放課後。
夕暮れの光が差し込む理科室で、僕は黙々と試験管やフラスコを隣の準備室へ運ぶ。
移動教室での授業後、実験器具の清掃などは各自で実施することになっている。しかし、それらの片付けは、当番である僕の仕事だった。しん、と静まり返った空間に、ガラス器具同士がぶつかるカチャカチャという音だけが響く。
「はぁ……」
まだ汚れの残ったビーカーを洗いながら、僕は大きなため息をつく。このように、杜撰な生徒が清掃を怠ったまま放置された器具などがないかを確認し、しっかりと綺麗にすることも当番の仕事のうち1つだ。
ただし、ため息の原因はビーカーの汚れなどではなかった。僕の平穏な学園生活を脅かす、唯一にして最大の脅威。「実験」などど称しては、次から次へと変な催眠術を仕掛けてくる、里美先輩だ。
おまけに、「被暗示性」とかいうやつが関係しているらしいのだが、ターゲットに選ばれるのは何故か決まって僕ばかり。一体何が面白いのか分からないが、その度に恥ずかしい目に遭わされるこっちの身としてはたまったものじゃない。
おかげで僕は学校にいる間……いや、それどころか家にいる間すらも、ひと時たりとも気が休まる暇もなかった。
ある時は、朝の挨拶だと思い込まされて憧れの由梨ちゃんのスカートをめくってしまったり。
ある時は、女の子たちが着替えている女子更衣室に間違えて入ってしまったり。
またある時は、国語の時間の音読の時に、教科書と間違えてえっちな小説を大声で読み上げてしまったり。
おかげで、毎日のように変な目で見られる羽目に陥ってしまっていた。
今日こそ、今日こそは言ってやるんだ。僕をこれ以上おもちゃにするなって。
誰にともなく誓いながら、僕は固く拳を握りしめた。
この前はクラスのみんなの中で強制的に興奮させられたあげく、「抗議しようとすると両手を後ろに回して立ち上がってしまう」などという恥ずかしい暗示をかけられてしまったせいで、先輩に対して抗議するのを諦めざるを得なかった。しかし、先輩と2人になるチャンスがあれば恐れる必要はないはずだ。
そんな決意を新たにした、まさにその時だった。
がらり。
背後で、理科室の引き戸が開く音がした。
「やっほー、和くん。一人で片付けなんて、感心だねえ♪」
陽気な声とともに姿を現したのは誰であろう、今まさに僕の頭を悩ませていた張本人の姿。
「さ、里美先輩……! どうしてここに……」
「んー? ちょっと近くを通りかかったら、たまたま和くんが一人でいる姿が目に入ったからさ」
先輩はこともなげに言いながら、こつこつと僕に向かって歩みを進める。
「──それより和くん。週末の電話、どうして出てくれなかったのかな?」
その表情には、冷たい笑みが浮かんでいた。僕はゴクリと唾を飲み込む。
「せっかく面白い催眠術を思いついたから、和くんに一番に試してあげようと思ったのに」
『面白い催眠術』という単語に、ぞくりとした悪寒が走る。どうせまた、ろくでもない暗示で僕を弄ぶつもりだったに決まっている。
「……前から友達と約束してたライブの最中だったんですっ! そんなの、出られるわけないじゃないですか!」
精一杯の虚勢を張って、はっきりと言い返した。僕にだって都合がある。先輩の所有物じゃないんだ。
僕の剣幕に、先輩は一瞬きょとん、と目を丸くしたが、すぐにふわりと、柔らかい表情で微笑んだ。
「そっか、友達との約束だもんね。うんうん、分かった」
「……ふぇ?」
あまりにも、あっさりとした反応。僕は拍子抜けして、思わず気の抜けた声を出してしまった。物分かりが良すぎる。あまりにも。
先輩なりに僕の意思を尊重してくれたのか、それとも、また何か良からぬことを企んでいるのか。考えあぐねている僕の思考は、先輩の声によって遮られた。
「和くんにとっては、私からの呼び出しなんかより、そのライブの方がずーっと大事な用事だったんだもんね?」
先輩は僕の目の前まで歩み寄ると、確認するように僕の瞳を覗き込む。──その目は、眼前の獲物を見定めようとする捕食者の「それ」だった。
まずい。
どう答えればこの場を無事に切り抜けられるのか、僕が咄嗟に考えを巡らせていると……。
「……あ、これ洗い忘れ?」
ふと、先輩の視線が、僕が作業していた流し台の脇に落ちる。釣られるように僕が見遣ると、まだ片付けが終わっていなかった一本の駒込ピペットが、ぽつんと転がっていた。
今日の授業は、石灰水に息を吹き込んで、二酸化炭素と反応させるという、古典的な実験だ。ピペットのガラス管の中には、反応して生じた炭酸カルシウムの白い粒子が混ざった液体が、まだ残っていたのだ。
先輩は淀みない動きで僕の隣に忍び寄り、そのピペットをつまみ上げた。
「危ないじゃない、ガラスなんだから。割れたら大変だよ」
「あ、すみません! 僕がやります!」
僕が慌てて手を伸ばすが、先輩がすっと掌でそれを遮る。
「まあまあ。先輩として、ちゃんとした洗い方のお手本を示してあげるから。和くんはそこで見ててよ」
「う、うん……」
そうはっきりと指示されてしまうと、僕は大人しく従うしかない。先輩はピペットを摘まんだまま、僕を見つめて微笑む。
「それに、くす……いつも実験に協力してくれる、可愛い後輩への『お礼』もしたいし、ね」
──その声には、好奇心と、悪戯心と、そしてほんの少しの嗜虐的な響きが籠っていた。どくん。嫌な予感に、僕の心臓が一気に高鳴る。
そんな僕の不安を他所に、硬直している僕に対して白濁液の溜まったピペットを僕の目の前に見せつけるように掲げると、こう言った。
「まずは、これを綺麗にしなくちゃね」
親指と人差し指で、ピペットの細長いガラス管の部分を、むに、と挟み込む先輩。そして、冷たいガラスの温度を確かめるかのように、指の腹でゆっくりと、上下に撫で始めた。
──その、瞬間。
「──っ!?」
思わず声を上げてしまいそうになるのを慌てて飲み込んだ。
先輩の指の動きにまるで呼応するかのように、僕の下半身に不思議な感覚が走ったのだ。
体の中に走る神経を直接、見えない手でダイレクトに鷲掴みにされたかのような強烈な感覚。痛み、というわけではない。というより、むしろ──
「どうしたの、和くん? なんだか急に顔が赤くなっちゃったけど」
からかうような微笑みを湛えながら、先輩が少し身を屈めて僕の目を覗き込む。
ぞくり、と背筋を駆け上がった悪寒。それは嫌な予感──というより、もはや「確信」と呼ぶべきかもしれない。
「な、何でもないです! 返してください、それ!」
僕は必死に平静を装いながら、何とか先輩の手から駒込ピペットを奪い取ろうとする。しかしそれよりも、先輩がピペットを擦っていた手を離して、僕に向けて掌をかざす方が早かった。
「だーめっ♪」
「っ……!?」
ピペットに伸ばそうとした僕の手の動きがぴたりと止まる。
動けなくなった、というわけではない。不思議なことに、「先輩を止めなければいけない」と頭では分かっているのにもかかわらず、実行に移すことができないのだ。まるで、僕の脳のはるか深くに根差す何者かが「先輩を止めてはいけない」と強烈に命じているかのように。
「あらー、どうして? ひょっとして、何か困ることでもあるの?」
僕の狼狽ぶりを見透かして、先輩はとぼけた調子で首を傾げる。
早く、先輩がまたピペットを擦る前に何とかしないと。僕は、高鳴る鼓動の中で頭をフル回転させる。だが悔しいことに、先ほどピペットを奪おうとした時と全く同じだった。先輩を力ずくで止めることも、大声で助けを呼ぶことも……それどころか、この理科室から逃げ出すことすら、どうしても『ダメ』なのだ。
「と、とにかく……お願いだから、返してください……っ!」
結局、僕は震えながら、先輩が自らの意思で悪戯をやめてくれるように『お願い』することしかできなかった。当然、先輩が素直に僕の言葉などに耳を貸してくれる筈もなく。
「だーめ。こんなに顔を真っ赤にして、熱でもあるんじゃない? 体調が悪いなら私に任せて休んでなさい……実験器具の扱いは、慎重にしなきゃいけないからね」
あえて意地悪でもするかのように、ピペットを指で摘まんで僕の目の前で揺らす先輩。
ごくり、と僕の喉が鳴る。ほんの少し手を伸ばすだけで、すぐにでも届く距離。それなのに──手を伸ばしても、どうしてもそのピペットを掴もうとする気持ちが起きないのだ。
「くす……どう、分かってくれた?」
「っ……!」
先輩が許可してくれない限り、絶対にそのピペットを取り返すことができない。悔しいことに、僕はその事実を嫌というほど思い知らされてしまっていた。
それに満足したかのように嗜虐的な笑みを浮かべた先輩は、次の「悪戯」に移る。
流し台にあったスポンジに石鹸液をつけ、ピペットをゆっくりとスポンジ全体で包むように覆うと、まるで僕の反応を楽しむかのように再びそれを擦り始めた。先ほどよりもしっかりと、まるでピストン運動でもするかのように。
「ひうっ……!」
ぞくり。再び迸る刺激の奔流に思わずびくりと背筋が反応し、僕の口から抑えられない喘ぎ声が漏れる。
もはや、その正体は明らかだった。自分の手でも味わったことがある感覚……いや、それを何十倍にもしたかのような刺激が、強制的に僕の下半身に流れ込む。
「あらー、どうしちゃったの? 私はただ、『ピペットを洗ってるだけ』なのに」
「ち、違っ……!」
思わず反論しかけた言葉を慌てて飲み込む。先輩のその言葉を否定するのは、自分の身に何が起きているのかを認めるも同然だった。
「ん-? 何か違ったの?」
「ち……違わ……ない、です……」
結果、顔を真っ赤にしながらも、僕は小声でそう呟くことしかできなかった。
「そう? それじゃあ……遠慮なく、『お掃除』を続けてあげるね」
ニヤニヤと笑いながら、先輩は再びピペットに視線を落とす。そしてスポンジで細長いガラス管の部分を擦りながら、今度は人差し指の腹をピペットの細く窄まっていく先端部に向けて、ゆっくりと、しごくように滑らせた。
「ひぅっ……!」
先輩の動きに連動するように、ぬるりとした石鹸液のついた柔らかいスポンジの感触と、先端部を優しくなでられる感覚が駆け巡る。ぞくぞくとした痺れるような感覚が、背骨を電流のように駆け上がる。
抗いがたい生物としての本能的な反応によって、僕のズボンの内側で、何かが意思を持ったように、勝手に熱を帯びていく。さっきまで小さな疼きだったそれは、今や無視できないほどの明確な熱い芯となって、制服の固い生地を内側からぐい、と力強く押し上げ始めていた。
「この部分の感触って、触ってるとなんだかとっても気持ちいいね。くす……和くんもしょっちゅう自分のを触ってるから分かるよねぇ?」
「そ、そんなこと、なっ……くぅっ!」
反論しようとした僕の言葉は、くいっとピペットの先端部を擦る先輩の指の刺激によって寸断される。腰が砕けそうになるのを、必死に流し台に手をついて堪える。僕の息がどんどん荒くなっていくのを、先輩は意地の悪い笑みを浮かべながらからかう。
「えー、私はただ『ガラスの感触』ことを言ってたんだけどなー? 和くんのスマホの画面とか、確かガラスフィルムじゃなかったっけ?」
「っ……!」
とぼけるように首をかしげる先輩の言葉に、僕は真っ赤になって言葉を詰まらせる。もはや、完全に先輩の掌の上で弄ばれていた。そして、さらに残酷な遊びが始まる。
先輩はピペットの最も細くくびれた先端部分を、人差し指の先で、つん、つん、と執拗に突き始めたのだ。
「あ……っ、ん、ぁ……っ! せ、先輩……お願いだから、もう、やめ……っ!」
僕の意思とは裏腹に、腰が微かに震え、情けない声が漏れてしまう。身体の芯で育った熱は、もうはち切れんばかりに膨れ上がり、窮屈なズボンの内側で暴れ始めていた。布地との摩擦が、いちいち過敏な部分を擦り上げる。
「えー? どうしよっかなー……」
考え込む振りをしながら、先輩は意地悪な笑みを浮かべて、少し屈みながら僕の目を覗き込む。
「ところで和くん……ライブ、楽しかった? ……私のことなんてすっかり忘れちゃうくらいに」
「あ……っ」
にっこりと微笑みながら、先輩が囁く。ばくばくと心臓が高鳴る。僕が答えに窮して黙っていると、今度は駒込ピペットを先ほどよりもさらにしっかりと、徐々に動きを速めるように上下に擦り始めた。ガラス管の中の白濁液が、その動きに合わせてぬるり、ぬるりと揺れている。
「あ……あ……あああっ……! も、もう……っ!」
容赦なく体の内側からこみ上げてくる衝動。これまでの経験から、「その瞬間」が訪れるまでもはや数秒の猶予もないことを本能が告げる。もう限界だった。思考が白く染まっていく。反抗心も、プライドも、先輩の手によってあっさりと砕かれていく。
涙目で懇願する僕に、先輩は手の動きを止めずに僕の瞳を覗き込みながら再び質問を投げかける。
「ん? やめてほしいなら、ちゃんと質問に答えてくれる?」
「わ、分かりました! 分かったから、やめてください……っ!」
「……何が、分かったのかな?」
ほんの少しだけ、先輩の手の動きが弱まる。
「……もう二度と、先輩の呼び出しを……すっぽかしたり、しません……から……」
「ふぅん……お友達と約束してた大事なライブの最中でも?」
「……っ」
ほんの一瞬の躊躇。だが、それすらも先輩はお気に召さなかったらしい。再びピペットを擦る力を強め、これまでで最も速く、最後のとどめを刺そうとするかのように擦り始める。
「ひぁぅっ……!」
びくん、びくんと腰が震え、まさに今にもその瞬間が訪れるであろうことを全神経が告げる中、僕はかろうじて最後の力で言葉を振り絞る。
「は、はいっ……ライブよりっ……先輩を、優先します……っ!」
「くすくす……全然いいのに、そこまで私のことを大事に思ってくれるなんてありがとねー? それじゃ、ガラス管も十分綺麗になったし、洗うのは終わりにしておこうかな」
満足げに頷くと、先輩は全ての元凶である駒込ピペットを洗う手を止めると、スポンジをシンクの横に戻す。途端に、僕の身体を支配していた強制的な感覚が、すう、と潮が引くように薄れていく。限界まで強張っていた下半身の分身から力が抜け、昂っていた熱も、少しずつ収まっていく。
僕は安堵のため息をついた。屈辱的ではあったが、何とか最悪の事態だけは免れることができたのだ、と。……先輩の、次の言葉を聞くまでは。
「──でもさ、ピペットの『お掃除』は、まだ終わってないよね?」
先輩は、洗い終わったピペットを見せつけるように、僕の目の前にくい、と突きつけた。
ガラス管の中で、先ほどまで先輩の指の熱を吸っていた炭酸カルシウムの白濁液が、ゆらりと揺れる。
「……は?」
嫌な予感が、再び僕の背筋を凍らせる。
「だって、まだガラス管の中に、こーんなに白い液体が残っちゃってるでしょ? 綺麗にするためには、たっぷり溜まっちゃった『これ』をぜーんぶ出してあげないと……一滴残らず、ね」
「ダ……っ!」
ダメ、と口走りそうになった僕の口は、それ以上の言葉を紡ぐことができない。先輩はまだ、僕にピペットを返すことを『許可』していなかったのだ。
「ぅ、ぁっ……!」
口からぱくぱくとまともな言葉にならない音を発したり、ピペットに伸ばそうとした手をただ宛て処なく彷徨わせる無駄なあがきをする僕をじっくりと弄ぶかのように、先輩の指がゆっくりと、ピペットの端にある赤いゴム球へと伸びていく。
僕の心の中の絶叫をあざ笑うかのように、先輩はピペットの先端をシンクに向けると、その親指と人差し指で、むに、と柔らかいゴムを挟み込んだ。
「ひぅっ……!」
全身が総毛立つ。
しかしそんな僕の思いとは裏腹に、これから何が起きるのか、僕の身体は、僕の思考よりも正確に理解していた。一度は収まりかけた熱が、再び爆発的に膨れ上がる。僕のものであるはずの分身が、僕自身の意思などお構いなく、忠誠を誓う『ご主人様』が指示を発するその瞬間に向けて準備を始めるかのように、再びズボンの中で窮屈なほどに膨れ上がっていく。
「あ……ぁ……っ!」
先輩は、羞恥に染まる僕の顔を楽しそうに見つめながら、容赦なく指に力を込めていく。これから何が起こるのか分かっているのに──いや、分かってしまっているからこそ、僕はそれを止めることも、赤いゴム球を摘まむ先輩の手から目を逸らすこともできない。
「せーの……」
悪戯っぽく微笑む先輩の唇が、死刑執行の合図を告げる。
「ぴゅっ♪」
可愛らしい掛け声と同時に、先輩の指がゴム球を完全に押し潰した。ピペットの細い先端から、白い液体が勢いよく迸る。
放物線を描いて飛び出した白濁液が、理科室のシンクの上に、ぱちん、と小さな音を立てて白い水たまりを作った。それと、全く同じタイミングで。
「~~~っっ!!」
腰が、勝手にがくん、と砕ける。熱い痺れが身体の芯を貫き、僕の思考の全てを真っ白に染め上げる。ズボンの上から必死に自身を押さえつけるけれど、それが何の意味もないことなど他ならぬ自分自身が一番理解してしまっていた。
「あ、うぁぁっ……!」
びくん、びくん、と全身が大きく痙攣し、必死に押し留めていた熱い何かが一気に解放され、迸る。頭の中でどれだけ止めたいと思っても、全身の全ての神経から発せられる「空っぽにしろ」という指令に従うかのように、次から次へと溢れ出していく。僕はなすすべもなく、ただすべてが終わるのを耐えるしかなかった。
そして、ようやく白濁液を最後の一滴まで抽出し終えると、文字通り精根尽き果てた僕はがっくりと理科室の床に膝をつく──まるで、主人の前に跪く召使いのように。真っ赤になって肩で息をしながら震える僕を、先輩は心底楽しそうに見下ろした。
「さてと、ちゃんとピペットも綺麗になったことだし、和くんに返してあげる。……今日も、『実験』に付き合ってくれてありがとね」
空っぽになった駒込ピペットをそっと机の上に戻した先輩は、へたり込んだ僕の耳元にそっと顔を寄せると、甘く、そして残酷な声で囁いた。
「──あ、そうそう。さっき和くんが自分でした『約束』は覚えてるよね? もしも今後、和くんがその約束を破るようなら……くすっ、罰としてその場で和くん自身の手で『ピペットのお掃除』をしてもらうからね」
「あ、ぅぁ……」
そんな理不尽な宣告に対しても、もはや僕は反論する気力すら残されていなかった。そして、息も絶え絶えになった僕を見下ろしながら、先輩はひらひらと手を振る。
「くすくす……それじゃ、私はそろそろ友達との約束があるからまた今度ね。──最後の『後始末』は、和くんが自分で頑張ってね♪」
満足げに鼻歌を歌いながら悠々と、軽やかな足取りで理科室を去る先輩。その後ろ姿を呆然と見送った僕は、やがてその場に残されたピペットよりも先に『始末』すべきもののために、男子トイレへと真っ先に向かう羽目になったのだった。
<終>

読ませていただきましたでよ~。
暗示の言葉をほぼ使わず、トランスに導入もせず、匂わせただけで一気に反応があるとか被暗示性がやばいでぅね。これは先輩もお気に入りでぅわ。
先輩がお気に入りなのはおもちゃとしてだけなのからゔ的なものがあるのかはよくわからないところでぅけど、自由奔放なキャラはいいでぅよね(まあ、みゃふは一瞬でもいいから逆転までがセットでぅけどw)
であ、次回作も楽しみにしていますでよ~。
>みゃふりん
和くんは被暗示性の塊ですね。普段から里美先輩に色々入れられてるせいもありますが。
私もこんな被暗示性の高さと可愛さで意地悪な先輩に催眠術で弄ばれる青春を送りたかったです。羨ましい。
そんな歪な願望が反映されているので、和くんに逆転の機会が巡ってくるとしたら、それすらも恐らくは里美先輩の悪戯かも知れません。
ふふふ……。
里美先輩、大好きなんです!
ちょっと意地悪で、悪戯好きで、でも愛情もあって。。。
作品自体も、ヘビー、あるいはハードな展開にはならない、ティーカワールドの枠組みの中で、
毎度、絶妙なコントロールで素晴らしい投球をされている、という印象で、素敵です。
このサイトですと、男性が受けになるタイプの作品は少数派だと思いますが、
催眠術というギミック自体へのフェティッシュを追及すると、やっぱり
「この銃(技術)は敵の手に渡ってしまうと、こちらが一気にピンチになる」と再認識させられることで、
催眠術の気配が出てくるだけでもゾクゾクする、という状態になります。
普段は「男性受け」系のジャンルを好まない人でも、催眠好きなら、ティーカさんの「里美先輩」シリーズは読むべきだと思います!
>永慶さん
ありがとうございます!
この世界に踏み込んだ切っ掛けである永慶さんにそう評価して頂けると嬉しいです……!
意地悪な女性術師に弄ばれるシチュエーション、ということで、王道(?)の感覚操作ものでございます。
割とコメディっぽい雰囲気ですが、冷静に考えると結構ひどいことをされているという、催眠もののお約束。
個人的には、男子が女の子に催眠術でいたずらをするシチュも大好きなのですが、「催眠術師としての魅力」を追及すると、どうしても女性術師に軍配が上がります。
どっちのジャンルもどんどん盛り上がって欲しいので、今度は同人誌とかにして出したいですね……!