本当はえむしーだったシンデレラ ツンデレラver.

~ツンデレラver.~

 むかし、あるところにシンデレラという女の子がおりました。
 シンデレラは小さい頃にお母さんを亡くしていたので、お父さんの再婚相手と、その連れ子の義理のお姉さんふたりと一緒に暮らしていました。
 シンデレラは、それはそれは美しい娘に成長しましたが、継母と義理の姉ふたりは、何かにつけてシンデレラをこき使い、いじめていました。
 しかし、彼女はその美しさもさることながら、継母と姉のいじめにもめげない鼻っ柱の強い女の子だったのでした。

「シンデレラ、洗濯が終わったら早く掃除をしなさいよ」
「まったく、いつものことながら人使いの荒い人たちね」
「まあ!口答えする気!」
「あら、口答えくらいしたっていいじゃないの。その代わりやることはきちんとやりますわ。どうせ私がやらないと誰もやろうとしませんしね」
「まあっ!」

「シンデレラ……シンデレラ、私の部屋の片付けはまだ?なにをしてるのよ?」
「こっちの掃除をすませたらお姉様の部屋を片付けますわ。……まったく、家事もろくにできない姉を持つと大変ですわね」
「まあっ!なんて生意気なのかしら!」

 と、このようにシンデレラは継母と姉たちに日々こき使われても全くへこたれていませんでした。

 そんなある日、宮殿で舞踏会が開かれることになり、継母とふたりの姉も参加することになったのでした。

「シンデレラ、私のドレスを出しておいてって言ったでしょ」
「しかしお姉様、あのドレスでは胸がぺたんこになってみっともないですわよ」
「まあっ!この子ったら私が貧乳だって言いたいのかい!?」
「そうですわね、お姉様のバストのサイズだとパットを3つは入れないと厳しいのではないかしら」
「まあっ!まあっ……」

「シンデレラ、私のドレスはどこ?」
「お姉様、あのドレスは私くらいの身長がないと裾を引きずってしまって見苦しくなりますわよ」
「まあっ!この子ったら私がチビだと言いたいの!?」
「そうですわね、お姉様があのドレスを着るのなら、ヒールの高さが15センチはある靴を履かないといけませんわね」
「なっ……!」

「シンデレラ、ちょっと髪を結うのを手伝いなさい」
「はい、お義母様」
「……ちょっと、どこまで髪を持ち上げてるんだい!もう少し後ろで結うのよ!」
「しかしお義母様、このぐらいまで持ってこないと年のせいで髪のボリュームが減っているのがバレてしまいますわ」
「まあっ!この子ったら!」
「それと、そのお化粧もいただけませんわね。皺を隠したいお気持ちはわかりますけど、そう塗りたくってしまっては……」
「黙らっしゃい!まったく、あなたは親や姉に対する口の利き方がなってないわ!罰として、留守の間に家中をきれいに掃除しておくこと!食事も抜きよ!おまえたち、これを始末してきなさい」

 下の姉が用意してあった皿を下げても、シンデレラは平然としています。

「まあ、この家のこてこてした食事は1回くらい抜いた方が太らなくてちょうどいいですわ」
「本っ当に生意気な子だね!いいかい、私たちが帰ってくるまでに家の中をピカピカにしておかないとただじゃすまさないからね!」

 さんざん憎まれ口を叩くシンデレラに腹を立てながら、継母と姉たちは舞踏会に出かけていきました。

 舞踏会に出かける継母たちを見送ると、シンデレラは、はぁ、とひとつため息をつきました。
 そして、家の中に戻ると箒を手にとって床を掃き始めます。

「まったく……義母様も姉様たちもあのドレスにあのお化粧……まるでコメディアンみたいじゃないの。あんな格好でよく人前に出る気になれるわね、センスを疑っちゃうわ。まあ、あの人たちにセンスを求めても無駄かもしれないけど……」

 ブツブツぼやきながらも手際よく掃き掃除を終えて、今度は雑巾がけをしていくシンデレラ。
 鼻っ柱が強くて口は悪いですが、これまでずっと継母たちにこき使われてきたので、家事がしっかり身についているのはさすがです。 

「……そうよ、王宮での舞踏会なんか私みたいな人間にこそふさわしいのよ。ああ、私にドレスがあれば今からでも舞踏会に行くのに。でも、姉様たちのドレスじゃ私には胸がきつすぎて入らないし、義母様のドレスではウエストがぶかぶかでみっともないし……だいいち、あんな趣味の悪いドレスなんか、とてもじゃないけど着る気になれないわ……」
「どれ、それでは私がそなたを舞踏会に連れて行ってやることにしようかの」
「……きゃあっ!」

 掃除をしているシンデレラの目の前にいきなり老婆が姿を現したので、シンデレラは驚いて尻餅をついてしまいました。

「だ、誰なの?あなた!?」
「私はこの町の外れの森に住んでおる魔法使いじゃよ。今日は、そなたの願いを叶えてやろうと思ってここへ来たのじゃ」
「ええっ?なに?なんのこと?」

 目の前のお婆さんは自分のことを魔法使いと名乗りましたが、シンデレラには何が何だかわかりません。

「今言ったじゃろうが。そなたを舞踏会に連れて行ってやると。私は烏に変身して町の様子を見て回るのが趣味なんじゃが、以前からそなたのことは気にかけておったのじゃよ。そなたは血のつながらぬ母や姉にこき使われながら、実によく尽くしておるようじゃの。いつもまめまめしく働いて感心なことじゃと思うておったのじゃ」

 そう言って、魔法使いのお婆さんはいかにも感心した様子で頷いています。
 いつも離れた木の上からシンデレラのことを見ていた彼女には、シンデレラが生意気に口答えしているのは聞こえていなかったのでした。
 だから、お婆さんにはシンデレラがみんなに言われるままに真面目に働いていると思っていたのです。

「そんなそなたにご褒美をあげたくなっての。今日の舞踏会に行かせてやろうと思ったのじゃ」
「でも、私は舞踏会に着て行けるようなドレスを持っていないわ」
「そんなの私にかかればたやすい事じゃ。ほれっ!」

 お婆さんが手に持っていた杖でシンデレラを指すと、ただの町娘の格好をしていたシンデレラの服が純白のドレスに変わりました。
 シンデレラの白い肌と胸元を際立たせるように背中と肩が大きく開いていて、ウエストはシンデレラの体型を引き立てるようにきゅっと絞ってあります。
 袖が無い代わりに肘まである長い手袋が細い腕を包み、ドレスも手袋も眩しいくらいに白くて艶々と光っています。

「えっ、えええっ!?」
「どうじゃ、そのドレスなら申し分ないじゃろうが」
「すごい……この生地、とてもきれいで肌触りがいいわ。ひょっとしてシルクなの?」

 シンデレラは目を丸くして自分の着ているドレスを触っています。

「ほら、そこの鏡を見てごらん」
「わぁ…………あら?」

 壁に掛かった大きな鏡を見たシンデレラは、一瞬、感嘆の声を上げた後に少しがっかりした表情を浮かべました。

「やだ、お婆さん。私が頭にかぶってるの、さっきのスカーフのままじゃないの」
「ふぇふぇふぇ。それはこれからやろうと思っておったのよ。そーれっ!」

 魔法使いのお婆さんがまた杖でスカーフを指すと、スカーフは宝石の付いた銀のティアラになりました。
 花とハートがデザインされていて、シンデレラの見事な金髪とよく合っています。

「すごい!すごいわ、お婆さん!」

 シンデレラは、鏡に映る自分の姿をうっとりと眺めてから、全身の姿を確かめるようにくるりと一回転してみました。
 そして、足下に視線を落とした時に、またがっくりと肩を落としたのです。

「だめだわ、お婆さん。私が履いているの、まだ汚れた革靴のままだもの」
「いやいや、そこにはとっておきのを用意しておるわい。……それっ!」

 お婆さんが杖で靴を指すと、それはキラキラと輝くガラスの靴に変わったのでした。
 足首に近い部分は、シンデレラの透き通るような白い肌に溶け込むように透明なのに、つま先の方は乳白色になってちゃんと指が隠れるようになっています。
 靴の表面は滑らかで、光を反射して宝石のように七色に輝いていました。

「すごい、すごいわ!私、ガラスの靴なんて初めて見たわ!」
「そうじゃろうそうじゃろう。なにしろ、この世にひとつしかない代物じゃからの」
「そうなの?……うん、ほんとにきれい。あ、でも、この靴って割れたりしないの?」
「それは大丈夫じゃ。私の魔法がかかっとるからの、落としてもぶつけても割れたりせんわい」
「へえぇ……」

 感嘆の声を上げながらシンデレラはドレスの裾を持ち上げたり、鏡に映った自分の姿を眺めたりしています。

「どうじゃ?気に入ってくれたかの?」
「ええ!ありがとう、お婆さん!これで義母様や姉様たちを見返すことができるわ!」
「えええっ?」

 思いも寄らぬシンデレラの反応に、魔法使いのお婆さんは戸惑いを隠せません。

「……ああ、みんな私のこの姿を見たらなんて思うかしら。ふふん、義母様も姉様も見てなさい、すぐに惨めな思いをさせてあげるわ。あのみっともない格好なんか、せいぜいピエロがお似合いなんだから!」
「ちょ、ちょっと、シンデレラ……?」

 意気軒昂として怪気炎を上げているシンデレラとは対照的に、魔法使いのお婆さんの顔はどんどん青ざめていきます。
 シンデレラが継母や姉たちに憎まれ口を叩いているのを知らなかったお婆さんは、こうやって直接会話をしてみてはじめてその性格を知ったのです。
 でも、魔法使いのお婆さんももう後には引けません。

「いやいやシンデレラよ、そなた、宮殿で王子と……」
「そうよ!宮殿には王子様がいるんだわ!いや、王子様だけじゃないわね……ふふふふ、見てなさい、舞踏会に来た男たちの視線を全部私に釘付けにさせてあげるわ!」
「いや、そうではなくて……」

 魔法使いのお婆さんの顔はますます蒼白になっていきます。
 たしかにシンデレラはとても美人ですが、この性格のままでは王子様の心を射止めるかどうかさえ怪しいでしょう。
 とういうか、シンデレラの方が王子様なんか眼中に入っていないように見えます。
 きっと、このまま放っておいたらシンデレラの物語がぶち壊しになってしまうに違いありません。
 どうしたものかと、お婆さんは考え込みます。

「むむむ、まずい、これはまずいわい……」
「ん?どうしたの、お婆さん?」
「このままでは話の展開が……いやいや、なんでもないんじゃ。……おおっ、そうじゃ!」
「どうしたの?お婆さん?」
「そなたが舞踏会で男たちにもてるようにまじないをかけてやるぞ。それーっ!」

 お婆さんが杖でシンデレラを指すと、一瞬、その体が光に包まれました。

「……あら?なにも変わってみたいだけど?」
「いやいや、これでもうそなたはモテモテじゃわい」
「そう?」

 さっきの魔法と違って、なにも変わっていない自分の姿に首を傾げているシンデレラに、お婆さんは少し慌てた様子でそう言いました。

 本当は、今かけた魔法は男の人にもてるようにする魔法ではありませんでした。

 このままではまずいと思ってお婆さんがシンデレラにかけた魔法の効果はふたつ。
 ひとつは、舞踏会で王子様に会った瞬間、シンデレラが王子様に恋をしてしまうというもの。
 そしてもうひとつは、王子様に恋をしたシンデレラは、王子様に頼まれたことを断れなくなってしまうというものでした。

「……まあいいわ。ああっ、もうこんな時間じゃないの。舞踏会に間に合わないわ!」
「そう慌てるでない。どれ、ちょっとこれを借りるとするかの」

 そう言うと、魔法使いのお婆さんは台所に転がっていたカボチャを拾い上げて家の外に出て行きました。
 お婆さんが何をするつもりなのかわからないシンデレラも首を傾げながらついていきます。

 そして、家の外でお婆さんが杖を振り回すと、4匹のネズミがふらふらと出てきてカボチャに近づいていきます。
 そこに向かってお婆さんが杖をかざすと、白い煙が上がって、カボチャがあったところに4頭立ての馬車が現れました。

「これに乗って宮殿まで行けば舞踏会に間に合うじゃろ」
「すごいわ、お婆さん!あ……でも、御者がいないわ」
「しかたない。その役は私がやってやろう」

 そう言うと、魔法使いのお婆さんは馬車に上がって馬の手綱を手に取りました。
 本当は御者も何かの動物にさせようと思っていたのですが、シンデレラの様子を見て心配になったのです。

「ほれ、何をしておる。早く馬車に乗るんじゃ」
「わかったわ」
「……よいか?それでは馬車を出すぞい」

 シンデレラが馬車に乗り込んだのを確認すると、お婆さんは馬車を走らせ始めました。

♪ ♪ ♪

「よし、ここから宮殿まではすぐじゃ。ここからは歩いて行くがよかろう」

 宮殿から少し離れた物陰に馬車を止めると、魔法使いのお婆さんは後ろを振り向いてシンデレラに馬車を降りるよう促します。

「私はここで待っておるから存分に舞踏会を楽しんでくるがよい」
「ええ。ありがとう、お婆さん」
「ああ、ちょっと待つんじゃ」
「なにかしら?」
「最後にひとつ大事なことを言うておく。そなたの服にかけたその魔法はの、かけたその日の間しか効果が続かんのじゃ。だからそれまでに絶対にここに戻ってくるんじゃぞ」
「そうだったの?でも、まだ日が暮れたばかりだし、時間はたっぷりあるから大丈夫よ」
「よいか、日付が変わってしまったら、そなたの衣装も、それに、この馬車も元に戻ってしまう。そのことを忘れるでないぞ」
「わかったわ。それまでに絶対戻ってくるから」

 そう約束すると、シンデレラはお婆さんに手を振って宮殿に向かって小走りに駆けていきました。
 その後ろ姿を、お婆さんは少し心配そうに見送っていました。

 シンデレラが宮殿に着いた時には、舞踏会はもう始まっていました。

 その日は、町の人すべてに参加が許された王様主催の舞踏会とあって、宮殿の大広間はたくさんの人でごった返しています。
 しかし、集まった人たちの視線は後から入ってきたひとりの女性に釘付けになりました。

 すらりと背が高くて、輝くばかりの金髪に、これまた宝石の輝く見事な銀のティアラ。
 純白のドレスに、それに負けないくらいの白い肌。
 その足には、見たこともない光り輝くガラスの靴。
 それに何より、舞踏会に集まった女たちが思わずため息をついてしまうほどにきれいな顔。

 みんな、ダンスを踊るのをいったん止めてシンデレラの方を見ています。
 羨望の眼差しを一身に浴びて少し気をよくしたシンデレラは、胸を張って歩き始めました。

 大広間の空気が変わったのを感じたのか、楽団が曲の演奏を中断しました。
 時折、嘆息を交えながら、集まった人たちは固唾を呑んでシンデレラを見守っています。
 その、あまりの美しさに、男たちは近寄るどころか物怖じして後ずさってしまうくらいです。
 まるで、シンデレラの進む先に道ができるみたいで、シンデレラはすうっと奥へと進んでいきます。

「まあ、すごくきれいな人ね」
「でも、なんか少しシンデレラに似てない?」
「馬鹿ね、シンデレラよりもずっときれいよ。それに、あの子は今頃家の掃除をしているはずよ」
「だいいち、あんなきれいなドレスに宝石のいっぱい付いたティアラ……もしかして、あの靴ってガラスでできてるの?あんな高価そうなものシンデレラが持っているはずがないわ」
「それもそうよね。きっとどこかのお姫様なんだわ」

 彼女の姿を眺めながら、継母と姉たちは、それが本当にシンデレラだとは気づかず、そんなことを口々に言い合っています。
 

 と、大広間の中心まで進み出たシンデレラの目の前に、進み出て来て手を差し出した男の人がいました。

「お嬢さん、僕と踊ってくれませんか?」
「えっ?ええっ?あ、はい……」

 その人の姿を見たとたん、シンデレラは雷に打たれたような気がしました。
 そして、心臓がバクバクと飛び出しそうなくらいに高鳴ったのです。

 シンデレラに手を差し伸べて優しそうな微笑みを浮かべている、柔らかなカールのかかった茶色の髪の若い男性。
 それは、この国の王子様でした。

「どうしました?是非、一緒に踊っていただきたいのですが、僕では駄目ですか?」
「あ、いえ……そんなことないわよ」

 早鐘のように高ぶる鼓動に戸惑いながらぶっきらぼうにそう言うと、シンデレラは王子様の手を取りました。

 その時、中断していた音楽がまた始まって、みんな一斉にくるりくるりと軽やかにワルツを踊り始めました。

「きゃ!」

 王子様に手を引かれて、シンデレラも踊ろうとしましたが、舞踏会なんて来たこともない彼女がワルツなんか踊れるはずもありません。
 たどたどしいステップで王子様について行こうとしますが、何度も足をもつれさせてしまいます。

「きみ、もしかしてワルツを踊るのは初めてなのかい?」
「そっ、そんなことないわよ!きゃっ……ちょ、ちょっと、もう少しゆっくりしたらどうなの!?」
「ゆっくりって、そんなことしたら曲と合わなくなるじゃないか。やっぱり、ワルツは初めてなんだろう?」
「だったらどうなのよ!?」
「じゃあ、僕が教えてあげるよ。まず左足を出してから、次に右足を開くように進めて、追いかけるように左足を進めながらくるっとターンして」
「え?こ、こうかしら?」
「そうそう。今度は右足から、左足、くるっ、うんうん、もっと落ち着いて、次はまた左足から右足、くるっ、右足、左足、くるっ……1、2、3、1、2、3……うん、上手上手」
「バッ、バカにしないでよね!」
「バカになんかしてないよ。……ほら、足を開く時に体を沈めるようにして、足を揃える時には伸び上がるようにして動くとスムーズにいくよ」
「そんな難しいことできるわけないじゃないの!」
「できるよ。ほら、こう、肩の力を抜いて、こういう感じで……」

 手をつないでいるだけで恥ずかしくなって胸がドキドキして、話し方が乱暴になるシンデレラに対して怒ることもなく、王子様は丁寧にステップを教えていきます。
 実際、王子様は怒るどころかシンデレラとの会話を楽しんでいました。
 王子様は貴族の娘たちとはよく会うことがありました。
 貴族の家には、プライドが高い娘はたくさんいます。
 そんな貴族の娘でも、王子様の前では取り入ろうとして媚びを売るような話し方をしてきます。
 いわんや、町娘ならなおさらです。
 今まで、王子様に対してこんなにつっけんどんな話し方をしてきた娘はいませんでした。
 それが新鮮で、なんだか楽しく感じられたのです。
 それに、話し方はぶっきらぼうなのに、そのたびに顔を真っ赤にして恥じらうような表情を見せるのが可愛らしくもありました。
 ましてや、シンデレラの美しさときたら、王子様がこれまで出会ったどんな女性よりもきれいなのですから。
 だから、王子様はシンデレラとのそんなやりとりが楽しくてしかたがなかったのです。

 そんな、余裕のある王子様に対して、シンデレラの方は少し戸惑っていました。
 さっきから、心臓がものすごく早く脈打っていて、顔が熱くてしかたがありません。
 王子様に微笑みかけられると、思わずぼうっ見とれてしまいそうになります。
 継母たちに見せるいつもの生意気な態度とは裏腹に男の人と触れ合った経験のほとんどないシンデレラには、なんで自分がそんな気持ちになっているのかわかりません。

「うん、ずいぶん上手になったね。すごく飲み込みが早くてびっくりするよ」
「あっ、ありがと」

 褒められると、また顔が真っ赤になってしまいます。
 王子様の笑顔が眩しくて、まともに見ることができません。

「そろそろ慣れたかな?じゃあ、もう少しペースを上げてみよう」
「……きゃあっ!」

 王子様が腰に手を回して抱き寄せたので、シンデレラは思わず悲鳴を上げてしまいました。

「なっ、なにするのよ!?」
「だって、さっきまではステップを教えながらだから少し体を離していたけど、本当はこのくらい体を近づけるものなんだよ。ほら、他の人たちを見てごらん。みんなこんな感じだから」

 王子様に言われるままに周囲を見回すと、たしかに踊っている人たちは体を互いに近づけていました。
 中には、王子様とシンデレラよりももっと体を密着させているカップルもいたりします。

「で、でもっ……」

 こんなの恥ずかしいじゃない!と言いかけて、シンデレラは顔を赤くして俯いてしまいました。
 王子様の顔がさっきよりもずっと近くにあって、とてもまともに見ることができません。
 それに、こうやってお互いの体温を感じるくらいに体を近づけていると、ますます脈拍が早くなって、さっきから頭の中でドクンドクンと鼓動の音がやかましいくらいに響いています。
 ぼーっとなるくらいに顔が熱くて、おかしくなってしまいそうです。

 そんな彼女を見て、王子様は思わず吹き出してしまいそうになりました。
 たしかに、話す口調はぞんざいですけど、シンデレラの表情や仕草のひとつひとつをすごく可愛らしいと感じていました。
 もっとこの子と一緒にいたいと、もっといろんな話をしたいと、そう思うようになっていたのです。

「うん、だいぶ慣れたみたいだね。はじめとは見違えるようだよ」
「そんなに褒めたって、お礼は言わないからね!」
「うん、いいよ。……そういえば、きみの名前をまだ聞いてなかったね。お礼の代わりに教えてくれないか?」
「……シンデレラよ」

 王子様に名前を聞かれて、シンデレラはまたもや顔を真っ赤にしてボソボソと答えました。

「そうか、シンデレラか。いい名前だね」
「そんなっ、よくある名前じゃないの!」
「いや、きみみたいにきれいな人にぴったりの名前じゃないか」
「だからっ!褒めたって何もないわよ!」

 恥ずかしさと照れくささでムキになって答えてますが、王子様に褒められて、本当は舞い上がりそうなくらいに嬉しかったのです。
 でも、どうしてそんなに嬉しいのか、なんでこんなに照れくさいのかわからなくて、シンデレラは自分の気持ちを持て余していたのでした。

 ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、シンデレラは王子様と体を寄せ合ってくるりくるりとステップを踏んでいきます。
 そんなふたりの姿は、まるで一幅の絵のような美しい光景でした。

♪ ♪ ♪

「ふう、ちょっと踊り疲れたね?少し向こうで休もうか、シンデレラ?」

 しばらく踊った後で、王子様がシンデレラを大広間の外のテラスへと誘いました。

 外に出ると、ずっと火照りっぱなしだった頬に夜風が涼しくていい気持ちです。

「そこの階段から庭に降りられるんだ。案内するから夜風に当たりがてら散歩でもしようよ」

 そう言うと、王子様はシンデレラをテラスの端の階段へと連れて行きました。
 そして、宮殿の庭園を、ふたり並んで歩いて行きます。

「ねえ、王子様が舞踏会を抜け出しちゃっていいの?」
「まあ、舞踏会を主催してるのは父上だからね。別に僕はずっといなきゃいけないわけでもないさ。それよりも、もっときみと話をしたいと思ったんだよ」
「なっ、なによっ、それ!?」

 王子様の言葉に、またシンデレラの心臓がドクンと高鳴ります。
 さっきから、王子様に言葉をかけてもらうたびに胸が弾んで、すごく嬉しいのに、やっぱり恥ずかしくてその気持ちを素直に表すことができません。

「うーん、なんていうか、きみのことをもっと知りたいんだ。きみはどこの家の子なんだい?僕は貴族のお嬢さんはたいてい知ってるし……もしかして町の子なのかな?」
「ま、まあね……」

 王子様の問いかけに、シンデレラは言葉を濁します。
 魔法使いのお婆さんに魔法をかけてもらって意気揚々と舞踏会にやってきたのですが、普段の自分を思うと、場違いなところに来てしまったことを改めて思い知らされたのです。

「でも、きみのそのドレスもティアラも、そしてそのガラスの靴も、そこいらの貴族でも持っていないくらい見事なものだし、きっと大商人のお嬢さんかなにかだろうね」
「……まあ、そんなところよ」
「僕は宮殿暮らしだから町の人の生活はよく知らないけど、きみの趣味とか、得意なものってなにかな?」
「そうね……特に趣味は無いわ」

 シンデレラは、無愛想にそう答えます。
 家事全般が得意だなんて、恥ずかしくてとても王子様には言えません。

「へえぇ……じゃあ、普段は何をしてるの?」
「家の仕事を手伝ってるわ」

 それは、決して嘘ではありませんでした。
 というよりも、家事は全てシンデレラがやっているのですから。

「ふうん、きみくらいの年で、それも女の子なのに大変なんだね。じゃあ、せっかくの気晴らしに舞踏会に来たのに、こんな散歩に付き合わせてしまって悪いことしたかな?」
「そんなことないわっ!」

 自分でもびっくりするくらいの大きな声をシンデレラは出していました。

「私の方こそっ!王子様だって私なんかと話してても面白くないでしょうに……」

 なんで自分がそんなことを言っているのか、自分でもよくわかりません。
 でも、王子様のすまなそうな顔を見ていると、そう言わずにはいられなかったのです。

「いいや、きみとこうやって話をするのはすごく楽しいし、面白いよ」
「そ、そうなの?」
「うん。……どうやら僕はね、きみのことを好きになってしまったみたいなんだ」
「え……?えええっ!?」

 驚いて目を丸くしたシンデレラの顔がどんどん紅潮していきます。

 王子様にそう言われてはじめて、シンデレラは自分も王子様のことが好きになってしまったことに気づいたのでした。
 もちろん彼女が王子様を好きになったのはお婆さんの魔法のせいなのですが、当の本人にはそんなことはわかりません。
 それに、シンデレラにはもう自分の気持ちを止めることはできそうにありませんでした。

「あっ……」

 自分を見つめる王子様の真剣な表情に、シンデレラは息を飲んでしまいました。
 そして、ごく自然な流れで王子様の顔が近づいてきて、シンデレラの唇にそっとキスをしたのです。

「んっ、んんっ……。やっ……」

 短いキスの後、呆然として王子様を見つめるシンデレラ。
 突然のことで、ファースト・キスの実感も湧かない様子です。

 でも、すぐに我に返ったように、その顔が耳の先まで真っ赤になりました。

「もうっ、いきなり何するのよっ!?」
「ごめん。でも、僕は本当にきみのことが好きなんだよ」
「だって、私たち、今日出会ったばかりなのよ?」

 王子様に言ったその言葉は、そのまま自分に言い聞かせる言葉でもありました。
 さっきから、胸の高鳴りが抑えきれなくて破裂しそうです。
 今日、初めて会った相手なのに、こんなに好きになっているなんて、自分でも信じられません。

「それは関係ないよ。だって、僕は現にきみのことが大好きなんだから」
「バカ……なに言ってるのよ……」
「だからお願いだよ、シンデレラ。もう一度、キスしよう」
「ええっ?……う、うん」

 王子様の頼みを、シンデレラは断れませんでした。
 もちろん、それもお婆さんの魔法のせいです。
 でも、そんなことは知らないシンデレラは、さっき一度キスしてしまったんだから、もう一度するくらいだったらいいかなと思ったのです。

 しかし、理由はどうあれ、ふたりはもう一度顔を近づけていき、そっと唇を重ねました。
 こんどは、さっきみたいな短いキスではありません。
 お互いの唇の感触を味わうような、長い長いキス。

「……んふぅ、んぐっ!?」

 王子様にぎゅっと抱きしめられて、シンデレラの体がびくっと震えました。

 そうやって体を密着させているだけで、頭がぼうっとしてきて、なんだかわけがわからなくなりそうです。
 でも、すごく幸せな気持ちでいっぱいになってきます。

「ん、あふ……ああ……」

 長い口づけを終えて唇を離すと、糸を引いた涎が、シンデレラの胸元に落ちていきます。
 それを、王子様が指先でそっと拭いました。

「やんっ、エッチ!なにするのよ、もうっ……」

 思わず、シンデレラは大きな声を上げてしまいます。
 でも、本気で嫌がっているのではありませんでした。
 ただ、王子様の指が肌に当たった瞬間、ビリビリと電気が走ったような気がしてびっくりしたのです。

「ごめん、拭おうと思って……」
「もう……いっつもそんなことしてるの?」
「いやっ、違うんだ。こんな気持ちになったのはきみが初めてなんだよ。きみの肌も、その、胸もすごくきれいで……」
「私の胸……そんなにきれいなの……?」
「うん。すごく魅力的だよ」
「ひょっとして、見たいとか思ってるの?」
「それは……きみさえ良ければ……見せてくれないかな?」
「そ、そう……そうなんだ……。わかったわ、あなたがそう言うんなら……」

 恥ずかしそうな表情の王子様にそう頼まれると、なぜか断る気になれませんでした。
 本当は自分だってものすごく恥ずかしいのに。
 いつもの自分なら、そんなことを言われたら相手を張り倒しているのに違いないのに。 
 でも、王子様の頼みを断って嫌われたらどうしよう?
 そんな不安が膨らんできて、どうしても断れなくなってしまうのでした。

 それが、自分にかけられた魔法のせいだということは、もちろんシンデレラにはわかりません。

 できることならそんなことはしたくないという気持ちに、王子様の頼みを聞いてあげたいという気持ちが勝って、シンデレラはドレスの胸元をはだけさせました。
 すると、白くて形のいい乳房が露わになりました。

「きれいだ。ほんとうにきれいだよ、シンデレラ」
「……やだっ、恥ずかしいからそんなにじろじろ見ないでよ」
「触ってもいいかな?」
「もうっ、本当にエッチなんだから!でも……しかたないわね、いいわよ。……あんっ、ふあああああっ!」

 王子様の手が伸びてその乳房をつかんだ瞬間、さっき指先が当たった時の何倍も強い刺激が頭のてっぺんまで駆け抜けて、シンデレラは甘い喘ぎ声をあげてしまいました。

「きみの胸、すごく柔らかくて気持ちいいよ」
「んふうんっ!バカッ、そっ、そんなこと言わないでっ!あああんっ!」
「でも、本当なんだよ。こうしてると……ちゅっ、れろ」

 片手で乳房をぷにぷにと揉んでいた王子様が、もう片方の乳房に吸い付き、舐めました。
 また、ビリビリと刺激が駆け抜けていきます。

「あふうううううんっ!やんっ、誰もっ、舐めていいなんて言ってないわよ!」
「ごめん。でもきみの胸がすごくきれいで柔らかいから我慢ができないんだ。いいだろ?」
「あんっ……もうっ、王子様ったら……はうっ!ああああぁっ!」

 シンデレラは涙で瞳を潤ませて王子様の頼みを次々と受け容れていきます。
 そして、王子様がまた乳首を吸うと、シンデレラは大きく喘いで体をきゅっと反らせました。

「あんっ、はああっ!やんっ、なにっ!?こんなのっ、すごいいいいっ!」

 王子様に乳房を揉まれ、乳首を吸われて、シンデレラは身も世もない様子で喘いでいます。
 実際、さっきから体中が熱くなって、頭がじんわりと痺れてきておかしくなりそうでした。
 でも、この全身を駆け抜けていく刺激が、目眩がするほどに気持ちよく感じられていました。

 そんな彼女の姿に、王子様もとても興奮していました。
 頭をきゅっと反らせて、喉を震わせて喘ぐ姿も、ふるふると潤んだ瞳でこちらを見つめる表情も全てが可愛らしくて、ますますシンデレラのことが愛おしく思えてきます。
 もう、王子様も自分の気持ちを止められそうにありませんでした。
 もっとシンデレラを愛したい、その、白くてしなやかな体も、きれいな顔も。
 そう思うと、ぷに、と胸を揉む手にどんどん熱が入っていきます。

「ああんっ、はあんっ!やあっ、すごいのっ!こんなのっ、ああうんっ、もうっ、すごすぎてっ、頭の中がっ、変になりそうっ!あうっ、ふあああああああああああっ!」

 王子様の腕の中で体を仰け反らせて、シンデレラは体をガクガクと大きく震わせました。
 それは、彼女が初めて感じた絶頂だったのです。

 そのまま、体に力が入らなくなってシンデレラはその場にへたり込んでしまいます。

「ああ……んふううぅ……ふわああぁ……」

 なんだか、全身がふわふわして変な感じです。
 目の前をチカチカと光が走って、頭がくらくらします。
 でも、とても幸せな気持ちに満たされていました。 

「んふううん……きゃんっ……え?王子様?」

 ぼうっとして座り込んでいるシンデレラの体を、王子様が押し倒しました。
 そのまま、シンデレラの体に覆い被さるようにして、その耳許で王子様はささやきました。

「シンデレラ、僕は本当にきみが好きだ。きみみたいにきれいで、そして可愛らしい人に今まで会ったことはないし、僕に対して、王子としてではなくて、ひとりの男としてごく当たり前に話してくれた女性もきみが初めてなんだ」
「王子様……」
「きみほど好きになった女性はこれまでいないんだよ、シンデレラ。……だから、お願いだ。きみと、その……セックスしたいんだ。いいだろう?」

 真剣な表情でそう言った王子様の頼みを断ることなど、シンデレラにはできませんでした。
 でも、さすがに言葉で返事をするのが恥ずかしくて、黙ったままコクリと頷いたのでした。

「ありがとう、シンデレラ!」

 王子様が本当に嬉しそうな顔をしたので、シンデレラまで嬉しくなってしまいます。
 だって、シンデレラにとっても大好きな人とひとつになれるんですから。
 すごく恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しい気持ちの方が大きいのです。

 ガチャガチャとベルトを外す音がしたかと思うと、王子様がまたシンデレラの体を抱くように覆いかぶさってきました。

「……じゃあ、行くよ」

 その言葉に、シンデレラが黙って頷くと、ドレスの裾が大きくめくられて、アソコの入り口に何か堅いものが当たりました。

 少しの怖い気持ちと、いっぱいの期待にシンデレラが目を瞑った、次の瞬間のことです。

「くふううううっ!いっ、痛いいいいいっ!」

 その、堅いものが中にぐいぐい押し入って来たかと思うと、ぶつっ、と音がしたような気がしてものすごい激痛が襲ってきました。

「ごっ、ごめん!痛かった?」
「くふうっ!だっ、大丈夫だから!」
「本当に?痛かったら抜くよ?」
「だめっ!抜かないで!本当にっ、だ、大丈夫だから!」

 心配そうに訊ねる王子様に、歯を食いしばってシンデレラはそう答えます。

 本当は、大丈夫どころではありません。
 ズキズキとものすごく痛いし、お腹の中に堅くて大きなものが入っていて、とても苦しく感じます。
 男と女がそういうことをするのは話で聞いたことがあっても、初めてがそんなに痛いなんてシンデレラは知りませんでした。
 でも、本当は息をするのも辛いのですが、魚のように口をパクパクさせていると、少しだけ痛みが和らぐような気がします。
 なんとか痛みを堪えようと、王子様の腕を掴んだ手にぎゅっと力が入ります。

 そんなシンデレラを、王子様はそっと優しく抱きしめました。
 そして、ふたりは繋がったまま、しばらくそうしていました。

 そうしているうちに、少し痛みが治まってきたようにシンデレラには思いました。
 まだ痛いのは痛いのですが、最初の時ほどではありません。
 ぎゅっと閉じていた目を開くと、すぐ目の前に王子様の心配そうな顔がありました。

「本当に大丈夫?」
「うん……っ!」

 頷いた時に、またズキンと痛みが走ってシンデレラは顔を顰めます。
 でも、我慢できないほどではありません。
 お腹の中が苦しい感じにもだいぶ慣れてきたように思えます。

 こうして抱き合ってると、お互いのドクドクと鳴る心臓の音と、はぁはぁという熱い吐息の音だけだけが聞こえます。
 シンデレラには、王子様の鼓動に合わせてお腹の中の堅いものもドクドクと脈打っているように思えました。

「本当に本当に大丈夫?」
「だいじょうぶっ、だからっ……」
「じゃあ、動くよ。痛かったらすぐに言って」
「うん。……あくっ!くううううううっ!」

 お腹の中のそれが、ゆっくりと動きました。
 まず、シンデレラが感じたのはずきっとする痛み。
 そして、次にアソコの中が熱くなるような感覚。

「痛いの?」
「くふうううっ!だっ、大丈夫っ!あっくぅうううっ!」

 お腹の中をその堅いものが擦るたびに痛みが走って、シンデレラは歯を食いしばってそれを堪えます。
 なんだか、自分の中のそれが急に熱くなってきたように思えました。
 その堅くて熱いものが内側の壁を擦って、ひりひりと焼けるように感じます。

「あくううううううっ!あっ、熱いいいっ!」
「大丈夫かい、シンデレラ?苦しそうだよ?」
「だいじょうぶってっ、言ってるでしょっ……はうっ、んくうううううんっ!痛いのもっ、だいぶ楽になってきたんだから!んんっ、くううううっ!」

 必死に歯を食いしばって苦しいのを堪えているシンデレラ。
 でも、少し楽になったような気がしてきたのは本当でした。
 アソコの中を擦られているうちになんだかじんじん痺れてきて、痛みが鈍くなってきたような気がしたのです。

「じゃあ、もう少し大きく動いていいかな?」
「くうんっ!こ、これ以上!?……しょ、しょうがないわねっ、いいわよっ。……あっ、あんっ、ああっ!んくううううううっ!」

 アソコの中を擦る動きが速くなって、思わずシンデレラは王子様にぎゅっとしがみつきました。
 その瞬間、その堅いものがさらに奥まで掻き分けるように入ってきて、目の前で火花が散ったように思えました。

「やあっ!?なっ、なにこれっ!?ああっ、はうううっ!熱いっ、あうっ、熱くてすごいのっ!」

 アソコの奥まで堅くて熱いもので擦られて、お腹の中に火が付いたみたいです。
 じんじんと痺れるような感じがアソコから全身に広がっていくように感じます。
 おかげで痛みはだいぶ和らいできたのですが、このまま体中が痺れてしまったらどうなってしまうのか怖くもなったりします。
 それに、王子様の動きがどんどん激しくなってきて、アソコの奥に堅いものがずんずんと入ってくる衝撃が頭の奥まで響くみたいです。
 アソコの中を掻き回されると、頭の中が熱くなって、ぼうっとのぼせたみたいなってわけがわからなくなります。

 痛いのと、熱いのと、痺れるのとがぐちゃぐちゃに混ざり合って、でも、その奥からわき上がってくる、ビリビリと電気のような刺激。
 さっき王子様に胸を揉まれた時にも感じた、目も眩むようなあの気持ちいい感覚を何倍も濃くしたような刺激です。

「あんっ、はうっ、すごいっ!これっ、すごいのっ!くふううっ、あふうっ、あっ、はあっ!」

 気づくと、シンデレラは王子様にしがみついて甘い声で喘いでいました。
 まだ、痛みは感じるのですが、それすらも気持ちいいと思えるくらいに幸せな気持ちをいっぱいに感じていました。
 アソコの中を擦られて、奥をずんと突かれると頭の中がビリビリ痺れて、勝手に声が出てきてしまいます。
 もう、体中が熱くて熱くて蕩けてしまいそうでした。

 一方で、王子様ももうあまり余裕がありませんでした。
 最初は、ただきついだけで動かすのもやっとだったシンデレラのアソコの中が、だんだんヌルヌルしてきて動かしやすくなったかと思うと、急に熱くなってきて、まるでほぐれたみたいに柔らかくなって、それなのに、はじめとはまた少し違うきつさが全体を包み込んできたのです。
 それがすごく気持ちよくて、王子様は無我夢中で腰を動かしていたのでした。
 それに、さっきからシンデレラが大きく喘いで体をビクビク震わせるたびに、アソコの中全体がきゅっと狭くなって王子様のを締めつけてくるようになっていたのです。

「やあっ、あんっ、もうっ、頭の中っ、くらくらしてっ、わけがわからないっ!こんなにすごいなんてっ、わたしっ、知らなかったの!んふううんっ!」
「シンデレラっ!大好きだよっ、シンデレラっ!」
「あんっ、王子様っ!あっ、あふうっ!あんっ、はあっ、ああっ!?ああああああああっ!」
「ああっ!くううううううううっ!」

 ほぼ同時に、ふたりが大きく喘いだかと思うと、その体がビクビクと震えました。

「ふああああああああっ!熱いっ、あついのおおおおおっ!」

 アソコの奥に熱いものが当たって、全身を電気が駆け巡っていきます。
 指の先までビリビリきて、シンデレラの体がきゅうっと引き攣りました。

「ふああああぁ……なに?お腹の中、熱いのでいっぱいになってる……」

 アソコの奥に、熱いものがびゅびゅっと当たって、中を満たしていきます。
 なんだかよくわからないけど、頭の中がふわふわしていい気持ちです。

「シンデレラ……」
「んふうぅ……王子様……んちゅ……」

 自分を呼ぶ声に反応して、トロンとした視線を王子様に向けると、シンデレラは無意識のうちに王子様にキスをしていました。

♪ ♪ ♪

 その後、シンデレラと王子様はもう1回セックスをしたのでした。

 まだ痛みはありましたが、2回目は最初ほど苦しくなくて、シンデレラは1回目よりもずっと気持ちよくなって、いっぱい幸せな気持ちになれたのでした。

「んん……王子様ぁ……」

 王子様の腕の中で蕩けた表情を浮かべ、夢見心地でその顔を見上げていたシンデレラは、ゴーン、と鳴った鐘の音にふと我に返りました。

「……王子様、今の鐘の音は?」
「ん?……ああ、11時半の鐘じゃないかな?」
「11時……半ですって!?」

 王子様の返事を聞くと、シンデレラは慌てた様子でがばっと起き上がりました。
 そして、乱れたドレスを急いで直していきます。

「どうしたんだい、シンデレラ?」
「ごめんなさい、王子様!私、12時までに帰らなくちゃいけないの!」

 それだけ言って、シンデレラは駆け出します。
 今が11時半で、この庭園から宮殿の外に出るには結構距離がありそうです。
 それからお婆さんが待っている馬車まで行って家まで戻るのは、全力で走ってぎりぎり間に合うか間に合わないかでしょう。

 それに、12時になったらお婆さんがかけた魔法が解けてしまいます。
 そうしたら、このドレスも元の服に戻ってしまいます。
 そんな姿を王子様に見せるのは、とてもではないけど耐えられません。
 だから、シンデレラは後ろも振り向かずに必死に走りました。

「ちょ、ちょっと、シンデレラ!?」

 シンデレラの事情を知らない王子様が起き上がった時には、シンデレラはもうずっと先まで走って行っていました。
 でも、それが良かったのかもしれません。
 王子様に行かないでくれと頼まれていたなら、きっとシンデレラには断れなかったでしょうから。

 途中で一度転んで、靴が片方脱げてしまいましたが構わずに走り続けて、どうにかシンデレラは馬車が見えるところまでたどり着きました。

 馬車では、魔法使いのお婆さんがやきもきしながらシンデレラの帰りを待っていました。
 そこに、シンデレラが片方裸足で走ってきたのでした。

「何をしておったんじゃ!これは急がんと間に合わんぞい!」
「ごめんなさい、お婆さん!」
「話は後じゃ。そなたの家まで全速力で駆けるからしっかり掴まっとるんじゃ!」

 シンデレラが乗り込むと、お婆さんはすぐに馬車を走らせ始めました。
 そして、ものすごいスピードで真夜中の町を疾走していきます。

 そして、なんとかシンデレラの家の前で止まった瞬間に日付が変わって魔法が解けてしまいました。

「きゃあっ!」

 地面に投げ出されて尻餅をついたシンデレラのドレスは、もともと着ていた服に戻っていました。
 そして、目の前にはカボチャがひとつと、我に返ったように逃げていく4匹のネズミたち。

「まったく、冷や冷やさせおって」
「ごめんなさい、お婆さん。あ、それと、ガラスの靴を片方なくしてしまって……」
「ああ、そんなことはいいんじゃよ。それよりも、どうじゃ、楽しかったか?」
「うん。……つうっ!」

 立ち上がった瞬間に、アソコのあたりがズキッと痛みました。
 その痛みが王子様とすごした甘く幸せな時間を思い出させて、胸が、きゅうん、となります。

「どうしたんじゃ、シンデレラ?」
「あの……」
「ん?なんじゃ?」
「……今日は……ありがとう、お婆さん」

 妙にしおらしく礼を言うシンデレラの、その、頬を真っ赤に染めた恥ずかしそうな仕草に、魔法使いのお婆さんは万事うまくいったことを確信したのでした。

♪ ♪ ♪

 それから1ヶ月ほどが過ぎました。
 あの舞踏会の日から、シンデレラの様子は少し変です。

「……はぁ」

 箒を杖代わりにして、大きなため息をついているシンデレラ。
 このところ、掃除の途中にそうやってぼんやりしていることが多くなりました。
 継母や姉たちが呼んでも、聞こえていないのか返事をしないこともしょっちゅうです。
 そして、ときどき「王子様……」と、周りに聞こえないくらいの小さな声で呟くのでした。

「ねえ、なんか最近シンデレラの様子が変じゃない」
「ああ、やっぱりそう思う?」
「もちろんよ。おとなしくなったのはいいけど、あれはあれでなんか気味が悪いのよね」

 姉たちも、急に様子が変わったシンデレラのことを不思議に思っていました。

 そして、あの日以来、様子の変な人がここにもうひとり。

「……はぁ」

 宮殿の中、自分の部屋で大きなため息をついている王子様。
 その前には、片方だけのガラスの靴が置いてあります。

 あの晩、王子様が追いかけていった時にはもうシンデレラの姿はありませんでした。
 ただ、彼女の履いていたガラスの靴が片方落ちていただけ。

 お婆さんの魔法が解けたのに、どうしてガラスの靴の片方だけが残っているのか。
 それがシンデレラの体から離れていたからなのか、それとも神様の悪戯なのか、それは誰にもわかりません。
 もちろん、お婆さんの魔法のことなど王子様は知りません。

 でも、ガラスの靴を見ていると、あの晩のシンデレラの、潤んだ瞳で見上げてくる蕩けた顔や、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに唇を尖らせて話す時の表情が思い出されます。

「……シンデレラ」

 そうやって毎日ガラスの靴を眺めては、王子様はシンデレラのことを思い出してため息をつくばかりなのでした。

「またガラスの靴ですか、王子様」

 ぼんやりとガラスの靴を見ていた王子様の姿を見かねて、お付きの侍従が声をかけてきました。
 ずっと王子様に仕えてきた彼にだけは、このガラスの靴の持ち主のことを話していたのです。
 もちろん、彼女とセックスをしたことは内緒にしていましたが。

「その女性は町の娘だとおっしゃっていましたよね」
「うん。彼女に会ったのは舞踏会の時が初めてだったんだから。それに、貴族の家にあんなきれいな子がいたら、きっと前から知っているはずだよ」
「だったら、その娘を探しに行けばいいのではないですか?」
「え?」
「舞踏会に来ていたそのガラスの靴の持ち主と結婚するとふれ回って、若い娘のいる家を一軒ずつ回っていくのです。革や布と違ってガラスは伸びたりしませんから、そのガラスの靴はその娘の足に合わせてあつらえられた特別製なのでしょう。ですから、その靴がぴったり合う娘がきっとその子のはずです」
「なるほど!そうだね!」

 侍従の提案に、王子様は飛びつきました。

 どうせ一軒ずつ回っていくのなら、靴を履かせなくても顔を見たらわかるだろうと思うでしょうが、そんなことをつっこんではいけません。
 ともあれ、その日から、王子様と侍従はガラスの靴を持って町に出て行くようになったのでした。

 しかし、ガラスの靴が足に合う娘はなかなか見つかりませんでした。
 そしてその日、とうとうシンデレラの家まで王子様一行はやってきたのです。

「……やだ、ぶかぶかだわ、この靴」
「だったら私が。……だめだわ、この靴、小さすぎて入らないわよ」

 義理の姉ふたりが靴を履いてみましたが、ふたりともサイズが合いません。

「ええっと、聞いた話ではこの家には娘が3人いると聞いたのだが?」
「……それって?」
「もしかして、シンデレラのこと?」

 シンデレラ、という名前にピクッと王子様が反応しました。

「そ、その子はどこにいるんですか!?」
「ええ?でも、あの子は舞踏会に行ってないですけど」
「いいから!とにかくその子を連れてきて下さい!」
「は、はい……」

 王子様の迫力に押されて、姉たちはシンデレラを呼びに行きます。

 そして、少ししてからブツブツと文句を言いながら出てきたのは……。

「もうっ、なんだっていうんですの?」
「いいから来なさい、シンデレラ」
「私はまだ家の掃除が…………あっ!」

 家の外に出てきたシンデレラは、王子様の姿を見て大きな声をあげました。
 王子様も、シンデレラを見て小さく声をあげました。

 そのまま、呆然としてシンデレラは立ち尽くしていました。
 あんなに会いたかった王子様が目の前にいるなんて夢みたいです。

 でも、すぐに我に返ったようにシンデレラはくるりと振り向いて家の中に入ろうとしました。
 あの日のきれいなドレスとは違って、今の自分は薄汚れた町娘の格好をしています。
 シンデレラは、王子様にこんな格好を見られたくなかったのです。

「あっ!」

 家の中に逃げ込もうとしたシンデレラの腕を、王子様が掴みました。

「やだっ!なにするのよ、もうっ!」

 もう、確かめなくても王子様は確信していました。
 シンデレラという名前もそうですし、今の格好こそごくありきたりの庶民的なものですが、その輝くような金髪と整った顔立ちは間違いようがありません。

「もうっ、なに人の腕を掴んでるのよ!ちょっと、離しなさいったら!」

 そしてなにより、王子様に対してこんな口をきく娘は世界広しといえどもたったひとりしかいません。

「まあっ、シンデレラったら王子様になんて口の利き方をするの!?」
「そうよ。……この子が失礼なことを言って申し訳ありません、王子様」

 姉たちは、びっくりしてシンデレラを咎めたり、王子様に謝ったりしていますが、もう、王子様にはシンデレラのことしか眼中にありません。

「お願いだ!僕の話を聞いてくれないか!」
「えっ?……う、うん」

 不意に、手を振りほどこうとしていたシンデレラの動きが止まりました。
 王子様にそう頼まれると、話を聞かなければいけないような気がしてきたのです。

 そうです。
 魔法使いのお婆さんがシンデレラの服にかけた魔法は解けてしまいましたが、その心にかけた、王子様に頼まれると断れなくなるという魔法は解けていなかったのです。

「で、話ってなによ?早く言ってちょうだい」
「これを見てくれないか」

 自分の方に向き直ったシンデレラに、王子様はあのガラスの靴を差し出しました。

「あっ!」

 シンデレラは、目を丸くしてガラスの靴を見つめています。
 お婆さんにかけてもらった魔法は12時の鐘と同時に解けてしまったはずなのに、あの時脱げてしまったガラスの靴が残っていたことに驚いたのです。

「僕は、この靴を履くことができた人と結婚することにして、町中の家を回ってやっとここまで来たんだ」
「ええっ!?な、なによっ、それ!?」
「そこできみにお願いがあるんだけど、今、ここでこの靴を履いてみてくれないかな?」
「私が?ねえ、それって、もしかして?…………でも、そうよね、そこまで言われたらしかたないわよね」

 もちろん、シンデレラには王子様の頼みを断ることなんかできません。
 少し戸惑った表情を見せていましたが、結局こくりと頷くと、緊張した面持ちで王子様が置いたガラスの靴に向かってゆっくりと足を差し出していきます。

 もう、実際に履かせて確かめなくても、王子様には、目の前の少女があの晩のシンデレラだということはわかっていました。
 だから、彼女がガラスの靴を履けるだろうということもわかっていたのです。

 それはもちろんシンデレラも同じです。
 そのガラスの靴が、間違いなく自分のもので、自分にしか履けないことはわかっていました。

 だから、シンデレラにガラスの靴を履かせようとしたのは、王子様にとっては確認の作業ではなく、言ってみればプロポーズみたいなものだったのです。
 シンデレラもそのことがわかっているので、少し表情が強ばっていたのでした。

 固唾を呑んで王子様が見守る前で、シンデレラの白くて細い足はガラスの靴にぴったりと収まりました。
 それを見て、継母も姉たちも驚きの声をあげます。

 しかし、シンデレラと王子様は周囲の声なんか聞こえないかのようにお互いに見つめ合ったままでした。

「……やっと会えた。この1ヶ月と少しの間、どれだけきみに会いたかったことか。僕がどれだけきみのことを好きなのか思い知らされてきたことか。だから、お願いだよ、シンデレラ。僕と、僕と結婚してくれないか?」
「……………………しかたがないわね。あなたがそこまで言うんだったら、けっ、結婚してあげてもいいわよ」

 耳の先まで真っ赤に染めて、王子様の顔をまともに見ることができないみたいにそっぽを向きながら、恥ずかしそうに唇を尖らせてシンデレラはそれだけ言いました。
 すると、王子様は満面の笑顔でシンデレラに抱きついたのでした。

「ありがとう、シンデレラ!本当にありがとう!」
「きゃあっ!もうっ、みんなが見てるじゃないの!恥ずかしいわ!」

 口ではそう言いながらも、シンデレラの方こそ王子様をぎゅっと抱きしめていました。

 その後、王子様に手を引かれて馬車に乗り込むと、シンデレラは宮殿に向かいました。
 そして、少し経ってから王子様とシンデレラの結婚式が盛大にとり行われたのでした。
 継母と姉を除く町中の人たちが、美しいシンデレラと王子様の結婚を心から祝福したのでした。

 そうして、シンデレラと王子様はいつまでも楽しく幸せに暮らしました。

 めでたしめでたし。

< おわり >

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