オカルト教師

「今度こそ間違いないだろうな」
「はい……」
「又俺をだまそうとしてみろ。どうなるか、わかってるんだろうな、岡田」

 うう。何て野郎だ。これでも教師か。まるでチンピラみたいに、因縁を吹っ掛けて来やがった。僕はこのサイテーサイアクのオカルト教師鎌田に弱みを握られてしまったことを激しく後悔しながら、精一杯反抗の意を表そうと無言でにらみつけたが、脂ぎったブヨブヨの額にビッショリと浮かんだ汗を見てしまい込み上げて来る生理的な嫌悪感と戦わねばならなかった。

「こっちがお前で、これがお姉ちゃんの毛で間違いないな?」

 ああ。僕は一体何てことをしてしまったんだろう。目の前の「ガマガエル」ことオカルト教師鎌田は、ティッシュに包まれた僕と姉貴の陰毛をニタニタしながら、ためつすがめつしているのだ。鎌田は興奮して鼻息が荒く、至近距離で向かい合わせに座った僕は、生ゴミのようなきつい口臭に辟易としながら、コイツにこんな物を渡してしまった自分に対する嫌悪感で胸が潰れそうだった。

「なあ岡田。こないだは先生面食らっちまったぞ。何せお前と来たらシモの毛と偽って、犬の毛なんぞを持って来るんだからな……」
「先生」

 僕はもう耐えられなくなり思い切って口を開いた。

「もう、いいでしょうか」
「はあ? 何だその態度は! お前自分の立場がわかってるのか、岡田!」
「……すみませんでした」

 僕は血を吐くような辛い思いで、ガマガエルに頭を下げた。僕が悪いんだから仕方がない。ここは死ぬ気で屈辱と嫌悪に耐えなければ。母さんと、そして陰毛などを密かにくすねて、目の前の正気とは思えないオカルト教師に渡してしまった姉貴の顔が浮かび、椅子に座った両膝の上に置いたこぶしを固く握りしめて隠忍自重した。

「なあ岡田、そんなシケた顔すんなよ。お姉ちゃんのシモの毛をどうやって手に入れたんだ?」

 実際にはニヤニヤ笑ってただけだが、僕には鎌田がグェフェフェフェ~と下劣を絵に描いたような擬音と共にそんなことを聞いて来たように思え、マジで背筋に悪寒が走った。しかもコイツ、あろうことかホンの数本しかないチリチリに縮れた姉貴の陰毛を嬉しそうに鼻に付けてクンクンとかぐと、ウム、これは本物のマンコの匂いだな、でかしたぞ、岡田、などと言いやがった。虫酸が走るとは正にこのことだろう。どうやって手に入れたか、だって?そんなこと言えるはずが……

「どうせお姉ちゃんが風呂に入ってる時に、コッソリくすねて来たんだろう?ははは、その顔は図星と見た。姉ちゃんはどんなパンツをはいてたんだ? しっかり匂いもかいだんだろ? これでヘンタイのお前も、しばらくズリネタに使えるだろうが、あの美形の姉ちゃんのパンツでな! 感謝しろよ、岡田!」

 僕は教師にあるまじき言葉を吐きかけて来るガマガエルを張り倒してやりたい衝動に駆られた。一体どこまでコイツは下劣なんだ。なのに僕はジッと唇を噛んで下を向き耐えるしかない。なぜならコイツに逆らえば、僕の犯した過ちが取り返しのつかない事態を招いてしまうからだ。そして……

「わははは、岡田! お前、チンポを大きくしてるじゃねえか。姉ちゃんのパンツの匂いはそんなに良かったのか、白状しろよ、このどヘンタイ野郎!」

 ああ、何てことだ。ガマガエルに指摘されてしまった通り、僕は風呂に入っている姉貴の下着をコッソリと確かめて数本付着していた縮れ毛を急いで摘み取り、絶対にバレぬよう気配を殺して去った時のスリルと興奮が蘇ってしまい、こんな状況なのに股間を膨らませてしまっていた。たぶん白だろうと予想していた姉貴の下着は、何とピンクでフリフリの付いた小さなパンツだった。誓って言おう。コイツの下劣な想像と違って、僕は決して姉貴のパンツを匂ってなどいない。だけど、脱いだばかりの姉貴のぬくもりが残り、少し湿っていたピンクの布地は余りにも蠱惑的で、僕は初めて姉貴を女として意識してしまい、やはり股間を逞しくしてしまって凄まじい罪悪感に苛まれつつ、浴室から逃げるように去ったのだ。

「お前みたいなやつを典型的なムッツリスケベと言うんだぞ、岡田。姉ちゃんのシモの毛を取って来たほうびに、お前にもいい思いをさせてやるからな、期待してていいぞ」
「い、いえ、結構です……」
「遠慮すんじゃねえよ、岡田。このムッツリスケベ野郎が。お前さんのおかげで、古代エジプトの秘術が蘇るんだぞ……」

 まるでしつこく絡んで来るチンピラみたいな言葉から始まったのは、「オカルト教師」と言う異名を取る鎌田の誇大妄想だ。やつの言い草からして、何やらいかがわしい「秘術」なのだろうが、あいにく僕は常識人でそんな戯言を信じるようなイカれた連中とは違う。この、若ハゲで背が低く醜く肥え太った、凡そ女性に嫌われる要素を詰め込んだようなおぞましい外見から、名前をもじって「ガマガエル」と陰口を叩かれている鎌田先生は、なぜそんな部活が存在しているのかかなり謎な「オカルト研究部」の顧問だ。そして驚くべきことに、オカルト研には暗くて大人しそうな女子ばかりの部員が存在し、タロットカードなどを用いて飽きもせずしょーもない恋占いに興じているらしい。もちろん彼女達とて、キモオタを絵に描いたような鎌田は相手にせず形だけの顧問のようだが、当の「ガマガエル」はオタク女子達のオアソビのような「オカルトごっこ」をはるかに超えた、アブない所までイッてしまってる本当にヤバい男だと言う評判だ。生徒である僕の弱みを握ったと見るや、姉貴と2人の陰毛を「秘術」とやらに使用するためだと要求し、僕にネチネチと卑猥な言葉を掛けて来る下劣さから、こいつが皆の評判通りの、校内一のヤバい男だと言うことが実証されたわけだ。僕は教師と言う仮面を脱ぎ捨て、おぞましい本性を剥き出しにし始めた「オカルト教師」に、絶対に知られてはならなかった秘密の行為を見つかってしまった日のことを痛切に思い出していた。

 あれは約1月前のことだった。2年になってから移動教室でホームルームが空きになるとき、最後に鍵を掛ける生活委員と言う役になった僕は、その日も他のクラスメイトが誰もいなくなったわずかな時間、つい誘惑に負けてこの所悪いクセになっていたあの行為を行っていた。その日のターゲットに選んだのは、姉貴と同じバレー部の竹本ひとみさんだ。僕は竹本さんの机に直行すると、その中に彼女が部活で着用しているユニフォームと言うお宝を発見し、宝くじにでも当たったように大喜びしてしまった。

 そう。僕が生活委員になってからクセになってしまった行為とは、クラスのカワイイ女子の机をのぞき見ること。内気で彼女どころかガールフレンドもいない僕にとって、がさつな男子と違ういかにも女の子っぽい所持品を密かに盗み見るのは、胸がドキドキして甘酸っぱい気分を満喫出来る行為だった。そして何度もいろんな子の机をのぞき見してる内に、時折発見される体操着に僕は危険な衝動が抑え切れなくなり、女の子のぬくもりや汗や体臭が染み付いているように思われる衣類のニオイをかいで、幸せな気分に浸るようになっていった。あまり授業に遅れるわけにはいかず、せいぜい1分足らずの間に、絶対人に見られないようにドキドキしながら行うスリリングで甘美な秘密の時間。僕はもう完全にこのアブない行為にハマってしまっていた。

 そしてその日竹本さんの机から出て来た、姉貴でおなじみのバレー部が着用する緑色のブルマみたいなショートパンツは余りにも魅力的だった。竹本さんとはほとんど口を聞いたこともなかったが、僕好みのスラリと背が高いカワイコちゃんで、これを彼女が毎日はき汗だくで練習してるのだと思うと欣喜雀躍と気分の高揚した僕は、いつしか時が経つのも忘れ、夢中で彼女の「ブルマ」を鼻に当てがってウットリと幸せに陶酔していたのだ。

 だからその決定的な瞬間、背中を軽く叩かれた僕は飛び上がりそうになった。振り返るとそこには、ニヤニヤと下卑た笑いを満面に浮かべた鎌田先生がいたと言うわけだ。誰もいない空き教室で女子の運動着の匂いをかぐと言う変態的行為を、学校一ヤバい「オカルト教師」に見咎められた僕は、サーッと顔から血の気が引いていったのを覚えている。まだ盗みでも見つかった方がましだった。
 
 すぐに今も呼び出されている理科室に連れて行かれ、すっかりビビっていた僕は鎌田先生に洗いざらい白状した。これが初めてではなく、つい出来心とは言え何度も繰り返し行ってしまっていたことを。すると生徒の変態行為を目撃して調子に乗ったガマガエルは下劣な本性を現して、僕を脅迫し始めたのだ。岡田、それはただではすまないぞ。盗難に匹敵する、いやもっと重い罪に問われるかも知れない、と。退学か、少なくとも停学になるのは間違いないな。冷静に考えれば盗難より罪が重いなんておかしいが、仮にも学校の教師なのだ。たとえそれが鎌田のハッタリだったとしても、コイツの言葉を信じるしかないではないか。天国から地獄に突き落とされたような気分で青ざめてしまった僕に、ガマガエルは畳み掛けるように言った。

「岡田、お前奨学金をもらって学校に通っているんじゃないのか」

 鎌田はいみじくも姉貴のクラス担任で、母子家庭である我が家の苦しい経済状況も知っている。そんな立場まで悪用したタチの悪い脅迫だった。鎌田はこれが表沙汰になったら奨学金がストップされるのはもちろんのこと、1学年上の姉貴にまで影響があるのは必至だと言いやがった。姉貴はバレーボールのスポーツ推薦で、いわゆる特待生として入学したため、学費ゼロなのだ。僕は苦しい家計を助けるためバイトしながら何とか通学している状況なのに、奨学金がストップされては死活問題ではないか。自分ばかりか、卒業まで後半年の姉貴まで学校を追われる羽目になったら、一体家族にどんな顔向けが出来ると言うのか。しかも理由が理由だ。苦労を掛けている母さんや、仲の良い姉貴に知られるくらいなら、死んだ方がましだとまで僕は思った。

「なあ岡田、ここは1つ取り引きしようじゃないか」

 それはもうまともな教師のやることではなかった。しかしすっかり狼狽して冷静な判断力を失っていた僕に、鎌田はとんでもない「取り引き」を持ち掛けて来たのだ。それは何と、若い男と女の陰毛を手に入れて渡せ、と言う常軌を逸した要求だった。何のために?といぶかしがった僕に「オカルト教師」鎌田はとうとうと説明を始めた。

「俺が前から、古来より伝わる黒魔術の研究をしているのは知っているだろう」

 そう。僕がこいつのことを「学校一ヤバい」と形容した理由は、それが一番である。生徒達、とりわけ女子からは蛇蝎のように忌み嫌われている、絵に描いたようなキモオタ風の外見だけが理由ではないのだ。鎌田は形だけのオカルト研顧問とは別に、昼でも暗い理科室の奥の部屋にこもり真にアブない研究をやっていると噂される、いかがわしい化学教師である。そしてここで鎌田が語った内容は、やはりとても正気の沙汰とは思えないものだった。

「今俺は古代エジプトに伝わる、ファラオの秘術と言う黒魔術を研究している。いいか岡田、古代の人間は、科学技術の発達した現代人には及びも付かぬ強力なスピリチュアルパワーを持っていたのだ。お前はまともな建築技術も機械もない大昔の人間が、どうやって巨大なピラミッドを作ったのか、不思議に思ったことはないか? それこそが、現代人の失った人間の潜在的なスピリチュアルパワーを活性化させる、黒魔術と呼ばれる秘術なのだよ……」

 バカバカしい。何が「黒魔術」だ。「スピリチュアルパワー」だ。僕はこの時、誰かに似てると思っていた「オカルト教師」鎌田が、テレビでバカ女達をだましている詐欺師タレントによく似ているんだと思い当たっていた。もう少し太らせて頭をハゲにすればそっくりではないか。そうか、さしずめ鎌田の前世はガマガエルだったに違いない。そのガマガエルの説明によれば、今研究しているファラオの秘術とやらを蘇らせるには、どうしても若い男女の陰毛が必要なのだと言う。何てイヤらしい、えっちな秘術なんだ。

 鎌田は、イッヒッヒと口にはしないが、文字にすればそう形容出来そうな下品な笑いで僕の気持ちを萎えさせながら、この件を伏せて欲しければ僕と姉貴の陰毛を寄越せと脅迫して来た。正に噂通り、いやそれ以上の「ヤバい」キモオタぶりだったが、精神的に追い詰められていた僕はしぶしぶ同意するよりなかった。そして、どうせこんなのわかりゃしないだろうと、近所の飼い犬のチリチリの毛を拝借し陰毛だと偽って差し出した所、すぐにバレてガマガエルの逆鱗に触れ、二度と俺を欺すな、その時は容赦なくお前の変態行為を暴露してやる、と最後通牒を突き付けられたというわけだ。さすがに犬の毛では無理だが、僕の陰毛を小分けにして2人分だと偽装することも考えた。だが鎌田は男と女のシモの毛は明らかに違うと言う。ニオイをかげばすぐわかるそうだ。それこそ犬じゃあるまいし、いかにもマユツバだったが、一度偽装工作に失敗して窮地に陥った僕には、もうこれ以上危険を冒す勇気はなく、ついに正真正銘の姉貴の陰毛までコイツに差し出してしまったのだ。

 さて貴重な昼休憩時間を割いてここまでガマガエルと話し込んだ僕が、ようやく許しを得てホッと胸を撫で下ろしながら理科室を出ると、何たる偶然か、姉貴がこの部屋に向かって来るのにバッタリ出くわした。いや偶然ではないだろう。鎌田がわざわざそのように計算して、姉貴を部屋に呼んでいたのだ。一体どこまで下劣な上に計算高い、イヤらしい男なんだろう。

「一樹、アンタ、ガマガエルに何か用?」

 案の定姉貴は、何の接点もないはずの僕が自分の担任である鎌田の部屋から出て来たのを不思議に思ったようだ。僕は仕方なく、イヤ、何でもないよ、と答にならぬ言葉でケムに巻こうとしたが、いつもなら何でもないはずの姉貴に対して、まるで片思いしている女の子に対するがごとく緊張ししどろもどろになってしまった。廊下を颯爽と言う言葉が
ピッタリの感じで歩いて来る姉貴は僕より頭1つ高い長身で、これまで意識したことはなかったが、スタイルの良い子が好みの僕には、理想的と言って良い容姿だ。顔だって整っているし、実際うちの学校の看板である女子バレー部のエースである姉貴は、アイドル並に皆の憧れの対象になっている。

 これと言って取り柄もなく内気で目立たない存在の僕が、学校の看板娘みたいな有名人である姉貴岡田真央の弟だと知った友達は、皆例外なく僕を羨ましがった。そりゃそうだろう。バレーコートでは長身のエースアタッカーでビシビシと豪快なスパイクを叩き込む姉貴は、こうして普通の服を着てもまるで脚の長い外人女性みたいで、メチャクチャ格好良いのだ。ハッキリ言って自慢の姉だ。

「あ、姉貴こそ、ガマガエルに何の用だよ」
「知らないわよ。たぶん進路の話じゃないかな?」

 僕はごまかすため、反対に姉貴に質問した。まさか本当のことを告白するわけにはいかない。すると姉貴もなぜ自分が呼ばれたのかわからない様子で小首を傾げる仕草が妙に女っぽく、僕はまたまたうろたえてしまった。姉貴ってこんなに色っぽい女だったろうか?いや、これは僕の方の姉貴を見る目が変わったからに違いない。ガマガエルに渡すため、姉貴がはいた直後の衝撃的なセクシーショーツを検分して、付着していたわずか数本の陰毛を拝借した時、僕はガラズ扉の向こうでシャワーを浴びている音をさせていた姉貴を想像して頭がクラクラする程興奮し、ぬくもりが感じられる湿っぽいパンツの匂いをかぎたいという誘惑と懸命に戦わねばならなかったのだ。そうだ。あの時から、気が強くて跳ねっ返りだが明るくサッパリした性格で、何よりバレーが上手な自慢の姉は、スタイル抜群で美形と言う僕にとっては理想的な女性として、ハッキリ異性を意識する対象に変わったのだ。

 そう思ってしまうと、目の前で珍しく女の子っぽい仕草を見せている姉貴の伸びやかな肢体があまりにも眩しくて、弟なのに不自然なまでにドキドキと胸をときめかせている自分がいた。背が高くてやせており、まるで男みたいだねと嫌がらせを言ったことのある姉貴は、今見ると胸元も腰も女らしい丸みがハッキリ感じられ、そのカモシカのような長い脚の付け根に今もセクシーな下着を着用してるのだろうかと思うと、カチカチになっていた僕の股間はますますいきり勃った。

「全くあの先生、一体何考えてんだかわかんないのよね。あ、又課題が出たから、英語、今晩頼んだわよ。じゃ」

 担任のガマガエルに呼ばれたのに僕と長話しているわけにはいかない姉貴は、そう言い残して理科室に入って行った。スポーツ推薦でこの学校に入学した姉貴は1学年下の僕に課題をやらせるくらい、勉強は大の苦手だ。でも、今ハッキリ分かったことがある。僕は姉貴のそんな情けない所も含めて大好きなのだ。幼い頃はよくきょうだいけんかして、気が強く体力も上の姉貴にいつも僕の方が泣かされ、呆れた母さんが姉貴を叱ったものだ。そう言えば母さんも僕より背が高いし、かなりの美人だ。きっと僕だけが、幼い頃に離別してほとんど記憶に残っていない父親に似ているのだろう。

 この頃では姉貴とけんかするなんてことはほとんどなく、毎日ハードな練習で疲れて帰って来る姉貴のために、苦手な英語などの課題をやってあげるのが日課になっている。でもそれは少しも苦にならず、乱雑な僕の部屋と違いキチンと整理整頓された姉貴の部屋で課題を代行してやり、姉貴が感謝の意味で持って来てくれるコーヒーやお菓子を一緒に食べて、学校生活を初めいろんなたわいもないことをダベって過ごすのに幸せを感じている。そう。僕は気付かぬうちに、この学園のアイドルである姉貴に恋をしてしまっていたのである。そうでなければ、この胸の高鳴りと股間の張り切りぶりの説明がつかぬではないか。

 失礼します、と礼儀正しくお辞儀をした姉貴がガマガエルの待つ理科室に消えてから、僕は猛烈な不安に駆られた。ガマガエルのやつ、まさか姉貴に僕の行為を話したりしないだろうか?そして僕に対してチンピラヤクザのように脅迫して来たように、姉貴まで脅迫する、と言うことは?弟の変態行為をバラされたくなかったら、俺の言うことを聞くんだ、イッヒッヒ……なんていかにもあいつのやりそうなことではないか。いやいやそれならわざわざ僕に姉弟の陰毛を入手させるような回りくどいことをする必要はないだろう。姉貴に直接要求すればいい。僕はどんどん膨らんで来る不安を打ち消すために、そう都合良く解釈することでガマガエルが僕の行為を姉貴に話さないでくれることに望みを繋いだ。僕はまだこの時「オカルト教師」鎌田の本当の恐ろしさも、姉弟の陰毛を要求して来た真意もわかっていなかったのである。いや正確に言えば、ハナから信じていなかったのだ。古代エジプトより伝わり、現代に蘇る「ファラオの秘術」の恐ろしさを。

「岡田一樹君。理科室まで来て下さい。もう一度連絡します。岡田……」

 その日の放課後、放送で再びガマガエルに呼び出された僕は、大きな不安に押し潰されそうな気分で鉛のように重い足を理科室に運んでいた。「オカルト教師」鎌田のいかがわしい研究のため、恥を忍んで姉貴と僕の陰毛を差し出し、これでもうあのおぞましいガマガエルから解放されると思ったのは、やはり甘い期待だったのか。が、白状しよう。僕は同時にガマガエルの言葉を思い出して、ゾクゾクするような興奮を覚えていたのだ。

「……お前にもいい思いをさせてやるからな、期待してていいぞ」

 女子の体操着の匂いをかいでいた僕を「ムッツリスケベ」と罵倒した後の言葉だ。実はまだ股間の昂ぶりが解消していなかった僕が、いかがわしい期待を持ってしまったのも仕方のないことだ。まだ信じる気にはなれなかったが、「ファラオの秘術」が完成したのだろうか?僕と姉貴の陰毛を使用して完成する「秘術」なんて……僕はそこまで考えて姉貴の姿が脳裏に浮かび、その邪念と理性で懸命に戦っていた。弟なのに、大切な姉貴に対していかがわしい妄想を抱いてしまうなんて、人として到底許されないことだ。だが、そんな僕の妄想をはるかに上回るとんでもない事態を、「ファラオの秘術」を完成させたガマガエルは用意していたのだ。

「失礼します」
「おう。良く来たな、岡田」

 う。教師と生徒とは思えないぞんざいな言葉を掛けて来たガマガエルだったが、僕はそんなことより部屋に入った途端に何か重苦しい空気が張りつめているような雰囲気を感じて、脚が竦んでいた。部屋の中は昼休みの時と同じでガマガエルも自分の机の椅子に座って入口を向き、特に変わった様子はない。だが、確かに何か異様に粘り着くような空気の汚れのような雰囲気が感じられるのだ。そんなこと信じたくもないが、下卑た笑みを唇の端に浮かべた「オカルト教師」鎌田が、その醜悪な体の周りに目に見えない結界を張り、邪悪なオーラを醸し出しているかのようだった。そしてそのおどろおどろしいムードに呑まれた僕が入口ででくのぼうみたいに立ち尽くしていると、ガマガエルは例の陰毛を摘んで鼻で匂いをかぎながら、何やら早口で呪文のような言葉を唱え始めたのだ。途中でハッキリと、ファーラオーと言う言葉が聞こえたから、これが「ファラオの秘術」なのだろうか?

 僕はさすがに恐ろしくなり、その場を逃れようとしたのだが、その時にはもう手遅れだった。何だか体が急激に重くなって、自分のものではないかのように自由に動かせないのだ。

「せ、せん……」

 先生、と口にしようとしたのもそこまでで、どうやらガマガエルが呪文を唱え終えると、僕はその場に立ち尽くしたまま、しゃべることも動くことも出来なくなっていたのだ。

「どうだ岡田。ファラオの秘術は良く効くだろう。お前さんは自分から術を発動させる陰毛を差し出して、俺のあやつり人形になったと言うわけだ……」

 僕はガマガエルの恐るべき説明を聞きながら、実に奇妙な気分に陥っていた。別に痛くも痒くもないし、呼吸だってしている。それに目をキョロキョロさせたり、ガマガエルを睨み付けようと精一杯の努力をして表情を変えることは出来るのだ。だが、それ以上の手足や首を動かす動作は一切出来なかった。もちろん何か言葉を口にすることも。一体どういうことだ!僕はガマガエルの言葉がウソでもハッタリでもないことが実証されるに連れて、情けないことに凄まじい恐怖に襲われて、立ち尽くしたままの全身に冷や汗が拭きだしワナワナと慄えてしまっていた。

「お前はもう俺が命令しなければ何も出来ない。その替わり俺の命令なら何でも言うことを聞く。では、ズボンを脱げ」

 そんなバカな、と思ってもコイツの言う通りだった。僕はガマガエルがどっかと椅子に座って見ている前でズボンを脱ぎパンツ一丁になっていた。もちろんこんな卑劣な男の前で醜態を晒すことには猛烈な嫌悪を感じているのだが、抵抗しようとか、そういう次元ではない。自分の手足が意志とは全く関係なく、独立した意志を持っているかのごとく勝手に動いてしまうのだ。それは正しく「あやつり人形」にされた状態だった。

「パンツも脱いで、そこの床に背を付けて座れ」

 僕は下半身だけ裸と言う無様な格好で言われた通りに座りながら、理性や感情はそのままで四肢の動きだけあやつられることの恐ろしさに慄然としていた。ニタニタ笑いながら無慈悲な命令を下すガマガエルのおぞましさに、猛烈な嫌悪と怒り、そして底知れぬ恐怖を感じ、さらに下半身を露出して羞恥と屈辱が胸を締め付け顔面が真っ赤になったのがわかった。自分の意志を喪失し、知らない間にあやつられるのなら、どれだけ気が楽だっただろう。
 
「何だ岡田、包茎なのか。結構デカいなお前」

 ガマガエルがそんなことを言いながら僕の股間に手を伸ばしても、逃げも隠れも出来ない僕は、脂ぎって湿っぽい分厚い手にムンズと掴まれてもどうしようもない。それどころか僕のペニスはあり得ないような恥ずかしい反応を示していた。

「わはは、気が早いぞ岡田。よっぽど溜まってたみたいだな」

 ガマガエルが手を離しても、僕の股間の肉塊は硬度を失うことはなかった。それどころかグングンと膨らむ一方で、コイツの秘術のもう1人の犠牲者のことを考えて興奮してしまったことを告白しなければいけない。

「では約束したように、お前へのご褒美を連れて来てやろう」
(やめろっ!)

 口が利けたらそう怒鳴っていただろう。いや、それは本当か?僕は自問自答した。その人のことを考えて僕は股間を恥ずかしく張り切らせているのではないのか……

「真央さん」
「はい」

 俺のことは名字を呼び捨てで、「真央さん」か。僕はしかしそんなことより、この部屋の奥にある暗室から聞こえた涼しげな美声が実に自然に「はい」と答えたことに気持ちを動かされていた。僕は一言もしゃべることが出来ないのに、既にそのような対応をするように命令されていたのだろうか?僕は放課後すぐここに直行したと言うのに……

「いいお返事ですね、えらいですよ、真央さん」
「ありがとうございます、ご主人様」

 僕は暗室の向こうの聞き間違うはずもない姉貴の声が、ガマガエルとそんなおぞましい会話を交わしたことに、頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。ただの「あやつり」で、どうして姉貴はそんな言葉を口にするのだ。

「ではこちらに来て下さい、真央さん」
「はい」
「もう一言もしゃべってはいけませんよ」

 こうしてやって来た姉貴の顔を見て、僕はアッと思った。目が泣き腫らしたように真っ赤になっているのだ。いつも元気で健康そのもの、おまけに勝ち気で男勝りな性格の姉貴が泣いた所なんて見たことがない。するとそんな僕の気持ちを見透かしたかのようにガマガエルが言った。

「真央さんはずいぶんと手を焼かせてくれたが、お前が来るまでにミッチリとしつけて、かわいい奴隷にしてやったよ。これも岡田、お前がお姉ちゃんのシモの毛をくれたおかげだ、礼を言うぞ」

 何てことだ。ひょっとしてガマガエルのやつ、昼休憩からの2時間姉貴を監禁して秘術を用い、「奴隷」にしてしまったと言うのか。「ファラオの秘術」は行為を強要するだけで、心までは影響を受けない。だから姉貴がどんな辛い思いで、コイツを「ご主人様」と呼び、奴隷の言葉遣いで命令に従わうよう調教されたのかは想像するに余りある。その証拠が真っ赤に泣き腫らして、せっかくの美貌が台無しになった姉貴の顔だ。だが僕は、ガマガエルに対する恐怖をフツフツとわいて来る怒りが凌駕しながら、同時に初めて見た姉貴の泣きべそにどうしようもない興奮が込み上げて来るのを禁じ得ないでいた。これではガマガエルのことを鬼畜だと罵るわけにはいかない。実の姉に邪な欲情を覚えている僕の方がたちの悪い鬼畜ではないか。

「では真央さん。こちらに来て立ち、スカートをめくって弟にしっかりパンツを見せなさい」

 しゃべるなと命令されていた姉貴は無言で僕のすぐ前までやって来ると、スカートを両手でガッと上げて見せた。とても我慢出来なくなった僕が、思わず目をつむると大声でガマガエルの「命令」がやって来た。

「馬鹿野郎! しっかり目を開けてお姉ちゃんのパンツをガン見しろ!」

 僕はもちろん命令通りに目を開けるとかなりの至近距離に来ていた姉貴のたくし上げたスカートの中を穴が開くほど見つめた。僕はガマガエルにあやつられているのだが、自分の気持ちに正直に行動しているのと変わらなかった。それほど姉貴のスカートの中は僕にとって魅力的だったのだ。姉貴がはいていたのはあの日のピンクのような色でなく、ごく普通っぽい白パンツだったが、よく見るとレースのハイレグで大事な所がうっすらとスケて黒い飾り毛がバッチリ見える際どいデザインの代物だ。姉貴はスポーツウーマンでそんなえっちな下着を着けているなんて思ってもみなかったが、考えてみればいいお年頃である。そのくらい当然なのかも知れないが、これまでのイメージとのギャップに僕は激しく萌えてしまい、もう股間はビクビクと爆ぜんばかりに脈動していた。

「おい岡田、仲間に入れてもらうぞ」

 するとガマガエルのやつ、僕のすぐ隣に同じように壁にもたれて座り込むと、同じアングルで姉貴がめくってワナワナと慄えているスカートの中を見上げ始めた。

「おおなかなか絶景だな。見ろよ岡田、お前のお姉ちゃんはシモの毛がボウボウだぞ」

 ふと見ると姉貴は首筋まで真っ赤に染めて羞ずかしいのだろう、目を閉じて僕達の方を見ないようにしていたが、ガマガエルはそれも許さなかった。

「駄目ですよ、真央さん。しっかり目を開けて、弟君が興奮してチンポを固くさせてる所をよく見るのです」

 姉貴は何とも言えない表情で目を開ける。

「よしよし、お互いのマタの間を仲良く見せ合うってもオツなもんだろう、なあ岡田」

 そう聞かれても、姉貴の素晴らしいスケパンツに目が釘付けになった僕も、どうしようもなくビクビクと張り切ってしまう僕の肉棒をじっと見つめている姉貴も、一言も発することは出来ない。それに気付いたガマガエルは、新しい命令を下した。

「よし、これからお前らは聞かれたことにだけ正直に答えろ。まあ、術が効いてる限りウソがつけるはずはないがな」

 そんなこともあやつられてしまうのか!僕はウソが付けず本心を晒け出さねばならないことの恐ろしさを想像して、又鎮まりかけていた恐怖がジワジワと込み上げて来た。恐らく姉貴も同じだろう。僕の股間を眺めている目に怯えたような色が浮かんでいた。

「まず岡田、お前からだ。その通りだと思ったら、復唱して答えるんだぞ。お前は大人しそうだが、本当は女の子にとても興味がある、イヤらしいやつだな?」
「はい、僕は女の子にとても興味がある、イヤらしいやつです」
「だから、教室で女子の机をのぞいて、体操着の匂いをかいでいたんだな」
「はい、僕は教室で女子の机をのぞいて、体操着の匂いをかいでいました」
「俺に見つかった時、お前は何部の、何と言う名前の女の子のブルマの匂いをかいでいたんだ」
「僕はバレー部の、竹本ひとみさんのブルマの匂いをかいでいました……」

 ああ。何と言うことだ。姉貴には絶対に知られたくないと思った変態行為を、こんな形で告白させられるなんて。僕が自分のクラブの後輩のユニフォームでそんな行為に耽っていたことを知った姉貴は、どんな思いでそれを聞いているのだろう。だが言葉まであやつられている僕は、一瞬のためらいもなく本当のことを語ってしまう。

「お前はお姉ちゃんがブルマをはいてるのも、イヤらしい目で見ていたんだろう?」
「わかりません……」
 
 少しホッとした。僕は姉貴の公式試合にはほとんど欠かさず応援に行ってるが、正直言って他の子のユニフォーム姿にムラムラ来ることはあっても、姉貴のお尻をそんないかがわしい目で見たことは一度だってないと思っていたからだ。だが、本当にそうなのか、確信を持って言い切ることは出来なくなっていた。そしてガマガエルはあいまいな答に気を悪くするかと思いきや、むしろそんな僕の気持ちの揺らぎを意地悪く観察しながら楽しんでいるようだった。

「ではパンツはどうだ?お前はお姉ちゃんのパンチラを見たいと思ってたんだろう?」
「たぶん、そうかも知れません」
 
 それが僕の本心だ。

「お前は、女の子のパンチラが大好物の、スケベな男だな?」
「はい、僕は女の子のパンチラが大好物の、スケベな男です」

 その後ガマガエルの尋問に対する僕の答は全てそのまま全肯定だった。

「はい、僕はよく女の子のパンチラをオカズにチンポをしごいています」
「はい、僕は今お姉ちゃんのパンチラを見てすごく興奮しています」
「はい、僕は今すぐチンポをシコシコしごいて出したいです」
「そうか、では今すぐチンポをシコシコしごいて、一発出せ」

 僕は一も二もなく姉貴が自分でスカートをめくって見せる蠱惑的なパンチラをガン見しながら、片手で包茎ペニスを掴むと激しく摩擦運動を始めていた。

「ははは、ずいぶん威勢がいいな。お前、お姉ちゃんのオッパイも見たいんじゃないか?」
「はい、僕はお姉ちゃんのオッパイも見たいです」
「よし、俺が見せてやろう」

 そう言って立ち上がったガマガエルは、姉貴のど迫力のスケスケパンチラを拝みながら不気味なくらい落ち着き払って立ち上がった。思わず視線をめぐらせてしまったズボンの前もまるで平静なままだ。

ーーああ、もう出てしまう……

 自分の手なのに、他人にしごかれているようで奇妙な気分だったが、猛烈な射精欲求がお尻の方から込み上げて来る。おまけにガマガエルの野郎、姉貴の背後に回るとブラウスの胸元をガッとはだけてやはりレースのセクシーなブラをずらしてしまったのだ。途端にプルンと弾け出た柔らかそうな双の膨らみの頂点にツンと形良くそそり勃ったピンクの乳首。やせぎすだと思っていた姉貴は、いつの間にかこんなにも女らしいむしゃぶりつきたくなるような体に成長していたのか……

「ああっ!」

 僕はとうとう情けない声まで出しながら股間を爆ぜさせ、包茎ペニスの先からビュッと勢い良く白濁液を姉貴に向かって放出していた。

「よし、チンポを離して両手を後ろで組んでおけ。どうだ、気持ち良かったか、岡田?」
「はい、僕はとても気持ち良かったです」

 それは本心からの言葉だった。僕は不謹慎にも、ガマガエルにあやつられている姉貴が見せ付けてくれている素晴らしい映像を脳裏に焼き付けようと、今や立っているのでやっとなくらい激しく美脚を慄わせて異様に悩ましくモジつかせている姉貴の、たくましい太股の上部に貼り付いた白いパンツを一心不乱に見続けていた。

「では今度は真央さんに聞いてみよう。真央さんはパンツを弟に見せて興奮しているのですか?」
「はい、真央はパンツを弟に見せて凄く興奮しています、ご主人様」

 文末に「ご主人様」と付けるのが、2時間の調教の成果であるらしい。あやつられる姉貴の言葉はまるで人形か自動音声みたいに抑揚がなかったが、嘘偽りのない本心からの言葉であるには違いないのだ。僕はこんな状況で姉貴の不自然な口調の破廉恥な告白を聞きながら、今一発抜いたばかりとは思えないほど興奮が冷めやらず、股間を萎えさせるどころかますます灼熱のように勃起させてしまっていた。

「どうして、そんなにイヤらしく腰を揉んでいるのですか?」
「トイレに行きたいからです。」
「もう我慢出来ませんか?」
「はい、もう洩れてしまいそうです」

 僕はトイレの我慢をしてクネクネとパンツを露出した下半身を悶えさせている姉貴の姿に、不覚にもドキッとおぞましい興奮が突き上げて来るのを感じていた。大切な姉貴に恥辱的な苦しみを与えているガマガエルに怒りをぶつけねばならないのに、性的煩悶と見分けのつかない悩ましい悶えぶりに、ハッキリ姉貴を虐めることの歓びを感じてしまっている僕。まるで心の中に悪魔が住み着いたかのようだった。

「小さい方ですか、大きい方ですか?」
「小さい方です」
「そう言えばさっきお浣腸でたっぷりウンコをヒリ出しちゃいましたね、忘れてましたよ。真央さんはおしっこをしたいのですね。」
「はい、真央はおしっこをしたいです……」

 一瞬姉貴が白目を剥いて天を仰いだ。意地悪くネチネチと会話を引き延ばすガマガエルの手管に翻弄された姉貴の股間は遂に決壊し、セクシーショーツからジョロジョロと水流が流れ出して、ムッチリした太股を伝い落ち始めていたのである。

「真央さん、前に進んで下さい。おい岡田、お前口を開けてお姉ちゃんのションベンを飲んでやれ」

 さっきは泣いた後の目が真っ赤な顔だったが、あの明朗快活で気の強い姉貴がシクシクと女っぽく泣きながら僕の方へ歩み出る。僕は姉貴の太股に口を寄せてせきを切ったように流れ落ちる液体を懸命に受け止めて飲もうとした。手が使えないこともあって、姉貴のおしっこは僕の顔を初め体中に降り注いで目にも入るしベトベトになったが、健康的な透明でサラサラな液体はちっとも汚いなんて思わなかった。

「うれしそうだな岡田。お姉ちゃんのおしっこはおいしかったか?」
「はい、お姉ちゃんのおしっこはとてもおいしかったです」
「はい、僕は女の子のおしっこを飲んで興奮するどヘンタイです」
「はい、僕はもっとちんぽをしごいて出したいです……」

 そこまで僕に言わせたガマガエルはゲラゲラ笑いながら、まだスカートを持ち上げておしっこまみれになったパンツを見せ、太股をベトベトに汚してシクシク泣いている姉貴に言ったのである。

「真央さんも、弟におしっこを飲ませて興奮したでしょう?」
「はい、真央は、弟におしっこを飲ませて、凄く嬉しくて興奮しました、ご主人様」

 姉貴が「凄く嬉しくて」という偽らざる心境を表す形容まで追加したことに僕は感激してしまい、体が浮き立つような歓びを感じていた。

「真央さん、おしっこを飲んでくれたお礼に、弟のチンポをしごいて出させてあげたいでしょう?」
「はい! 真央は、一樹のおっきなチンポをシコシコしごいて気持ち良く出させてあげたいです、ご主人様」

 何てこった。姉貴はガマガエルの言葉のオウム返しでなく、僕を名前で呼び、こんな嬉しいことを本心から言ってくれてるのだ。

「では弟のチンポの皮を剥いてあげなさい」
「わかりました、ご主人様」

 姉貴が信じられないくらいカチカチに固まった僕のペニスに手を掛け、不慣れなぎこちない手付きで包茎の包皮を剥き下げると、さっき出したザーメンの残滓がドロリと出た。

(ああ……姉貴、やめてくれ、キレイな手が汚れちゃうよ……)

 僕は一度放出した精液まみれになりながら恐ろしいほどの勃起を見せるペニスの包皮を、実の姉の意外に白くて小さな手指にゆっくりとめくられる感激に、全身の血が逆流しそうな興奮に襲われた。なのにおぞましいガマガエルこと、オカルト教師鎌田が現代に蘇らせた「ファラオの秘術」によって行動を操作される僕の体は少しも動くことが出来ず、やはりあやつられている姉の真央がだらしなく両脚を広げて投げ出した僕の正面にしどけなく横座りになり、股間をのぞき込んでザーメンまみれのシンボルを優しく握り締めてくれるのを甘受するばかりだった。

「おう岡田。 お前その汚いチンポを大好きなお姉ちゃんのオクチでキレイにしてもらいたいんだろう?」
「はい、僕は汚いチンポを大好きなお姉ちゃんのオクチでキレイにして欲しいです」
「真央さん、弟がこんなことを言ってますよ」

 姉貴のチンポを見る目が妖しく光ったように見えたのは目の錯覚だったろうか。

「では真央さん。おしっこを飲んでもらったお返しに、弟のザーメンをできるだけ下品に音を立てて吸い取ってあげなさい」
「わかりました、ご主人様」
(うああ~っっ!!)

 姉貴はガマガエルの破廉恥な指示に従い、まるで犬が好物をあたえられたみたいに僕の白濁液がこびり付いたペニスを嬉しそうにパクリとくわえると、ジュバッジュバッと激しく口を動かしジュルジュルと下品な音をさせながらザーメンをすすり上げて来た。

(あ、姉貴! お願いだからやめてくれえ!)

 口の利けない僕が目配せして悲痛な訴えを伝えても、ガマガエルにあやつられる姉貴には届くわけもない。これはAVで見たことのある「お掃除フェラ」と言うプレイだろうか。高二の僕にはあまりにも刺激的で、今しがた出したばかりの精液を吸い取ってくれた姉貴の口内に、何と再びドピュッと放精してしまった。

「わははは、おかわりか岡田! 真央さん、それもキレイにゴックンしたら顔を上げなさい」

 ジュルジュルと舐め取った僕の粘液をクチュクチュとまるで咀嚼するかのように音を立てて飲み干した姉貴がやっと離れてくれた時、僕は連続射精によって生気を吸い取られたような猛烈な虚脱感に襲われ、さすがに股間の肉塊もしぼみ始めたようだ。

「お姉ちゃんにチンポをしゃぶってもらって気持ち良かったか、岡田」
「はい、僕はお姉ちゃんにチンポをしゃぶってもらって気持ち良かったです」
「お姉ちゃんの口で2発も抜かれるとは、お前はとんでもないどスケベなヘンタイだな」
「はい、僕はとんでもないどスケベなヘンタイです」

 実の姉のパンチラで興奮し、おしっこを飲まされ、ギンギンに勃起してしまったチンポから手と口でザーメンを搾り取られた僕は、そうすり込まれたかのように自然と言葉を発していた。

「では真央さん。どスケベでヘンタイな弟の口に、おしっこを洩らしたパンツを詰め込んであげなさい」
「はい、わかりました、ご主人様」
「おい岡田。お姉ちゃんがションベンまみれのパンツを食わせてくれるそうだ。嬉しいか?」
「はい、僕はお姉ちゃんのションベンまみれのパンツを食べるのが嬉しいです」

 ああ、僕は一体何を口走っているんだ!これが僕の本心なのか!?正しくどヘンタイそのものではないか。行動をあやつられているだけだったはずなのに、いつしか心までガマガエルに操作されていくような恐怖を僕は覚えていた。だが、姉貴が言われるがままに脱ぎ捨てた、小便で少し黄色い色素が付着したセクシーショーツを口に詰め込んで来ると、おしっこの混じった姉貴のかぐわしいアソコの匂いがプーンと鼻に付き、それまでにない異様な興奮が込み上げて来た僕は次第にわけがわからなくなった。小さなパンツでもいざ人の口に詰め込むとなると相当な体積である。姉貴の小便パンツで完全に口を塞がれた僕がしゃべれなくなった頃、ガマガエルが言った。

「真央さん、さっきから仕切りとオシリをモジモジさせてますが、又おしっこがしたくなったのですか」
「いえ、違います。何だかえっちな気分になって来たからです……ああ、体が変です、ご主人様……」

 あやつられているにしては、生々しい感情を込めてそんな言葉を口走る姉貴を見ると、ノーパンになった股間と胸に手をやり、切なげなエロい顔をしてモジモジと腰を揉み、本当にトイレを我慢しているみたいだった。

「どこがどう変なんですか。ハッキリ言いいなさい」
「おっぱいとアソコがすごく熱いです、ご主人様」
「真央さんはさっき、ブリブリとウンチをひり出しながらオナニーして、あんなに何度もイッテしまったのに、まだシタイのですか?」
「はい、真央はもっとたくさんオナニーしたいです、ご主人様」

 僕がガマガエルから解放されたと思ってのほほんと授業を受けている間に、ここに監禁されていた姉貴が受けた仕打ちがわかるに連れて、沸いてくるはずの怒りはさほどでもなく、オナニーしたいなどと信じられない言葉を吐き悶々と悩ましく体をくねらせる姉貴の姿に僕の股間は浅まし過ぎる反応を見せていた。

「わははは、お前もまだやりたりないみたいだな。出したいか、岡田?」
「はい、僕はまだ出したいです。でも、これ以上出すのは怖いです」

 それは偽らざる心境で、姉貴の手コキとフェラチオで放出したザーメンは自分でも呆れてしまう程大量だった。なのに今又姉貴に悩殺されて勃起してしまったのが信じられなかったし、生身の人間として超えられない限界があるはずではないか。だがガマガエルは言ったのである。

「若いくせにだらしないぞ、岡田。よし俺が強力な暗示を掛けてやろう。いいか、お前はお姉ちゃんが相手ならいくらでも出すことの出来る浅ましい男だ。そう言ってみろ、岡田」
「僕は、お姉ちゃんが相手ならいくらでも出すことの出来る、浅ましい男です」
「もう1回!」
「僕は……」

 執拗なガマガエルの命令で10回その言葉を繰り返した僕は、本当に体の奥から新たな欲情が次々に込み上げて、恐ろしくビンビンになったチンポが何度でも使えるような錯覚に陥っていた。

「真央さん、弟はこんなにあなたとやりたがっていますよ。弟とえっちしますか?」

 僕はもう駄目だと思った。ガマガエルの前で実の姉と人の道に外れた行為をさせられるのだ。それも無理矢理ではなく、お互い本心から望んでなのだ。僕の狂ったようにいきり勃つペニスと、刺激を求めて大胆に体を悶絶させている姉貴を見たら、もうどうしようもないではないか。ところが姉貴は気丈に言ったのである。

「いえ、弟とはしたくありません」
「どうしてですか?」
「それは、してはいけないことだからです」

 ガマガエルは今度は僕に聞いて来た。

「岡田、残念だな、お姉ちゃんはしたくないらしい。お前はやりたいんだろう?」
「いえ、僕もお姉ちゃんとはしたくありません。してはいけないことだからです」

 姉貴の「本心」を聞いてホッとした僕も、それに力を得て人の道を外れることから一歩踏みとどまっていた。

「なかなか面白いやつらだな、お前らは」

 だがガマガエルは僕達の抵抗が却って面白いかのごとき様子だった。

「では真央さん。お望み通りオナニーさせてあげましょう。岡田! お前は何もせず、お姉ちゃんがイキまくる所をしっかり見ておくんだぞ」
「はい、わかりました……」

「ところで真央さんはバージンでしたね」
「はい、真央はバージンです、ご主人様」
「ならどうしてそんなにイヤらしくムネやオシリをブルンブルン揺さぶっているのですか」
「はい、それはご主人様に真央がえっちになるおクスリをタップリ塗ってもらったからです」
(ガマガエルの野郎、姉貴にそんな物まで……)

 バージンだと言う告白に心を動かされながら、そんな姉貴をこんなにイヤらしく変えてしまう「クスリ」をガマガエルが使ったことに僕は怒りを覚え、同時にそんなに効果のある媚薬が存在するものかと疑問を持った。ガマガエルが表現したように悩ましく体をくねらせる姉貴のブラからハミでた乳房や、今だスカートに包まれたノーパンのお尻が揺さぶられる眺めは、男を誘惑している媚態にしか見えないのだ。とても男を知らない姉貴とは信じられない。が、その疑問は続くガマガエルの言葉ですぐに氷解した。

「ふふふ、かわいい真央さんに、もっと暗示を掛けてあげましょう。あなたが塗られた薬は、いつまでたっても痒い痒いのが治まらない悪魔の薬だったのですよ。さあ勝手にオナってしまわないよう、オテテを後頭部で組んで、こう言うのです。真央は……」

 僕に掛けた暗示と同じだ!いくらでも出せると言う暗示のおかげで、あり得ないほど強烈に勃起したペニスが姉貴を求めてズキンズキンと疼き本当に気が狂いそうな僕には、ガマガエルのやり口の非道さがよくわかった。「ファラオの秘術」と暗示を組み合わせて使えば、ただの傷薬でも悪魔の媚薬に変身してしまうではないか。こうして姉貴はガマガエルの暗示を強固のものにすべく、恐ろしい言葉を10回復唱させられた。

「真央は、えっちなおクスリのおかげで、おっぱいとアソコとオシリのアナが死ぬほどズキズキと疼いています。真央は、えっちな……」

 10回言い終える前に、本当に死ぬほどウズウズしてしまうのだろう、姉貴の整った顔が恐ろしく紅潮して鬼の形相に変わり、頭の後に両手を回して座ることも許されない長身の体は悪い物に取り憑かれたかのように激しく痙攣を起こしていた。

「ではもう1回確認しましょう。真央さん、オナニーでいいのですか? 弟としたくはありませんか?」
「はい、真央はオナニーをしたいです、ご主人様」
「強情ですね。では弟に、オナニーの手伝いをさせましょう。
 それならいいでしょう、真央さん」
「はい、真央は一樹にオナニーのお手伝いをして欲しいです、ご主人様」
「よし、決まりだ。岡田、お姉ちゃんのオナニーを手伝うんだぞ」
「はい、僕はお姉ちゃんのオナニーを手伝います」
「真央さん、弟に向けておっぱいを突き出しなさい」

 姉貴が長身を折り畳むようにして、床に座り込んで動けない僕にはだけたブラウスからボヨンとこぼれた双の膨らみが目の前に来て、僕は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。幼い頃は洗濯板だった姉貴の乳房の立派な成長ぶりは見違える程である。

「よし岡田、俺と同じようにしてお姉ちゃんを楽しませてやれ。真央さんは、声を我慢したりせず正直に感じた通り言うのです。では」
「あ~っっっ!!! いい~っっっ!!!」

 ガマガエルと僕の手が左右の膨らみのすそ野にスッとあてがわれただけで、あり得ないような大声を張り上げる姉貴の乳房は張り裂けそうなくらいパンパンに張っていて、ごくゆっくり軽く揉み始めると、快感を包み隠さず口走る姉貴の色っぽさに、僕のチンポからビュッと先走り液がこぼれてしまうほどだった。そして乳房を柔らかく揉みほぐしつつ、ガマガエルと僕の余った指が乳頭を摘んでクリクリと弄ってやると、姉貴はアッサリ絶頂に達してしまった。

「真央は、イキますうっっっ!!!」
「へへへ、真央さんは、おっぱいをちょっと触られただけで気をやってしまうえっちな女の子なんですね」
「はい……ま、真央は、おっぱいを、ちょっと触られただけで、気をやってしまう、えっちな女の子です……」

 姉貴が詰まり詰まり口にしたのは、術が弱まったからではなく、アクメで息が乱れて言えなかっただけだ。

「面白い暗示を掛けてあげましょう。こう言うのです……」

 昇り詰めてしまってもガマガエルと僕の手に乳房を握り締められたままの姉貴は、ハアハアと火のように荒い吐息を吐きながら、次の言葉を言わされた

「真央は、お乳首をちゅっちゅされると母乳が出ちゃいます。真央は、お乳首を……」

 10回言い終わった姉貴は、ガマガエルと僕の乳房揉みが再開するとすぐに愛らしくよがり泣きながら次のアクメに向かっていったが、先端のコリコリの実を2人で強く吸い上げると、又もや絶頂に達すると同時に本当に母乳を出したのである。恐るべきガマガエルの暗示力であった。

「おい岡田。お姉ちゃんのおっぱいはおいしかったか?」
「はい、お姉ちゃんのおっぱいは、すっぱかったけど、おいしかったです」
「女性が母乳を出すのは、男が射精するのとよく似た現象だ」

 ガマガエルの言葉は初耳だったが、左右から違う男の手に乳房を揉まれながら乳首を吸われて、絶頂に達すると同時にビュッとすっぱい母乳を噴出した姉貴は、全身を茹で蛸のように真っ赤に染めて羞じらいを見せている。男性の射精と同等か、それ以上の快感を姉貴が味わってしまったのは間違いないだろう。何しろ男性と違って快感ポイントが2箇所あったのだから。

「真央さん、もっと沢山おっぱいをモミモミチュッチュして欲しいですか?」
「はい、真央はもっと沢山おっぱいをモミモミチュッチュして欲しいです、ご主人様。あん、もっと、もっとお!」
「おやおや言われたこと以上のおねだりですか。 
 真央さんは本当にえっちで、いけないお姉さんですねえ……」

 ガマガエルが呆れたように言ったが、すぐ目の前ではいたないおねだりを口にして満たされない性的欲求に悩ましく体をくねらせる姉貴の露出した乳房が、僕を大いに魅了していた。

(赤ちゃんになって、この胸の谷間に顔を埋め乳首を吸ってやりたい……)

 姉貴に対してそんな倒錯した感情を抱いてしまった僕は股間が異常に疼き上がって、3発目だと言うのにもはや一触即発の危険な状態になっていた。

「もっとモミモミチュッチュとしてあげたいのはヤマヤマですが、おっぱいはコイツで我慢してもらいましょう」

 そう言ったガマガエルが用意したのは、マユのような円筒形をしたブルーの道具2つだった。キャップの部分をひねるとブィーンと音がして全体が小刻みに慄えている。

「えっちな真央さんはローターが大好物でしょう」
「はい、えっちな真央はローターが大好物です、ご主人様」
(どこで知ったんだ姉貴、ローターなんて……)

 答は明白。今日ガマガエルに捕まり、催眠暗示調教でその快感を体に刻み込まれてしまったのに違いない。どう見ても性的にオクテな姉貴が、ローターを知っていたとは考え難かった。もっとも僕だって、使ったことはおろか実際に目にするのも初めてだったが。

「真央さんのえっちな乳首にこれを貼ってあげましょう」
「ありがとうございます、ご主人様」
「だけどその前に、浅ましくチンポをおったてている弟にどれだけ気持ち良いものか、教えてやりましょう。真央さん、これをチンポの頭の裏側に当てて下さい」
(うおーっ!)

 ガマガエルの言う通りだった。姉貴がペニスで一番感じる裏筋にローターの振動を触れさせると、素晴らしい心地良さがさざなみのように打ち響いて、あっと言う間に爆ぜてしまった僕は白濁液で姉貴の手を汚してしまった。

「わははは、3発目でもまだまだ元気だな、岡田。まだ休んで良い時間じゃないぞ」

 あやつられている姉貴が射精してしまってもまだ振動を急所に当て続けるので、僕はとても休憩することは出来なかった。小刻みなバイブレーションが体の芯まで染み入って奥深い快感を産み、姉貴の手でこんな物を当てられて感じてしまう恥ずかしさに歯を食い縛って我慢しようとしても、次から次に快楽の波が押し寄せては無駄な抵抗だった。恐らくそのまま続けられたら、遠からず又精を抜かれていたに違いない。

「では真央さんの乳首に貼ってあげましょう。岡田、お前はソチラを頼んだぞ」

 助かった。暴発の危機を脱した僕とガマガエルが、左右の乳首にテープでローターを貼ってキャップをひねると、姉貴はウッと気持ち良さそうに目を閉じて、ほとんどブラからはみ出した双乳をブルンッと大きく揺さぶった。

「真央さん、お乳が気持ちいいですか?」
「はい、真央は、お乳がすごく、ああ、ああ、き、気持ちいいですうっっ!!」

 姉貴はもう感に耐えないと言った風情で声を切なく慄わせ、プリプリの双乳が揺れて先端でローターを貼られた乳頭が大きく膨らみ快感に震えおののく眺めは、恐ろしく悩ましい。ガマガエルの言葉を信用するなら、姉貴は胸の先端にペニスを2つ持っていて、射精を我慢出来ないほど気持ち良いローターを味わわされているわけだ。これでは秘術と暗示に掛かった姉貴が破廉恥な淫女の振るまいをしてしまうのも無理からぬことだったろう。

「今度は下に行きましょう。岡田! お前は童貞か?」
「はい、僕は童貞です」
「おまんこを生で見たことがあるか?」
「いえ、僕はおまんこを生で見たことはありません」
「では、お姉ちゃんに見せてもらえ」
(姉貴に!)

 いよいよ募る興奮と期待に、僕のガマガエルに対する憎悪はあらかた消えていた。何とも現金だが、猛烈にいきり勃って治まらない股間を初め、今や全身全霊が姉貴のおまんこを求めていたのだ。姉貴の後ろに回ったガマガエルは両手で邪魔なスカートをガッと上げノーパンの股間を晒すと、こう言った。

「さあ真央さん。童貞の弟に初めてのおまんこをしっかり見せてあげなさい」
「わかりました、ご主人様」

 中腰になった姉貴は壁にもたれて床にへたり込んでいる僕の真正面に進むと、スベスベの太股で顔を挟み付けて来た。ムッと来る姉貴の素晴らしい匂いが強烈で目を開けているのが辛かった。

「まだオナニーしないように気を付けて、指でおまんこの入口を広げて見せなさい」
「はい、わかりました、ご主人様」

 僕の目のすぐ前で、姉貴が鮮やかなサーモンピンクの唇を指でくつろげると、中から熱湯のような液体がドロリと溢れ出て内股を伝い落ちた。生まれて初めてこんな至近距離でお目に掛かる女性器が姉貴であることに、僕は信じてもいない神に感謝する気になる。真っ赤になってジクジクと蜜を吹きこぼしているその部分は美しいとは言い難く、奇怪な形をした海洋生物みたいにグロテスクだったが、本当はずっと憧れていた姉貴のおまんこだと思うと僕は脳髄が痺れ全身が震えおののく程の興奮に包まれていた。

「真央さん、オナニーしたいですか?」
「はい! 真央はオナニーしたくてたまりません、ご主人様」
「まだ指を勝手に動かしてはいけませんよ。もう片手の指で、真央さんの一番感じるクリトリスを摘みなさい」
「はい、わかりました、ご主人様。ああーっっ!!」

 入口を広げて見せている花唇の上部に指を当てがって、よく見えないしこりのような物を摘んだ姉貴は、感極まったような悲鳴を張り上げる。

(そうか、これがクリトリスか)

 僕は大いに感激しながら、おあずけを喰らった犬のように真っ赤に発情した姉貴のおまんこを、二度と忘れぬよう凝視して記憶に刻み込もうとしていた。

「真央さん、ローターを入れてもいいですか」
「そんな、いけません! ご主人様」
「バージンを奪ったりはしませんよ。真央さんはオシリのアナでも感じてしまう、どヘンタイな女の子なんでしょう?」
「はい、真央はオシリのアナがとても感じてしまう、どヘンタイな女の子です」
「では、オシリのアナで、おいしく食べるのですよ」

 乳首に貼っているのと同じ円筒型のローターはツルッとして太さも長さも本物のペニスほどではないが、それなりのサイズがある。姉貴の女の部分に突っ込んだら処女を破ってしまうことだろう。しかしガマガエルがそれを前でなく後ろのアナルに当てがい、ズブズブと打ち沈めていくと、何ともはしたない喜悦の表情を浮かべた姉貴は、女唇を広げクリトリスを摘んだ指を一層激しく慄わせた。そしてガマガエルは、ローターを入れ込んだオシリのアナをガムテープで塞いで言った。

「真央さん、オシリは気持ちいいですか」
「はいっ! 真央は、オシリがとっても、き、気持ちいいです、ご主人様あ~」

 よほどアナルのローターが気持ちいいのか、あやつられているにしては生々しいよがり声で甘えるように答えた姉は、男に媚びを売る淫女に成り下がっていた。

「ではお待ちかねのオナニーの時間ですよ。まず3回イキなさい」
「はいっ! ありがとうございます、ご主人様!」

 姉貴はそう言い終えないうちから僕の顔の前ですごいスピードで指を使い始めると、あっと言う間に3回昇り詰めて何度もビューッとおしっこのような液体を僕に掛けて来た。

「今度は弟に舐めてもらいなさい」
「はいっ! ありがとうございます、ご主人様っ!」

 とっくにタブーを取っ払ったかのような姉貴の声は妙に弾んでいた。

「おい岡田、背中をずらして床に仰向け寝ろ」
「はい、わかりました」
「真央さん、体を回転させてあなたも弟のチンポをしゃぶってあげなさい。必ず一緒に仲良くイクのですよ」

 それはいわゆる「シックスナイン」と言う性行為だっただろうか。知識だけあっても初めて経験するその行為は、童貞の僕には凄まじく刺激的だった。それは処女の姉貴にとっても同じことだろう。僕は夢中で姉貴のおまんこにむしゃぶりつき、姉貴も僕のペニスをくわえた口を激しく動かした。姉貴が相手ならいくらでも出せる、という暗示が強く掛かった僕は、信じられないことにさらに二度三度と口内にザーメンを放出し、その度に姉貴も到達してくれたようだ。

「離れろ!」

 お互い半狂乱状態でも、絶対者であるガマガエルの怒声はしっかり耳に届き、姉貴は僕の上から体を離していった。

「真央さん、弟のチンポをよく見るのです」
「はい、わかりました、ご主人様」

 驚くべきことに、都合6回射精を終えた僕のシンボルはなお、姉貴を求めて天に向かい力強くそそり勃っていた。ガマガエルの暗示により、姉貴とならいくらでも出すことが出来るからだが、それは言い訳に過ぎないだろう。あやつりも暗示も関係なく、僕は本心から姉貴と結ばれたいと願い、浅ましく男根を勃起させ続けていたのだ。

「真央さん、弟とえっちしたくありませんか?」
「……わかりません」

 一方姉貴の方はまだ迷っているようだった。幼い頃からバレーボールに打ち込み、健全な肉体と精神を兼ね備えた姉貴だからこそ、ガマガエルに翻弄されながら誘惑を振り払い、姉弟の範を超えないよう踏ん張っているのだろう。僕よりずっと強い精神力を示す姉貴に対する僕の想いは皮肉なことにますます強まった。

 だが、ガマガエルは姉貴の気持ちを嘲笑うかのように最後の暗示を掛けて来た。

「真央は一樹とえっちしたいです」

 その言葉を10回復唱するとガマガエルが大声を出した。

「では2人とも好きにするが良い!」
「一樹っ!」

 僕の名を呼んだ姉貴が仰向けで待つ体の上に飛び込んで来ると、唇を貪るように合わせ、潤い切った女の部分が僕の男の部分と遂に合体を果たした。

「痛っっ!!」

 やはりバージンだった姉貴は大量に出血したが、激痛を口にしながら僕の上から離れようとしなかった。そして体を合わせたまま唇を吸い合っていると、もう慣れたのか姉貴がゆっくりと動き始め、見る見るその動きが積極的になり……

「へ、好きにしろや」

 ガマガエルこと、オカルト教師鎌田がそう吐き捨てるように言った言葉は、激しい愛情行為に突入した僕達の耳には届かなかった。僕と姉貴はもう相手が血を分けた姉弟であることを忘れ、とめどない欲望のままに互いの体を求め合い、数限りなく幸せな絶頂に2人で昇り詰めると、いつしかどちらからともなく意識を喪失していたのだった。

「先生」
「何だ」

 気が付くと、オカルト教師こと鎌田先生と2人で理科室にいた僕は、服を着ながら気になって仕方なかったことを聞いていた。

「どうして姉を犯ろうとしなかったのですか?」
「俺は勃たねえんだよ!」

(やっぱりそうだったか。)

 薄々勘付いていたことを裏付けられた僕だったが、鎌田先生は余計なことは聞くな、と言ってもう山ほどある僕の疑問に答えてくれようとはしなかった。姉貴は僕より早く目覚め、隣の暗室で待機していると言う。

「お前が無様な裸のままじゃ会わせられねえからな」
「どうして……」
「余計なことは聞くなと言っただろう!」

 だが僕は続けた。質問でなければいいのだろう。

「ファラオの秘術は、解いてくれたんですね」
「ああ。だが、コイツはもらっておくぞ」

 鎌田先生は、机の引き出しに入った僕の陰毛を見せてニヤリと笑った。

「いい思いをさせてやったんだから、文句はあるまい」
「あ、あの、姉貴は……」

 聞くなと言われても、聞かないではいられなかった。が、鎌田先生は怒りはしなかった。

「お姉ちゃんにはまだ術を掛けてあるが、心配するな。
 今からお前の目の前で術を解いてやる。
 ……ついでに、ここで起きたお前との記憶も、全て、な」
「え!?」

 が、もう僕には質問が許されなかった。鎌田先生は、隣の部屋で待機している姉貴に声を掛けたのだ。

「真央さん、こちらに入っていらっしゃい」
「はい、わかりました、ご主人様」

 まだ術が掛かっている姉貴は抑揚のない声でその言葉を発すると、入って来た。服装はすっかり元に戻されていたが、脚取りはヨロヨロして危うそうだ。ブラウスやスカートの中の下着がどうなっているかは窺い知ることが出来ない。僕の方を一瞥した姉貴はすぐに真っ赤になったから、当然ここで起こったことの一部始終を記憶しているに違いない。僕の方もお尻の辺りがモゾモゾして座りが悪く、何ともいたたまれない気分だった。

(姉貴だけ、記憶を消す、だって?)

 僕はそれがどういう結果をもたらすのか考えてみたが、頭の中はまとまらなかった。ただ、もうガマガエルなどとはとても呼べないオカルト教師鎌田先生が、何か意図を持ってそんな対応を取ろうとしているのだろう、とだけはわかった。それが僕に対する好意なのか悪意なのか、そして僕と姉貴の今後の人生にどんな影響をもたらすであろうかといくら考えても判然としない。

「……ファーラオウ……」

 ハッと気付くと鎌田先生は恐らく姉貴のわずかな陰毛を目の前にかざし、椅子に座った姉貴に向かって早口で小声の呪文を唱えていた。

「いいですか、真央さん。ここで起きたことは全て忘れるのです」
「はい、わかりました、ご主人様」
「では少しお眠りなさい」

(え?)

 姉貴が椅子に座ったまま崩れ落ちると、鎌田先生はフッとごくわずかな陰毛を吹き飛ばしてしまった。僕の陰毛は机にしまったのに。

「お姉ちゃんはすぐに起きるからな。俺と面接していて体調が悪くなり倒れてしまったので、弟のお前を呼んで連れて帰ることにした、とか何とか説明して、愛しのお姉ちゃんと一緒に帰るがいい」
「鎌田先生!」
「俺は隣で黒魔術の研究でもしておるよ」

 こうして今日まで気付かなかった想いをぶつけ、超えてはならない一線を越えてしまった姉貴を連れての帰り道。意識を失うほど体調を崩してしまったことにショックを受けているらしい姉貴は、まだ頭がクラクラするとずっとこぼしていたが、一見これまでの明朗快活な姉貴と何の変わりもなかった。処女を破ったのだから、歩き辛そうにしているかと言えばそうでもない。僕は次第に今日起こったことはオカルト教師鎌田先生が作り出したイリュージョンなのではないかと疑ってしまった。その晩も姉貴の部屋で英語の課題を代行してやったが、それまで何でもなかった姉貴の一挙手一投足が気になって不自然にドキドキしてしまい、ふと気付くと、モミモミチュッチュしてえ、とおねだりした胸元や、鼻血が一生分出そうな眺めを堪能させてもらったスカートの奥からのぞく白い太股などに見とれてしまって、どうかしたの?と不思議がられてしまう有様だった。

(やっぱりあれは夢だったんだ。)

「岡田一樹君。理科室まで来て下さい。もう一度連絡します。岡田一樹君……」

 僕がそう結論付けて、今だ断ち切れない姉貴への道ならぬ想いに苦しんでいた頃だ。僕はあれから何の接触もなかったオカルト教師鎌田先生に又もや呼び出されていた。

「よう岡田。
 姉ちゃんと仲良くやってるか?」
 
 相変わらず鎌田先生は彼女いない歴30年のような外見で、そんな教師とは思えないぞんないな口ぶりで話し掛けてきた。

「ええ。そりゃまあ、もともと仲がいいですから……」
「バカ、そんなことを言ってんじゃねえよ!」

 すると鎌田先生は手指で卑猥なジェスチャーをして見せた。全く性懲りもない人だ。

「あれから何もありませんよ! 当たり前じゃないですか、きょうだいなんですから」
「ケッ! お姉ちゃんと猿みたいにやりまくったくせに、よく言うよ……」
「先生、そんなことを聞くために、僕を呼び出したんですか?」

 すると又あの「ガマガエル」と形容するのが相応しいような下卑た笑いを口元に浮かべたオカルト教師鎌田先生は、声を潜めて僕にヒソヒソと打ち明けて来たのである。

「なあ岡田。
 お前んとこのお母ちゃんは未亡人だろ?」
「え? は、はあ、そうですけど……」
「何歳だ?」
「まだ三十代です」

 僕は次第に声がか細く慄えて来るのを感じていた。

「お姉ちゃんもいいけど、お母ちゃんもいい女だよなあ……」
「せ、先生……」
「なあ岡田。
 今度はお母ちゃんのシモの毛を手に入れて来てくれないか?」

(コイツ、よりによって何てことを言い出しやがるんだ!やっぱりコイツは人間のクズ、ガマガエルで十分だ。)

 そう思った僕はしかし、ガマガエルの次の言葉に大いに気持ちを揺さぶられてしまった。

「お前さんにもいい思いをさせてやるからよ」
「先生、インポは治ったんですか?」
「バカ言え! 治るもんならとうに治してるさ」
「……母さんのシモの毛、考えてみます」

< おしまい >

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