サイミン狂想曲 第三話

第三話

『……てめえ! なめた態度してんじゃねえぞ!! あぁ!? ……』

 早朝の会議室、スピーカーが廊下に向けられ、門倉生徒会長の怒声を大音量で流している。僕と生徒会長は、耳をふさぎながらノートパソコンのモニターに向かっている。

 僕は、いつものようにマイクロメモリーカードをパソコンに読み込ませる。画像がモニター上に映し出されると、生徒会長はあごに手を当てながら、目を見開く。自らスカートをまくりあげ、下着もつけていないむき出しの秘部をさらけ出す少女の画像、しかも身につけた服は僕たちの学校の制服。画像の女性器にはモザイクもボカシも入っていない、いわゆる無修正画像だ。

「……どうかな?」

 僕が尋ねると、生徒会長は「うぅむ」と簡単のため息をこぼした。見れば視線は、画面に釘付けになり、心なしか態勢が前かがみになっている。

「小野村……これは一体どこで、どうやって撮ったんだ……?」

「生徒会長、どうやって撮っているかは聞かない約束でしょ」

 もちろん生徒会長は知る由もないが、画像のモデルは清美ちゃんだ。昨日の朝に撮影した映像を昨夜編集したのだ。顔が写らないように画面の一部を削り取り、撮影場所もわからないように背景を暗くぼかしてある。結果的に清美ちゃんの白い肌がコントラストを描いて画面上によく映える。

「……これ、もらっていいのか?」

「もちろん! 他のアングルから撮った写真もあるから、是非楽しんでよ。そのかわり、これからも今まで以上の協力を期待させてもらうよ?」

 画像データをコピーすると、生徒会長はそそくさと荷物をまとめ始める。不自然な前掲姿勢で立ち上がった。

「小野村! ところで話は変わるが、俺は今、この瞬間、急に腹痛を覚えた……よって早退することにする!!」

 生徒会長はそう言うと下腹部をおさえ、不自然な前屈姿勢で廊下に向かう。多分、帰宅してゆっくり楽しむつもりなんだろう。僕は生徒会長との友情に報いた満足感を味わいながら、彼の背中を見送った。

 自分の教室に向かう途中に、見慣れた人影があった。廊下で談笑する真由と清美ちゃんだ。二人は僕に気がついて、真由は手を振り、清美ちゃんは表情をゆるめながら会釈する。僕が二人に近づこうとすると、廊下の向かいからもう一人見知った女性が歩いてくる。いつも色んなお世話になっている理香子先生だ。

 先生は僕を一瞥すると、真由と清美ちゃんに歩み寄った。二言三言、会話を交わすと、真由が二人からはずれ小走りでこっちに来る。

「どうしたんだ真由。先生はなんて言ってた?」

「なんだか、清美先輩に大事な話があるから席を外してほしい、って言われたよ」

 清美ちゃんと理香子先生は、人通りの少ない階段の影に移動していった。

 待つこと十数分、清美ちゃんと先生は二人連れだって戻ってきた。

「おはよう、小野村くん。今朝は早いわね。趣味の活動にでも、精を出していたのかしら?」

 理香子先生が、皮肉げな言い方をする。

「先生。疑わしきは罰せず、って言葉がありますよ?」

 僕がそう言い返すと、先生はため息をつく。清美ちゃんに、「よろしくね」と言い残すと、職員室に向かう。僕は先生の背を見送りながら、清美ちゃんに顔を寄せた。

「で、先生と何の話をしたのか、教えてくれる?」

 僕が小声で尋ねると、少しの間をおいて清美ちゃんがうなずく。

「最近、女子更衣室とかで盗撮とかされているってウワサがあるから気をつけてって……何か気づいたこととかあったら、その都度教えてほしい、って言っていました」

「やっぱり、理香子先生は僕のことをマークしているみたいだなあ」

「はい。私もそう思ったので、『小野村くんのことですか?』って聞いたんです。そしたら、『個人名がでると、小野村くんを傷つけるから、黙っておいて』って……」

 僕は、清美ちゃんの話をのんびりと聞いていた。まさか、先生は清美ちゃんが結果的に僕のダブルスパイみたいになっているとは思いもよらないだろう。清美ちゃんには、当たり障りのないことを適当に報告してもらうことにしよう。清美ちゃんは、もっと重要な仕事もあることだし。

「でも、先生もよりによって、ヘンタイの清美ちゃんに相談するなんてねえ。今日も、スカートの下は……何もはいていないんでしょう?」

 僕が尋ねると、清美ちゃんは頬を赤らめてうつむき、「はい……」と小さく答えた。

 放課後、僕は小会議室に向かった。今朝、生徒会長と密会した部屋だ。部屋の扉を開け、中に入ると、今度は真由と清美ちゃんが出迎える。

「じゃあ、二人とも計画の手順はわかっているよね?」

 僕は、二人に確認する。

「はい。大丈夫です」

「うん。任しておいてよ」

 催眠術に自信を持った僕は、自らの童貞喪失の計画を思案した。もちろん清美ちゃん相手でも十分すぎるほどに贅沢なのだが、せっかくだから、さらに上をねらってみることにしたのだ。

 この部屋ではこれから、とある部活と生徒会の予算折衝の話し合いが行われる。そこに来る女性こそがターゲットだ。僕はノートパソコンの前に座る真由にメモリーステックを手渡す。同時に、会議室のドアをノックする音が聞こえた。

(来たよ! お兄ちゃん、早く隠れて!!)

 真由のささやき声に促され、僕は会議机の下に潜り込み、身を隠す。

「どうぞ?」

 清美ちゃんが廊下に声をかけると、ガラガラと戸が開かれる。

「ハ~イ! 清美チャン、真由チャン、待っタ~?」

 独特なイントネーションの陽気な声が、小会議室に響く。机の上で真由が挨拶を返し、清美ちゃんが着席を促す。この声の主が、僕の童貞喪失のためのターゲット、チアリーディング部の部長であるリンダちゃんだ。今日は生徒会と部費の予算折衝をするための話し合いで、チア部は遠征で忙しかったためにテスト期間中にずれ込んでしまったらしい。

 リンダちゃんは、名前の通りアメリカ生まれの女の子だ。親御さんの仕事の関係で、幼い頃からアメリカと日本を何度か行ったり来たりして育ったらしい。日本語も、アメリカ人特有のイントネーションがあるとはいえ、堪能だ。陽気で、細かいことを気にせず、誰とも分け隔てなく接するため人望もある。

 特に男子の間では、リンダちゃんの人気はすさまじい。なんせ、日本人離れしたボリュームのバストとヒップを持つリンダちゃんが、チアリーダーとしてマイクロミニスカートの衣装を身につけ、激しいダンスを見せつけるのだ。これに欲望をそそられない男子はいない。事実リンダちゃんの盗撮写真は、いつも飛ぶように売れている。言ってしまえば彼女は僕たちのセックスシンボル、古いたとえを出せば僕らの学校のマリリン・モンローみたいな存在なのだ。

 気がつけば、リンダちゃんが僕の目の前のパイプイスに腰をおろしていた。息がかかりそうな近距離に、あこがれのむっちりとした太股が突きつけられ、スカートの内から大人びた黒い下着がわずかに見える。僕は携帯を取り出し、撮影音が出ないよう改造したカメラ機能のシャッターを切った。

「……それでは、こんな感じでよいでしょうか?」

「ウン! 清美チャン、アリガト~!!」

 リンダちゃんの下半身を前にして息を殺すことしばし、頭上の話し合いは滞りなく終わったらしい。

「ねえ、リンダ先輩。話は変わるんですけど、子猫とか、子犬とかに興味ありません? すごくカワイイ動画を見つけたんだけど、見ませんか?」

「モチロン、大好きだヨ~ 見せテみせテ!?」

 真由がそれとなくリンダちゃんに話を振ると、彼女ものってくる。実は、先ほど真由に渡したメモリーステックの中身こそが、その動画なのだ。真由は形だけ清美ちゃんに許可を求め、清美ちゃんも当然のようにそれを許し、動画が再生される。三人が談笑する声と、動物の鳴き声が聞こえてくる。

「リンダさんは、猫派ですか? それとも犬派?」

「ン~ ドッチかというと、犬の方が好きかナ」

「猫もカワイイですよ、リンダ先輩。ほら、見てください!」

「ワァ。飛び跳ねている子犬もカワイイけど、寝ている猫もいいネ!」

 どうやら核心部分に入ってきたようだ。三人が見ている動画は、インターネットで集めてきた素材を切り張り加工して僕が作ったもので、もちろん、動物動画というのはカモフラージュでしかない。

 そもそも催眠術が効果があるのはなぜなのか。僕なりに調べてみたところ、単調な一定リズムの動きと呼びかけがキモらしい。なら、五円玉振り子以外でも、この条件を満たしていれば効果を示すはずだ。そう考えて昨晩、真由を実験台にしながら作ったのが、この動画だ。

「ほら、リンダさん。猫のしっぽが、左右に揺れてますよ……右に、左に……私たちまで眠くなっちゃいますよね?」

「ァ……ウン、そうだネ……」

 彼女たちの見ている動画では、猫のしっぽが揺れる映像をリピートさせ、振り子の代わりにしている。清美ちゃんが導入催眠の簡単な語りかけをすれば、快活だったリンダちゃんの受け答えがとたんに緩慢なものになる。自分でも驚くほどの効果だ。もしかしたら、人によってかかり易さに違いがあって、リンダちゃんは影響を受けやすい体質なのかもしれない。

 僕は、こっそりと机から這い出る。リンダちゃんは、気づく様子もなく、うつらうつらと身を揺らしている。真由と清美ちゃんが僕に目配せをした。僕はリンダちゃんの真後ろに回り込む。モニターには、猫が左右にしっぽを振る姿がエンドレスリピートで映し出されている。

「はい……リンダちゃんは、もう画面から目をそらすことができない……」

 僕が耳元に口を寄せると、その場にいるはずのない人間の声にリンダちゃんは身を強ばらせる。それでも、次の瞬間には脱力し、画面に視線を投げかけるままになる。

「しっぽの動きにあわせて、リンダちゃんの意識は深いところに沈んでいく……すると、僕の声しか聞こえなくなっていく……いい? 理解したら返事して」

「……ハィ……」

 リンダちゃんの力ない返事を確認して、僕は彼女の隣のイスに腰かける。学校の女子たちよりも頭一つ高い、長身でスリムな体が背もたれに寄りかかっている。ウェストはきゅっと引き締まっているが、そのためなおさらにリンダちゃんの巨大なバストが強調される。文字通り服の下に二つのスイカでも仕込んだようなボリューム過剰のミルクタンクが、彼女の呼吸にあわせて小さく揺れる。制服のブラウスは一番サイズの大きいものを着ているらしいが、規格外のバストを納めるにはそれでも窮屈なようで、ブラウスのボタンを外して胸元をゆるめている。ブラウスの隙間からのぞく白い肌と今にも見えそうな胸の谷間が、多くの男子を悩殺して止まないのだが、リンダちゃん本人は気づいているのだろうか。

 彼女の青い目は、今、ガラス玉のように無感情で何かを伺い知ることはできない。夕日を反射する白波のように、うねるウェーブの金髪は、美術の教科書に載っていたヴィーナスの姿を連想させた。

「リンダちゃん。いま、あなたは僕の声しか聞こえない。僕の声がすべてです。抵抗せずに、僕の声に従い、受け入れてください。いいですね?」

「……ハィ……」

 リンダちゃんの頭がかくんとうなずく。催眠の深度は十分だ。僕は、舌なめずりをする。

「そうだなあ、まずは……リンダちゃんのセックス経験を教えてもらおうかな?」

「……アメリカにいた頃……今は別れたボーイフレンドとしたことがあル……」

「ふぅん、アメリカの女の子は進んでいるなぁ。じゃあ、リンダちゃんはヴァージンじゃないんだね?」

「ハィ……ヴァージンじゃないノ……」

 露骨な僕の質問に、リンダちゃんは抑揚のない声で答える。

「次の質問だけど……パイズリの経験はある?」

「パイ……ズリ……?」

 リンダちゃんが虚ろな表情で首をひねる。

「男の人のモノを、おっぱいで挟むヤツだよ。聞いたことない?」

「あァ……それなら、前のボーイフレンドに、せがまれたことがあるヨ……なんだか、気持ち悪かったんで断ったけド……」

 リンダちゃんがうなずきながら返答するのを聞いて、僕はいやらしく表情を崩す。

「ということは、リンダちゃんのおっぱいは、ヴァージンなんだね~」

 ブラウスの胸元からのぞく白い肌の谷間を見つめながら、僕はリンダちゃんにどんな暗示をかけて楽しもうか思案する。すぐに、脳裏に一つのアイデアがひらめいた。

「リンダちゃん、よぉく猫のしっぽを見てください……右に、左に……すると、どんどん僕の言葉が頭に染み込んでいくようになる……いいですね?」

「……ハィ……わかりましタ……」

 従順な態度を示すリンダちゃんに、僕は本題へと切り出す決意を固める。

「いいですか、リンダちゃん。とても、大切なことを言いますよ? よく聞いてください」

「……ハィ……」

「リンダちゃんは、実は僕、小野村賢哉のことが大好きです。好きで好きでしょうがなくて、僕の言うことは何でも聞いてしまいます。言うことを聞くたびに気持ちよくなって、もっと僕のことが好きになって、僕の言うことに従いたくなります。いいですね?」

「ワタシは、小野村クンのことが好キ……小野村クンの言うことに、従いたイ……」

 リンダちゃんがうわ言のように繰り返す。僕の言葉が彼女の深層心理を塗り変えるのを待って、次の段階へと進む。

「さて、リンダちゃん。好きな相手に対して、女の子は処女を捧げねばなりません。でも、リンダちゃんはヴァージンじゃないよね?」

「ァ……ホントだ……どうしよゥ……」

 リンダちゃんの顔から血の気が引き、おびえるように肩が震え始める。普段は陽気な彼女が何かをおそれる様子は、逆に新鮮でかわいらしい。

「大丈夫だよ、リンダちゃん。落ち着いて……リンダちゃんのおっぱいは初めて、つまり、パイズリヴァージンなんだよ」

「ァ……ハィ……ワタシは、パイズリ、ヴァージン……」

「つまり、リンダちゃんは僕にそのおっぱいを……パイズリヴァージンを捧げればいいんだよ」

 リンダちゃんの震えが止まり、強ばっていた表情がゆるんで、安堵の色が浮かぶ。

「ハィ……ワタシ、大好きな小野村クンに……パイズリ、ヴァージンを、捧げル……」

 僕は、深く満足してうなずいた。これで、全校男子の羨望の的であるリンダちゃんの双乳は僕のモノだ。後は、最後の仕上げを施すだけ……

「そのとおりだよ、リンダちゃん。あなたは、大好きな僕に告白するために、この小会議室に来た。いいかな?」

「……ハィ……大好きな、小野村クンに……告白すル……」

「うんうん。告白したら、パイズリヴァージンを捧げるのを忘れないようにね」

「……ハィ……パイズリヴァージン、小野村クンに、捧げル……」

「そうしたら、必ず告白は成功するからね……さぁ、僕が三つ数えて手を叩いたら、リンダちゃんは目を覚まします。そして、僕の言ったとおりに行動する……いち……にい……さん!」

 僕は、リンダちゃんの正面で両手をぱんっ、と鳴らす。とたんにリンダちゃんがびくっと背筋を伸ばし、青い瞳に生気が戻る。リンダちゃんは、呆然とした感じで周囲を見回したが、僕と目が合うと顔にはにかむような笑顔を浮かべる。

「ウフフ……ネェ、小野村クン。何で、この部屋に来てもらったか、わかル?」

 リンダちゃんはゆっくりと立ち上がると、机を回り込みながら、僕が座る席まで歩み寄る。

「えっ。なんのこと? まったく見当がつかないよ……」

 僕はとぼけたフリをする。と、リンダちゃんが、いきなり僕に抱きついてくる。次の瞬間には僕の唇は、リンダちゃんの唇によって奪い去られていた。情熱的に唇を重ねる、リンダちゃんのキス。しばらくしてリンダちゃんの顔が離れ、僕のファーストキスが終わり、リンダちゃんは顔を上げる。額にかかったウェーブの金髪を指でどけながら、潤んだ瞳で僕のことを見下ろした。

「ワタシ……小野村クンのこと、大好きなノ……これ、告白なんだヨ? ワタシ、小野村クンの恋人になりたイ……」

 愛おしげに僕を見つめるリンダちゃんの瞳に、どこか不安に緊張するような口元。リンダちゃんの恋する乙女そのものな姿に僕は感動する。

「もちろんだよ! リンダちゃんみたいな女の子、カノジョにできるなんて、幸せだよ!!」

「ホント!? 嬉しイ! ありがとウ!!」

 僕の作りモノな返答にリンダちゃんは感激し、再び僕に抱きついてくる。今度は、頬に激しいキスの雨を降らしてきた。

「ウフフ……恋人になったんだから、これからはファーストネームで……賢チャンって呼ぶネ!」

「でも、みんなの前ではダメだよ? ほかの男子に嫉妬されちゃうからね」

「ウン、気をつけるヨ!」

 僕とリンダちゃんが、まるでバカップルのごとくいちゃついている中、ふと視線を逸らす。部屋の隅にいた二人……真由は興奮した様子で食い入るようにこちらを見つめ、清美ちゃんは頬を赤らめなんだか微妙な表情をしている。

「ネエ、賢チャン……ワタシ、一つだけお願いがあるノ……」

 よそ見をしていた僕に、リンダちゃんがささやいてきた。リンダちゃんは顔を離すと、一度立ち上がる。いたずらげな笑みを浮かべて、胸元に手を伸ばすと、ブラウスのボタンを一つ一つ外していく。やがて、制服のブラウスがはだけて、黒い下着に包まれた雪のように白い巨大な二つの果実が姿を現す。

「ワタシのオッパイ……ヴァージンなノ。恋人になった証拠に、ワタシのパイズリヴァージン……もらって欲しいナ」

 伏し目がちに僕を見つめ、リンダちゃんがおねだりする。本人は大まじめだが、暗示の影響でふしだらなことを口にしていることに、リンダちゃんは気がつく様子もない。待望の、全校男子憧れのミルクタンクが目の前に浮かび、僕の理性ははちきれんばかりになる。リンダちゃんが背中に手を回し、ホックを外そうとする。

「……待って! 待ってください!!」

 突然に制された僕とリンダちゃんは目を丸くして、声の主のほうを見る。視線の先には、顔を朱に染めた清美ちゃんの姿があった。清美ちゃんは動揺したかのようなたどたどしい手つきで、自分のブラウスのボタンを外す。パステルピンクのブラに包まれた清美ちゃんの乳房をさらけ出すと、僕たちのほうに向き直る。清美ちゃんの乳房は、リンダちゃんに比べるといくらか小さいが、ボリュームは十二分に標準以上だし、マシュマロかプリンのような柔らかそうな質感と、乱れのない曲線を描く形状が美しい。

「私のおっぱいも処女なんです……私にも、小野村くんにパイズリヴァージンを捧げさせてください……!!」

 言い終わった瞬間、ただでさえ赤くなった清美ちゃんの顔が耳の先まで沸騰する。

「待ってヨ、清美チャン……パイズリヴァージンは、好きになった人に捧げるものヨ。清美チャンもやりたいってことは……私が賢チャンの恋人になっちゃ、ダメってこト?」

 リンダちゃんは、ゆっくりと、それでいて戸惑ったように清美ちゃんに言い返す。

「そんな……二人の邪魔をするつもりはないんです……ただ、私も混ぜて欲しいだけで……」

 清美ちゃんはうつむいて、申し訳なさそうに言った。リンダちゃんも困った表情で、僕の顔をのぞき込んでくる。

 清美ちゃんの予想外の行動に、僕は戸惑う。清美ちゃんにしてみれば、僕が刷り込んだ欲望に忠実に行動しただけかもしれない。ただ、その影響でリンダちゃんまでも予想外の行動をとったら……最悪、催眠が解けてしまったら、と思うと背筋が冷える。

「ふ、二人ともカノジョにできたらいいのに……」

 僕は慌てて、口をふさいだ。しまった。思わず本音がこぼれ落ちてしまった。恐る恐るリンダちゃんのほうを見る。リンダちゃんは、意外なことに、ほっと安心したかのような表情を浮かべていた。

「なぁんダ……じゃあ、簡単だネ! 清美チャン、こっち来テ?」

「あ、はい……」

 リンダちゃんの明るい呼びかけに応じて、清美ちゃんも僕のそばに歩み寄る。二人は僕の左右から挟み込むような位置をとると、ひざ立ちになる。

「あ、あのリンダちゃん……?」

 僕がびくびくしながら尋ねると、リンダちゃんは一瞬だけきょとんとして、微笑む。

「ウフフ……ワタシ、賢チャンのこと好きすぎるから、賢チャンの言うこと、何でも聞いちゃうノ……それにしても、二人もカノジョが欲しいなんテ……賢チャンの欲張りィ」

 リンダちゃんは、舌を出してウィンクする。僕が、リンダちゃんの色目に意識をとられているうちに、清美ちゃんとリンダちゃんは背に手を伸ばしてブラのホックをはずす。ピンクと黒のブラジャーが脱ぎ捨てられて、二人の豊満な乳房が露わになる。文字通りけた違いのボリュームの乳肉に、やや大きめで赤みがかったリンダちゃんのミルクタンクが姿を現す。形が整い、ツンととがったピンク色の乳首が上を向く清美ちゃんもバストも負けてはいない。清美ちゃんとリンダちゃんは、どちらからと言うこともなく、僕の股間に指をはわせた。チャックを下ろし、下着の中でパンパンに張りつめていた肉の欲棒を解き放つ。

「スゴォイ……賢チャンのココは、もう我慢できなくなっているみたイ」

「あぁ……これが小野村くんの……こんな間近で見られるなんて……」

 清美ちゃんとリンダちゃんは欲望に待に震える僕の男根を、僕は二人の美少女が持つ四つの乳房をうっとりと見つめる。次の瞬間、特大のマシュマロがお互いを押し付け合って、僕の肉棒をうずめこむ。

「……ッ!!」

 僕は思わず、声にならないうめきを上げる。牡の性欲の象徴を母性のシンボルともいえる白い乳肉に呑み込まれて身悶える僕を見上げながら、清美ちゃんとリンダちゃんはそれぞれ逆方向の円を描くように乳房を動かしていく。二人の乳房が、むにゅむにゅと形を歪ませる。

「あの……小野村くん、どうですか……気持ち良いですか?」

「ウフフ。清美ちゃん、この顔見てヨ。キモチイイに決まっているじゃなイ……賢チャン、タァップリ、楽しんでネ!」

 二人は、お互いの身体を前傾姿勢にして、さらに乳圧をかけてくる。ランダムな円運動は、絹のような感触で僕の肉茎を擦り上げる。コリコリになって自己主張する四つの乳首が亀頭にこすれる度に、性感が甘くスパークする。より長く快楽を貪ろうとする本能が射精感をこらえ、陰茎がビクビクと震える動きすら、二人の柔肉と触れ合ってさらなる悦楽となって返ってくる。

「そんな……たっぷり、なんてッ! あ……もう、無理だ……!!」

 初めて味わう淫蕩とした肉欲の昂ぶりに、僕は堪えることはできない。あっけないほどに、放出の欲求が決壊する。そして、僕の絶頂を予期していたかのように、清美ちゃんとリンダちゃんは阿吽の呼吸で、僕の射精孔を乳房でもって覆いふさぐ。僕はミルクプリンのような柔肉の中で、ドクドクと射精をし続けた。

「うぅ……はぁ……」

 長い精の放出が終わり、僕はため息をつく。清美ちゃんとリンダちゃんは、つぶれるほどに強く突き合わせていたお互いのミルクタンクをようやく引き離す。二人の胸の谷間に染み込んだ僕の粘つく白い欲望が、ねっとりとした糸を引いている。

「アァン……賢チャンの、すごく濃くて、熱ィ……そうダ! ワタシ、今夜シャワー浴びるまで、賢チャンの精液を肌につけたままにするネ? この上からブラをつけちゃウ!!」

「あぁ……じゃあ、私もそうします。小野村くんの臭いと体温を、ずっとおっぱいで感じています……」

 嬉しそうに思いつきを語るリンダちゃんに、恥ずかしげな清美ちゃんも追従する。

「あぁん、清美先輩もリンダ先輩もうらやましぃ~! もう少しバストがあったら、私もパイズリしたかったのにぃ……」

 机の向こう側では、真由が恨めしそうな声を上げながら、携帯のカメラで清美ちゃんとリンダちゃんとの情事の様子を一心不乱に撮影していた。

 後始末を追えると、外はもう夕暮れになっていた。精液まみれの胸元を隠した清美ちゃん、リンダちゃんと別れ、僕と真由は帰路につく。学園の女神とも言える二人の乳房が僕の情欲で汚されて、しかも清美ちゃんもリンダちゃんも嬉々として僕の肉欲にまみれたままになっているなんて……考えただけでも、再び興奮の炎が燃え上がりそうだ。

「あぁ……私もパイズリフェラチオしたいなぁ。お兄ちゃんの精液、全部搾り取ってあげるんだから」

 鼻の下を伸ばしきった僕の横で、真由がぼんやりと夕日を眺めながら言う。

「真由。おまえのぺったんこおっぱいじゃ無理だ」

「んもう! お兄ちゃんったら、イジワル言う!!」

 真由が頬を膨らませて起こる様子を、僕はニヤニヤして見つめる。それにしても、あのダブルパイズリの感触は夢のようだった。学園でも指折りの二人の美少女が、僕のために夢中で奉仕してくれるなんて……ただ、何か、一つだけ大事なことを忘れているような気がするんだけど……

「あっ!」

「! どうしたの、お兄ちゃん?」

 僕が素っ頓狂な声を上げると、真由が不思議そうにのぞきこんでくる。

「童貞喪失するの……忘れてた……」

 僕は、最初の目的を今になって思い出し、力なく肩を落とした。

< 続く >

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