黄金の日々 第2部 第6話

第2部 第6話 シトリーの帰還

 ヘルウェティアの都、フローレンス。

 久方ぶりに王宮に戻ってきたシトリーは、まずは報告と復命のためにアナトの前に参上した。

 クラウディアを筆頭とする、その場に同席している面々も久しぶりに主に会えた喜びを隠せないでいた。
 ただ、その中でアンナだけが喜びと同時に安堵の表情を浮かべていたことにはシトリーも気づかなかった。

「ご苦労様、シトリー」
「あなたの指示通り、世界樹の森を手に入れてきましたよ。で、こっちにいるのが森のエルフの長で、世界樹の巫女だった……」
「フィオナと申します。よろしくお願いいたします、アナト様」
「よろしくね、フィオナさん」

 シトリーに紹介されたフィオナが進み出ると、アナトに向かって頭を下げた。
 それに軽く会釈を返すと、アナトはシトリーの方に顔を向ける。

「で、戦果の方はどうなの?」
「戦果、ですか?……まあ、手練れたエルフの射手と精霊使いが一部隊、というところですかね」
「それと、もちろん美人揃いなんでしょう?」
「へ?まあ、それは……」

 アナトの言葉に、シトリーは苦笑いするしかなかった。
 しかし、すぐに真顔になって聞き返す。

「それで、こっちの準備は大丈夫なんですか?」
「ええ。こっちはいつでも動けるわよ。キミも知っての通り、こっちの軍勢はかなりの人数だけどちゃんと森の中を通れそうなの?」

 と、そのアナトに質問には、フィオナが代わって答える。

「それは大丈夫です。私たちに任せてくださいませ」
「そう?じゃあお願いするわね。……で、あなたはすぐ動けるの、シトリー?」
「それは……まあ、部隊の編成や準備さえ整っていれば。というか、出発するのはいいとして、作戦は決まっているんですか?」
「あら、作戦ならキミの部下が考えてくれてるわよ」
「はい?」

 シトリーがその言葉の真意を計りかねていると、すっとシンシアが進み出てきた。

「では、私から説明させていただきます。私たちの目的地であるイストリアに行くには、ここから世界樹の森を挟んだ隣国のモイーシアを通り抜けなければなりません。ただし、モイーシアとイストリアは同盟関係にあるので簡単に我々を通してはくれないでしょう。そこでまず、モイーシアを落とす必要があります」
「ふん、それで?」
「これは、あくまでも世界樹の森を通過することを前提とした作戦なのですが、森を出てモイーシアの領内に入るとまず、北の方角にあるクカスの砦を攻めます。クカスはモイーシア北方の防衛の要で、堅固な要塞として知られておりますし、規模も大きいのでこちらの軍勢を収容することもできるはずです。ですので、このクカスの砦を落としてこちら側の橋頭堡にしたいと思います」
「なるほど。……しかし、砦を落とすと口で言うのは簡単だが、実際にはどうするつもりなんだ?」

 シトリーがシンシアに尋ねていると、戦闘の話と合って自分の見せ場と思ったのかマハが脇から割り込んできた。

「どうするもなにも、あたしに任せてくださればそんな砦くらいすぐにぶち壊して見せますぜ!」
「いや、ぶち壊したら拠点にできないだろうが。おまえはちょっと引っ込んでろ」
「ひっ……!もっ、申し訳ございませんっ!」

 迷惑そうにシトリーにひと睨みされては、マハはあえなく平身低頭して引き下がるしかない。
 もはや完全に道化となっているマハをよそに、アンバーの長い髪を揺らせて思案していたシンシアがようやく口を開いた。

「クカスの砦は要害とはいえ、その立地からもわかるように北の街道や山岳地帯からの侵入に対する備えとして築かれた砦です。ですから、これまで人が越えてきたことのない世界樹の森を越えて、南側から敵が攻めてくることは想定していないでしょう。ですから、うまくその隙を突くことができれば。……あの、フィオナさん?」
「……はい?なんでしょうか?」

 不意に、シトリーの傍らに控えるフィオナにシンシアが声をかけた。

「エルフは非常に夜目が利くと聞いたことがありますが、本当ですか?」
「ええ、間違いありませんわ」
「少々暗くても、夜間の戦闘には困らないほどですか?」
「そうですね。光の全くない暗闇となると話は別ですが、かすかな月明かりや、わずかな星の煌めきさえあれば支障なく動けます。それに、私たちエルフの目は熱量の違いを感知する能力もありますので、完全な暗闇でも生き物の動きはぼんやりとなら察知できます」
「そうですか。……では、シトリー様、夜襲をかけましょう。暗闇での行動に慣れたエルフたちと魔導師で部隊を編成して、夜陰に乗して魔法で砦の中に忍び込みます。そして、灯りを消して真っ暗にしてから、見張りと詰所にいる宿直の兵士たちを始末します。そのうえで内側から城門を開けば、砦をほぼ無傷で手に入れることができるでしょう」

 まずは夜襲をかけて拠点を確保するというシンシアの提案に、シトリーはフィオナの方を向いて本人の意思を確認する。

「なるほど、夜襲ね。……どうだ?やれそうか、フィオナ?」
「もちろん、うまくやってみせますわ。シトリー様の下僕になって、こんなに早く手柄を立てる機会をいただけるのですから、森に残った皆もきっと喜ぶでしょう」

 フィオナはそう答えるが、シトリーの問いに自信に満ちた表情で答えた彼女自身が一番喜んでいるように見える。

 一方で、いまだ手柄を立てていないマハが複雑な表情を浮かべているのは、ここでは関係のない話であった。
 それはさておき、フィオナのその言葉を聞いて、シンシアも頼もしそうに何度も頷く。

「それでは夜襲に関しては、フィオナさんたちにエルフの部隊を中心に作戦を組み立てるということでよろしいでしょうか?まだこちらに加わったばかりですから、下手にこちらの戦力と共同作戦をとるよりも、エルフの皆さんだけの方が連携もとりやすいでしょうし。もちろん、作戦の実行に必要なことがあれば、最大限に協力させていただきますので遠慮なくおっしゃってください。それと、詳細なものではありませんが、エミリアさんに偵察をお願いして作成した砦の見取り図があるので、それもお渡しします」
「わかりました」

 羊皮紙に書かれた図面をシンシアがフィオナに手渡すのを見て、シトリーが感心した表情を浮かべた。

「へえ、僕がいない間に偵察まで済ませていたのか?」
「はい。シトリー様はきっと成功なさると信じていましたから、シトリー様が戻ってこられたときのために私たちもできる限りのことをしておこうと思いまして」
「ま、シトリーが働いてるのにあたしたちが遊んでるわけにもいかないしね。あたしだったら小鳥やネズミに変身して、バレないように偵察してくることもできるから」

 ふふん、と自慢げに胸を張るエミリアに苦笑しつつも、シトリーはその場に居並ぶ面々に顔を向ける。

「で、実際のところうちの準備はどうなってるんだ?」

 その問いに答えたのはクラウディアだった。

「はい。我が軍は、魔導師部隊も騎士団も8割方準備はできております。ただ、正確な出発の日取りが決まらないと整えられないこともありますので……。とはいえ、それらの準備も含めて2日もあれば整います」
「なるほど」
「それと、シトリー様のご意見を伺っておきたいのですが、この地の防衛についてはいかがいたしましょうか?」
「ああ、たしかに、もうこの方面には僕らに刃向かおうというめぼしい勢力は見当たらないが、それでももしやの時のために守備隊と非常時の連絡役のための魔導師は必要だろうな。……フレデガンド、どのくらいの人数なら割くことができそうだ?」
「そうですね……5000人ほどでしょうか」

 意見を求められたフレデガンドがさらっと言った返答に、さすがにシトリーも少し驚いた表情を見せた。

「おい!?騎士団の半分近くだぞ?そんなに置いていって大丈夫なのか?」
「はい。というよりも、問題は量よりも質だと私は思います。このたびの遠征は、まず隣国のモイーシアを落としてから、その先のイストリアまで攻め込むのが目的となっています。おそらくはかなり厳しい戦いになることでしょう。それに耐えうる手練れの戦士が、ざっと見積もって7000人ほど。それ以外の者はこの遠征にはついて来れないでしょうから、はじめから連れて行かない方がよろしいかと」
「いや、そうは言ってもだな……」
「それに、数でいえばアナト様の率いる本隊もおりますし、マハ殿の部隊もいるではありませんか」

 シトリーの困惑をよそに、涼しい顔でフレデガンドはそう答える。

 いや、肝心の魔界の軍勢は統制が取れないからおまえたちに期待してるんじゃないかという言葉が喉元まで出かかったシトリーを見て、フレデガンドがふっと表情を緩めた。

「シトリー様は、軍の統制のことを心配なさっておられるのでしょう?」
「う……まあ、そうだけどな」
「それなら心配はいりません。シトリー様が留守にしていたこの1ヶ月の間、私とエルフリーデとでマハ殿の部隊をみっちりと訓練しましたから」
「……はい?」

 フレデガンドの話に、目が点になって言葉を失うシトリー。
 それに構うことなく、彼女は話を続ける。

「そもそも、短期間で力の未熟な5000人の兵の底上げを図るよりも、今の時点で力のある者たちをきちんと統率できる状態に鍛える方が現実的です。実際、戦力としてはマハ殿の部隊の方が我が軍よりもはるかに強大ですし」
「いや、しかしだな……」
「きっかけは、エルフリーデが試合を通じてマハ殿と親しくなったことでした」

 と、いきなりフレデガンドがとんでもないことを言い出した。

「なんだって!?……おまえ、こいつと試合をしたのか?」
「はい。残念ながら7回勝負して私の2勝5敗でしたが……」

 驚いてエルフリーデに尋ねたシトリーは、その返答にさらに目を丸くするしかなかった。

「いや……というか、2回も勝ったのか?」
「もちろん、マハ殿が本気を出していないのは私も承知しています」

 と、唇を噛んでいかにも悔しそうな表情を浮かべるエルフリーデだが、問題はそこではない。
 力だけなら、悪魔の中でも化け物じみた強さを誇るマハと、いくら力を強化されているとはいえ、ただの人間にすぎないエルフリーデがまともにやり合ったいう事実の方が信じ難いことだった。

 すると、当のマハがシトリーたちの会話に割り込んできた。

「しかしまあ、確かにエルフリーデの腕は相当のもんですし……」

 そう言った表情には、人間相手に本気を出せるかという悪魔の矜持が浮かんでいたが、少し悔しそうな顔をしているところを見るとけっこう本気で一本とられたのかもしれない。
 まあ、マハが本気を出したらこの町ごと吹き飛びかねないので、力をセーブしていたのは確かだろうが。

「さすがはシトリー様が見込んだだけのことはあると思ったし、あたしとやる前にうちの全員をひとりでのしちまったもんですから。人間でもなかなかやるじゃねぇかと見直したんでさぁ」
「なるほどな……」

 マハの話で、ようやくシトリーにも事情が飲み込めてくる。
 どうやら、マハの部隊のオーガーやジャイアントどもをエルフリーデがひとりで叩きのめして、マハにその実力を認められたらしい。
 まあ、マハも乱暴者とはいえ、いったん相手の実力を認めると素直になる単純なところもあるようだった。

 ともあれ、下僕たちが対立するのも面倒だし、武人同士互いの実力を認め合うのは悪いことではない。

「それに、あたしはまだ手柄を立ててないですし、シトリー様のお役に立つにはそうした方がいいと言われて、うちのやつらの訓練を任せたんでさ」
「な、なるほど……」

 そう、ぼそりと言った言葉に、思わずシトリーも納得してしまった。
 早くシトリーの役に立ちたい、そのためなら何でもする……。
 それが彼女の一番の本音だったのかもしれない。

 そう思えば、マハも可愛げがないわけではない。
 ただ、なにかと鬱陶しいだけで。

 ともあれ、それでシトリーの結論は決まった。

「よし、じゃあ、その方針で行くとするか」
「それでは?」
「ああ、魔導師の人選はクラウディアとピュラに、騎士団の人選はフレデガンドとエルフリーデに任せる。腕の立つやつはできるだけ連れて行くようにしてくれ。それと、もちろんおまえたちにも全員ついて来てもらう」

 そう言って、シトリーは下僕たちを見渡す。
 今回は全員連れて行ってもらえるとあって、一同に歓喜の色が浮かんだ。

 話が片付いたところで、シトリーはアナトの方に向き直る。

「お聞きの通り、こちらは2日もあれば出発はできるようですけど」
「そうね。まあ、あんまりのんびりしていたら私たちも他の方面の軍勢のことを笑えなくなるしね。じゃあ、2日後に出発することにしましょうか」
「わかりました。……と、そういうわけだ。出発は2日後に決まったから、みんな急いで準備にかかってくれ」
「はい」
「かしこまりました」
「それでは、私は騎士団の方に参りますので」
「フレダお姉さま、私も行きますわ」

 アナトの決定を受けたシトリーの指示で、各自自分の持ち場へと向かう。

 王宮の中は早くも、出立前の慌ただしい雰囲気に包まれていた。

* * *

 その夜。

「お呼びですか、シトリー様?」

 ドアをノックして入ってきたのはシンシアだった。
 昼間、シトリーを出迎えたときの高位聖職者としての正装ではなく、装飾のない略装に身を包んでいた。
 正装に比べると多少生地は薄いとはいえ、裾も長く露出もほとんどない服装の彼女は清廉な聖職者にしか見えない。
 悪魔の下僕となった今ではそのような衣装など何の意味もないというのに、シトリーの前に出るときにはきちんと身なりを整えているのが生真面目な彼女らしかった。

「ああ。出発の準備はどうだ?」
「はい。滞りなく進んでおります」
「で、今、時間はあるか?」
「……はい、それは、私はクラウディア様たちやフレデガンドたちのように現場での仕事はありませんから。出発した後の指示もすでに出し終えていますし」
「そうか。じゃあ……」
「きゃ!?シトリー様!?」

 シトリーにぐいっと抱き寄せられ、いきなり服の上から胸を押さえつけられて吃驚した声を上げるシンシア。

「いやなに、ここに戻ってくるのは久しぶりだしな。それに、ずっとエルフたちの華奢な体ばかり相手にしてたから、おまえのこの掴みがいのある胸をじっくり味わいたくなったのさ」

 そう言うと、シトリーはシンシアの服の裾を捲ってその中に手を潜り込ませる。

「まったく……いつ揉んでもでかい胸だな」

 その言葉に、シンシアはクスッと声を上げて笑う。
 まるで、幼子の他愛もない悪戯を見つけた母親のような、慈愛に満ちて、それでいて楽しそうな眼差しを己が主に注いでいた。

「もう、シトリー様ったら。……見るたびに胸の大きさが違ってもお嫌でしょう?」
「ふ、屁理屈を言うやつだな」
「あんっ、あっ……」

 と、シトリーがシンシアの胸を強く握った。
 手の中に収まりきらないほどにボリュームのある柔らかな肉を乳房の形が変わるくらいに強く揉まれて、シンシアは切なそうな声を上げた。
 それでいて嬉しそうなその顔には、かつては教会の者たちやこの町の住民全てに向けていた、愛情溢れる笑みを浮かべている。
 今では、彼女がその笑顔を向けるのは主人であるシトリーと、同じ下僕の仲間たちだけになっていたが。

「どうぞ、シトリー様。私の胸を思う存分にお楽しみください……」

 そう言うと、シンシアは自ら上衣をはだけさせて、その豊かな乳房を露わにさせた。

「ああ、そうさせてもらう」
「……んっ、あふっ、ああっ、シトリー様ぁ!」

 シトリーが、握った手の力を緩めたり強めたりしながら丸く捏ね回すようにシンシアの柔乳を揉みしだいていく。
 シンシアは、熱っぽく湿った吐息を吐いて体をぶるっと悶えさせる。
 その耳許に口を寄せて、シトリーが囁く。

「それにしても、今日は驚いたぞ。おまえに軍師としての才能があるとは思わなかったな」
「そんな、軍師だなんて……私はただ、各国の情勢や現在の状況、それと地理的な情報と彼我の戦力を分析して判断しただけです……んっ、あんっ!」
「それが軍師の仕事だと言ってるんだ」
「でも、私は一度も軍隊を指揮したことはありませんし……」
「戦場で兵を指揮するのはアナトやマハ、フレデガンドたちがやってくれるし、魔導師たちはクラウディアやピュラが動かすさ。今、僕たちの陣営に欠けているのは、全体の行動の方針を示し、いかにしてこちらが有利な状況で戦闘に入れるかお膳立てをできる人間だ。まさに、おまえにうってつけの仕事じゃないか」
「……そうでしょうか?」
「ああ。おまえのその該博な知識と情報を有効に活用できる知力と分析力、そして、冷静に状況を判断できる力、これからも頼りにさせてもらうさ」
「そんな、褒めすぎです、シトリー様……あんっ!」

 シトリーが、頬を染めて羞じらうシンシアの胸を掴む手にぐっと力を込める。

「はんっ……あっ、し、シトリー様!?」
「これは、おまえが立てた作戦の褒美だ」
「あふぅっ……し、しかし、作戦を立てた私が言うのもなんですが、本当にうまくいくでしょうか?私は彼女たちエルフの実力は知りませんし……」
「そうだな。たしかに、大部隊と真正面から渡り合うには少し非力だが、ひとりひとりの能力は高いぞ。条件次第では、それこそあいつらだけで城のひとつくらいは落としかねないな」
「そうでしたか……んっ、あうんっ!」
「特に、多少の闇の中でも自由に動ける目と、音を立てずに動き回れる身のこなしは夜襲にはもってこいだな。だから、おまえの判断は間違っちゃいないさ」
「ありがとうございます。……ふああああっ!シトリー様っ、そ、そんなに乳首を強く摘まんではっ!」
「どうした?感じるのか?」
「そんな……私の胸が感じやすいのはシトリー様もよくご存じでしょう?はん、んふぅうう……」
「ああ、知ってる。だから、たっぷりと感じるがいいさ」
「ああっ、シトリー様っ!そんなにするとっ!はううううううううっ!」

 がっしりと乳房を掴まれ、指先で乳首を引っ張られてシンシアが顎を跳ね上げて体を反らせる。
 掴まれたままで胸を前に突き出すような格好になった乳首から、ぶしゅっと乳白色の液体が噴き出した。
 そのまま、よろめかないようにシトリーの首に腕を絡めて全身を小刻みに震わせている。
 足に力が入らないのか、膝もカクカクと笑っていた。

「どうした?胸だけでイッたのか?」
「は、はいいぃ……私、胸だけでイッてしまいました……」

 もともと色白の胸を、したたり落ちる母乳がさらに白くデコレートしていく。
 それだけではなくて、息を弾ませているシンシアの体がヒクッ、ヒクッと痙攣するたびに、踏ん張っている足許に、股間から雫がポタリポタリとこぼれ落ちて、小さな水溜まりを作っていた。

 そんな姿を見て、シトリーがにやっと意地の悪い笑みを浮かべる。

「なんだ、だらしがないやつだな。それとも、これだけでもう満足なのか?」
「いえ……いえ、シトリー様……」

 まだ大きく息を吐きながらしなだれかかってきたシンシアがその場に膝をつくと、ズボンの下で膨らんでいるものを愛おしそうに両手で包み込み、上目遣いにシトリーを見上げる。

「シトリー様の、この逞しいものをどうか私にくださいませ……」

 シトリーを見上げるシンシアの、いつもは知性と慈愛を湛えたその瞳はすっかり蕩けて、淫欲にまみれただらしのない表情を浮かべていた。

「そうだな。じゃあ、もう少し遊んでやるか」

 シンシアの緩んだ表情を見下ろしてニヤリと口の端を歪めると、シトリーはその額に指を押し当てた。

「……シトリー様?……あっ、あああっ!」

 怪訝そうな表情を浮かべたシンシアが、短く悲鳴をあげた。
 シトリーの瞳が一瞬強く輝いたかと思うと、自分の中になにか注ぎ込まれたように感じたからだ。

「シ、シトリー様……今、なにをなさったんですか?」

 まだ、ショックに少し唇を震わせながらシンシアがシトリーに尋ねる。
 しかし、シトリーは相変わらずニヤニヤしたままだった。

「まあ、そのうちわかるさ。それよりも、とりあえずおまえのそのでかい胸で気持ちよくさせてくれ?」
「は、はい……?」

 首を傾げながらも、シンシアは命じられたとおりにシトリーのズボンを下ろして肉棒をさらけ出させる。
 シトリーがなにをしたのかはわからないが、なにより久しぶりにシトリーに奉仕できる喜びの方が大きかった。

 露わになった黒光りする肉棒を見つめるシンシアが、再び淫らな笑みを浮かべる。
 シトリーの前に膝立ちになって姿勢を整えると、両手で自分の乳房を挟むようにしてその中に肉棒を包み込んだ。
 そして、挟んだ肉棒を扱くように体を上下させた。

 その瞬間……。

「ああっ、ふあああああああっ!?えええっ、こ、これはっ……!?」

 ビクビクッと体を痙攣させて悲鳴をあげたかと思うと、シンシアは驚いたように体をシトリーから離す。
 そんな彼女の姿に、クククッとシトリーが声を上げて笑った。

「どうした?気に入らなかったか?おまえの胸を、そのいやらしいアソコと同じ快感を感じられるようにしてやったんだけどな」
「私の、アソコと同じ……?」
「ああ、そうだ。言ってみれば、胸マンコだな」
「胸、マンコ……」
「そうだ。ん、どうした?気に入らないのか?」
「……いえ、いえっ!んっ、ふああああっ!」

 シトリーの意地の悪い問いかけに大きく頭を振ると、シンシアは再び肉棒を胸で挟み込んだ。
 そして、両手の動きと上下の揺さぶりを巧みに組み合わせて扱きはじめる。

「あああっ!すごいっ、すごいですっ!とても熱くて、まるで快感を感じる神経が剥き出しになったみたいにビリビリきて!すごくっ、気持ちいいです!」

 恍惚とした表情で快感を叫びながら、シンシアは両の乳房で憑かれたように肉棒を扱きあげる。

「んふううううっ!こっ、こんなのっ、気持ちよすぎてっ、私、すぐにイッてしまいます!ああっ、ふああああああっ!」

 全身を痙攣させたシンシアの乳首から、またもや母乳が迸り出た。
 だが、それも束の間、再び胸をいっぱいに使って肉棒を刺激し始める。

「……くっ、これは、僕の方もかなり気持ちいいぞ」
「本当ですか?では、もっともっと気持ちよくなってください、シトリー様!」

 シトリーが自分の胸で感じていることがよほど嬉しかったのか、肉棒を胸で扱く動きがいっそう激しくなる。

 しかし、実際にシンシアの胸の感触は気持ちよかった。
 その胸の谷間は、肉棒に負けず劣らず熱く火照り、汗と母乳にまみれたその肌の、滑りがありながら吸いつくような感触は本当にあそこに挿入しているかのようだった。

「ああっ!シトリー様のが私の胸でビクビクッてなって!もうっ、もう出そうなのですね!?どうぞ!どうぞシトリー様の熱いのをいっぱいに私に注いでください!」

 射精が近づいたのを感じて、肉棒を扱く動きにいっそう力がこもる。

 そして。

「ふあああっ!胸の中で熱く震えてっ!ああっ、シトリー様っ、シトリー様ぁあああああ!」

 胸の隙間から顔を出した肉棒の先から、粘着質の白濁液が勢いよく噴き出す。
 それを顔面とその胸でいっぱいに受け止めて、シンシアが体を硬直させる。
 同時に、その胸から盛大に母乳が迸った。

「ああ……んふぅううう……シトリー、さまぁあああ……」

 精液のこびりついた顔を蕩けさせて、シンシアが放心したように熱い吐息を吐く。

「なかなかよかったぞ、シンシア。どうだ?次は下の穴に入れてやろうか?」

 射精後の心地よい開放感に包まれながらシトリーがもう再戦を提案すると、シンシアは小さく首を横に振ってもう一度乳房で肉棒を挟み込んだ。

「シトリー様に仕立てていただいたこの胸マンコ、すごく気持ちよかったです……。ですから、もう一度この胸でご奉仕させてください。……んっ、あふっ、あっ、あああっ!」

 欲情で潤んだ瞳でシトリーを見上げながら、シンシアは精液と母乳でドロドロになった胸をいっぱいに使って再び肉棒を扱きはじめる。

 よほどその胸マンコが気に入ったのか、その夜シンシアは気を失うまで胸でイキ続けた。

 そして、その翌々日、シトリーたちは世界樹の森を目指してフローレンスの町を出発したのだった。

< 続く >

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