自衛官の妻 4

14.佐々木のミスリード

「おい増田、起きろ!」

 どのくらいたったのだろう。佐々木に身体を揺り動かされて目を覚ました俺は、そこがまだ例の白い部屋の中だと気付く。室内は2人切りで、千恵利や奈々はいなかった。

「千恵利は?」
「何寝ぼけてるんだよ、しっかりしろ! お前、悪い夢でも見てたんじゃないのか?」
「ダイジョーブ、ですか?」

 2人切りだと思ったら、部屋のすみにいたキャサリンが声を掛けて来た。

「ゴメンナサイ、ハーブティー、ワルカッタ」
「すまんな増田。お前体質的に合わなかったんだな。戻しちまってから、しばらく気を失ってたんだよ」
「そうか……」
「まれにハーブで気分が悪くなる人間がいるんだよ。本当に悪かった」
「オイシャサン、イキマスカ?」
「いやいい、大丈夫だ」

 心配そうなキャサリンの問い掛けに、俺は即答していた。意識ははっきりしているし、本当に悪夢を見て目覚めた直後みたいで心臓がドキドキしていたが、夢だとわかって安心した俺はむしろ晴れやかな気持ちだった。

――そうか、あれは全部夢だったのか。そうだよな、あんな事があるわけない

 正気を取り戻した俺はそう冷静に判断した。ちょっと気を失っていただけだろう。どこも具合は悪くないし、医者に掛かるほどではないと思った。

「キャサリン、もういい」

 キャサリンが部屋を出て行くと、佐々木が言った。

「いいか増田、あれは夢だったんだ。そう思え」
「はい、わかりました」

 俺の口からはごく自然に丁寧な言葉が出ていた。

――ん? 俺はどうしてこんな言葉使いをしてるんだ?

「今からしばらくの間、お前は自分の感情に素直に行動しろ。世間体だとか、余計な事は一切考えるんじゃないぞ。わかったな、ハイッッ!!」

 一体この男は何を言いたいのだろう? 妙な事を言うやつだと思ったが、佐々木が大きく手を叩くと、すぐにモヤモヤが晴れた。そうだ、俺は誰にも干渉される事などない、自立した大人だ。佐々木の言葉は当たり前じゃないか。

「よし、お前がまともになった所で、嫁さんと娘に会いに行こう」
「えっ!?」
「どうした? お前、娘の事で俺に話があったんじゃなかったのか?」
「そ、そうだったな」

 さっきまでリアルな悪夢を見ていたせいで、すっかり思い違いをしていたようだ。俺はバイトを始めると言う奈々が心配で佐々木に会いに来たのだけれど、キャサリンと言う外人妻が作った変なお茶のせいでぶっ倒れてしまったのだ。つまり、まだ千恵利や奈々には会ってもいない事になる。正直ホッとすると同時に、家族に会う事にためらいを覚えた俺は内心苦笑した。

――参ったな。あんなとんでもない夢を見ちまった後で、千恵利や奈々とまともに顔が合わせられるだろうか?

 それにしても本当に薄気味悪いくらい、細部までリアルな夢だった。とりわけ奈々のロストバージンと、顔に小便を掛けられた時に迫って来たドアップの女性器が生々しく記憶に残っている。いずれもまともな父親が一生見る筈のない娘の痴態で、あれが全部夢だったと言う証拠に他ならない。

 エレベーターで一階に下りると、キャサリンがもう千恵利と奈々を連れて待っていた。奈々は学校帰りの制服で、千恵利は普段着にエプロンを掛けただけ。あの、佐々木が送り付けて来た千恵利の陵辱動画も、全部夢だったのではないか、と一瞬頭を掠めたくらい普通の様子だった。

 そこで、佐々木と千恵利から、奈々のアルバイトについて説明を受ける。毎日学校が終わってからの2時間ばかり、千恵利と一緒に働いてから帰宅するのだと言う。奈々に聞いてみた。

「英語の勉強になりそうなのか?」
「うん、バッチリだよ。アメリカの人が沢山いて、もう最高」

 普段口を利いてくれない奈々だが、人前だけにちゃんと話してくれた。タメ口なのが気になるが、まあ良いだろう。一寸嬉しくなった俺は安心した。それに千恵利も言う。

「ね、言ってた通りでしょ。それに私がずっと一緒だから大丈夫なんだって。パパはもう、心配性なんだから」

――アレ? 千恵利が一緒だから大丈夫? その通りだな。俺はどうしてあんなに心配していたんだろう

 千恵利が一緒だからこそ心配だったような気がするのだが、よく考えるとおかしな話だ。俺が何を不安に思っていたのか、思い出せない。と言う事は千恵利が言う通り、娘がかわいいあまり俺が過剰に心配してるだけだったのだろう。ともあれ、わざわざ店にやって来て、佐々木と直接話をして良かった。変な心配も消えたし、奈々を安心して働かせる事が出来る。

 ところがここで予期せぬ事態が起こった。妻や娘と一緒に帰ろうとすると、佐々木が駄目だと言うのである。

「奈々さんは今からすぐ『研修』を受けてもらうからな。その間、千恵利さんには『上の階』で働いててもらうよ」

 佐々木は「研修」と「上の階」と言う言葉を妙に強調して言ったのだが、その時俺は不思議な考えに捕らわれた。

――奈々を「研修」させるだって? それに千恵利は「上の階」で働く、だと?

「その研修と言うのはどんな事をするんだ?」
「明日から働いて貰うために、アメリカ兵の接待のやり方なんかを、俺がじきじきに指導する。まあ、2時間は掛かるかな」
「2時間もか」
「アメ公は日本人より厄介なやつが多いんだよ。デカいやつも多いし」

 「デカい」と言う言葉は体格だけを指しているわけではないように、なぜか聞こえた。

「それに奈々さんは初めての経験だろう? 俺が一から懇切丁寧に教えてやらないとな。いいですね。奈々さん」
「はい、よろしくお願いします」

 奈々が深々とお辞儀をする姿を見て悪夢が蘇った。まるでこの後「ご主人様」と続けそうに見えたのだ。つまり、この研修は、初めての経験、イコール、バージンの奈々を、佐々木が一から……

――待て! 俺は一体何を考えているんだ。あんなのただの夢じゃないか

「千恵利さんには、待っている間上の階で特別なお客様の相手をして貰うよ。実は米軍のVIPの方からじきじきに指名が掛かってるんで」
「うわあ、凄いんだね、ママ」

――ここはただのカフェじゃなかったのか? 奈々、お前は知らないだろうけど、「指名」が掛かるなんて、まるで性風俗だぞ

 佐々木が2人を2階に連れて上がろうとエレベーターに向かった時、屈強な見張り番を見て俺は迷った。ここは何としても止めるべきではないのか? もちろん悪夢のせいで俺が考え過ぎている可能性が高い。こんな所で頑固親父を演じてしまったら、奈々との関係はますます冷え込んでしまうだろう。それに千恵利との関係も。

 だがその場を動かず見ている俺に向かって、エレベーターを呼んでから振り向いた佐々木があからさまな挑発のトリガーを引く。

「どうした増田、止めないのか? チェリーちゃんも奈々ちゃんも、俺が貰ってくぜ」
「やめろ! 千恵利も奈々も行っちゃいけない、それは罠だ、罠なんだ!」
「タカ君、どうしたの?」
「パパ……」

 もうハッキリわかってしまった。あれは悪夢なんかじゃない。全て本当に起こった事だったのだ!

 俺が突然詰め寄ると、千恵利と奈々は驚き戸惑うばかりだった。彼女達は催眠中の記憶を消されているのだろう。そして佐々木は俺に向かい、なぜか両手を広げて無防備な体勢を取る。

「ホラホラ、どうした増田。嫁さんと娘を行かせたくねえんだったら、俺を殴って力ずくで止めてみな。出来ねえのか? ケッ! 弱虫め、これだからせんずり野郎はよ……」

――もう我慢出来ない! そうだ、自分の気持ちに素直にならなくては。世間体とか、余計な事なんか考えちゃいられないぞ!

「キャーッ!」
「タカ君、やめて!」

 俺は無我夢中で佐々木の胸倉を掴むと、思い切りぶん殴っていた。一発、二発、三発……佐々木はなぜか全く無抵抗で、所構わぬ俺のパンチで歯が折れたらしく、ゲホッと血反吐を吐く。そこでようやく見張りの大男が割って入り、はるかに強烈なパンチを喰らった俺はあっさりダウンして、意識がなくなってしまった。

 次に俺が目覚めたのは留置所の鉄格子の中だった。意識が戻るとすぐさま面会に来ていた佐々木が現れたのだが、やつは顔に大きな包帯を巻いていた。頭がひどくズキズキと痛んだが、こんな場所に入れられる羽目になった経緯は、全て明瞭に覚えていた。

――そうだ。あれは夢なんかじゃない。佐々木に会いに行ってから殴ってしまうまでの一部始終が、全部本当に起こった事なんだ

 ところが不思議な事に、俺が生まれて初めて暴力を振るう原因となった佐々木に対する激しい憎悪は嘘のように消えており、鉄格子を隔ててすぐ前にいるこの男と、俺は極めて冷静に話をする事が出来た。いや、本当は自分が「冷静」だと思い込まされていただけだったのだが。

 俺はあの「ハーブティー」を飲んでしまって掛けられた強力な催眠術にずっと支配されていたのである。術者である佐々木が解いてくれない限り、自力で逃れるのは不可能だった。

「いいか増田。ここにいる間、余計な事は一切しゃべるな。黙秘権はお前の権利であり、それを誰にも咎められる事はない。わかったな?」
「はい、わかりました」

 なぜだろう。憎んでいた筈の佐々木に、自然と服従してしまう俺がいた。

「それがお前のためなんだからな。黙ってれば、じきに俺がお前をここから出してやる」
「ありがとうございます、佐々木様」

 激情に任せて暴行を加えてしまったと言うのに、彼は何と寛大で慈悲深いのだろう。俺の口は素直に「佐々木様」と呼んでいた。

「よし、それじゃもう一言もしゃべるな。いいか増田。お前は違法なドラッグを使用していたために幻覚を見て錯乱し、あんなバカなマネをしでかしたんだ。言わば病人だな。つまりお前には責任能力がなかったし、罪に問われる事もないんだ。どうだ? 名案だろう、増田」

 暴行罪で刑事罰でも受けようものなら、俺の人生は終わってしまう所だった。俺は佐々木のアイディアに素直に納得し、感謝の言葉を述べようとしたのだが、もう口は頑として一言も発してはくれなかった。

「じゃあな」
「!!」

 去っていく佐々木に「待ってくれ」とジェスチャーで伝えようとしたが、取り合ってはくれなかった。まあ良い。どの道本当の事を話す気などさらさらないのだから。催眠術で操られた挙げ句、挑発されて殴ってしまったなどと言う戯言を誰が信じてくれるだろう。何より家族三人が操られて演じてしまった狂った時間の事は、絶対他人に知られてはならない秘密だ。

 千恵利が面会に来た時も、俺は沈黙を守るよりなかった。こんな不祥事を起こした夫であるのに、彼女はとても優しくて、目から自然と涙が溢れて来た。どうしてあんな事をしてしまったのかと聞いても頑として口を割らない俺だったが、千恵利は初めて見る俺の涙で了解してくれたようだった。

「うん、わかった。言いたくないんだったら、言わないでいいよ。私はタカ君を信じてるから、早く戻って来るんだよ」

 彼女自身泣きながら去って行く千恵利の後ろ姿を見送りながら、俺は佐々木の優しさを理解した。何かしゃべればそれはきっと愛する妻を傷付けてしまう。催眠中のおぞましい記憶を完璧に消去されている千恵利だが、今となってはそれを封印したままにしておくのが最良の選択なのだ。とりわけ、俺のみならず娘の奈々までも淫行に巻き込んでしまったあの時間の記憶を取り戻してしまったら、彼女には絶対耐えられないだろう。記憶が残っている俺が盾となって秘密を誰にも洩らさず、愛する妻千恵利を守ってやらねばならないのだ。

 そして留置所で過ごす手持ち無沙汰でやたらと長く感じられる時間の間、俺は次第に自分の記憶を疑い始めていた。そもそも家族三人が操られてしまったあの狂った時間は、俺の妄想に過ぎないのではないか。万一あれが本当だったら、俺はもう千恵利や奈々に合わせる顔がなく、隠してこれまで通りの生活を彼女達と過ごす自信はまるでない。すなわち家庭崩壊である。だからあんな事は初めから起こってはいないのだ。

――何だ、佐々木が言ってた通りじゃないか。俺はウッカリ飲んでしまった脱法ハーブのおかげで精神が錯乱して、あんな酷い幻覚を見た挙げ句、佐々木を殴ってしまったんだ

 こうして自力で真実に到達した俺は、もう迷いなく完全黙秘を通した。薬物検査で陽性と判定された俺は、罪を問われる事もなく精神j病院に移送される。だが俺は慢性薬物中毒ではなく、一度使ってしまっただけだ。呆気ないくらいの短期間で治療は終了し、俺は外の世界に戻れる事になった。

 退院する時真っ先に駆け付けてくれたのは、頻繁に通院してくれていた千恵利でなく、意外にも佐々木だった。

「どうして千恵利は来ないんだ」
「悪いが、チェリーちゃんは操って店で足止めしている。今はまだ米兵にサービス中だ」
「そうか」

 明らかに悪意を感じる佐々木の行動にもまるで腹が立たないのが不思議だった。もう自覚していた事だが、佐々木が説明する。

「増田、お前はまだ俺の催眠術に支配されている。わかってるな?」
「そんなネタバラシをしてもいいのか」
「別に構わんさ。俺は一度もお前から術を解いてやった事はないだろう? その証拠に、お前はあの日俺に会いに来てから後の事を完璧に覚えている筈だ」
「そう言えばそうだな」
「俺が解呪しない限り、お前は一生操られる事になる」
「何だか、そんな気はしないな。どうして、意識してるのに操られるんだ?」
「頭の鈍いやつだなあ。前にも説明してやったから、思い出せ。とにかくお前は、今から俺の言う事を聞いてしまう筈だ」
「何が言いたい?」
「チェリーちゃんと別れろ」
「……」

 すぐに拒否出来ず口ごもってしまった俺は自分で悟る。これまで心の底から絶対に彼女と別れたくない、と思っていた気持ちが揺らいでいるのだ。迷いがなければ、催眠術で操る事は不可能なのだから。

「お前には過ぎた妻だな、チェリーちゃんは。いくら俺が命令しても駄目なんだ。だから、お前から別れてやるんだ、わかったな、増田」
「……」

 すぐに断る事の出来ない自分が情けない。千恵利は催眠状態でも、俺との結婚生活を堅持しようと頑張っているのに。

「それが彼女のためなんだぞ。よく考えろよ、増田。薬物乱用で暴行事件を起こしたお前は懲戒免職だ。再就職も難しいぞ」
「……」

 これは佐々木の操りだ、たぶらかされてはいけない、と思っても、自分が置かれた状況を冷静に判断するほどに俺は目の前が真っ暗になる気がした。もうまともな職に就つ事は不可能だろう。社会復帰出来たような気になっていたのは大甘で、この先は茨の道なのだ。

「チェリーちゃんに働かせて、ヒモにでもなるつもりか? 家のローンはどうする? 奈々ちゃんを進学させたり、留学させたり出来るのか? お前は家族を幸福に出来るのか、ええ、どうなんだ! 答えろよ、増田」
「難しいと思います」

 駄目だ。いくらこんな卑劣感の思う通りになってたまるか、と気持ちを奮い起こそうとしても、心がどんどん折れていくのがわかった。仕方ない、これは本当の俺自身がもう千恵利との結婚生活の継続を熱望してはいない、と言う事実の現れなのだから。

「お前が意地を張ってたら、チェリーちゃんや奈々ちゃんを不幸にするだけだ。そう思うだろう? 増田」
「はい、そう思います……ご主人様」

 いけない、と思っても、とうとうその言葉が口をついて出てしまう。だが佐々木に操られる事を受け入れ、やつの意のままに服従する意志を表す「ご主人様」と言う言葉を口にした瞬間、俺は奇妙な安らぎを覚えていた。そう。ずっと思っていた事だが、意識を保ちながら操られてしまうのは決して不快な体験ではない。むしろ、まるで自我意識の確立していない幼少期に戻ったかのような、甘美で心安らぐ時間であった。だからこそ、人は催眠術に掛かってしまうのではなかろうか。佐々木が説明したように、催眠術とは心の中に隠していた欲望を解放してくれるものであるからかも知れない。

「ふはははは! ようやく素直でいい子になって来たじゃねえか、増田。チェリーちゃんと別れるんだ、わかったな?」
「はい、別れます、ご主人様」
「チェリーちゃんが嫌がっても、お前の方から離縁を叩き付けるんだぞ。そして、俺と結婚するように説得しろ」
「ご主人様! そんな事が出来るのですか?」
「ああ。キャサリンはただのパートナーだからな。チェリーちゃんを受け入れるのに何の支障もないぞ。家のローンも娘の学費も俺が面倒みてやる。いいか、増田。今後は俺がチェリーちゃんを幸せにしてやるからな」
「千恵利と奈々を、どうかよろしくお願いします、ご主人様」

 俺は率直な気持ちでご主人様に頭を下げる。考えれば考えるほど、それが俺達にとって最善の選択であるとしか思えなかった。

「よし、俺に任せろ。もし事がうまく運んだあかつきには、ご褒美として、お前の生活も一生面倒みてやるからな」
「本当ですか、ご主人様!」
「俺達の家に奴隷として飼ってやるから、死ぬまで奉仕しろ。いいな?」
「……はい、わかりました、ご主人様」

 奴隷、と言うこれまでの人生で馴染みのなかった言葉に少しためらった俺はしかし、すぐに迷いを吹っ切ると新しい人生をご主人様の奴隷として生きていく事に恭順の意を表していた。そしてそれと同時に、俺は甘美な電流に撃たれて、名状のし難い不思議な歓びに打ち震えていたのである。俺の中に隠れていた、他人に支配される事に無上の歓びを覚えるマゾヒズムをはっきりと自覚した瞬間であった。

「増田、奴隷になるのが嫌なら、お前の催眠を解いてやってもいいんだぜ」

 俺が少し逡巡したのを見たご主人様の、決意を確かめるかのような質問だった。催眠を解かれたらどうなるのだろう? あの日からの記憶も消えてしまうのだろうか? そして、同じように記憶を消された妻や娘と、本当の気持ちを隠し仮面を被った家族ごっこを続けると言うのか。

 そんなのはまやかしだ。本当の幸福なんかであるわけがない。少し考えた俺は当然の決断を下した。

「いえ、このままで結構です、ご主人様。どうか私を催眠術で操り、ご主人様の奴隷として飼って下さいませ。お願いします」

 こうして新しい人生に踏み出す決意を固めた俺は、ご主人様の術を解かれた千恵利にすぐ別れ話を切り出した。千恵利はもちろん大いに驚き、「どうして?」と泣き崩れたので、落ち着かせてから誠心誠意説得に努める。彼女はまだ俺に強い未練があるようで、「働かなくてもいいんだよ。私が何とかタカ君の面倒も見てあげるから」とまで健気な事を言ったのだが、俺は心を鬼にし頑として離婚する事を譲らず、ご主人様佐々木と再婚するように強く勧めたのである。

 千恵利はもともと俺にはもったいないほどの賢明な女性だ。俺の懸命な説得も功を奏して、程なく冷静な判断を下してくれた彼女とは円満に離婚が成立し、ご主人様と千恵利は無事結ばれたのであった。

15.寝取られ男の幸福

 チャリンと大きな音を立てて、まず帰って来られたのは千恵利様だった。相変わらず女優と言っても通りそうな完璧な美しさで、絵に描いたような貴婦人ぶりに卑しい奴隷の俺も僭越ながらウットリと見とれてしまう。だがご主人様が細工された、この家の玄関をくぐる度に鳴る金属音を聞かれた瞬間、千恵利様は貞淑な人妻と言う仮面を脱ぎ捨て、淫らな本能に忠実な女性に変身される。強力な催眠術でこの家を支配しておられるご主人様は、彼女がその音を聞くと催眠状態に入るよう条件付けされたのだ。

「あらタカシ。帰ってたのね」
「わんわんわん」

 この佐々木家に奴隷として飼われている俺は、基本的に日が高い間はビルの清掃や工事現場の人足として働いているのだが、誰よりも早く帰宅している事が多い。もし、かつては恐れ多くも俺の妻だった千恵利様が、催眠を解かれた状態で俺を目撃されたならば、さぞかし驚き気が触れたのかと誤解される事だろう。この家の中では着衣を許されていない俺は、リビングの一角に置かれた専用スペースの中にほぼ全裸で入り、犬がチンチンするような格好で彼女達の帰りを首を長くして待っていたのだから。俺はさらに、ご家族に対して人間の言葉を話す事を禁じられている。人間以下の存在である卑しい奴隷なのだからとご主人様に躾けられ、ペットの犬のようにふるまってしまうのだ。千恵利様や奈々様と違い、俺だけは一日中ご主人様の催眠術の影響下に置かれており、ごく自然にちんちんポーズで犬のように吠えて、千恵利様のお帰りを歓迎していた。

 本当にご主人様の催眠術は素晴らしい。もし俺が操られていなかったら、下らぬプライドや世間体に縛られて人に支配される事に最高の歓びを覚えるマゾヒストの本性に気付く事もなく、本当の幸福を味わう事を知らずに一生を過ごした事であろう。こうして人間以下の「犬」としてふるまう快感に浸かっている俺は、さらにご家族の皆様に愛情溢れる扱いを受けているので、こんなに幸福な事はない。

「着替えるから一寸待っててね」
「わんわん」

 千恵利様は極小メイド服と言うかつての「仕事着」でご主人様を出迎えるのが常だ。ご主人様は彼女を娶られてから、米兵相手の性サービスは止めさせて、ご家庭内で千恵利様、そして娘の奈々様とのプレイを独占されているのである。おまけに俺もー奴隷としての立場だがーそのプレイのおこぼれを授かるのだから、こんなに幸福で良いのか疑ってしまうくらいだ。

 ご主人様の眼鏡に適っただけあって、文句の付けようがない素晴らしい肉体の千恵利様が着替えられる絶景を、俺は舌をハアハアと出して欲望を丸出しに遠慮なくガン見する。ほぼ全裸と言ったが、俺の股間には特殊な男性用貞操帯が装着され、尻からは肛門調教具に繋がった「シッポ」が突き出している。尻穴を深々と抉って外れてくれない「シッポ」は一日中静音だが着実なバイブレーションを送り込んで来るため、常時浅ましく発情している俺はペニスをガチガチに張り切らせている。ところがその嫌らしい肉塊は、貞操帯内部のサックに厳重に収納されて指一本触れる事も出来ない、と言うオスにとっては最も辛い生殺しの調教を俺は受けているのだ。

 千恵利様もそれを良くご存じなので、あえて俺の目の前で服をどんどん脱ぎ捨て、豊麗だがその年齢が信じられないほど張りがあってシミ一つない見事な裸身を見せ付けて下さる。俺はもう完全に「おあずけ」を喰らっている犬のようなちんちんポーズになり、貞操帯の中のペニスが膨らみ過ぎて心地良い疼痛を覚えていた。そしてこんな卑しく浅ましいオスブタ奴隷に堕ちた俺なのに、全裸の千恵利様はニッコリと微笑んで素晴らしい提案を下さった。

「ねえタカシ。アタシおしっこしたくなっちゃった。飲んでくれる?」
「わんわん! わんわん!」

 もちろん大歓迎だ。さっそく「ちんちん」ポーズであんぐりと開けた俺の口に向けて腰を下ろす千恵利様。接近して来る麗しい女陰部の眺めと鼻をつく濃厚な匂いに陶然となった俺目掛けて、シャーッと聖水が降り注いだ。口中に続々と溜まっていく千恵利様の排泄物を懸命に飲み干し、顔中をベトベトに汚されながら、俺は名状し難い倒錯した歓びに包まれる。

「お舐めなさい」
「わんわんっ!」
「アア……タ、タカシ、とってもお上手よ……あんっ!! そう、ソコおっっ!!」

 初めこそ強い抵抗を覚えた家族の皆様の「便器」にされるプレイだが、小便を飲むのにもすっかり慣れて、今やこの時を待ち焦がれているようなお気に入りの行為である。これもご主人様が俺を操って、人間以下のモノとして扱われる事に無上の歓びを感じるどMな俺の本性を解放して下さったおかげだ。金だの地位だの世間体だのと言った下らぬくびきに囚われている限り、今俺の体中を包み込んでいる天上の至福を味わう事は不可能だったに違いない。小用を終えた後、はしたなくも全裸のまま俺の顔に汚れた陰部を押し付け、口唇で排泄を後始末される快楽にはばかりない大声で悶絶して下さっている千恵利様も同様ではなかろうか。量感タップリな美腰に顔面を圧迫される息苦しさにますます興奮した俺も、千恵利様を歓ばせるべく精魂込めてご奉仕に没頭した。

 その時再び玄関でチャリン音が鳴った。今はアルバイトを止めた奈々様が部活を終えて帰宅されたのだ。

「もう、ママったら!」
「あら、妬かないのよ、奈々ちゃん。タカシったら、とってもお上手なんだもの……ああ、ああ~っ! ま、又よ、ママ、又いっちゃうのお~っっ!!」

 三回も立て続けに気をやって下さった千恵利様は、ようやく俺の顔から下りると奈々様に言う。

「奈々ちゃんもタカシにおしっこしてみたら? ママ、とっても気持ち良かったわ」

 以前よく見たやり取りにそっくりだなと記憶をたぐり寄せた俺は、奈々様の反応を興味深く見守った。恥ずかしがり屋の奈々様がすぐに顔を赤らめたのは昔のままだ。しかしすぐさま逃げるように2階に上がってしまうのが常だった頃とは、家庭内での立場も変わり、奈々様ご自身も変わってしまわれた。奈々様はかわいらしく頬を染めながらも、逃げ出そうとせず俺の方に向かって来られる。

「ママ、手伝うよ」
「ありがと、奈々ちゃん」
「わんわん!」
「ホラ、タカシも喜んでる」

 全裸の千恵利様と、清楚な制服姿の奈々様と言う一見珍妙な取り合わせのお二人は、協力して俺を「犬」らしく堕として下さった。専用スペースから出られぬよう首輪とチェーンで壁に繋がれ、手足には大きく柔らかい肉球グローブが嵌められ自力で外せぬよう手首の部分を縛られる。親指と、他の4本指をまとめた部分にしか別れていないため四つ足で立つには好都合だが、人間の手としての機能はあらかた失われてしまうスグレモノだ。

「さあタカシ! お座り! お手! チンチン!」

 千恵利様が服を着ている間、奈々様が相手をして下さった。そして俺を再び2本足で立たせた奈々様も、俺のすぐ目の前でご自分がご主人様を迎える支度をするエロティックな眺めを見せ付けて下さる。多くの人間男性と同様ご主人様も制服女性がお好みのようで、奈々様は高校の制服のまま下着を外して胸をガッとはだけ、スカートを限界まで上げてしまうスタイルだ。

「フフッ。タカシ、アタシを見て興奮してるんでしょ」
「くう~ん」

 それはノーを意味する鳴き方だったが、途端に奈々様の蹴りが貞操帯の嵌まった股間に炸裂した。

「嘘吐くんじゃないわよ、このバカイヌッ!」

 これはいつも繰り返されているプレイで、どう返答しても同じなのだ。スポーツで鍛えた奈々様の長い美脚のキックは強烈で的確に俺を痛め付けて下さる。しかも勃起し過ぎて苦痛を覚えていた部分に、目の覚めるような一撃を下さるとは。俺は猛烈な痛みに悶絶しながら危うく射精に導かれそうになっていた。

「奈々ちゃん、少し加減してあげなさい」
「いいんだよ、ママ。だってコイツ、いじめられて喜ぶど変態のマゾなんだから。ほら、こんなに大きくしてるんだよ、ココ」

 奈々様は蹴り上げたソックスの爪先で、そのままグリグリと股間部に圧迫を加えて来られた。さっき蹴り上げられた瞬間ヤバかったように、貞操帯内に厳重にしまい込まれている上からのわずかな刺激でも、俺のペニスは敏感に反応する。定期的により太く刺激の強いデザインの物に取り替えられている「シッポ」バイブが俺の尻穴をどんどん開発してしまい、今やその快感がハンパなく凄まじいのだ。おかげでペニスの強烈な勃起も一日中治まってくれず、いずれは外部からの刺激でも射精してしまうかも知れない。それでは禁欲を強制する貞操帯が無意味となる気もするが、そんな事は調教される立場の奴隷である俺が気にしなくても良い。全く気楽な身分だ。

「お舐めっ!」

 そして奈々様が一日はいておられたソックスを口に突っ込まれると、むせるようなキツイ刺激臭に俺は又もやウットリしてしまう。奈々様はバレーの練習時もはいておられたのだろう、汗がタップリ染み込んだ布地は、加齢臭の酷いオヤジがはいていたのかと疑われるくらい悪臭紛々たるもので、それがどMな俺をこよなく陶酔させてくれるのだ。

 清純で潔癖な少女だと思っていた奈々様は、嬉しい事にSの素質があられたようで、催眠状態に入るとこうして俺をビシビシと責めて下さる。きっと俺と奈々様は父と娘というギクシャクした関係などでなく、マゾヒストとサディストとして結ばれるべきだったのだ。このように隠れていた本当の人間性を回復させて下さる、ご主人様の催眠術の何と素晴らしい事か。

「ねえタカシ、アタシのパンツ見て興奮してる?」
「わんわん!」
「ナマイキなんだよっ!」

 再び強烈な金蹴りが決まって、俺はとうとうもんどり打って倒れてしまう。この痛みもどMな俺には心地良いばかりで、もし貞操帯がなかったら間違いなく射精に導かれていただろう。そして犬のように無様な四つん這いになった俺の頭に、奈々様の爪先が置かれた。

「今日さあ生理だからパンツ脱げないんだよね。アタシの血、飲んでみるかい? タカシ」
「くう~ん」
「どうして飲めないのよ!」

 実はまだ女性の生理血を飲んだ事はなく、つい正直に答えてしまう。奈々様はそんな不甲斐ない俺の頭を何度も何度も踏みつけて下さったが、それは俺の中に眠っていたマゾ願望をこよなく刺激してMの歓びに浸らせてくれるばかりだ。

「奈々ちゃん、奈々ちゃん!」
「ママ邪魔しないで。こんなブタ野郎……」
「パパが帰って来たわよ」

 車の音でわかったのだ。すると千恵利様のみならず、奈々様も玄関に向かわれた。この家の主佐々木俊夫様のお出迎えである。

「トシ君、お帰り~」

 玄関先から千恵利様の明るく弾んだ声が聞こえる。きっとご主人様にハグしてキスを迫っておられるのだろう。昔を思い出した俺は、少しだけ感傷に浸った。あれはあれでそれなりに充実した日々だったような気もする。もちろんドMな本性に忠実に生きれば良い今の幸福には比べるべくもないのだが。ご主人様はよく俺に言われる。

「お前が羨ましいぜ。余計な事を一切考えないでいいんだからな。俺なんか仕事は辛いし、家のローンは返さなくちゃならない。千恵利は浮気しないか心配だし、奈々の進学も不安だ。そうだ、増田。催眠術を解いてやるから俺と交替しねえか?」

 もちろんそんな冗談に心を動かされる事はもうない。

 ご主人様がリビングに入って来られると、千恵利様はさっそくひざまづいてご主人様のズボンを下ろし、生尺奉仕を始める。

「もう。ママったら」
「あら奈々ちゃん、ヤキモチ妬いてるの? でも順番だからね。それにあなた生理中なんでしょ」
「奈々ちゃん、これでタカシと遊んでおいで」

 ご主人様が奈々様に渡された小さな物体を見て、俺は思わず生唾を呑み込んでいた。キラリと輝く金属製のカギ。それは俺を悶々と悩ませている貞操帯を外すキーに違いない。

「はい、タカシ。シーシーは?」
「わんわんわん!」

 奈々様に聞かれた俺は勢い良く答える。この貞操帯は外さなくても小用なら可能なのだが、奈々様の手に光るカギを見れば、禁欲で気の触れそうなくらいズキズキと張り切っている肉塊を解放して下さる事を期待しないではいられないではないか。

「ほらタカシ。この中にするのよ」

 奈々様は大きな金ダライを床に置くと、ようやく貞操帯の錠を開いて下さった。本当に用を足すだけで終わってしまう辛い日もあるのだが、今日は大丈夫だろうか? ご主人様のお言葉通り奈々様が「遊んで」下さる事を熱望した俺は、浅ましい肉棒をますます大きくを膨らませる。そしてとうとうサックの中から欲望の塊を解放して下さった奈々様は、数日間の放置で凄まじい汚穢に塗れた局部の悪臭に鼻を摘まんで見せた。

「うわ、くっさー! マジで薄汚いオスブタだね、タカシは。はい、シーシー」

 勝手にペニスを弄らないよう四つ足で立たされていた俺は、犬らしく片脚を上げると金ダライ目掛けて放尿を始める。許可されなければ肉球グローブの不自由な手でマスターベーションする「ご褒美」にすらありつく事は出来ないのだ。

「あ、コイツ、外にこぼしやがった。後でお仕置きだね、全くこのバカイヌは」

 「お仕置き」と聞いた俺は甘美な期待で胸を疼かせる。若く美しいS女性にイジめられるのは、どMな俺には無上の歓びに他ならない。お仕置きが最も辛い「おあずけ」で終わらない事だけは祈りたいものだが。

「ウンウンは?」
「わんわん」
「えー、しょーがないなあ……うわ、でっかー」

 奈々様は続いてずっと振動を続けている「シッポ」バイブを抜いて下さったのだが、それだけで余りの心地良さに俺はハアハア喘いだ口から大量の涎をこぼしてしまう。そして俺は再びタライの上にビチビチと排泄物を積み重ねていったのだが、奈々様は俺自身のペニスと遜色ないアナル調教部の太さに驚かれながら、素晴らしい提案を下さった。

「アハハ、今度でっかいペニバンでヒイヒイ泣かせてやるよ。ケツの穴が裂けないように、しっかり広げとくんだよ。そうしてから当分抜かないでいいように、セーエキを搾り取ってやろう」
「わんわんわん!」

 それは想像しただけでも血わき肉躍るような経験になるだろう。奈々様にアナルを犯されながら精液を抜いて頂くと言うのだから、本当に肛門が裂け精子の抜き過ぎで再起不能となったとしても本望だ。

「ねえママー。後でウンチの始末しといてね」
「わ、わかったわ……アン、トシ君、いいわあ~っ! 奈々ちゃん笑わないでえ! ママ、いくわ! 又、いっちゃうのお~っっ!!」

 向こうではご主人様と性行為に励んでおられる千恵利様が、俺の祖チンでは決して得られなかった肉の歓びを大声で叫んでおられた。彼女は20年近くもこの俺との不満足なセックスで「幸福を感じる」と無理をしておられたわけで、それは結局ノーマルな性行為が不能となった俺と同様に不幸な事であった。千恵利様は一生知らずに過ごす所だった性の歓びを、ご主人様の逞しいペニスと卓越した性戯によって教えられて、ようやく本当の女の幸福を手に入れられたのだ。 

 今や「犬畜生」に堕とされた俺は、恐れ多くも千恵利様と再び身体を合わせたいなどとは望むべくもないし、恐らく人間の女性との性交自体不可能なインポテンツは一生治らないだろう。だが、千恵利様の白魚のように細い指でアナルの奥深くまで抉られて大便の後始末をされるのは、天にも昇る心地良さだ。俺はきっとペニスに一指も触れる事なく射精してしまうに違いない。そしてこれから始まる奈々様の「お仕置き」。俺は人間だ、などと言う下らぬプライドを捨ててしまえば、こんなにも豊穣で奥深い歓びの世界が開けるのだ。

「アタシの血を飲ませてアゲル」

 仰向けに押し倒された俺の顔に、シックスナインの体勢でミニスカの中を脱がれた奈々様が、血の滴る陰部を下ろして来られる。生理真っ最中の女性器を拝む事自体もちろん初めてだったが、大柄な奈々様のボリューム満点の美腰が着地して、汚穢に満ちた血の生臭い匂いに包まれると、一瞬覚えたためらいなどすぐに雲散霧消した。反吐を吐きそうな生々しい生理血を味わうと、俺の中の被虐を歓ぶ血がたちまち沸騰して、脳の血管がぶち切れそうな凄まじい興奮に包まれたのだ。

「しっかりお舐めなさい。アタシをイカせてくれたら、ご褒美だよ……アン! そうそう、お上手よ……そう! ソコおっ!」

 俺は窒息しそうな息苦しさや込み上げて来る嘔吐感と戦いながら、奈々様の血だらけの女陰部に夢中で口唇を這わせる。その甲斐あって、急に女っぽくかわいらしい淫声を洩らすようになった奈々様が昇り詰めて下さるのにさほど時間は掛からなかった。

「ご、ご褒美よっ! これでも喰らいなさい!」

 奈々様は生理中の女性器でますます強く俺の顔を圧迫しながら、いやらしくそそり勃ったペニスにパーン、パーンと打撃音が響き渡るほど強烈な往復ビンタを下さった。もちろんあっと言う間に、溜まっていた精液をドッと放出する俺。奈々様はご自分が気をやる度に何度も何度も平手打ちで精子を吐き出させて下さった。

 こうして顔中を奈々様の血で真っ赤にし、ペニスに加えられる平手打ちの嵐に、およそ人間業とは思えぬ程大量のザーメンを射出しながら、俺は幸福の絶頂を味わう。

――この世にこんな幸福があったのか。夢なら醒めないで欲しい

 大丈夫。ご主人様が催眠術を掛けていて下さる限り、俺の至福の時は続くのだから。

< おしまい >

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