 己のグローブを、青臭い汚液で染められながら朱美は、
「・・・」
 硬度を失いつつある沙夜子の肉塊を握り締めたまま、
 ビュクッ、ビュクッ
 未だ痙攣し、樹液を吐き続ける肉幹を呆然と眺め続ける。

 熱狂の後の虚脱感に身を浸す朱美の傍らに、雪はそっと体を寄せると、
「・・・どうですか、朱美さん、凄いでしょう?・・・コレが男の人がイクってことなんですよ・・・私達は巫女だからできないけれど、ココでこれを受けたら、どんな感じなんですかね?」
 そんな言葉を吐きながら、
 クチュ・・・グニッ
 朱美の秘所に触れ秘裂をくつろげると、彼女の可愛らしい親指で、膣口を丹念に『マッサージ』する。

「あ・・・」
 雪の、精液の様な白いグローブが、いやらしく秘所を這い回る光景と、シルクの様に滑らかでいて、雪の熱気と汗でじっとりと蒸れたグローブの感触は、今も触れる沙夜子の肉棒の感触と相まって妙な生々しさを生み、
 『私のアソコに、男の人が・・・』
 朱美に男性との性行為を想起させた。
 
 そんな朱美の頬に、
 ヌルッ
 滑り気のある、『ルージュ』が引かれる。
「ふぁっ・・・」
 その『ルージュ』からは『牡』の鮮烈な臭気が立ち上り、
『・・・これが、『牡』、の、臭い・・・』
 朱美の淫猥な妄想を、臭覚から補強した。

 蒼乃は、雪の反対側に身を寄せると、己の指先に塗りつけた『精液』を、
 ヌルッ、ヌルッ
 化粧でも施すかの様に、朱美の顔へ塗りたくる。
 そして、
「・・・朱美、私達も『巫女でなくなったら』、好きな人とこうして、気持ち良いことできるのにね・・・」
 そう言うと今度は、掌に刮ぎ取った沙夜子の精液を、
 ドロリ
 と、中指を滑らせる様に、朱美の秘所へと垂らした。

 クチュッ、クチュッ
 精液にデコレーションされた淫猥な指は、膣口の周りに劇薬を塗りつけつつ、朱美の核心部分を浅く、犯してゆく。
 それは、最も秘やかな部位に熱を持たせるほどに、
「・・・ふっ、ふあぁぁっ!?」
 彼女の精神を冒すにも、十分な効果を発揮した。

 『星野先輩に犯されたい』
 肉欲と悦楽、理性と甘言と言う、偽りの『解決』により、朱美の秘められた願望は顕在化する。
 だがそれは、偽りのものであるが故、
 『・・・やっぱりダメ、よ・・・私は・・・』
 生来、と言って良い程彼女を縛り付けてきた、『使命』によって打ち消された。

 しかし、
「・・・うふふ、朱美さんのココ、ぐちゅぐちゅですよ・・・今、何を考えてるんです?」
「朱美、巫女って辛いわよね・・・いっその事、好きな人が犯してくれたらいいと思わない?」
 防波堤に返された波が再び寄せる如く、友から発せられる言葉の波と、
 クチュッ、クチュッ
 クニッ、フニッ
 肉体から押し寄せる悦楽の波に、朱美の脆い理性はゆっくりと削られてゆく。

 やがて朱美は、
「・・・星野、先輩・・・」  
 『ごく自然に』、『行為』の相手を思い人に置き換え、淫らな妄想の中へ沈んでゆく。
 そして悦楽と媚薬で朦朧とする意識の中、
「せん、ぱい・・・好き・・・朱美のココ・・・おっきいソレで・・・いっぱいにして・・・」
 グチュッ、グチュッ
 淫婦の様な笑みを浮かべ、『愛する人』である雪に
 ギュッ
 と、抱きついた。

 そして朱美は星野自身を迎え入れるかの如く、
 ググッ
 雪の指で、巫女を守る最後の門を、押し開こうとする。

 その様子を眺めていた蒼乃は、邪な笑みを浮かべながら朱美の耳に口を寄せ、
「・・・うふふ、朱美、良かったわね・・・でも、貴女・・・本当にそれでいいの?」
 そう、囁くと、朱美の腿を優しく押しとどめた。

 朱美にはまだ『主人』の望みを果たすため、巫女であって貰う必要がある。
 今は、彼女の意識下に堕落の甘美さを刷り込めば十分なのだ。
 それに果実は、腐らせれば腐らせるほど、甘みを増す。

 朱美は蒼乃の言葉に、ビクリと体を震わせると、
「・・・私、何を・・・」
 己が成さんとしていた劣情を、
 クチィッ
 膣深くに食い込んだ雪の指で実感する。
「!!」
 そして朱美は慌てて腰を引くと、己の『罪』にその身を震わせた。

 青ざめる朱美に蒼乃は、優しく後ろから朱美を抱き留めると、
「・・・朱美、気持ちは解るけど、早まってはいけないわ・・・自分の全てを捧げるのであれば、相手と時期を考えるべきよ・・・」
 そう言の葉を、朱美の耳中へと練り込む。

 だが朱美は、ガタガタと震えながら、己の罪の重さに、
「・・・私、私・・・」 
 そう呟くばかりだ。
 
 フワッ
 そんな朱美を包み込む様に、雪と沙夜子も両脇から、朱美を抱き締める。
 そして、
「・・・朱美さん、そんなに落ち込まないでください・・・私達は『巫女』以前に『雌』なんですから、こんなこともありますよ」
「そうだ、朱美、雪の言うとおりだよ・・・私達は『雌』なんだ。淫らな気持ちに流されても仕方ないさ」
 そう『慰め』の言葉を朱美に掛けると、
 ギュッ
 一層強く朱美を抱き締めた。

 戦友達の体温と相まって、その言葉は、
 ジワリ
 と朱美の中へ浸透する。

 朱美の震えが止まったのを感じた蒼乃は、
「・・・朱美、大丈夫よ・・・貴女には私達がついてる・・・だから安心して・・・みんなで支え合っていきましょう」
 そう言うと矢張り、
 ギュッ
 朱美を強く抱き締めた。

 朱美は皆の『友情』に、先程までのものとは別の意味でその身を震わせる。
 そして、
「・・・あり、がとう、みんな・・・」
 小さな声でそう呟くと、暖かな感情に頬を染めた。

 しかし、彼女の頭上では、邪な笑みを浮かべ合う『友』の姿があることを、朱美は知らない。

 ピッ
 笛の音が響く度、
 バシャンッ
 プールの右半分には力強い波が、左半分には華麗な波が押し寄せる。
 
 男子水泳部がプール・サイドに戻って、3日が経過した。

 涼子から星野との接触を禁じられた朱美は、その思い人との接触を、可能な限り避けている。
「星野先輩・・・」
 しかし、彼女の視線の先はほぼ常に、星野のもとにあった。
 涼子に『ストレス』の試練を与えられているとは言え、自らが抱く想いを封じることは、容易なことではない。
 
 今も、朱美の視線は、男子部員と談笑する星野に向けられている。
 だが、その向けられる先には、異変が生じ始めていた。
 それは、厚い胸板に、逞しきモノが潜む薄布-
 『雌』としての自我を得つつある朱美は、無意識のうちに、星野を『牡』と認識し始めているのだった。

 サポーターに包まれているとは言え、その存在を隠しきれない星野の『モノ』を想像した朱美は、
 グッ
 思わず、掌を握り締める。
 その掌には、昨夜感じた、沙夜子の『モノ』の感覚が蘇り、星野とそれを重ねた朱美は、思わず赤面した。
『・・・でも・・・』
 朱美は、心中でそう独りごちると、次の句を継ぐ前に、頭を振ってそれを消し去ろうとする。
 それは余りに、淫らな疑問だったからだ。

 丁度その時、
「・・・次、南原さん」
 涼子が救いの手をさしのべるかの如く、準備を促す言葉を朱美に投げる。

 朱美は、
「・・・は、はいっ!」
 ゴーグルを填めながら慌ててスタート台に立つと、
 ピッ
 ザプンッ
 涼子の笛で、プールに飛び込んだ。
 乱れる心中とは対照的に綺麗なスタートを決めた朱美は、邪念を振り切りように全力で50mを泳ぎ切り、華麗なターンでゴールへと向かう。
 息継ぎで横を向いた瞬間、隣のレーンで男子部員が泳ぐ姿が、ゴーグル越しに目に入った。
 バタフライで激しく掻き乱される水流は水泡となって、力強く突き出される水着の上を流れてゆく。

 その瞬間、
 ドクンッ
 涼子に犯された感覚が蘇り、アヌスが、
 キュン
 と疼く。
 それは視覚と感覚の生々しいマッチングを産みやがて、
『・・・星野先輩のって・・・入れたら・・・どんな感じなんだろう?』
 疑問の続きと結び付けられ、朱美は反射的に、
 ゴクリ
 と、喉を鳴らす。

 しかし朱美は、
『・・・ダメよ今は・・・『ストレス』と戦わなくちゃ!』その淫らな想像を振り切るようにバタ足を加速させると、邪念を断ち切るかの如く、腕に力を込めた。

 ザバッ
 スタート台の手摺りを掴んだ朱美は、水を滴らせながらプール・サイドへ上がる。
 タイム・トライアルではない試泳だから、誰もそこには居ない筈だ。
 涼子に『ストレス』に耐える訓練を命じられたのにも関わらず、
 ジュン 
 潤んだ股間を、誰にも見られたくはない。
 肢体にまとわりついた水が乾いてしまう前に、これをどうにか『処理』しなくては-
 だが、そう考えながらプール・サイドへ上がった朱美を、
「よぉ、南原。いい泳ぎしてるじゃないか」
 今最も会いたくはない人物が、賞賛の言葉とともに出迎えたのだった。

「星野、先輩・・・」
 朱美は呻くようにその人物の名を呼ぶ。
 普段から気さくな人柄で、部員皆から愛されるその人懐こい笑顔が今は、憎い。
 しかしそんな朱美の心中を知る筈もない星野は、
「本多から聞いたよ。リレーの代表に選ばれたんだって?でもこんな凄い泳ぎをするんじゃ、納得だよな」
 そう言って、朱美に歩み寄る。

 それに朱美は、
「あ・・・」
 僅かに後ずさるが、
「これなら自信をもって大丈夫だ。頑張れよ」
 そう言う星野の手が、
 トン
 肩に触れる。
「!!」
 最早それが、彼女の限界だった。

 朱美は、耳から項まで紅潮させながら俯くと、
「・・・っっ!・・・済みません、失礼しますっ!」
 そう頭を下げ、
 タッ
 星野から逃れる様に、プール・サイドを走り去る。
   
 朱美が零した水溜まりの前には、呆然と立ち尽くす星野だけが取り残された。
 その様子を見ていた涼子が、星野の許へ歩み寄る。
 そして、
「・・・星野君、ゴメンね。今あの子、大会前のプレッシャーで、ちょっと情緒不安定なのよ・・・許してあげてくれる?」
 そう言うと星野に頭を下げた。
 星野は面食らいつつも、
「・・・あ、いや、いいんだ・・・それよりも、あんまり追い詰めるのは良くないぞ。ちゃんとフォローしてやれよ」
 そう言うと、無理な笑顔を作り手を振りながら、涼子の前から去る。

 涼子はその言葉に、
「・・・うふふ、大丈夫よ、星野君・・・『フォロー』はちゃんとするから」
 そう応じると、絵美に目配せをした。
 絵美が頷くのを視界の隅に収めながら涼子は、朱美が走り去った女子更衣室へと向かう。

 それを見送った絵美が、
「・・・みんな、紅白対抗のタイム・トライアルをやるわ。ロッカー番号の順に並んで」
 女子部員にそう、号令を掛けると、プール・サイドは俄に騒がしくなった。

「はぁっ、はぁっ・・・」
 女子更衣室に駆け込んだ朱美は、
 ダンッ
 ロッカーへ乱暴に背を預けると、股間に手を遣る。
 既にそこは、プールの水ではない液体によってしとどに濡れ、腿までそれが伝い始めていた。
「・・・んっ、くぅっ・・・星野先輩ぃ・・・」
 朱美は甘えるような声を零すと、
 グチュ
 己の淫汁で変色した股布の上から、熱く滾るクレバスをなぞる。

 それだけで朱美は、
 ビクンッ
「・・・ああっ!」
 軽い絶頂に達した。
 だがそれは、
「・・・あふぅん・・・」
 より深い悦楽を知る彼女にとって、不満を煽るものでしかない。

 朱美は、
「・・・ん・・・」
 そろりと右手を臀部に這わせると、恐る恐る人差し指を、不浄の孔に伸ばす。
 僅かに指先が触れた刹那、
 ビリッ
「くあぁぁっ!」
 高圧電流が走ったかの如く、悦楽の波が、全身を襲った。
 
 朱美は、麻薬患者の様に、恍惚とした表情で、
「ふぁぁあ・・・」
 グニッ
 指先を布地ごと中へと押し込む。
 グニッ、グニッ
 押し込まれた布地がアナルを擦る度に、
 ビリッ、ビリビリッ
 強烈な快楽の波が朱美の中を駆け巡るが、男子との合流後、再び身に付けることとなった旧来の素材を使用した競泳水着は、新素材のものよりも伸縮性がなく、彼女が期待するところよりも押し込むことができない。
 それは尚更、彼女の性的焦燥感を生む。
 ヌルッ
 その一方で、彼女の肉体は更なる悦楽を要求した。 

 朱美が、その焦燥感に耐えきれなくなり始めた頃合いを見計らったかの如く、
 ガチャッ
 更衣室の扉が開かれた。

「っ!!」
 朱美はその音に、全身を強張らせる。
 恐る恐る巡らせた彼女の視線の先には、
「南原さん」
 星野とは別の、顔を合わせたくない人物が腕を組み、朱美を睨んでいた。

 悪戯を見咎められた子供の様に、ただロッカーに背を預け、その身を震わせる朱美に、涼子は無言で歩み寄る。
 そして、
「南原さん」
 再び朱美の名を呼ぶと、
 バン
 軽くロッカーを叩くようにして左手をつくと、顔を朱美に寄せる。
 そして、朱美の瞳を覗き込みながら、
「南原さん、貴方、オナニーしていたわね?・・・『リラックス』は大会まで禁じていたはずよ?」
 そう、詰問した。

 朱美はそれに、弱々しい声で、
「・・・申し訳、ありません」
 そう答えると、再び俯く。
 涼子は、
「・・・はぁっ・・・仕方ないわね。ストレスで潰れてしまっては仕様がないし・・・今日だけよ・・・南原さん、裸になりなさい」 
 内心では朱美を嘲笑いつつも、厳粛な顔でそう、朱美に命じた。

 朱美は、
「・・・はい・・・」
 そう短く返答すると、手許を震わせながら、水着の肩紐に手を遣る。
 だが涼子は、
『うふふ・・・』
 その朱美の瞳の中に期待の炎が灯るのを、見逃すことはなかった。

 朱美は、
 スルッ
 肩紐からゆっくり肩を抜くと、水ではなく汗で貼り付いた水着を、滑らかな曲線に沿ってゆっくりと、下ろしてゆく。
 やがて、
 プルンッ
 彼女の女性の象徴が、弾ける様に自己主張すると、微かに甘い香りが涼子の鼻を突く。
 見れば、彼女の頂きには僅かに、母性の徴が浮かんでいた。
 朱美は性悦への期待による興奮のためか気付いている様子はないが、肉体の淫乱化も後段といったところだろうか。
 これならばこれからの行為も十二分に『愉しむ』ことができるだろう。

 それを保証するかの如く、
 ニチャァ
 粘液質な音を立てつつ、股布が剥がされる。
 ベチャ
 それから直ぐに床へ落とされた水着の音が、朱美の期待の大きさを示していた。

 窮屈なラッピングを剥がされた朱美の股からは、解放された重力を謳歌するかの様に、
 ネトォ、ビチャッ
 汚液が糸を引いて、矢張り汚れた水着の上へ零れ落ちてゆく。
 股の周りも、薄いヘアーがべったりと貼り付くほど汚れ、汚れの筋は膝あたりまで達していた。

 涼子が、
「・・・うふふ、本当に仕方ない娘ね・・・南原さん、股を開きなさい。舐めてあげるわ」
 そう、朱美に言うと、朱美は、
「・・・はい・・・」
 ニチャ
 ねとつく股関節を、ゆっくり開く。

 涼子は、匂い立つ朱美の股間に顔を寄せると、
「・・・他の皆には、内緒だからね?声を上げないようにしなさい」
 そう言って、
 ピチャ
 朱美の腿に舌を這わせた。

 朱美は、涼子の命に、
「・・・はい・・・んっ、むぐっ・・・」
 指を噛んで懸命に応えようとする。
 朱美にとって涼子の『命令』は既に、『成果を得るための最適な方法』として認識されていた。
 故に、彼女が恥辱で躊躇することがあっても、涼子の『命令』に何ら疑問を抱くことはない。
 寧ろ、涼子の『命令』に従うことが、彼女の悦びにすらなりつつある。

 涼子は、その朱美の姿に満足しながら、
 ピチャッ、ピチャッ
 腿、股関節、股座と、貼り付いた雌汁を丹念に舐め取っていった。
 その間、朱美は、
「・・・むっ、むぐぅっ!」
 絶え間ない悦楽に苛まれながらも、意地ましく、忍従の時間を過ごす。
 
 やがて、
 ピチャ
 涼子は、最後に垂れかかった滴を舐め取ると、
「・・・んふっ・・・少しは綺麗になったようね・・・南原さん、もういいわよ」
 朱美の粘液でベトベトになった顔を上げた。
 ロッカーにはニスを塗りたくったかの如く、朱美の淫液が濡れ光っている。

 朱美は、安堵したような、
「・・・ぷはっ・・・」
 嘆息を零すと、口の中に深く食い込んだ指を、漸く吐き出した。
 見れば人差し指に、痛々しい歯形が浮かんでいる。
 しかしその表情は痛みではなく、淫欲に歪んでいた。
 
 涼子は、
「・・・うふふっ、満足できてないって顔ね・・・大丈夫よ、ちゃんと『ストレス』を解消してあげるから・・・そこに寝そべって、お尻をこちらに向けなさい」
 そう言いながら、顎で更衣室に置かれた長椅子を指し示す。
 
 朱美は、
「はい・・・」
 素直に頷くと、樹脂製の長椅子へ腹這いに横たわり、誘う様に、尻を高く突き出す。
 長椅子に押しつけた胸や腹からは、樹脂の冷たい感触が伝わってくるが、淫欲で火照った体には、それが心地良い。
 ヒクッ、ヒクッ
 既に悦楽を待ちきれない風体のアヌスは、小刻みに痙攣し、涼子の陵虐を待つ。

 涼子は、
「ふふっ、すっかりできあがっているじゃないの・・・本当にイヤラシイ娘・・・今から挿れてあげるけど、鳴き声が漏れないように、そこのタオルを咥えていなさい」
 そう言うと、
 サワッ
 朱美の尻を、じっとりと撫で回す。

 朱美は、その刺激に、
「んくぅっ!?」
 甲高い嬌声を漏らしかけるが、長椅子の端、自分の右前に置かれたタオルを犬の如く口だけで咥えると、家畜の様に大人しく、涼子の『愛玩』を待つのだっ た。
 それは最早、『先輩と後輩』の枠を超え、『支配者と隷属する者』の関係に近い。
 涼子は、肉体だけではなく精神までも、『改造』が順調に進行していることを認め、声もなく破顔した。

 涼子は、秘所に右手を遣り、
 「・・・んぁっ・・・」
 グチュルンッ
 逞しい己の分身を引き出すと、朱美の背後からのし掛かり、
「ふふ、いい娘ね・・・たっぷり可愛がってあげるわ・・・」
 心の底から浮かんだ言葉を投げ掛けながら、ここ数週間の肉体改造で一回り大きくなった朱美の胸を、
 グニィッ
 押し潰す様に、揉みしだく。
「・・・ふごっ!」
 朱美はそれにタオル越しのくぐもった悲鳴を上げるが、
 ピュルッ
 涼子の掌には、明確な言葉よりも確かな、悦びの『声』が迸る。

 涼子は、
「うふふ・・・」
 更なる悦びの『声』を得ようと、胸全体をマッサージするようにじっくり揉みほぐすと、
 クニッ、コリッ
 朱美の乳首を指先で押し潰した後、一気に捻り上げた。

 すると、
「ふごごぉっ!」
 ビュルルッ
 今度は『絶叫』と呼ぶに等しい母乳が、涼子の掌から溢れる。
 
 涼子は、母乳に塗れた右手を舐り、
「・・・んっ、甘い・・・それにしても、まるで雌牛みたいね・・・でもいい傾向だわ、南原さん。『雌』に近づくことは、女として当然のことだもの・・・『リラックス』の面で、競技にもいい影響があるわ」
 そう、吹聴した。
 朱美は、
 ビュルッ、ビュルッ
 涼子に搾乳される度、乳頭が捲り返るような快楽に苛まれながらも、
「・・・ふごっ、ふごっ!」
 憑かれた様に、何度も頷く。 

 だが、涼子が一転、 
「・・・でも、『ストレス』への耐性は、もっと高めて貰わないと困るわ・・・ふふ、今からその『特訓』をしてあげる・・・」
 そう、冷たい声で突き放すと、
 ビクッ
 怯えたように、体を強張らせた。

 涼子は己の滾る怒張を、
 グニッ
 朱美のアヌスに押し当てると、
「・・・決して振り返ってはいけないわ。・・・そうね、椅子でも抱いて、しっかり堪えなさい」
 そう言って、朱美が己の指示に従って椅子に抱きつくのを認めると、
 ズプププッ
 朱美の直腸目掛けて、一気に肉の凶器を叩き込む。

 朱美は、望んだ、しかし激烈な奔流に、
「・・・うごほぁぁっ!」
 タオルを噛み千切らんばかりの『嬌声』を上げた。

 涼子は熱き肉の塊で、
 グチュッ、グチュッ
 腸液でじっとりと濡れる直腸の内壁を、荒々しく蹂躙する。
 それに呼応するかの如く時を置かずして、朱美の肉体に、
 ビクビクビクッ 
 変調の兆しが訪れた。
 
 それを見計らっていた涼子は、深く沈めていた肉棒を、
 ヌプッ、グププッ
 抜く直前まで引き戻す。
 絶頂の寸前まで追い遣られていた朱美は、
「・・・ふあっ・・・んふぅ・・・」
 強制的に水を浴びさせられた情欲の炎の燻りに、切ない吐息を吐いた。

 朱美の吐息が嘆息へ変じようとするところで涼子は、
 ズプププッ
 再び、己自身を朱美の中に埋め込む。
 肉体、精神ともに弛緩しきっていた朱美は、
「ぐもぉっ!?」
 今日最初に犯された時よりも更に激烈な感覚に、文字通り全身を、
 ビクビクビクゥッ
 震わせた。

 涼子は荒々しく朱美を犯しながらも、朱美が絶頂に達する寸前でその勢いを弱め、焦らす-
 それは言わば、飼い犬に『お預け』を食わせる行為にも等しいものだ。
 その朱美に対する負荷-『ストレス』は、
 ピチャンッ、ピチャンッ
 長椅子の端から滴るほどの母乳と愛液の量で推し量れる。

 朱美は、自らが吐き出した淫液でローションをぶちまけたかの様に、ヌルヌルになった長椅子に、
 ヌルッ、ヌルンッ
 全身を擦りつけながら、
「・・・うぶっ・・・ごえぇっ」
 涎でビチャビチャになり、呼吸すら塞ぐようになったタオルを吐き出そうと、嗚咽した。

 しかし、
「・・・南原さん、吐き出すのを我慢したら・・・最後までイカせてあげるわよ?」
 涼子は快楽を『餌』に、朱美を巧みにコントロールする。
 どんな苦痛であっても、『餌』さえあれば従順に従う『雌』に教育するため-
 果たして朱美は、
「・・・ふごぉっ、じゅごごぉっ」
 濡れそぼったタオルを、一杯に吸い込み尻を振って、『家畜』の如く、涼子のモノを浅ましくねだるのだった。

 涼子は、朱美の尻を撫でながら、
「・・・うふふ、良くできました・・・それじゃぁ、ご褒美よっ!」
 と宣告すると、
 グププッ・・・ビタンッ、ビタンッ
 肉槍を朱美の中に突き刺し、スパンキングするかの如く、己の腰骨を苛烈に叩き付ける。

 朱美は、脳の許容量を超えた愉悦を受け、視界にバチバチと火花を散らしながら、
「ふげっ、ひぎゅっ・・・ふぐぅっ!」
 豚の様に泣き喚くがその表情は、涎や鼻水に塗れ、白目さえ剥く、『豚以下』の無惨なものであった。
 だが斯様に無様な姿を曝しながらも朱美は、涼子の抽送に合わせて、段平様になった長椅子に乳首とクリトリスを擦りつけながら、
『しゅごい、先輩のちんぽバイブぅっ!・・・お尻の穴ジュボジュボされてイキまくってりゅぅっ!・・・ちくびもクリもごりゅごりゅってへぇ・・・はぁあぁ、もうダメへぇっ!』
 至福の時を迎えようとしていた。

 それを、
 ビクンッ、ビクンッ
 朱美の腸壁で感じた涼子は、
「うふふ・・・」
 ビタッ、ビタンッ
 一層抽送のスピードを早めると、
「・・・南原さん、貴女の汚い穴に、一杯出してあげる・・・うふふ、豚みたいにみっともないアヘ顔を晒しながら、イってしまいなさいっ!」
 最後の一撃を、
 ドプッ、ドプッ、ドプッ
 朱美に加える。

 その熱湯の様な精を受け、タオルの咥えたままの朱美は、
「・・ふごおぉぉぉっ!」
 くぐもった絶叫をあげると、
 カクンッ
 糸の切れた人形の様に、力尽きた。

 朱美が失神したことを認めた涼子は、
「・・・」
 ヌプッ・・・ドプッ
 朱美の中から、肉串をゆっくりと引き出す。
 すると、
 ドプッ、ヌプンッ・・・ドロッ
 締まりを失った肛門から、直腸の蠢動に合わせて、濁液が泡立ち、糸を引いて垂れ落ちてきた。
 そして、
 ビクッ、ビクッ
 失神しながらも朱美の肉体は、悦楽の余韻を味わうかの如く、小さな痙攣を繰り返す。

 涼子は、朱美の眼前に回り込むと、その悦楽に歪んだ顔を見下ろし、
「・・・ふふ、ホント豚みたいね・・・汚らしい貴女には、これがお似合いよ」
 そう蔑みの言葉を吐くと、
 コシュッ、コシュッ・・・ビュルルッ
 その醜き顔に、射精した。

 ビチャッ、ビチャッ
 その生臭い牡汁を顔面に受けた朱美は一瞬、
「・・・むごぉっ・・・」 
 僅かな反応を見せたが、起きる気配はない。

 それに涼子は、冷たい視線を浴びせながら、
「・・・そうよ、貴女が醜い雌豚になればなる程、邪水晶様はお喜びになるの・・・うふふ、私がちゃんと『フォロー』してあげるから、立派な雌豚になりなさい・・・」
 そう、宣告すると、朱美の穢れを増すかの如く、
 ビチャッ、ビチャッ
 何度も何度も、精を浴びせるのだった。

「・・・南原さん・・・南原さん・・・」
 朱美は、繰り返し己を呼ぶ声に、
 ニチャァ
 ねとつく瞼を、ゆっくりと開いた。
 そのどうにか開いた視界の中には、競泳水着をぴっしりと着こなし腕組みをして立つ、涼子の姿がある。
 
 その姿に朱美は、
「え・・・?」
 どこか非現実的な印象を覚えた。
 いつの間にか、彼女の発声と呼吸を封じていたタオルは、口許から取り除かれていたが、知覚が回復するに従って、
 ムワァッ
 強烈な性臭と、
 ヌトォッ
 全身にまとわりつく汚液の感触が、じんわりと覚知される。
 それとともに、涼子との情事も鮮やかに蘇ってくるのだが、己の眼前に立つ涼子の姿は余りに毅然として、現実感が感じられないのだ。

 困惑する朱美に、涼子は、
「・・・なぁに、南原さん?どうかしたの?」
 厳しい表情で、そう、詰問する。
 朱美はそれに、
「・・・いえ、何も・・・」
 そう言い返すしかなく、まるで、性の余韻に浸ろうとした自分が、叱責されているかの様な気分になった。

 涼子はそんな朱美に、
「・・・南原さん、私の前に立ちなさい」
 短く、だが確かな声でそう命じる。
 
 朱美は、
「・・・はい・・・」
 矢張り短く返答すると、
 ニチャッ、ニチャァッ
 粘つく腹を長椅子から剥がしながら、涼子の前に立った。

 乳首とクリトリスが赤く腫れ、
 ドロッ
 アヌスからは未だ、己の精液が零れ落ちる『後輩』を前に、涼子は冷然と、
「・・・南原さん、何度も言うけど、『ストレス』の克服は試合に必要なことなの。安易に『リラックス』に逃げてはいけないわ・・・貴女、解っているの?」
 そう朱美を叱責する。

 朱美はそれにどうにか、
「・・・済みません・・・」
 返答の言葉を絞り出すことが、精一杯であった。

 だが、呵責ない涼子の言葉は続く。
「・・・ふぅっ・・・南原さん、貴女には期待しているの。だからこんな『ストレス』の訓練をしているのよ・・・言葉だけの反省では、私も『みんな』も、納得できないわ」
 涼子はそう言うと、腕を組み直し、朱美を睨め付けた。

 ここまで言われてしまえば、
「・・・」
 最早、朱美に返す言葉などない。
 ただ、俯くしかなくなってしまった。

 涼子は、そんな朱美へ畳み掛けるように、
「・・・貴女には2つ『ペナルティー』を与えます・・・1つ目は、私が許可するまで決して、オナニーをしないこと・・・2つ目は、1週間の登校禁止・・・プールの使用も当然ダメよ・・・それと、『ストレス』の訓練で与えた条件は、引き続き守ってもらうから・・・解ったわね?」
 そう宣告した。

 その言葉に、朱美は愕然とする。
 涼子の宣告は、部活も恋愛もできなければ、快楽も得ることはできない、ということだ。
 それは今の朱美にとって、死刑宣告にも等しい。
 だが涼子の宣告は己に取って、『絶対』なのだ。

 俯き、
 ギュッ
 固く拳を握り締め、体を震わせ始めた朱美の肩に涼子は、
 トン
 と手を置くと、一転優しい声で、
「・・・南原さん、私は貴女を信じているわ・・・それに、約束を守ればちゃんと『ご褒美』も、ね」
 そう言うと、朱美の股間に視線を流し、軽くウィンクする。

 朱美は、その魅惑的な言葉に、
「・・・!!」
 思わず息を飲んだ。

 涼子は、その反応を目聡く認めると、一層慈しむ様な声で、
「解ったら良いのよ・・・後始末は私達でやっておくから、今日はシャワーを浴びて帰りなさい・・・」
 そう唆し、朱美の背を押した。
 朱美は、
「・・・はいっ!」
 先程までの顔が嘘のような笑顔で、そう、一礼すると、更衣室に隣接するシャワー室へと、小走りに駆けてゆく。

 涼子はその後ろ姿を、朱美がシャワー室に消えるまで眺めていたが、やがて踵を返すと、
「ふふっ・・・」
 邪な笑みを浮かべ、更衣室を後にした。

神凪本家-

 東京郊外の山中にあるこの社は、参詣客が訪れることのできる『外宮』、そして、神凪家の本拠である『内宮』に分かれている。
 外宮は、緑深い趣のある神社、といった風情であるが、内宮は、山の頂上に
『奥の院』を抱く『山城』といった様相を呈していた。
 信仰の拠点としての外宮と、対妖魔拠点としての内宮-
 それは正に、神凪家の二面性を象徴するものである。

 その2つの宮の間を、
「・・・先輩、置いてかないでくださいよぉ」
「もうっ、またなの・・・初芝、もっとシャキっとなさい」 
 二人の巫女が獲物を手に、一人は憔悴を、もう一人は諦観の表情を浮かべながら、歩いていた。

 瑠璃が『違和感』を得てからは、この社の警戒も強化されている。
 神凪本家には、巫女の中でもエリートとされる人材が集められてはいたが組織の常として、こうした下働きは下っ端の者がするのが通例だ。
 その通例に漏れず、新人巫女の初芝鈴(はつしばりん)と、その教育係である出水初音(いずみはつね)は2時間程前から、警戒線の警備に駆り出されてい る。

 初音は、膝に手を突いて息をする鈴を見遣ると、
「・・・はぁっ・・・」
 何度目かわからぬ溜息をついた。
 先程、2回目の定時報告をしたばかりだから、任務は漸く半ばを過ぎたばかり。
 しかし、起伏のある広大な担当区域を歩き回ることは、肉体と精神の両面で幼い鈴に、過分な負担を与えているようだ。

 初音は、
「仕方ないわね・・・そこの岩で少し休みましょう」
 そう言いながら、少しばかり先にある平らな岩を指し示すと、腰を屈め、スっと鈴に手を差し伸べる。

 すると鈴は、
「はいっ、先輩っ!」
 先程までの疲労感はどこへやら、元気一杯の笑顔で初音の手を握り締めた。
 それに初音は苦笑を浮かべながらも鈴の手を離さず、目的の岩へと向かうと、静かに腰を下ろす。
 だがそんな二人を、猛禽の様に狙う複数の目があることに、彼女は気付かなかった。

「ザルね・・・」
 琴美は、暗視ゴーグル越しに、微笑ましい師弟関係を収めながら、そう一人ごちた。
 ワイヤーや赤外線を張り巡らし、それなりの警報システムを整えてはいるが琴美達の様な『プロ』にとってそれは、子供の悪戯程度のものでしかない。
 山中のため、獣が紛れ込む可能性が高いにしても余りに素人然として、穴が多すぎた。
 おまけに、こんな小娘達に警戒させているなど、馬鹿にしているのかとすら思いたくなる。

 しかし本来、妖魔を敵として想定している彼女達巫女は、侵入してきた妖魔の存在を他の巫女に知らせ、多少の足止めが出来れば十分なのだ。
 高度な知能を持ち侵攻してくる妖魔など希有な存在であり、『対人』の仕掛けやノウハウなど、それ程必要なものではない。

 琴美は、仲良く小型水筒の水など飲み始めた巫女どもに、
『チッ・・・』
 心中で舌打ちをしながら、
 サッ
 右手を上げて部下に指令を下す。
 歯応えがなさ過ぎる相手とて、『任務』は任務だ。

 数瞬の後、
 パシュッ、パシュッ
 乾いた空気音が2回響くと、再び数瞬の間を置いて、
 ドサッ、ドサッ
 重い物が倒れ込む音が、二つする。

『ザッ・・・目標、クリア』
 琴美は、部下の無線をインカム越しに受け取ると、
「チッ・・・」
 今度は音に出して舌打ちをし、無効化された警戒線を越えた。

「・・・」
 今、琴美の眼前には、上半身をさらけ出された二人の巫女が、迷彩シートの上に転がされている。
 その前では、真っ黒なボディー・スーツに身を包んだ桜子が、彼女達の状態を触診していた。

「・・・死んでは、いないわね?」
「ああ、大丈夫だ。麻酔が効いているだけだよ」
 琴美の問いに、桜子は手許から視線を逸らさずにそう答えると、
 パカッ
 プラスチック製の小箱を開く。

 透明なゲル状の物質の上には、植物の根を生やした様な肌色の、小さな金属片が並んでいる。
 桜子は、
 ピッ
 その一つを、指先で刮げ取ると、
「・・・琴美、念のため押さえておいて」
 矢張り視線を逸らさず、『上官』にそう語りかけた。

 琴美は、
「・・・わかったわ・・・」 
 そう言うとゆっくり、年長の巫女に馬乗りになる。

 桜子は、それを認めると、
「ん・・・」
 指先を、初音の額に触れさせた。

 その途端、
 ズブッ
 金属片の『根』が、初音の頭中へその版図を広げ始める。

 初音は、
「がっ!?」
 気を失ったまま、肉体を痙攣させるが、『根』が伸長を止めると、
 カクンッ
 糸の切れた人形の様に、力を失った。
 桜子は、琴美に初音を裏返させると、肩胛骨の間、脊椎にも、同じ『金属片』を埋め込む。
 それを鈴にも施すと、琴美と桜子は、巫女達から離れた。

「・・・さて、これで大丈夫なはずだけど・・・」
 桜子は、シートの上でぐったりとする二人を見下ろしながら、右手に持ったコンソールに電源を入れる。
 その瞬間、
 ビクンッ、ビクンッ
 巫女達は、正しく電気に打たれたかの如く、痙攣した。

 桜子は無表情にそれを見送ると、コンソールに向かって、
「起きろ」
 そう短く言葉を吐いた。

 すると、二人はパチリと瞼を開き、
「「はい・・・」」
 力無くそう答えると、のそり、と起き上がる。
 だが彼女達の目は澱み、表情に生気はない。

 桜子は、
「定着の状態は、良いみたいだね・・・」
 そう言うと、人形の如く立つ二人に近づき、その周りを回る。

 琴美が、
「・・・それは『結果として』、良いの?」
 桜子の傍らに歩み寄りながらそう尋ねると桜子は、
「ああ、良いんじゃないかな。文節程度の命令だったら、問題なくこなせるはずさ・・・琴美、やってみるかい?」
 そう言って、青白い光を放つコンソールを差し出した。

 先程、桜子が初音と鈴に取り付けたものは、皐月が開発した簡便な『洗脳装置』である。
 妖魔の細胞組成と電子技術が組み合わされたそれは、『根』から微量の洗脳薬と電気パルスを放出し、施術者を一時的な支配下に置くものだ。
 完全な『洗脳』ではないため、装置の稼働中しか支配できないし、複雑な命令を下すこともできないがそれでも、敵中に『戦力』を潜伏させる意味は大き い。
 琴美達『ドールズ』は邪水晶に、一定数の巫女を捕らえてこの処置を施すよう、命じられている。

 琴美は、桜子の誘いに、
「・・・いいわ、別に・・・それよりも、早く撤退しましょう」
 そうつまらなそうに答えると、深山の中の暗闇を指し示した。
 その先には琴美や桜子と同じく、漆黒のボディー・スーツに身を包んだ部下達が麻酔銃を手に、周囲を警戒している。

 そのどこかぶっきらぼうな態度に思わず桜子は、苦笑を浮かべた。
 しかしそれは、琴美ではなく、自分に向けたものである。
 この武人肌の『上官』は、機械的に支配した者を操ることに悦びを見出すほど、『悪趣味』ではないのだ。
 いよいよ自分も、妖魔に染まったか-
 桜子は自分達を犯し尽くす上位者の姿を思い浮かべ自虐的に、口の端を醜く歪める。

 だが、一転、口許を緩めると、好ましい態度を取り続ける『親友』の肩をポンと叩き、
「・・・そうだね。さっさと、『お家』に帰ろうか」
 そう言うと、
「・・・α隊、状況終了。撤退開始」
 インカムにそう告げ、装備を纏め始めたのだった。

「・・・ん・・・」
 夜露と山の空気の冷たさに、初音が目を覚ましたのは、定時連絡まで10分程になった頃だった。
 ぼんやりとした頭のまま、初音は無意識に、
「ん・・・う?」
 暖かい感触のある肩口の方へ、視線を滑らせる。
 その視線の先には、岩の上で初音と寄り添うように眠る、鈴の安らかな寝顔があった。

「・・・!!」
 初音は、鈴の子猫の様な暖かさに反比例するかの如く、背筋を凍らせる。
 慌てて腕時計を見ると、次の定時報告までは10分を切っていた。
 自分達はここで、小一時間も眠っていたというのか-

 初音は、
「・・・初芝っ、起きて!」
 首がもげてしまいそうな勢いで、可愛らしい寝顔を浮かべる後輩をガクガクと揺する。
 すると鈴は、
「・・・はにゃ?・・・あれ、せんぱい?」
 首を赤べこの様に振りながら、漸く目を覚ました。

 初音は、それに些か安堵しながらも、
「初芝、早く行くわよっ!」
 寝ぼけ眼の鈴を引く様に、歩き出す。
 ここはまだ、行程の半分強、といったところ。
 時間までに詰め所に戻らねば、鈴ともども、どんな叱責を受けるかわからない。
 あまつさえ、出来の良くない鈴は、日頃から目を付けられているのだ。

「あわわ、先輩、待ってくださいよぅ!」 
 そんな初音の心配を知らずか、鈴は不平混じりの抗議の声を上げる。
 だが初音は、
「いいから、早く歩きなさい!」
 そう鈴を叱咤すると、
 ギュッ
 彼女の手を離さぬよう、小さな掌をきつく握り締めると、暗闇の中へと走り出した。

< 続く >

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