四神戦隊メイデン・フォース 第17話

第17話 羽化(後)

 ヒュンッ・・・ビチャッ 
 朱美は、妖魔の血に塗れた刀を振り血糊を飛ばすと、
「・・・ふん、こんな雑魚ばっかりじゃ、濡れもしないわ」
 そう、つまらなそうに、妖魔の屍の山へと目を遣る。
 その時、
「ウウゥゥ・・・」
 朱美が切り伏せた武将級の上魔が、呻き声を上げながらも残力を振り絞り、立ち上がろうとしていた。

 朱美は、
 ザッ
 素早くその上魔の許へ歩み寄ると、薄い笑みを浮かべ、
「・・・ねぇ、もっと・・・私を、楽しませてくれない?」
 ガッ
「グワオォウッ!?」
 固いブーツの爪先で、妖魔の傷口を抉るように弄ぶ。
 グチャッ、グチャッ
 血肉が織りなす湿った音と、爪先から伝わる肉を裂く感覚が、
「・・・うふふっ、良い音」
 朱美には、堪らない。

 上魔は、
「・・・き、貴様ぁっ!」
 そう叫び、朱美に飛びかからんとするが、彼が二の句を継ぐ前に朱美は、
 ザンッ、ゴリィッ
 刀を一閃させると、上魔の右足を切り落とした。

「ギィヤャァッ!」
 上魔の絶叫とともに、
 ブシュゥゥッ
 動脈からどす黒い血が噴水の如く飛び散り、命の水溜まりを形作ってゆく。

 しかし朱美は、
「くくく・・・」
 その凄惨な光景と相反する妖艶な笑みを浮かべると、
 ヌルッ・・・クパァ
 股布をずらし秘裂をくつろげると、上魔の顔の上に跨る様に、腰を落とした。

 そして、
「・・・ねぇ、戦いで楽しませて呉れないのならせめて、その汚い口で楽しませてくれないかしら?」
 そう言うと、挑発するかの如く、上魔の鼻面で腰を振る。

 追い打ちを掛けるが如き侮辱に上魔は、
「・・・この・・・淫売、め゛っ!?」
 罵詈を浴びせようとするが、それは、
 ザクンッ
 脇腹から射し込まれた刀によって、文意を為すことなく消散させられた。

 朱美は、
「・・・ホント、つまらない雑魚ね・・・せめて、最期は良い声で・・・私を楽しませて頂戴っ!」
 そう言い放つと、
 ゴリッ
 刀を肉の中へねじ込むように、回転させる。

  既に、息も絶え絶えであった妖魔は、
「グェェェエエッ!」
 そう断末魔をあげると、
 ビクビクッ
 僅かに痙攣し、やがて永遠に動きを止めた。

 それに朱美は、
「・・・くくっ、中々良い声だったわよ・・・ちょっとだけ濡れたわ」
 そう嘯くと、腰を上げ
 ガスッ
 妖魔の屍を蹴りつける。
 その姿には嘗て、敵にすら見せていた敬意などは、微塵も感じさせることはない。
 飽きて棄てた玩具-
 それ以下の扱いでしかなかった。

 涼子に『ペナルティー』を課された朱美にとって、妖魔との戦闘が唯一快楽を得る、『娯楽』となってる。
 彼女の『ストレス』が増大するのに比例して特にここ数日、妖魔に対する扱いは、凄惨を極めていた。
 残虐であればある程、彼女の『快楽』は増すからだ。

「・・・」
 その光景を水晶球越しに見ていた邪漢は、
「・・・ウォォォッ!」
 怒りのままに、
 ガシャンッ!
 水晶球を床に叩き付けた。

 湯気が立つほどの怒気を収めることのできない邪漢は、
「許せぬ、許せぬぞっ、メイデン・レッドめ!」
 そう叫びながら、
 ドガッ、バキィッ
 自室の中にある物へ手当たり次第に、その怒りをぶちまける。

 彼は彼なりに、メイデン・レッドの力量を認め、敵将として尊んできたのだ。
 しかしそれが今や、敗残の将に情けをかけぬどころか、死者を嘲るような行為にすら及んでいる。
 その事実に触れ邪漢は、悔しさと悲しさが入り交じった行き場のない感情を、物言わぬ対象にぶつけるしかなかった。

 その邪漢の姿を見ていた妖魔もまた、悲しげな表情で、
「邪漢様・・・」
 主に声を掛ける。
 先程の妖魔が散ったことで、彼は邪漢の許に残った、最後の将となっていた。

 だが、彼の声は主に届かずそれどころか、
「ぬおおおっ!」
 邪漢は怒りに我を忘れ、
 バキンッ、ボキンッ
 破壊の限りを尽くそうとしている。
 主の『義憤』を見かねた彼は、
「・・・邪漢様っ!」
 意を決してそう叫ぶと、主の肩に手を掛けた。

 反射的に邪漢は、
「ふんっ!」
 バキィッ!
 家臣の頬を殴りつける。
「!?」
 だが、その生々しい感触が彼の煮えたぎった頭を、どうにか冷却させてくれた。

 邪漢は一瞬、
「・・・」
 腫れ上がった部下の顔を、まじまじと見つめると、
 スッ
 と、頭を下げる。
 そして、
「・・・ぬうぅ、すまぬ、見苦しい所を見せたな・・・しかしお主の言うとおり、メイデン・レッドめ、何と卑劣なことよ・・・」
 そう言って今度はゆっくりと、原形を留めぬほど砕かれた残骸の中を歩む。 
 やがて、
「・・・敵は・・・敵は取らねばならぬ・・・」
 譫言の様にそう呟くと、部屋の片隅に置いてあった武具に手を伸ばした。

「・・・邪漢様・・・」
 邪漢の傍に控えていた妖魔は、その意味するところを理解し、苦渋とも苦痛とも言えぬ表情になる。
 だが、そんな彼の肩に手を置くと邪漢は、その心中を察してか、
「・・・貴公には世話になった・・・達者でな」
 無骨な彼には不似合いな笑顔を浮かべると、そのまま部屋を出ていった。
 だがその背中には、武人としての決意と誇りがある。

「・・・」
 邪漢を見送った妖魔は、沈痛な面持ちでその背中を見送ると、深々と頭を下げた。

 カツン、カツン
 邪漢麾下の妖魔は、軍靴を響かせながら皇宮の回廊を足早に歩く。
「・・・」
 今の彼にはその靴音さえも空虚で、不快なものしか聞こえない。

 やがて彼が回廊の半ばまでやってきた時、  
「・・・首尾は、どうだったのかしら?」
 皇宮へと続く回廊の柱の影に隠れていた人物は、黒ずんだ柱に背を預けたまま、世間話でもするかの如く彼にそう、語りかけた。
 気配すら感じられなかったその相手に、本能的な畏れを抱きながらも彼は、
「・・・ご指示のとおり、邪漢様にメイデン・レッドの姿をお見せ致しました・・・邪水晶様、これで我が一族の事はよしなに・・・」
 どうにか声を絞り出すと、柱の方は見ず正面を見据えたまま、頭を垂れる。

 彼個人としては例え死することがあろうとも、邪漢に最後まで仕える覚悟がある。
 だが、彼が束ねる一族は彼を除いて、力なき者ばかりであった。
 仕える者が彼のみとなった今が、一族を生き長らえさせる、最初で最後のチャンス-

 相次ぐ敗戦により、邪淫皇に半ば謹慎扱いとされていた邪漢が出撃することは、主命に逆らう事にも等しい。
 これは邪水晶の立場から見れば、目障りな存在を排除する絶好の機会でもあるのだ。
 彼は一族の安全を保障することと引き替えに邪水晶から、メイデン・レッドの行状を邪漢に伝え、出撃を仕向けるよう含まされたのだった。

 果たして、彼の『忠義』を贄として目論見どおり事を進めた邪水晶は、
「・・・ふふ、そう・・・一族の事は心配しなくていいわ。約束は守るから・・・」
 そう言って氷の様な微笑を浮かべると、マントを翻し姿を消す。

 妖魔は邪水晶の気配が感じられなくなると、頭を垂れた姿勢のまま、
「・・・邪漢様、申し訳御座いませぬ・・・」
 絞り出す様な声でそう、呟くのだった。

「・・・朱美さん、右翼から下魔が3体来ます」
「・・・了解」
 雪からの通信に朱美は、そう気怠そうに応答すると、迎撃ポイントへ向かう。
 既に中魔でも快楽を全く感じなくなっている朱美にとってこの戦闘は、流れ作業にも等しき『行為』でしかなかった。
 この戦闘が終われば、『仲間』達による『クール・ダウン』が待っていることがせめてもの救いだが、高揚感の無い戦闘後では、さほど燃え上がることもできまい。

「「「ギィィッ!」」」
 廃ビル群の辻角に現れた3体の下魔を認めた朱美は、
「・・・チッ」
 一つ舌打ちすると、
 ダッ
 一気に駆け寄り、
「・・・おりゃぁっ!」
 ザブシュゥッ!
 刀を一閃させた。

 下魔は、
「「「ギィヤァァッ!」」」
 短い断末魔を上げると、上半身と下半身を分断させ、あっけなく息絶える。

 朱美は、鬱陶しさを払うように、
 ビュッ
 刀を一振りすると、
「・・・雪、これで全部?」
 雪に念のため、確認の通信を入れる。
 これで雪からの通信が返ってくれば万事は終わり、そう朱美は考えていた。

 しかし、彼女の予想に反して
「・・・はい、これで全部・・・いえ、1体、強力な反応があります・・・朱美さん、右っ!!」
 その雪の絶叫とも言える通信の後にやってきたのは、予想した静寂ではなく、
 ザンッ
 巨大な戦斧であった。

 ヒュッ
 朱美はその襲撃をすんでの所で飛び去って躱し、
 ダンッ
 左手を地につけて、臨戦の体勢を取る。

「・・・ほう、よくぞ躱したな・・・流石はメイデン・レッド、というところか」
 ビルの影から姿を現した邪漢はそう言って、ニヤリ、と笑うと、アスファルトに深々と刺さった戦斧を事も無げに引き抜き、軽々と背に負った。

 朱美はその言葉に、立ち上がりつつ、
「・・・ふふっ、漸く面白そうなヤツが出てきたじゃない・・・貴方、少しは愉しませてくれるんでしょうね?・・・今日は感じなくて、困ってたのよ」 
 そう、不敵な笑みで返すと、刀を舌で舐り、情婦の如く腰をくねらせ、邪漢を挑発する。
 
 水晶玉で見た通りの、朱美の侮辱的な振る舞いに邪漢は、
「・・・この淫獣めが・・・よかろう、貴様の様な下郎、この邪漢が叩き斬ってくれるっ!」
 そう怒声を発すると、
 ブンッ
 空気の如き軽やかさで戦斧を唸らせ、朱美に襲い掛かった。

 朱美はステップを踏んでそれを躱すが、
 ブワッ
 邪漢の剣圧に押され1,2歩、後方へと追い遣られる。

 邪漢の荒々しくも軽やかな攻撃に朱美が、
「・・・ふふっ、少しはやるようね」
 そう嘯くのと同じくして、
 ジュン
 本人の意識とは別に、秘所が潤む。
 それは、彼女がこの戦闘を愉しんでいる証左でもあった。

 邪漢は再び戦斧を構えながら、
「・・・どうした、そちらからはかかってこぬのか?・・・この臆病者めが」
 そう、不敵な笑みを浮かべ、朱美を挑発する。

 朱美は、
「・・・言ってくれるじゃないの・・・いいわ、乗ってあげる・・・その生意気な口、これで塞いであげるわっ!」
 そう叫ぶと、刀を下手に構えながら、
 ダッ
 邪漢に向かって駆けだした。
 邪漢は、
 チャッ
 戦斧を正面に構え、朱美の突進を防ぐ体勢を取る。
「ふ・・・」
 如何にメイデン・レッドと言えど、所詮は女、剣圧などたかが知れている-
 邪漢は、
「その鈍刀ごと、叩き斬ってくれるわっ!」 
 そう叫び、朱美の存在そのものを斬るべく、戦斧を振り下ろした。

 数瞬の後、一筋の閃光が下から、月夜を照り返した光が上から互いに重なって、
 キィンッ
 ガギィィッ
 金属の澄んだ音と鈍い音が同時に、辺りへと鳴り響く。

 ブワッ・・・ズザンッ
 双方とも互いの剣圧で周辺の木々を揺らしながら、それぞれの間合いの外へ後退する。
「想像以上に、やるの・・・」
 己の想像を超えた剣戟に警戒心を強めた邪漢は、直ぐに戦斧を構え直したが、
「・・・」
 朱美は刀を手に、顔を伏せたままだった。

 その不審な姿に邪漢は、
「・・・?」
 警戒を緩めずに、訝しげな表情を浮かべる。
 
 やがて朱美は、 
「・・・くくっ、くくくっ」
 肩を震わせたかと思うと、
「・・・あはっ、あははははっ!!これよ、これだわ!」
 そう哄笑し、驚喜とも狂気とも取れぬ笑みを、邪漢に向けた。
 その眼は興奮と情欲で赤く染まっている。
 彼女にとってこの闘いは、久しぶりに訪れた悦楽の時であるのみならず、『戦士』としての本能を呼び覚ますに十分な『戦』であった。

 抑えきれぬ高揚感の中、朱美は、
「うふふっ、本当に最高だわ、お前・・・そう言えば、お互いに名乗りを上げてなかったわね・・・私はメイデン・レッド、南原朱美よ・・・」
 そう言うと、
 ヒュンッ
 虚空を斬る様に刀を右下へ振り下ろし、難敵に敬礼するかの如く下段に構える。

 それを受け邪漢は、
「・・・我が名は邪漢・・・邪界が将・・・ナンバラ・アケミよ、いざ勝負っ!」
 そう最低限の名乗りを上げると、戦斧を構え、朱美の戦闘態勢が整うのを待った。
 如何に匹夫と雖も、邪漢にとって朱美は『敵将』である。
 『武将』である彼にとって、騙し討ちはプライドが許さない。

 朱美は、その無骨なまでに『将』たらんとする様に、口の端を緩ませる。
 それは、これまでに浮かべてきた嘲笑や淫欲によるものではなく、単純な『好意』によるものだった。
 邪漢の無骨なまでの『武将』ぶりに朱美は、
「・・・ふふっ、ホント堪らないわ・・・邪漢、その命、頂戴仕るっ!」
 歓喜のままそう叫ぶと、
 ダダッ
 『戦』を始めるべく、邪漢に向かって再び、駆け出す。

 キィンッ
 朱美の二撃目は、戦斧の先端によってにべもなく弾かれた。
 だが朱美はそれを見透かしていたかの如く、
 フワリ
 フレア・スカートを翻させながら駒の様に回転し、
 ヒュンッ
 邪漢の脇から刀を一閃させる。

 だが、邪漢は、その剃刀のような一撃を、
 ガキィッ
 鈍重に見える獲物を使いながらも、信じられぬ俊敏さをもって操り跳ね返すと、返す刀で、
 ブンッ
 殺意の籠もった鉄塊を朱美に叩き付けるべく、無慈悲に振り下ろした。

 しかし、それを朱美はすんでのところで、
 ダンッ
 軽業師の如く、宙返りで躱す。
 
 『柔』と『剛』-
 朱美と邪漢の闘いは言わば、そう形容できるものだった。
 戦士としての総合力はほぼ互角-

 ビュッ
 時折、互いが繰り出す剣戟で、血の紋様が体中を彩ってゆくが、いずれも致命傷を与えるほどのものではない。
 それどころか二人は、
「・・・うふふ」
「ククク・・・」
 微笑すら浮かべ、互いが闘いの色を纏う度に、それぞれの戦意を高めてゆく。

 朱美は、
「・・・あははっ!濡れるっ、濡れるわっ!・・・さっきからイキっぱなしよ!」
 そう叫ぶと、般若の如き鬼気を孕みながら、淫悦に狂った笑顔を邪漢に向けた。
 その言葉通り、彼女の肉体は、
 ビチャリ
 これまでの戦闘では得たことのない快楽を感じ、軽い絶頂を何度も繰り返している。
 これが『戦士』としての本能によるものか、それとも、『雌』としてのものなのか、朱美には解らない。
 だが、今、彼女の肉体がこの闘いを『快楽』として感じていることだけは、確かな事実であった。
 もとより、彼女がその様な事を考える余裕など、今はない。

 ガッ
 キィンッ
 純粋な力と技の応酬が、半ば機械的に繰り返される。
 実力が互角である者同士の戦闘となれば、つまらない修辞や、華美な動作は命取りになるだけだ。
 畢竟、朱美と邪漢の闘いは素人から見れば、退屈な『作業』にしか見えないかもしれない。

 だが、二人は、
「ふ、ぅっ!」
「う、おぅっ!」
 全身全霊をかけて、その『作業』に没頭していた。 
 しかし、いくら戦闘力が互角の闘いとは言え、互いが機械ではない以上、それが無限に続くわけではない。
 もし戦闘力が互角であれば、勝負を決定付けるのはその身が持つ『持久力』だ。

 既に幾度目かの剣戟か解らなくなった頃、朱美は、
 ギィンッ
 己の剣戟に、微かな『鈍さ』を感じた。
 朱美は次の振り下ろしに掛かる寸前、
 ダッ
 後方へと飛び退く。

 着地した朱美は直ちに、戦闘態勢を取るが先程までの様に、邪漢の間合いへ踏み込むことはない。
 久方ぶりに剣戟が止み、数十mの距離を取って互いに睨み合う形へとなる。
 邪漢も、次の手を考えてか、朱美に斬り掛かってくる様子はなかった。
 辺りに鉄の芳香のみを残して、静寂が二人を覆う。

 氷の様な無表情を浮かべる一方、朱美は、
『やばいわね・・・』
 心中で焦燥の念に囚われていた。
 強力な相手と遣り合い続けた結果、彼女の体力が確実に削られている事を自覚していたからだ。
 このまま続ければ、スタミナに富む相手に圧倒される結果しか生まないだろう。

 そうであれば、取る手段は一つ-
 朱美は意を決し、刀を下段に構える。
「はぁぁぁぁ・・・・」
 そして、気を一点に集中させ始めた。

「愚かな・・・」
 邪漢は朱美の姿に、そう一人ごちる。
 朱美の姿勢は邪漢から見れば、玉砕を覚悟した『死兵』にしか見えない。
 彼女の剣先に気が集中するところから考えても、その判断に間違いはないだろう。

 持久力に劣る彼女が、短期決戦に挑むのは、或る意味間違いではない。
 だが、ここまでの疲弊度合いから考えて、勝負できるのはただ一度だけ。
 敗北は即ち、『死』を意味するのだ。
 ここで逃亡を図りさえすれば、命だけは助かるだろう。
 それは、彼女と幾度も剣を交えた邪漢が、確信を持って言えることでもある。
 
 しかし、彼女は不名誉な『生』よりも、名誉ある『死』を選んだ-
 邪漢にとってそれは、
「・・・くくくっ!」
 愉快な事、この上ない。
 水晶球で見た朱美は、残虐なうえ好色のみならず、武人としての誇りすら感じさせなかった。
 それが今、己とほぼ対等の力をもって、決戦に挑もうとしている-
 
 邪漢は、朱美に最大限の敬意と殺意を払い、
 チャッ
 戦斧を上段に構えると、
「・・・よかろう、ナンバラ・アケミよ・・・その勝負、受けて立つ・・・参れっ!」 
 そう、朱美に叫ぶ。

 朱美は、それには答えずただ、
「・・・破ぁぁあぁぁっっ!」
 咆哮を上げると、刀を上段に振り上げながら、
 ダダダッ
 邪漢に向かって駆け出した。
 それを合図にしたかの如く、
 フッ
 彼女の意識が消える。
 
 だが、
 ダダダァッ
 彼女の疾走は止まることはおろか、速度を増していた。
 視覚も、聴覚も、刀に触れる触感さえも失いながら、朱美はただ一点、『邪漢を殺す』ことのみに『全て』を掛けて、暴風の如く殺到する。
 『南原の秘術』-
 彼女が最後に己を託したのは、自らの『死』ではなく、確実な『殺意』だった。

「!!」
 邪漢は朱美に相対しながら、彼女の『気』が飛躍的に増大してゆく気配を感じ取り、驚愕する。
 歴戦の士である彼ですら、この様な事態は経験したことも、伝聞すらもない。
 邪漢は戦士の本能で危険を察し反射的に、
 ギリッ
 戦斧を強く握り締める。

 ガッ、キィンッ
 朱美が駆けだして僅か数秒の後。
 二人の交錯点を中心に、金属音と蒼い閃光が走った。

 先程までの灼けるようなものではなく、焦げるような、鉄の臭いが辺り一帯に立ちこめる。
「・・・」
 その中、朱美と邪漢は時が止まったかの如く、ただ、立ち尽くしていた。
 
 先に動いたのは、
「ぐっ・・・」
 ガクッ
 邪漢である。

 誤差にして数ミリ、いやそれよりも小さな誤差だったかもしれない。
 しかし、彼が見誤った朱美の剣跡の僅かな誤差は、
 ブシュウゥッ!
 彼に致命傷を与えるのに、十分なものであった。

 動脈から大量の血を流しながら、邪漢の肉体は急速に温度を失ってゆく。
「・・・くくくっ!」
 しかし、邪漢は矢張り、愉快で堪らない。
 好敵手と全身全霊で闘い、『戦士』としてこの生を全うできるのだ。
「・・・ナンバラ・アケミよ、感謝するぞ・・・」
 邪漢は満面の笑みを浮かべると、
 ドサッ
 糸の切れた人形の様に、力尽きた。

 それより一拍置いて、朱美が動く。
「・・・んっ、はぁぁぁんっ!」
 理性を全て遮断した朱美を襲ったのは、
 ジワッ
 強力な防刃仕様のボディー・スーツを裂き、脇腹から滲み出る痛みではなく、
 ビクビクビクンッ!
 苛烈なまでの快楽。
 ガクガクッ
 膝を震わせながら朱美は、
 プシャァッ
 潮を吹き、絶頂に達した。

「・・・お、ほぉあはぁっ!」
 朱美の肉体へ無知覚のうちに蓄積された『戦闘』に対する愉悦が怒濤の如く、彼女の知覚全てを支配する。
 『南原の秘術』で人としての理性を遮断した後に、彼女に押し寄せるものが『本能』-快楽であることは、当然の理だ。

 ブシャァァァッ!
 秘所から小便を漏らした様に溢れる潮と、
 ビリビリビリッ!
 全身を駆け巡る快楽の奔流に加え、
「あひゃぁぁっ、なにぃ、こほれへぇぇっ!?」
 遅ればせながら回復した理性が、更に彼女を苛む。
 自分はつい先程まで、仇敵と戦っていたはずだ。
 だが今自分を苛むのは、闘いによる痛みではなく、『雌』としての悦び-
 
 その淫悦にのたうつ朱美の視界に、
 『・・・あれは・・・』
 邪漢の遺骸が入る。
 その刹那、朱美の感覚の全てが、
「・・・おうほぉへぇっ!」
 落雷でも受けたかの如く、フラッシュ・アウトした。

 それと同時に朱美の細胞一つ一つへ、
 ジッ
 『殺生』そのものが快楽であるという価値観が、『電磁的』に刻まれてゆく。
 『戦士』としての矜持や闘争本能を全てかけ得たものは、圧倒的な快楽-その事実は、朱美の価値観そのものを変容させる。
 
『・・・コロスの・・・とっても・・・気持ち良い』
 朱美は、快楽の電撃に意識を失いながらも、淫蕩な笑みを浮かべ、そのままゆっくり前へと倒れ込んだ。

 

「・・・はぁっ、はぁっ・・・」
 朱美は、深紅のフレア・スカートをひらめかせながら、宵闇の中を疾走している。
「よりによって、どうしてあんなところにっ!・・・」
 眼前に居ない敵にそう、毒づいてみるが、それは詮ないことだ。

 今から3分程前-
「はっ、はっ、はっ」
 薄闇に包まれた運動公園の中を、一人の女性が疾走していた。
 その刈り揃えられた綺麗な黒髪は汗に濡れて、水銀灯の仄かな灯りを照り返し、トレーニング・ウェアの下に秘められた胸が、軽快に弾む。

 涼子から部活への参加を禁じられてから朱美は、妖魔との戦闘を除いて、自室で悶々とした時を過ごしていたが、根っからのアスリートである彼女が、それに耐えられる筈もない。
 朱美は、余りある時間に飽かせて、基礎トレーニングに励んでいた。
 謹慎を命じられたとは言え、何もするな、と言われたわけではないのだ。

 ツゥ
 肌を流れる汗と、それを冷やす夜風の感触が心地良い。
 プールの中とは違った心地良さに朱美は思わず、ニコリと微笑むと、
「・・・はっ、はっ」
 ピッチを上げる。

 だがその時、
 ピーッ、ピーッ
 朱美のブレスレットが、けたたましい警告音を立てた。

「・・・っ!」
 ザッ
 朱美は慌てて、急停止する。
 踏鞴を踏む様な形で、彼女が走りをどうにか止めたところで、
『・・・で、妖魔の出現を探知。メイデン・フォースの各員は、至急現場に急行してください』
 メイデン・フォース本部からの指令が耳に飛び込んできた。

 いつもであれば、考えるのもそのままに駆けだしてしまうところだが朱美は、
「・・・嘘、でしょ?」
 先程の指令に、思わず反駁してしまう。
 それは、急行すべき地点が彼女にとって、あり得べきところではなかったからだ。
 あそこは、出現スポットではなかったはず-
 妖魔の出現スポットは龍脈や、天体の運行状況によって限定される。
 故に、そもそも条件を満たさない場所は、妖魔が出現する可能性は殆どないと言って良い。

 しかし、そんな彼女の困惑を嘲笑うかの如く、本部のオペレーターは、
『・・・現在位置はメイデン・レッドが最も近接しています。メイデン・レッドは威力偵察を実施後、各員と合流、敵戦力を撃滅してください』
 無機質な声でそう、朱美を駆り立てる。

 朱美は、普段になく、
「・・・わかったわよ」
 苛立ちの混じった声でそう吐き捨てると、周囲に人が居ないことを確認し、時計に偽装した変身ブレスレットを翳した。
 朱美が、
「・・・チェンジ、レッド!」
 と叫んだ瞬間、
 キィィィン
 彼女を眩い光が包み、変身シークエンスが開始される。

 彼女が身に付けていたものは全て粒子化され、裸体になった彼女に光が纏わりつくかの様に、ボディー・スーツ、フレア・スカート、ブーツ、グローブ、胸甲、ヘルメット、武装、と実体化しては、吸い付くかの如く装着されてゆく。
 数瞬の後、光が霧散するとともに、メイデン・レッドに変身を終えた朱美が、姿を現した。

 朱美が、
「モード、ステルス」
 そう短くコマンドを唱えると、
 ブン
 光学ステルスが彼女の姿を消す。

 バイザーでステルス機能が正常に稼働していることを確認すると朱美は、空を見上げ、
「・・・」
 タンッ
 軽快に、ネオンで薄闇に染まる街の夜空へと飛び出した。

「・・・見えたっ」
 ビルの屋上を跳躍してきた朱美の視線に、目的地の建物が映る。
 その建物には明かりが灯り、人の気配が感じられた。
 朱美はそれに、
「・・・まずいわ」
 焦燥感を得ながらも、
 タンッ
 目的地手前にあるマンションの屋根を蹴り、人目につかぬよう裏口へと着地する。
 そのまま猫の様に裏口へ近づき、ドアノブを捻ると、
 カチャ
 解錠の音と共に、ドアが開く。
 もし、妖魔に人質を取られたら-
 朱美は逸る気持ちを抑えつつそっと、建物内へ身を滑らせた。

 朱美は、
 ヒュンッ
 爪先で細かく跳ね足音を殺しながら、通用口から機械室の脇を抜け、プール・サイドへと向かう。
 大学入学以来親しんできた施設だけに、目を瞑ってでも、通路と物の配置はわかる。
 難なく朱美は、プール・サイドへと続く、ドアの前に辿り着いた。
「よし・・・」
 そしてゆっくりと、
 キィ
 ドアを半開きにし、内部を覗う。

 すると、
 バシャン、バシャン
 プールの中央で何者かが、波飛沫を立て移動する姿のみが、バイザー越しに映る。
 集音センサーの感度を上げると、妖魔の襲来とは場違いな水音のみが、プール内に響き渡っていた。
 朱美は更に生体センサーをフル稼働させて人の気配を覗うが、人間の生体反応はない。
 あるのは、
 バシャン、バシャン
 どこか間抜けな水音をたてプールを泳ぐ、妖魔の反応だけだ。

「・・・っ!」
 朱美はそれに、沸々たる怒りを覚えた。
 己は練習さえ禁じられ、建物内に入ることすら許されぬ身であるのに、下賤な妖魔は悠然と神聖なプールを、
 バシャン、バシャン
 その穢らわしい存在で侵している。

 バシャン、バシャン
 妖魔が立てる水音は、コップに注がれた水が溢れるが如く確実に、朱美の怒りを注ぎ続け、やがて、
「・・・うおぉぉぉっっ!!」
 怒りが理性の縁からこぼれ落ちる様に、憤怒に全てを染めた朱美は、妖魔に向かってプール・サイドを駆けた。

『殺す、殺すっ、殺してやるっっ!』
 朱美は満身に殺意を抱きながら、
 ギリッ
 歯が砕けてしまうほどの強さで、奥歯を噛みしめる。 

 その朱美の鬼気に気付いたのか妖魔は、
 バシャッ、ザバッ
 プールからプール・サイドへ手摺り越しに、上陸しようとしていた。

 朱美は怒りを沸騰させながら、
「・・・死ねぇぇっっ!」
 そう叫び、
 ダンッ
 跳躍しながら刀を振り下ろす。

 だが、その刹那、
 ビーッ!
『警告!非殺傷対象』
 警告音とともに表示されるメッセージと、
「・・・駄目です、朱美さんっ!」
 雪の声、そして、愛する人の驚愕する表情がヘルメット越しに、
 ザシュッ
 柔らかな肉を裂く最高の手応えを加えつつ、流れていった。

 それと同時に、
 ビクビクビクッ
 邪漢との闘いですら感じられなかった猛烈な快楽が、朱美を襲う。
 しかし、それは、
「・・・あ、ああっっ!!」
 朱美の感情と合致することはない。

 カランッ
 刀を取り落とした朱美は、
 プシャァッ
 股間から潮を吹きながら、
「・・・う、あ・・・」
 夢遊病者の如く、虚空に手を伸ばしながら恐る恐る、己が斬った肉塊へとよろめき寄り、
「・・・あ、あ・・・」
 グチャッ
 不吉な音を立てながら、その肉塊を抱えた。

 彼女が愛したはずの肉塊は、 
 ビクッ、ビクッ
 不気味に痙攣しながら、急速に命の炎を消してゆく。
 それを朱美に訴えるかのように、上下に切り裂かれた肉体の断面から、
 ボタッ、ボタッ
 生暖かい、真っ赤な滴が、朱美のコスチュームを染め上げる様に、零れ落ちていった。

 朱美はどうにか、
「・・・せん、ぱい・・・」
 そう言の葉を絞り出し、命を繋ぎ止めるかの如く、
 ギュッ
 強く『星野』を抱き締めるが、己がかい抱く『人』は急速に、『物体』へと成り果ててゆく。
 やがて、
 ビクンッ
 大きく一度だけ震えると『星野』は、二度と動くことはなかった。

 朱美は、
 ヒュゥ
 と、空気を一飲みすると、
「・・・う、あ、わ・・・うわぁぁぁっっ!・・・先輩、先輩、せんぱぃぃっ!」
 肺に溜まったものを全て吐き出す勢いでそう叫ぶと、冷たくなり硬直を始めた骸を、
 ギュゥゥ
 力の限り抱き締める。
 それは失ったものを繋ぎ止めようとする朱美の、最後の足掻きだった。

「・・・あーあ、だから、言ったじゃないですか・・・『駄目だ』、って」
 凄惨な光景とは場違いな、聞き慣れた声に朱美は、涙に濡れた顔を上げる。
 その先には、この悼むべき場に似つかわしくない酷薄な笑みを浮かべる、雪が居た。
 そして彼女の後ろには、同じく嫌らしい笑みを浮かべた、蒼乃と沙夜子の姿もある。

 雪は、朱美の許までやって来ると、
「朱美さん、それはもう、ただの『肉の塊』ですよ?・・・早くそんな『モノ』、棄てちゃったらどうですか?」
 そう言って、彼女の言う『モノ』から、朱美の腕を解こうとした。

 朱美は、
 バシィッ
「何をするのっ、雪っ!?」
 信じられない、そう言下に含ませながら、戦友を睨め付ける。
 彼女の抱く『存在』は、決して『モノ』などではない。
 それは直接の知己でなくとも人を守護する四神の巫女であれば当然、理解され得るべき感情の筈-

 その雪の肩に、蒼乃が手を掛け、ゆっくりと朱美の前に歩み出た。
 親友の姿に朱美は、
『雪を叱ってくれるのだろう』
 そう信じ、僅かに頬の緊張を緩ませる。

 だが、彼女から出た言葉は、
「・・・もう、朱美ったら・・・『仲間』に手をあげたりしちゃ、いけないわ・・・雪の言うとおりよ。そんな『モノ』抱えてたら、バトル・スーツが血や脂で 汚れちゃう じゃない・・・早く棄てなさい、朱美」
 朱美の想像とは全く、正反対のものだった。
 
 朱美は、蒼乃にも抗議の言葉を吐こうとするが動揺の余り、
「・・・あ、あ・・・」
 怒りを言語化することができない。
 そんな朱美に追い打ちをかの如く沙夜子は、
「・・・朱美、大体、殺したのはお前だろう?・・・なのに何故、そんなに執着する?・・・雪と蒼乃が言うとおりだ。早くそんな『モノ』、棄ててしまえ」
 そう言うと、
 ギュッ
 朱美の右腕を捻り上げた。

 それによって朱美の体は、持ち上げられるような形となり、
「あ・・・」
 体勢を崩した彼女の腕から、
 ボトッ、ベチャッ
 『人だったモノ』が、血と脂を撒き散らしながら、零れ落ちる。

「ああっ!」
 朱美は直ぐにそれを抱え直そうとするが、
「だから朱美さん、駄目ですってば・・・蒼乃さん」
「わかったわ」
 雪と蒼乃に背後から羽交い締めにされてしまった。
 そして背中から力をかけられ、這い蹲るような姿勢となった朱美は、哀れな骸の虚ろな目と、視線が合ってしまう。

 その瞬間、
 ドクン
 朱美の中を、熱い何かが走った。
 後ろから朱美を覗くような体勢でいた蒼乃は、その反応を認めると、
「・・・ああ、そういうことね、朱美・・・貴女、この男を殺して、感じていたんでしょう?」
 そう言い、
 グイッ
 更に背後から力をかけ、朱美が己の股を覗く様な姿勢にさせる。

 朱美の眼前には、
 ジワァッ
 血肉に塗れながらも確かに、性悦を示す醜い染みが広がりつつある、ボディー・スーツの中心が晒されていた。
 鉄に富んだ生臭さの中に認められる、確かな『情欲』の芳香を得ながら朱美は、
「・・・ち、違うの、これはっ!」
 そう抗弁するが、
 ジワリ
 未だ滾々と湧き出す、肉の証がそれを否定した。

 蒼乃は、そんな朱美の首筋に生温い吐息を浴びせながら、
「・・・朱美、別に否定なんかしなくていいわ・・・だって私達は、浅ましい『雌』なんだもの・・・それに・・・人を斬るのは、気持ち良かったでしょう?」
 そう、囁くと、
 クチュリ
 粘つく朱美の中心を、淫らな人差し指で妖しく撫でる。

 朱美は突然の性悦に震えながらも、
「ひゃんっ!・・・蒼乃、貴女、何を言っているの?」
 親友の言葉に信じられない、と困惑の表情を浮かべた。
 自分達、四神の巫女は、人を守り、魔を祓う存在なのだ。
 それが人を斬ることを『気持ち良い』事と認めるなど、許されるはずもない。

 しかし、蒼乃は、
 クチュ
 指先に付いた朱美の淫液を、
「・・・んふ」
 一口舐め取ると、
「・・・うふふ、何も可笑しい事など言っていないわ・・・寧ろ貴女には、『おめでとう』と言ってあげたいくらいよ・・・それに私達、貴女を『迎えに』来たの」
 そう言うと、雪と沙夜子に目配せし朱美から離れると3人は、朱美の前に並び立つ。

 朱美は、彼女達の様子と蒼乃の言葉に、
「・・・『迎えに』?・・・どういうことなの、蒼乃?」
 不吉なニュアンスを嗅ぎ取りながらもそう問い返すが、蒼乃は、
 ニヤリ
 と、朱美がこれまでに見たことのない、ぞっとする様な笑みを浮かべると、
「この『仲間』によ・・・チェンジ・スレイブ」
 そう聞き慣れない言葉を吐き、変身ブレスレットを翳した。

 それとともに、
 パァァッ
 3人のブレスレットから、『光』が溢れ出す。
 だがその『光』はどす黒く、妖魔の纏うもの-瘴気に近い。
 蛇の如く、肢体を舐め回す様に這い回る『光』を纏いながら蒼乃達は、
「うふ・・・あんっ」
 淫悦に耽る如き表情を浮かべるとやがて、『仮初め』であるメイデン・フォースの装束から彼女達の『本質』へと、『変身』したのだった。

「・・・蒼、乃?」
 朱美は、彼女の眼前に居並んだ『仲間達』のコスチュームに息を飲む。

 皆、メイデン・フォースのコスチュームと似たものを身に付けているがそれは、あるべき本質を反転させたかの如く、デフォルメされていた。
 沙夜子が纏うメイデン・ブラックのものより濃い、漆黒を基調としたボディー・スーツの脇には、沙夜子は黒革、蒼乃は青、雪は白のラインが引かれ、フレア・スカートにも 同様に、各人のイメージ・カラーが縁取りされている。
 その、ミニ、と呼ぶにも丈が短すぎるフレア・スカートの下からは、ボディー・スーツの股がのぞいているが、保護すべき部位の周りは大きく切り取られ、肝 心な部分は、マイクロ・ビキニ様の金属製の股当てが、僅かに覆うだけだ。
 しかも沙夜子に至っては、女に有り得べきでない器官が鎌首を擡げた蛇の如くスカートを持ち上げ、その裾をしとどに汚している。

 そして、胸甲があるべき部位-胸部は大きく切り開かれ、それが武具であるかの如く、金属製のリング・ピアスが乳首を貫いていた。
 また、胸甲の『代わり』に付された金属製の『胸当て』で下乳を支えられ強調された淫靡な胸には、不吉な紋様が刻まれている。
 更にその不吉さに駄目押しをするかの如く、皆の首には、黒革製の首輪が填められていた。

 しかし、淫靡で、邪悪な衣装にしか見えないそれを纏う蒼乃達の表情は、
「うふふ・・・」
 誇らしげですらある。
 彼女達は、今の自分達の『本質』-邪水晶の性奴隷であること-を強調するこのコスチュームに、何ら恥じ入ることはないからだ。

 そんな状況を知らぬ朱美は、戦友達の変わり果てた姿に、
「蒼乃・・・その姿は・・・」
 そう声を絞り出すことしかできなかった。

 しかし、困惑する親友の問いに蒼乃は恍惚とした表情を浮かべると、
「うふふ、驚いた?・・・私達はあるお方にお仕え・・・いえ、奴隷としてこの身を捧げているの・・・朱美、貴女も『仲間』になって、この悦びを知って欲しいと思っているのよ・・・」
 そう答えるのだった。

 呆然と『仲間達』の姿を見送る朱美の背に、
 キィンッ
 チリチリと焦がすような、それでいて、悪寒を感じさせる、矛盾した感覚が走る。
 邪悪で強大なそれは直ぐに漆黒の渦となり、実体化していった。

「・・・いらっしゃったわ」
 蒼乃達は、その気配に傅く様な体勢を取ると、頭を垂れ、彼女達が『身を捧げる』と言った『あるお方』の出現を待つ。
 やがて、猛烈な瘴気とともに、
 シュゥゥッ
 姿を現した淫魔を前に蒼乃達は、
「お待ちしておりました、邪水晶様・・・」
 片膝をつき、深々と頭を下げながら、その邪悪な存在を迎え入れたのだった。
 
 『奴隷』『あるお方』-そして眼前の『淫魔』-
 蒼乃から吐かれた言葉と、彼女達が侍る対象が、混乱する朱美には、結びつけることができない。
 だが、星野の骸と朱美を見比べながら、
「うふふ、ご苦労様・・・事は上手くいったようね」
 邪に微笑む淫魔と、
「はい、邪水晶様・・・仰せの通りに致しました」
 その淫魔から吐かれる褒美の言葉を、頬を紅潮させながら歓喜の表情で受け取る蒼乃の姿に朱美の知覚は、頑なに認めようとしない理性を嘲笑うかの様に、『現実』を突きつける。

 しかも、零落した戦友達が傅くのは、
「・・・翡翠、様?」
 かつて、『守護する対象』だったはずの人物だ。 

 邪水晶は朱美の問い掛けには応えず、なおも愕然とする彼女の前に歩み寄ると、
「・・・うふふ、どうかしら、生まれ変わった『仲間』達の姿は?」
 そう言って、腕組みをし、悠然と朱美を見下ろした。
 
 そこで漸く、朱美は現状を正確に『認識』する。
 この『妖魔』は己の『敵』である、と。

 理性と知覚が辛うじて合致した朱美は、
「・・・貴様ぁっ、蒼乃達に何をしたっ!」
 そう怒声を邪水晶に浴びせる。
 その刹那、
 ヒュンッ
 邪水晶の前を、一つの影がよぎった。
 その影はそのまま躊躇わず、
 ボグンッ
「・・・ぐわぁっ!?」
 朱美の脇腹に強烈な蹴りを入れる。

 ズザザッ
 ボディー・スーツでダメージを軽減されるとは言え、骨が軋む様な激痛とともに朱美は、プール・サイドを数mほど、滑るように転がされた。
 その蹴りの主-沙夜子は殺気を纏いながら、邪水晶の前に立つと、
「・・・邪水晶様に無礼な言葉を吐くとは・・・例えお前でも許さんぞ、朱美」
 そう、朱美を睨め付ける。

 未だ殺気を放つ沙夜子の背後から蒼乃はゆっくり歩み出ると、沙夜子の肩に手を置き、
「もう、沙夜子ったら、余り手荒な事はしないの・・・でもね、朱美・・・私達は自発的に、邪水晶様の性奴隷に『していただいた』のよ・・・ねえ、雪?」
 そう、視線で雪を促した。
 雪はそれを受け軽く頷くと、蒼乃の横へ並び、
「ええ、そうですよ、朱美さん・・・ふふっ、大丈夫、朱美さんも直ぐに自分から、『邪水晶様の性奴隷にして頂きたい』って思えますから」
 無邪気な笑顔を浮かべつつ、恐ろしい言葉を口にする。

 そして、彼女達は、朱美に見せつけるかの如く、
「「「ふふ・・・」」」
 邪水晶にしなだれ掛かった。
 その表情は皆、全てを委ねた相手に対する安堵感で満ちている。
 それからも彼女達が、この憎き妖魔の完全なる下僕と化していることが窺えた。

 朱美はその悔しさ、無念さで、
 ギリッ
 無意識のうちに歯噛みする。

 邪水晶は朱美の様子に、勝ち誇る様な笑みを浮かべると、
「・・・うふふ、そういうことよ・・・」
 そう言って、
 グチュリ
「あん・・・」
 潤みきった蒼乃の股間に尖った指先を潜り込ませ、淫靡なタクトを振るう。

 邪水晶の指先が蒼乃の中へ出入りする度、 
 クチャッ、クチャッ
 粘液質な水音とともに淫液が掻き出され、蒼乃の瑞々しい太腿を汚してゆく。
 それに蒼乃は、
「ああっ、邪水晶様ぁ・・・」
 主の指で己の秘所を捏ねるかの如き淫らなダンスを踊り、歓喜を表現した。

 主を見るだけで欲情し、股を濡らす性奴隷と成り果てた雪と沙夜子も、
「・・・邪水晶様ぁ、淫虎も可愛がってください・・・」
「邪水晶様、私にもお情けを・・・」
 邪水晶の腿に己の滑る秘所を擦りつけながら、下卑た表情で愛玩を強請るのだった。

 仲間達の浅ましい姿に朱美は、例えようのない悔しさと悲しさを感じつつも、
「・・・やめろ、やめてくれ・・・くそうっ!」
 誰にともなく悪態を吐き、
「お前等・・・いい加減に目を覚ませっ!」
 そう叫んで、悪夢を晴らそうとする。

 しかし、邪水晶が、
「うふふ、目を覚ますのはお前よ・・・」
 そう言って、
 パチン
 指を鳴らすと、
「え?」 
 朱美が驚嘆の言葉を発する間もなく、
 パアァッ
 禍々しい光が彼女を包み、それまで彼女を覆っていたものとは別の、『気配』を纏い始めた。

 光の渦が朱美の肢体を撫でる度、
「・・・んっ、はぁあっ!?」
 涼子に『マッサージ』をされたかの様な、悦楽が走る。
 だが今彼女が纏おうとしているものは確実に、彼女達が討ち祓おうとしてきたものと同質だった。

 シュゥンッ
 光は直ぐに、スパークするかの如く消え、『気配』は『実体』へと昇華する。
「うふふ・・・とってもお似合いよ」
 邪水晶が賞賛する通り、再変身した朱美の姿は蒼乃や雪のものと同様に、血の様に紅い、深紅のカラーリングがなされていた。
 敢えて仲間達のものと異なるとすればただ一点、乳首のリング・ピアスがない程度のものである。
 それを朱美に自覚させるが如く、股間からは股当ての、下乳からは胸当ての、冷たい感触が伝わってきた。

「・・・っ!」
 朱美は反射的に、胸と股間を押さようとした。
 しかし、股間を押さえようとした掌が腹の辺りに触れた瞬間、
 ヌルッ
 ざらつきを含むぬめりが広がり、朱美の穢れたコスチュームを、紅黒く汚す。
「!?」
 朱美は奇妙な感覚に驚愕しながらも、己の右手をまじまじと見つめた。

 彼女の掌に付着したもの-それは、彼女が殺めた愛する人の『残滓』である。
 朱美のボディー・スーツは星野の鮮血を浴びた部位だけ元のまま、残されていたのだ。
 彼女が『愛した』人の最後の証は、妖しい紋様を浮かび上がらせるように彼女のボディー・スーツを、より暗い色に染めていたのだった。

 朱美は、何かを思い出したかの如く、慌てた様に周囲を見渡す。
 直ぐに彼女は、ただの肉塊となり果てた『星野』を探し当てた。
 再び、己が犯した罪を強制的に認識させられた朱美は、
「・・・い、嫌ぁぁあっっ!」 
 絹を裂くような悲鳴をあげる。
 そして狂った様に、己にこびりつく殺意の結果を取り除こうと、
「・・・いやっ、いやっ、いやっ・・・」
 譫言の如く拒絶の言葉を吐きながら、掌を必死に、ボディー・スーツに擦りつけた。
 だがそれは、彼女のボディー・スーツに『死の染料』を一層、塗り込む結果にしかならない。

 半狂乱になる朱美を、
 フワッ
 蒼乃は優しく抱き留める。
「落ち着いて、朱美・・・」
 そしてそう、語りかけた。

 それに朱美は漸く、
「あ・・・」
 落ち着きを取り戻すが、蒼乃が続けて吐いた言葉は、
「うふふ、大丈夫よ・・・貴女も邪界の奴隷になるのだから・・・人を殺すなんて、当たり前の事だわ」
 朱美を、更に貶めるものであった。

 朱美は、己をかい抱く『親友』を魔物を見るような表情で、
 ドンッ
 突き飛ばすと、よろよろと立ち上がり、2歩、3歩と後ずさる。

 朱美は、
「・・・蒼乃、お前・・・」
 諦観に覆われた表情で、しかしそれでも、弱々しいながら蒼乃を睨め付ける。
「・・・くぅっ!・・・」 
 だが矢張り、『親友』に対する感情を憎しみだけに塗り替えることは、彼女にできることではない。
 必定、
「・・・お前が、お前が全て悪いんだっ!・・・蒼乃を、みんなを元に戻せっ!」
 朱美の怒りの先は、彼女の背後に控える淫魔へと向かった。

 朱美は、元凶たる存在を打ち倒そうと、
 カシャ
 転がっていた刀を手にし、正眼に構えを取る。
 しかし、
「・・・させないわ、朱美」
 彼女の前に立ちはだかったのは矢張り、戦友達であった。

 蒼乃を先頭にして、邪水晶を鶴翼に守る戦友に朱美は、刀を構えつつも、
「みんな、目を覚ませっ・・・私達は、四神の巫女・・・魔を討ち祓う存在なんだ・・・それが今何をしているか、解っているのかっ!?」
 そう諭すが、蒼乃は、妖艶で熱っぽい笑みを浮かべると、 
「ええ、良く解っているわ・・・私達は、四神の巫女であることなんてもう、どうでも良いの・・・それよりも、邪水晶様にココを貫かれて・・・うふふ、淫魔になりたいのよ」
 クチュリ
 期待で潤んだ己の秘所に、妖しく指を這わす。

 そして蒼乃は一転、真顔になると、
「・・・だから、朱美・・・私達の仲間にならないと言うのなら・・・いえ、目を覚まさせるというのなら・・・私達を倒してみせなさい」
 そう言って、
 ブンッ・・・ギリッ
 実体化させた弓を構えた。
 それを合図に、沙夜子は小太刀を、雪は銃を朱美に向ける。

 朱美は、その姿に、
「みんな・・・」
 絶望に打ち拉がれそうになるが、辛うじて、
『ダメだっ・・・ここで私が諦めたら、みんなは・・・私が・・・やるしかないっ』
 己を奮い立たせ、
 ギュッ
 獲物を握る手に力を込めた。

 朱美は、緊張に表情を引き締めながら、
 チャッ
 腕を絞り、『仲間』に狙いを定める。
 そして、丹田に気を込めると、
「・・・はぁぁっっ・・・破ぁっ!」
 3人の真っ直中へ斬り込んでいった。

 朱美は、
 ヒュンッ・・・カキィンッ
 蒼乃が放った矢を刀で叩き落とすと、
 パンッ・・・タンッ
 雪の銃弾をすんでのところで躱し、
 ブンッ
 沙夜子へと斬り掛かる。

 皆、武器を持つとは言え、この3人の中で攻性を持つのは、沙夜子一人だ。
 彼女さえ無力化してしまえば、ほかの二人は防御に徹するしかない。
 それは、メイデン・フォース随一の武力を誇る朱美に対し、勝利を否定するに等しい。

 だが、沙夜子は朱美の一撃を、
 キィンッ
 小太刀の峰で滑らせるように逸らすと、
 タンッ
 華麗に舞い、二の太刀で朱美に痛撃を加えるべく、
 ビュンッ
 その柔らかな脇腹を狙う。

 朱美をそれをすんでのところで、
 ガギィンッ
 刀の柄を使い、跳ね上げた。

 それで体勢を崩された沙夜子は、
 ズザザッ
 プール・サイドを滑りながらも敢えて勢いを殺さず、そのまま朱美と間合いを取る。

 一方の朱美も、
 ズザッ
 『敵陣』内を駆け抜け、再び蒼乃達に対峙した。

 ツゥ
 嫌な汗が、朱美の背を滑る。
 剛と柔-
 邪漢の時とは正反対になった立場に、朱美は焦りを感じざるを得ない。
 メイデン・フォースの中では圧倒的な武力を誇る彼女だが、その能力を最大限に発揮できてきたのは、仲間達のフォローがあったからであることを、朱美は十二分に理解していた。
 朱美の最大の欠点は攻撃時、防御に隙ができるところにある。
 
「・・・」
 朱美は、再び鶴翼に陣を敷く蒼乃達に目を遣る。
 蒼乃は弓を盾に持ち替え、無言のままに、朱美を威圧していた。
 蒼乃の鉄壁の防御に、沙夜子の雷の様な遊撃、そして雪の分析能力-
 パワーでは朱美に欠けるが、戦力バランスとしては、一つの欠けもない。
 沙夜子の攻性を殺せば、そう考えた朱美ではあるがそれは裏を返せば、そうしなければ彼女に勝ち目はない、ということなのだ。

 沙夜子は、小太刀を交差させる構えを取りながら、
「・・・流石だな、朱美・・・しかし、お前も解っているのだろう?・・・私達に、敵わないということが」
 不敵な笑みを浮かべつつ、朱美をそう、挑発する。

 朱美はそれに、刀を向け殺気を放ちながら、
「抜かせ・・・」
 短くそう、吐き捨てた。

 悔しいが、沙夜子の言葉は真実を十二分に胎んでいる。
 徒に時を掛ければ、心身の負担を一身に浴びなければいけない朱美が、圧倒的に不利だ。

 挑発とは解っていながらも朱美は、
『・・・でも、これしかない、か』
 と、腹に決める。
 今の自分では僅かでも、『負けない』可能性に賭けるしかない。

 意を決した朱美は、
「はぁぁぁぁ・・・・」
 刀を下段に構え、気を一点に集中し始める。
 最早『秘術』でしか、彼女達を『打ち倒す』可能性はないのだ。
 しかし、その『秘術』の向かう先は、
 「「「うふふ・・・」」」
 邪な笑みを浮かべ、己に敵意を向けさえする、妖魔の下僕であっても、『戦友』に他ならない。
「・・・くそっ」
 これまで死線を共に越えてきた『戦友』を、完全なる『敵』と思うほど朱美は、『戦士』になりきれなかった。
 
 それでも朱美は、
「・・・破ぁあぁっっ!」
 ダッ
 『戦友達』に向かって突進する。
 この一撃で、彼女達の目を覚ますことができれば-
 と、有りもしない可能性に賭けながら。

 だが、『必殺』の剣ではない朱美の一撃は敢えなく、
 ガキィンッ!
 蒼乃の盾によって弾かれ、
 キィンッ
 澄んだ音色と共に、沙夜子の剣戟で手許から跳ね上げられた後、
「・・・うふふっ、負け、ですね、朱美さん」
 パンッ
 雪の銃撃によって跳ね飛ばされ、
 キンッ・・・ヒュルヒュルヒュルッ・・・ザンッ
 コーティング処理されたプール・サイドへと突き刺さった。

 『戦友』の共撃により、文字通り、徒手空拳となった朱美に、
 ビュルビュルビュルゥッ
 プールから出現した触手の群が四方から、襲い掛かる。
「・・・くぅっ!」
 普段であれば斬撃で一蹴できる相手だが、獲物を失ったうえ、
 ガクンッ
「!!」
 全力でなかったとは雖も、『秘術』を使用した反動は殊の外、彼女の動きを鈍らせた。

 程なく朱美は、
「あっ!?」
 ビチャンッ
 普段の彼女ではあり得もしない『転倒』、というミスを犯し、蝶が蜘蛛の糸に絡め取られるかの如く、
 ビチュッ・・・ニュルニュルニュル
 触手によって拘束されてしまった。

 磔刑に処された咎人の如く朱美は、
 ズルッ
 邪水晶の前に引き出される。

 朱美は邪水晶を睨め付けながら、
「・・・殺せ・・・」
 押し殺した様な声でそう、呪詛の言葉を吐いた。
 戦いに敗北してしまった以上、仲間を助けることは、最早できない。
 それに、邪水晶の後ろに控える仲間達の姿を見ればこの後、己にどの様な仕儀に及ぼうとするか、その意志は明白だ。
 ならば、今取り得る最良の選択肢は『死』しかない。

 そんな朱美の前に、スッと蒼乃は歩み出ると、
「・・・朱美、そんな事を言わないで・・・私達は、貴女に危害を加えようとは思っていないの・・・それに、私達は『仲間』でしょう?・・・本来の関係に戻りたい、 それだけなのよ?」
 そう、友を心配する『親友』の表情で、朱美を諭そうとする。

 しかし朱美は、悲し気な表情で、
「蒼乃・・・貴女の言っている『本来の関係』は、そんな妖魔が介在する関係ではなかった筈・・・堕落した貴女達の『仲間』になんて私、なれない・・・だからお願い・・・殺して」
 そう、『友』と主張する相手に最期の望みを伝えるべく、懇願した。

 蒼乃は、悲壮な決意を露わにする朱美に、
「・・・もうっ!、強情なんだから・・・貴女には、私達の『仲間』になって欲しい、そう言っているでしょう?・・・そう、解った、解ったわ、朱美・・・」
 根負けしたかの如く、そう、言葉を重ねる。

 朱美は、
「蒼乃・・・」
 己の一念が友に通じた、と、歓喜の表情を浮かべた。
 だがそれも、
「・・・仕方ないわ・・・心が頑ななら、体から解ってもらうしかないわね・・・よろしいですね、邪水晶様?」
 蒼乃の言葉に霧消させられるまでの、儚い希望でしかなかった。

 邪水晶は、悠然と腕組みをしながら、
「ふふ、好きになさい・・・」
 楽し気にそう顎で促すと蒼乃は、
「有り難う御座います、邪水晶様・・・」
 邪水晶に膝をつき、臣下としての礼を述べる。

 蒼乃は、邪水晶の前から退くと、
「・・・朱美、貴女が『私達』の事を理解できないのは、貴女が『私達』と同じ
『存在』でないから・・・だったら、貴女が『私達』と同じ『存在』になれば良いだけ・・・」
 そう言いながら、朱美に歩み寄った。
 
 そして、不気味な笑みを浮かべて己に近づく蒼乃に対し、
「蒼乃、貴女、何を・・・」
 そう、訝しがる朱美の頬に蒼乃は、
 スッ
 と手を添え、どこか陶酔した様な表情で、
「・・・ふふっ、だからね・・・私達の手で、貴女を私達と同じ、『肉奴隷』に改造してあげる・・・大丈夫よ、貴女の体はもう、十分に下地ができているから・・ねぇ、2人とも、どうかしら?」
 『肉奴隷』と化した『存在』である『仲間』へ問い掛ける。

 それに雪は、
「素敵なアイディアです、蒼乃さん!・・・朱美さん、私達がとーっても、淫乱な体にしてあげますからね!」
 と応え、沙夜子は、
「くくっ、それは良い・・・朱美には、リーダーに相応しい肉奴隷になってもらわないとな」
 と応えた。
 いずれにも、邪、と呼ぶに適う笑みを浮かべつつ、獲物を得た猛禽の如く朱美に歩み寄る。

 朱美は今や『敵』と化した『戦友』達の姿に、
「ああ・・・」
 絶望の嘆息を漏らしながらただ、蹂躙の時を待つしかなかった。

 最初に朱美の許へ辿り着いたのは、
「うふふ・・・」
 蒼乃である。
 その蒼乃が、舌なめずりしながら、
「ふふっ、じゃあまずは、言い出しっぺの私が改造してあげるわね・・・流禍、お願い・・・んっ・・・んんっ!」
 そう悶えると、彼女のボディー・スーツの一部が変化し、
 ズルリ
「・・・はぁい・・・うふふぅ、朱美ちゃんよろしくねぇ」
 彼女の『中』から、一体の妖魔が姿を現した。
 
 朱美は蒼乃の肛内から屹立するかの如く現れたそれに、
「ひぃっ!?」
 短い悲鳴をあげる。
 見ればその妖魔は、黒曜石でできたような光沢を放ちつつも滑り気を持ち、邪悪さと醜悪さに拍車を掛けていた。

 朱美の反応に流禍は、その彫像の様な口を尖らせると、
「・・・もうっ、傷ついちゃうなぁ・・・これから朱美ちゃんを気持ち良くさせてあげるのにぃ・・・そんな失礼な娘には・・・えいっ!」
 ズッ、ズルルルッ
 その身をペニス様に尖らせ、
 ズブブブッ
「あふぅんっ!?」
 朱美の不浄の孔へ、一気に潜り込んだ。

 ボディー・スーツを通した肉体改造や涼子の調教により、ある程度の淫乱化は進んでいるとはいえ、
 ズルッ、ズルッ
「・・・ぐっ、ふぐうぅっ!」
 直腸を越え、大腸にすら潜り込み始めた異物感は容易に耐え得るものではない。

 しかし悶え苦しむ戦友とは対照的に、淫欲で上気した表情を浮かべながら蒼乃は、
「あんっ、朱美の中、とっても良いわぁ・・・襞の一つ一つ、がっ・・・とっても、イヤラシイ・・・うふふ、貴女って、生まれつきのアナル奴隷なのね・・・うふっ、これなら、素敵なケツマンコにしてあげられる、わっ・・・ んんっ・・・」
 グチュッ、グチュッ
 腸液と流禍の体液で滑り気の増した朱美の肛内を、
 グヌッ、グヌヌッ
 双頭バイブの様に変化した流禍で責めたてる。

 そして、神経と精神を同調させた流禍に、
『ん・・・ああ・・・流禍、始めて、いいわよ』
 そう、指令を下すと、忠実な輩にして上位者でもある『友』は、
『んふぅ、それじゃあそうするねぇ♪』
 そう応え、
 ズヌッ
「くふぅっ!?」
 朱美の一段深くへ潜り込むと、
 ザシュッ・・・ジュッ
 仙人掌様にその身を尖らせ、その先端から毒液を朱美へ注ぎ始めた。
「ひぎぃっっ!!」 
 それと同時に、焼き鏝を当てられた様な熱が、朱美を襲う。 

 だが蒼乃は、脂汗を浮かべ苦悶の表情を浮かべる親友とは矢張り対照的に、
「うふふっ、大丈夫よ朱美・・・直ぐに気持ち良くなるわ・・・」
 恍惚とした表情を浮かべながら、流禍が毒液を吐く、
 ビュルッ、ビュルッ
 射精にも似た感覚に酔いしれつつ、
 グチュッ、グチュッ
 朱美の肛内を責め続けた。

 果たして、蒼乃の言葉の通りその効果は、
「・・・い、ひゃぁっっ!・・・なに、これへぇっ!?」
 朱美の嬌声によって証明される。

 『性器』と化した朱美のアナルは、
 グチュッ、グチュルンッ
「んふっ、凄いでしょう・・・これで貴女もっ・・・んんっ・・・私と一緒・・・排泄するだけで感じちゃう、卑しいアナル奴隷になったのよ・・・ああっ!」
 朱美を責めているはずの蒼乃さえ際に追い遣る、『名器』と化していた。

 蒼乃は、
「・・・あはっ、ダメェ・・・朱美ぃ・・・貴女、本当に生粋の、アナル、奴隷、なのね・・・私でもこんなにっ・・・んっ・・・イヤラしく・・・なひぃっ!」
 そう叫ぶと、淫悦に歪んだ、だらしない顔を虚空に向け、
 ビクッ、ビクッ
 その身を震わせる。

 朱美の肛内に穿たれた流禍は、
『蒼乃ちゃん、気持ち良さそうねぇ・・・そろそろイキそぉかなぁ』
 宿主の変調を感じると、
『・・・うふふぅ、じゃぁ、そろそろ仕上げといきますかぁ♪』 
 ズヌッ、ズヌッ、ズヌッ・・・ブクウゥッ
 朱美の直腸まで潜り込み、腸壁を抉りながら、『人間』と決別するための猛毒を注ぎ込もうと、膨張した。

 それに合わせ、
 ボゴッ
 朱美の腹が、醜い腸の形へと膨らんでゆく。

 朱美は、破滅的な結果が近づいていることを強制的に認識させられ、
「・・・い、嫌っ・・・蒼乃、やめでぇっ!」
 グチャグチャの顔で蒼乃にそう、訴える。

 しかし、蒼乃は、
「・・・何を言ってるの、朱美ぃ・・・私、解っているのよ、貴女がこんなに、感じてるって・・・ほらっ、こんなにグチュグチュって・・・あはっ、アタシ・・・ もうだめぇっ!」
 そう叫ぶと、
 グイッ
 朱美の中を一層深く抉る様に、腰を突きだした。

 それを引き金にして、
 ドプッ、ドプッ、ドプッ
 朱美の直腸、結腸へと、夥しい量の粘液が吐き出される。

 それとともに、
 モコッ、モゴォッ
 朱美の既に醜く膨らんだ腹が、限界点を見極めるかの如く、完全なる腸の形へ変形してゆく。
 それは、膨張による痛みだけではなく、
「ひぎぃいっっ!?」
 内から灼ける様な熱を、朱美にもたらした。 
 それでいて、
 ビクッ、ビクッ、ビクッ
 激烈な快楽を朱美に叩き込む。

 3つの苛烈な感覚の交差に、
「ぎひぃっ!?・・・ひぃぃっあぁぁっ!」
 朱美の精神は瞬く間に削り取られてゆく。
 そして間もなく、
「・・・い、いひぃぃぃっ!」
 一際甲高い声を上げると、糸が切れた人形の如く、
 ガクッ
 全身を弛緩させた。

 蒼乃は、
 ジュ、ヌ゛ポンッ
 ぐったりとする朱美の中から、己の『分身』を引き抜きつつ、
「・・・あ、あ゛っ・・・う、ふふっ、朱美ぃ、とっても素敵だったわよぉ・・・これで後ろの穴は、私達と同じ・・・どんな妖魔の、どんなぶっといモノでも 飲み込めるわ・・・ふふっ、あははっ!」
 そう宣告とも哄笑ともつかぬ言葉を吐くと、
 ビュルッ、ビチャッ、ビチャッ
 勝利のシャンパンの如く、粘液を朱美の肢体に振りかける。

 そして、蒼乃の『肉棒』の形に開ききった朱美のアヌスからは、
 ビシャァッ
 己の内部を改造した魔液が、噴水の様に止めどなく溢れ出すのだった。

 沙夜子は、
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 意識を半ば失いながらも肛悦に咽ぶ朱美を見下ろしながら、
「・・・始めてのアナル・セックスでこれだけイキ狂うとは、淫売の素質があるな、朱美・・・それでは次は、私が改造させて貰おうとするか・・・ふふっ、面白い ものが あるじゃないか」
 そう言うと、朱美に両断された、『星野』の『下半身』に歩み寄る。
 そして、
 ヒュンッ・・・ピッ
 競泳水着の端を、器用に小太刀で斬ると切先で、切れたナイロン地の布を、ハラリと除けた。

 沙夜子は、そのまましゃがみこんで、冷たくなりつつある星野の逸物を、品定めするかの様に取り上げると、
「ふふふ、この牡、中々立派なモノを持っていたんだな・・・」
 そう言いながら小太刀で、
 ザクッ
 肉屋がするかの如く機械的に、肉茎の部分のみ切り取ると、それを持ち立ち上がる。
 すると切断面からは、
 ボタッ、ボタッ
 鮮度を示すかの様に血が滴となって、コンクリートの床へと零れ落ちた。

 沙夜子はそれに邪な笑みを浮かべると、
「ふふっ・・・」
 懐から、
『キィッ』
 奇声を上げる、線虫様の蟲を取り出し、血の滴る切断面へそれを、
 ズブブッ
 ねじ込む様に潜り込ませる。
 そしてやおら、
 ヒュンッ・・・ボトッ
 朱美の腹へそれを放り投げた。

 朱美はその弾力ある衝撃に、
「・・・ううっ」
 意識を取り戻す。

 その衝撃の主は、朱美の腹に着地したのを合図にしたかの如く、
 ボゴッ・・・ボゴゴッ
 歪に膨らみ、脈動を始めると、
 ボゴンッ、ボゴンッ
 見る間に、節呉れ、各所にイボのついた、醜い『巨根』へと成長してゆく。

 そしてそれは、その醜い巨根を背に持つ、肉の寄居虫へ変化すると、
「・・・い、嫌っ、何これぇっ!?」
 今度は朱美の悲鳴に応えるが如く、
「ギィィッ!」
 甲高い産声を上げた。

 寄居虫は、糸蚯蚓の森の如き『脚』から、
 ヌルゥッ
 妖しげな粘液を吐き出しながら、
 ズッ・・・ズヌヌルルッ
 朱美の一点を目指し移動を始める。

 朱美は醜悪な怪物の侵攻に、
「・・・ひぃっ!?」
 短い悲鳴を上げ、慌てて防戦しようとするが、
 ギシッ
「!!」
 未だ両腕を拘束する触手に、動きを封じられる。

「お願い、放してっ!」
 朱美はそう叫び、体を乱暴に揺すって、寄居虫を振り落とそうとするが、
 ビタッ・・・ヌルルッ
 粘液の接着性と『脚』の吸着力で朱美に貼り付いたそれは、容易に外れることはない。

 ヌルゥッ 
 その蛞蝓が這いずり回る様な感覚に朱美は、
「・・・い、嫌ぁっ、気持ち悪いっ!」
 生理的嫌悪感を顕わにするが、
「そんなに嫌がるな朱美・・・それは憧れの先輩なんだぞ?・・・くくっ、尤も、お前が殺してしまったがな」
 沙夜子のその言葉に、
「い、嫌ぁぁぁっ!」
 精神的な恐怖を加え、狂乱する。
 そしてその余り、
 ジョォォッ
 失禁してしまった。

 ジワァァッ
 黄金色の滴が股あての脇から、アンモニアの強烈な臭気を放ちつつ、朱美の腿と尻を濡らす。
 朱美が意識を失っている間、樹液に集る虫の如く、朱美のアヌスから零れ出る体液を愉しんでいた雪は、その滴をしとどに浴びながらも朱美の前に回り込み、
「うふふ・・・」
 人差し指で、未だ尿が滴り落ちる股当てをずらすと、
「うふふ、朱美さん、漏らしちゃうなんてはしたない・・・でも、ここはしっかり起てているんですね・・・ホント、イヤラシイ・・・れろっ」
 そう嘲笑の言葉を浴びせ、露となった朱美のクリトリスに、舌を這わせた。

 朱美のそこは、本人の感情とは関係なくいきり起ち、過剰なまでに自己主張をしている。
「・・・これなら、準備万端、ってところですね・・・うふふっ」
 雪がそう言って朱美の股間から顔を離すと、
「ギィィッ!」
 寄居虫が雪の言葉に同意するかの如く、奇声を上げた。

 そして、醜き肉の寄居虫は、
 ビチビチビチィッ
 その身から糸蚯蚓様の触手を伸ばしたかと思うとそれを一斉に、
 ズプッ・・・ブスッ、ズブブブッ!
 朱美のクリトリスへ突き立てる。

 朱美は、
「・・・ぎっ、ひぐぎぃぃっ!?」
 クリトリスから感じる激痛に、のたうつ。
 それはやがて、
 グプッ、ズブブッ、ビキビキビキィッ
「がああぁぁっっ!」
 下腹部全体を覆う、激痛とも呼ぶにも生易しい、苛烈な痛みへと変じた。

 寄居虫から伸びた触手は、朱美の下腹部内、肉の奥深くまで根を伸ばし、血管、神経、リンパ節にまで癒着してゆく。 
 下腹部そのものを、内から掻き混ぜられる様な感覚に朱美は、
「がっ、ひっ、ぎぃぃっ!」
 白目を剥き、涎を飛び散らせ、意味の成さない言葉を吐く程度の事しかできない。

 そんな朱美に沙夜子は、
「ふふっ、良かったな朱美・・・これで、憧れの『先輩』と一生一緒だぞ・・・あははっ!」
 そう哄笑した。 
 朱美を抉り、血肉を己が物とした寄居虫はやがて、今度は沙夜子の言葉に呼応するかの如く、
「キィィッ!」
 歓喜の声を上げた。
 そして、その感情を実体化させるべく、
 ブクッ・・・ドクッ
 肉茎の根元を不気味に膨らませる。
 既に彼は朱美の肉体とほぼ癒着し、『最期の役目』を果たそうとしていた。
 
 そんな意地ましい彼を、
 ギュゥゥウッ
 雪はきつく握り締める。

 そして、幼子の悪戯を咎めるかの如く頬を膨らませながら、
「ダメですよぅ、勝手にしちゃぁ・・・朱美さんの一番汁は私が貰うんだから・・・」
 そう言うと躊躇いもなく、朱美の『肉棒』に顔を寄せる。
 そして、餌を眼前にした犬の如く、口の端から涎を垂らし、
「・・・ああっ、朱美さんのチンポ、臭くて、汚くて、とっても素敵ぃ・・・れろぉ」
 『賞賛』を『彼だったもの』に浴びせると、強烈な性臭を愉しみながら、恥垢に塗れた穢らわしい肉塊に、その淫らな舌を這わした。

「うはぁっ!・・・雪ぃ、止めて・・・」
 ビクッ、ビクッ
 苦痛から漸く解放された朱美は、今度は相反する快楽にその身を震わせながらも、唯一動く首を振りながら、己の肉棒にむしゃぶりつく友にそう、懇願する。

 しかし、
「ちゅっ、れろぉっ・・・ふふっ、何を言っているんですか、朱美さん。ココをこんなにビクビクさせておいて・・・あはぁっ、朱美さんのチンカス、チーズみたいに濃くて美味しい・・・じゅるっ」
 その願いは届かず、そればかりか、朱美の鈴口を、
 レロンッ
 一舐めすると、
「・・・あぁん、もう我慢できない・・・んふっ、じゅるるぅっ」
 陶酔した表情で喉奥まで一気に、肉棒全体を飲み込んだ。

 グポッ、グポッ
 雪は、頭をグラインドさせながら口をすぼめ、舌先で肉茎の敏感な部分を責める。
 それは、
「はぁんっ、雪ぃっ!」
 膣穴を犯す様な刺激的な感覚を、朱美へと送り続けた。

 グポッ、グポッ、グチュッ
 口の端から、涎と肉棒の先から滲みだした先走り液の混合液を飛ばす雪と、
「・・・んっ、はぁっ、だめぇっ!」
 悶える朱美の姿を眺めていた沙夜子は、
「・・・お前達だけで愉しむのは、不公平じゃないか?・・・なんだ、ここの穴が空いているな・・・なあ、朱美」
 その言葉に、朱美が僅かに己へ顔を向けた瞬間、
 グボッ
「ふぐぇぇっ!?」
 嬌声を吐き続けていた口へ、逞しき剛直を突き入れる。

 突如挿入された異物に朱美は、
「おえっ、ごぇぇっっっ!」
 反射的に吐き気を催すが、喉奥の蠢動は、
「・・・ああっ・・・くくっ、朱美、中々いいぞ、お前の『奉仕』は・・・くくくっ!」
 沙夜子を悦ばせる結果にしかならない。

 グポッ、グポッ、グチュッ
 グポンッ、グポンッ、グポンッ
 上下2箇所で、主の異なる肉棒が淫らなハーモニーを奏でる中、朱美の感覚に、明確な変調が生じ始めていた。
『・・・い、や・・・苦しい・・・でも・・・気持ち、良い・・・何なのコレ・・・』
 当初は、恥辱や苦痛-負の感覚が彼女を占めていたがそれらが全て、快楽へ変じつつある。

 グポンッ、グポンッ、グポンッ
 肉塊が喉奥の粘膜を押し潰し、呼吸する空気すら奪う沙夜子の陵虐さえ、
『・・・喉に、チンポがあたるのって、こんなに良いんだ・・・』
 そう感じてしまう。
 極限まで精神を追い込み、間断なく快楽を注ぎ込まれた結果、朱美の理性は、肉の快楽に押し流されようとしていた。
 そうなれば、肉の悦びを最大限受容できるよう改造された肉体に、精神が敗北することなど容易い。

 朱美は、沙夜子の肉棒を咥えたまま、
「・・・うっ、ふえっ、もぶ、だめ゛っ・・・」
 くぐもった声と、
 ビッ、ビクンッ
 喉奥の蠢動で、沙夜子に己の敗北を知らしめた。

 沙夜子は、
「・・・くくっ、なんだ朱美、もうイクのか?・・・仕方ない・・・雪、そろそろコイツがイクそうだ・・・『肉の仲間』になった『リーダー』を、盛大に祝ってやれ」
 雪にそう促すと雪は、目線だけで頷き、
 グチョッ、レロッ、レロッ
 朱美にフィナーレを迎わせるべく、口淫に変化を付け始める。

 時には繊細な、そして時には
 ズッ、ズズゥッ
 荒々しく吸い出す様な口技に朱美は、
『うっ、ああっ・・・もうダメェっ!!』
 忽ちのうちに、極みへと追い遣られた。

 触手に拘束されながらも、朱美は、
「・・・うぅっ!」
 爪先に力を込め、可能な限り肢体を弓なりにさせながら、 
 ビクッ、ビクンッ
 電気ショックを受けたかの如く、腰を前に突き出す様にして、淫らに変化したその肉体を痙攣させる。
 それと同時に、タールの如き粘り気の強い生殖液が、
 ドプッ、ドプッ、ドブンッ!
 雪の小さく上品な口から喉奥へ、止めどなく注ぎ込まれた。

 雪は、
「んっ、ちゅぅぅっ・・・じゅぅぅっ」
 その口をすぼめ全てを飲み干そうとするが、マグマの様な奔流は噴火口から溢れるが如く、
 ゴプッ、ゴプッ
 口の端から漏れ出ては、
 ツゥ・・・ビチャッ、ビチャッ
 粘糸の滝を作りながら、雪のコスチュームを白く汚してゆく。

 それを上から眺めながら沙夜子は、
「くくっ!・・・雪、どうだ美味いか?・・・さて、私も、この雌豚に馳走をしてやろうとするか・・・んふっ・・・朱美、受け取れっ!」
 そう叫ぶと、
 グポォッ
 朱美の喉奥に己の分身を突き入れ、
 ドクッ、ドクッ、ドクッ
 朱美のものよりは粘性の低い生殖液を、『友』の粘膜にぶちまける。

 大量に吐き出されたそれは、ダチョウへの給餌の如く、
 ドボッ、ドボッ
 強制的に食道を経て、そのまま胃へと供給されていった。

 だがそれは到底、か弱き女が吸収しきれる量ではなく、胃の腑全てを満たした精液は、
「ごぽっ、ごぽぇっ!?」
 ゴポッ
 空気が漏れる音とともに、
 ゴボボォッ・・・ブシャァッ!
「おごぇぇっ!!」
 朱美の鼻と、口の端から飛び散り、雪よりも濃い化粧を、朱美本人に施してゆく。

 しかし沙夜子はその様な『友』の惨状にあっても、
「ふふっ、いい面じゃないか、朱美・・・それに、喉の奥がブルブルして気持ち良い・・・んんっ!」
 吐瀉の律動で震える喉奥の感覚を愉しみながら、吐瀉物を押し返すが如く肉棒を、 
 ゴチュッ、ゴチュッ
 朱美の奥へ奥へとねじ込む様に擦りつける。

 『陵虐』と呼ぶしかないこの行為には、オーラル・セックスの快楽に目覚め始めた朱美ですら、快楽の一片も得ることができずそれどころか、
「ふげっ、ぶぇぇっ!?」
 苦しみもがき、やがて、
 ビクッ、ビクンッ
 全身を痙攣させたかと思うと、
 ガクンッ
 白目を剥いて、気を失った。

 そこで漸く沙夜子は、
「ふふっ、中々愉しめたぞ朱美・・・」
 そう言って、 喉奥深くまで刺さった分身を、
 グポンッ
 空気が抜ける音とともに、勢い良く抜き去る。

 すると、
 ゴポッ・・・ゴボボボッ
 栓を抜かれたビール瓶の如く、
 ビシャッ、ビチャァァァッ
 意識を失った朱美の口から大量の吐瀉物が、噴水の如く零れ始めた。

 それをすんでのところで避けた雪は、
「・・・んっ・・・ごくんっ・・・んふぅっ」
 朱美の精液を、己の口内で捏ね引き延ばしつつ火照った表情で、彼女の惨劇を見送る。

 やがて、
「ごえっ、おえっ・・・」
 朱美の口からこぼれ落ちるものが無くなると、
「うふふ・・・」
 徐に雪は朱美の許へと歩み寄り、未だ気を失う彼女の唇を奪うと、
「んふっ・・・ちゅっ、れろぉ」
 口内に舌を差し入れ、己の口内で散々に捏ね回した朱美の精液を、注ぎ込む。

 そして、上顎、頬裏と、朱美の口内の感触を舌先で十分味わった後、唇を離し、
「・・・ぷはぁっ・・・うふふっ、朱美さんどうですか、ご自分の味は?・・・大切な『初めて』なんですから、しっかり覚えておいてくださいね」
 そう囁きながら、朱美の頬を撫でた。

 朱美はそれに、
「う・・・ゴクッ、ん」
 僅かに喉を動かし嚥下すると、吐瀉で張った筋肉を緩め、頷くかの如く首を折る。
 それを見計らっていたかの様に触手は、
 ズルンッ
 朱美を解放した。

 ドンッ、ビチャンッ
 汚物溜まりに叩き付けられた衝撃で朱美は、
「う・・・」
 意識を強制的に引き戻される。
 そして、ぬめる床に手足を取られそうになりながらもどうにか、よろめき立った。

 汚物に塗れ、
 ビクン
 体の中心に強烈な違和感を得ながらも朱美は、己をかい抱き、
「・・・みん、な」
 そう呻きながら、一歩、二歩と仲間の許へと歩み寄る。

 それを3人は、腕を組み、冷酷なまでに邪な笑みで眺めていたが、蒼乃が、
「・・・うふふ、本当に凄い精神力ね・・・でも・・・」
 そう呟いた刹那、
 ビクッ、ビクンッ
「・・・いやっ・・・何これぇっ!?」
 朱美の肉体に変調が訪れる。
 朱美はそれに堪らず、
 ビタンッ
 尻餅をついてしまった。
 
 沙夜子は、くくっ、と笑みを零しながら、朱美に歩み寄ると、
「その蟲は、宿主に寄生するだけではなく、人間の血を強力な媚薬に変える毒を持っているんだ・・・・・・どうだ、朱美、全身が性器になったみたいだろ う?」
 そう宣告する。
 だが朱美は、
「・・・あっ、はぁっ、はぁんっ!」
 絶え間なく襲う快楽の波に、答えることすら適わない。

 胸、指先、内臓まで-
 血が巡る度に『造り替えられる』感覚は、朱美のより深いところへ深いところへと沈んでゆく。
 痛みにも近い悦楽の津波に反して、彼女を侵す元凶は、
 ドピュッ、ドピュッ
 祝砲を上げるかの様に、生臭い汚液を吐き続けた。
 その度に、
 カクッ
 引き波のような虚脱感と、それを埋める、
 ドプンッ
 魔の力が寄せ波となって、朱美の『本質』をも、急速に変えてゆく。

 文字通り『悶え苦しむ』朱美に蒼乃は、
「・・・朱美、私達も既に、貴女と同じ改造を受けているの・・・でも、貴女が感じているものは、邪水晶様から頂いたこの魔具で抑えることができるわ・・・ねぇ、 朱美・・・貴女も、邪水晶様に忠誠を誓いなさい・・・そうすれば、その煉獄から助けてあげられるのよ?」 
 そう言うと、乳首に貫かれたピアスを、朱美へ見せつけるかの如く弄んだ。
 その顔には、淫婦の様な艶めかしい笑みと、微かな憐憫が混じった複雑な表情が浮かんでいる。

 しかし、その身を全て焼き尽くすかの如き煉獄にあっても朱美は、『戦友』が吐く淫魔の名に、
「・・・あふぅっ・・・それ、は、できない・・・蒼乃・・・」
 僅かに焼け残った戦意を振り絞り、再びよろよろと立ち上がった。
 だが、
 ブルブルッ
 内股は痙攣する様に震え、
「ううっ・・・」
 武器を実体化することもできない。

 その姿に邪水晶は、
「・・・うふふっ、本当に見上げた精神力ね・・・益々、お前の事が気に入ったわ・・・」
 そう言いながら朱美に歩み寄る。

 朱美は、
「・・・貴様・・・」
 そう呻きながら邪水晶を睨め付けるが、
 ズリッ
 僅か半歩前に出ることが精一杯だった。
 それでも朱美は、邪水晶を払いのけようと手を伸ばすが、それよりも僅かに、
 ギュムッ
 邪水晶が朱美の右胸を握り潰す所作が早い。

「あっ、ひぃぃっ!?・・・い゛っっ、あ゛ああ゛っ!!」
 蟲毒が回りきった朱美には、その僅かな愛撫でさえ致命傷となる。
「うふふ・・・」
 邪水晶は朱美の背後に回り込み、左胸にも手を伸ばすと、捏ねる様な愛撫を繰り返す。
「・・・い゜っ、ひぎぃぃっ!?」
 それだけでも、朱美の理性は焼き切れそうになるが邪水晶は、
「・・・うふふ、そのイキ狂う顔、とっても素敵よ・・・このまま犯してしまいたい位に・・・でも、お前にはもっと素敵な、絶望と快楽を味あわせてあげる・・・」
 そう、熱っぽい吐息を朱美に吐くと目線で、ある人物を朱美の眼前に呼び寄せた。

 それは-
「・・・うふっ、南原さん・・・邪水晶様に愛撫していただけるなんて羨ましいわ・・・本当に、『トレーニング』した甲斐があったわね」
 そう嘯く、涼子であった。

「・・・せん、ぱい・・・」
 朱美は朦朧とする意識の中、辛うじてそう言葉を絞り出すが涼子は、
「・・・でも、私も誇らしいわ・・・貴女が、そんなに立派な雌豚になれたんですもの・・・だから、私にも『ご褒美』をくれないかしら?」
 そう、嘲笑とも取れる邪な笑みを浮かべながら、朱美へとにじり寄る。

 そして朱美に尻を向けると、競泳水着のクロッチに人差し指を掛け、
 クチィッ
 そのまま秘所をくつろげると、
「・・・ねぇ、南原さん・・・貴女のそのぶっとい『星野君』で私をグチャグチャにして・・・」
 そう言って、誘うように尻を振った。

 朱美はそれに、破滅的な臭いを嗅ぎ取り本能的に、
「・・・い、あ・・・」
 ガチガチと歯の根を震わせながら、腰を引いて逃げようとするが、その行く手を塞ぐとばかりに邪水晶は、 
 ズブゥッ
「あひぃぃっ!?」
 朱美のアナルに剛直を挿入する。
 そしてそれと同時に、朱美の下腹部をさするように、
 ボゥッ
 妖しい刻印を施した。

 ブビュルゥッ!
 それだけで朱美は軽い絶頂を迎え、醜い肉塊を粘液でデコレーションするが、
「うふふ・・・」
 邪水晶はそれにも構わず、
 ドンッ・・・ズブブッ
 朱美の腰を押す様に、涼子の中へと挿入させる。

 ズヌルゥッ
 じっとりと肉棒を包む感触に朱美は、
「うっ、はぁっ・・・」
 我を忘れそうになるが、
「・・・そうそう、言い忘れていたわ・・・お前が生やしているその肉棒・・・体内にある神力を吸い上げて、魔力に変換するの・・・お前ほどの巫女がこの女の中へ注げば、どんな結果になるのかしら・・・ふふふ・・・」
 邪水晶のその言葉に、背筋を凍らせた朱美は思わず、涼子との接合部に目を遣る。

 すると、股の周囲に飛び散った朱美の精液が、
 ジュッ
 火傷をさせるが如く、涼子の健康的な肌を薄暗い色へ変じさせ始めていた。
 妖魔の体液には魔力が含まれるが、それはその妖魔のランクによって多寡が決まる。
 魔に耐性のある巫女でさえも、幹部級の上魔の精を浴び続ければ無事では済まない。
 一般人である涼子が、『上魔に遙かに勝る』朱美の精を、体内に浴びて無事な筈がないのだ。

「・・・っ!」
 その邪水晶の意図を察した朱美は、顔を青ざめさせどうにか、
 クイッ
 腰の動きを止めようとする。
 しかし、
「・・・うふっ、察しの良い娘は好きよ?・・・そう、お前はこの肉人形に精を注ぎ込んで、妖魔にしてしまうの・・・どう?素敵な結末でしょう?」
 そう朱美に囁いて、
 グチュッ、グチュッ
 肛虐を始めた邪水晶が、それを許さない。

 朱美は、
「・・・あっ・・・嫌っ・・・はぁんっ!・・・ダメェッ、止めてぇっ!」
 そう叫んで、破滅への道からどうにか逃れようとするが、
「・・・んふっ、いいのよ南原さん・・・私は邪水晶様と同じ、淫魔になりたいの・・・だから貴女の精液、一杯注いで頂戴・・・」
 そう嘯いて、
 グリィッ
 己の尻を押しつける涼子に、封じられた。

 邪水晶はその二人の遣り取りを聞き流しながら、
「・・・だ、そうよ・・・ふふっ、後輩としては、先輩の命令には従わないと、ねっ!」
 そう、邪な笑みを浮かべると、
 パンッ、パンッ
 腰骨で朱美の尻をスパンキングするかの如く、
 ヌチャッ、ヌチャッ
 その中心を犯す。

 己の意志とは裏腹に、
 ズヌッ、ズヌッ
 涼子の最奥を激しく犯す朱美にとっては、接合部から込み上げる快楽も今は、
「・・・ぐあっ!・・・くぅっ」
 心身を苦しめる『痛み』でしかない。

 邪水晶達にセックス・ドールとして改造された涼子の膣肉は、『名器』と呼ぶに相応しく、
 ミチッ・・・ズヌゥ
 朱美の肉棒をきつく飲み込んでは愛撫するかの様に、微妙な刺激を与え続けた。

 それは直ぐに、
 ビクッ、ビクッ
 朱美の下半身に、甘い痺れをもたらす。
「・・・くっ、あっ・・・」
 朱美は必死に内股を締め、終局の時を僅かでも引き延ばそうとするが、
「無駄よ・・・」
 バンッ、バンッ、バンッ
 背後から朱美ごと押し潰す如き陵虐には、蟷螂の斧ほどの用も為さない。

「ううっ・・・あ゛あ゛っ!!」
 邪水晶は、既に限界を迎えつつある朱美の耳許に、血のように紅い唇を寄せると、 
「・・・あははっ、最愛の人を殺し、最良の『友』に肉体を改造され、最も尊敬する人間を妖魔にする・・・ふふっ、もうお前は妖魔以下の『外道』なのよ?・・・ それでもまだお前は自分を、『四神の巫女』だと言い張る積もり?」
 そう、囁く様に、罵声を浴びせた。

 朱美は快楽に押し流されそうになりながらもその言葉に、
「・・・う・・・」
 己と周囲を垣間見る。

 蒼乃達、『戦友』の3人は、
「んっ・・・朱美ったら邪水晶様に犯されてあんなに・・・」
「朱美さん、狡いです・・・私も犯されたいのに・・・」
「・・・くくっ、朱美、これでお前も私達と同じ、邪水晶様の肉奴隷だな・・・」
 朱美の身を思い量るどころか、
「・・・んんっ・・・朱美、これで貴女も漸く『私達』の『仲間』になるのね・・・ああっ!」
 堕落する姿を思い浮かべ、自慰に及んでいた。
 未だ彼女達からは巫女特有の神気を感じはするが、その『本質』であるべき
『巫女としての矜持』は、一欠片も感じさせない。

 朱美は、更に視線をその脇に滑らせる。
 すると、
「・・・」
 死後硬直が始まり紫色に変色しつつある、星野の亡骸が目にとまった。
 上下に切り裂かれ、既に『肉塊』と呼ぶ以外にない『物体』には、朱美にも意外な程、感慨が湧くことがない。
 それよりも、『彼』の一部であった、
 ビクンッ
 己の中心で自己主張する『モノ』のほうが余程、生々しいのだ。

 そして最後に、
 グチュッ、グチュッ
 股間から込み上げる『鈍痛』に思考を麻痺させながら、涼子との結合部をぼんやりと見遣る。
 ビキッ、ビキッ
 接合部から溢れ出した朱美の『魔液』は、秘所を中心として確実に、涼子を浸食しつつあった。
 それは朱美の『体液』が既に、『人外』のものへと変じていることの証でもある。

 依るべき縁を全て失い、人外にすら変じつつあることの物証を突きつけられた朱美の心は、
 グチュッ、グチュッ
 腰に甘い痺れが走る度、
『・・・みんなに改造されて、もうアタシ、人間じゃないんだ・・・それに、星野先輩も、本多先輩も、私がっ・・・ううっ・・・』
 絶望の色へ塗り潰されてゆく。

 正義の強い心を持ち、人間を魔から守護する存在-『巫女』-であることは、最早適わない。
 それどころか『人』を『魔』に変えることに、快楽すら感じてしまっているのだ。
 全てを失った自分が行き着く先は-朱美の視線は畢竟、
「・・・んっ・・・あぁっ・・・」
 淫らに狂う、『戦友』達の元へ辿り着いた。
 メイデン・フォースに酷似した衣装を纏いながら、性の悦びにのみ従順な彼女達の姿が、不思議と自然なものに思えてくる。

 絶望で、瞳の色を失いつつある朱美に邪水晶は、全てを見透かした様に、
「・・・うふふ、大丈夫よ・・・お前は何かを『失う』わけではないの・・・くだらない因習、義務、誇り・・・ただ自分を縛るものから解放されるだけなのよ・・・」
 朱美の耳に口を寄せそう囁くと、
「あ・・・」
 朱美の顎を掴み、己の方へ顔を向かせると、
「うふふ・・・ちゅっ、んっ・・・」
 その唇を奪い、その長い舌を、柔らかな粘膜の器へと忍び込ませた。
 
 蛇の様にのたうつ小さな肉塊は、
 レロッ、ヌルンッ・・・
 朱美の唾液を舐め取りながらも漏斗の如く、
 ツゥゥ
 邪水晶の唾液を流し込む。
「・・・うっ、うぶぅっ!?」
 体液を媚薬に改造されつつある朱美ですら、『猛毒』であるそれは、
「・・・あっ・・・んふぅ・・・」
 即効性を持ち、理性を麻痺させた。

 霞がかった意識の中、朱美の肉体は、
「・・・んふっ・・・ちゅるっ・・・」
 快楽を貪る事を優先させる。
 直ぐに朱美は、
「んむっ・・・じゅるるっ」
 鼻から息を抜きながら、邪水晶の舌を貪欲に求め始めた。

 邪水晶はその朱美の反応に、
 スッ
 肛虐の手を緩める。
 しかし、更なる悦楽を求める朱美の肉体は、その『穴』を埋める様に、
 グチュッ、ズヌッ、ズプンッ
 涼子の『肉穴を獰猛に求めるのだった。

 邪水晶は、
 コリッ、ゴリィッ
 己の分身の動きを、朱美の『前立腺』を刺激するもののみに留めると、
「・・・んふっ・・・れろぉっ・・・」
 朱美から唇を離し、彼女の口の周囲に零れた、唾液の混合液を舐める。
 そして、両の手で、
 コリッ
 朱美の乳首を抓ると、マッサージをする如き柔らかなタッチで、愛撫を始めた。

「あっ、あっ・・・んんっ・・・」
 肉棒、胸、尻穴から来る、全身を溶かす様な悦楽の波に、朱美の理性はぐずぐずに崩れてゆく。
 やがて朱美は、
「・・・うっ・・・うふふっ・・・」
 惚けたような笑みを浮かべると、
 ズプンッ、ズプンッ、ゴリィッ
 涼子の『肉』を一層味わうため、彼女の中へ穿った肉槍に、抉る動きを加え始める。
 肉欲に従う事への躊躇いは最早、彼女の中から消え去ろうとしていた。

 邪水晶は、朱美の明確な変化にほくそ笑みつつ、
「・・・うふふ、朱美、気持ち良さそうね・・・ご覧なさい・・・お前が犯している雌を」
 そう、朱美に促す。
「ん・・・」
 その言葉に、虚ろな表情のまま朱美はゆっくりと、涼子へ視線を滑らせた。

「あはっ、いいわぁ、南原さん!・・・もっと私の中を抉ってぇ!」
 涼子の言葉通り、朱美の一突き一突きにより、彼女の『人間』は抉り取られ、
『二人』の『体液』が滴る内股は浅黒い、人外のものへと変じつつある。
 そして彼女の中核をなすべき部分も、
 ピリッ、ピリッ
 朱美の肉棒に魔力を伝えてくるほどの変容を迎えていた。

 『妖魔』が『人間』を『魔物』に変える-
 それは、彼女がかつて嫌と言う程、戦場で見てきた光景だ。
 その行為の主体が自分であること-それは、彼女の本質は既に『人間』ではない事を、冷然と告げている。

 何よりも確かな、経験に基づく知覚は、
「・・・あっ・・・ああっ・・・」
 朱美の精神に深刻なダメージを与えた。
 その隙を、『悪魔』である邪水晶が見逃す筈もない。

 邪水晶は、朱美の頬を優しく撫でながら、
「・・・うふふ・・・お前はもう、人間を妖魔に変える『魔物』でしかない・・・今や、『巫女』に狩られるべき存在なのよ・・・そんなお前でも、私なら全て 受け容れられる・・・お前の大切な『仲間』の様にね」
 そう、朱美に囁いた。

 その現状を冷徹なまでに突きつける一言に朱美は、
「・・・私が『魔物』・・・そんなっ!・・・あはっ・・・あははっっ!」
 そう、狂ったかの如く哄笑した。

 もう、己が『巫女』で在り続けることは適わない。
 それどころか、『人間』として生きることすら、できないのだ。
 『私の居るべき場所など、もうない』
 朱美がそう結論付けた時、
 ギュッ
 彼女の体が、暖かい感触に包まれた。

 フワッ
 甘い、そして嗅ぎ慣れた芳香とともに感じる、
 ジワリ
「あ・・・」
 暖かな『人』の感覚に、朱美の心は自然と弛緩する。

 蒼乃は、安堵感で仄かに紅潮する朱美の体をかい抱きながら、
「・・・ごめんなさい、朱美・・・」
 そう、朱美に謝罪した。

 そして、
「・・・でもね、私達は貴女を裏切った訳じゃない・・・寧ろ『仲間』として、貴女が本当に在るべき姿になるよう、導いただけなの・・・これからは貴女と同じ『存在』・・・いいえ、『仲間』としてずっと、在り続けるわ・・・」
 そう、二の句を継ぐ。
 その言葉に朱美は、はっとした様な表情を浮かべ、瞳を見開いた。
 蒼乃の言葉は、只の詭弁に過ぎない。
 だが、『存在』そのものを否定された朱美に、『仲間』という言葉は何よりも強い、『毒性』を持っていた。
「・・・私、私は・・・」
 それは、肌から伝わる蒼乃の体温とともに、ジワジワと朱美の思考を浸食してゆく。

『うふふ・・・』
 その『毒』が朱美に回ったのを見計らい蒼乃は、朱美から体を離すと、その瞳の奥を見つめながら、
「・・・大丈夫よ、『私達』は・・・『私達』は『巫女』でありながら、肉の悦びも、従属する悦びも知っている・・・それに何よりも、卑しい『肉奴隷』の体を持つ『仲間』じゃない の」
 そう、呪詛を含める様に朱美を諭すと、再び、
 ギュッ
 と朱美を抱き締める。

 それは既に死に体であった朱美の理性に、致命的な効果をもたらした。
 朱美は、体を小刻みに震わせながら、
「・・・本当、に?・・・本当に、『仲間』で居てくれるの?」
 そう、言葉を零す。
 
 『魔物』でしかなくなった自分を受け容れ、在り続けてくれる『仲間』-しかも『彼女達』は、己と『同質』の『存在』でもある。
 『彼女達』は、朱美が失った『居るべき場所』そのものなのではないか?
 朱美は、そう結論付けると、救いを求める様に、蒼乃に手を伸ばした。

 蒼乃は、その朱美の手を握ると、
「・・・何を言っているの、朱美?・・・『私達』は今も昔も、そしてこれからも、ずっと『仲間』よ?・・・うふふ・・・さあ、もう遠慮することはないわ・・・貴女の欲望のままに、その『雌』を始末してしまいなさい」
 そう言って、
 トンッ
 文字通り朱美の背中を押す。

 朱美は蒼乃のその言葉に、
「・・・有り難う、蒼乃・・・うふっ・・・あははっ!・・・そうよ、そうだわ!!」
 礼の言葉を返すと、堰が切れたかの如く、
 パンッ、パンッ、パンッ
 涼子への陵虐を『再開』する。
 だがその『再開』には、
「・・・んっ、ふっ・・・ああっ、イイっ!・・・涼子、貴女の腐れマンコでもっと私を扱きなさい!」
 これまで見せた『呵責』の念は、なかった。

 今や、朱美にとって涼子は、『尊敬する先輩』ではなく、単なる、『性欲のはけ口』でしかない。
 それは彼女自ら、その立場を『捨て去った』からだ。
 妖魔となるための『手段』として朱美を『選択』したのであれば、それを叶えてやるまで-朱美はそう、『判断』していた。
 彼女は決して、『仲間』などではないのだ。

 ゴリュッ、ゴリュッ
 肉そのものを押し潰す勢いで秘肉を抉る朱美の責めに涼子は、
「あっ、ひぃぃっ!?・・・はいっ、はひぃっ!」 
 悲鳴にも似た声を上げながらも、完全に淫魔化した膣肉で、
 ギュゥゥ
 朱美の分身を絞り込む。

 蒼乃は二人の痴態を眺めながら朱美から体を離し、
「・・・うふっ・・・」
 邪悪な笑みを浮かべると、邪水晶に視線を向け、コクリと頷く。

 邪水晶は、その意図するところを汲み、
「・・・うふふ、朱美、漸く素直になったようね・・・それで・・・蒼乃達と同じ『仲間』になる、決心はついたかしら?」
 そう言うと、腰を巧みにくねらせ、
 コリッ、コリッ
 返事を促すかの如く、再び、朱美の前立腺を腸壁越しに刺激した。

 既に臨界点を迎えつつあった朱美は、突然の刺激に終末の迸りを感じながらもどうにか堪え、
「おふぅっ!?・・・はひっ、私を『仲間』に・・・蒼乃達と同じ・・・『仲間』にしてくださひっ!」
 そう、隷従の言葉を絞り出す。

 だが、朱美の言葉に澱みはない。
 それどころか朱美の心は、
『・・・アタシ、蒼乃達と『本当の』仲間になれるんだ・・・』
 拠り所を得た、充足感に満たされていた。 

 そしてその充足感は心だけではなく肉体をも満たし、文字通り、『精一杯』の引き金となる。
 朱美は、
「いっ、ひっ!?・・・ダメ、もう、いぐぅっ!!」
 そう叫ぶと、
 ググゥ
 射精体勢を取るべく、腰をきつく前に突き出し、生殖器を『涼子』の子宮深くへ押し当てる。
 それは、受胎をより確実にすべく行う、『牡』の本能に異ならない。
 朱美の肉体は、『巫女』としての『資質』を守りながらも、『淫魔』としての
『本能』を既に得ていたのだった。

 邪水晶は、朱美の屈服と、肉の仕上がりに満足の笑みを浮かべながら、
「・・・うふっ、良く言えたわ・・・一杯出せるよう、私も手伝ってあげるわ・・・ねっ!」
 そう言うと、
 ゴリッ、ゴリッ、グリィッ
 射精を強制するかの様に、朱美の腸壁を乱暴に責め始めた。

 既に、射精への切欠を待つのみだった朱美は、
「あひぃっ!?・・・そんなにゴリゴリしないでへぇっ!?・・・ダ、メ・・・イ、イクぅっ!」
 そう甲高い声を残し、
 ドピュッ、ドプッ、ドブッ
 涼子の子宮に、終局の魔液を放つ。

 その刹那、涼子の肉体に、
「・・・あぎぃっ!?」
 明確な、そして破滅的な、変化が訪れた。

 日に焼けた小麦色の健康的な肌は、
 ジュゥゥ
 下半身から墨を流したかの如く黒ずみ始め、
 ビキッ、グギィッ
 肩胛骨の辺りが、醜く盛り上がり、人ならざる形へと変じてゆく。

 それはやがて、
 グッ、グググッ
 競泳水着の伸張限界を超え、
 ビッ、ビリィッ!
 虚空に飛び出すと、
 バサァッ
 蝙蝠の様な漆黒の翼となって、背後から犯す朱美の視界一杯へと広がった。

 更に、その翼の下では、クリトリスが、
 ブクッ・・・ムククッ
 破れ残った競泳水着を盛り上げながら、男の賜物へと変化する。

 そして、
 ムクッ
 尾てい骨の辺りが膨らんだかと思うと、
 ビッ、ビリリィッ・・・ビュルルッ・・・ビチィッ
 鞭の様にしなやかで艶やかな尻尾が、布地を破り吹き出すかの如く、実体化し、朱美の腹を叩いた。

 朱美は、涼子が淫魔へと変化してゆくその様を、
 ビュクッ、ビュクッ
「・・・おほっ・・・おほぉっ!」
 射精の解放感を存分に味わいつつ、
「・・・う、うふふ・・・」
 至福の、そしてどこか病的な笑みを浮かべながら、ただ眺めている。
 その淫蕩な表情は、『人間』を犯し『同族』を産み出す、『淫魔』そのものだ。

 内面が完全に『淫魔』と化した朱美の姿に邪水晶は、
「うふふ・・・」
 ほくそ笑み、朱美の精全てを吐き出させるかの如く、
 コリッ、コリッ
 前立腺を抉る様に刺激しながら、
「・・・ふふっ、どうかしら?・・・人間を、妖魔にした感覚は?」
 そう、尋ねた。
 しかし、その答えなど、疾うに解っている。
 彼女は既に、『淫魔』であるのだから-

 果たして朱美は、
 ドピュッ、ドピュッ
 残りの精を放ちながら、
「いっ、はぁぁっ!・・・はい、気持ち、良いですぅ・・・うふふ、人間、妖魔にするのイイ・・・」
 そう、惚けた笑みで答えた。
 朱美の顔にはその言葉の通り、性悦に充足した表情のみ浮かび、悔恨の情は欠片も見ることができない。

 それどころか、
「・・・んっ・・・んふっ・・・」
 ドピュッ、ドピュッ
 未だ続く射精とともに、『巫女』の箍を捨て去る解放感が、彼女を覆っていた。

 朱美は、
「あ・・・ふ・・・」
 ビュルッ
 『巫女』であることを完全に断ち切る様に、最後の迸りを放つと、
 グイッ、グイッ
 涼子の肉穴を味わい、かつ、滲み出た一滴まで精を注ぎ込むべく肉の凶器を、涼子の柔肉へと擦りつける。

 そして、
「んふ・・・」
 亀頭から射精感が消えたところで漸く朱美は、涼子の中から、
 ヌッ、ズヌルッ・・・ヌプッ
 己自身を引き抜いた。

 それと同時に、肉の栓を失った涼子の秘所から、
 コプッ、ゴプッ
 白濁した粘液が、泡を立てながら溢れ出す。

「うふっ・・・」
 淫魔そのものと言える邪悪な笑みを浮かべた朱美の眼前には、所々破けながらも競泳水着に身を包み、彼女の先輩『だった』存在が横たわっていた。
 『人間』から『淫魔』へと変化したそれは、
 ビクッ
 産まれたての嬰児の如く、羊水の代わりに生殖液に塗れた肢体を僅かに身じろがせると、
 ズルッ
 2、3歩這い歩き、
 バサッ、バサッ
 感覚を確かめる様に2度、その漆黒の翼をはためかせた。
 そして、巣立ちした雛の如く立ち上がると、朱美へと向き直る。

 中魔クラスの淫魔となった『涼子』の肉体は、どちらかと言えばスレンダーだった容姿の面影を残しながらも、『淫魔』としての色香を纏うものへ変容していた。
 肢体は全体に丸みを帯びて、より『雌』としての『性』を感じさせるものとなり、二回りほど大きくなった胸の頂きは固いほどに痼り、薄い布地では隠せないほど、その存在を主張している。
 そして、下腹部の中心には、最も『存在』の変化を示す醜い肉の塊が『水着』を押し上げ乳房に負けじと、その『存在』を主張していた。

 翼、角、尻尾、肉棒を生やし、完全なる『人外』へと変じつつも辛うじて、窮屈そうに競泳水着を纏うその姿は、
「・・・クスッ」
 朱美にどこか、滑稽さを感じさせる。
 それは、既に『淫魔化』した『本質』を、『巫女』という『殻』に押し込めようとした、己の姿に重なるからだ。
 今思い返せば、くだらぬ些事に拘り続けた己の愚かさに、苦笑するしかない。

 そんな朱美の許に、『涼子』は跪くと、
「・・・ふふふ、私を淫魔にして呉れて有り難う、南原さん・・・いいえ、朱美『様』・・・」
 そう言って、頭を垂れる。
 それは、主従関係にある下位の妖魔が上位者へする服従の礼と同じもの-即ち、『涼子』は『淫魔』として朱美を、『上位種』と認めたのだった。

 朱美はそれに一転、冷たい表情で『涼子』を『見下ろす』と、
 グチュ・・・ギュ
 汚液に塗れつつも、未だ硬度を失わない肉棒を握り、
「・・・お前の臭い汁で汚れてしまったわ・・・綺麗に、しなさい」
 そう、『涼子』に命じる。

 『涼子』は、その朱美の姿にふっと笑みを浮かべると、朱美の男根を愛おしそうに捧げ持ち、
「・・・はい、朱美様・・・んちゅっ・・・んむっ」
 亀頭にキスをすると、舌先で棹を刺激しながら肉棒全体を、喉奥まで飲み込んでゆく。

 朱美は、
 ヌプッ、ヌプッ
 『涼子』の口内に、緩やかなストロークを与えながら恍惚とした表情で、
「・・・うふふっ・・・中々いいわよ、『涼子』・・・」
 『僕』の奉仕を受け容れた。
 その姿は『上魔』そのものであり、朱美から『巫女』を見出すことは最早できない。

 邪水晶は、朱美の魂が堕落しきったことを背中越しに認めると、
「うふふっ・・・」
 ヌプッ
 朱美の中から退き、その傍らに身を寄せる。

 そして、
「邪水晶様・・・」
 蒼乃が神具を捧げ持つ様に、両の掌で差し出した黒革の首輪を受け取ると、
「・・・ふふっ、朱美・・・これでお前も『私達』の『仲間』・・・そして、私の僕になるの・・・これが、その証よ」
 そう言って、鈍い光沢を放つ隷従の証を、朱美の眼前に翳した。

 朱美は、
 グポッ、グポッ
 『涼子』の口内を犯しながら、
「・・・うふっ・・・素敵・・・邪水晶様、それを・・・私にくださるのですか?」
 陶酔した様な表情で、『神具』ならざる『魔具』を見つめる。

 邪水晶は、その朱美の言葉に、
「そうよ・・・これはお前が、私の『肉奴隷』となったことを邪界に示すもの・・・この『刻印』は私以外、永遠に外すことはできない わ・・・それでも、身に付ける覚悟はあるのかしら?」
 そう返して、朱美の決意を試すが如く、首輪を手の中で弄んだ。

 しかしそれにも朱美は淀みなく、
「はい・・・この卑しい私めを、邪水晶様の肉奴隷にしてくださいませ・・・貴女様に、永遠の忠誠を誓います・・・」
 そう答えると、
 クイッ
 咎人が首を差し出す様に、邪水晶へと突き出す。
 それは文字通り、己の全てを差し出す、その意味に他ならない。
 だが、朱美の瞳に躊躇いの色はなかった。
 今の彼女にとって、『仲間』を得ること-それは、全てに優先することだからだ。

 邪水晶は、朱美のその姿に目を細めると、首輪を持ち直し、
「ふふっ・・・そう、わかったわ・・・」
 カチャリ
 朱美の首へ填める。
 その瞬間、朱美の左胸に、焼き鏝でも当てたかの如く、
 シュウゥッ
 黒水晶の紋様が浮かび始めた。

 黒革の冷えた感触と、胸を焦がす感覚に朱美は、
「ああっ・・・」
 恍惚とした表情を浮かべる。
 これで漸く、蒼乃達『戦友』と『真の仲間』になれたのだ、という実感を持って-
 その多幸感の中、朱美は、『仲間達』へと視線を巡らせた。

「「「うふふ・・・」」」
 『仲間達』は、邪水晶に傅きながら朱美が堕落する様を、邪な笑みを浮かべ眺めている。
 彼女達が浮かべる笑みは、
「ふふっ・・・」
 バサッ
 漆黒の翼を広げ、淫らな肢体を誇らしげに晒す、『主』と同質のものだ。
 未だ『巫女』の『肉体』を持ちながら、『本質』は『淫魔』に堕した存在-

 そんな『仲間達』と同じ『存在』に成れたことに朱美は、精神的充足感を具現化する様に、
 ドプッ、ドプッ
 多量の精を、『涼子』の口内へと放つのだった。

< 続く >

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