サイミン狂想曲 エピローグ

エピローグ

 あれから、僕と理香子先生は少しばかり話し合った。その結果、全校生徒と教師陣を僕が催眠をかける前の状態に戻すことにした。とはいっても、全員を同時に元通りにしなければ余計な騒ぎが起こることになる。おまけに、生徒会長が、自分の命令以外では動かないよう学生たちに暗示をかけていたため、さらに面倒なことになった。結局、僕と理香子先生が数人ずつに暗示をかけ直して体育館に誘導し、全員の移動が済んだ後に催眠解除用の動画を急ごしらえで作成、スクリーンに流すことで、どうにか目的を達成した。一日がかりの大仕事だった。

 門倉生徒会長にも、全てが終わった後、あらためて催眠をかけ直した。『催眠術』のことを信じないように、僕との盗撮写真がらみの取引のことも全部忘れるように、あと……余計なお世話かもしれないけれど、前向きに次の恋をできるようにと暗示をかけておいた。思い上がりかもしれないし、ベストではないかもしれないけれど、ベターではあると思う。

 こうして、僕と催眠術の狂乱の日々は過ぎ去り、新しい日常生活が始まった。

 ダンスホールが開けるほどの広さの部屋、高級感あふれる調度品、枕が二つ置かれたキングサイズのベッド、大きすぎながらも部屋の一部分にすぎない広大なテーブルの上には、むせ返るほどに満開の生花と、キンキンに冷えたシャンパンの入ったワインクーラーが置かれている。壁一面のガラス窓からは、地上数十階の高さから街を一望することができる。

 西園寺グループ傘下の高級ホテル。そこの最上階スィートルームに僕はいた。この部屋についてすぐにシャワーを浴びバスローブをまとった僕は、柔らかすぎるソファに半分以上体を沈め、ホームシアター並の大きさのテレビ画面で手持無沙汰にワイドショーを見ている。今日の待ち合わせとデートの場所を相談したら、麗ちゃんが電話一本で予約を入れてくれたのだ。

 生徒会長と決着をつけたあの日、僕と、真由、清美ちゃん、リンダちゃん、菜々子ちゃん、麗ちゃん、それに理香子先生も加えて、今後の身の処し方を協議した。その結果、学校を元に戻すこと、盗撮行為から手を洗うことを言い渡され、半ば強引に六人の彼女の共有彼氏として扱われることになったのだ。

 現在時刻は、午後二時を回ったくらい。今日のスケジュールは、理香子先生とのデート+αで、ホテルのレストランで二人の昼食は済ませてある。理香子先生は、催眠術と口車を組み合わせて、強引に休暇を取り、合わせて僕も自主的に今日の授業を欠席することになった。

「お待たせ、小野村くん」

 背後から、声をかけられる。僕と入れ替わりでシャワーを浴びていた理香子先生だ。ソファーから振り返ると、僕とおそろいのバスローブ姿の先生が見える。ただ、頭には黒いウサギ耳付きのカチューシャをつけていて、バスローブの間からわずかに見えるふくらはぎは色気を引き立てる網タイツに包まれている。足先にはヒールが高く黒いエナメルのハイヒールだ。

「中身が気になる?」

 舐めるように視姦してしまった僕の視線に気付いてか、先生がわずかに舌を出してイタズラ気に笑う。つられるように、僕はうなずく。

「うふっ……」

 先生はバスローブをはだけて、足下に落とす。先生を彩っていたのは、手首のカフス、喉元の襟付き蝶ネクタイ、ぴったりと吸いついて身体を覆うバニースーツだった。先生のスマートなラインに張り付くハイレグ衣装は、本来一番隠すべき股間の部分の布がはぎ取られ、女性器が丸見えになっている。理香子先生の秘唇から、滴るように愛液があふれ出し、お風呂上がりだというのに網タイツごと太股を汚している。その太股もまた切なげにモジモジとすり合わせているのが見てとれる。先生が、これ見よがしに腰を振りながら、ソファに近づいてきた。近づけば、薄桃色に染まっている先生の頬が良く見える。

「はい、小野村くん。これ」

 先生は、僕に細長い何かを手渡す。ピンク色のリモコンのようなもので、ダイヤルが一つだけついている。

「なんですか、これ?」

 僕が尋ねても、返事はない。先生は僕に背を向けると、思いっきりお尻を突き出してくる。開きかけた肉のスリットの上に、リンゴのように丸いヒップを見せつけられて、その真ん中にちょこんと乗っかったウサギの尻尾……それが微細に振動している。

「このバニーコスチュームね、前だけじゃなくて後にも穴が開けてあるの……んふ、折角だから、尻尾型のバイブを挿れておいたわ。いま渡したのが、操作用のリモコンね……振動は最弱にしてあるんだけど、あぁ……車やレストランでイスに座るたびに、ぐりぐりってなって、んッ、大変だったんだからぁ……」

 先生が悩ましげなため息をつきながら、肩越しに僕の方を見る。

「理香子先生……朝から、ずっと付けてたんですか……?」

「えぇ、そうよ……当然でしょ? 小野村くん好みのオンナになるために、ね」

 先生は背筋を伸ばすと、お尻を左右に揺らしながら部屋を横切る。やがて、僕の方に向き直ると、ベッドの端に腰を下ろす。ねだるように僕の瞳を捉えながら、両手をませに差し出している。

「ねぇ、小野村くん……しましょう。みんなが来る前に……ね?」

 僕は、ソファから立ち上がると、誘引されるように先生のもとへと歩く。途中でバスローブを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になる。隣り合うようにベッドの端に座ると、どちらからともなく肩を寄せる。ほぼ同時にお互いの顔を見合わせると、意志が通じ合っているかのように二人の唇を突き出す。重なり合った先生の唇はゼリーのように柔らかく、それでいて弾力がある。僕は、唇の肉が触れある感覚に満足していたが、やがて先生のほうから舌を伸ばし、僕の口唇をくすぐってくる。僕は先生の貪欲なリクエストに応えて、彼女の舌を咥内に招き入れる。舌に舌を絡めてもてなす感触は、蛇の交尾を連想させる。

 お互いの唾液を混ぜ合い、口腔からあふれ出した粘液をシーツの上にこぼしながら、僕たち二人はベッドの上に倒れ込む。海の上のように広いシーツに身を沈めながら、二人の唇が呼吸を求めてようやく離される。

「ぷはっ……り、理香子先生……その、挿れちゃっても、イイですか……?」

「あはぁ……えぇ、もちろん……焦らしちゃ、イヤよ?」

 今度は二人の身体が蛇になったように艶めかしく絡み合う。お互いの性器が、どちらからということもなく結び合い、先生の内側のしなやかなもてなしに僕の陰茎が包まれる。十分なほどにあふれ出した潤滑油が結合部からこぼれ出し、二人の腰がぶつかり合うたびに淫液がベッドに飛び散る。腰を突き出したのはどちらが先なのかもよくわからない。ベッドの上で肌と肌を密着させながら転がり、理香子先生に乗られたかと思うと、僕が先生を組みしいて、また次の瞬間には二人並んで横たわり唇を重ね合う。体位が入れかわるごとに、肉棒の異なる部分が先生の肉壁とこすれて、快感の波が徐々に高まっていく。

「小野村くん、ひくひくってなっているよ? 良かったら……私の中で、イッてもいいのよ……」

 僕の昂ぶりを察知した理香子先生が、強く抱きしめてくる。

「ありがと、先生。でも……理香子先生にも、一緒にイッて欲しい……」

 僕は握りっぱなしだったバイブのリモコンのダイヤルを捻る。最弱だった振動を、一気に最強にした。

「あぁッ! いやぁ、いきなり強すぎ……んんッ!!」

 先生が背筋をのけぞらせて身体を離そうとするけれども、今度は僕が抱きしめてそれを許さない。先生の身体が、ビクビクと激しくけいれんする。

「あぁ、イク……! イキながら、またイクぅ!! 小野村くんに……前と後、両方犯されながら、連続でイッちゃうぅ!!!」

 先生の蜜壺から堰を切ったように淫蜜があふれ出て、同時に膣壁がきゅぅ、と収縮する。僕は、全身のコントロールを流れに委ねる。心地よい満足感とともに、先生の奥深くを僕の色に染め上げる濁液を身体が求めるままに放出していった。

「あ、あぅ……小野村、くん、気持ちいい……?」

「あぁ……はい……すごく、良かったです。理香子先生……」

 いまだ身を震えさせる理香子先生の身体を抱きしめ、髪を撫でながら僕は耳元にささやく。

───ガチャリ。

 その時、ロックが掛かっているはずの扉を押し開く音が聞こえる。理香子先生は驚いて身を起こし、僕は慌ててシーツで下半身を隠す。

「……お待たせ~!!」

 五人分の足音ともに、重なり合った少女の声が広い部屋に響く。どたどたと入って来たのは、真由、清美ちゃん、リンダちゃん、菜々子ちゃん、麗ちゃん。皆、制服に学校指定のカバンを持っている。下校して、一直線にホテルに来たらしい。部屋の鍵は、マスターキーを麗ちゃんが握っていた。

「先生、小野村くんとのデートは如何でした?」

 清美ちゃんが柔和な笑顔を浮かべて、理香子先生に尋ねる。

「えぇ、とっても楽しんでいるわ……これも、今日の午前のスケジュールをみんなが譲ってくれたおかげね」

 先生が、清美ちゃんにウィンクを返す。

「じゃあ、先生! もう一ラウンド、今度は私たちも混ぜて下さい!!」

 身を乗り出してきたの菜々子ちゃんだ。僕が激しい交わりの虚脱感でボーっとしている、先に先生のほうがうなずいてしまう。

「もちろんよ……小野村くんのココは、まだ元気みたいだしね」

 結合が解けながらも、まだ力強く隆起したままの肉棒を先生は軽く指ではじく。目の前の美少女たちの視線が、一斉にペニスに注がれる。

「じゃあ、じゃあ! 皆、一緒にやろうよ、もちろん先生も一緒に!!」

 期待に目を輝かす真由が、喜び勇む。

「もちろん、ワタクシたちは準備万端でしてよ……ねぇ、リンダさん?」

「ウフフ。もちろん、その通りヨ……麗チャン、それに賢哉チャン!」

 麗ちゃんとリンダちゃんが、目配せしながらうなずき合う。五人の美少女たちは満面の笑顔で、一斉に制服を脱ぎ始める。五人分のベスト、ブラウス、スカートが床に落ちると、制服の下から全く別の衣装が姿を現す。清美ちゃんのフリルとリボン付き魔法少女風ビキニ、リンダちゃんのマイクロブラとマイクロビキニのセクシーチアコスチューム、麗ちゃんのOバックセパレートタイプボディコンドレス。真由はニーソックとロング手袋にピチピチのスクール水着、菜々子ちゃんはガーターストッキングとハイレグ衣装で、真由はエプロンドレスを、菜々子ちゃんは燕尾服をカバンから取り出し、身につける。

 瞬く間に、僕だけのセクシーコスチュームへと姿を変えた五人は、すぐさま僕の身体に群がってくる。全裸のままベッドの上に仰向けにさせられた僕は、五人の美少女と一人の美女に思い思いにのしかかられる。

「賢哉チャ~ン……ワタシは、賢哉チャンも大好きなパイズリをしてあげるネ!」

「あッ! リンダさん、待って!! 私も、賢哉くんにパイズリするッ!!」

「あ、あの。菜々子ちゃん、リンダさん……私も、混ぜて……三人で、トリプルパイズリにしませんか?」

 清美ちゃん、リンダちゃん、菜々子ちゃんの三人は、自分の胸元をかろうじて隠している薄布を自らはぎ取って、乳房を露わにする。大きさ、弾力、形の良さ、それぞれの魅力を持った計六つのミルクタンクが、天井を向くペニスを包囲する。三人は目配せを交わし、うなずき合うと、一斉に胸元の白い果実を突き出す。ビーチボールよりも柔らかく、お互いの形をつぶし合い、変形しながら密着して、一体となって僕の肉茎を包み込む。

「んッ……賢哉さん、如何ですか? 私たちの……共同ご奉仕……」

「賢哉チャンのココ、ビクビクって言ってるヨ? 気持ち良さそうだネ……」

「あはぁ……乳首と、賢哉くんのがこすれて……私も、気持ち良くなっちゃう……」

 一度絶頂して敏感になっている僕のペニスは、三人分の乳肉で造り上げられた溶鉱炉でトロトロに煮蕩かされたようになる。堪らない官能に思わず顔をのけぞらせると、僕を見下ろす真由と麗ちゃんと理香子先生の三人と目があった。三人とも僕を見下ろしながら、もの欲しげに瞳を潤ませている。

「麗さん、理香子先生……お兄ちゃんのペニス、もう満員みたい……」

「そうですわね、真由さん。でしたら……ワタクシたちは、上のほうを責めてみませんこと?」

「あら、それはいいアイデアね。西園寺さん」

 言うや否や、理香子先生が僕の唇に顔を重ねる。半開きになった口に上からふたをし、さらに僕が口を閉じることを拒む。重力に従って、理香子先生のよだれがトロトロと僕の口の中に流し込まれ、喉を通って胃に落ちていく。

「ぷはぁ……ふふ、小野村くんとのキス。何回やっても飽きないわ……」

「さぁ、賢哉さま……休む暇はありませんことよ? たっぷりご奉仕させていただかねば、ワタクシたちも収まりがつきませんわ」

「うふふ! 覚悟してね、お兄ちゃん!!」

 間髪空けずに、麗ちゃんが唇を重ねてくる。理香子先生がやっていたのと同じ要領で、唾液が注がれる。麗ちゃんの唾は、先生よりもさらっとしていて、量が多い。あっという間に、飲み込む勢いを越えて咥内を満たしていく。口角から飲み切れなかった分が垂れ落ちて、呼吸困難になるのに、身体はふわふわと宙を浮くように心地よい。

「次は、私!!」

 麗ちゃんの顔が離れると、息継ぎする間も与えずに真由の唇が降りてくる。真由の唾液は、驚くほどねっとりとしていて口の中の粘膜に絡みつくようだ。ある程度の唾液を流し込むと、巧みな舌の動きで僕の舌を掴まえて、しゃぶりはじめる。兄妹の唇の隙間から、じゅるじゅると下品でいやらしい音が響く。真由は、僕の舌を男根に見立て、一心不乱の口淫奉仕に耽る。

「見て? 賢哉くんも、限界みたいよ……先走りがあふれて、ふふ、もう辛そう」

「それじゃあ、そろそろ……賢哉チャンに、気持ち良くなってもらおうヨ?」

「そうですね……賢哉さん、たぁっぷり、満足するまで、射精して下さいね?」

 僕の下半身に張り付いている清美ちゃんとリンダちゃんと菜々子ちゃんが、前傾して体重をかけてくる。途端に融け合い一体化したミルクタンクの密度が増して、高まる乳圧に男根が押しつぶされる。コリコリと固くなった六個の乳首が、僕の肉茎の血管と神経にこすれて刺激する。併せて、上半身では真由がパイズリする三人に合わせるように口内を吸引し始め、麗ちゃんと理香子先生は僕の胸板の乳首にキスし、舐めまわす。

(……もう、ダメだッ!!)

 六人同時の奉仕は、悦楽も六倍どころか、相乗効果となって何十倍にも膨れ上がる。射精感を押さえつける信号が肉欲に屈して、ついに輸精管が解放される。水風船が爆発するように濁液が射精孔から飛び散る。煮詰まり、半分固形になってしまったような濃さだ。

「……きゃあッ!?」

 清美ちゃん、リンダちゃん、菜々子ちゃんの甲高い声が、同時に響く。ようやく、真由の舌責めからも解放されて、下半身の三人を見ると、彼女たちは顔面で僕の精液を受け止めていた。

「あぁ……もう! これから、お出かけの予定があるのにッ!!」

「でも、菜々子チャン……賢哉チャンの臭いが濃くって……ステキじゃなイ?」

「ねえ、リンダさん、菜々子ちゃん……三人でなめっこして、顔を綺麗にしましょう?」

 双乳奉仕に没頭していた三人は、今度はちらっと僕に流し目を送り、見せつけるようにお互いの顔にこびりついた精液を舐めはじめる。舌が顔を這いまわり、唾液と精液が混じり合ういやらしい水音が聞こえてくる。その淫靡な光景に目を奪われ、二度の絶頂で萎えかけた男根が、再びむくむくと膨れ上がる。

「あ~! お兄ちゃんったら、いやらしぃ~!!」

 牡の発情を、妹が目ざとく発見する。真由と麗ちゃんと理香子先生が、淫蕩な笑みを顔に浮かべる。

「ねえ、真由ちゃん、西園寺さん……小野村くんの汚れちゃったペニスは、私たちがお掃除するって言うのはどうかしら?」

「あら、理香子先生。それは、素晴らしいアイデアですわ!」

 僕に唇にキスの雨を降らせた三人が、今度は僕の股間に殺到する。一人は亀頭を口に含み、もう一人は陰茎に舌を這わせ、最後の一人は玉袋の裏を舐めまわす。それをローテーションで循環していき、感触の異なるそれぞれの唾液が性器全体に塗り込まれる。一度は血の気が引いた男性器に、再び欲望が充てんされていく。

「くぁ……また、出るッ!?」

「あ、はぁ……ッ!!」

 三度目の射精はすぐに湧き起る。舌を這わせる三人が、声を合わせて歓喜をこぼす。あきれるほどに、濃さも量も変わらない濁った粘液が飛散して、僕は新たに三人の顔を汚してしまった。

 結局、全員の顔を白濁液で染めてしまった僕は、六人がお互いの顔を舐め合う淫靡なショーを見せつけられてしまった。淫行を終えて、五人の美少女は何事もなかったかのように女子制服を身に付け、一人の美女も清楚なスーツ姿に早変わりする。

「ほら! 小野村くんも、ぼーっとしないで?」

 理香子先生が僕に声をかける。流石にぐったりと疲れていた僕も立たされて、六人がかりであっという間に学校の制服を着せられる。共有彼氏としての彼女たちとのデートは、いったんここまで。今日は、これから僕と彼女たちにとっての大切な用事があるのだ。

 僕らを乗せた西園寺家のリムジンが乗り付けたのは、とある大学キャンパスの正門だった。

「如何かしら、皆さん?」

 皆に先立って車から下りた麗ちゃんが、誇らしげに僕らのほうを仰ぐ。

「うわぁ! すごい、綺麗なキャンパス~!!」

「とっても、立派だネ! 想っていた以上だヨ!!」

 続いて真由とリンダちゃんが、美しいキャンパスに歓声をあげる。学内の建物はどれも手入れが行き届いていて、学生が行き交う通りの敷石から植木に至るまで上品さを感じさせる。構内をリラックスした様子で歩く大学生のお姉さんたちも、身なりが整っていて、品が良い。何人かの女子大生が、遠巻きに僕たちの様子を眺めている。そう……見渡す限り、キャンパス内には女子学生しかいないのだ。

「あれ、賢哉さん……どうしたんですか。どこか、具合でも?」

 皆が車から下りても、どうもイマイチ外に出る決心がつかずにいる僕に清美ちゃんが気がつく。

「う、うん……やっぱり、少し恥ずかしくって……」

 僕は、苦笑いを返す。

「大丈夫だよ、賢哉くん! 私たちが、一緒だって!!」

 清美ちゃんの横から顔を突っ込んできた菜々子ちゃんが、僕の腕を引っ張って無理やり車外へと引きずりだされる。

「うふふ。それじゃあ、皆、小野村くんを囲むようにして行きましょう?」

 理香子先生が言うと、皆が「はい!」と元気よく返事をする。まるで要人警護のように、六人が僕を取り囲む。前に理香子先生と麗ちゃん、左右に清美ちゃんと菜々子ちゃん、背後には真由とリンダちゃんという配置になって、僕たちは整然としたキャンパスを歩きだす。

 皆が大学に関して思い思いの質問をかわし、先頭を歩く麗ちゃんが返答する。この大学の名前は、『西園寺女子大学』。西園寺グループが運営しているという私立の女子大で、由緒正しい御家柄の女子が多く在籍し、偏差値も高い、名実ともにお嬢様大学だ。今日は、進学先の参考に大学の見学をさせてもらうことになっている。僕も、含めて……

 麗ちゃんは当然のようにこの大学に進学する予定で、清美ちゃんも興味を持っている学部があるらしい。理香子先生も交えて進路の相談をしているうちに、五人の女子は全員口をそろえて僕と同じ大学に進学したいと言い始めた。真由も、一年遅れてこの大学を目指すらしい。麗ちゃんは「ワタクシが望めば、どうとでもなりますわ!」と言いだし、理香子先生も「いざとなれば、催眠術を使えばいいのよ」と主張する。結果、男子の僕も、女子大への進学を目指すと言うトンチンカンな状況に追い込まれていた。

 和気あいあいとしている周囲の六人越しに大学構内を眺める。何事かと僕たちを眺める女子大生たちは、なるほど清楚で上品な女性が多い。学校全体にあんなことをした僕を、こんな美人だらけの環境に進めさせようとは、一体みんな何を考えているのか。我慢できるかどうか、試そうとしているのだろうか。それとも、まさか……

「ちょっと、賢哉くん……浮気相手でも物色しているわけ!?」

 僕の肩を突っつきながら、隣の菜々子ちゃんが頬を膨らませる。

「イヤヨ、賢哉チャン! ワタシたちという相手がいながラ!!」

「そうだよ、お兄ちゃん! 私たちは、いつでも準備OKなのに!!」

 背後にいるリンダちゃんがわざとらしく声をあげ、真由が背中に抱きついてくる。

「でも、どうしても、と仰るのなら……事前にワタクシたちに相談して下さること?」

 肩越しに振り返った麗ちゃんが、凛とした声で言う。

「賢哉さん、その……それでも、ずっとご一緒させて下さい……」

 清美ちゃんが、そっと僕の腕に身を寄せてくる。

「小野村くん?」

 戸惑う僕を、理香子先生が振り仰ぐ。

「いままで、振りまわされたお返しに……今度は、私たちがたくさん振りまわしてあげる!」

 大学講堂に取りつけられた時計が鐘を鳴らし、時刻を告げる。僕は、六人の彼女とともに声をあげて笑った。

< 終 >

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