後編
将也 : たしかな手応え
あれから2週間、俺は毎晩のようにありすを呼びつけた。
そうやって彼女に命令し、様々な衣装を着せてその姿を写真に収める。
本来の彼女なら嫌がるようないやらしい格好やポーズでも、命令さえすれば本人の意志とは関係なくありすは従順に従った。
もちろん、それが終わると彼女の体を楽しませてもらう。
そう、今もしているように……。
「んっ、はむ、んむっ、じゅっ、はふっ、ぴちゃ……」
水色のワンピースに白いピニー姿のありすが、膝をついて俺のペニスにしゃぶりついている。
あれからいろんな格好をさせてみたが、その名前を自分の芸名に使っているだけあって、なんだかんだいってやっぱりこのアリス・スタイルがこいつには一番似合っていた。
それに、童話の世界から出てきたような格好の彼女にこんないやらしい行為をさせるのがまた興奮を誘う。
「んふっ、ちゅぽ、んむっ、んっ、んふぅ……じゅぱっ、ちゅむっ、んっ、あふ……」
どこか焦点の合っていない、トロンとした目で自分が咥えている肉棒を見つめて、ありすは熱心にフェラチオをしている。
もう、命令した後の奴隷モードは切れているはずだというのに。
あのアンティーク・ショップの主人が言っていたように、この2週間でありすに少しずつ変化が現れていた。
まず、命令した時の従順な奴隷状態の時間が少しずつ長くなっているように思える。
そして、奴隷状態が切れた後でも、こうやっていやらしいことをさせていると蕩けたような表情を見せるようになった。
いや、別にいやらしいことをさせていなくても、ぼんやりとした表情で熱っぽい視線を俺に向けている時がある。
もっとも、まだまだ命令してやらないと自分から従順になんでもするというわけにはいかないが。
「んぷっ、ちゅぱ、あふぅ……っ! んっ、んんっ……」
熱のこもったフェラをしているありすの頭を撫でてやると、我に返ったようにこちらを睨みつけてきた。
「なんだ、その目は?」
「んぐっ! んぐぐぐっ!」
ペニスの先でその喉奥を突いてやると、ありすは苦しそうに顔を歪める。
「ぐぅっ! んくっ、んぐっ……んん、ん……んふぅ……んむ、あむ……」
その、苦しげな呻き声にかまわずぐいぐいと腰を押しつけていくと、さっきまで俺を睨みつけていたその瞳からだんだん力がなくなって、ぼんやりと虚ろになっていく。
そこで喉奥を突くのを止めると、今度はありすの方からペニスに舌を絡めてきた。
「ん、んむ……れる、んふ……」
半ば意識が飛んでいるのか、虚ろな表情を浮かべ、鈍い舌使いでペニスをしゃぶっている。
しかし、次第にスイッチが入ってきたのか、再びその目尻が緩んで肉棒を刺激する動きにが激しくなってきた。
舌全体を使うようにしてペニスを舐め回したかと思うと、次に唇で扱くように口を動かす。
ついには、唇をすぼめてバキュームしながら前後に頭を振り始める。
「んっく、んっ、んっ、じゅぶっ、ふうっ、んちゅっ、じゅぶっ、んじゅううっ……!」
「くっ、激しいな、ありす! ……ううっ!」
「じゅぽっ、じゅっ、んじゅっ、ちゅむっ……んぐっ!? んむぅうううううっ!」
ありすの一心不乱なフェラに堪えられず、その口の中に精液をぶちまける。
「んっ、んっ、んく……ふうぅ……んっ、こくっ……んふぅううううう……」
恍惚とした表情でいったん精液を口の中で全部受け止めてから、喉を鳴らして飲み込んでいく。
そこでようやくペニスから口を離し、放心状態で息を吐いているありすに俺は次の命令をした。
「次は下の方に入れてやる。壁に手を突いてこっちに尻を向けて、自分からおねだりするんだ」
「はい、ご主人様」
命令した途端に、ありすの顔に満面の笑みが浮かぶ。
そのまま立ち上がると、言われたとおりに片手を壁に突き、もう片方の手でエプロンドレスの裾を捲り上げた。
「どうか、私のいやらしいおまんこにご主人様の逞しいペニスを入れてくださいませ」
期待に満ちた表情でこちらを向き、羞じらいや躊躇いは一切見せずにはっきりとおねだりする。
そのワンピースの下にはショーツは穿いておらず、さっきのフェラでかなり興奮していたのか軽く開き気味になって赤く充血した襞が丸見えになり、溢れてきた愛液でふとももがヌラヌラと光っていた。
「さあ、どうぞ、ご主人様。私のここはいつでも準備ができております……」
ありすの重ねてのおねだりに頷くと俺はその腰を掴み、その赤く爛れたような裂け目に肉棒を当てて押し込んでいく。
一息に突き入れたというのに、そこは待ちかねていたようにペニスを熱く柔らかく包み込んでいた。
そして、聞こえてくるのはありすの甘く可憐な喘ぎ声。
「あっ、あああぁんっ! ふわぁああああああっ!」
一気に奥深くまで突かれて、ありすの背中が弓なりに反り返る。
その弾みでバランスを崩しかけて、慌てて両手で壁を突く。
今の一突きで軽くイッたのか、熱くうねる膣全体が痙攣するように収縮して肉棒を締めつけてくる。
喉から声を絞り出すようにしながら、体を支える両手がプルプルと小刻みに震えていた。
「はぁん……ご主人様のが、奥まで届いています……。ご主人様はいかがですか?」
ありすが顔だけをこちらに向けて、嬉しそうに潤んだ瞳で見つめてくる。
「ああ、いいぞ。入れただけだっていうのに、いい感じに締めつけてきてなかなか気持ちいい」
「ありがとうございます、ご主人様!」
「じゃあ、おまえから動いてもっと気持ちよくさせろ」
「かしこまりました。……んんっ……んっ! はうっ、あぁんっ……」
壁に両手を突いた姿勢のまま、ありすが腰を前後に動かし始める。
ゆっくりとした動きだが、吸いつくような締めつけが肉棒を刺激してくる。
「んっ……きっ、気持ちいいですか、ご主人様? はんっ、ぁんっ!」
「ああ、いい感じだ」
「……よかった。私も……んんっ! ご主人様のをいっぱいに感じられてっ、幸せです……あんっ、はぁあああんっ!」
恍惚とした顔をこちらに向けつつ腰を揺らしているありすが、時折大きく喘いで体を震わせる。
こうしていることにすっかり夢中になっている様子で、ずり落ちてきた衣装の裾を俺がまた大きく捲り上げても恥ずかしがる素振りすら見せない。
おそらく、腰を動かしながら膣が締まるように力を入れているのだろうか、そこはきゅうっと引き締まったままペニスを扱くように蠢いていた。
そこからもたらされる快感に、俺の方からも腰を動かさずにはいられなくなる。
「ああっ、ふぁああああああっ! ごっ、ご主人様が動かなくてもっ、わっ、私が気持ちよくしますからっ!」
「そうじゃない、あまりに気持ちがいいものだから俺も動きたくなったんだ」
「嬉しいっ! ご主人様にそう言ってもらえてっ、私も嬉しいですぅううっ! はうっ、ああっ、でもっ、そんなにされたら私の方が気持ちよくなりすぎて…………やっ!? 違うっ、違うんだからっ! ああっ、はうぅうううっ!」
ようやく奴隷モードが切れたのか、言葉の途中でありすの口調が変わる。
それでも、自分から腰を動かすのを止めることはない。
「なにが違うんだ? そうやって自分から腰を振ってよがってるくせに」
「だから違うのっ! これはあなたが命令したからっ! ふわぁあああああっ……そんなにアソコの中掻き回したらっ、私っ、変になっちゃうっ! ああっ、はぁああんっ!」
「いいじゃないか、それで」
「やぁっ! 子宮の入り口っ、ゴツゴツしないでっ! そこっ、弱いのっ! そこをノックされたらっ、気持ちいいのが止まらなくなってっ! ふあっ、イッて、イッちゃうううううっ!」
絶頂宣言したありすの中の締まりがきつくなり、肉襞がペニスに食いついたまま小刻みに震える。
だが、そのきつさを味わいながら、俺はさらに腰を突き動かす。
「やぁああっ! まだイッて、イッてるのにっ! そんなの熱いので突いちゃらめぇええっ!」
「でも、それがいいんだろ?」
「らめぇっ! イッてるのにお腹の中っ、そんなに掻き混ぜられたらっ、わらし戻れなくなるぅううっ! 気持ちのいいところから降りられなくなっちゃうぅううううっ!」
髪を振り乱して喘ぐありすの呂律が怪しくなってくる。
奴隷モードが切れても、ほとんど抵抗することなく快感に呑まれているその姿に、ありしが完全に俺の奴隷になる日も近いことを感じていた。
ありす : 夢の中の奴隷、そして、現実の奴隷へ……
「ああっ……カエピオ様ぁっ……」
カエピオ様がねじ込むようにして腰を動かす度に、私の中でその熱くて逞しいものが暴れるのを感じる。
その一突き一突きが、気が遠くなるほどの快感をもたらし、そうしていると身も心も幸福で満たされていく。
「ふああああっ! カエピオ様っ! カエピオさまぁあああっ!」
カエピオ様にしっかりと抱きつくと、その動きに合わせて私も腰をくねらせる。
……私は奴隷だけど、こうしているとカエピオ様に愛されているのを全身で感じることができる。
だからこそ私の全てを捧げたいと思う。
それが私の幸せなんだと思える。
「ああっ、カエピオ様っ! 私はっ、私はカエピオ様にお仕えできて本当に幸せですっ! ああっ、あああーっ!」
蝋燭の頼りない炎が照らすだけの薄暗い部屋に、淫靡な音と私の喘ぎ声だけが響き続けた。
*
*
*
今のは……夢?
目を開くと、自分のベッドの上だった。
その日、撮影の仕事から帰って、そのままの格好でうたた寝をしてしまったらしかった。
それにしても、今の夢は?
夢の中で、私は激しくセックスをしていた。
相手の男は少し縮れた黒髪に豊かなあご髭を蓄えていて鼻がすごく高い、明らかに日本人とは違うヨーロッパ系の顔立ちをしていた。
もちろん、見たことない相手のはずだ。
それに、お互いに裸だったから服装はわからないけど、あの部屋の雰囲気はなんだか今とは違っていた。
うまく説明できないけど、ものすごく昔のもののような感じがした。
……でも、私、日本語で考えて喋ってた……はずよね?
妙に鮮明な夢だったのに、そういうところははっきりしない。
ただ、夢の中で私は奴隷だった。
だけど、その相手の奴隷でいることにすごく幸福を感じていた。
それこそ、その名前を呼ぶだけで幸せに感じるほどに。
それに、なんでだろう?
見た目は全然違うのに、あの夢の中の相手があの男の姿とかぶる。
どうして?
あの男はカエピオ様じゃないというのに……。
……って、なに言ってるの!?
そもそも、私はカエピオという男のことだって知らないじゃないの!
いったいどうしちゃったっていうの?
まるで自分の中に、もうひとり別な人間がいるみたい。
……はっ!
まさかこれって……。
もしかして、あの男に命令された時に出てきていた私じゃない誰かって、さっきの夢の中の彼女なの?
私がそう思ったのも当然のことだった。
無意識のうちに夢の中の相手と、あの男を重ねてしまっている自分がいる。
それに、あの男に命令されている時の私は、夢の中の彼女とまったく同じことを感じていた。
相手の奴隷でいることに、自分の全てを相手に捧げることに幸せを感じていた。
あの男に命令された時の私の気持ちが、奴隷としての彼女の気持ちなんだって、さっき見た夢ではっきりした気がする
「じゃあ、あの夢もこの首輪のせいなの?」
私の首につけられたままの、あの首輪に触れてみる。
……そう、私はこの首輪に触れていた。
これを外そうと思わなければ、簡単に触れることができるのに気づいたのもついこの間のことだった。
そして、こうやって触れることができても、それを外そうとも思わない自分がいた。
それは、諦めという感情ともまた違う。
もう、数日前からあの男に対する嫌悪や不快感がどんどん薄れていっているのを自分でも感じていた。
それを素直に認めることができない自分がいるのもたしかだけど、もう、自分でもどうしたいのかわからなくなっていた。
なんで自分がこんなに抗っているのか、そのことに意味を見いだせなくなっていた。
でも、さっきの夢でなんとなく感じたことがある。
たぶん、この首輪は彼女がかつて身につけていたものなんだろうって。
そして、あの夢の中の彼女が奴隷として自分の主人に抱いていた思いがこの首輪に宿り、それがあの男を主人と思う感情となって私に移っている。
はじめはあの男に命令された時だけだった奴隷としての私が、今では私そのものになろうとしているんだと。
本当なら、そんなの嫌だって泣き喚いたり、恐怖に怯えたりしないといけないのかもしれない。
だけど、不思議とそんな気持ちになれなかった。
そう……きっと、今の私は……。
「……そろそろ将也様のところに行かないと。……って、私、今!?」
時計を見て、無意識のうちに呟いたその言葉の持つ甘美な響きに、自分で驚いてしまった。
これまでは命令された時でも、ご主人様、としか呼んでいなかったのに、その名前を言っただけでうっとりするほどの幸福感に包まれていた。
まるで、夢の中で相手の名前を何度も何度も呼んでいた彼女のように。
「そっか……そうなんだね。私は、もう……」
今さっき自分の中にこみ上げてきた甘い感情を反芻してみる。
そうしていると、不思議な気分の高まりに頭がのぼせたようになる。
だからそのまま自分の衣装鞄を手にすると、ふらふらと部屋を出たのだった。
* * *
そして、いつものようにその部屋の前に来ると、インターホンを押す。
「おう、来たか?」
ドアを開けて現れたその姿を見て、私はあの言葉を口にしたい衝動に駆られていた。
たぶん、この人の前でそれを言うと私はもう戻れなくなってしまう。
きっと、今までの自分がすっかり変わってしまう。
そんな気がした。
だけど、その言葉を言いたい。
この方を名前で呼びたいと、心の底からそう思っていた。
だから、意を決して唾を飲み込むと、はっきりと口に出していた。
「ただいま参りました、将也様」
将也様の名前を呼んだ瞬間に、言いようのない幸福感に包まれている自分がいた。
これで、私は心の底から将也様の奴隷になってしまった気がする。
だけど、悲しいなんてこれっぽっちも思わない。
むしろ、嬉しいと思う。
今の私は間違いなく、この方の奴隷でいることをなんの抵抗もなく受け入れて、それで幸せを感じていた。
だけど、将也様はそんな私を見て怪訝そうな表情を浮かべていた。
「どうしたんだ?」
「いままで抗っていて申し訳ございませんでした。やっとわかったんです。私は、将也様の奴隷でいることを望んでいたんだって」
少し前までの自分なら、絶対に口にしなかったような言葉がすらすらと出てくる。
でも、今はそれが私の本心なんだもの。
「そうか」
深々と下げている頭の上から、将也様の声が降ってくる。
顔を上げると、将也様は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「じゃあ、中に入れ」
「はいっ! 将也様!」
将也様の後ろに続いて中に入っていく。
こんなに満ち足りた想いでここに入るのは初めてだった。
本当に、将也様の奴隷になってここに来るのがこんなに嬉しいことだなんてこの間までは想像もしていなかった。
自然と笑顔になって、将也様に熱のこもった視線を向けるのを止められない。
「あの、将也様、今日はどの服に着替えましょうか?」
持ってきた衣装鞄を開いて、胸を躍らせながら将也様にお伺いをたてる。
今までは命令されて着替えていたけど、今日からは違う。
どんな衣装を着て将也様にお仕えしようかと考えるだけで楽しくなってくる。
「まあそう焦るな。おまえは本当に俺の奴隷になったんだな?」
「もちろんです、将也様。私の身も心も、全て将也様に捧げます」
「そうか。じゃあ、その記念だ。この衣装をおまえにやるから、今日はそれを着るんだ」
そう言って、将也様が包みを差し出す。
その中には、黒く光沢のある衣装が入っていた。
「ありがとうございます、将也様! さっそく着替えますね!」
「あ、それに着替える時は下着は全部脱いでからにするんだぞ」
「はい、わかりました!」
将也様にいただいた衣装を広げてみる。
黒いレザー製の、袖の無いボディースーツのようなものに、同じく光沢のある革製の長めの手袋と、膝上まであるレザーソックス。
私は使ったことはないけど、こういう仕事をしていると知識としては知っている。
こういうのをボンデージスーツって言うんだって。
言いつけ通りに、下着を全部脱いでからそれを身につけてみる。
それで少し驚いてしまった。
そのスーツは、胸の下から腰までしかなかった。
だから、ブラを着けていない私の乳房は丸見えになっている。
それに、スーツから伸びているガーターベルトの金具をレザーソックスの金具に留めても、股間を隠すものは一切ない。
最後に肘まである手袋を嵌めて、改めて自分の姿を確かめてみる。
私ったら、すごくいやらしい格好をしてる……。
部屋に置いてある鏡に映った、黒く光るボンデージスーツに身を包んだ私の姿は大事なところが全部露わになっていて、すごくいやらしく感じた。
「あの……いかがでしょうか?」
さすがに少し恥ずかさを感じながら将也様にお伺いをたてる。
でも……。
「うん、すごくいいよ、ありす。すごくいやらしくて、とてもきれいだ」
そう言った時の将也様の笑顔を見ると、恥ずかしさなんか全部吹き飛んでしまった。
「ありがとうございます! 将也様!」
「じゃあ、その姿で撮影といくか。スクリーンの前でポーズを撮ってみろ」
「はい!」
私は、バックスクリーンの前に立つと胸を反らせる。
せっかくなんだから、この丸見えのおっぱいを強調しないと……って、そう思った。
そして、このいやらしい格好で将也様を誘惑するように微笑みかける。
「うん、いいぞ。本当にいい表情をするようになったな」
「ありがとうございます、将也様!」
カメラを構えてシャッターを切った将也様に褒められて、嬉しさがこみ上げてくる。
たしかに、私は撮影の時に表情を作るのが苦手だった。
でも、今は将也様の前でならどんな表情だって、どんなポーズだってとることができる自信がある。
だから、私はどうしたら将也様が興奮するか精一杯考えていろんなポーズをとり続けた。
そうやって、しばらく撮影をした後で……。
「じゃあ、次はこれを使うか」
「……将也様?」
将也様が、黒いバンドで私に目隠しをした。
そして、次に私の両手を頭の上で交差させて、手首のところをバンドのようなもので縛る。
「それじゃ、撮影を続けるぞ」
「はい……」
将也様の声を合図に、またシャッター音が響き始める。
でも、目隠しをされた状態ではなにも見えない。
それに、ポーズをとりたくても両手を縛られた状態ではそれも思うようにできない。
でも……なんだろう?
なんだか胸がドキドキして、私、興奮してるの?
そうやって目隠しをされた状態で撮影されて、すごく興奮している自分がいた。
シャッター音の聞こえる方向くらいしか判断する材料がないから、どんな位置のどんな角度から自分がとられているのかわからなくて、かえって変な妄想が膨らんでいく。
自分が今、とてつもなくいやらしことをしているんじゃないかと思うと、体が熱くなってアソコが疼いてくる。
だけど不意に、それまで立て続けに聞こえていたシャッター音が止まった。
「……将也様?」
いきなり静かになったのが不安で、将也様の名前を呼ぶ。
でも、返事はない。
「どうなさったのですか、将也様?」
不安に駆られて、もう一度将也様を呼んだ。
その、次の瞬間に胸を掴まれた。
「ふぁあああああっ!? まっ、将也様!?」
不意打ちをくらって、思わず大きな声を上げていた。
驚きで心臓が飛び出しそうなくらいにバクバクと高鳴っている。
すると、掴んだ手が乳房をぎゅって揉んでくる。
「ああああああぁんっ! 将也さまぁっ……!」
「どうしたんだ? そんなに感じるのか?」
「はいいぃ……。いきなりこんなことされて、私、驚いて……でも、すごく興奮してますぅっ!」
本当に、ただ胸を揉まれているだけなのにすごく感じてしまっていた。
目隠しをしているドキドキと、いやらしいことをしているドキドキが混ざって、すごく興奮する。
将也様の姿が見えないから、次になにをされるのかわからないスリルみたいなのがそれに拍車をかける。
すると、今度はいきなりアソコに指が入ってきた。
「ひゃうううっ!? はうぅんっ! やあっ、そこはぁっ!」
「なんだ? もうこんなに溢れさせてるのか?」
「はいいいぃっ……だって、私、さっきから本当に興奮しててっ、アソコがジンジンしてたんですぅうううっ!」
「ふっ、そうか……」
耳許で将也様の吐息が聞こえる。
「あっ、ふぁああっ! あんっ、将也様ぁああああっ!」
背後から私を抱いてアソコの中を掻き回しながら、将也様は少しずつ後ずさっているようだった。
私の体もそれに引っ張られていく。
「……ふえ? ……ぁんんっ」
両足を軽く広げさせられたかと思うと、背後から将也様が腰を押しつけてきて、アソコの入り口に固くて熱いものが当たった。
たぶん、さっきの沈黙の時間にズボンを脱いでいたんだわ、と思って気持ちが昂ぶったのも束の間、私を抱きかかえたまま将也様の体が後ろに倒れ込んで私の体がその上に乗っかる形になって、将也様の逞しいものが一気にアソコの中に入ってきた。
「ああっ! いぁあああああああああっ!」
よく考えたら、私を抱いたままソファーに腰掛けただけだったんだと思う。
だけど、目隠しをされた私にはそんなことを考える余裕はなかったし、そんな状態でいきなり一番奥まで突き入れられて、わけもわからないままにイッてしまっていた。
本当に、将也様の固くて逞しいペニスが一息で奥まで入ってきて、真っ暗で見えないはずの目の前があっという間に真っ白になってしまっていた。
だけど、その余韻に浸る間もなく将也様が下から突き上げ始める。
「はんっ! ああっ、すごいっ、こんなっ、イッってるのにっ、また感じちゃうっ! あぅんっ、はぁあああっ!」
将也様のペニスでテンポ良く突かれて、あっという間に体中が快感に染まっていく。
「あぁんっ、こんなのすごすぎますっ、将也様! あうっ……やっ、またイッて、イクぅううううううううっ!」
きっと目隠しのせいなんだろう。
興奮しきった体はいつもより感じすぎて、またすぐにイッてしまう。
でも、将也様はアソコを突き上げるのを止めない。
「ふぁあああっ! まっ、将也様! あぁんっ、将也様ぁああっ!」
本当に、見えないせいか将也様のものをすごく感じることができる気がする。
それだけ、体が敏感になってる。
でも……あれ?
そういえば、さっきから将也様ったらひと言もしゃべってないわ?
将也様の名前を呼びながら喘いでいた私は、不意にそのことに気づく。
今、私を抱いてくださっているのは本当に将也様なの?
そんな疑問が頭をもたげてくる。
いや、そんなことないわ!
今、私のアソコを貫いているのは将也様のペニスで間違いないもの。
この大きさ、この感触を私が間違えるわけがない。
でも……。
目の前が真っ暗なためか、いったん頭の中に生まれた不安はどんどん大きくなっていく。
その時だった。
「……あっ? ……はんっ!?」
将也様の動きが急に止まったかと思うと、両手を縛っていたバンドが解かれた。
次に、ふたり繋がったままで体の向きを変えさせられる。
そして、目隠しをしていたバンドが取り除かれた。
まぶしさに一瞬目が眩んで、パチパチと瞬きをしてから目をこらすと、私を抱いている将也様の姿が飛び込んできた。
ほんの少しの間目隠しをさせられていただけなのに、なんだかずっと長い間その姿を見ていなかったように感じる。
やっとその姿を見ることができた嬉しさと、将也様への愛おしさがこみ上げてきて、私は自分から将也様に抱きついて腰をくねらせていた。
「ああっ、将也様! 将也様ぁあああ! あぁんっ、んっ、はぁんっ!」
「おいおい、どうしたんだ?」
将也様が呆れた声をあげたけど、相手が本当に将也様なのか不安になっていただなんて、恥ずかしくてとても言えない。
だから、照れ隠しにギュッとしがみついて、無茶苦茶に腰を揺らす。
「あぁんっ……将也様の逞しいのでっ、アソコの中掻き回されてっ、はぁうんっ……ああっ、いっぱい感じちゃいますぅうううっ!」
「なに言ってるんだ? 動いてるのは俺じゃなくておまえの方じゃないか」
「それはっ、そうですけどっ……私っ、こうしてるとすごく幸せなんですっ……ふあっ、いいっ! 将也様の奴隷になれてっ、本当に良かったですっ! あああっ、将也様ぁあっ! そんなに強くっ! ふぁあああっ!」
将也様が下から突き上げてきた瞬間に、子宮の入り口を叩かれて意識がふわっと飛びそうになる。
でも、それがなによりも気持ちよくて、幸せな気分になれる。
うん、私、本当に幸せ者だ。
将也様っていう素晴らしいご主人様に出会えて。
そのご主人様にこうやって愛されていると、目の前が光に満ち溢れて全身が幸福感に包まれてくる。
「すきぃっ、大好きですっ、将也様っ! ああっ、将也様っ! 将也さまぁあああっ!」
将也様の逞しいペニスでアソコの中をいっぱいに突かれるこの幸せを噛みしめながら、私はあの夢の中の彼女のように何度も何度もご主人様の名前を呼び続けた。
エピローグ
再び、アンティークショップで
「……では、この首輪をつけた女性には古代の女奴隷の想いが乗り移って、それを身につけさせた相手の奴隷になってしまうというんですか?」
「そうです。もっとも、すぐにというわけではなくて、完全に奴隷になるまでには少し時間がかかりますが」
あのアンティークショップの中で、金の首輪を手にした青年に主人が説明する。
だが、その青年は腑に落ちないといった顔をしていた。
「しかし、女奴隷の想いといっても、そんな感情を相手に対して抱くものなのですか? 自分を奴隷にした相手は憎しみの対象になりこそすれ、プラスの感情を抱く相手にはなり得ないのではないですか?」
「そう思うのは現代の人間の価値観でしょうな。そもそも、古代は奴隷の労働を前提とした社会ですから、その存在はごく当たり前のことだったのです。犯した罪や債務のために期限付きの奴隷になることもありましたし。……なに、それは単にその人が持っていた様々な権利が失われて、主人の所有物になるだけのことです」
「いや、それでも……」
「まあ、たしかに農場や鉱山で働かされていた奴隷はかなりの重労働だったため、逃亡や反乱もしばしばだったでしょう。しかし、家事や主人の身の回りの世話をする女奴隷はそうではありません。なにより、古代ローマはかなり経済的な格差の大きな社会だったのですよ。もし、大きな権力や財産を有していた元老院身分の者の奴隷になることができたら、奴隷といえどもそれなりの生活を送ることができたはずです。それどころか、貧しい身分の者のそれとは比べものにならない豊かな生活を享受することもできたかもしれません。そのような環境で主人に愛されていれば、奴隷の方でも相応の感情は芽生えたでしょうな」
「……そういうものなのですか?」
主人の説明を聞きながら、青年は手にした首輪をまじまじと見つめる。
すると、主人がその内側を指さした。
「ほら、そこにガイウス・マエケナスと刻印してあるでしょう。調べてみると、どうやら共和政末期の頃の有力者の名前らしいのです。そのくらいの地位の者になれば、奴隷の待遇もかなり良かったかもしれませんな。そういえば、先日もセルウィリウス・カエピオという刻印があった首輪が売れましてね……」
主人がそう説明している最中に、ドアに付けられた鈴が鳴ってふたりの客が入ってきた。
背の高い30歳前後の男と、恋人のようにその男に寄り添う少女。
その少女は、水色のワンピースに白いピニーのエプロンドレスという、まるで童話の中から出てきたような格好をしていた。
「おや、いらっしゃい」
「ひさしぶりです。あの首輪の料金を払いに来ましたよ」
「では、うまくいったのですね?」
「ええ。……見てください、最高の女ですよ」
そう言うと、男は少女を抱き寄せる。
「まあっ! ありがとうございます、将也様!」
男のことを”将也様”と呼んで、少女はその場に傅かんばかりの勢いで恭しく礼を述べる。
相手を見上げる少女の瞳は熱を帯びて潤み、その表情には喜びが満ち溢れて、傍目に見ても幸せそうな雰囲気を漂わせていた。
そしてその少女の首には、青年が持っているのと同じような金色の首輪が鈍く輝いていたのだった。
< 終 >