オイディプスの食卓 第24話

第24話 アナル教育(基礎編)

 夕食後、今日も僕は花純さんと一緒に入浴する。
 最初のうちは緊張したり興奮したりで大変だったけど、最近は本当にお兄ちゃんな気分で可愛い妹(年上)の体を洗ってあげている。
 自分の手ですみずみまできれいに洗ってあげれば、不思議と自分の体みたいに愛着が湧くっていうか、汚いところなんて本当に一個もないと断言できるくらい自信がある。
 花純さんはぴかぴかの美少女だ。兄推薦の清潔少女だ。
 でも、近頃は花純さんもお年頃になってきたようで、逆に彼女の方が恥ずかしがるようにもなってきた。
 そういうところがまた可愛い。老後もこうして洗ってあげたいと思えるくらいだ。

「お兄ちゃん……花純、今度から自分で体洗おっかな……」
「どうしてッ!?」

 僕の驚愕の叫びが狭いお風呂の中に反響して、言った花純も驚いて固まっていた。
 いやいや、驚いた。娘から「もう一緒にお風呂に入らない」と言われた父親の気持ちというのが、今、すごい理解できた。
 なんだかすごい切ないし悲しくて寂しい。死にたいとすら思えた。

「お兄ちゃんのこときらいになったの……?」
「ち、違うよ、そうじゃなくて!」

 花純さんは慌てて両手をぶんぶんして泡を飛ばす。

「お、お兄ちゃんのことは大好きだよ? でも、なんか、恥ずかしいよ、10才にもなってお兄ちゃんに体洗ったりしてもらうの」
「恥ずかしくないしよくある話だよ。僕も10才まで優惟姉さんに背中とか洗ってもらってたし」
「でも、背中でしょ? お兄ちゃんはお尻の穴までくりくりするもん。あれ恥ずかしい。ばっちいし」
「ばっちいなんてそんなバカな。花純のお尻の穴は全然ばっちくないよ。きれいで可愛くて僕は大好きだよ」
「へ、変なこと言わないで、お兄ちゃん! 普通はばっちいじゃん!」
「花純、そっちこそやめてよ。本気でばっちくないんだって。僕は自信を持って言えるよ、花純の体に汚いとこなんてないって。最高だって。毎日花純のアナルを洗ってる僕が言ってるんだから信じてよ。むしろお尻の穴が不潔だと思ってる世間の認識をひっくり返してやるつもりで洗ってるんだ僕は。花純のアナルはばっちくない。花純のアナルは最高にチャーミング。なんなら腕にタトゥーしてもいいよ、花純のアナルは汚くないって」
「あ……なる?」
「そう、アナル。お尻の穴のことだよ」

 こっちの世界の(つまり10才まで退行した)花純さんは、まだあの悪魔のようなボーイズラブを知らない。
 だから、今のうちに教えてあげないといけない。
 アナルは、男の子が女の子のものを使うのが正しいんだよって。男同士なんてないよって。
 元の世界線の花純さんが踏み外してしまったレールから、本来あるべきだった未来へと導いてあげるんだ。
 
「アナルは女の子の宝物なんだ。男の子にプレゼントするための穴なんだよ。だから、花純のアナルはお兄ちゃんがもらう。いいよね、花純? お兄ちゃんとアナルセックスをしよう、花純」
「お兄ちゃん、こわい。オチンチンがビクビクしてる」
「怖くない。なんにも怖くない。さあ、花純のアナルを出してごらん」
「ねえ、セックスってなに? 花純のアナルはどうなるの?」
「僕のオチンチンをそこに入れるんだ。そして手や口でするみたいにシコシコして、花純のお腹の中に僕の精子を出すんだ」
「やだ、そんなの無理! お尻破けちゃうよ!」
「花純、僕を信じて。わがまま言わないで!」
「やだよぅ、そんなの怖いよぉ」

 あぁ、なんだか興奮する。この僕が花純さんにセックスを迫って困らせる日が来るなんて。彼女に空気扱いされてきた日々が遠い昔のことのようだ。
 しかし、さっきの睦都美さんへの強引なセックスでそういう需要は僕の中では満足している。コインを鳴らして催眠術かけて、喜んでアナル広げる花純さんもきっと可愛いだろうけど、そういうのも教育への冒涜って感じがする。
 そう、教育だ。僕が花純さんに与えたいのは、お兄ちゃんラブの心を育てる情操的な教育だ。
 焦るな蓮。相手は10才の女の子だぞ。たとえ僕より毛が生えていても彼女は僕の妹だ。優しくゆっくり導いてやれ。喜んで兄にアナル広げる妹に。

「ごめん、お兄ちゃんちょっと焦りすぎちゃった。怖がらせてごめんね?」

 僕はテヘって笑ってペロッと舌を出しながら自分の頭をコツンと叩いた。
 
「う、うん……いいの? アナルセックスしない?」
「しないよ。花純がする気になるまで」
「ごめんね。花純、ちょっと怖いの。最近のお兄ちゃんのテンションとかノリとかが」
「大丈夫だよ。僕だって最近の自分がちょっとおかしいなって自覚はあるって。思春期なんだよ。だから花純が謝ることない。さ、体洗ってあげるからおいで」
「うん」

 背中から花純の体を洗ってあげる。
 そして順に下の方に手を回していって、いつものように彼女のアナルの中に指を入れる。

「んんんっ、やっぱ、恥ずかしいよぉ」
「気持ちよくない?」
「んっ……わかんない。むずむずする」
「その感じに慣れていこうか」
「んっ……ふっ……慣れるかなぁ」
「大丈夫だよ」

 花純に腰を浮かせてもらい、片方の手で胸を軽く掴み、お尻の穴をゆっくりスポスポする。
 むず痒そうに花純さんは腰をくねらせ、僕にされるがままでいてくれる。

「ふぅ、ふっ……お兄ちゃん、まだぁ?」

 苦しくはないようだ。毎晩、指で洗ってあげているうちに慣れてはきているようだ。
 僕は、固くなったオチンチンを彼女の太ももに押し当てる。

「あっ、オチンチン、固くて熱いよ」
「うん、花純のアナル洗ってるうちに固くなっちゃった。手でシコシコしてくれる?」
「いいよ」

 花純さんの柔らかい手が僕の先端を包み込む。
 撫でるようなマッサージ。そして、幹を握り直して緩やかな摩擦運動へ。

「んっ、んっ、んっ、んっ」

 すっかり手コキは慣れたもの。
 僕は上気した瞳で僕の反応を伺う彼女に微笑み返して、おっぱいを優しく撫でながらアナルの中の指を曲げる。

「んんんんっ!」
「大丈夫。力を抜いて」
「お兄ちゃん……」
「大丈夫。痛いことしないよ」

 背中から彼女の細い体を抱きしめ、僕の体を押しつけるように密着させ、アナルとお尻を刺激する。乳首への柔らかい刺激で快感を与えながら、アナルの感覚を好意的に覚えさせる。
 
「はぁっ、はぁっ」

 花純さんもうっとりと目を閉じて、僕の指を受け入れている。もちろん手コキも忘れない。速度を増した彼女の愛撫が、僕の快楽を高めていく。

「気持ちいいよ、花純。一緒のお風呂は気持ちいいね?」
「はぁ、はぁ、ふぅっ、ふうっ」

 呼吸を乱しながら、花純さんもコクンと頷く。
 少しずつ広げるように指を抜き差しし、乳首をこりこりと摘まんで転がす。
 
「はんんんんっ」

 鼻から息を抜くように喘ぎ、花純さんの手コキ速度が上がっていく。もう出して欲しいと、真横にある僕の顔へ視線を流してくる。
 花純さんの首をこちらに向けて、キスをした。従順に舌を伸ばして僕のに絡めてくる。
 彼女とセックスするのは、そんなに遠い話じゃない。僕は確信しながらディープなキスをして唾液をすする。
 やっぱり花純さんは可愛い。早く彼女とアナルセックスしたい。
 どうやって教育しようか考えるだけで、どんどん興奮は高まっていった。

「出るよ!」
「はい!」

 花純さんの手コキが高速にシフトする。
 先端から根本まで大胆に小さな手が往復し、ボディソープで濡れた手がぬっちゃぬっちゃと音を立てる。

「あぁッ!」

 とびきりの射精快楽に思わず声が出る。
 どぴゅっ、どぴゅっとペニスを震わせて僕の精子が噴射した。
 花純さんは最後の一滴まで手コキを続けてくれる。そして彼女のアナルから指を抜いて僕は脱力する。

「あぁんっ」

 スポと指が抜ける感覚に彼女も腰を落とした。
 2人の荒い呼吸が浴室に反響していた。

「あ……精子流れちゃう」

 鏡にかかって流れ落ちていく精液を、花純さんは床に四つんばいになり、手で懸命にすくいとろうとする。
 僕に向かって無防備に広げられたアナルとヴァギナに、僕は喉を鳴らす。
 いずれは両方僕のもの。まずはアナル。必ず花純さんに「アナルセックスして」と言わせてみせる。
 花を摘むように精子を集める花純さんの小さなアナルに、僕は舌なめずりをする。

「蓮さん、お部屋に行ってもいい?」
「いいよ、おいで」

 お風呂上がりに寝間着姿の綾子さんに誘われ、彼女を部屋に招いた。
 プライベートバリア発動。2人きりの空間で僕らは思う存分、濃厚なキスを交わす。
 
「はむっ、んっ、ちゅぶっ、ちゅっ、ちゅう……」

 薄い生地の下で、彼女の体はもう熱くなってきている。情熱的なキスだけでセックスの準備はもう出来上がっていた。
 お互いの股間をすり合わせるようにしながら、僕らはベッドの上へと移動する。

「今日は違うことを試していい?」
「違うこと?」

 上気した顔を、戸惑うように傾げている。
 僕は、指を綾子のお尻に回す。

「ここでしてみない?」
「!?」

 お尻の穴にくいっと刺さる指の感触に、綾子は目を丸くした。

「ま、待って蓮さん。そこは、その、不潔なところよっ」
「不潔じゃないよ。ここで愛し合う方法もあるんだよね? 僕はそれを試してみたいんだ」

 花純さんにはまだ(おそらく)セックスの経験はなく、そして僕もアナルでの経験はない。
 初心者同士でいきなり挑戦するよりも、大人の体で試してからの方が良いと思うんだ。
 
「でも、そんなこと言われても私もそこは試したこともないし……」

 大人って保守的だよね。こういうのって10代20代のうちにどれだけ変態になれるかだと思うんだ、わりとマジで。
 セックスに冒険しなかったやつはつまらない大人になる。僕は30才まではチャレンジャーでありたいと思っている。そして酸いも甘いも噛み分けるようなクンニの出来る大人になりたいんだ。
 というわけで、綾子の下着を否応なくずり下ろし、お尻を転がした。

「ちょ、ちょっと待って。本当にするんですか!?」
「本気だよ。大丈夫、僕も初めてだから」
「すごい不安なんですがそれは……んっ」

 まずは、綾子のアソコにオチンチンを擦りつける。僕の先走りカウパースープと彼女のラブジュースをミックスして混合潤滑油にした。
 ぬるぬるになったペニスを、綾子のお尻の穴に押しつける。
 キュッとシワが寄って入り口(出口だけど)を塞いだ。

「ダメだよ。もっとリラックスして」
「ちょ、ちょっと展開が早すぎて落ち着いてられないんだけど……んんっ、き、きついわ」

 たっぷりしたお尻のわりに穴は小さくきつかった。まあ、すっぽり簡単に入っちゃうものだとは思ってなかったけど、これはさすがに僕のオチンチンの方が保たない
 僕のなんてMサイズのはずなのに。将来はもっと大きくなる予定だったのに、これじゃ今後どうやってアナルしてけばいいんだ。

「あの……そんなにお尻の穴でしたいの?」

 綾子さんも苦痛なのか、顔をしかめながら僕を振り返る。

「うん。だって、綾子の全部を僕のものにしたいから」

 さすがに「あなたの娘のアナルを開発するためだよ」とは言えなかった。
 花純さんも僕のオンナにするってことはすでに了解してもらってるけど、これくらいの空気は読むことは出来た。
 綾子は、しばらく逡巡するように目を閉じたあと、小さな声で言う。

「……薬箱の中に、ワセリンがあります」

 一度服を着て下に降り、ワセリンを容器ごと持ってくる。
 そして裸になってオチンチンにそれを塗る間、綾子はじっとベッドの上で待っていた。
 俯せになっている丸いお尻。僕は指にたっぷりとワセリンを乗せ、彼女のアナルの中に突っ込んだ。
 
「んんんんっ!」

 にちゅ、にちゅと何度か指を往復させる。綾子の腸はとても熱くて、入り口の向こうは柔らかい壁に包まれていた。
 ぬるぬるになったお尻に、ぬるぬるのオチンチンを杭のように上から押し当てる。
 綾子は緊張に震えながら少しお尻を浮かせた。
 深呼吸するように言う。そして滑りのよくなったペニスの先で彼女のアナルをほぐすようにマッサージする。

「蓮さん」

 綾子は、涙で瞳をにじませて僕を見上げる。

「私、こんなこと、あなたにだから許すんです。他の男性には、たとえあなたのお父さんにだって許しませんから。それだけは……誤解しないでください」

 お嬢様育ちで、結婚した男性にしか体を許したことのない彼女が、義理の息子との不貞の中で初めての変態プレイに手を染める。
 全てを捧げると僕に誓ったけど、アナルでのセックスなんて知識では知っていてもまさか誘われるなんて想像してもなかったんだろう。
 内心の屈辱は相当なものに違いない。それでも、意を固めたように彼女はさらにお尻を浮かせた。
 僕に全てを捧げる。その言葉が嘘ではないことを証明するため。

「いくよ、綾子」
「……はい」

 角度を合わせて、体を沈めていく。何度か照準を直して挑戦しているうちに、先端がはまった感触がした。
 ゆっくり体重をかけていく。折れちゃいそうな固さを堪えて押していくと、ずずっと、さらに先に埋まっていった。

「うぅ……ッ!」

 綾子が呻いて、また締めつけが強くなる。でも、何度か深呼吸してお尻から力を抜いていく。
 彼女も協力してくれている。あとは一気に。
 少し腰を戻してから、思い切って押し出す。
 ぬぶっ。
 数センチ近く進んだ。綾子が口を開いて「あぁっ!」と空気を吐き出した。
 ぬっ、ぬぶっ。
 ピストン運動でどんどん腰を突き出す。そのたびに深くオチンチンは潜っていく。

「あぁっ、あぁッ!」

 まるで先の見えないトンネルだ。
 ベタベタとまとわりついて侵入を阻みながらも、ペニスに合わせて形を変え、どこまでも深く僕を飲み込んでいく。
 アナルはツンデレトンネルだ。
 終点もわからないまま、僕のは最後まで彼女の中に埋まりきってしまった。

「あぁぁぁぁ……ッ」

 綾子さんの体から力が抜けるのと同時に、じわりと汗が噴き出してくる。
 柔らかい肌に覆い被さり、母性あふれる肉体との密着感に甘える。彼女の鼓動が胸と腸から伝わってきた。
 この一体感。彼女の禁忌の場所すら征服してやったという達成感。
 何度味わってもたまらないこの満足感こそ、義理の母を抱く喜びだ。

「蓮さん……」

 後ろから覆い被さる僕の手に、綾子は指を絡めてくる。上から押さえつけるようにその手を握ってやった。綾子は嬉しそうにもう一度僕の名を呼んだ。
 ゆっくりと腰を動かす。
 腸を引っ張られる感触が苦しいのか気持ちいいのか、綾子は「はぁぁん」と鼻にかかった声を出した。

「んんんっ」

 そしてまた沈めていく。シャンプーの匂いが濃いお風呂上がりの髪を顔を埋める。
 ぬちゅ、ぬちゅっ、ぬちゅ、ぬちゅっ。
 抜く。入れる。抜く。入れる。
 ワセリンのおかげで動きはどんどん馴染んでいく。力強い肛門の締めつけと、底のない腸の形と感触。膣とはまるで違った感覚だけど、慣れるにつれてその良さもわかってくる。
 いいぞアナル。気持ちいい。
 女の人ってこんな変化球も持ってるんだ。これが女子力ってやつか。まったく、どこまで男を楽しませれば気が済むんだよ。ゲームもマンガも卒業だな、これは。もう娯楽はヴァギナとアナルとロックンロールで十分すぎるだろう。
 セックス最高。綾子、最高。

「んんっ、んっ、んっ、んんんっ」

 僕の下で、綾子は唇と髪を噛んでシーツを握りしめていた。
 いつもの敏感な熟肌が、汗を浮かべて冷えている。

「綾子、気持ち良くないの?」
「んんっ、なんだか、よくわかりません……ッ、んっ、お腹の中が張ってて、少し苦しいです……ッ」

 彼女の方は快楽とまではいかないみたいだ。
 少しペースを落として様子を見守ってみる。

「ふっ、ふぅっ、んっ、んんっ」

 あまり様子は変わらないみたいだ。
 こうなったらもう、アレしかないよね。
 
 ――キィン!
 
 コンドーム不要となった僕らのエッチにおいて、もはや唯一の必需品と言える糸付きコインをベッドサイドから取り上げ、綾子の耳元で鳴らす。

「綾子。君の『えっちポイント』を増やすよ。腸の奥。僕のペニスが触れているあたりだ。ここを僕の体で触れられると、強い快楽が生まれる。いつもの気持ちいいやつだよ。安心して僕のを受け入れて。僕らのセックスは気持ちいい。僕たちは最高に体の相性がいい。アナルでも君は感じるよ。すごく良くなる。僕を信じて」

 そして催眠解除。
 綾子のお尻の中をゆっくり引き抜き、そして奥までヌプっと突き刺す。
 
「んんんんッ!?」

 ギュッとお尻に力が入って、綾子の体が引き締まる。
 もう一度引き抜くと「はぁっ……」と力が抜け、そして同じ場所をズンと突くとまた大きく体が跳ねる。

「これ……なに? あっ、やだ、また来るんですか、そんなゆっくり引き抜いて、また、奥の方をツンって……ああぁッ! やっぱり、変っ、なんか変ですっ、私の、お尻の奥、あっ、そこ、そこに、あぁぁぁっ、なんだか、あっ、お尻の奥に、クリトリスが生えたみたいに、あっ、あっ、あぁぁぁぁっ! ど、どうしてぇ!?」

 ぬぷっ、ぬぷっ。
 綾子の腸の感触が変わる。僕のペニスを絞るようにキュウと狭まる。でもそれは拒むような固さではなく、むしろ奥へと引きこむ歓迎の吸引だ。
 自分の変化に気づいてしまったのか、綾子の顔が真っ赤になる。僕のサイズに広がった肛門は締めつけを緩め、もっと深いピストン運動を促す。
 戸惑い泣きそうだった彼女の声も、艶を増して僕の耳を楽しませた。

「あぁっ、あぁっ、あぁっ、すご、すごいです、これ、あぁ、私、私、こんな、違うんです、お尻なんかで、感じるような女じゃ、なかったんです、あぁっ、なのに、なのにィ……あぁぁぁん! もう、蓮さんのせいです! 私を、こんなにして、お尻の穴を犯されて、喜ぶような女にしてしまって、あぁっ、あぁっ、もう、私、妻にも、母にも、戻れません! ただの、女です! あなたの、メスです! お尻で、お尻なんかで、あぁ、あぁ、お尻っ、お尻っ、お尻ぃっ、アナルっ、アナルっ、アナルっ、あぁ、アナル気持ちいいっ、気持ちいいです、お尻ぃ!」

 綾子自身もお尻を揺らし始め、下から僕を突き上げてくる。
 より深く鋭く腸をえぐっていくペニスに歓喜し、もっと深く求めて肛門を開いていく。
 アソコから、蜜を垂らして綾子は乱れていた。

「すごいよ、綾子っ! 綾子の体は、アナルも最高だ!」
「あぁ、嬉しいっ。お尻の穴なんて褒められてるのに、私、喜んじゃってる! そんな女に、されちゃって、もう、あぁ、もう、あなたの体です、蓮さんっ。あなたのお尻です、蓮さん! 綾子を、もっと犯してっ。アナルほじって、蓮さん、もう、私、ダメ、ダメになってしまったっ。ダメな女に、されてしまったっ。あぁ、あぁ、あなたにはもう、逆らえないっ。もう、あなた以外の男、受け入れられない! 私のマンコ、私のアナルも、あなたのペニスのもの、あぁ、好き、好き、蓮さん、私、アナル好き! アナル好きです、私!」

 ギシギシとベッドが悲鳴を上げ、汗と性の匂いで空気が湿っていく。
 僕たちが開拓した快楽は、僕たちの関係をさらに濃密にして、欲望に溺れさせていく。
 逆らえないのは僕だって同じだ。綾子の胸を握りしめ、綾子の匂いに顔を埋め、体中を擦りつけるようにしてその肉体を貪る。
 手放したくない。ずっとこうして犯していたい。マンコにも口にもアナルにも全部僕を突っ込んでやりたい。
 綾子と一つの体になりたい。
 
「あぁっ、あぁっ、あぁっ、あぁっ、蓮さん、私、私ぃ……ッ」

 僕の指に指を絡ませ、綾子は全身を緊張させていく。
 最大のエクスタシーがまもなく彼女の体に訪れる。僕も、もうすぐ射精に到達する。
 遠慮のない動きで、彼女の腸を叩く。

「あ、あっ、あっ……あっ、あっ、あぁぁぁ」

 揺らす。貪る。犯していく。
 初アナルでの絶頂を目前に、どのような思いが去来したのか、綾子は唇を噛み、泣いた。
 大粒の涙を頬に流し、喉に詰まった声で囁いた。

「……愛してます……蓮さん……ッ」

 彼女のお尻を割り広げるようにして腰を押しつけ、一番奥までペニスを突っ込み、そこで射精した。
 綾子はひときわ高い悲鳴を上げてお尻を痙攣させた。ぴったりと貼り付いた腸がまるでコンドームみたいに僕の精液を包み込み、シェイクした。
 何度も何度も精液を体内にぶつける。そのたびに撃ち抜かれるみたいに暴れる彼女の体を抱きしめ、無理やり注ぎ込んだ。
 熱い。綾子の中がますます熱くなり、そして柔らかくなっていく。
 最後まで出し切って、彼女から引き抜く。
 力を失ってベッドに沈む裸体は、変態的な行為の後にも関わらず相変わらず美しい。でもお尻の穴だけは傷跡みたいに緩んで開いたままで、残酷な交わりを行った証拠を残していた。
 そしてその穴から、「ぷふっ」と空気の抜ける音と一緒に、僕の残骸が這うように逆流してくる。

「いやぁ……」

 消え入りそうな声を上げ、枕に顔を埋める綾子を見下ろしながら、僕はアナルセックスを征服した快感に身を震わせた。
 花純さん。
 僕はいつでもOKだよ。

+++ かすみのにっき +++

○月○日

 花純 10才
 さいきん、なんだかお兄ちゃんに体をあらってもらうのはずかしいです。
 はだかとか見せるのはへいきなのに、アソコとかアナルとかさわられるのはばっちいしこわいです。
 なんか、えっちだなって思います。
 おふろで体あらうのはあたりまえだし、えっちとか言う人のがえっちだと思うけど、でも、なやんじゃいます
 お兄ちゃんにそのことそうだんしたいと思ったのに、なんかすごいいろいろはんろんされました。
 そして、よくわかんないのにまたアナルに指を入れられました。
 せいしも出してもらったからうれしいんだけど、やっぱりえっちなことしちゃったと思います。
 花純はもう10才なので、えっちなあそびとかはなるべくへらしていきたいです。
 でもお兄ちゃんは、花純とアナルせっくすしたいそうです。
 アナルせっくすっていうのは、花純のアナルにお兄ちゃんのオチンチンを入れてせいしを出すことです。
 すごくこわいし、すごくえっちなきがします。
 でも指を入れられるより、オチンチンのほうがえっちじゃないようなきもします。
 花純はいつかお兄ちゃんとアナルせっくすをするのかもしれません。
 今はちょっとむりです。お兄ちゃんのオチンチンは太いからです。
 それでもお兄ちゃんがどうしてもっていったら、花純はうんって言うかもしれません。
 花純のアナルは大ピンチです。
 お兄ちゃん、もう少しだけ待ってくれないかなぁ。。。

+++++++++++++++++

 今すぐ花純さんとアナルセックスをしたい。
 
 朝、目覚めた瞬間に僕はそう思った。
 でも思ったままやりたいようにするのは動物でも出来ることだ。僕たちはまだ中学生。教育を必要としている時期であり、理性に基づいた行動を会得していく年頃だ。
 それに僕には、兄として正しい教育で妹を導く責任がある。愛情もあるし経験も豊かだ。花純とは、啓発的なアナル教育によって自発的なセックスへと至りたいのだ。
 ということで僕は、朝からアナルについて家族で話し合うことにした。

「今の子どもはスマホだのSNSだの、あの薄っぺらい情報のやりとりだけ敵味方を区別するのか。だからこんなくだらない事件を起こすんだな、まったく。もっとアナルでの繋がりを大切するよう学校で教えないのか?」

 新聞の向こう側で、父さんが昨今の少年犯罪の凶悪さに腹を立てて批判を始める。
 父さんが朝食の席で新聞記事なんて話題にするのも珍しいが、それ以上に珍しい単語が出てきたことに、花純さんだけが目を丸くしていた。

「残念ですが父さん、今の学校では十分なアナル教育がされているとは思えないです」

 僕も、きっぱりと父さんの問いに答えた。
 朝ごはんを食べながら「アナル」って言った。

「……え?」

 花純さんだけが、赤らんだ頬でぎこちなく笑っている。
 僕と父さんがこんな冗談言うなんて珍しい。彼女はそんな風に思っているのかもしれないけど、残念ながら僕らはマジなんだ。

「アナルの理解は早ければ早いほうがいいんだ。学校はセックスや避妊について教える前に、アナルセックスを子どもたちに教えるべきだろう。むしろ18才まではアナルセックスに限って解禁するべきだな。アナルなら妊娠のリスクもないし、小学生でも楽しむことができるんだ。子どもたちの恋愛ゴッコに対する親の心配も減るだろう」
「すでにヨーロッパの一部では、小学校教育にアナルが取り入れられていますよね?」
「そのとおりだ。欧米の教育が全ての面で先進的とは思わないが、少なくとも日本はその分野で遅れている。もっとアナルの重要さを認識するべきだ」
「……えっと、その、お姉ちゃん、ハチミツ取ってくれる?」
「私、今度論文コンクールに出ることになってるんだけど、アナル問題についても触れるつもりなの」
「ひっ!?」

 僕と父さんの間で飛び交うたくさんのアナルを聞こえないふりして、花純さんは食事を続けようとした。
 しかし、まさかの優惟姉さんの参戦には、さすがに悲鳴を上げたようだ。

「そもそもアナルセックスは最もセーフティなセックスの一つなのに、実際にはタブーとして正しい知識ですら封印されている。そのことを知らない子も私たちの世代では多いわ。今、知識よりも実践が必要とされているって感じるの。小、中、高校の体育で実際にアナルセックスをさせるべきよ。分け隔てなく全員とするアナルセックス。子どもたちはその触れあいで正しい友情と愛情を体感して学べるし、それによってイジメなんてなくなるはずよ」
「ね、ねえ、どうしたの、みんな?」
「花純。あなたはどう思うの?」
「え、ど、どうって言われても……私、なんのことか全然……」
「真面目に答えなさい、花純。今、大事な話をしてるのよ」
「ていうか、朝ごはんのときにする話なの!?」

 花純さんはすっかり困って助けを求めるように僕を見る。
 だが、ここで甘やかしてはいけない。僕は大まじめな顔で頷き返す。花純さんは、隣の席の母親に助けを求める。

「私、じつは昨日蓮さんとアナルセックスをしたの」
「ええええええッ!?」

 ティーカップを優雅に手に包んで訥々と始めた綾子の告白に、花純さんは仰天して椅子から滑り落ちた。
 もちろん、僕や優惟姉さんは冷静に頷くだけである。

「ほう。どうだった?」

 父さんも、いたって冷静だ。

「してよかったと思いました。性的な意味でも良かったけども、それ以上に家族としての絆が深まるのを感じました。通常のセックスにはない崇高さというか、生殖を目的としない純粋なふれあいというか。むしろ、いやらしさなんてなかった。何度も何度もイカされて乱れたしアクメ顔を晒してシーツもビショビショにしたけど、不思議とさわやかな気持ちでした。終わったあとも蓮さんのことが前より愛おしく感じられたし、お尻の中に出された精液も、ビフィズス菌みたいで腸に良さそうって思いましたわ」
「アナルセックスって、奥が深いのね」
「ええ、本当にそう思います」
「僕も実際に経験してかなりの奥深さを感じたよ。なにしろペニスの長さが平均で13cm程度なのに、腸の長さは7~9mあるらしいからね。70倍くらい奥深かったんだって、あの後ウィキペディアで知って驚いたよ」
「蓮、一応言っておくけど、私たちはそっちの深さの話はしてないのよ」
「ちょっと、みんな、どうしたの? なんか今日おかしいよ!」

 花純さんは真っ赤な顔をして叫ぶ。
 僕たちの会話についていけず、しかもアナルアナルと目の前で連呼され、もはや朝食もままならない状態だった。
 しかし僕はまだまだ追い込む。「教育」という名の「追い込み」を続ける。

「花純。あなたもひとごとじゃないのよ。あなた、まだアナルバージンなんでしょう?」
「バ……バージン?」
「まだアナルにペニスを挿入されたことないって意味よ」
「当たり前だよ!」

 ますます慌てふためいて、花純さんはお尻を両手で隠す。
 入れられたとこ想像しちゃったんだろうね。僕の方をちらりと見て、首まで真っ赤になってしまった。
 綾子は、そんな愛娘の姿に優しく目を細める。

「怖がらなくてもいいのよ、花純。蓮くんは、かなりアナルの扱いが上手だから」
「そうよ、花純。思い切って蓮に任せてごらんなさい。こういうのは早いうちに済ませたほうがいいの。じつは私もまだなんだけど」
「早いほうがいいのは確かだろうな。俺も肛門なんかに突っ込みたいと思ったことは一度もないが、若かりし頃に突っ込まれることに興味を持ったことならある。あのとき、もしも踏ん切っていれば人生が変わっていたかもしれん」
「花純、僕はいつでもいいよ。なんなら今すぐでも平気だ。ていうかもう我慢できない」

 家族全員に追い込まれ、花純さんはオロオロと睦都美さんに助けを求める。
 デザートのバナナを切って運んできた睦都美さんは、いつもの無表情で言った。

「アナル用に1本残しておきましたが、今すぐお使いになりますか?」
「私、もう学校行く!」

 花純さんは逃げるようにテーブルを離れ、二階へ駆け上がっていく。
 やりすぎたか。まあ、多少はやりすぎたかもしれないな。
 
 ――キィン!
 
 僕はコインを鳴らして家族に命令する。
 今朝の会話は忘れてくれ。
 ただし、今後もアナル教育のことでいろいろ頼むこともあるかもしれない。
 徹底的にやると僕は決めているからね。
 さあ、次は学校だ。

 家庭でのアナル教育は、こんな感じで続けていけばいいだろう。たいして間違ってはいないはずだ。
 むしろ教育の本番は学校にある。義務教育まっ只中の僕たちだ。
 もちろんここでも手抜きなんてしない。アナル教育をすると言ったら、徹底的にするのが僕だ。
 学校のみんなを巻き込むことに躊躇はなかった。

「みんな、今日はアナルの歴史について勉強します。教科書なんてしまってください」
「はーい」

 花純さんの学年の歴史担当、大きなメガネが可愛いオタク歴女の菅原先生がほがらかに呼びかけると、花純さんのクラスメートたちは素直に教科書をしまい、黒板に書かれた『アナルの歴史』という文字をノートに写し始めた。

「え……え?」

 うろたえているのは花純さんだけである。
 すでに教室中に催眠術をかけている。もちろん花純さんだけ解除して記憶も消している。
 そして、彼女のすぐ隣に椅子を持ってきて、堂々と2年生の教室に座っている僕の姿も、花純さんには見えていない。
 自分の授業はサボってまで、僕はアナル教育を続ける。アナルがゲシュタルト崩壊するまでやるつもりだった。

「さて、みんな。お尻の穴はいつからアナルと呼ばれているか知ってるかな?」

 教室は静まり返った。誰も答えはしなかった。中学2年生が知ってるはずがないし、僕も知らない。
 だけどまあ、おそらくラテン語だろうと当たりはつく。エロい単語はだいたいラテンの奴らから引用される。なんというエロい言語だ。辞書は附箋だらけだろうな。
 しかし菅原先生はニッコリ笑って、意外な真実を告げる。

「じつは、アナルは『お尻の穴』のことではありません。『お尻の穴の~』と訳すべき形容詞です。『お尻の穴』と呼びたいのならばアヌスもしくはエイヌスというのが正しい呼び方です」

 いきなり教室がざわっとなった。僕も茫然となった。
 知らなかったそんなの。

「ですが、現在日本ではアナルという呼称が広く使われています。これはお尻の穴での性交、つまり『アナルセックス』という言葉が外来して広まるにつれ、アヌスよりも日本人に発音しやすいアナルが好まれ、一般的に浸透したものだと思われます」

 出だしで強烈なジャブを食らった気分だった。
 そうだったのか。マジで勉強になる。まさかマジで勉強になることを教えてもらえるとは思ってなかった。ノートを持ってくるべきだった。
 花純さんは、顔を真っ赤にして真面目にノートを取るクラスメートたちを見渡していた。
 この授業に違和感を抱いているのは彼女だけである。

「お尻の穴の名称がアナルなのは日本だけで、しかも比較的最近になってからです。ご年配の方々の中にはアヌスと呼ぶ人も多いでしょうし、アナルは誤用だと言われることもあるでしょう。ですが、ここまで一般的に使われているならアナルもすでに浸透した呼称であると認めるべきでしょうね」

 周りを見渡し、戸惑いながら花純さんもようやくノートに書きだす。
 『アナルは形容詞。正しくはアヌス。でもアナルでもいい』
 正しくはアヌス、のところを赤ペンで下線を引いてた。試験に出るかもしれないもんね。

「そして、アナルセックスという言葉が一般的に浸透したということは、そもそもその行為が一般的に認識されていたということです。じつは日本に限らず世界中で昔からアナルセックスは行われていました。その歴史についてみなさんに教えたいと思います」

 僕が花純さんにアナルのことを教えるのに保健体育ではなく歴史の先生を選んだのは、そもそも今日は保健の授業がなかったっていうこともあるんだけど、まずは知識としてのアナルを勉強させたいと思ったからだ。
 菅原先生には午前中に催眠術をかけ、午後のアナル授業に向けて準備するように命令していた。
 でもこの授業は、とても付け焼き刃のものとは思えない。
 彼女、元々アナルに詳しい人なのかもしれない。

「まず世界では、古代ギリシャを始めとしてキリスト教が広まる以前のヨーロッパでは、すでに一般的に行われていたと言われています。ソクラテスとプラトンの間にはそういう関係があったという説もあります。またアナルセックスというと男性同士の行為を連想される方も多いと思いますが、娼婦が避妊のためにアナルを使うなど、異性間でも通常に行われていました。後にキリスト教がアナルセックスを禁じていますが、安全な避妊用具がなかった時代においては、妊娠を目的としない性行為としてむしろ現在よりも一般的だったと言えます」

 彼女の授業は淀みなかった。博識だった。
 僕も後で勉強させてもらおうと、スマホのボイスレコーダーをONにした。

「現に宗教で禁止された後もアナルセックスが行われていたことは、数多くの資料で確認されています。またカトリックにおいては処女の神聖化と婚前妊娠の禁止が行われていたため、宗教を理由にアナルセックスを選択する場合もあったと考えられます。快楽に耽溺することを禁じる宗教体制はアナルセックスも禁じますが、それでも隠れアナルセックスは文化として継承されます。マルキ・ド・サドは娼婦に対する毒殺未遂とアナルセックス罪で投獄されたにも関わらず、夫人にアナルに入れるオナニー道具を差し入れさせました。まさにアナルのアナーキズムです。その後も一部の国や地域では一般的な行為と認められ、また違う宗教や法律では徹底的に禁止され。古代から現代に至るまで、アナルセックスが議論されなかった時期は歴史上なかったと言えます」

 黒板に書かれた『アナル』、『セックス』、『オナニー』と言った単語が、花純さんのノートに書き写されていく。
 なんだか興奮する。
 セックスとはまた違うエッチな感じがした。
 こういう細かいことにまで興奮してしまう自分の感性を、僕は大事にしていきたいと思う。

「さて、日本の場合はどうでしょうという話ですが。古くには日本書紀にアナル性交を連想させる記述も見受けられます。奈良・平安時代には仏教の一部の宗派において、稚児と呼ばれる少年とアナルセックスを行うことが儀式化されていた記録があります。藤原頼長の日記などでは、公家の間でも流行っているとまで記述されています。封建制が確立されていく鎌倉時代以降になると、武士階級の間にも広がっていきました。このあたりは知っている人も多いと思いますが、いわゆる衆道です。信長と蘭丸あたりが有名でしょうが、相手は少年に限らず、上司が部下を、あるいは部下が上司のアナルでセックスする場合もあります。戦国時代の頃には、衆道は武士にとっては当然の嗜みでした。これはあくまで俗説なのですが、側室も多くいて性欲盛んだった豊臣秀吉になかなか子供が出来なかったのは、平民出身で女性についての知識が足りなかった彼が、アナルセックスしか知らなかったせいではないかとも言われています」

 花純さんは渋々と書き取りを続ける。
 『秀吉=アナルバカ』
 僕もさすがにそれは俗説の中の俗説だと思うのだけど、アナルセックスの歴史を語る上では面白い話だと思った。

「そしていよいよ江戸時代。アナルセックス文化の全盛期が訪れます。この頃、春画などでもアナルセックスは描写されるようになり、同性愛者向けの陰間茶屋なども開かれて、一般庶民の間でもオープンにアナルは楽しまれるようになりました。好色一代男、東海道中膝栗毛など当時の文学作品においても当然のように描写されています。後期になってからも寛政・天保の改革による風俗粛清によって数は減らされましたが、一部地域に根強くアナルセックス文化は残りました。明治時代になると日本も欧米の風俗に習い、法律によってアナルセックスが禁じられていた時期もありましたが、これも裏を返せば当時は盛んに行われていたことの証拠といえます。日本はアナルセックス文化の国です。世界の二大性典と呼ばれる房中術やカーマ・スートラですらアナルセックスに関する記述はありません。ですが、江戸の春画にはあります。男色四十八手という指南書も書かれています。古代ギリシャ以降、最もアナルセックスが盛んだったのは、江戸時代の日本だったのです」

 そうだったのか。
 僕らはアナル民族だったんだね。

「今、日本では再びアナルセックスを見直そうという動きが見られるようになりました。あなたたちの世代にとって、アナルセックスは安全で正しい性行為です。素晴らしい日本の文化であるアナルセックスを学び、国際社会にも発信していける人材を育てることを政府は新しい教育目標として掲げています」

 クラス中の生徒たちが、力強く頷く。
 花純さんも、戸惑いながら、ぎこちなく頷く。
 菅原先生はそんな生徒たちの反応に気をよくし、いよいよ弁舌に熱がこもる。
 まるでおかしな宗教の予言者みたいに両手を広げ、表情を輝かせて言う。

「そして、私たちにアナルセックスを教えてくれる正しい指南書は、現在にもあるのです。そう、それこそ―――ボーイズラブなのです!」
「えっ!?」

 思わず声を出してしまっていた。もちろん誰も僕のことなんて気にしていない。
 だが、教室はざわつき始めた。「やだー」とか「そろそろくると思ったー」とかいう女子の声で。
 男子は、うんざりしていた。

「そう、BL。女の子の大好きな男子同士の恋愛です。『BL』とか『ボーイズラブ』というより、私的には歴史的名称である『衆道』や『男色』、もしくは男色からの『D-shock』という私オリジナルの名称を推奨したいところですが、とりあえず時代はボーイズラブっていうことでいいでしょう。信×蘭がきっかけで腐った私としては、今日の授業は本当に楽しかった。私、もう語っちゃっていいでしょうか! 今日は思いっきりBL語っちゃうことにしますが、みなさんよろしいですね!?」

 ちょっと何言ってんだよ、コイツ!?
 なんで女子たち「いえーい!」とか言って盛り上がってんだよ!?
 男子はどうして死んだ目をしてるんだよ!?

「え、これ……なんの騒ぎなの?」

 花純さんも、僕と同じようにうろたえて教室を見回す。
 後ろの席の女子が、ニヤニヤしながらそんな花純さんの背中をつつく。

「またまた~。ほんと、花純ったらむっつり腐女子なんだから。興味ないふりして超メモってんの知ってんだよ」
「わ、私、本当に何のことだか……」
「とかいって、バイブル2冊も持ってるくせにー。いいの、いいの。今日も先生フルスロットルみたいだから、鼻血でるまで語ってもらおう!」

 どういうことなの、一体?
 当然の流れのようにBLを語り出す教師と、それを待ってましたとばかりに盛り上がる教室。
 僕は、アナルセックスについて授業をするように命令しただけなんだけど……。

「これまで歴史として語ってきたとおり、キリスト教圏を始めとして、イスラム教圏やアフリカあたりでも、現在法律でアナルセックスは禁止されている国は多いです。アナルだめ、アナル禁止ですって。ふざけんな。そもそも現代のホモの間でもアナルセックスをメインとする人は少数派だというのに、いまだにアナルセックス及びホモに対する偏見は根強いのです。でも、だからこそ私は萌えるのです。タブーでいい。犯罪でも構わない。教師としての菅原じゃなく、1人の腐女子として私は言います。私の妄想チンポは、あんたたちの宗教も法律にも余裕で穴開けちゃうのよって」
「かっこいー!」
「さすが先生ー!」
「ちなみに、先生の来月出る新刊のタイトルは『時空少年アーナルの旅・古代ヨーロッパ編』です。主人公がいろんな時代の偉人たちと掘って掘られる歴史萌えのシリーズスタートよ。みんな、買ってよね!」
「買う買うー!」
「先生、イラストはもちろんMOJOEお姉様なんですよね?」
「私、もう予約しましたー!」
「ありがと、みんな! にゃんにゃ嬉しい♪」
「お前が花翔院にゃんにゃだったのかよ!?」

 思わず立ち上がってツッコんでいた。
 もちろん今の僕は空気なので完全にスルーされたけど、そんなことも忘れるくらいなりふり構わぬツッコミをしてしまったのは、学校では初めてかもしれない。
 どおりで教室内の腐女子率が異常高だと思ったよ。
 ていうか、生徒に布教してんじゃないよ。
 
「ボーイズラブか……なんか、面白そうかも……」

 花純さんが頬を染めて不穏なこと呟いている。
 ちくしょう、そういうことか。すでに僕より先に教室を支配している洗脳師がいたのか。花純さんは、こうして白昼の教室で堂々とBLに堕とされてしまったんだな。
 このままでは歴史は同じルートを辿っていく。またあの腐った花純さんと僕は出会い、よくわからないBL本をオナネタに提供されてしまう。
 いやだ。あんな未来なんて僕は認めない。
 訪れるのは、僕の望んだ世界であり、全ては糸付きコインの扉(コインズ・ゲート)の選択だ。
 
 ――キィン!
 
 世界は、再構築される……ッ!

「―――という一部の腐った趣味もありますが、やはりアナルセックスとは異性同士の間で行われるべきであり、それ以外は間違った用法であると言えます。女子のみなさんは、アナルを大事な男性に捧げましょう。男子のみんなは、アナルはうんち以外に使いませんからしまっておきなさい。わかりましたね?」
「はーい」
「では次に、膣とアナルの圧力の違いついて、バナナを使って実際にやってみせますので―――」

 僕の存在する世界線にBLなど存在しない。
 アナル教育とは、未来を正しい世界へと導くものだ。
 BLの消え去った教室で、すでに平和なアナル教育は再開されていた。

「大事な男性に……捧げる……」

 花純さんは、先生の言ったことを反芻し、可愛らしく頬を染めていた。
 うんうん、その調子。そうやって僕の教育方針に染まっていくといいよ。
 僕は、わくわくしながら花純さんの横顔を眺める。

< 続く >

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