サイミン狂想曲 第七話

第七話

「さぁ、麗ちゃん。この振り子を見て……そう、だんだんと目が離せなくなっていく」

 いまだショックに混乱する麗ちゃんの鼻の先に、僕は五円玉振り子をぶら下げて左右に振る。初めは、どうにか目をそらすことができていた彼女も、しつこく振り子運動を見せつけ続ければ、やがて視線が五円玉を追うように左右に動き始める。

「あぁ……ワタクシのカラダが劣るなんて……認めませんわ。西園寺家の、令嬢は……あらゆることで、トップクラスでしてよ……」

 視線は振り子に釘づけになりながら、麗ちゃんは未練がましく自分のプライドにすがっている。もっとも、そのおかげで麗ちゃんに催眠をかける心のスキが生まれたわけだけど。

「さぁ、麗ちゃん。もう僕に危害を加えることを……肉体的、精神的、社会的、全ての意味で、だけれども……やめるんだ。僕に危害を加える気がなくなったら、動くことができる……」

「……危害、加えない……気がなくなれば、動ける……」

 まずは、安全のために麗ちゃんの持つ強い抵抗心をはぎ取っていく。彼女の精神は半トランス状態に入ったようで、視線の焦点がぶれて、抑揚のない言葉の復唱が聞こえる。

「さてと、それじゃあ、麗ちゃんには、僕の金づるになってもらおうかな。カラダには手を出さないから、安心してね?」

「あぁ……待って……お待ちに、なられて……」

 まだ暗示の途中だと言うのに、突然、麗ちゃんがふらりとパイプイスから立ち上がる。催眠が解けたのか? まさか、初めからかかったフリをしていたとか? 僕は思わず身構える。

「危害は、加えませんわ……あぁ、だから、だから……」

 よく見れば、麗ちゃんの目の意志の光は力が弱く、受け応えの反応も鈍い。明らかに、トランス状態の様子だ。それでも動けるなんて、麗ちゃんの意志力は驚異的と言わざる得ない。ただ、「危害を加えるな」の暗示は効いているようだ。

「麗ちゃん、いったい何をするつもりなの?」

「見て……頂きたいんですの……」

 麗ちゃんは、振り子から視線をそらせないよう首だけこちらに曲げたまま、僕に背を向ける。僕はトランス状態を維持させるために振り子を揺らし続けながら、麗ちゃんの様子を見守る。彼女は、もどかしそうに手を動かし、後ろ手でスカートの裾を握る。そのまま、ゆっくりとまくりあげる。

「お願い……ご覧になって……」

 華奢な太股の根元に、繊細なレース刺しゅうのほどこされたパステルイエローのショーツに包まれた麗ちゃんのヒップが姿を現す。僕は、息を呑んだ。

 麗ちゃんのお尻は、重力に囚われない、真円の弧のような曲線を描いている。まるで二つの巨大な真珠と見紛うような球体が彼女の臀部を構築している。黄金比を描く形状が、吸い込まれるような質感が、白い肌の玉のような色合いが、見たことのない芸術的なまでのヒップを形成していた。

「いかが……? ワタクシ、お尻には自信がありましてよ……」

「うん……驚いたよ。麗ちゃんのヒップ、すごくキレイだよ。でも、なんでこんなことしたの?」

 僕は麗ちゃんのスカートの内側に隠されていた秘密の宝玉に見とれながら、できるだけ優しく彼女に尋ねる。

「それは……取り消して、頂きたかったから……『私の身体が貧相だ』って発言……撤回して、頂ける……?」

 少しばかり泣き出しそうな声で、麗ちゃんが答える。僕は、内心で邪笑する。麗ちゃんのプライドが、僕の望む方向へと転がり落ちてきてくれるとは嬉しい誤算だ。

「わかったよ、麗ちゃん。撤回する……でも、こんな魅力的なお尻を僕に見せつけたってことは……どうなるか、わかっているよね?」

「あ……甘んじて、受け入れますわ……」

 暗示をかけるまでもなく、僕の求める場所まで麗ちゃんが降りてきてくれたことを確信した。後は、逃げられないように身と心を捕まえてしまうだけ……

「リンダちゃん。僕の代わりに、振り子を持っていて」

「ウン。わかったヨ」

 うなずき返すリンダちゃんに振り子を手渡し、麗ちゃんの正面に回ってもらう。麗ちゃんのには、パイプイスの背もたれに手をかけさせ、お尻を突き出す体勢にする。

「さぁ、麗ちゃん。リンダちゃんの振り子を見るんだ」

「ぁ……あぁ……」

 麗ちゃんがリンダちゃんの振り子を見つめて、切なげな吐息をこぼす。何かを恐れながら、同時に期待しているかのような姿だ。

「麗ちゃん。あなたのお尻は、とても敏感な性感帯なんだ。誰かに触れると、どうしようもなく気持ちよくなってしまう……さらに、麗ちゃんはお尻を触られるのが大好きな、ヘンタイさんになる……」

 僕は暗示の言葉をささやきながら、麗ちゃんのヒップの曲面に手のひらを這わせる。

「ふっ……あぁん……ッ!」

 麗ちゃんが、猫のような可愛らしい艶声をこぼす。高飛車な態度との落差が愛おしい。それ以上に、麗ちゃんのヒップの感触が僕の脳髄を蕩かしていく。一度、手のひらが吸いつくと磁石か何かで吸い寄せられているのではないかと思うくらいに手を離すことが難しくなる。それでいて、指を喰い込ませようと力を込めると強い弾力で押し返される。円を描くように手を動かすと、手のひら全体に魅惑的な感触は広がっていく。一見、相反するような魅力が、この肉の宝玉からあふれていることを思い知らされる。僕は、思わず我を忘れて麗ちゃんのお尻の感触に没頭したくなる。それだけの引力が、眼前の球体にはある。

「麗ちゃん……麗ちゃんが、お尻で僕のことを感じるたびに、麗ちゃんはどんどんヘンタイになって、どんどん僕に逆らえなくなっていく……」

「ふぁ……ワタクシ、お尻、ヘンタイ、逆らえない……」

 麗ちゃんが暗示の言葉を復唱するのを確認して、僕は自分の願望を解放する。思い切って両手を離し、麗ちゃんの芸術的な臀部へ顔をうずめた。頬ずりするように顔面を密着させ、しっとりとしてきめ細かい肌触りと例えようのない一品モノの弾力を堪能する。そんなヒップを包み込む、おそらく高級品であろうショーツの触り心地が混ざるのも、具合が良い。麗ちゃんが切なげにあえぐのも無視して、しばしの間、僕は秘宝の感触に埋没した。

「ん……ふぅ」

 時がたつのも忘れていた僕がようやく顔を上げると、麗ちゃんが肩越しに僕のほうを振り返りながら、感極まって泣き出しそうな顔を向けている。

「麗ちゃん、ダメじゃないか。振り子から目をそらしちゃ」

「あぅぅ、申し訳ありません……でも、ワタクシ……もう……」

 麗ちゃんが困惑した表情を浮かべる。僕は彼女の頬に手を当てて、顔をリンダちゃんが揺らす振り子のほうに向け直す。

「さ、麗ちゃん。何を望んでいるのか、自分の口で言ってみて」

 僕が暗示として命令する。麗ちゃんは、酸欠の金魚のように数度、口をぱくぱくさせると言葉を紡ぎ始める。

「わ、ワタクシ……西園寺家の、令嬢に相応しくないというのに、あぁ……お尻で、手篭めにされたい、なんて……ヘンタイ的な考えが、頭を離れませんの……んんッ」

 麗ちゃんが矛盾する心情に引き裂かれ、羞恥に顔をゆがめる。僕は、彼女の心を僕の望む方向に解き放たせるべく、耳元へと唇を寄せる。

「ねえ、麗ちゃん。西園寺家の御令嬢は、あらゆる分野でトップクラスを目指すんだよね?」

「あふぅ……そうですわ……その通りでしてよ……」

「それなら……ヘンタイの方面でも、トップクラスを目指せばいいんじゃないの?」

 麗ちゃんが、「あっ」と声をもらした。一つの目標を見出し、引き裂かれた意志が統一されて、一つの方向を示し始める。

「そうですわ……ワタクシ、あらゆる方面で……ヘンタイにおいても、トップクラスを目指しましてよ……」

 誰に言うとでもなく、麗ちゃんが宣言した。口元に、彼女特有の自信と誇りに満ちた笑みが戻ってくる。

「ねえ……お願いがありますの。ワタクシのお尻……とびっきり、ヘンタイな方法で……手篭めにして下さらないかしら?」

 視線は振り子を向いたまま、淑女の声で麗ちゃんは僕に言った。

「うへへ……もちろんだよ。ヘンタイな方法なら、僕の得意分野だからね!」

 僕は麗ちゃんのショーツを乱暴に脱ぎ下ろさせると、再度、麗ちゃんのヒップに位置する肉の丘陵を鷲掴みにする。それだけで、麗ちゃんはあえぐが、さらに僕は尻肉を左右に押し開く。むっちりとした質感とともに、僕の目前に小ぶりな尻の中心、まるで可憐な花のつぼみのように控え目なアヌスが姿を現す。

「麗ちゃん、下準備するからね。振り子を良く見て……あなたのお尻の穴は、だんだんと弛緩していく……筋肉がゆるんでいく……異物を受け入れる、準備ができていく……」

「あぁ……まさか……まさか……!?」

 震える麗ちゃんの声は、それでいて何かを期待し、渇望するかのような心情がこもっている。もはや、彼女の肉体も催眠に敏感になっていた。暗示を言葉を理解すると同時に、麗ちゃんの尻の真ん中に鎮座する菊門がひくひくと身を震え始める。外側からの蹂躙を受け入れるために閉ざされた場所の封を緩め、開こうとしている。麗ちゃんの肉体の順応を確かめて、僕はズボンを下ろし、ブリーフも脱ぎ捨てる。股間はすでにいきり立って、臨戦状態だ。先走りの液がわずかにあふれた男根の先端を、麗ちゃんの臀部の中心地に接触させる。

「こんな……こんなところを、されたら……ワタクシ……ワタクシッ!!」

 気の昂ぶりからか、激しく身をよじる麗ちゃんの腰をがっしりと掴み、動きを止める。

「もう、暴れないでよ。麗ちゃん……麗ちゃんのお尻は、とっても気持ち良くなれる性感帯なんだよね……ということは、そのヒップの真ん中にあるアヌスは……一番、気持ち良くなれる場所の中心部、ってことだよね……」

「……あ……あぁ……」

 動きが大人しくなった。振り子から目をそらせない麗ちゃんが、白痴のような表情で口元からは涎を垂らしている。僕は彼女の腰をおさえる手に力をこめて、少しずつ、ゆっくりと肉棒を突き出していく。ずにゅり、とした奇怪な感触が淫茎を包み込む。暗示が功を奏したのか、濡れていないのに抵抗もなく、滑り込むように直腸へと男根が呑み込まれる。一度、内部へと入り込むと今度は想像以上の締め付けが襲う。文字通り、引きちぎられるんじゃないか、というくらいの菊門の洗礼は、それでいて痛みよりも悦楽を産みださせる。

「ん……はぁ……麗ちゃんッ! これが、アナルセックスだよ……ッ!?」

 僕は息も絶え絶えになりながら腰を突き出す。剛直が前後運動をするたび、尻穴の肉の輪が淫茎をしごくために堪らない。

「あ、ふぅ……これが……ヘンタイの、セックス……こんなにも……キモチイイなんてぇ!!」

 麗ちゃんが、ゴージャスな巻き髪を振り乱して狂乱する。一層、アヌスの締め付けがきつくなる。僕の肉棒が、麗ちゃんの尻穴に捕らえられ、二度と抜けなくなるんじゃないかと思うほどだ。

「あッ! んんッ!! 何か……何かが、きますわッ!!?」

「はっ、はっ……あぁ、麗ちゃんの僕も、イクぅ!!」

 僕と麗ちゃんは、同時に身をのけぞらせる。排泄するためのはずの孔に、逆に濁液を注ぎ込む。麗ちゃんはどうにか体勢を保ちつつも、身体が力なく震えて、息も荒い。パイプイスの座席と、部室の床の上に、彼女の秘所から滴り落ちた愛液が水たまりを作っているのが見てとれる。射精を終えた僕は、思いっきり腰を引く。ちゅぽん、という感触とともにどうにかペニスを引き抜くことができた。牡の欲望を受け入れてしまった、ヒップの中心に位置するつぼみは震え、白い精液をわずかにあふれさせていた。

 絶頂を極めたというのに、僕の男根はそそり立ったままだった。お尻を丸出しにしながら精魂尽き果てたという様子の麗ちゃんを見下ろしながら、自分の制服のポケットをまさぐった。コンドームを見つけ出すと、もどかしい手つきで獣欲をたたえるペニスに装着する。

「……麗ちゃんッ」

 僕は、麗ちゃんの肢体を無理やり抱きかかえる。麗ちゃんには、抵抗する力すらない。華奢な身体は、思ったよりもずっと軽い。僕は、隣のパイプイスに腰をおろし、自分の腰の上に麗ちゃんの身体をまたがらせる。僕と麗ちゃんは、イスの上で向かい合うような格好になる。

 僕の中で何かのスイッチが入ってしまって、止まらない。僕は、麗ちゃん身体を浮かせ、上を向くペニスと位置を合わせると、支えを手放す。重力に身を任せた彼女の身体が、秘所に僕の肉棒を呑み込んだまま降下する。

「あぅ……ッ!!」

 麗ちゃんが、一瞬だけ鋭い悲鳴を上げる。真由や清美ちゃんと交わった時のような抵抗があった。赤い筋が彼女の太股を伝う。予想はしていたが、麗ちゃんも処女だった。本来なら絶対に手を出せないだろう深窓の令嬢を相手に、処女どころか裏処女までも奪った事実が、僕の中の黒い征服欲を充足させていく。

「麗ちゃん……! 麗ちゃん……ッ!!」

 僕は目の前で翻弄されるままの少女の名を繰り返しながら、激しく腰を突き上げる。

「あぅ、ふっ! ねぇ……お願い……前だけじゃなくて、後ろも……」

 麗ちゃんにねだられるまま、僕は彼女のお尻に手を回す。手探りで排泄孔を探し当てると、直腸へ指を差しこんでいく。一本、二本と、麗ちゃんのアヌスは人差し指を難なく飲み込む。僕は、彼女の粘膜に先ほど注ぎ込んだ僕の体液を擦りこもうと指をうごめかす。連動するかのように、麗ちゃんの前の膣壁が急に締りを増した。きゅう、と責め立てる膣圧は、真由の時より強いかもわからない。僕の耳元で、彼女の呼吸が荒くなる。

「また……ワタクシ、また……ッ!!!」

「僕もだ……また、イクッ!!」

 僕の視界が白く染まる。麗ちゃんのしなやかな指が僕の背に食い込む。抱き合ったまま、僕と麗ちゃんは、再び絶頂の高みへと急上昇していった。

 僕は、優しく頬をはたく感触で意識を取り戻す。どうやら、激しすぎるエクスタシーで意識が飛んでいたらしい。

「あら、目を覚まされましたわ」

「賢チャン、ダイジョウブ?」

 目の前には、横から心配そうにのぞくリンダちゃんと、すっと直立して僕を見下ろす麗ちゃんの姿があった。麗ちゃんは瞳に宿る強い意志の光と、凛とした雰囲気を取り戻している。ただ、僕に対する敵意は全く感じない。それどころか、微笑みをたたえた唇からは、わずかながら媚びとへつらいを浮かべたような気配すら漂ってくる。

「ねえ、ワタクシ、お願いがありますの。小野村賢哉さま……」

 麗ちゃんが、かすかに頬を赤らめながら、僕のことを『さま』付で呼ぶ。

「お願いって……どういう……」

 僕はまだぼんやりする頭で、聞き返す。麗ちゃんが、クスリと微笑んだ。

「ワタクシ、西園寺家の令嬢として……ヘンタイという分野でも、トップクラスを目指すことにいたしましたの……そのためのコーチを賢哉さまにお願いいたしますわ……リンダさんにも相談しましたけれど、考え付く限りで最高の人選と思いましてよ?」

 麗ちゃんの言葉を理解するのに、少し時間がかかった。意味を呑み込んでしまうと、顔にだらしない笑みが勝手に浮かんでしまう。

「そういうことなら、喜んでやらせてもらうけど……でも、麗ちゃんには、コーチである僕の言うことには絶対服従してもらわないといけないよ」

「えぇ、もちろんですわ。当然、コーチとしての謝礼も、言い値をお支払いしましてよ? ただし、その代わり……」

 麗ちゃんが満足したようにうなずくと、僕を顔を覗きこむ。

「西園寺家の求めるレベルは、常にトップクラスでしてよ?」

 そう言った麗ちゃんは、僕の唇にキスを施してくる。

 思わぬ収穫として麗ちゃんを手に入れた僕は、五人のカノジョたちをローテーションで楽しむことにした。もちろん、防犯カメラ設置の話はお流れになった。チアリーディング部と女子テニス部の着替え映像も手に入り、生徒会長を始めとした取引相手に好評で、評判は鰻登りとなっていった。

< 続く >

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