魔術師ダリと雌鶏たち

「どんな女も濡らす動画があるんだってよ」
「お前、童貞すぎて頭おかしくなったんじゃねぇの?」
「かもしんね。いや、でも本当らしいんだって」
「バッカじゃね。そんなものに釣られる俺じゃねーよ」
「でもよ、もしそれが本当だったらどうすんだよ。この地球は一体どうなるんだよ」
「やばいな」
「だろ? だからお前、ちょっと姉ちゃんで試してみろよ」
「姉ちゃんで? なんでだよ?」
「だって、俺ら彼女いないし」
「そりゃそうだけどよ。でもお前、もしその動画が効いて姉ちゃんが変になったらどうすんだよ?」
「そのときは俺に一番でメールください。お願いします」
「お前、マジ童貞すぎて引くわ」
「いや俺だって本気になんてしてねえよ? でも結構ネットじゃ話題になってるんだよ。ちょっと見せてみるだけでいいから。お前だって姉ちゃんがエッチになるとこ見たいだろ?」
「見たくねえって別に……」

 確かにまあ、うちの姉ちゃんはモテる。俺んちに遊びに来たツレは、たいてい姉ちゃんを見てテンション上がる。「彼氏いんのか?」とか「下着は洗濯機の中か?」とか、すげーうざい。
 だが、じっさいに姉とか妹とかいるやつならわかることだが、どんなに見た目が良くても身内に萌えるやつなんていねぇよな。
 たとえ風呂上がりに下着姿でウロウロしてようが、強烈なエロネタでからかってこようが、俺は姉ちゃん相手に興奮したことないし、だいたいうちの姉ちゃんなんて家ではだらしないし我が侭だし暴力ふるうし、弟のことは奴隷かおもちゃ程度にしか思ってないんだ。
 大学生のくせに全然ガキだ。あんなのに萌えなんてねぇよ。
 それでもまあ、問題の動画のアドレスは聞いたので、帰って家で観てみることにした。
「うーん」
 タイトルは『Magician dari and hens』っていう。俺の英語力で訳せば『魔術師ダリと雌鶏たち』みたいな?
 肝心の内容は、外国語だし字幕もないのでよくわからないが、中東とかインドとかその辺の人たちっぽいのが出てきて、金髪の水着の姉ちゃんたちに催眠術みたいのをかけて、ニワトリみたいに跳ね回らせるっていう死ぬほど退屈なバラエティ番組だ。
 しかも古い。いつの時代だ? ビデオの焼き増しらしく画像も粗い。
 くだらん。こんなのでどうやったら女が濡れるっていうんだよ。あいつ、本当にバカだな。
 今度、こすったら女が出てくるとか言って高価な壷を売りつけてやろう。
「……なにこれ? エロ?」
「うわぁ!?」
 いつのまにか姉ちゃんが横から俺のPCを覗いていた。アイスを咥えて、キャミソールにホットパンツのいつもの部屋着。
「まーた、あんたは1人でエロ動画とか観て。そういうの空しくない?」
「エ、エロじゃないよ! 教養番組だよ!」
「誰このおっさん? 何人?」
「し、知らねって! いいから出てけよ!」
「いいじゃん。隠すなよ、コラ」
 姉ちゃんが顔を近づけると、シャンプーの匂いがする。キャミの胸元から黒いブラがチラホラ見える。例の悪友なら大興奮するところだろうが、俺はそんな家族の微エロなど余裕でネコ跨ぎだ。
「フフっ、何この人?」
 姉ちゃんは、ニワトリになった女たちを追いかけるダリとかいう催眠術師を見て笑ってる。
「……姉ちゃん、この人が何言ってるかわかるの?」
「んー、知らない。でもなんかおかしくない、この人?」
 そういって姉ちゃんはその場にしゃがむ。俺よりずっと低い位置にいるから、胸元かなり覗けてるけど、しつこいようだが俺にそんな家族の微エロなど。
「面白ーい。なんか可愛い、このおっさん」
 姉ちゃんは動画に食い入るようになってる。これのどこが面白いんだ?
 俺にはわからないが、ひょっとしたらこれが動画の効果か? いや、まさか?
「ね、もう一度」
 15分程度で終わった動画を再度再生する。
「…………」
 動画を観ているうちに、姉ちゃんが俺の膝にもたれかかってきた。さらさらの長い髪と一緒に、俺の太股に姉ちゃんの大きなおっぱいの感触が押しつけられる。くどいようだが俺にそんな家族の微エロなど……いや、これは微じゃないぞ。この感触は微なんかじゃない。
「ん……ぁ……はぁ……」
 姉ちゃんは変な吐息を漏らす。誰このエロい女性? なんなの?
 まだ姉ちゃんが動画を見始めて15分弱。姉ちゃんに何が起こってるんだ?
 動画に視線を向けたまま、俺の膝を指で掻くようにくすぐってる。もぞもぞする。なんだか姉ちゃんの匂いがいつもよりも甘い気がする。女って感じがする。
 ちなみに言っておこう。
 今夜、親父とお袋は親戚の家に行って遅くなるらしいぜ!
「もう1回、いい……?」
「う、うん」
 姉ちゃんが自分でクリックする。マウスの上の俺の手に重ね、上から指を絡めてくる。
 やばいって。俺たち姉弟だぞ? 
 そう思いながら、俺は姉ちゃんの髪に手を触れた。姉ちゃんは「ふぅん……」って鼻を鳴らして、気持ちよさそうに俺の手の動きに任せてる。耳の後ろとか、うなじとか撫でたら「あんっ」って体震わせる。
 俺はもう完全に姉ちゃんを女として見ていた。姉ちゃん相手に興奮していた。
「……この部屋、暑くない?」
「え、そ、そうかな?」
「暑い。すごい暑いって」
 エアコン入れようと思ったら、姉ちゃんはその前にキャミを脱ぎ捨てた。
 姉ちゃんの黒いブラと、真っ白い肌が俺の目の前に。
「ふぅ、すっきり。それじゃもう1回観よっと」
 いつのまにか終わっていた動画を再度再生して、姉ちゃんは俺の膝の上にどっかり座る。
 姉ちゃんの肌がぴったり俺にくっついている。姉ちゃんって柔らかくて熱い。
「ね、姉ちゃん?」
「んー?」
「なんか、その、どうかしたの?」
「別にぃ」
「でも、これ、なんかさ」
「私はこれ観てるだけだから」
「う、うん」
「……あんたは、好きにしてれば?」
 好きにしてろって言われても、この状況でできることって1つしかないじゃん。でもいいの? 姉弟なのに? 姉ちゃん相手に?
 俺はもう自分が抑えきれなくて、後ろから思いっきり姉ちゃんのおっぱい揉んだ。姉ちゃんは最初びっくりしてけど、すぐに身悶えし始めた。
「あぁん、いや、ちょっと、いきなり……」
 姉ちゃんの手が俺の首に回り、くねくねした尻が俺の硬くなったビッグマグナム(未使用)に痛いくらい押しつけられる。
「あん、もうダメだってば、バカ……ちゅ、ん、ちゅ……はぁ、ん、ちゅぷ……」
 姉ちゃんにキスされた。舌が入ってきて俺の口の中を掻き回す。熱くて甘くて気持ちいい。俺も舌を伸ばして姉ちゃんのと絡めた。すげー気持ちいい。
「はぁぁ……」
 姉ちゃんのブラを押し上げてピンク色の乳首とご対面。これがおっぱい。姉ちゃんのおっぱい。
 鼻血でそうなくらい興奮してる。俺たちはもう止まらない。姉ちゃんのおっぱいとキスに夢中だった。

+++++++

 深夜近くに発車した特急列車の中は閑散としていた。
 北国の地方都市間を結ぶ指定席車両は、行きの時と同様に1車両わずか数人しかおらず、ボックス席を1人で占有する寂しくも贅沢な旅を味わわせてくれる。
 せっかくの旅のアバンチュールを満喫した後なのだから、帰りはゆっくりと体を休めたい。寝台車をとらずとも十分なスペースを占有できるローカル線は、俺のように忙しいサラリーマンにはいい安宿代わりだ。ボックス席に足を伸ばして、車掌に借りた毛布を広げればちょっとした簡易ベッドの気分になれる。
 ゆったりとした気持ちで、俺は先ほどの天国のようなひとときを思い出す。
 いつも出張の時は行きつけにしていたキャバ嬢のマドカ。21才のぴちぴちとした若さと明るさが魅力だが、俺のような中年にはちょっと眩しすぎる子。
 メシ代とノルマ稼ぎとしか見てもらえないのはわかっていたが、若さにしがみつく醜い未練で、ついつい通い貢ぎ続けて2年あまり。
 とうとう昨夜、俺は彼女を抱いた。
 飢えた子どものように俺のチンポにむしゃぶり付いて、俺に貫かれるたびに獣みたいな声を出し、最後は泣きながらイキまくっていたマドカの痴態を思い出すと、あれだけ出したにも関わらずまたムクムクと込み上げてくるものがある。
 一晩明けた今日だって、昨夜のセックスを思い出して仕事も上の空だった。
 そして今も沸き上がってくるこの性欲。まるで自分が官能小説の主人公になったようだ。信じられない。
 まったく、すごい動画を手に入れてしまったものだ。
 俺は携帯ゲーム機を取り出してひと撫でする。中にはネットでコピーしたいくつかの動画ファイルが入っている。
 その中の1つ―――『Magician dari and hens』は本当にすごい。
 ネットで知り合った男から教えてもらったこの動画は女を欲情させるらしい。眉唾ものだったが、妻で試して、そして念願のマドカを抱いて、本物だと確信した。
 これさえあればどんな女もモノにできる。会社に戻ったら、次はどうにかして反抗的な部下のOLにこれを見せてやろう。アイツはどんな風に犯してやろうか考えるだけでわくわくする。

 思わず笑みがこぼれてしまって―――斜め前方の席に座っている少女と目があった。

 気まずく会釈すると向こうも照れくさそうに返してくる。まだ学生に違いなく、手には参考書のような本を広げている。
 時期を考えれば受験だろうか。年頃のわりに地味な服装で真剣な面持ちで参考書に目を走らせる彼女を見ていると、真面目ばかりだった自分の学生時代を思い出して懐かしくなる。そして今はまだランドセルの俺の娘も、あと何年かすれば彼女のように受験レースの真っ直中に叩き込まれるのだろう。その姿から過去と未来が見えるようで、なんとなく彼女から目を離せなくなってしまった。
 横目でじっと観察していると、彼女はふと顔を上げて伸びをした。うつむいているときは気づかなかったが、セーターの下の体は意外と発達しているようだ。さっきまでのモヤモヤした欲望が再びせり上がってくる。いや、さすがにこんな行きずりの娘さんに……と、考えている間に、参考書に戻ろうとした彼女と再び目が合ってしまった。
「受験勉強ですか?」
 努めてにこやかに話しかける俺に、彼女は少し目を泳がせて「ええ」と答えた。「大変ですね」と続けると照れくさそうに笑った。
 その面差しが中学時代に好きだった女の子に似ていることに気づいた。その途端、思い出と一緒に当時の果たせなかった思春期の欲望まで蘇ってくる。
 俺は自分を踏みとどまらせようとしていた理性のネジを一本外す。試してみるだけだ。まだ男を知らなさそうなこの子が、例の動画を見てどういう反応をするかを見てみたいだけだ。
 何も起こらないかもしれないじゃないか。試してみて、その後のことはその時考えよう。もしもがあったとしても、ちょっとしたイタズラくらいなら、かまわないのでは?
「息抜きしないかい?」
 ひらひらと掲げる俺の携帯ゲーム機を見て、女の子は「ゲームしないんで」と手を振った。
「ゲームじゃないよ。これで映画とかも見れるんだ」
 こういう機器には疎い子のようで、意外そうに驚いていたが、興味が湧いたようだった。
「例えばこれ、おじさんがネットで拾った動画なんだけど」
 そう言って俺は『ねこ鍋』の映像を見せてやる。とたんに女の子は目を輝かせた。
「あ、ねこ鍋だー。これ知ってます。でも初めて見た」
「おいでよ。イヤホン貸してあげるから」
「え……えー?」
 女の子はおそるおそるという感じで俺の席に移動する。少しは警戒してるようだが、世間知らずそうだし、自分の父親くらい年上の俺にさほど危険を感じてないようだ。「おじゃましまーす」と俺の対面の席に座って、ゲーム機の画面に目を細める。
「かわいー」
 ほんと、女ってのは甘い食い物と可愛い生き物に弱い。マドカを引っかけたときと同じだ。
 俺の編集したこのディスクは、最初の2、3本はねこ鍋やレッサーパンダなどの女ウケのいいヤツだが、その後は例の動画が連続で録画されている。
 はたしてこの子はどういう反応を示すのか。無邪気に微笑む女の子にイヤホンを手渡して、俺はさりげなく、彼女の幼いながらにバランスのよい体を眺め回し、ちょっとした期待を抱きながら一緒に映像を覗き込んだ。
「え、なにこれ?」
 安っぽいセットのスタジオに、数名の観客と司会の男が1人。そして司会者がもう1人の痩せた男性を紹介する。どこの言葉かわからないが、中東あたりの番組なのだろう。妖しげなBGMが流れる。
『Magician dari and hens』
 痩せた男がおどおどと周りを見回し、喋り出した。
 イヤホンは彼女に預けているので俺には聞こえない。だが何回か聞いてみたかぎり、この痩せた男の使っている言語は司会者のものとは違うようだ。スタジオの観客もこの男が何を言っているかわからないらしい。司会の男が通訳をしてスタジオが笑う。痩せた男は戸惑うような視線をカメラに向ける。
 やがて音楽とともに数人の水着の女たちが登場する。彼女たちは明らかに欧米人だ。通訳が数人いて司会者と彼女たちの間に入って二、三言の言葉を交わす。そして司会者は痩せた男を彼女たちの前に引き出し、何やらカメラに向かって大げさな身振りで説明した後、画面の外に出ていく。
 どうやら、言葉が通じなくても催眠術を使える男という内容だと思われる。そしてこの痩せた男がタイトルのマジシャン・ダリってやつなんだろう。聞いたこともないが。
 ようするに外国の古いバラエティ番組だ。俺には何が面白いのかさっぱりわからん。
「えー、なんですかこれ?」
 女の子はそれでも楽しそうだった。
 そう、これは男が見ても面白いものでもなんでもない。なぜか女だけがこの動画に反応する。これを「面白い」と感じるらしい。
 彼女はクスクス笑いながら動画に食い入る。妻と同じ反応だ。マドカはいきなりスイッチが入ったみたいに発情してたから、反応には個人差があるのかもしれない。
「あ……また同じのですね」
 そのとおりだ。俺の編集であと20回はリプレイし続ける。痩せた男が登場して催眠術で女たちをタイトルどおりにメンドリにしていく15分ほどの番組。それだけだ。
 なぜこの動画が女を狂わせるのか。
 俺にはまったくわからないが、目の前の女の子は明らかに様子が変わってきている。
 ウブそうなほっぺたがほんのり赤く染まっている。落ち着かなさそうにスカートの下のタイツをすり合わせている。ハァハァと荒くなっていく自分の息に気づかないのか、俺の存在も忘れたみたいに画面にのめり込んでいる。
 きた。やはりこの動画はどんな女でも発情させるんだ。
「あ……」
 そして、いいタイミングで車内の照明が落ちた。この先しばらくは大きな駅もなく、乗客が睡眠を取りやすいように夜間照明だけを残して全消灯されるようになっている。俺は何度かこの列車を利用しているので知っていたが、女の子は戸惑ったように俺の顔を見上げた。
「他のお客さんに迷惑になるから、毛布かぶっちゃおうか?」
 といっても、俺たちの他に客はずっと後ろで寝息を立ててる老人が1人いるだけだ。
 それでも女の子は俺の言うとおりに、俺の隣に席を移して、俺のかけている毛布の中に潜り込んできた。俺の横にちょこんと座って、ずっとその動画に見入っている。
「ぁ……はぁ……ん……」
 毛布の隣がモジモジと蠢いている。毛布からゲーム機の灯りがチラチラ漏れる。俺はそっと彼女の太股に手を伸ばした。
「あっ!?」
「……どうしたの、モジモジして? 寒いのかな?」
「い、いえ、あの……んっ!」
 タイツの下の若い肌はむっちりとして温かい。揉むようにさすっていると女の子の吐息はどんどん荒くなる。
「どう? 寒い?」
「あっ、いえ、あの、んっ、なんとも……ない、ですっ」
「そう? 震えてるみたいだけどなぁ」
「んっ、やっ、おじさんっ、なんでも、ないですから、ぁ、あっ」
 ちょっとイタズラするつもりだけだったが、彼女のこのウブで必死な反応は俺の興奮を煽る。
 男に触れられるのは初めてなのかもしれない。
 これ以上はやばいと思いながらも、俺の手はイタズを止められず、彼女のタートルネックのセーターをたくし上げていく。
「それとも暑いのかな? この中、ずいぶん熱気こもってるみたいだから」
「やっ、おじさん、ダメ、ダメぇ」
 すぐに現われたブラのカップは、やはり年相応以上の大きさだった。マドカのよりもでかい。そして張りのある手触りだ。
「ダメ、おじさん、えっちだよ、えっちぃ……」
 ホックを外してカップの中に手を差し入れる。温かい。自分の娘といってもいい年頃の少女に母性を感じながら俺はその柔肌を揉みしだく。
「あ、あん、あぁん、おじさぁん、やめて、んっ、ダメェ」
 どんどん大きくなっていく彼女の声。俺は彼女の耳から片方だけイヤホンを外してコソリと囁いた。
「ねえ、あんまり大きい声だすと他のお客さん起きちゃうんじゃないかな?」
「んっ!? ゃ……ん……っ……ぁ……」
 身をくねらせながら声を殺す少女。このシチュエーションに言い知れぬほど興奮する。俺は夜行列車の中で、名も知らぬ少女にイタズラしてるんだ。
 興奮は収まらず、俺は彼女の厚ぼったいタイツに下着ごと指をかける。
「やっ……ダ、ダメ……ッ!」
 ゲーム機の薄明かりでも映える白くむちむちした肌と、年のわりに濃い陰毛。それがうっすらと濡れている。なんとも扇情的な光景だった。
「ははっ、もうこんなになってたのか。エッチなのは君の方じゃないか?」
「や、やだっ、もうやだ、やめておじさん!」
「大丈夫だよ。ホラ、これを見てごらん。君のせいでおじさんもすっかり固くなっちゃったよ。おじさんも興奮してるんだ」
 チャックを下ろしてすっかり勃起したチンポを見せてやる。女の子は「ひやぁッ!?」っと小さな悲鳴を上げて、身を縮こまらせる。
「見たのは初めてかい?」
 コクリと頷く少女。
「触ってみるかい?」
 細い指を震わせながら彼女は俺の陰茎に触れる。ひんやした感触が気持ちいい。
 もうどうにでもなれ。固さを確かめるように握ったり離したりする彼女を、俺は子どもを抱きかかえるようにして膝の上に座らせる。
 半脱ぎの少女が俺の膝の上に。
 禁断のシチュエーションにますます俺のは固くなる。
「大きな声を出しちゃダメだよ。バレたら大変なことになるからね」
 女の子はじっと俺の顔を見つめて、やがてコクリと頷いた。
「あの、おじさん、私……」
「わかってる。大丈夫大丈夫。ね?」
 躊躇する彼女の尻を抱えて、俺のと彼女の位置を調整しながら、少しずつ抱き寄せていく。
「や……いや……」
 怯えた声を出していても、彼女はほとんど抵抗しない。彼女の片耳からは今もダリの声が流れている。
「痛いっ、おじさん……ッ」
「大丈夫だから! じっとして!」
「いっっ、たぁ、っ!」
 あぁ、埋まった。女の子の中に俺のが。
「痛っ、やっ、痛い、やめっ、あっ」
 やめろと言われてやめるはずがない。俺は痛がる女の子の体をズンズン突き上げる。たわわな胸を鷲掴みにして揉み上げる。
「痛いっ、ホントに、痛い、です! やめっ、あっ、おじさん……!」
 処女の子を抱くのは初めてだ。まさかこの年になってこんな幸運に巡り会うとは。
 胸の奥から感動と達成感が込み上げてくる。中学時代に一方的に好きだったあの子を、あの頃に戻ってとうとう手にしたような、なんともいえない征服感だった。
「い、あっ、んっ、あぁっ! いたっ、痛い!」
「ホラ、これを見て。痛さが紛れるから! これを見て気持ちよくなるんだ!」
 俺の言うとおりに彼女はゲーム機の画面に救いを求める。ダリがニワトリになった女たちを追いかけながら何かを叫んでいる。
「んっ、んっ、んっ、んっ……」
 彼女の頭にすっぽりと毛布をかぶせて、彼女はダリのショーに、俺は彼女のきつい膣の感触に没頭する。
 ギシギシ軋む座席と断続的に漏れる女の子の声。
「んっ、んっ、あっ、んっ、あぁ、あん、あっ、んん……」
 苦しそうな喘ぎ声も少しずつ柔らかくなっていき、俺のを締め付ける感触もぬめりを増して、ピストンをスムーズにしていく。
 これだけ可愛い子なんだから密かに憧れてた男子も多いんだろうな。あるいは清い交際の彼氏くらいいるかもしれない。それがこんなおじさんの上で腰を振ってるなんて知ったら、さぞや悔しがるに違いない。
 そんな想像がますます俺を愉快にさせていく。もっと汚してやりたい欲望に駆られる。俺はじっとりと汗ばんだ女の子の尻を握りしめ、込み上げてくる射精感に任せてスパートした。
「あっ! あっ! あっ! あぁっ! んっ、んんっ……はぁ……あぁ……え……?」
 ああ、すごい快感だ。夢中になりすぎて、思いっきり中に出してしまった。これは悪いことしたな。
 呆然と自分の膣からこぼれる精液と血を眺める彼女に、俺はまたゲーム機の画面を差し向ける。
「ほら、これまだやってるよ。面白いでしょ、これ? 楽しい気持ちになれるよ?」
「あ……あぁ……」
 赤子のように言葉にならない声を発し、彼女は俺からゲーム機を受け取る。じっと画面を眺めていた彼女が、そのうちゆっくりと腰を動かし始める。
 始めは小さな動きだったが、やがて遠慮がなくなってきて、彼女は俺の萎えたチンポを挟んだまま、クリトリスを擦りつけるように大きく腰を振りだした。
「あっ、あっ、あぁ、おじさぁん、ふぅん、うん、あっ、あっ」
「コラコラ、大きな声はダメだって言ってるのに……」
 さすがに俺のは昨日の今日でもう立ちそうにはないが、せっかく楽しませてくれたのだから、しばらく好きにやれせてやるか。
 車掌に見つかったら面倒になるかもしれないが、なぁに、すっかり情欲の虜になったこの子と一発やらせてやれば文句もでないだろう。
 俺はまだまだこの先も続く長いアバンチュールに身を委ねて目を閉じた。心地よい疲労と眠気が全身を満たしていく。
 なんとも充実した出張だった。

「あっ、ふぅん、あん、いや、あっ、いやぁ、止まん、ないよぉ、ああんっ!」

 ……そういやこの子、受験大丈夫だろうか?
 

+++++++

「お兄ちゃん、ごはんー」
 晩ご飯をお兄ちゃんの部屋まで運ぶのは私の役目だった。
 お兄ちゃんがひきこもりを始めて3年。お父さんやお母さんが近づくだけで大声で騒ぐお兄ちゃんなのに、なぜか私だけは平気みたいだった。
 本当は私もあんな人になんて近寄りたくない。不潔だし、何考えてるかわからないし、怖い。どうしてあんなのが私のお兄ちゃんなのかと思うと腹が立ってくる。
「……お兄ちゃん?」
 でも今日は、なんだか様子が違った。家族でも絶対に入れないお兄ちゃんの部屋の扉が開いてる。晩ご飯だっていつもは部屋の前に置いておくだけなのに。
 出かけてるの? あの人が? どこに?
 真っ暗な部屋の中ではPCのモニターだけが何かを映している。お兄ちゃんはどこにもいない。PCから音が漏れている。そこから聞こえてくる声が妙に気にかかる。
 私は誰もいないことを確認しながら、何年かぶりにお兄ちゃんの部屋に入っていった。
 何ヶ月も掃除してない部屋は汗とか変なニオイがこもっていて気持ち悪かった。小遣いだけは一人前に貰っているらしく、ゲームとかマンガとか、フィギュアみたいなのがあちこちに飾ってあって、テレビで見たオタクの部屋まんまだなって思ってすぐに逃げ出したくなった。
 でも私は、そのモニターの映像が気になってしょうがなかった。
 日本語じゃないどこかの言葉。画面からは笑い声がするから外国のバラエティ番組なんだろう。内容はよくわからない。上に表示されてる英語のタイトルは一応読める。
『Magician dari and hens』 
 魔術師ダリと……“hens”って何だっけ?
 画面では、水着の女の人がなんかドゥルドゥル叫びながらダリって人から逃げ回ってる。手をバタバタさせて鳥みたいだ。細かい内容は全然わかんない。
 ダリって人の声が素敵だった。
 何言ってるかなんてわからないし、キョドった怪しい人みたいなのに、その歌うような言葉は優しくて暖かい感じだった。彼が一生懸命喋る姿や、走り回る姿が愛おしくて面白くて、なんかうずうずする。
 どういう番組か知らないけど、ダリちゃんがみんなを捕まえればいいのかな?
 頑張れー、ダリちゃん。
 私はお兄ちゃんの晩ご飯を机において、PCの席に座った。お兄ちゃんいないみたいだし、最後まで見てみよう。ダリちゃん可愛いもん。
 いつしか女の人を追いかけるのに疲れたダリちゃんは、カメラに向かって大きな身振りで何かを呼びかけてる。どうしたんだろう。言っていることはわからないけど、胸がドキドキする。怪しげ音楽が流れて、後ろでは鳥の真似してる女の人たちが走り回っててバカみたいなんだけど、ダリちゃんだけは真剣なの。すごく切ないの。
 喉が渇いてくる。顔が熱い。なんだかムズムズして落ち着かない。
 画面はそのうちフェードアウトして……最初に戻った。タイトルが流れて、変なおじさんが出てくる。そしておじさんに呼びかけられて……ダリちゃんが出てくる。
 私はダリちゃんが喋り出しただけでドキドキした。これって恋とは違うけど、私は興奮していた。
 彼が喋るだけで背筋に電流が走る。あそこがしびれる。すごい変。今までこんな風になったことない。
 スウェットパンツの上からなぞっただけでビクンビクンってなった。私はすごくえっちになってた。
 どうしよう。自分の部屋に帰ろう。そう思ってもダリちゃんが離してくれない。彼の声は私を捕えて逃がしてくれなかった。もっとしろって言ってるみたい。
 私はパンツの中に手を入れた。くちゅってもう濡れてる。恥ずかしい音。でも、私はもう止まらなかった。
 お兄ちゃんの部屋でオナニーしてる。いやらしい声も出してる。やばいよこれ。どうしてだろう? どうしてこんなことになっちゃうんだろう?
 でももう止まらない。気持ちいいの。ダリちゃんすごいの。
 ガタン、と後ろで音がした。
 私はそんな予感がしていたから、そんなには驚きはしなった。でもビデオカメラを持ってたのは反則だと思った。
「はーっ、はーっ」
 お兄ちゃんは下だけ裸だった。そしてオチンチンを擦りながら近づいてきた。オチンチン。お兄ちゃんがオチンチン大きくしてオナニーしてる。妹のオナニー見て興奮してるんだ。変態だ。
 それでも私の手はなぜか止まらなかった。私は自分のあそこを一生懸命こすってた。もういっこの手でおっぱいも触ってた。お兄ちゃんはよだれ垂らしてオチンチン擦ってる。やらしくなった私を見てる。
「由紀菜ぁ……ッ」
 お兄ちゃんが、私の名を呼んで髪の毛を掴んでオチンチンに引き寄せた。私の口にオチンチンを突きだしてくる。びっくりした。すごい臭い。最後にお風呂入ったのいつなんだろ? そんなのを私の顔に押しつけるお兄ちゃんはひどい。
「由紀菜! 由紀菜!」
 私はもう頭が混乱してたし、普通の状態じゃなかった。抵抗も出来ずに、私の口の中にお兄ちゃんのオチンチンが入ってくる。
 悪臭に喉の奥まで突かれて吐きそう。お兄ちゃんは強引に私の頭を揺すり、上からカメラで写してた。
 最低だ。ひどい男。
 でもこの状況で興奮している私も変。ダリちゃんの声がスピーカーから聞こえてた。それが私にもっと頑張れって、もっと喜べって言ってるみたいだった。
 私はお兄ちゃんにえっちなことされながらオナニーを再開していた。椅子から降りてお兄ちゃんの下に跪いて、オナニーしながらフェラしてあげた。
「うあぁぁ、うあああっ」
 お兄ちゃんは泣いてるのか呻いてるのか変な声を出してる。私はこのままお兄ちゃんが口の中に出したらどうしようって思った。
「由紀菜ぁ!」
「きゃっ!?」
 お兄ちゃんがいきなり私を突き飛ばした。Tシャツをまくりあげられてブラを取られた。スウェットを下着ごと剥ぎ取り、足を無理やり広げられた。
 なんだか意味不明なことブツブツ言ってる。目が怖い。私はこれから何をされるかわかったけど、体の疼きと恐怖でどうしたらいいのかわかんなくて、目をギュッてつむった。
 ものすごく強引にお兄ちゃんが入ってきた。
 痛くて声を出したら、お兄ちゃんに叩かれた。そっか、下にお父さんとお母さんいるんだって思って、私はこんなところ二人に見られたら最悪だし、唇を噛んで我慢した。
 お兄ちゃんは何度も私の中を出たり入ったりしてた。途中で何回も抜けて入れ直したりしてたから、お兄ちゃんも初めてなんだと思う。
 最低の初体験だ。兄妹でこんなこと。
「うぁぁぁ、ああぁ」
 お兄ちゃんが泣いてる。私だって涙がポロポロ出る。痛い。苦しい。気持ち悪い。
 そのうちにお兄ちゃんは「おおっ」とか言って私の中からオチンチンを出した。そして私の顔に精液を出した。
 ぼーぜん。
 セックスされちゃった。しかもお兄ちゃんに。最低。きもい。どうしよう。
 お兄ちゃんはベッドの上でシクシク泣いてる。泣きたいのはこっちのほうだ。オチンチンから精液垂らててみっともない。きもい。腹立つ。
 でもダリちゃんは私を励ましていた。私はこれじゃまだ足りないんだって思った。ダリちゃんがもっと頑張れって言ってる。だから私は泣いてるお兄ちゃんのオチンチンにキスをした。
 お兄ちゃんは「ひぃっ」って変な声出した。精液まずいし、すごい臭い。でも私はセックス頑張る。そのままペロペロしてあげたら、オチンチンが大きくなって先っちょの皮がむけた。その先っちょをチュパチュパしてあげたら、どんどん固くなってきた。
 体中が疼く。あそこ溶けちゃいそうで、じっとしてられない。私はお兄ちゃんを突き飛ばしてベッドに寝かせた。その上に跨って、大きくなったオチンチンを私のあそこに入れてあげた。あそこが広がってすごくきつい。でも、いい感じ。
 お兄ちゃんは泣いてるだけで何もしてくれない。だから私がしゃがんだまま腰を動かした。最初は難しかったけど、慣れるとだんだん気持ちよくなってきた。
 私はお兄ちゃんよりもセックス上手かもしれない。気持ちいい。私は夢中になって腰を動かす。えっちな声が出ちゃって抑えるのが大変だ。セックスやめられない。気持ちいい。気持ちよすぎる。

 女は欲情するだけだ。
 狂うのは男のほうだよ。
 
 

+++++++

 俺は動画再生が終わるたびにリプレイしていた。さっさとHDDに落としてしまえばいいのだが、今はそんなヒマすら惜しい。
「んぐ、ちゅぱ、んん、ちゅうぅ、んん……ね、どう? 気持ちいい? ぢゅっ、ちゅば」
 なぜなら今は俺のハイパービッグマグナムを美味しそうに姉ちゃんがしゃぶっているのだ。
 あれから2発も中に出してやったっていうのに、今も姉ちゃんは物足りなさそうに俺にフェラのサービス中だ。
 これはすごい動画だ。
 バカにしてゴメンな悪友。そういやメールすんの忘れてたわ。
「んぐ、んん、ね、固くなってきたよ? もう入れていい? ねえ、入れて?」
 すっかりメス犬になった姉ちゃんに、俺は机に手をつくように命令する。
 あの乱暴者だった姉ちゃんが従順に尻を捧げる。弟の俺にだぞ。あそこからタラタラと愛液垂らしやがってだぞ。
 なんていやら……けしからん姉だ。こらしめてやる!
「ああぁっ! いいっ! いいよぉ!」
 ドギャーンと突き刺してピストン開始。
 姉ちゃんで童貞喪失してから怒濤の3連発。もはや俺たち姉弟に怖いものはない。よだれを垂らしてよがりまくる姉ちゃんをガンガン突いてやる。
「すごい! すごいよぉ! お姉ちゃん、こんなに気持ちいいの初めてぇ!」
 エロゲでしか聞けないと思っていたセリフを姉ちゃんに言わせて大満足の俺のチンポは無敵の硬度で攻め立てる。自分でも何を言ってるのかわからないが、とにかくずっと俺のターン。この『Magician dari and hens』がある限り地球の平和は俺が守る。これさえあれば誰でも犯せるんだ。
 でもこんな超有名動画サイトで公開されてるくらいだから、今ごろ日本中、いや世界中で女が犯されてるに違いない。
 こうなったら早い者勝ちだ。女狩りだ。まずは学校中の女を犯してやるぜ。
 犯してやりたい女を次々と頭の中でリストアップする。一番にヤリたいのは同じクラスのあの子だ。
 でも由紀菜ちゃん、今日は学校休んでたよな。
 風邪でもひいたのかな? 明日は学校来るよな? 
「ああ、もうダメ、イク、いっちゃうよぉ! お姉ちゃん、いっちゃうよぉ!」
 まったく、うるさい姉だ。そんなにイキたいならイカせてやるよ。
 今日から姉ちゃんは俺の性奴隷だ。他の男に犯されないよう、この部屋で動画漬けにしてやろう。姉ちゃんには俺のチンポがあればいいんだ。
「イク、イク、イク……あっ、あああぁああっ!」
 俺は姉ちゃんの中に3回目の射精をすませた。陰茎に残った精液も姉ちゃんの尻を打ち付けて膣の中に絞り出す。姉ちゃんは嬉しそうに尻を震わせた。あぁ、気持ちいい。姉ちゃん、ナイス肉便器。
 モニターの向こうでは、まだあの催眠術師がこっちに向かって怒鳴ってる最中だ。
 俺はそんな彼に向かって親指を立てる。
 グッジョブ、ダリ先生。俺たちはあなたのような救世主を待っていた。

 鬼畜ENDをありがとう!

< 了 >

 私たち兄妹はそうやって何回もセックスした。
 気がついたら朝になってて、体がとてもだるかった。
 今、何時? 頭がぼんやりしてよくわからない。
 お兄ちゃんはいつのまにか部屋からいなくなってた。
 下の部屋で悲鳴がした。
 
 

+++++++

 俺はダリじゃない。そんな名前知らない。
「だからー、仮の名前だって。芸名っつーの。とにかくお前の名前は発音難しいから、今だけダリって呼ぶの。いいから金欲しかったら言うとおりにしろって」
 コイツらは俺にいったい何をさせようっていうんだ?
 さっきまで裏通りで寝ていたら、変なヤツらが話しかけてきていろいろ質問された。この国の言葉はよくわからないが、『金』と『テレビ』っていうのだけは分かったから金が貰えると思ったんだが、どうやらそう簡単な話ではないらしい。
「おい、変わった外人連れてこいっていったけど、話通じないんなら仕事できねーだろ。何考えてんだよ、お前ら?」
「すみません。いや、でもこいつ見た目も怪しいし適役かなって思って」
「バカヤロウ! ったく、いいからダリ! お前は、ダリ! ここじゃそう呼ばれたらお前のことなんだよ!」
 さっきから妙に威張ってる男がキンキン怒鳴る。とにかくさっさと金を貰ってメシが食いたいから、俺は適当に頷く。
「よし。でな、お前は今から魔術師だから。いや催眠術師っていうのか? そういう役だ。俺が紹介したら、お前がカメラの前に出てくる。で、今みたいに何でも適当なこと喋れ。俺が通訳するフリして番組進めるから。どうせテレビ見てる連中もお前の言ってることはわかんねぇから安心しろ」
 テレビ? カメラ?
 ひょっとして俺がテレビに出るのか? やっぱりここはテレビの撮影所か?
 テレビに出て金が貰えるなら、これほど良いことはない。仲間を捜すチャンスだ。俺は嬉しいってことと、テレビで言いたいことがあるってことを男に伝えた。
「あー、わからんわからん。とにかくお前は俺の言うとおりにしろよ。な? そんで水着の姉ちゃんたちがいっぱい出てくるから、お前はそいつらに催眠術かければいいんだよ。メンドリになれってな」
 サイミン……なに? メンドリってなんだ?
「あぁ、実際にかけるわけじゃないぞ。演技だから心配すんな。そのへんの旅行者にバイト代払ってサクラやってもらってんだ。客もみんなサクラだからスタジオで失敗することはない。思いっきりやれよ、マジシャン・ダリ!」
 それにしても腹すいたな。こいつの話はまだ終わらないのか?
「おい、キョーコ。こいつに衣装着せてやってくれ」
「はーい」
 キョーコ。そう呼ばれてメガネの娘が俺の前に出てきた。
「金色のタキシードあったろ、ラメラメのギラギラのやつ。それと帽子はどうするかな……いらねっか。マイクだけ頼むな」
「はい」
 男とキョーコは隅っこにある段ボールに近づく。そのとき男がキョーコの肩に手を伸ばしたが、キョーコに叩かれて顔をしかめていた。よくわからないが俺の胸がスッとした。
「まったく、あのディレクター……さっきの男ね。セクハラオヤジなんだよ。誰がお前なんかとデートするかっての。気持ち悪い」
 キョーコだけ戻ってきて、ブツブツ言いながら俺に変な服を着せる。たぶん彼女は怒ってると思う。ディレクターというのが、あの男の名前なのか。
「あーあ。さっさとバイト代貰って違う国に行こうっと。貧乏旅行っていろんな出会いが楽しいけど、いい男ってどこの国にもいないね」
 よく喋る娘だ。言ってる中身はわからないけど。
「って、言葉わかんないんだっけ? 私、キョーコ。よろしくね。ニッポン人だよ。ニッポン。OK?」
 ニッポン? あの東にある島のことか?
 なんていう偶然。俺の部族も、大昔にずうっと東からきた。伝説が残ってる。ニッポン人なら何か知ってるかもしれない。
 俺は一生懸命そのことを喋った。でもキョーコは首を振った。
「ごめん、私もあなたの言葉わかんない」
 キョーコは謝ってる。それはわかった。そしてキョーコの手が俺の胸を撫でる。
「でも不思議だね、あなたの言葉……初めて聞くのに懐かしい感じ……なんか、涙出そうになった。すごく素敵な響き」
 すぐそこにキョーコの顔がある。俺はなんだかドキドキした。
「ねえ、これ終わったら食事しない? もし時間あったらだけど……あなたのこと知りたいかも」
「おーい、始めるぞキョーコ! 準備できたか!」
「はいはい……ね、終わったら、すぐに帰らないで待っててね。約束。OK?」
 とりあえず『待つ』と『約束』だけわかった。俺は『OK』と答える。
 キョーコと入れ替わりにディレクターが近づいてくる。
「いいか、もう一回言うぞ。俺がお前を紹介したらカメラの前に登場。何でもいいから適当にしゃべれ。そのあと水着の女たちを紹介するから、そいつらに催眠術かけるフリしろ。大声で命令するだけでいい。彼女たちがメンドリの真似して走り回るから、それ追い立てて成功したって顔しろ。それでパーフェクト。簡単な仕事だろ?」
 何を言ってるんだ、コイツ? 意味わからん。
「まあ、いいわ。俺がなんとかしてやる。あ、それとカメラの前で水着の女に触るなよ。そんなの放映したら俺たち逮捕されるからな。それじゃ本番いってみようか!」
 慌ただしく人が動き出す。キョーコはどこだ? カメラの横で手を振ってる。そこに行こうと思ったら若造に「本番中だぞ」って止められた。
「さあさあ、テレビの前のみなさん、おまたせしました! とうとう今夜、あの驚異の魔術師ダリがこのスタジオに登場します!」
 なんたらかんたらとディレクターが喋り続ける。
 さっきの若造に背中を押されて、俺はディレクターの横に並ばされる。
「ダリ、今から白ブタをメンドリに変えてみせるんだって? 本当にそんなことできるのかい?」
 みんなが笑ってる。俺は意味がわからなくて困る。
 そんなことより、これはもうテレビに映ってるのか? 俺はもう喋っていいのか、ディレクター?
「なるほど、なるほど。みんな聞いたか? どうやら俺は勘違いしていたようだ。ダリが言うには、あいつらは白ブタじゃなく、玉子なんだと」
 ここは騒がしいところだ。何がそんなにおかしいんだ?
 とにかく俺はカメラに向かって訴えた。
 誰かこのテレビを見てるか? 誰でもいい。生き残ってるやつがいれば連絡してくれ。
「さて、それでは実験台となってくれる白人美女たちにご登場願いましょう!」
 ディレクターはカメラ前の俺を突き飛ばす。ぞろぞろ現われる裸に近い格好した女たち。なんだこいつら? 恥ずかしくないのか?
 女たちがマイクに向かって喋る。ここじゃ聞かない言葉だ。よその国の人間か? 俺の言葉はわかるだろうか?
 ディレクターが俺にマイクを持たせて退場した。俺と半裸の女たちだけがカメラの前に残されて、他の連中は椅子に座って俺たちを見ている。
 俺の言葉わかるか?
 女たちの1人に話しかけたら、その娘は頭をクラクラさせた。
 言葉わかるか?
 立ったまま眠ったようだ。
 どうなってんだこれ? 俺は隣の女に声をかける。でもその女も立ったまま眠ってしまった。
 誰か俺の話を聞いてくれ。次々と女たちは俺の話を無視して眠りこける。
 ダメだこいつら。俺はカメラの後ろにいるディレクターを呼ぶ。でもディレクターはゲラゲラ笑いながら何か叫んだ。でも俺には言ってることはわからない。
 女たちは目を覚ました。そして鳥みたいに手をバタバタさせた。
 そしてあちこち走り出す。何が起こってるかわからない。バカかこいつら?
 ディレクターが俺に向かって何か言ってる。身振りから思うに「追いかけろ」と言ってるようだ。
 俺が? この女たちを?
 腹は減ってるし力は出ないし、走るのはいやだ。でもお金が欲しいから頑張る。俺は女たちを追いかけた。
 何がおかしいのか、みんな笑ってる。何をやってるんだコレは? 俺はこんなことがしたいんじゃない。金は欲しいけど、俺にはもっと大事なことがある。
 俺はカメラに向かって喋った。

 俺はアメ族。ずっと向こうの国に住んでた。ある日軍隊が村に来てみんな追い出された。鉄を掘るとか発電所を作るとか言ってた。逆らったやつは殺された。みんなバラバラになった。
 俺たちは山でしか暮らせない。だから何人かで山を伝ってここまで逃げてきた。ずっとずっと歩いてきて、途中の吹雪きでみんなはぐれた。
 山から下りてきて、こっちの兵隊に追いかけられた。それでも逃げて街まできた。誰も俺の言葉わからない。でも仲間の誰かはこれ見てるかもしれない。
 俺はここにいる。アメ族は生き残っている。連絡をくれ。
 
 変な音楽がうるさく流れる。女たちが鳥の真似して走り回ってる。

 アメ族は誇り高き民族。はるか昔、俺たちの先祖は東の国で神と呼ばれていた。豊穣と多産をもたらす神の末裔だ。
 山に隠れ住み、民衆が必要としたときに降りてくる。歌と踊りと宴で女たちに子どもを産ませて土地を豊かにする。
 やがて権力者が変わって先祖は土地を追われた。大陸まで逃れ、そこでも追われて奥地へと逃げて、ひっそりと暮らしていた。
 俺たちはいつか帰らなければならない。いずれ必要とされるときがくる。それまで待てと先祖に言われた。俺たちは待っている。ここで待っている。
 俺たちを知ってる者は連絡をくれ。

 キョーコがいつのまにかディレクターにもたれかかっていた。具合悪いのか? ニッポンの女、キョーコ。俺はキョーコと話がしたい。約束した。待つって約束した。もう俺たちは十分待った。俺はキョーコのところに行きたいのに、さっきの若造が俺をカメラの前に押し戻す。
「ん、キョ、キョーコはちょっと貧血みたいだな、うん。俺が外で休ませるから、お前らは続けろ! 途中で止めるなよ!」
 ディレクターがキョーコを抱きながら言った。何を嬉しそうな顔してるんだ? キョーコは大丈夫なのか?
 若造が手を振り回してる。俺に続けろと言っているようだ。
 音楽はますますうるさくなってバカな女たちが走り回る。
 この国は狂ってる。山に帰りたい。俺が最後の1人なら、アメ族の血は俺が守る。俺はアメ族のタヂカラ。女を連れて山に帰る。キョーコを連れて帰る。
 俺は古い歌を歌った。

  ますらおは あしならし うずめは かみがかり
  天の岩戸は閉じてても この歌を聞けば顔をだす
  天の岩戸は閉じてても この歌を聞けば身悶える
  ますらおは あしならし うずめは かみがかり 
  天の岩戸は開かれる 真っ赤に濡れて開かれる
  天の岩戸は開かれる 濡れて交わるときがくる
  ますらおは あしならし うずめは かみがかり

 いつのまにやら仕事は終わったらしく、若造に金を貰って俺は外に出された。俺の言葉はちゃんと放送されただろうか?
 あれからキョーコに会っていない。どこにいる? 無事なのか? ディレクターもどこ行った?
 腹がへって目眩がするが、キョーコに待つと約束した。キョーコに俺の話を聞いてもらいたい。あの娘ならきっとわかってくれる。
 この金でキョーコとメシを食おう。いくらなのかはわからないが、これでこの国のメシを食えるはずだ。
 金を見ていたら何かがよぎった。金がなくなった。振り向いたら子どもが走っていく。俺の金が取られた。
 俺は走って追いかけた。必死で走った。捕まえてくれって言っても、周りの連中は笑って見てるだけだった。
 腹がへった。心臓がバクバクする。でも逃がすわけにはいかない。あの金がなかったら俺は死ぬ。誰かあのガキを捕まえてくれ。誰か俺を助けてくれ。
 ドクッ。
 心臓が変な鳴り方をして息が詰まった。足がもつれて立っていられなくなった。俺は倒れていく。妙にゆっくり感じられた。目の前には大きな石があった。でも体が動かなくてよけられない。俺はあきらめて目を閉じた。
 

+++++++

 先日、義父が死んだ。
 ようやく私は自由になれたというのに、全然嬉しいと思えない。あの男が残した絶望と恨みはまだしつこく私の体を這っている。
 義父が私の家に来たとき、私はまだ小学生だった。
 父と別れたばかりの母が突然家に連れてきたのだが、私は最初から彼のことが嫌いだった。いやらしい顔をした男で、どう見ても別れた父の方が良い男だった。
 2人の再婚話に私は猛反対したのだが、母はどうしても私の意見を聞き入れてくれなかった。なし崩し的に同居が始まり、私は他人としか思えない義父との暮らしに息を詰まらせていた。
 ある日、義父におかしなビデオを見せられた。その日は母が遅くまで出かけていて、私は二人っきりの気まずさが多少は晴れるかと思って義父の前でそのビデオを見た。
 内容は古い外国のバラエティ番組のようで、字幕もないから何をやっているのかわからなかった。
 でもそれが妙に面白くて、私はいつしかその番組に夢中になっていた。
 そして気がついたら義父のペニスを咥えさせられていた。言われるがままにペニスをしごき、股を開き、義父に処女を奪われた。
 呆然としている私に、義父は得意そうに言った。
 これは海外を旅していたときに、とある国のテレビ関係者から買った「日本人の女を狂わせるビデオ」なのだと。
 私は自分の頭が狂わされたのだと思った。だって私は、あれほど大嫌いだった義父に抱かれたくて仕方ないのだ。
 そんな私を見て義父は笑った。恥ずかしい格好をさせて、卑猥な言葉を言わせて、泣きながら抱いてくれるように乞う私を見下ろして笑った。
 その日から私は義父の性処理奴隷にされた。母ともども毎日のように犯され、ようやく私は母もビデオで狂わされていたことを知った。
 義父は私たち母娘だけではなく、近所の奥さんや私の同級生も次々に餌食にしていった。
 恋人を作れば解放されると思って彼氏を家に連れてきたこともあったが、彼氏の前でビデオを流されて犯され、私は学校にも行けなくなった。
 この男がいるかぎり私には自由はないのだと思い知らされた。
『Magician dari and hens』
 この悪魔のビデオと出会って8年。私にとっては地獄の年月だった。
 そして義父が亡くなり、母も1年前に亡くなり、この家に残ったのは私とこのビデオだけとなった。
 そのことは喜ばしいが私にはその自由を楽しむ時間も残されていない。
 義父と母の命を奪った病気は私にも感染しているそうだ。ようやく得た自由なのに、あと1、2年の命だそうだ。
 いったい、私が何をしたというのだろう。この家の子として生まれたのが不幸だったのか。この国に生まれたのが不幸だったのか。
 でも今となっては何もかも手遅れだ。
 私はその悪魔のビデオを分解してゴミに捨てる。これで義父の物は全て無くなった。
 そのとき、携帯電話のメールが鳴った。

『マドカちゃ~ん。
 これから出勤?ご苦労さま☆
 あ~、一度でいいから本物のマドカちゃんに会いたいよ~。
 今度の休みはヒマかな? どうかな?』

 出会い系で知り合ったどこかのおじさんだ。会ったことはないけど、しつこいやつ。
 店やメールじゃ私のキャラは180度違うから、これでも結構近づいてくる男が多い。いまさら外で男作る気ないけど、こうやって自分に騙されてる男を見るのは気晴らしにはなる。
 さて、どうしようか。
 ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい条件の男だ。
 ビデオは捨ててしまったが中身はHDDの中に移してある。
 これはもう義父のモノではなく私のモノだ。ボロボロになって死んでいく私の最後の武器。絶望と恨みが詰まった爆弾だ。

『今度の休みはお店の子たちと温泉なの♪
 ごめんね~。
 いつも誘ってくれるおじさんに悪いからPCの方にプレゼント送っとくね。
 魔法のビデオだよ☆』

 1年後になるのか1ヶ月後になるのかは知らない。その頃には私はもうこの世にいないかもしれない。
 しかし一度こういう形で流れてしまえば、いずれこの悪魔のビデオは日本中に広まっていくだろう。
 そしてあちこちで事件を起こし、いろんな人間を巻き添えにして、この国はパニックになるのだろう。
 想像するだけで笑えてくる。
 男たちの醜い本性と汚い欲望がこの国を滅ぼすんだ。どんな偉そうにしてるやつだって、ダリの魔力に勝てるはずない。
 義父はこれを「女を狂わせるビデオ」だと言った。でもそれは間違ってる。

 女は欲情するだけだ。
 狂うのは男のほうだよ。
 
 

+++++++

 俺は動画再生が終わるたびにリプレイしていた。さっさとHDDに落としてしまえばいいのだが、今はそんなヒマすら惜しい。
「んぐ、ちゅぱ、んん、ちゅうぅ、んん……ね、どう? 気持ちいい? ぢゅっ、ちゅば」
 なぜなら今は俺のハイパービッグマグナムを美味しそうに姉ちゃんがしゃぶっているのだ。
 あれから2発も中に出してやったっていうのに、今も姉ちゃんは物足りなさそうに俺にフェラのサービス中だ。
 これはすごい動画だ。
 バカにしてゴメンな悪友。そういやメールすんの忘れてたわ。
「んぐ、んん、ね、固くなってきたよ? もう入れていい? ねえ、入れて?」
 すっかりメス犬になった姉ちゃんに、俺は机に手をつくように命令する。
 あの乱暴者だった姉ちゃんが従順に尻を捧げる。弟の俺にだぞ。あそこからタラタラと愛液垂らしやがってだぞ。
 なんていやら……けしからん姉だ。こらしめてやる!
「ああぁっ! いいっ! いいよぉ!」
 ドギャーンと突き刺してピストン開始。
 姉ちゃんで童貞喪失してから怒濤の3連発。もはや俺たち姉弟に怖いものはない。よだれを垂らしてよがりまくる姉ちゃんをガンガン突いてやる。
「すごい! すごいよぉ! お姉ちゃん、こんなに気持ちいいの初めてぇ!」
 エロゲでしか聞けないと思っていたセリフを姉ちゃんに言わせて大満足の俺のチンポは無敵の硬度で攻め立てる。自分でも何を言ってるのかわからないが、とにかくずっと俺のターン。この『Magician dari and hens』がある限り地球の平和は俺が守る。これさえあれば誰でも犯せるんだ。
 でもこんな超有名動画サイトで公開されてるくらいだから、今ごろ日本中、いや世界中で女が犯されてるに違いない。
 こうなったら早い者勝ちだ。女狩りだ。まずは学校中の女を犯してやるぜ。
 犯してやりたい女を次々と頭の中でリストアップする。一番にヤリたいのは同じクラスのあの子だ。
 でも由紀菜ちゃん、今日は学校休んでたよな。
 風邪でもひいたのかな? 明日は学校来るよな? 
「ああ、もうダメ、イク、いっちゃうよぉ! お姉ちゃん、いっちゃうよぉ!」
 まったく、うるさい姉だ。そんなにイキたいならイカせてやるよ。
 今日から姉ちゃんは俺の性奴隷だ。他の男に犯されないよう、この部屋で動画漬けにしてやろう。姉ちゃんには俺のチンポがあればいいんだ。
「イク、イク、イク……あっ、あああぁああっ!」
 俺は姉ちゃんの中に3回目の射精をすませた。陰茎に残った精液も姉ちゃんの尻を打ち付けて膣の中に絞り出す。姉ちゃんは嬉しそうに尻を震わせた。あぁ、気持ちいい。姉ちゃん、ナイス肉便器。
 モニターの向こうでは、まだあの催眠術師がこっちに向かって怒鳴ってる最中だ。
 俺はそんな彼に向かって親指を立てる。
 グッジョブ、ダリ先生。俺たちはあなたのような救世主を待っていた。

 鬼畜ENDをありがとう!

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