自衛官の妻 2

6.夫を裏切る肉体

「タカくーん、入ってもいい?」

 と、その時まるで計ったようなタイミングで書斎のドアをノックされた。俺は慌ててペニスをジャージの中にしまい込み、ノートパソコンを閉じてから自分で内側からドアを開けた。

「まだお仕事やってるの? お夜食作って来たよ」
「お、ありがと」

 むすび2個と漬け物とお茶を盆に載せた千恵利が入って来た。俺と同じようなゆったりしたホームウェアは色気もくそもなく、画面の中の淫女と同一人物とはとても思えない。

「あれ、パソコン閉じちゃってる」
「もう仕事終わったから」

 床に飛散した精液は処理出来ていないし、千恵利はどうやら俺が仕事のフリしてこっそりAVを見ながらせんずっていたのだと勘付いているようだ。AVなんかじゃないのを除けば正解だし、実の所こういう事も時々あるのだ。千恵利がわざとらしく言う。

「ねえ、今度からタカ君の部屋に用事がある時は、奈々ちゃんに来させたげよっか。かわいい娘の方がいいんじゃない?」
「いや、やっぱり千恵利の方がいいよ」

 お年頃の奈々は、父親が書斎の中にこもっていかがわしいビデオを鑑賞するのが趣味である事に気付いているだろうか。思春期の息子を持った母親のような寛大さをまだ性に目覚めて日の浅そうな少女に求めるのは無理に決まっている。

「奈々ちゃんに来られちゃ困っちゃうよね-。あ、後でちゃんと床拭いといてね」

 バカな夫に呆れて苦笑しながら出て行く千恵利を見送る時、どうしても彼女のお尻が気になってしまう。アナルに優れた性感帯が存在すると言う知識はあったのに、これまで一度として千恵利のその部分を愛してやった事がなかったからだ。さっきの動画で見る限り、千恵利は夫である俺でなく憎むべき佐々木の手でアナルの歓びに目覚めてしまったのだ。俺とのセックスではあんなに乱れてしまう妻を見た事はない。そう言えば確かに千恵利がおととい俺を求めて来た時、尻穴の快楽をアピールしてたではないか。今からでも遅くない。今度彼女を抱いてやる時には、必ずアナルも愛してやるべきなのではないか。

 だが千恵利を見送った後、大量射精で冷静を取り戻した俺は、そんな気の迷いを持った自分を諫める。どうして佐々木に教えられた事を尊重する必要があると言うのだ。そもそもお互い中年の域に達した俺達夫婦にとってセックスはさほど重要な要素ではない筈で、現に性交の回数が激減した今でも二人の愛情に些かの揺らぎもないではないか。俺は頭を冷やす意味でも、折角千恵利が持って来てくれた夜食に口を付ける事とし、むすびを平らげ気を落ち着かせてから動画の続きを見る事にした。ここで一息入れたのは正解で、あのまま後半まで見続けていたらとても耐えられなかったかも知れない。そのくらい、動画の続きはさらに淫虐で俺にとっては酷な内容だった。

 潮吹きオナニーなどと言う過激な「お仕置き」の後、佐々木は何の遠慮もなく人の妻千恵利と交わっていた。既に何度も情を交わし屈服させられた後のようで、極めて従順に「ご主人様」佐々木に身体を預けごく普通の性戯にも歓びを露わにしてしまう千恵利の姿も正視に耐えなかったが、佐々木はいちいち俺の気に触るような言葉を吐きながら余裕タップリにかつての想い人千恵利を責めていたのである。

 まず床に正座させた千恵利の前に仁王立ちになった佐々木は勃起ペニスをくわえさせ、ポニーテールを乱暴に掴んで揺さぶるイラマチオを仕掛ける。おとといの夜、千恵利が俺に要求したプレイではないか。佐々木は強精なのか、実にアッサリ千恵利の口内に射精していた。

「おいしいかい? チェリー」
「はい、ご主人様のお情けはとっても素敵です」
「孝志さんのをごっくんしてやった事はあるのか?」
「いいえ、ありません」
「そうか。それじゃ近い内にやってやれよ」
「はい」
「ゴックンだけじゃねえ。俺が教えてやった気持ち良いセックスの方法を、出来るだけ夫の孝志さんにも試してみるんだ。そして次の日俺に報告しろ」
「わかりました、ご主人様」

 あのビックリするくらい情熱的で俺を夢中にさせた、一昨夜の千恵利のセックスが佐々木の命令によるものだったと知って、俺は暗澹たる思いに囚われた。これでは全くのピエロではないか。だがこの茶番劇を見せ付けられるに連れて気分が塞がっていくのと反比例するように、全身を揉み抜くような強烈な興奮のうねりが込み上げて来るのに気付いた俺は愕然とする。さっきあれだけ大量に放精したにも関わらず、猛烈な勢いで回復して来た股間の昂ぶりを再び握り締めた時、俺はハッキリと自分の中に眠っていた変態性を自覚してしまった。愛する妻が唾棄すべき男に抱かれる場面を見せ付けられて、彼女と愛し合う時よりはるかに凄まじい興奮を覚えてしまったのだから。

「ビデオに取ってタカ君に見せてやるんだからな。遠慮なく楽しんで、見せ付けてやるがいい」
「ああ、そんな、ご主人様。酷過ぎます」
「今更お澄まししようたって無駄だぞ、チェリー。ほう~ら、お前の大好きなチンポを喰らうんだ」
「ああ~っっ!!」
「気持ち良かったら、素直にそう言え。タカ君が見てるからって、嘘は吐けねえよな」
「気持ちいいっっ!!」

 画面の中の佐々木はまるでそんな俺の反応を予測していたかのように、いろいろと体位を変えてじっくり千恵利と交わり、彼女から露骨な歓びの声を搾り取っていた。千恵利は自白剤を飲んでいるから取り繕う事は叶わず、快感を覚えれば素直に口にするよりないのだ。長々とした性交が続くに従いどんどん高まってしまう千恵利が、俺には聞かせた事のない、すすり泣きのごときあえかな嬌声や絶叫のような激しいよがり泣きと共に「気持ちいい」と告げているのは、決して操られているわけではない。嘘偽りのない本心からの吐露であり、夫である俺にとっては辛い現実だった。さらに催眠術に掛かっているためか、やつの言葉は千恵利にとって逆らえない絶対の命令となるようで、騎乗位で繋がっている時にじっと身を固めようとする千恵利に佐々木は言った。
 
「チェリー、どうして動かない?」
「それは……夫に申し訳ないからです」
「じゃあ、どうして俺とセックスしてるんだ?」
「ご主人様のご命令ですから」
「それじゃ命令してやろう。俺のチンポが気持ち良かったら、もっと良くなれるように動くんだ、チェリー」
「ああっ! 駄目っ! 駄目っ! 気持ちいい~っ!」
「孝志さんに謝りなさい」
「た、タカ君、ごめんなさいっ! ああ、いいのお~っっ!!」
 
 何と言う冷酷な佐々木の命令だろう。俺に向かって謝りながら、どんどん腰の動きが浅ましくなり慎みを失っていく千恵利を見るのは胸が潰れるような思いであった。そして激しく動いていた千恵利がとうとうスパークしてしまい、イクッ! と絶叫して背筋をピンを反らして動きを止めると、又も佐々木が口を出した。

「なあ、チェリー。夫の孝志さんと俺と、どちらのチンポの方がデカイんだ?」
「ご主人様の方です」
「じゃあ、どっちの方が気持ちいい?」
「……ご主人様」
「そりゃ正直過ぎるぜ。孝志さんに申し訳ないと思わないのか」
「思います。だけど、ご主人様の方が気持ち良いのも本当ですけど、タカ君の方は一緒になってるだけで幸せなんです。彼を愛してますから」
「ほう、そいつは妬けるね。けど、そんな事を言ってる割には又腰が動き出したぜ、チェリー。お前、ホントに好きなんだな、セックスが。とんだビッチだぜ」
「だ、だって! 気持ちいいんだもん! 気持ちいい事、好きい~!」
「やれやれ、欲求不満の浮気人妻には困ったもんだな」 
「タカ君、ごめんなさい! 千恵利、イッチャウ、又イクのおっっ!!」

 俺のテンションは乱高下したが、この不道徳なビデオから一時も目を離す事は出来なかった。そして堂々と千恵利の体内に精液を注ぎ込んで、ようやく一戦を終えた佐々木は彼女を普通の服に着替えさせながら、こんな事を言った。

「なあ、チェリー。ずっとここへ来て俺と会ってくれよ」
「はい、ご主人様」
「夫と別れる気はないか?」
「そんな事、考えられません」
「俺との関係を夫の孝志さんに知られたくはないよな」
「もちろんですわ」
「もし、バレたらどうする? それでも結婚を続けるか?」
「もう妻としてあの人に合わせる顔はありません。ですから、ご主人様……」
「おいおい、俺はチェリーを嫁に貰おうなんて気はないぞ」
「そうなんですか……残念です」

――ちょっと待て! 千恵利、本気で言ってるのか?

 絶対に嘘を吐けない千恵利の言葉を聞き逃すまいと必死で聞き耳を立てていた俺は、彼女が佐々木と交わした最後の会話から、厳しい結論に達した。佐々木との関係が俺に知られたら、千恵利は自分の行動を恥じてやつの女になってしまうに違いない、と言う事だ。

「それでは今日は終わりにしよう。この部屋であった事を、お前は全て忘れてしまう。でも命令された事は実行するんだぞ、いいな。ハイッッ!!」

 だとすれば、佐々木の術に掛かっていた間の事を全て忘れてしまう千恵利に、その記憶を取り戻させてはいけない。まして、俺が彼女を問い詰めて真相を知らせるなどと言う乱暴な手段に出てしまったら完全にアウトだ。結局悔しいが佐々木の思惑通りになるしかないのか。記憶を消去されて毎日佐々木の待ち受けるカフェまで仕事に出掛ける千恵利を止める事も出来ないのだ。彼女はそのように命令されているのだから。千恵利との幸福な結婚生活を続けるためには、彼女をみすみす佐々木に抱かせてやるよりないとは、何と言う不条理だろう。俺は何とか打開策はないかと考えてみたがまるで思いつかず、絶望感に打ちひしがれるような一夜を明かしたのだった。

7.自白剤と催眠術

 次の日に掛かって来た電話で、俺はより詳しい話を佐々木から聞き出した。やはり佐々木は、海外では主に軍隊や警察が使用していると言う自白剤と自分が研究習得した催眠術を併用する事により、カフェで働かせている女性達を無意識に操り淫行を繰り返すと言う悪事を働いているらしい。それを明かしても、千恵利を人質に取られているに等しい俺には何も出来ないだろうとタカを括られたわけで、随分舐められたものだが、事実そうなのだから仕方ない。

「これまでチェリーちゃんを調教して来た動画も全部送ってやるよ。お前さんにサービスだ」
「いや、いらない。もう十分だ」
「カッコ付けんなよ。AVなんかバカらしくなるぜ。あんな美人の嫁さんがどうやってどスケベビッチに生まれ変わったのか……」
「いい加減にしろ!」

――くそう! コイツ、俺に手出しが出来ない事がわかってて好き勝手な事を……千恵利の調教ビデオだと……

 千恵利だけでなく自分をも良いように弄ぼうとする佐々木に腹を立てて怒鳴ったが、それは俺の心理まで正確に見破っているやつに対して、虚勢を張って最後のプライドを保とうとする行為に過ぎなかった。何しろ俺は、(千恵利が佐々木にエロ調教される様子を見てみたい)と言う悪魔の囁きを聞いていたのだから。

「欲しくなったらいつでも言ってくれ。とても大きな子供を産んだ人妻だなんて思えねえよな、チェリーちゃんは。お前さんみたいなボンクラ亭主に操を立てて、えらくエッチを嫌がるもんだから、あそこまで仕込むのに一月も掛かっちまったぜ」
「ボンクラで悪かったな」
「嫁さんを抱いてやらずエロビ鑑賞に精を出して、チェリーちゃんを欲求不満にしちまったんだ。あの時、お前に譲ってやったのは大間違いだったな」
「……」

 夫婦生活の細かい所まで知られている佐々木に対して、俺は何も言い返す言葉がなかった。

「初めは俺に触られただけで大泣きだぜ。お前生娘かっつーの。おかげで、ギチギチに縛り上げてやる必要があったな。そうやって、根気良く、丁寧に、優しく、セックスの気持ち良さを一から教えてやったんだぜ。毎日少なくとも5回はマジイキさせてやったよ。チェリーちゃん、お前に抱かれてこんなに気持ち良いアクメに達した事なんか一度もないって、白状してたぜ」
「そんな筈は……ない……」
「演技してたんだってよ。でも、ホントは物足りなくて、オメエがぐうぐう寝てる側でオナニーしちまった事も何度もあるそうだ」
「……もう……やめてくれ」
「おい、そんなに落ち込むなよ。それでも彼女はお前を愛してるんだぞ。お前とは一緒になっただけで幸せなんだって、言ってたじゃねえか。それに、これからはチェリーちゃんの方が積極的に、自分も気持ち良くなれるように愛してくれるからな。この間彼女を抱いた時、最高だっただろ?」
「教えてくれ。あのビデオでお前が言ってた言葉は本当なのか?」
「全部、嘘偽りのない本当さ。一体何の事を言ってるんだ?」
「千恵利を、俺から奪うつもりはないのか、と言う事だ」
「そうだな。ただし、彼女の方が望むなら、考えないでもない」
「そんな事はあり得ない」
「だな。お前が余計な事をしでかしてチェリーちゃんの記憶を戻したりしなきゃ、大丈夫だ」

 釘を刺されてしまった。やはり打開策は見つからないのか。

「催眠術なんて嘘っぱちだと思ってただろう」
「ああ」
「無意識の部分を聞き出す自白剤と同じ理屈なんだぜ。催眠術ってのは、嫌がってる行為をさせるわけじゃねえんだ。だからチェリーちゃんがお前との結婚生活を望んでるなら、それを無理に別れさせるなんて出来やしねえ。だが、彼女がお前さんに愛想を尽かしたっつうなら、遠慮なく受け入れてやるぜ。俺にも女房がいるから、性奴隷として、だがな」
「奴隷だと!」
「ビックリしたような声を出すなよ。チェリーちゃんの本性はすっげえどMみたいだからな。俺をご主人様と呼んで何でも従う、あれは彼女自身が持ってたマゾの願望を引き出してやっただけなんだぜ。てか、大抵の人間はMの欲望もSの欲望も心の奥に隠し持ってるもんだ。だからその欲望をうまく解放してやれば、チェリーちゃんは喜んで俺の奴隷になってくれるだろう。催眠術ってのは、そんなもんだ」
「眠ってる欲望を解放するのか」
「例えば、根っから望んでないやつに、死ね、とか人を殺せ、とか命令しても操る事は不可能だ。だが、そんな危険な欲望をソイツが心の底に少しでも持ってるとすれば……それを目覚めさせて催眠術で操る事は理論上可能だな、簡単じゃないが」
「難しい話になって来たな」

 千恵利は、俺と離婚したいと言う欲望を少しでも隠し持ってるのだろうか。そう言えば、佐々木との関係を俺に知られたら、もう俺の妻ではいられないなどと言ってたではないか。

――駄目だ。千恵利の記憶を取り戻すなんて、そんな危険な橋を渡る事は出来ない

 佐々木の催眠術に付けいるスキを与えてはならないのだ。

「チェリーちゃんは俺と会って、お前さんよりずっと気持ち良いセックスを教えられちまった事を、全部忘れろ、と言ったら、すぐにキレイサッパリ忘れちまうみたいだな。催眠術に掛かり易い場合と難しい場合があるんだが、そりゃもう術に掛けてやる必要もねえんじゃないか、ってくらいすぐに、全く何事もなかったかのような顔に戻っちまう。俺は羨ましいぜ、増田、お前がよ」
「人の妻に好き勝手な事を働いて、何が羨ましいんだ。からかってるんなら、やめてくれ」
「チェリーちゃんはな、お前の事を愛してて、なのに俺に抱かれて歓んじまう自分が嫌で嫌でたまんねえんだよ。だから俺とのセックスでイキまくっちまった事を、心の底から忘れてしまいたいと思ってるんだろうがっ! 身体はとうに裏切ってるくせに、チェリーちゃんの心はまだお前の事を……」
「当たり前じゃないか」

 珍しく感情を露わにした佐々木の言葉は、わずかながら俺にとっての救いであった。千恵利の身体は佐々木に屈しても、心まで催眠術で操る事は出来ないのだ。俺はやつの言葉を遮り、さんざん嘲笑されたお返しのつもりで、ハッキリと言い切った。

「千恵利と俺はもう長年愛を育んで来た、夫婦なんだ。いきなり現れたお前とは年期が違うよ。身体はともかく彼女の心までお前になびくなんて事はあり得ない」
「ほう、えらい自信だな。だけど、一体お前に何が出来る?」
「今は方法を思い付かないが、いつか必ず千恵利の術を解いて……お前に復讐してやる」
「そうかい。それは楽しみにしてるぜ」

 だが、再び人を小馬鹿にするような余裕綽々の口調に戻った佐々木に対して、空元気に過ぎない俺の挑発は虚しいだけだった。一か月の調教で、佐々木に絶対服従する性奴隷のように堕とされた千恵利が、これからもずっと心を折らず俺を想い続けてくれるのか? そもそも俺が、いつか佐々木の術を破る方法を思い付くという見通しもありはしないのだ。

「だけどよ、増田。チェリーちゃんの調教はまだ準備が終わっただけなんだぜ。本番は来週から……まあ良い、かかさず報告してやるから楽しみにしてろ。じゃあな」
「待ってくれ!」

 佐々木に聞きたい事はまだ山ほどあった。

「本当に望んでない事は、催眠術でも操れないと言ったな」
「その通りだ」
「じゃあ千恵利はあんな事……心の中じゃ望んでたって事か?」
「初めは間違いなく望んじゃなかったさ。だから縛り付けてかわいがってやったって言っただろ。だけど、毎日望んでもねえアクメを繰り返し味わわされてるうちに、チェリーちゃんの中に眠ってたわずかな欲望が目覚めちまったんだろうな。今じゃお前さんも見ての通りさ」
「結局、お前が千恵利をあんなにしちまったって事じゃないか」
「俺を責めるのは筋違いじゃねえのか。俺がこんなにマメにチェリーちゃんを抱いて歓ばせてやってた間、お前さんと来たら、彼女に指一本触れもしなかったんだろ? あんなスゲエ身体してる奥さんなのに、かわいそうだな、ハハハ……」
「……千恵利は欲求不満だったって言いたいのか」
「さあな。とにかく初めは無理矢理イカされるだけだったチェリーちゃんも、一週間もたって潮吹きを覚えた頃だったかな。だんだん素直に快感に身を任せるようになって、そのうち縛らなくても操れるようになった。だけど、俺はいろんな女を調教して来たけど、あんなに時間が掛かったのはチェリーちゃんが初めてなんだぜ。セックスは下手くそだし、この頃じゃ抱いてもくれねえボンクラな夫なんぞに義理立てしてよ。やっぱ最高の女だな、チェリーちゃんは」

 人妻として固く貞操を守ろうとした千恵利を賞賛する佐々木の言葉はしかし、俺の絶望をどんどん深めていくばかりだった。コイツは多くの女性を薬と催眠術で籠絡して来た、その道のプロなのだ。

「マジでいらねえのか、チェリーちゃんの調教ビデオ。良いズリネタになるぜ、へっへっへ……」
「それはいいと言ってるだろ! どこまで人をバカにしたら気がすむんだ!」

 妻が寝取られる動画をズリネタに自分を慰める事しか出来ない惨めな俺の立場を見透かされて、語気が荒くなってしまう。佐々木にからかわれている事はわかっても、感情がコントロール出来なかったのだ。そして俺は気になっていたもう一つの疑念をぶつける。

「もう一つ聞かせろ。どうしてこの事を俺に知らせるんだ? 黙ってりゃ、俺は全然気付いてなかったんだぞ」

 そうだ。千恵利は完璧に催眠術に掛かり、佐々木に淫行を働かれた事を覚えていないのだ。やつがわざわざ知らせてこなければ俺が勘付くわけはなかったし、これからも極秘に千恵利を好き勝手に弄ぶ事が出来た筈ではないか。

 だが予想していた「お前を苦しめるためだ」とか「別れさせるためだ」のようなハッキリした答は返って来なかった。

「んなもん、自分で考えな。まあ、こえからも逐一動画を送って、チェリーちゃんの様子を知らせてやるから楽しみにしてろ。着信拒否なんてするんじゃねえぞ」
「千恵利をお前の店にはもう行かせない、と言ったら?」
「チェリーちゃんはこれからも俺に会いにやって来る。そう暗示してやってただろう? 俺の命令は絶対だからな、下手に説得したりしねえ方がいいと思うぜ。何なら試してみなよ。後悔したって知らねえぞ」
「そうしたら……どうなるって言うんだ」
「命令を妨害されたら、忘れてたチェリーちゃんの記憶がいっぺんに戻っちまうかも知れねえな。彼女はそれに耐え切れんのかな? ハハハ……」

 俺は暗澹たる気分で電話を切った。下手に抵抗すれば破局を早めるだけなのだ。いっそ佐々木の軍門に降ってしまえば良いではないか、と悪魔の囁きが聞こえる。このまま千恵利自身全く覚えていない、一日2時間の忌まわしい佐々木との密通を黙認していれば、少なくとも表面上は彼女との幸福な生活を維持する事が出来るのだから。

――幸福なのか? 本当にそんな生活が……くそう! 俺に何か出来る事はないのか、何か……、

 幸い、明日から週末2日の猶予が与えられている。俺は何とか打開策を探ってみるつもりだった。

8.週末の抵抗と挫折

 その日金曜の夜の一家団らんの夕食も、楽しそうに談笑している妻と娘を横目に見ながら、俺だけは暗い気持ちで塞ぎ込んでいた。2人は明日行われる奈々のバレーの試合について話していたのだが。

「ねえ。タカ君も一緒に来てくれるんでしょ」
「えっ!?」
「もう、パパったら。私の試合だよ」
「あ、ああ、もちろん行くに決まってるじゃないか」

 正直上の空で全く聞いていなかった。

「タカ君、まだ風邪気味なの? 今日も一寸変だよ」
「そうかもな。今日は風呂に入らないでおく」
「無理しないでね。明日も寝てていいんだよ」
「いや、奈々の試合には這ってでもいくぞ」
「そうだよね。パパは奈々ちゃん命なんだもん」

 ついこの前までは何のてらいもなく親馬鹿で子煩悩な父親を演じる事が出来たのに、心にポッカリと大きな穴が開いてしまった今では虚しいだけだ。そして食後すぐ書斎にこもった俺は、佐々木から送り付けられた忌まわしい千恵利の陵辱動画を削除するどころか、又も目を皿のようにして見ないではいられない。そしてこんな状況で何を考えているのだ、と自分を嘲りつつも、異様に昂ぶる勃起ペニスを握り締めてしまう。画面の中で俺にわびながら、佐々木に貫かれる快感に破れて自ら腰を使いトチ狂ってしまう、俺には見せた事のない痴態を晒す千恵利に向かって、浅ましく硬直した肉塊は猛烈な勢いで白濁液をぶちまけた。

「奈々ちゃん、頑張れ-」

 翌日、体育館の2階席に陣取った保護者応援団の中で歓声を上げる千恵利は大柄だしその美貌ぶりが一際目立つ。恐らく他の保護者達の中でも評判になっているだろう。俺は千恵利のお供で足繁く応援に駆け付けているのだが、最近他のお父さん連中の姿をよく見掛けるのは彼女が目当てなのではないかと邪推している。千恵利だけではない。彼女が応援している娘の奈々も、この母にしてと言いたくなるほど長身の美少女で、おまけにエースアタッカーだ。恐らく奈々の最近豊かになって来て時折揺れてしまう乳房やムチムチのお尻、そしてスラリと長い美脚は男達をこよなく悩殺しているに違いない。何を隠そう、父親である俺がそうなのだから。

 だが彼女達の夫として父として鼻高々である筈の俺は、隣に座るこの美しい妻が心ならずも不義を働き佐々木との密通を重ねていると言う事実に、心が鬱屈して晴れなかった。それなのに昨夜も彼女の寝取られ動画で異様に興奮して何発も抜いてしまった俺の変態性欲は治まらず、コートに立つアイドルみたいな奈々のブルマ尻にひどくカッカして、ズボンの中を浅ましく張り切らせてしまっていた。

――チッ! 一体俺は何を考えているんだ。千恵利を佐々木から引き離す方策を考えなきゃならないこんな時に、奈々を見てチンポをおっ勃てちまうとはな

 最愛の妻が寝取られる場面で興奮してしまい、試合中の娘を嫌らしい目で視姦してしまう。こんなスケベな変態親父だから天罰が下ったのではないかと、下らぬ妄想が頭に浮かんで離れない。そして、それが悲惨な結果に終わるかも知れぬと言う予感に不安を覚えながら、せめてもの抵抗を試みようと、その夜千恵利をベッドに誘った。俺より佐々木のペニスの方が気持ち良い、と白状させられていた千恵利だが、俺とは合体しているだけで幸福を感じるとも言ってくれたのだ。ならば肉体的には物足りなくても、千恵利を抱いて歓ばせてやろう。そうやって千恵利の心を満たし夫婦の絆を揺るぎないものとするのだ。それが身体の方は既に佐々木に寝取られてしまった妻を繋ぎ止める方策のつもりだった。そしてそう決意すると娘に欲情してしまう邪念も消え、俺は隣で応援している千恵利の手をそっと取る。周囲を気にしない夫の行為に戸惑いを見せる千恵利も、羞じらいながら拒否はせず、妻を抱いてやりたいと言う正常な欲情がどんどん込み上げて来た。これなら大丈夫だろう。さっき頭をかすめた不安も消えたのだが。

 結果は最悪だった。恐れていた不安が現実のものとなり、応援中あんなに痛い程屹立していた俺の欲棒は、千恵利を抱こうとすると萎えてしまって使い物にならなかったのだ。千恵利は以前と比べ物にならぬ巧みなテクニックで俺を元気にしようと奮闘してくれたのだが、この口唇の使い方自体佐々木に仕込まれて習得したものだと考えてしまうと、俺の身体のテンションは下がってしまい、彼女がかわいそうに思えるくらい頑固に勃起してくれなかった。結局アナルを舐め、乳房に挟んでパイずりを施し、手と口の懸命な奉仕で何とか硬度を増した俺のペニスだが、千恵利と身体を合わせて挿入しようとするとやはり駄目だった。完璧な精神的インポテンツである。俺は以前にもこういう状態に陥った経験があるので、優しい千恵利は不満などオクビに出さない。それどころか、「タカ君、やっぱり体調が良くないんだよ、又今度にしようね。こんなの絶対気にしちゃ駄目だよ」と慰めてくれる始末だった。

 こうして不完全燃焼で互いの部屋に別れた後、俺は全くのピエロと化してしまった自分を罵りながら、例の寝取られビデオで手淫に耽った。この日はさらに、今別れた千恵利もオナニーで欲求不満を解消しているかも知れないと言う想像が加わってますます興奮してしまい、皮肉な事に何発も抜いてしまう。こんな事なら、さっきオナニーの見せっこを提案するんだったかな、とあまりにも低俗な考えが頭に浮かんだ俺。佐々木に抵抗するどころか、全くの敗残者に成り下がってしまったと自覚せざると得なかった。

 翌日曜も、無理しないでいいんだよ、と言う千恵利の忠告を押し切って応援に出掛けた俺は、娘のブルマ姿にひどく欲情するくせに肝心な所で役に立たない大馬鹿物のペニスに天誅を加えるような気持ちで、やけになって体育館のトイレにこもり指を使って精を抜いた。そしてその夜も千恵利の寝取られビデオを鑑賞して自慰行為に耽ってしまうのがやめられなかった。結局二日の余裕があったのに、俺は佐々木の術に対抗する術を何ら考え付かず、千恵利を抱いて彼女の気持ちを繋ぎ止めようとしても悲惨な結果に終わった。だが己の無力を思い知らされ絶望感が深まるのに反比例して、自暴自棄になって耽ってしまう自?行為の興奮はいよいよ高まり、一体どこに隠れていたのかと不思議に思う程大量の精液を、佐々木に抱かれて乱れ狂う千恵利に向かってぶちまけてしまうのだった。

9.千恵利のデビュー

 次の日から連日送られて来たビデオの内容は、おおよそ俺が想像していたおぞましいものだった。佐々木は言葉を濁していたが、千恵利は例の白い部屋で米兵と思われる外国人男性の相手をさせられていたのだ。

「いよいよチェリーちゃんがデビューしたぞ」
 
 憎たらしい佐々木はそんな言い方をした。やつのカフェには秘密があり、日本人ウェイトレス達が米兵相手に極秘で性的サービスを提供しているらしいのだ。

「アメリカ兵の中に地元住民相手のレイプ事件を起こす輩が多くて大きな問題になってるのはお前も知ってるだろう。若くてヤリたい盛りの兵隊達の性欲処理は駐留米軍にとって頭痛のタネなんだな。そこで俺が一肌脱いでやったと言うわけさ」
 
 要するに日本人女性に米兵相手の売春を斡旋して商売にしているわけだ。それも佐々木が薬物と催眠術で操って、本人も知らない間に客を取らせると言う悪質なやり方なのだろう。千恵利に対するやり口から俺はそう判断した。そうでもしなければ、レイプを働くような性欲過多な外国人兵の相手など、玄人女性でも恐れをなして勤まるまい事は、千恵利を陵辱する連中を見れば納得だった。

 だが自分の妻に対してすら抗議も出来ぬ腑抜けな俺に、佐々木の明らかな犯罪行為を告発する勇気などある筈もない。それどころか、毎日送られて来る千恵利の陵辱動画を、あろう事か心待ちにしてしまっている俺がいた。

「ところでお前、チェリーちゃん相手に勃たなくなっちまったんだってな」
「余計なお世話だ」

 操られて嘘の吐けない千恵利から、そんな夫婦間の秘密まで洩れてしまったらしい。俺は最早腹が立つより諦めの境地に陥って来た。

「客を取ってればチェリーちゃんも欲求不満になる心配はいらねえ。何しろやつら溜まっててスゲエからな。特に黒いやつらはナニがデカ過ぎて、ありゃ人間じゃねえよ」

 千恵利が相手をさせられている米兵は毎回違っていたが、皆とても激しいセックスを求めていた。だが佐々木の手で「調教」されてしまった千恵利も負けてはおらず、やつらに全くヒケを取らない淫乱ぶりを発揮していたように思われる。とりわけ黒人兵の巨根ぶりはど迫力で、口に頬張るのも大変そうだったが、千恵利はしっかりと女の部分に迎え入れて腰を使い、より一層激しく燃えているようにすら見えた。彼女が米兵に陵辱されて盛んに叫んでいたよがり声も英語で、俺には理解出来なかったのだが、普通ならどんな下品な女性でも口にするのがはばかられるような卑語を発していたようだ。

「薬を飲む時一緒に避妊薬も飲ませてるから心配するな。さすがに腹が大きくなって来たら女達も気付いちまって、記憶を一気に取り戻す危険がある。そんな危ない橋なんか渡れねえよ」

 やはり佐々木は千恵利だけでなく、多くの日本人女性に催眠術を掛けて、当人も知らない間に米兵の客を取らせていたようだ。そして妊娠しないように避妊薬を与えているのも、女性達のためでなく、自己保身のためなのだ。いかにも鬼畜で狡猾な佐々木らしい考え方で、こんな男に千恵利をたぶらかされたのかと思うと、悔しくてたまらない。なのに、やつが送り付けて来る動画の中で性の歓びにトチ狂う千恵利の痴態をオカズにせんずってしまうのは、今や俺にとって欠かす事の出来ない一番の楽しみになっていた。毎回記憶を失うように暗示を掛ける佐々木の催眠術も完璧なようで、おかげで表面上は以前と何も変わらない、愛する千恵利や奈々と過ごす平穏で幸せな毎日が続いている。ビデオの中で黒人のビッグペニスを貪って悶え狂う淫乱ぶりを発揮している下品な女と、上品で美しい理想的な妻千恵利は本当に同一人物なのだろうか、彼女に似た別人なのではないかと、言う疑惑さえ頭に浮かんで来た。

「いくら命令しても、根っから嫌いなプレイはNGっつう女も多いんだがな、チェリーちゃんは何でもオッケーだからありがたいぜ。顔射、中出し、何でもアリだから、ザーメンをぶっ掛けられまくってんだろ? オプションでプレイを追加すると料金が発生するシステムだから、今やチェリーちゃんがうちのナンバーワンの稼ぎ頭だ。もちろん給料もはずんでやるから、ありがたく思え」
「ありがたく思え、だと?!」
「インポの夫の代わりにヨメさんの欲求不満を解消してやって、金だってガッポリ入って来る。そしてチェリーちゃんは自分の行為を完全に忘れちまう。こんなオイシイ話はないだろう? 正にWIN-WINの関係だな、そうは思わないか、増田」
「何を勝手な……」
「それにお前だって、あの歳でもあんなに綺麗なヨメさんがアメ公らにヤられるのを見て、シコシコ楽しんでるんだろ? チェリーちゃん言ってたぜ、夕食後うちの旦那はずっと自分の部屋に閉じこもってエッチなビデオを見てますって」
「うるさいっ!」
「まさか、それが自分のエロ動画だとは思ってないだろうがな。来週からはいよいよ例の司令官様とプレイさせてやるから楽しみにしてな。実はコイツ、マジもんのど変態で、困った性癖でよ……」

 図星を指されてカッとなった俺は、そこで電話を切った。だが「ど変態で、困った性癖」だと言う司令官に、千恵利が一体どんな変質的プレイを要求されるのかと想像して、ドス黒い欲情がムラムラと込み上げて来る俺は、どんな男よりも始末に負えない究極のど変態だ。こんな俺に最早佐々木に抗議する資格などありはしなかった。

10.司令官の変態プレイ

「どうだ、凄かったろ? 司令官様のプレイはよ、へっへっへ……興奮したか? 感想を聞かせてくれよ」

 次の週さっそく送られて来たプレイの内容はやはり凄まじいものであった。一言で言えば、最高に過激な無修正アダルトビデオ。登場していたのは司令官と思われる初老でスキンヘッドの白人と、若い二人の黒人男性。さらに体高では彼らにひけを取らない佐々木もちゃっかり参加して、4人掛かりで千恵利に淫虐極まりない陵辱を加えていたのだ。 

 恐らく司令官の趣味は女性を拘束して責めるSMプレイなのだろう。強制的に開口させる金具と鼻フックで美しい顔を醜く変形された千恵利は、M字に脚を開かせる椅子に固定され、二時間ずっと休みなく責められていた。とりわけショッキングだったのは、二人の黒人の巨根で、ビール瓶みたいなと言う形容がピッタリな太さの上異様に長く、これは本当に生身の人間なのか、肉体改造されたモンスターなのではないか、と疑ってしまう程の迫力だった。そして、その二本のバケモノペニスと、そこまでではないが日本人男性では滅多にお目に掛かれない逞しさの司令官、さらに佐々木の持ち物は、閉じる事の出来ない千恵利の口と女性器を代わる代わる飽くことなく犯し続けてはおぞましい粘液を吐き出し、しまいに千恵利の顔から全身がくまなくザーメンパックのような精液塗れに汚されていた。

 下劣な本性を剥き出しに笑いながら感想を尋ねて来た佐々木に、情けなく震える声を搾り出すようにして俺は言った。

「……お願いだ、千恵利を壊さないでくれ」
「ハハハ、何を言ってる。今日のはまだ挨拶代わりのプレイだ。これからまだまだ過激になるぞ」
「もう、こんな事はやめろ。俺はどうなっても良いから、彼女を助けてくれ、頼む」
「威勢の良い事を言ってた癖に、もう怖じ気付いたのか? 安心しろ、やつらがやり過ぎねえように、俺が付いてる。チェリーちゃんの身体を傷付けるようなプレイは絶対許しゃしねえ。それにあいつら、ああ見えて女扱いのプロだからよ」
「あの黒人がか」
「そうだ。もちろん洋物だが、お前も大好きなエロビに多数出演してる本物のポルノ男優だ。あのデカチンは、何かヤバいクスリでもやってるのか知れねえな」
「千恵利は生身の人間だぞ!」
「お前さんが思ってる程、女ってのはヤワじゃねえ。子供を産んだ事のあるチェリーちゃんなら大丈夫さ。司令官もSMプレイの場数を踏んでるし、こっそりポルノビデオに出た経験だってある、とんでもねえオッサンだからよ。ただ、頑丈な外人女と違って日本人女性はデリケートだから、俺がよく見て手加減させてるんだ」

 つまり俺が「最高に過激な無修正アダルトビデオ」と思ったのは正鵠を射ていたわけで、千恵利はその道のプロであるとんでもない男達に陵辱されたわけだ。

「やつらちゃんと心得てるから、デカチンをいきなりマンコにぶち込んだりしてなかっただろ? そもそも今日は次からのプレイの下準備をしたに過ぎねえんだからな」

 確かにそうだった。ビデオの中の男達は、まず初めにガッチリと拘束した千恵利の開かされた口に一人が勃起ペニスを突っ込んだが、その男は顔に手を回して耳元だの首筋だのを妙に優しく愛撫していたし、残りの三人はAVではおなじみの電動玩具などを駆使して、じっくりとエロチックな刺激を加えていたのである。決して乱暴に扱っていたわけでなく、緩急を付けツボを心得た、さすがはプロのポルノ男優だと、言われてみれば納得出来る巧みな手管で千恵利の性感を開かせていたようだ。そして口を犯していた男が射精すると、他の男と交替して愛撫の持ち場が変わる。初めは屈辱と苦痛で涙目だった千恵利の歪んで正視に耐えなかった顔が、4人掛かりの性戯でたちまち紅潮してエクスタシーを訴える表情に変貌する様に、俺は固唾を飲んで見入ってしまい、無限にザーメンを出せるのではないかと疑われる程大量に放出している画面の中の男達にも負けぬ程、せんずりによって前半だけで何発もの精子をしぶかせてしまっていた。反応のわかり辛い千恵利も、輪姦連続中出し陵辱に入るまでに、何度も何度も性悦の極みに昇り詰めていたのは間違いない。彼女も又幾度となく、本当に噴水のようにど派手な愛液の潮をまき散らしていたからだ。

「それにしてもチェリーちゃんは大したもんだな。いくらドバドバと潮を吹かせて貰った後とは言え、あれだけのデカチンを楽々呑み込んでたじゃねえか。黒人どもも、あんまりチェリーちゃんの具合が良いんで、喜んで何発も出してやってたな。そのうちガバガバマンコになっちまうかも知れねえが、まあ良かろう」

 佐々木が嘲笑する次の言葉に激怒せねばならぬ筈の俺は、腑抜けのように抗議一つ出来なかった。そして屈辱を噛み締めていると、仕事中コッソリ通話している状況なのに、千恵利と交接出来なくなった愚か者のペニスが猛烈に勃起している事に気付く。一体俺の身体はどこで狂ってしまったのだろう。

「どうせお前さんはもうチェリーちゃんを抱く事なんか出来やしねえからな。あんなデカチンで大歓びしちまうヨメさんを見せ付けられちゃ、ますます自信喪失して立ち直れねえだろうよ。まあ、せいぜいせんずりでもぶっこいてろ。彼女の欲求不満の解消は、全部俺達に任せてりゃいいんだ」

 黙り込んで抗議の言葉一つ口にしなくなった俺に拍子抜けしただろうか。佐々木は次の言葉を言い残してアッサリ電話を切った。

「次からは司令官様が大好きなアナルを中心にかわいがって下さるそうだから、楽しみにしてろ、じゃあな」

 今日の動画でも男達は千恵利のアナルを欠かさず責めていた。何度も浣腸を繰り返されて、歓喜の潮と同時に汚物混じりの浣腸液を洩らしてしまうと言う恥をかかされていたし、やつらに犯される時は必ず尻穴にも結構大きなバイブレータの類を仕込まれていたようだ。

――今日は下準備だと言ってたな。じゃあ、あのバケモノペニスでアナルまで……

 だがこの時俺は、妻の身体が破壊されてしまうと言う恐怖が不思議とわいて来なかった。余りに強烈な映像のため現実感が乏しく、まるで自分とは無関係なAV女優が酷い扱いを受けているかのような錯覚を覚え始めていたのである。誰が仕事で演じている彼女達の心配をすると言うのだ。視聴者は陵辱される彼女達をオカズとして性欲処理に励めば良いだけだ。

 毎日のように陵辱されている筈なのに、その記憶を完璧に消されて帰って来る千恵利からは、まるでそんな気配は窺えない。俺にも娘の奈々にも優しくて慎ましく聡明な、理想の妻のままなのだ。佐々木がわざわざ教えてくれなければ、彼女の異変に気付きもしなかっただろう。ならばもう余計な心配などやめてしまえば良いのではないか。

 そんな捨て鉢な思考に頭を支配され始めた俺は、最愛の妻が公然と寝取られていると言う現実に耐えられなくなって、シャッポを脱いでしまったのだろう。佐々木の送り付けて来る動画は過激な無修正のエロビに過ぎず、余りにも恥ずかしい狂態を晒している美熟女は、千恵利によく似たAV女優なのだ。

 そう思い込んでしまうより、ボロボロに崩れ落ちてしまいそうな俺の正常な理性を保つ術がなかったのかも知れない。  

 その後二日と置かず送られて来る動画はますます過激な内容となり、SM陵辱系のAVが趣味である俺の邪悪な欲求をこよなく慰めてくれた。佐々木が言ったように、鞭打ちや熱蝋責めや陰毛剃りと言った千恵利の身体に痕跡を残す恐れがあるプレイは封印されていたものの、それ以外およそありとあらゆる本格的かつ変質的なSMプレイが網羅されていたと言っても過言ではない。とりわけ同じ人間のモノとは思われぬ黒人の巨根によるアナルファックは強烈で、二本のビール瓶クラスのビッグペニスが前後の秘穴を貫いているのは、千恵利と別人だがよく似たAV嬢の身体が心配になる程のど迫力だった。俺が夕食後書斎にこもりせんずり三昧の至福の時を過ごすのも、完全に毎日欠かせない日課となった。それでも家族三人の平穏で幸せな生活は表面上波風が立たずに続いていたのである。

 いや、一度こんなアクシデントがあった。いつものように夕食後すぐ自室にこもって、千恵利の陵辱動画を夢中で鑑賞していた所、かなりの至近距離から「パパ、ママがね、早くお風呂に入って、だって」と奈々に声を掛けられた。彼女は千恵利に言われて俺を呼びに来たのだ。もちろん奈々は黙っていきなり父の部屋に入るような躾けの悪い娘ではない。彼女はちゃんとノックしたのに、イヤホンを耳に付けて、何と大きな軍用犬によって獣姦されると言う新しい趣向の責めに千恵利が悶え狂う素晴らしい動画に固唾を飲んで見入っていた俺は、ノックも無視し娘が入って来るのにも気付かないと言う大失態だった。何しろその時俺はジャージズボンを下ろし、剥き出しのペニスをしごき上げている真っ最中。犬に犯されると言う蛮行をさすがに嫌がった千恵利がM字開脚に拘束され、人間の女を陵辱する訓練を施されたと言うドーベルマンのヒラヒラした長い舌で女性器の奥深くまで舐めしゃぶられる快感に取り乱し、とうとう絶叫して激し昇り詰めてしまうオイシイ瞬間に合わせて、俺も手の動きを早めスパートしていたのだから。

 背後から奈々に声を掛けられてハッと気付き、慌てて振り向いた時にはもう手遅れ。奈々の端正な顔が父親の自慰行為に気付いて引き攣った途端に、俺のペニスは爆発してブシャッと精液をまき散らした。大慌てでジャージをはき直しパソコン画面を閉じた俺の耳に、「バッカじゃないの、さいってえ」と低い声で言い残し逃げるように去って行く奈々の言葉が聞こえた。だがど変態で大馬鹿者の俺は、かわいい娘に決定的な恥ずかしい瞬間を見られてしまった事自体に、新鮮な興奮を覚えてしまう。ザーメンの飛散した床の処理も入浴も後に伸ばし、その直後も千恵利が犬の異様な形状のペニスで犯される狂った動画で、さらにせんずってしまう始末だった。

 そんな事があってから奈々は口も利いてくれなくなった。だが思春期の娘が父親を毛嫌いするのはよくある事だと気楽に構え、どんどん過激で変質的になっていく千恵利の寝取られ動画でせんずってしまう俺の悪癖も、一向に改まらなかったのである。

< 続く >

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