馴奴 四 後編 折花攀柳

後編 折花攀柳

「さあ、どうするの、四宮さん?」

 栗原を先輩と認める。そんな屈辱的なこと、できるわけがない。

「そんなことっ、できるはずがありませんわ!」
「そう?じゃあ、この話はこれっきりね。ずっとそれで自分を慰めていたらいいわ。さあ、先生、んっ、あんっ!」

 葵が拒絶すると、栗原はあっさりと竜泉寺の方に向き直り、再び腰を揺らし始める

「はうん!ああっ、あんっ!イイっ、イイわっ!あんっ、先生っ!」

 葵に見せつけるように、派手に喘ぎながら腰を揺らす栗原。

 それを眺めながら、葵は絶望感に打ちひしがれる。
 目の前が真っ暗になったようで、バイブレーターの刺激すらほとんど感じない。

「はううううっ!あうっ、先生っ!ああっ!」

 竜泉寺の腕が伸びて栗原の胸を掴むと、バネ仕掛けのようにその首が反り返る。

「あんっ、はんっ、ああ、んん、んふう、はあん」

 今度は、竜泉寺の腹に手を当てると、栗原は輪を描くように腰をくねらせ始める。
 そうやって、じっくりねっとりと、これ見よがしに濃密に竜泉寺と体を絡ませ合う栗原。

 いやっ、そんなのをただ見ているだけなのはいや。
 どうして、栗原さんばかりが。そこに相応しいのはわたくしなのに。

 葵の目から、涙が溢れてくる。

「ああん、先生、あん、はああん、んっ、んんんっ!」

 再び、跳ねるように腰を上下させ始める栗原。

 わたくしも、先生のお人形になりたい。でも、栗原さんを先輩と認めるなんて絶対に嫌だわ。

「はんっ、あんっ、んっ、あんっ、あっ、あんっ」

 先生のお人形にして欲しい。わたくしも、先生に気持ちよくして欲しい。

 涙を流しながら、栗原の痴態を見つめる葵。その頭の中にあるのは、竜泉寺の人形になって、気持ちよくして欲しいという思いだけだ。

「ああっ、あんっ、はうっ、はあっ、あんっ!」

 どうしたら、どうしたらわたくしは先生のお人形になれるの?

「ああっ、来るっ、先生のっ、熱くて濃いのがっ!あんっ、はあああああああっ!」

 葵の目の前で体を弓なりに反らし、栗原が絶頂に達する。

 それを見ながら、ただ涙を流し続けることしか葵にはできない。

 その晩。

「だめですわっ!こんなものでは全然だめよ」

 忌々しげにバイブレーターを股間から引き抜く葵。

 私が欲しいのはこんなまがい物ではなくてよ。本当に欲しいのは、竜泉寺先生の、お、おちんちん。

 火照った体を持て余して、熱っぽい瞳で考える葵。
 そこにはもう、かつての誇り高いお嬢様の姿はなかった。

 それに、葵はもうバイブレーターでは満足できなくなっていた。 
 今や、葵が欲しいものは、ただひとつしかなかった。

 それでも、火照る体をどうしようもなくて、バイブレーターを手に取ると、もう一度自分の股間に挿し込んでいく。

 結局、その日、葵が満たされることはなかった。

 翌日。

「ちょっといいかしら、栗原さん」
「はい、なんですか、先生?」

 放課後、栗原が担任の木下に呼ばれる。

 これは、チャンスですわ。

 葵は、栗原に気付かれないように教室を抜け出すと、保健室へと急ぐ。

「おや、そんなに慌ててどうしたんだい、四宮さん?」

 保健室に駆け込んできた葵の姿を見て、竜泉寺が驚いたような表所を浮かべる。

「先生!もう一度お願いしますわ!わたくしを先生のお人形にして下さい!どうか、お願いします!」

 床に跪き、すがるようにして哀願する葵。

「うーん、でも、栗原さんの許可は得たのかい?」
「いいえっ!でも、わたくしは立派に先生のお人形になれますわっ!いえっ、わたくしこそが先生のお人形に相応しいんです!」

 竜泉寺の足にすがりつき、葵は必死に頼み込む。

「そうだねぇ、それじゃあ、ひとつ条件を出そうかな」
「はいっ、なんでもいたしますわっ!」
「うん、わかった。それじゃあこうしよう」

 そして、竜泉寺の口がゆっくりと開き、人形にする条件を葵に告げた。

* * *

 3週間後。

「うわあ、すごい。僕、本当に四宮さんとエッチなことできるなんて」
「そうよ。私が相手をしてあげるのですから感謝しなさい」

 人の気配のない用具倉庫にひとりの男子を連れ込む葵。

「あ、ああっ、四宮さん、僕っ、僕っ!」
「うふふ、そんながっつくものではありませんわ。ああ、でも、あなたのここは、そうもいかないようですわね」

 そう言うと、葵は男子生徒のズボンをずらし、ギンギンに突き立った肉棒をさする。

「ああっ!しっ、四宮さん!」
「まったく、こんな調子では、すぐに終わってしまいますわよ」
「ええっ、四宮さん?いったい何を?」
「こうして一度出しておかないと、楽しめそうにないですもの。ん、あむ、んふ」

 そう言うと葵は、肉棒を口に咥える。

「ん、あふ、んふ、すごい、結構大きいのね、んむ、ちゅる」
「あ、ああ、四宮、さん!」
「んふ、んむ、まあ、もうとろりとしたのが出てきましたわよ。んふ、んっ、んっ、んっ」
「ああっ!そんなぁ!」
「んっ、んふ。我慢せずに出してもよろしいのよ。ほら、もう、こんなにぬるぬるになっているじゃないの。ん、ちゅる、ん、んふ」
「あ、あああっ、四宮さん。だめだっ!ぼ、僕っ、もうっ!」
「んむ、んんっ、んふっ、んんっ!んんんんんんんっ!んふう、こくん。んふ、はあぁ、なによ、結構濃いじゃないの」
「ああぁ、四宮さん……」
「ふふ、一度出してもまだ固くて大きいわ。この分だと楽しめそうですわね」

 そう言うと、ショーツを脱ぎ、肉棒を自分の股間に導く。

「あ、ああ。四宮さんて、お嬢さんに見えて、すぐにエッチしてくれるって噂、本当だったんだ」
「まあ、男の子たちの間でそんな品のない噂が流れてるの?」
「あっ、いやっ、すみません!」
「うふふ、よろしくてよ、本当のことですもの」
「ええ?」
「さあ、わたくしが相手をしてあげるのですから、せいぜい楽しませてちょうだい」

 淫らな笑みを浮かべると、葵は肉棒をゆっくりと体の中に沈めていく。

「ん、くううっ、はあああっ!」
「あっ、ああああっ!しっ、四宮さん!」
「あああっ、いいわよ、あっ、あなたの。固くて、んんっ、子宮の奥までずんずん響きますわ」

 男子生徒の肉棒を股間に咥え込み、腰をくねらせる葵。

「うううっ!ああっ、四宮さん!」
「はんっ!ああっ、そっ、そうよっ!もっと強く突いてちょうだい!あんっ、あああっ!」

 男子生徒も腰を振りはじめ、嬌声をあげながら、葵の体ががくがくと大きく揺れる。

「はうううっ!もっと、もっと激しく突いて!あああっ!」

 他には人のいない用具倉庫の中に、甲高い喘ぎ声が響いていた。

 このところ、葵は娼婦のように毎日男を誘っては体を交わらせていた。
 男子生徒の間では、葵は、頼めばすぐにやらせてくれると、すっかり噂になっている。

 ただ、娼婦と違うのは、金を取らないこと。だいいち、葵は金など必要としない。

 それに、もうひとつの噂。
 一度セックスをした相手とは、葵は二度としようとはしない、と。

 葵が、体をひさぐように毎日相手を替える理由はただひとつ。

 1000人の男と寝たら葵を自分の人形にしてあげる。
 それが、竜泉寺が出した条件だったからだ。

 あと、980人。そうしたら、あの人のお人形になれる。

 男子生徒と体を重ねながら、葵は、いつか自分が竜泉寺の人形になる日のことをうっとりと考えていた。

* * *

「ねえ、本当に四宮さんをお人形にするんですか、先生?」

 保健室の中、机に向かう竜泉寺の首に背後から腕を絡ませながら、由佳が甘い声で囁く。

「してやってもいいんだけどね。なにせ、1000人だから。毎日ひとりずつ相手をしても、3年近くはかかるかな」
「まあ、先生ったら、ひどい人」

 そう言って、由佳はクスクスと笑う。

 それに、普通に考えたらその前に妊娠してしまうだろうしね。

 竜泉寺は、書類を書きながら、まるで他人事のようにそんなことを考える。

「よし、仕事はこれくらいにしておくか」
「ふふっ、じゃあ、先生、この後は」
「ああ、そうだな」
「んんっ、んむっ」

 由佳の顎をつかむと、竜泉寺がその唇を吸う。
 うっとりと目を閉じて、由佳は竜泉寺と舌を絡ませる。

 ふふ、まあせいぜい頑張ってね、四宮さん。

 濃密な口づけを交わす由佳は、勝ち誇ったような表情を浮かべていた。

* * *

 実験記録 No.4

 対象:3年生、女子。

 実験対象は、この学園の理事の娘らしい。少し見ただけでも、プライドが高そうな雰囲気がしていた。そのプライドの高さを利用して、誇りを保ったまま壊してみようと思いつく。
 そのプライドを煽るために、由佳を使って対象を見下すような態度をとらせる。由佳の演技も良かったが、屈辱に打ち震える様子はなかなかに見物だった。これで対象は由佳に対抗心を持たずにはいられなくなるはずだ。

 次は、対象への暗示の仕込み。木下に言わせて対象を保健室に来させる。気が強そうなので、対象が戸惑っているうちに一気に催眠状態にさせる。こちらからされることを気持ちよく感じてしまうことはもちろんだが、暗示のキモは対象の高いプライドを維持させること。これで、対象の精神を快楽と、その屈辱の間で揺れ動かすことができる。そしてもうひとつは、自分が一番でないことに耐えられないという暗示。これが後々効いてくることになるだろう。
 暗示を仕込み終えると、早速実験を開始する。暗示のせいもあるのだろうが、随分と反応がいい。対象はこちらが思っていたよりもずっと淫乱な素質があるのではないかと思ってしまうほどだ。これは今後の実験がやりやすそうだ。

 2日目からはバイブレーターを使う。途中、対象の意識が飛ぶが、その際の反応を見ても、対象の本性が淫らな性格ではないかと思う。これはこれで面白いのだが、実験の目的とは違うので命令して意識を戻させる。混乱し、恐怖を覚えつつも、対象はフェラチオを止めない。その瞳に宿る屈辱の色もいい。2日目で既に理想的な結果が得られていると言えるだろう。

 3日目は、バイブレーターを挿したままで家に帰らせる。その一歩ごとに、対象が快感に悶え、屈辱にまみれる様子が目に浮かぶようだ。対象の精神状態を追い込むのにきっと効果があるだろう。

 4日目。この日は、対象はこちらの命令に素直に従っている。しかし、むしろその瞳の屈辱と憎しみはより大きくなっているように見える。もちろんそれもこちらの想定内だ。それだけ対象が精神的に追いつめられているということなのだから。そこまで追いつめないと心を折ることができない。後は、週末の間に、対象の方で勝手に仕上がってくれるだろう。

 月曜日。保健室に来た対象の様子を一目見ただけで、対象が精神的に相当参っているのがわかる。もう一押ししたら簡単に壊れてしまうだろう。その、最後の一押しは由佳との性行為を見せつけること。案の定、対象は茫然としてこちらの様子を見つめるだけだ。その瞳は欲情した女の目になっている。そして、最後の詰めに、対象の前で、由佳が人形として一番だと言ってやる。その瞬間、対象が屈辱に震え、憎悪に満ちた目で由佳の方を見た。ここまでは、ほぼ満足のいく結果だ。

 翌日も由佳との性行為を対象に見せつけていると、対象の方から人形にしてくれと願い出てきた。もう、実験はほぼ完了しているので、後は由佳に任せることにする。それにしても、由佳も意地の悪い奴だ。由佳のことを先輩と認めることなど、対象のプライドの高さを考えたらまずありえないというのに。当然、対象は由佳の出した条件を拒否する。
 だが、翌日、由佳がいないのを見計らったように、対象がもう一度人形にしてくれるよう直訴してくる。それほどまでに対象の精神が壊れていることはますます満足のいく結果だ。それに免じて、こちらから出した条件をクリアしたら人形にしてやることにする。

 それにしても、1000人の男とセックスしたらなんて、いつになることやら。それまでに妊娠してしまったらちょっとした騒ぎになるだろうが、まあ、こちらに火の粉が飛んでくるおそれはないだろう。

 20XX年、9月28日。竜泉寺岳夫。

< 終 >

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