サイミン狂想曲 第二話

第二話

「あ。おはよう、お兄ちゃん。今朝は早いね?」

 制服に着替えて廊下に出ると、同じく身支度を整えた真由と鉢合わせになった。二人で朝食をとるためにリビングに向かう。

「あ~ぁ。今朝も、お兄ちゃんが寝ているうちにフェラチオ奉仕したかったのになー」

 真由は不満げに口をとがらせながら、淫靡なことを口にする。そんな妹が隣にいても、僕は正直、気が気でない。

「あら、賢哉。今朝は早いわね?」

 リビングに入ると、ママが声をかける。テレビが朝のニュースを読み上げるのを聞き流しなら、テーブルの、先に座っているパパの向かいの席に兄妹で座る。先に食事を終えたらしいパパは、読んでいた新聞を畳み、立ち上がった。

「パパは先に出かけるぞ。賢哉、真由、遅刻しないようにな?」

 パパは、僕たちの顔を見ながらそう言った。

「あぁん……待ってぇ、あなたぁ」

 ママが、朝の団らんに不似合いな艶声をあげた。エプロンで手を拭きながら、パパに歩み寄る。

「お出かけ前の、チューしましょ?」

「ん。そうだな」

 パパとママが顔を赤らめて見つめあったかと思うと、情熱的に唇を重ねる。パパはママのスカートの中に手を伸ばし、ママはそれを受け入れながら乳房をパパの胸板に押しつけている。重なる唇からは、人目をはばかるようないやらしい水音が響く。真由が頬を紅潮させながら、食い入るように両親の姿を見つめていた。

 先日、家庭内で真由に堂々とイタズラできるように、両親にも催眠をかけて僕が何をしても気にしないようにしておいた。ついでに、パパとママが熱烈にお互いを求めあうような暗示をかけてある。二人のディープキッスは、その結果だった。昨夜は真由が覗いていても気がつかないほど、激しい夜の営みを交わしていたくらいだ。

 両親の仲を密かに掛け持つという善行を積みながら、それでいて僕の気は晴れなかった。

 パパから遅れて三十分ほど、僕と真由は通学路を歩いている。真由が不思議そうに伺うほどに、僕の顔は不機嫌らしい。

「真由。昨夜、清美ちゃんに出したメールの返事は来たか?」

「ううん」

 僕の質問に妹は首を横に振る。僕の唯一にして最大の不安は、これだった。昨日の放課後、僕の欲望の行為を受け入れながら、逃げ出した清美ちゃん。僕と真由は、彼女のことを必死に探したが見つけることはできなかった。清美ちゃんにかけた催眠が解けていて、僕のしたことを誰かに打ち明けたりしたらと思うと、不安でたまらない。言い訳をする余地なんてないし、女子盗撮という余罪まで掘り起こされかねない。帰宅した後、真由に清美ちゃん宛のメールを出して様子を探るよう言いつけたのだが、結局返事は来ていないようだ。

「真由。学校に着いたら、清美ちゃんに直接話をしにいって、昨日のこと聞いてくるんだ。いいな?」

「うん。わかったよ、お兄ちゃん」

 いつもと何ら変わらない、間延びした調子で妹は返事をした。

 真由と分かれた僕は、まだ人影もまばらな廊下をぶらぶらと歩きながら、自分の教室に向かう。時計を見ると、朝のホームルームまで一時間弱ほどあった。気分が落ち着かなかったとはいえ、早く来過ぎてしまったようだ。

 その時、携帯が陽気な音楽でメールの着信を告げた。真由の報告メールかと思って、慌てて携帯を確認する。表示されるアドレスは、見慣れない文字列だった。僕は、いぶかしがりつつも、本文を開く。短い文章が画面に浮かび上がる。

『鹿野清美です。今、旧校舎の裏で待っていますので、来て下さい。』

 僕は、カバンを持ったまま、目的地を変更した。

 学校の敷地は山林に隣接している。地理の先生が言うには、昔この一帯は農地で学校は山に張り付くような格好だったらしい。宅地整備の後、現在の位置に校舎が新築された後も取り壊されなかった旧校舎は、学校と裏山をしきるフェンスの手前にひっそりとたたずんでいる。旧校舎自体も一応立ち入り禁止と言うことになってはいるが、人目につかないこともあり盗撮写真の取引場所の一つとして個人的に活用している。

 木造で、窓ガラスにひびが入った旧校舎の裏手に回り込むと、終日陽が当らない場所に清美ちゃんの姿があった。僕が近づくと、清美ちゃんもハッと顔を上げる。頬が赤い。

「清美ちゃん、メール……」

「あっ! はい……今朝、真由ちゃんに会った時に、小野村くんのメールアドレスを教えてもらったんです……」

 そう言うなり、清美ちゃんはうつむいて黙りこんでしまう。時折、恥ずかしそうに口をもごもごと動かすが、結局はしゃべらない。僕は清美ちゃんの態度と、自身の不安についイライラしてしまう。

「清美ちゃん! 一体、なんで僕のことを呼び出したのさ!?」

 思わず、語気を荒げてしまった。清美ちゃんは、ビクッと背筋を伸ばす。

「は、はい! ごめんなさい!! 実は……小野村くんに見てもらいたいものがあって……」

 清美ちゃんは、わずかに顔を伏せ、スカートの裾を両手で握りしめる。僕が返事をしようとした瞬間、清美ちゃんは勢いよくスカートをまくりあげた。

「ふわぁっ……」

 清美ちゃんの口から甘い声音の吐息がこぼれ、僕の視線は彼女のスカートの内側に釘づけになる。本来、清美ちゃんのデリケートな三角痴帯を覆い隠すべきショーツが、存在しなかったのだ。肉付きの良い太股の上は、下腹部まで肌がむき出しになっている。陰毛は薄く、わずかな茂みから透き通る花弁のような桃色のクレヴァスがのぞく。乙女の渓谷から湧き出た一滴の雫が、太股を伝って降りていった。画像や映像では見たことあったけれど、実際に見るのは初めての女性器……女性の秘密の花園がすぐ手の届くところに広がっている。

「清美ちゃん。これ、なんで……」

 僕は、突如として現れた楽園の光景に目を奪われ、呆然自失となりながら、清美ちゃんに尋ねる。

「だって、だってぇ……こんなの、小野村くんにしか、見せられなぃ……」

 清美ちゃんが、今にも泣き出しそうな声で答える。隠すべき場所をさらけ出しながら、恥ずかしそうに身をよじる清美ちゃんのギャップに僕は引き込まれる。

「ねえ、清美ちゃん。なんで、こんな恰好しているの?」

 僕はカバンを地面に置いて、清美ちゃんの股間に顔を近づけた。食い入るように観察しながら、彼女に尋ねる。ひくひくと震える肉唇の狭間から、愛液が泉のように湧き出している。

「あぅ……だって、私……ヘンタイなんですもの。だから……下着もはかずに居たいんですぅ!」

 僕の意地の悪い質問にも、清美ちゃんは必死で答える。羞恥を押し殺した声が響くたび、腰がくねり、淫液がしたたる。

「ねえ、ショーツはどこで脱いだの?」

「学校に来てから……女子トイレで……」

「へえ、それはなんで?」

「だって……本当は、バスに乗る時から脱いでおきたかったけど……知らない人のいるところでは、やっぱり怖くって……」

 僕のいやらしい尋問に清美ちゃんは逆らうことなく返答し、その度に身体が淫らな反応を示す。僕は、次なるアイデアを思いつき、自分のカバンを手元に引き寄せる。

「あの……何を……?」

 清美ちゃんが、不安げに尋ねてくる。僕は聞き流しながら、カバンの奥からカメラケースを取り出した。ケースの内から、愛用の一眼レフレンズのついたデジタルカメラが姿を現す。数万円する本格的な代物だ。これは、僕が盗撮ように使っている愛用のデジタルカメラで、盗撮写真の売り上げで、購入費とメンテナンス費を賄っている。いまのカメラを手に入れてから盗撮映像の質も格段に上がった。こんな形でも売上は、取引相手の皆に還元されているのだ。

 僕は、デジカメの電源を入れて、レンズの具合を確かめる。

「あ……あの……」

 清美ちゃんが再び尋ねてくる。手が疲れてきたのか、スカートの裾を握る拳を下ろそうとしている。

「スカートは、まくりあげたままで!」

 僕は、彼女の声を制するように指示を出した。途端、金縛りにでもあったかのように清美ちゃんの身体が硬直する。

「うん、そうそう。もっと内側が良く見えるように、スカートを上げて?」

「あ、あぁ……」

 僕がカメラをいじりながら清美ちゃんに指示を出すと、彼女は顔から火を噴き出しそうになりながらも僕の言う通りに動く。カメラを構えて、液晶画面を覗くと若干暗い。まあ、日陰の廃校舎裏だからしょうがない。ここなら、フラッシュを使っても誰かに気づかれることもないだろう。僕は地面に伏せるような体勢を取って、ローアングルから見上げるように清美ちゃんの秘部を捉える。恥ずかしそうにすり合わせる太股の間から隠すことのできないピンクの花弁が、液晶に映し出される。僕は、シャッターボタンを押した。フラッシュが焚かれ、清美ちゃんの赤らんだ下腹部が閃光で照らされる。

「清美ちゃん。脚を開いてよ。下側から写したいんだ」

 カメラから顔を上げて清美ちゃんを見上げると、唇を噛み、目を固く閉じて、目尻には羞恥からか大粒の涙がたまっている。それでも、彼女の太股は肩幅ほどに開かれる。僕は再びカメラを構えると、一眼レフレンズが清美ちゃんの陰部を真下から捉えるように、彼女の脚の間に仰向けになりながら潜り込む。

「うぅ……私のアソコ、カメラで撮っちゃうんですかぁ……?」

 清美ちゃんの泣き声が聞こえた。普通なら絶対に見ることのできないアングルから見た清美ちゃんの大切な場所は、プックリと充血して膨れた陰核から、潤み緩みかけた淫唇、可憐で小さな蕾のようにすぼまるお尻の穴までも露わになっている。僕は、たまらず立て続けにシャッターを切り、スカートの内側をフラッシュで照らす。

「安心してよ。顔が写らないように撮ってるからさ」

「で、でも! でもぉ、汚いですし……」

「そんなことないよ。清美ちゃんのココ、とってもキレイだよ?」

 スカートの向こう側で、清美ちゃんはイヤイヤと頭を振っているようだった。彼女の声と素振りは、もっと淫らな振る舞いを見てみたいという僕の衝動を煽りたてる。

「ねえ、清美ちゃんは学校でショーツ脱いで、ノーパンになっちゃうようなヘンタイさんなんだよね。そうだよね?」

「あぁ……私、ヘンタイ……そ、そうですぅ。私、ノーパンのヘンタイですぅ」

 僕が迫るように主張すると、清美ちゃんはすぐに追随し、僕の言ったことを復唱する。

「清美ちゃんは露出狂なんだよね」

「ろっ、露出狂!?」

 清美ちゃんは、ハッとしたかのように叫んだ。僕は、彼女の股の下でシャッターを切る。

「そうだよぉ。自分の裸を誰かに見てみたいと思っているヘンタイさん。でも、実行に移すのは怖くてできないんだよ」

「あぅ……私、露出狂……私は、ヘンタイの露出狂……」

 清美ちゃんが、壊れたレコーダーのように同じ言葉をリピートし始める。彼女の足首が、けいれんでも起こしたかのようにガクガク震える。

「勇気のない露出狂の清美ちゃん。そんな清美ちゃんが、安心して露出できるのは僕だけなんだよ? 清美ちゃんは、僕になら、安心して裸を見せて、気持ち良くなれるんだ……」

 清美ちゃんの精神に刷り込むように、しつこく呟いていく。清美ちゃんは、深いため息を繰り返しながら、陶酔したかのようになっていく。

「私、露出狂……小野村くんの前でだけ、裸になるヘンタイ……小野村くんになら、安心して裸を見せられる……小野村くんとなら、気持ち良くなれる……私、私……あぁッ!?」

 清美ちゃんが感極まったかのように叫ぶと、突然、一際大きく身を震わせる。

「あっ! あぁ……ああぁぁぁッ!!」

 次の瞬間、僕が反応する間もなく、清美ちゃんの女性器から透明な奔流が噴き出した。水鉄砲のように勢いよく降り注ぐ分泌液は、二、三度の噴出を繰り返し、カメラのレンズに降りかかる。突然のことに、しばし呆然としたが、これが清美ちゃんの絶頂によってあふれ出した愛液だと言うことに気が付いた。解放感に震える清美ちゃんの歓喜の吐息が聞こえてくる。

 僕は仰向けの身体を引きずって、清美ちゃんの股下から抜け出す。上半身を起こすと、カバンからレンズ拭きを取り出した。清美ちゃんから絞り出されたエキスが、レンズの表面を濡らしている。

「あ、あの……ごめんなさい。カメラ、大丈夫ですか……?」

 清美ちゃんが、恥ずかしそうに、申し訳なさそうに聞いてくる。まだ手を下ろすことを許可していないので、スカートはまくり上げられたままだ。

「うん、大丈夫、大丈夫。気にしないでよ」

 幸いカメラに異常は見当たらない。レンズも大丈夫そうだった。ただ、清美ちゃんの愛液が染み込んだ、このカメラ拭きはもう使えない。洗濯しないで、大事に取って置かないといけないからね。

 僕はカメラをカバンにしまうと、清美ちゃんを見上げた。清美ちゃんは、不思議そうに僕を見下ろす。

「ねえ、清美ちゃん。キスしてもいいかな?」

「え……キス、ですか?」

 清美ちゃんが、不安げに聞き返す。僕は、地面に腰を下ろしたまま、清美ちゃんににじり寄る。

「うん、キスはキスでも……こっちのほうにね」

 僕は、清美ちゃんの股間に顔をうずめ、肉豆のような淫芯に唇を触れる。

「ひぁっ!?」

 途端、清美ちゃんがビクンと身を震わせる。僕は、一度、口づけを中断した。

「清美ちゃんの下のお口のファーストキス。僕がもらっちゃったよ?」

 僕は再度、清美ちゃんの淫唇に接吻を施そうと顔を近づける。

「あ、あ……待って! やめて下さい……」

 清美ちゃんが、スカートの裾を握りしめたまま、逃げるように腰を引く。

「えぇー? なんで駄目なのさ」

「だって、だって……ココは汚いですし……それに、それにぃ……」

「そんなことないよ。清美ちゃんのココはキレイだって言ったじゃない。ほら、動かないで?」

 僕が支持を出すと、清美ちゃんの身体が硬直したように動きを止める。

「二回目のキスだから、ディープにやっちゃってもいいよね?」

「あ、はあぁ……」

 僕は清美ちゃんの返事も待たず、貝のような口をした秘肉に狙いを定める。閉じていた肉唇は、激しい絶頂で緩み、ヒクつきながらサーモンピンクの内側をわずかに覗かせている。僕は自分の唇を突き出して、液を滴らせる美味しそうな淫肉にむしゃぶりついた。

「ん……ッ!!」

 かみ殺すような清美ちゃんの嬌声が聞こえる。舌で清美ちゃんの秘裂を割って侵入すると、内側から果汁が滴ってくる。酸味が強く、ほのかな甘みがあるような気がした。生真面目な清美ちゃんは、毎晩お風呂で丁寧に洗っていたのだろう。イヤな体臭は全くしない。僕は行儀悪く音を立てながら、清美ちゃんの果肉を貪っていく。膣壁の肉ひだが舌に絡まり、味わうほどに収縮していく。

「あぁ……ダメっ!!」

 清美ちゃんが、鋭く叫ぶ。同時に、弾けるように愛液が果肉の内から噴き出した。僕は逃げる間もなく、あふれる果汁を顔で受け止める。

「うわっ!?」

 清美ちゃんの体液が目に入ってしまった。僕は思わずのけぞり、尻もちをついてしまう。

「あぁ! 小野村くん、大丈夫ですか!?」

 清美ちゃんが心配する慌てた声が耳に届いた。

「清美ちゃん……何か、顔を拭くもの持ってない?」

 僕は目を開けられないまま、清美ちゃんに尋ねる。

「顔を拭くもの……顔を、拭くもの……」

 清美ちゃんが、しばらくごそごそと何かを探すと、僕の手に一枚の布のようなものを手渡してくれた。ハンカチか何かだろうか。

「これを……」

「ありがとう、清美ちゃん……」

 僕は、清美ちゃんが手渡してくれてもので顔を拭う。ようやく、目を開くことができた。何気なく手に握っていたものを見下ろしてみる。それは、薄いパステルピンクの色合いで、三角形に近い形状をしていた。

「清美ちゃん、これって……」

 僕に手渡されていたのは、おそらく清美ちゃんが学校に来て脱ぎ捨てたのであろうショーツだった。清美ちゃんの顔を見上げると、何度目だろう? ゆで上げられたように、顔面が真っ赤になる。

「私、なんで……なんで……あぁッ!!」

 清美ちゃんは、顔を両手で覆うと、大慌てで走り去っていった。旧校舎裏には、彼女のショーツを握った僕だけが残される。

 清美ちゃんが何故、僕にショーツを手渡したのかは解らない。もしかしたら、「顔を拭くものを渡せ」という命令と、「清美ちゃんはヘンタイである」という暗示が相互作用を起こした結果なのかもしれない。ただ一つだけ、僕が逃げる清美ちゃんを必死になって追いかける必要はないことだけは解った。僕は、清美ちゃんが僕専属のヘンタイ露出モデルになってくれたことを確信できたのだ。

 貴重な映像を収めたカメラとカバンを持つと、僕は立ち上がり、自分の教室へと歩きはじめる。真由と清美ちゃんの二人に、次はどんなことをしてもらおうか、授業時間にゆっくりと考えることにした。

< 続く >

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