不思議なカメラと悩めるぼくら 第4話

第4話 さようならラインスタンプ

『―――というわけで、こんな状況になったよ』

 放課後の教室で、マキちゃん先生はスーツの下だけ裸になり、そして剥き出しのお尻を僕に向けていた。
 手は机の上に置かれ、そして手首を紐で机と縛られている。
 目には目隠し。恐怖に小刻みに震える体。
 僕は、黒い革手袋をはめていた。

「……もう一度確認するけど、これ何か間違ってないか?」
『バッチリ大正解だよ。完璧といっても言い過ぎなくらい』

 どのくらいだよ。
 
「僕が幸せにしたいと想っている女性を、目隠しして縛り上げ、恥ずかしい格好をさせているこの状況が正解だと?」
『いいんだよ。その革手袋だって、ちゃんとスマホ対応だもん』
「そういう問題じゃなくてだな……」

 状況を整理しよう。
 僕はKARINの言ったとおりの道具を購入し、マキちゃん先生を放課後のモデル撮影に誘った。
 喜びの笑顔すら浮かべて「はい!」と答えたくれた可愛いマキちゃん先生を、教室に入ったとたんに突き飛ばし、今日の授業での失敗を責め、「おしおきをする」と宣告して、この格好をさせたのだ。
 ここまで全てKARINのシナリオどおり。
 そして僕は、目の前で圧巻のボリュームを誇るマキちゃん先生のお尻を前にして、途方に暮れていた。

『これでいいの。これがマキちゃん先生の幸せなの。彼女の話、思い出してみて。ゴリラ先生との話を聞いたよね? 男と女としてじゃなかった。一方的な力関係だった。でもマキちゃんはね、そうやって先生に叱られることが、逆に嬉しかったの』
「そ、そうなの?」

 ストレスで万引きするくらいだったのに?
 いや、その事件の後のことを言っているのか?
 マキちゃんの主観での話をかいつまんで聞いただけなので何ともわからないけど、あんなことがあった後でも、変わらずに自分のことを見て叱ってくれたのは確かにありがたいかもしれない。
 でも、だからって「嬉しい」ってまでにはなるのかな……それって、なんていうか……先生はマゾってことになるような。

『マキちゃん先生は、叱られすぎてドMに目覚めてしまったの』
「やはりそうなのか!」

 画面にでっかく「ドM」の字が飛び出し、そして「ドMAKI」と続いた。
 そうじゃないかと思った。
 具体的には、ゴリラ先生の話を聞いた時点で、そんな予感がじつはあった。

『厳しく優しく自分を見守ってくれる大人の男。できれば厳しいお仕置きもあるとご褒美。マキちゃんが心の奥底で求めていた理想の男性って、ようするに「ご主人様」なんだよね』
「おまえ、いつからそのことを……?」
『最初からだよ。人工知能の前に余計なフィルターなんてないもん。彼女の本質は写真みただけでお見通しだよ、ほんわり系ドジっ子教師がじつはマゾなんてベタベタだし。ただ、その前提としてあくまで「優しくて頼れる大人の男」じゃなきゃダメなんだよ。そうじゃなきゃそもそも信頼も好意もないし』
「僕はそこまで彼女に認められたということ?」
『そう、それが今までのモデル撮影で培ってきたもの。そしてドSのご主人様として必要なのは、失敗をきちんと叱ってしつけてあげる強さだよ。それを今から、マキちゃん先生に証明する。お兄ちゃんのラストミッションだよ』
「お仕置きするってことか……このお尻に」
『イグザクトリー。さあ、このでかい尻をひっぱたいておやりだよ、お兄ちゃん』

 どこからかムチを取り出し、ぴしりとKARINが床を叩く。慌てふためいて逃げ出す小さなウサギたち。いつの間に子分まで作ってるんだよ、まったく。
 確かに、世の中にはいろんな性癖があることくらい、僕だって知っている。
 でも、それにしてもあのマキちゃん先生がじつはドMだとかは知りたくなかった。
 ていうか、そのお相手になるんだったら僕はドSにならないといけないってこと?
 お尻を叩くだって?
 小さい頃になら、僕の太ももの上でお股こすりを覚えてしまったカリンのしつけで、軽く叩いたことあるけど……。

『お兄ちゃん、今、カリンの痛い過去とか思い出してないよね? まあいいけど、叩くのはそれよりも思いっきりじゃないとダメだよ。手加減は逆効果だからね』
「思いっきりって、僕、やっぱりそんなこと出来ないよ」
『ふざけんなこのチキン野郎。女の尻一つも叩けないで誰かを幸せに出来るっていうの?』
「結構、出来ると思うんだけど」
『でもマキちゃんは幸せにできないよ。彼女が立派な教師になるためには、すぐ近くで見て、叱ってくれる人が必要なの。そういう人に愛されたいの彼女は。だから先生も今、期待してるんだよ。マジでお尻ペンペン待ちだよ。最初はあんなに戸惑って嫌がっていた彼女が、ほら、見て。コーアソ、ショッビショビでしょ?』

 あぁ、本当だ。アソコがビッショビショだ。いやらしい先生だなあ。
 なんだか頭がくらくらしてくる。状況にまだついていけない。
 先生のドジっ子を直すためにはドSなご主人様が必要。KARINはそういうけど本当にそれでいいんだろうか?
 僕には自信がない。ドSな要素が僕にはない。ハーレム王になるなんて傲慢なこと考えてたくせに、現場になると腰が引けてしまうチキンだ。
 
『大丈夫、お兄ちゃん。相手を先生だと思うから叩けないんだよ。先生じゃなくて、ゴリラに調教されたメス豚だと思えばいいんだよ』
「そんな動物、怖くて叩けないって」
『お兄ちゃん、早く。マキちゃん先生の期待を裏切らないで。思いきり叱って、叩いて。マキちゃん先生は、お兄ちゃんになら叩かれてもいいって本気で思ってる。ううん、叩いて欲しいの。支配して欲しいの。それが、願うことも出来なかった彼女の本当の願い。失敗した彼女を本気で叱って、言うことを聞けと言ってあげて。俺のオンナになって、俺のために真剣に教師になれって、命令してあげるの。それがマキちゃんの眠ってる力を起こしてあげるカギなんだよ』

 もう何がなんだかわからない。どうしてこんなことしなきゃいけないのか。ていうか、メス豚とかチキンとかウサギとかの動物たちが飛び交って、僕らが何の集まりなのかもわからなくなってきた。
 暴力で解決する悩みなんてあるのか?
 これが本当に僕らのやるべきことなのか?
 教えてください、ゴリラ先生。
 KARINは、この期に及んでまで踏ん切りのつかない僕に、あきれたように首を振る。

『あーもう、お兄ちゃんがごちゃごちゃ悩んだってしょうがないじゃん。女の子の悩みをわかってあげられるのは、女の子だけなんだよー』

 KARINにそんなこと言われてしまっては、僕は何のためにここにいるんだって気分になる。
 だけどKARINは、『でもね』と付け足して微笑んだ。

『女の子の悩みを、解決してあげられるのは男の子だけなんだよ。さあ、お兄ちゃん。KARINを信じて、マキちゃん先生を叩いてあげて?』

 もう、ため息しかでない。
 わかった。わかったよ。
 これまで先生にしてきたことを考えたら、停学、退学くらいは当たり前。今さらお尻ペンペンが加わったところで罪状が一行増えるだけの話だ。
 どうにでもなってしまえ。
 KARINは正しいと、信じてしまえ。

 ――パシンッ!
 
「あぁッ!?」

 自分でも思っていた以上の音が出てビックリした。
 マキちゃん先生も驚いたように僕を振り返る。

「い、痛い……どうして、先生にこんなことするの?」

 目隠しの下から流れる涙。苦痛と悔しさを噛みしめる唇。
 僕の胸がズキンと痛む。

「ご、ごめ――」
『謝っちゃダメ!』

 だけど、謝罪をする前にイヤホンにKARINの叫びが突き刺さる。

『騙されちゃダメ。目の前にいるマキちゃんは幻獣だよ! 本物のマキちゃんは、泣き顔の下で身悶えして喜んでいる。ここでたたみかけるようにSEKKYOしちゃわないと!』
「いや幻覚の可能性はあっても幻獣では絶対ないだろ……」
『いいから戦え! 総員、全速前進! KARINを信じろ!』

 艦長のコスプレをしたKARINと、その周りで水兵のコスプレした子ウサギたちが菜っ葉みたいのを食んでいる。誰も戦ってないだろ。
 そういやペット欲しいって言ってたもんな、カリン。お前って本当にお兄ちゃんのスマホで好き放題だな。
 でも、僕はKARINとマキちゃん先生のどっちを信用するかと言われれば、それはKARINだ。なんだやかんだと言いながら、僕は家族としてのカリンを信じている。
 だから、先生は喜んでいる。そう思え。僕に叱られたがってる。叩かれたいんだ。
 どんなにかわいそうでも、僕はやらなきゃいけない。
 マキちゃん先生をゴリラの後悔から解放してやるために。
 教師の職務に立ち向かっていくために。
 女性として、自信を持ってもらうためにも。
 僕はスマホを胸ポケットにしまう。そして、一呼吸して口を開く。

「く、口答えするにゃ!」
『きゃあああ!? にゃんこお兄ちゃん、可愛い~ッ!』

 噛んでしまった。
 顔が真っ赤になっていくけど、引くわけにはいかない。
 言え。むちゃくちゃでもいいから、叱れ。

「きょ、今日の授業はなんだ! どうなってんだ、あの失態は! 数学の教師がどうして日本史の授業なんか始めちゃうんだよ!」
「えっ、ご、ごめんなさいっ。隣の席の神田先生の教科書を間違えて持ってきちゃって……」
「気づけよ。それは持ってきた時点で気づけよ。黒板に『天明の大飢饉』とか書く前に気づいていこうよ。教室の空気が少しだけ重くなっちゃったじゃないか!」

 ――パシン!
 
「きゃあっ!?」

 流れで叩けていた。
 意外と勢いでどうにかなるものだと思った。

「ご、ごめんなさい……」
「謝って済むことか!」

 ――パシン!
 
「いや、謝れば済むことだけども」

 ――パシン!
 
「だ、だったらどうして叩くのぉ!?」
「うるさい!」

 ――パシィン!
 
 勢いで押し切る。
 こんな普通じゃない状況、勢いで突き進むしかない。
 僕たちのアイドル女教師、マキちゃん先生のお尻を剥き出しにして叩くなんて、異常としかいいようがない。フランス書院でしかありえない。
 しかも僕……なんで勃起なんてしちゃってんだよ。

 ――パシン!
 
「あぁッ!?」

 ――パシン!
 
「許してぇ!」

 真っ赤になっていく先生のお尻。
 僕の黒革手袋の形に色づいていくお尻が、パシンパシンと揺れている。
 とても痛々しくて目を覆いたくなる光景なのに、僕は興奮しているし、先生は先生で太もものあたりまで濡らしてるし。
 本当にドMなんだ。叩かれて嬉しいんだ。
 先生のくせに……処女のくせに、なんてエッチな人なんだ。
 
 ――パシン! パシン! パシン! パシン!

「真面目に! 授業! してください! 僕たちの! 先生なんだから!」
「あぁっ! ごめんなさい! ダメな先生で! ごめんなさい!」
「これからは! 授業に失敗すれば! お仕置きです! 僕が! 先生にお仕置きしてあげます!」
「あぁ、お仕置き! してください! ダメな私を! 叱ってください! んんっ! あぁ! 痛いぃ!」

 ショートな髪を振り乱し、先生は恍惚の表情すら浮かべて、嬉しそうに謝罪の言葉を並べる。
 こんなに色っぽくなるんだ。今までのヌード撮影でさんざん先生の色っぽいとこ見てきたはずなのに、目隠しされてお尻を叩かれている今の先生が、最強に色っぽい。
 
「し、篠原くぅん! もう許して、あぁん!」

 ていうか、完全にお尻ペンペン待ちだった。
 ぐっとお尻は突き出され、官能的に反った背中がさらにヒップを持ち上げていた。
 痛いとか許してとか言いながら、体はもっと叩いてと僕に懇願していた。
 射精しそうなくらい、卑猥先生だった。

「もっとだ! もっとお仕置きしてやる!」
「はひぃ! もう、もう、篠原くんの好きにしてくださいぃ!」

 往復ビンタでお尻を叩き、僕の手の形を刻んでいく。
 手袋してて良かった。こんなの僕の方が保たない。手加減なんてする気にもなれないもん。先生のお尻、壊してやりたいくらいだもん。
 すごいスケベだ。すごいやらしい。自分がしていることも、先生の乱れた姿も、信じられないくらいいやらしい。

「この、スケベ教師!」
「あぁぁんっ!」

 叩かれても叩かれても先生はお尻を突き出す。
 悪口のように「スケベ」とか「淫乱」とか思いつくかぎりのエッチな単語をそのお尻に叩きつける。
 先生はそのたびに苦痛とも喜びとも言える悲鳴を上げ、「ごめんなさい、ごめんなさい」と机を揺らして謝罪する。
 
 挿れたい。先生とセックスしたい。

 僕は、もうとっくに先生を自分のモノにしていると思う。というか、実感している。
 彼女がこんな恥ずかしい格好を僕以外の男の前で晒すとは思えない。ただの痛みが好きなんじゃない。信頼と愛情があるからこそ、僕の前で恥ずかしいポーズを取り、叩かれることを喜んでいるんだと思う。
 SMなんてもの自分でするところを想像すらしたことなかったけど、今は先生との関係はこれだったんだと確信すら持てた。
 僕が上だったんだ。
 先生は、ずっと自分を僕の下に置いて欲しかったんだ。
 彼女自身もたった今気づいたはずの願望。KARINが看破して僕を焚きつけなければ、誰にも知られないまま埋もれていたはずの願い。
 ダメな教師だったのは、彼女自身が未完成だったからだ。
 自分がドMで、飼い主募集中のエッチな女であることを知らなかったから。ゴリラ先生のように、厳しく叱って彼女のメンタルを支配してくれる男性が、見つからなかったから。先生くらい美人ならいくらでも相手は見つかったはずなのに、ずっとゴリラ先生への初恋に縛られていたせいで、真面目な自分を崩すことが出来なかった。
 もしも相手が教師じゃなかったら。もしもそれがただの恋であることを自覚できていたら。もしも万引きの罪悪感で、必要以上に真面目であることを自分に強いてなかったら。
 たくさんの失敗と不運が重なり、先生はドジっ子のまま教師の道を歩み始めてしまった。KARINがいなかったら、それはきっと彼女を決定的な破綻に追い詰めるまで続いていた。
 でも、それは今日で終わりだ。
 僕は先生をカノジョにする。セックスして、お尻叩いて、奴隷にして――立派な教師にしてみせる。

「マキ! おまえは、僕のオンナになれ!」
「ひぐぅ!?」

 ――パシン!

 喉を反らせ、マキちゃん先生は息を詰まらせた。
 そして、ぶるぶる震えたかと思ったら、大きな声で答えてくれた。

「は、はい! 私、私を、コ……コタロウさんのオンナにしてください!」

 合致した。
 僕の願望と先生の願望が、かみ合ってくっつく音が聞こえた。
 先生のお尻を、思いきり叩きながら僕は宣言する。

「僕が! マキを調教する! 僕のペットに! 僕の奴隷に! 僕の教師に! 僕の言うことを聞いて、立派な教師になれ! ずっと見ててやる! いつまでもそばで見て、叱ってやる! 褒めてやる! だから、僕のために働け! 僕のために、教師になれ!」
「あぁ! あぁ! 嬉しい! 嬉しいです! 私、教師になりたいんです! 教師に、なりたいんです! コタロウさんのペットに、して! 奴隷にして! 私、あなたの、ために、立派な奴隷教師になります! ちゃんと授業します! 私、あなたのために、教師になりたい! 教師になりたいぃぃ!」

 絶叫して、先生は崩れ落ちた。
 僕は先生の手首を縛る紐を解き、目隠しを外す。
 涙に濡れた瞳は上にひっくり返って白目を見せていた。
 そして、床はビショビショに濡れている。
 僕は先生の体を抱き、ゆっくりと頭を撫でてあげた。

「あ……」

 瞳を戻した先生が、ぽおっと頬を赤く染める。

「コタロウさん……優しい」

 僕に体を預けてくる。
 その柔らかい感触を抱きしめ、ゆっくりとキスをする。

「ン……」

 緊張して固くなっている唇。
 解きほぐすように唇を動かす。「ん……ん……」と可愛い吐息で先生は応える。

「んんっ!」

 唇が開いたところで舌を入れた。
 先生は少し驚いた声を上げたけど、すぐに僕のしようとしていることを飲み込んで、おずおずと自分からも舌を伸ばしてきた。

「んっ……ぬちゅ、ちゅ、んんっ、はぁ、んっ、ちゅっ……ぬちゅ、んっ……ぷはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 口を離した後も、先生はしばらく呆けたみたいに舌を出していた。
 あまりの可愛さと色っぽさに心臓がドキドキする。もちろん、股間も。

『お兄ちゃん、ちょっと業務連絡あるから聞いて。うちにいるアバターちゃんたちは全員『スキンモード』ONしてるから。だからその……いわゆる“膣出し”と書いて“なかだし”しても、避妊とか大丈夫なんだからねっ』

 イヤホンから飛び込んでくるKARINの声。
 なんていうか、初めてKARINから本当に有益な情報を得た気がする。

『あと、えっと、KARINそろそろウサギたちを散歩させてあげないとなの。小一時間はくらいはどっか消えてるから。その、そ、そういうわけだからお兄ちゃんまた後で!』

 ぷつん、と音声の切れた音がした。
 真っ赤になったKARINの顔が想像できた。
 僕だって今の空気くらい読める。先生が欲しがっている一言も、して欲しいことも想像できる。

「……マキ」
「は、はい」
「その、よくお仕置きを最後まで我慢できたね」
「あ、いえ、私はコタロウさんのオンナですから、このくらいは……」
「ご褒美を、あげたいな」
「え?」
「だからその、お仕置き我慢したご褒美というか、僕の……オンナとしての初仕事というか」
「あ……」

 真っ赤になってマキちゃん先生――いや、マキは俯く。
 僕はそのブラウスのボタンを外していく。彼女はじっとそのまま、僕に脱がされるまま黙っている。
 ブラを外そうとして僕がまごついていると、彼女は自分から背中に手を回してホックを外してくれた。

「マキ」

 彼女はこくりと頷き、自分から立ち上がった。
 そして、机の上に腰を下ろし、ピンク色のアソコを指で開いた。
 
「ス、スケベな淫乱教師のマキにどうかご褒美をください……コタロウ様」

 初心者同士のぎこちないSMプレイを、彼女はまだ続けようとしている。
 おそらく、僕がそれを望んでいると彼女は思っているから。そして僕も、彼女の目覚め始めたばかりの願望を引き出すために、プレイを続ける。

「い、挿れてやる前に、聞きたいことがある」
「は……はい。どうぞ、です」
「お前は処女か、マキ?」
「えっ!?」

 ぼっと火がついたように赤くなり、マキは唇を噛んで頷く。

「しょ……処女ですよ?」
「本当?」
「本当です」
「誰のために処女だったの?」
「も、もちろん、その……コタロウ様のためです」
「僕に破られるための処女?」
「は、はい、そうです。私は、い、淫乱だけど処女です。コタロウ様に破っていただくための膜です。どうか……マキの処女をコタロウ様のオ、オ……オチンポで……壊してくださいっ。私にとって、それが、あの……なによりの、ご褒美ですから……」

 お互い下手くそなSMトークだけど、何だかそれが甘い愛の囁きみたいに胸に響く。
 交わす言葉の内容よりも、もっと大事なものを交換している気分だった。

「じゃあ……挿れていいんだね?」
「……私の方のこそ、おねだりさせてもらってます……」

 マキのそこはもうトロトロに出来上がっていて、あとは突き破られるのを待つだけって感じだった。
 僕はもう迷ってもいなければ、罪悪感も微塵もない。
 モデル顔負けの美人先生が、グラビアモデル体負けのボディを見せて僕を待っている。
 突き進む以外の選択肢はなかった。

「んっ、んんっ」

 ぐぐっと先端を埋めると、つらそうな顔をした。
 少し腰が引けそうになったけど、そういう遠慮はかえって僕らのためにならないとわかっていた。
 奪う。破る。壊す。モノにする。
 そういう初体験が僕らの愛の形だ。

「あッ!? んんんっ!」

 引っかかるものを貫いた感触がした。
 しばらくそのままマキの呼吸が落ち着くのを待つ。
 じわりと温かいものが、僕のペニスの周りから垂れていった。

「動きま……いや、動くぞ」
「は、はい。どうぞ」

 腰に腕を回し、抱き寄せる。
 マキも僕の背中に腕を回し、ギュッと抱きついてきた。

「……マキっ」
「はいっ、うぅっ」
「マキっ、マキっ」
「はいっ、んっ、んんっ、はいっ、コタロウ様、んっ、んっ」

 入れる。抜く。入れる。抜く。
 初めて味わう女性の体は、言いようもなく気持ちよくて、胸に感じる柔らかさも、温かさも、そしてペニスにしがみついてくる密着感も、天国のような快感だった。
 夢中になって腰を動かす。彼女の乗っている机ががたがた軋む。ちょっとでも気を抜いたら出して終わっちゃいそうだ。でも、そんなもったいないことしたくなくて、必死で我慢して腰を動かした。

「んんっ、んっ、んんんんっ」

 でも、マキは痛そうに唇を噛みしめている。
 僕の肩に食い込む爪が彼女の苦痛を表していた。
 心配だ。でも、中途半端に止めることは彼女を傷つけるって、聞くまでもないことだ。
 僕たちは対等じゃない。SとMだ。彼女に優しくしたいなら、僕がまず満足してからじゃないと彼女は自分の失敗と受け取るだろう。

「気持ちいいよ、マキ! 痛くても我慢して!」
「い、痛くありませんっ……き、気持ちよくしていただいてます!」
「……そうか、じゃあ、このまま続ける!」
「はい! うぐっ、ありがとうございます!」

 ごめんなさい、と心の中だけで言って抽送を続ける。
 出来るだけ早く終わらせなきゃって、我慢するのを止めたんだけど、でも、なんだか彼女の痛みが気になって逆に集中できなくなっていく。
 本末転倒だろ、僕。早く満足してあげないと、彼女の努力を褒めてあげられない。
 必死になって腰を動かす。それが余計に彼女の負担になり、マキは唇が真っ白になるまで噛みしめている。
 その痛々しい表情に胸がチクチクする。
 
 プツっ。
 
 そのとき突然、イヤホンにスイッチが入るような音がした。
 まるで、『音声通話機能を含む何かのアプリ』が勝手に起動したみたいに。
 
 プツッ。
 
 そして、それは同じ音を立ててすぐ消えた。

「んっ、んっ……んっ?」

 マキの表情が少し変わった。
 驚いたように目を開けたと思ったら、青ざめていた表情に赤みが増していた。
 
「えっ、えっ、何、これ? あっ、なに、何か、変な、あっ!?」

 ぎゅっ。
 僕の肩に指が食い込む。そして、アソコまできつさを増す。

「あっ、なんか、変ですっ、あの、これ、わかりませんっ! まるで、あの、コタロウ様に写真撮られてるときみたいな……あっ、あっ、違う、もっとすごいです! これ、すごいです! あぁっ! あぁっ! コタロウ様! コタロウ様!」

 童貞だった僕にもわかる。
 マキ、感じている。僕のペニスで気持ちよくなってる。
 たった今、処女を破られたばかりの激痛すら忘れて。

「あっ、あっ、なに、これ、すごいです、本当にすごい! こんなの知りません! 初めてです! これが……、これが、セックス! セックスの、快……感……ッ! あぁぁっ、すごい、すごい! コタロウ様、すごいですぅ!」

 僕の腰に足を回して、彼女は全身で喜びを伝えてくる。
 大きなおっぱいが反り返って、固くなった先っちょがビンビンと振れている。
 
 そして確信した。
 KARINが彼女に何かやった。
 
 顔が熱くなっていく。
 アイツ、覗いてないふりしてやっぱり見てたな。どうやってか知らないけど、別のアプリ使って僕らのセックス覗いてたな。
 恥ずかしくて萎えるけど、目の前のマキの乱れっぷりを見ているとそんなことも言っていられなくなる。
 割り切って腰を動かした。KARINにはあとでお仕置きだ。僕の本気のお尻ペンペンをたっぷりと味わせてやる。
 マキの大きなおっぱいが、僕の腰に合わせてゆっさゆっさと揺れていた。
 僕の身勝手な怒りを宥めるように。

「あぁぁッ、すごい! コタロウ様ってすごい! 私、こんなに素敵なご褒美、初めてです! 初めての喜びです! こんなの、こんなの知ってしまったら、もう逆らえません! 何でも従っちゃいます! 奴隷になっちゃいます! コタロウ様! コタロウ様! 私の、ご主人様ぁ!」

 僕の方こそ、マキちゃん先生の気持ちよさには逆らえない。
 もう何も考えられない。こんなの信じられないのは僕の方だ。放課後の教室。相手は女教師。しかも最高に可愛くて最強にエロい体の持ち主。
 すごすぎる。腰を動かすたびに感動する。彼女の膣の中で僕のおちんちんが叫んでる。これが世界一気持ちいい初体験だって、ギネス認定委員会に向かって叫んでる。そんなこと言われたってギネスも困るだろうに。

「好き! 好きです! お慕いしてます! コタロウ様! あぁ、あっ、ひぃ、気持ち、いいれふ、コタロウ様! 頭、おかしくなりそ、おかしく、なってまふ、コタロウひゃま! すごい、すごい、もう、何もいりません、コタロウ様のご褒美だけで、わたひ、生きていけます! 死んでもいいです! 死ねます、コタロウ様、私、わたひ、あなたのためなら、死んでも、いい…ッ、何もかも、ご主人ひゃまのために、あぁ、あぁ、とろけちゃう、舌も、脳みそも、オチンポに、溶かされちゃう、あぁっ、きもひ、いい、気持ち、いい、好き、好き、愛してますぅ!」

 蕩けてるのは僕も同じだ。
 セックスはすごい。セックスは奇跡。信じられないくらいに気持ちいい。
 マキのソコは何度も潮を吹いて僕を濡らす。処女を失った出血の跡など洗い流すように、淫乱の証で喜びを表現している。
 髪を振り乱し、よだれを流し、美人が台無しになるくらいの白目と舌を見せているのに、その顔を愛おしいと思う気持ちが止まらない。
 くらくらする。腰から下が溶けていく。
 もう、我慢できない……ッ。

「出すぞ、マキ! お前の中に出す!」
「あぁぁぁ、そんにゃ、そんなことしたら、赤ちゃん、赤ちゃんが……」
「出すぞ、僕は! マキの中に出して、妊娠させる!」
「あぁ、あっ、はい、はいぃ、ご主人様ぁ! マキを、マキを孕ませてくださいぃ!」

 ドクンと心臓が大きく跳ねた。
 最初の一撃を彼女の子宮口に向かって吐き出す。
 ぐっ、と背中に回った腕に力が入り、そしてマキの口から今日一番の悲鳴が上がる。
 ドクン、ドクン。
 もう一つ心臓が出来たみたいに僕のペニスが膨張と排出を繰り返し、彼女の膣を押し広げていく。

「ひっ……あっ……ひっ……あ……ッ」

 呼吸を詰まらせて、マキが引きつけを起こす。
 と思ったら、ぎゅううぅぅと膣が締めつけ、再び絶頂を叫んだ。
 
「あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 鼓膜を震わせる絶叫と強烈な密着感。
 僕はもう一度、彼女の中で射精した。



「……コタロウ様」
「ん?」
「私、教師になってよかった。あなたに会えたから」
「うん」
「立派な教師になってみせます」
「うん」
「見ていてくださいね?」
「もちろんだよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
「こっちこそです」



 その日、教室は緊張に包まれていた。

「では、この公式を応用して、57ページの例題を千葉さん、黒板で解いてみてください」
「は、はい」

 指名された千葉さんは、うわずった声で返事をして、重たい足を引きずるようにして前に出ていく。
 自分が当たらずに済んだという安堵のため息と、千葉さんに対する必死を応援を、僕たちは唾と一緒に飲み込んで堪える。
 
 授業は時間的にもう後半戦。
 そして、ここまでノーミスだった。
 マキにいつもの失敗もドジも勘違いもなく、テンパった様子もなかった。
 
 何かが違う、という雰囲気が教室を支配していた。始めはマキのいつもの可愛い失敗を期待していたみんなも、いつの間にか完封目前のピッチャーのバックを守る野手のような緊張に包まれていた。

「はい、よく出来ました」

 千葉さんは見事に正解を出した。
 胸を撫で下ろす彼女に、クラスメートは無言で『よくやった』と頷く。
 エラーの許されない緊張感。だがここまで来たら、もうこのまま行け。行くしかない。
 僕も手に汗を握っていた。

「ふふっ、どうしたのみんな? 質問ある人は手を挙げてね?」

 緊張して誰も挙げられない。
 というか、マキだって余裕のあるふりしているけど、必死なんだろう。
 言葉と笑顔とは裏腹に、手がかすかに震えている。でも誰も余計なツッコミや茶々入れなど出来ない。
 彼女はまだ失敗はしていない。
 それがどれだけすごいことなのか、僕らはどのクラスよりも知っている。
 無言ながらも、何度も彼女の隙を盗んで交わされたアイコンタクトで、教室はすでに結束されていた。
 完全試合を目指す。マキちゃん先生の最初の成功例を、うちのクラスで達成する。
 僕らが足を引っ張るわけにいかない。絶対に。

「それじゃ、次の問いはみんなでやってみましょう。あの時計で25分まで。わからなくなったら手を挙げて聞いてね」

 黙々とノートに向かった。
 なんとか答えは出たと思う。でも、仮にわからなかったとしても先生に質問なんてしなかった。ミスを招きそうな行為は誰もできない。咳一つ聞こえない。

「えっと、じゃあ、時間だけど答えは出たかな? それじゃ答えを……赤瀬川さん、いい?」
「は、はい!」

 来た、赤瀬川ユウナ。我がクラスで最も確実な選手を指名してくれた。
 みんながごくりと息を飲む。赤瀬川さんはスラスラと黒板を埋めていく。僕がノートに書いた解と同じだ。はたして答えはどうだ。ドキドキする。

「うん、正解。良く出来ました」

 赤瀬川さんは、小さくガッツポーズした。
 普段の彼女なら絶対にそんなことはしない。でも今は、全員が彼女をハイタッチで出迎えたいと思ったはずだ。
 残り5分。
 マキは上手に今日の授業をまとめ、そしてチャイムが鳴る瞬間まで気を緩めることはなかった。
 チャイムが鳴っても、まだ誰も声を上げようとはしなかった。

「では、委員長お願いします」
「はい!」

 起立、礼、ありがとうございました。
 顔を上げる。まだ沈黙。まだ気を抜けない。
 そして、マキがホッと息を吐いた。
 その瞬間、いっせいに教室が湧き上がった。

「やったぁぁぁぁぁッ! ノーミス! ノーミスクリアだ!」
「すっげ、すっげーよ! 鳥肌立ったよ、俺!」
「何これ!? 何この一体感!? ものすごい嬉しい、今! 何で!?」
「おめでとう、マキちゃん! すっごいかっこよかったよぉ」
「本当だよ……すごいよ、マキちゃん、ぐす……」

 驚いて目を丸くしていたマキも、あまりにも盛り上がる生徒たちに顔を赤くしてワタワタし始める。

「ちょ、ちょっとやめてよ、みんな。ようやく普通に授業出来たってだけで、全然すごくないし……」

 と言いつつ、手も声も震えている。目が潤み始めている。
 そんな先生を見ていたら、僕もなんだかうるって来る。

「おめでとう、先生! 今日の授業が、一番良かった!」
「俺、今日の授業ぜってぇ忘れないから! 他のは間違えても、今日習ったとこだけは死んでも間違えねぇから!」
「先生……ぐすっ、よかったねえ、マキちゃん先生……」
「ダメ、私も泣くわ……映画観てるみたいだよ……うえぇぇ」
「だ、だからみんな、止めてってば、も、もう! そうやってすぐ先生のこと……からかって……」

 くしゃ、とマキの表情が崩れる。
 そして堪えきれない涙がボロボロと落ちていく。

「ご、ごめんねぇ……今までまともな授業もしてあげられなくって本当にごめんね。もう大丈夫だから。先生、これからはしっかりやるから……うぅ……うぁぁ」
「泣くなよ、先生! 俺たち迷惑なんてしてないんだから!」
「そうよ、マキちゃん! ううん、先生! 私たち、先生のこと大好きだよ!」
「ありがと、みんな……ありがとぉ!」

 何でもない普通の授業が一コマ終わっただけ。
 それだけのことかもしれないけど、僕たちにとっては最高の時間だった。
 僕はそっとデジイチを取り出し、彼女にピントを合わせる。
 マキちゃん先生は、泣き顔を微笑みに変えてVサインを向けてくれた。



「……この僕のカメラに対して勝利のVサインとは、ちょっと調子に乗りすぎなんじゃあないかな?」
「あぁっ!? すみません、ご主人様! 調子に浮かれたノリノリ奴隷で本当に申し訳ございませんでしたぁ!」

 放課後。さっきまでの感動と笑顔を、僕はさっそく男子トイレでだいなしにしてやった。
 奴隷調教とは無限に繰り返されるアメとムチスパイラルだとKARINは言った。上げて落とし、落としては上げるタワー・オブ・ドレーのアトラクションだと。
 アプリの言うことをどこまで真に受けていいのかとも思うが、ご主人様プレイについては早めに慣れる必要があるのも確かだ。人気の少なくなった隙にマキちゃん先生を連れてきて、男子トイレの個室に連れ込み、僕の前で跪かせていた。
 先ほどの授業で教師人生のピークを迎えたばかりだというのに、その日のうちに男子トイレで正座である。女教師って、本当に大変なお仕事だ。

「本当に、すみませんでした。自分どうしてあんな浮かれた真似をしてしまったのか……もしもタイムマシンで4時間前に戻れたら、あの野郎ぶっ殺してやりたいです」

 ドラちゃんみたいなことを言ってマキは肩を落とす。
 実際、彼女は何にも悪いことしてないんだけどね。
 気の毒なくらい反省しているマキちゃん先生に若干同情しちゃいながらも、僕はご主人様フェイスをキープして見下ろす。
 理由なんてどうでもいい。叱って、褒めて、お仕置きして、可愛がる。良いことをしたときも悪いことをしたときも、まずは僕の前での正座から始まるのだということを、僕はこの女教師に教えてやらなければならないのだ。

「まあ、確かに今日の授業はよかったよ。立派だった。僕もご主人様として鼻が高い」
「…………」

 マキは、こんな単純な褒め言葉にもすぐに真っ赤になった。
 だが、決して浮かれることなく、にやけそうになってる口元を引き締め、視線を斜め下に逸らす。

「マキなら出来ると思ってた。素敵な先生っぷりだったよ。正直、惚れ直しちゃったな」
「…………!」

 膝をぐっと握りしめている。
 ハシャいだりすまいと厳しく律しているらしい。
 しかしどうだろう。見えない尻尾がパタパタ揺れているのが見えるようなのだが。

「押し倒して抱きたいのを我慢するのが苦しかったくらいだ」
「あぁ、私もです、ご主人様! 勝利のVサインは本音を言うと両足でやりたかったくらいでしたぁ!」
「ハシャぐな、奴隷め!」
「ぐっ……申し訳ございません!」

 タガが外れたタイミングを押し戻すようにして叱責する。
 アメとムチ。ご主人様と奴隷の関係は厳しい。僕だって本当はこの可愛い年上の女性をなでなでして抱きしめて思いっきり褒めてキスしたい。
 あと、両足Vサインを想像しちゃって笑いをこらえるのがつらい。あの場面でそれやれてたら僕ら全員爆死してる。
 しかし今は、彼女を叱るときだ。僕は厳しい表情をキープして、腕組みをしてあごを上げる。

「そうやってすぐ調子にのるな。メス奴隷は調子にのらない。乗っていいのは、船だけだ」
「えっ、私は売られちゃうんですか!?」
「もちろんその可能性は常にある。ただ、ちゃんとお仕置きを受けるのなら、船にも乗らなくていいよ」
「受けます! どのようなことでもおしゃってくれれば! ですから船だけは……!」
「じゃあ、まずは、男子なら一度は夢見るアレをやってもらおうか」
「文化祭でバンドステージですね。すぐに手配いたします!」
「いや、違うから。そういう話じゃないから。文化祭でバンドやりたいとか、球技大会でノーヒットノーランやりたいとか、テロリストに教室支配されたときに活躍したいとか、確かに妄想したことはあるけど、無理なのわかってるから。ご主人様の前にそんな高いハードルを置くな」
「では、教室を突き破ったり、廊下の壁を走り抜けるような超常バトルを……?」
「出来るの? それやりたいって言ったら出来るの? やりたいよ? というより君、ご主人様のことすごく痛いやつだと思ってるよね?」
「めめめ、めっそうもございません! 私、男の子のことがよくわかってなくて、すみません!」
「いや、むしろ男子の気持ちに詳しすぎて怖いくらいだよ。でも、そうじゃないよ。そっちじゃない。高校生くらいの男子の夢といえば、決まってるでしょ……これだ! これが男子の夢だ!」

 そういって僕は、ファスナーを下してギンギンに反り返った男子の夢を取り出した。

「……それは、女子の本懐です」

 マキは、うっとりと目を細めて言った。

「放課後の男子トイレで、女教師にフェラチオ奉仕させる。それに比べれば文化祭でバンド演奏する程度のことは児戯だよ、児戯。さあ、しゃぶって。『今から私は生徒のおちんちんをおしゃぶりさせていただきます』って言ってから、しゃぶって」
「い、今から私は、生徒の、ご主人様のたくましくて太いおちんちんを、おしゃぶりさせていただきます……」

 昨日まで童貞だった僕が、昨日まで処女だった可愛いメガネっ娘教師にフェラチオされる。
 夢の世界の出来事のようだ。それとも昨日までの僕たちが夢なのか。

「ん、れろっ」
「くっ……」

 マキの意外と長い舌が、蝶が舞うようにひらりと下から上へ舐めあげる。
 それだけで全身に電気を流されたみたいな快感が走った。

「ちゅっ」

 唇が、根元のあたりに音を立てて吸い付く。優しく添えられた手が僕の幹をゆっくりと撫でる。
 
「ちゅっ、ちゅ、ちゅっ、ちゅば……れろぉ」
「うわぁ……」

 ねっとりとキスと舌が絡み付く。
 男を知らなかったはずのマキちゃん先生の初フェラは、予想をはるかに超えた快楽を僕にもたらしてくれた。
 というより、想像していた以上にエロかった。

「はむっ」
「ううっ!?」
「んぷっ、じゅぶっ、ちゅぶっ、んんっ、んーっ、じゅぶっ、ぐぶっ、んぶっ」
「あぁっ!?」
「んくっ……ご主人様、これ、お仕置きじゃありません……んっ、んっ、ご褒美です。奴隷にとって最高のご褒美です。ご主人様が喜んでくださってる……私の口で、おちんちんをピクピクなさってる……んっ、じゅぶっ、じゅぶっ、んんっ、もう、奴隷に優しすぎますよ、ご主人様ってば。んんんんっ」
「ほぉぉぉっ!」

 いや上手すぎるだろ。ディープスロートすぎるだろ。
 優しく睾丸を揉みながら喉深くまで吸い込み、舌と息遣いで強烈に愛撫しながら顔を前後に揺さぶりすぎだろ。
 え、ええ? 何この訓練されたかのような愛撫? 昨日まで確かに処女だったよね?
 あれは違ったのかな。ひょっとして僕だけ童貞だったのかな?

『うっしっし。驚いてる驚いてる』

 そのとき、まるで当然のことかのように『mindshot』が勝手に起動し、耳に挿していたカナルの中で勝手なことを言い始めた。
 昨日、コードレスのイヤホンを買わされたのだ。

『あのね、webページとか動画とか保存するアプリあるっしょ? それでたっくさんエロの教科書集めてプレゼントしたんだぁ。だからマキちゃん、本人も気づいてないうちにすっごいエロエステシャンになってるの。くふふ、KARINってば本当に役に立つ子だよねー』

 忘れてたよ。完全に忘れてた。妹の知能を有するアプリに監視されているのを忘れて、僕、「ほぉぉぉっ!」って言っちゃったよ。

『お兄ちゃん、気持ちよさそー。同じプログラム、みんなにもちゃんと勉強させておくね? あ、カリンには特別にソーププレイも覚えさせておくから。ご家族バージョンだからね!』

 そもそも妹と一緒に風呂入らないから。
 しかしマキの強烈なバキュームの前に、僕は歯を食いしばらなければならず、何も反論はできない。

『お礼はガリガリ君でいいよ。ちゃんとカリンに買ってあげてね。うっしっし』

 ぷつっと音声が途絶える。
 自分のタイミングで勝手に起動し、自分のタイミングで勝手に切れる。最近のアプリって、使用者の知らないところで何やってるかわからないから怖いよね!
 僕はじゅるじゅると絡みつくマキの舌に、喉を震わせて堪える。

「嬉しいっ、んっ、じゅぷっ、私、ご主人様のオチンポ、おしゃぶりしたいと思ってたんです! おねだりしたいなって、でも、厚かましい奴隷だと思われるのやだなって、あぁん、もう、どうして私が一番嬉しいご褒美がわかっちゃうんですか、ご主人様って! もう、素敵すぎます! 大好きです! じゅぶっ、ちゅぶっ、んっ、んっ、ご奉仕、好き、ご奉仕、好き、ご奉仕、大好きっ、んんっ、ちゅっ、あぁもう、明日もお仕事頑張っちゃいます、私ぃ!」

 舌がカリ首を舐め回し、先端をチロチロとくすぐる。
 ほっぺたがへこむほどの強い吸引で顔を前後に揺さぶる。
 上目遣いで僕を見上げる顔は、フェラだけでイッちゃうんじゃないかと思うくらい恍惚としていた。
 気持ちいい。いやらしい。
 僕たちのマキちゃん先生が、こんな顔して男のをしゃぶるなんて。僕の顔を見ながら、口の中に擦りつけるようにして、おちんちんしゃぶるなんて。
 頭の中までぐるぐるとかき混ぜる快楽に、僕はあっという間に限界に達した。

「きゃあッ!?」

 驚いて口を離してしまったマキの顔面に僕の精液が降り注ぐ。
 
「あっ、あんっ、いただきますっ」

 メガネを汚し、髪にまで跳ねる白い液体にあっけに取られていたのも束の間、マキは急いで口を開け、舌を伸ばして僕の精液を受け止める。
 手でスコスコと射精を手伝いながらだ。
 エロい。エロエロ博士だ。どうして自分にこんな作法が身についているのか、おそらく疑問にすら思わずスムーズに彼女は奉仕してくれる。
 ガリガリ君くらいならいいか。
 そんなことを考えながら、僕は最後の一滴までマキに出してもらった。

「ご馳走さまでした、ご主人様……マキ、こんなに美味しいミルクは初めてです」

 エロすぎる。どんな勉強をしたら一晩でこんな女に。

「お掃除いたしますね、ご主人様。んっ、ちゅるっ、ちゅっ」

 なんていうか、すさまじい幸福感。学校一の美人教師が、メガネも白濁液で濡らしたままお掃除フェラしてくれている。
 男として一気に10か20のレベルアップしたのを感じる。ミッションコンプリート。これがAVなら確実に次のチャプターへと移る場面だろう。
 でも、現実の僕は『お掃除フェラ』というものの本当の威力を噛みしめているところだった。
 うわあ、これやばい。射精したばかりのヒリヒリする亀頭が、柔らかい舌でくるくる舐められている。もちろんすぐに勃起だ。マキちゃん先生とのエッチが、こんなにあっさり終わるわけないんだ。
 だって、こんなに可愛くてスペシャルボディの年上女性が、何でも僕の言うことを聞いてくれるんだぞ。

「お、お仕置きを続けるよ、マキ」
「はいっ!」

 年下みたいな可愛い笑顔で、マキは僕を見上げる。
 僕はトイレの上に座った。そしてその上にお尻を向けて座るように、彼女に命令した。

「はい、ご主人様」

 恥ずかしい命令に頬を染め、それでも言われたとおりにマキはスカートの下に手を入れ、ストッキングごと下着を脱ぎ去り、大きなお尻をめくった。
 僕は自分の目の前にきたその白くて形のよいヒップに、感嘆の声を上げる。

「失礼します、ご主人様」

 遠慮がちに僕の上に腰を落とし、慎重に照準を確かめ、入口に僕の先端が触れたとき、マキはうっとりと艶めかしい吐息をついた。

「ご褒美ちょうだいいたします……あぁんっ」

 お仕置きだって言ってるのに。
 学校で、男子トイレで命令されたセックスを、教師のくせに嬉しそうにマキは迎えていく。

「くぅぅ……は、ぁ、うぅぅぅん……」

 子犬みたいな息を吐いて、僕のを飲み込んでいく。
 エッチのテクニックは一夜漬けとは思えないほど向上したくせに、アソコのきつさは昨日とほとんど変わらなかった。

「はぁ……嬉しいです……」

 最後までしっかりと僕のを銜え込んでから、火照った顔を僕に見せてマキは笑った。

「動いて、マキ。僕のを気持ちよくして」
「はい、ご主人様。んんっ、はぁ、あぁっ」

 ぎし、ぎし、トイレを軋ませてマキのお尻が上下する。ど迫力のヒップが僕の太ももにもち肌の弾力を伝える。
 狭い膣道はまるでチューブのように僕のを締め付け、ざらつきのある壁がぬめぬめと絡み付いた。
 
「んんっ、んっ」

 唇を結んで、眉をしかめているマキはまだ痛みがあるんだろうか。耳たぶにキスをしながら、「痛いの?」と僕は尋ねる。

「ち、違います。気持ちいいです。でも、声が……」

 恥ずかしそうにマキは頬を染める。
 学校でセックス。男子だけの場所でお尻を丸出し。
 普通じゃないとシチュエーションに彼女は羞恥と興奮を感じているだった。

「もっとお尻を使って僕を喜ばせて」
「はい、んんっ、これで、んんっ、どうで、しょうか? はぁっ」

 お尻が動きを変えて、前後に揺れる。たまに円を描くように回る。僕のおちんちんに触れる場所が目まぐるしく変化し、そのたびにざわざわした快感がお互いに共有され、同じように声を上げる。

「いいよ、マキ。それすごくいい」
「あん、ありがとうございます。私も、いい、すごく、いいです、ご主人様。好き、セックス好きぃ」

 指を絡ませあい、マキの腰使いに身を委ねる。
 女性上位ってなんか主導権取られてる感じがしてたけど、僕のために腰振ってくれてるんだって思うと、すごく愛おしく可愛くなってくる。
 いい匂いのする体を抱きしめる。彼女は柔らかくてどこもかしこも気持ちいい。髪に顔を埋めて首すじ舐めると「あっ!?」って悲鳴上げちゃって慌てて口をふさぐところも可愛い。
 最高だ。マキちゃん先生ってやっぱり最高。死ぬまで彼女の中に入っていた。

(ッ!?)

 そのとき、マキの体がビクンと跳ねて、膣がギュッとしまった。

「うあー、だり。くっそ、あの先輩、消えてくんねーかな」
「ほんとそれ。マジで学校にテロリストとか来て、真っ先に先輩を撃ってくんねーかなって思うもん」
「真っ先に犠牲になるタイプだよなー、あのウザさ」

 どこかのクラスの男子が入ってきた。当たり前だ、ここは放課後の男子トイレ。何時だれが用を足しにきても不思議じゃない。
 気持ち良いセックスでそれを忘れていただけだ。
 マキの中が、さらにギュウゥゥと締め付けを増し、体が硬直した。

「あの人、文化祭でバンドやるとか言ってんの。信じられる? ギターも今から覚えるんだってよ」
「中二病感がぱねぇよな。知ってる? 球技大会のときピッチャーやるとか自分から言っといて、ストライク1個も入らないで交代したんだと」
「それでよく学校来れるよな。俺だったらって想像するだけでヘコむのに」
「ヘコまないメンタルがウザいんだよな。少しは反省して欲しいわ」

 個人的にはその先輩にシンパシーを感じないでもないけど、実際にいるとやはり痛いな。本当に痛い。
 だけど今、もっと痛い思いをしているのがマキだった。ていうかトイレで合体中の僕らはかなり痛い教師と生徒だった。
 セックスの熱に火照っていたマキの体が、固く冷えていく。売られるだの船に乗せられるだのと大航海時代の奴隷を気取ってはみても、しょせんは現代に生きる女教師。学校で生徒とセクロスしてればただの淫行だ。
 もしもバレればいろいろアウト。まさに教師人生のピークから、スキーなしでの大滑降をすることになる。
 青ざめた顔で、頬を震わせながら振り返る。僕はこくりと頷いて彼女を安心させた。

「大丈夫。絶対に、僕はマキの立場を悪くするような真似はしないよ」
「あっ……」

 耳元で囁くと、マキは頬を染めて微笑んだ。
 当たり前じゃないか。
 僕はマキの彼女なのに。

「そりゃあ!」
(ンンンンンッ!?)

 突如、祭りが始まったとばかりに激しく腰をグラインドさせた僕に、マキは両手で口をふさいで慌てて悲鳴を押さえつけた。
 それでも僕は、腰を動かす。二人分の体重で揺さぶられ、トイレが軋んで音を立てるにも構わず。

(ン!? ンっ、ンンン!?)

 首をぶんぶんと振り、必死に目で訴えてくるマキ。
 しかし僕は止めたりしない。むしろこれまで彼女任せだったセックスのお返しをするかのように激しいピストンでご奉仕する。

(ダメ、ダメです、ご主人様っ! おやめください!)

 ていうようなことを、言いたいんだと思う。
 だが息を漏らせば喘ぎ声になるような行為の最中で、彼女は自分の口をふさぐのに必死だった。

(そんなに頑張らなくても大丈夫。マキを困らせたりしないって)
(ンンっ、ンンっ)
(無理しないで声だしなよ、ほら)
(ンンーッ!?)

 腰にひねりを加えて、奥の方をコンコンつつく。
 じたばたと悶え始めるマキの体をしっかりと僕の腕で抱きしめながら。
 
 もちろん、ここは『Mindshot』の作り出した別空間である。
 外の声は聞こえても僕らの声や音は外には聞こえない。そしてちゃんと外からもカギをかけて入っているので、間違ってもこの個室を使おうとする者もいない。
 これこそが、不思議チートアイテムで構築する恋愛の醍醐味だ。
 常識的であることを端から放棄した関係と行為と発想。僕たちは、どんな無茶だって出来る。絶対的安全圏で遊んでいるだけなんだから。
 でも、そのことはマキも知らない。僕とKARINだけの秘密だ。
 
(ほら!)
(ン、んんんんっ!)

 快楽で綻びそうな自制心を、必死になって抑えつけていた。
 どれだけ我慢できるかな。根っからのドMの彼女は。こういう羞恥プレイだって大好きなはずの彼女は。
 全部だいなしにしてでも快楽に溺れたい淫らな体vs教師の彼女の戦いに、僕もかなり興奮している。

(マキ、心配しなくていいよ。安心して声をだして!)
(ンン!? ンン!)

 無理ですと、必死に目で訴えて首を振る。
 僕はその耳をぺろりと舌でなぞる。くぐもった声をあげてマキは体を震わせる。
 口を覆う手をよけようとする僕に、泣きそうになって抵抗する。

(手をどけて。声を出したらもっと気持ちいいよ?)
(ンンーッ! ンーッ!)

 顔が真っ赤になって、胸元にまで朱色が広がっていた。
 ただでさえセックスって、女の人にとっては大変な行為なんだろう。それをこんなところで、他の男がすぐそこにいる状態で、ガンガン突かれるんだからますます大変だ。
 でも、だからこそ彼女のアソコはあふれるくらいに濡れて、きゅうきゅうと締め付けが良くなって、体を火照らせていく。
 必死で抵抗しながらも、この状況に誰よりも感じている。
 ドMのMAKIちゃん。
 もっとマキのこといじめたい。困らせて、よがらせて、可愛いとこ見たい。
 僕は今でも自分にS属性なんてないと思ってるのに、彼女の特性は僕に未知の悦びを教えようとしている。「もっとイジメて」って目と体とアソコで訴えてくる。
 僕もそんな彼女との卑猥な行為にのめりこんでいく。もっと彼女をいじめたい。困らせたい。

『お兄様、お兄様』

 耳の中でKARINの声がする。
 マキの後ろでこっそりとスマホを取り出すと、ウサ耳のKARINが両手で何かを差し出していた。
 柔らかい微笑みとともに大事そうに手に乗せてあるそれは―――『マキちゃんコントローラー』とポップアップで表示されていた。

『にやり』

 KARINの微笑みは凄惨な感じに変わり、『マキちゃんコントローラー』が拡大される。
 まるでデッサン用の人形みたいな簡単な人型イラストがくるくる回転し、そして今のマキと同じポーズに縮こまる。
 僕の膝の上で、手で口を覆って縮こまってる今の格好に。
 試しに右手にタッチして、そのままスライドしてみる。

(ンっ!?)

 すると画面の中の人型と同じように、マキの右手が横にピンと伸びた。マキの肉体は、この人形とリンクしているようだった。
 悪い子だな、うちの妹は。

(ンン? ンーッ!?)

 まずは手をどけて、ドアにつかせる。そして腰を上げて顔を前に出す。
 むしろ外へ声をきかせるように。屈辱の体勢へと。

「いっそあの先輩、一度死んでからの異能力復活とかすればいいのに」
「そういうの大好きそうだよな。もう勝手に深夜の高校で能力バトルでもしてろってんだよ」
(ンー! ンンーッ!?)

 呑気な会話を続けながら、彼らは長い排泄を続ける。マキはそんな彼らにバレまいと、必死に歯を食いしばっている。
 
(あきらめて声をだしなよ。気持ちいいよ?)
(ダメ……っ、ダメです、聞こえちゃう、ダメぇ……!)

 こんな体勢で後ろからガンガン突いているんだから、当然、薄っぺらいドアもギシギシ鳴っている。普通、すぐ外にいれば気づかれているはずなんだ。
 でも、まるでノーリアクションな彼らを疑問に思う余裕もないのか、マキは唇を噛んで、まだ声を我慢してのけぞっている。
 すごい色っぽい顔で。
 イジメられてる女の子の顔で。
 彼女に声を出させたくて必死に腰を使う。しかしマキだって当然必死で、頭をがくがく振りながら声をこらえる。
 さすが、一人前の教師に生まれ変わったマキは手ごわいぜ。

『お兄様、お兄様』

 我が相棒の声がする。
 再び胸ポケットからスマホを取り出してみると、KARINがさっきの人型マキちゃんの画面下に、新たなスイッチを設置して、僕を見上げていた。

『工事が完了しましたわ』

 新しい機能が追加されていた。『感度ボリューム』と書かれた、古めかしいダイヤルスイッチだ。

 くり。
 
 試しにスイッチを回してみる。
 
「ンンッ!?」

 びくんとマキの体が反応して、やや大きめな声が漏れる。

『にやり』

 悪い子だなー、うちの妹は。
 もちろん僕はスイッチをくりくりする。
 上げたり下げたり、じわじわと高めていく性感に、マキは少しずつ蕩けて不用意な声を漏らすようになっていく。
 セックスに溶けていく。

「あっ!? あっ、あっ、あっ!」

 大きく開いた口はふさがることがなく、色っぽい喘ぎと唾液を垂らして唇を濡らす。タイトなスカートをめくった大きなお尻が突き出され、僕のペニスを飲み込んでいやらしい音を立てる。

「いっ、あっ、ダメ、声、聞こえちゃいます、あっ、あんっ、エッチしてるの、ばれちゃいます、あん、あぁっ、あんっ、ばれちゃ、ダメなのに、あん、あぁーんっ!」

 とうとうマキの我慢が決壊して、いやらしい声を出して悶え始める。
 しかし完全に空間が遮断されているドアの向こうに、この声は聞こえてはいない。
 僕だけが楽しむことのできるマキちゃんの秘密ボイスだ。
 
「そんで、先輩の右足に抱えてた爆弾の正体っていうのが、ようするにその霊刀『魂雪』な。大腿骨に切り札を隠して戦ってきたってわけよ」
「なるほど。球技大会でコントロール定まらなかったのは伏線だったのか。気づかなかったわー」

 外の会話は途中から聞いてなかったけど、なんかおかしな展開になってるらしい。さっさとトイレ済ませればいいのに。
 でもまだそこにいるっていうんなら僕にとっても都合がいい。
 スイッチを回して、さらに快感度を増す。

「あっ!? やっ!? いけ、いけません、んんんっ」

 いきなり上げるのは野暮だ。少しずつ、上げ下げを繰り返しながら、揉みあげるように快楽を増していくのがいい感じ。
 快楽自体にマッサージされるみたいに、マキの背中が艶めかしく揺れる。

「いやっ、あん、いやっ、だめぇ、あぁーん! 聞こえちゃう、私のエロい声が、外の子たちに聞かれちゃいますぅ!」」
「でも待てよ。それだと設定が破たんしてるだろ。先輩が外世界(アナザーヘヴン)から召喚された4代目のソードマスターなら、時の司祭である校長先生がロリババアなわけないじゃん」
「おいおい、俺の話をちゃんと聞いてた? そもそも最初の被害者が発見されたとき、密室だったはずだろ。だけどその時点で、犯人以外が知り得るはずのない情報を口走っていた人物が、一人だけいたぜ?」
「……つまり、先輩の姉ちゃんが、千年後のロリババアってことか!?」
「まあ、詳細はスピンオフでの話になるけどな」

 どれだけ先輩のストーリーを広げていくつもりなんだよ。本当は大好きなんだろ、先輩のこと。
 マキはもう完全に声が出てる。男子トイレでよがりまくるメス豚になっている。
 普通ならとっくにバレてる状況だけど、当然ながら外世界(アナザーヘヴン)にいる彼らに、僕らの秘密が気づかれるはずはない。

「あぁッ!? いやいやっ、もうダメ、もういけません、声、大きくなっちゃいます、ご主人様ぁ!」

 いいのに。全然声出していいのに。
 まだ残ってるマキの理性が、はしたなく乱れる自分を許そうとしなかった。まあ、そんな簡単に許しちゃってたら、教師なんてやってられないけど。
 じゃあ、さらにスイッチを回そうか。

「ああぁ!? あぁっ、あぁーッ!」

 僕はマキの体に手を回し、その見事なおっぱいをすくい上げて揉む。お尻にこすりつけるように腰を動かし、彼女の温かさを全身で感じながら、ひたすら膣内をかきまわす。
 もちろん、マキちゃんコントローラーで快楽を操縦しながら。

「いやあっ! だめ、だめです、許してください、もう、私、私ぃ!」
「ねえ、マキ。言って。外にいる彼らにちゃんと聞こえるように言って。君は、今どこで誰と何してるの?」
「言えま、せん! お許しください、そんなことしたら、あんっ、ご主人様に、ご迷惑が……っ!」
「大丈夫。絶対に大丈夫だから。僕を信じて、大きな声で言って」
「あぁ、無理、です、怖い、出来ません、お願いですから、ご主人さま……」

 僕は最大近くまで快楽を上げ、ズンと勢いよく腰を打ち付ける。

「言えっ!」
「あぁぁぁッ!? わ、わたし、ご、ご主人様に犯していただいてますぅぅ!?」

 ぶしゅ、という水音を立てて、アソコからしぶきが飛ぶ。
 それと同時に、何か切れたみたいに、マキは大声で叫び始めた。

「ご主人様に、バックから犯してもらってますっ、私、私は、数学の吉川マキです! 教師です! 教師なのに、ご主人様に、生徒に、抱いてもらってます! 学校のトイレで、みんながおしっこしている横で、セックスをっ、お尻まるだしで、セックスして、気持ちよくなってますぅ!」

 びちゃびちゃと、まるでマキの方こそおしっこしてるみたいに、たくさんの液体をこぼしていた。
 アソコが緩んだりきつく締まったり、痙攣しているみたいに忙しなく蠢いていた。

「セックスっ、あぁ、セックスしてますっ、教師のくせに、奴隷セックスして、あぁんっ、学校で、セックスして、生徒に犯されて、狂ってます! 私、あぁ、奴隷、この人の、奴隷、あぁっ、だめ、開いちゃう、体、開いちゃう! この人に、私、何でも委ねちゃうのっ、この人のセックスに、私の体、逆らえないのぉ!」

 やがて僕のおちんちんが彼女の奥に突きあたる。というより、彼女の子宮口が、僕を迎えに下りてくる。
 
「あぁぁっ!? そこ、そこです、今、触れてるそこが、私の、私の一番大事な場所です! あぁ、妊娠するっ、そこ突かれたら、私、妊娠します! おトイレで、他の男子にセックスの声聞かれながら、私、妊娠しちゃいます!」

 ねじこむように、何度も。
 僕を迎え入れてくれてる未来の赤ん坊に挨拶するつもりで、先走り汁をそこに擦りつけ、先端でさらに押し開いていく。

「ねえ、マキ。僕の赤ちゃんの素、ちょっと出てる。マキの中で出てるよ」
「あぁぁ!? う、うそぉ!」

 マキは、膣全体をきゅんきゅんと震わせながら、甲高い悲鳴をあげた。

「そんなっ、そんなことされたら、妊娠します! 妊娠しちゃいます! ご主人様の赤ちゃんっ、生徒の赤ちゃんっ、みんなにエッチな声聞かれながら、孕んじゃいますっ、ご主人様の赤ちゃんミルクで、私、私、教師妊娠しちゃいます!」
「出すよ。もっといっぱい出すよ。マキの奥で、赤ちゃんが出来る場所で、いっぱい出すからね!」
「あーッ、は、はい、来てください! そこが、マキの赤ちゃん袋の入口です! 来て、来てください! マキも、イクッ、くるっ、赤ちゃんでイク! 学校のトイレで、子作りアクメしちゃいますぅぅ!」

「ま、どうでもいい話してないで行くべ」
「そうだな。あー、だり。あの先輩死ねばいいのに」

「イク、イク、イっクぅぅぅぅッ!」

 ぎゅうぅぅと強烈な膣の締め付けが僕のを挟み、奥へと吸い込んでいく。
 脊髄を震わせるような強い快楽に膝が揺れ、僕はそのままマキの膣内に精液を吐き出していた。
 マキは何かめちゃくちゃに叫び、お尻の肉をびくんびくん痙攣させながら、またアソコから大量の液体を噴き出す。
 圧倒的な気持ちよさ。僕まで快楽のボリュームを上げられたみたいに、立っていられなくなってトイレの上に腰を落とす。
 まだおちんちんはマキの中で射精を続けていた。
 彼女の一番大事な子宮は僕を離そうとせず、最後の一滴まで貪欲に搾り取ろうとしている。
 その必死さがむしろ可愛らしく、僕は腰を揺すって彼女の卵子めがけて射精を続ける。
 ぐんにゃりとしたマキが僕にもたれかかってくるのを、きつく抱きしめながら。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 息を乱した僕らの外では、彼らが立ち去った後の洗浄音しか聞こえない。
 ボンヤリとしか表情でマキは「あの子たちは……?」と尋ねる。
 僕は、彼女の髪を梳いてやりながら答える。

「帰ったみたいだよ。言っただろ? 絶対に大丈夫だって」

 マキはまだ信じられないように不安げな顔をする。
 全てを諦めて絶叫したばかりなのに、急に大丈夫だからと言われてもって感じで。

「信じてよ。僕がマキを困らせるわけないだろ?」

 でも、僕がそういうと、あっさり疑問は投げ捨ててしまい、火照りを残した体を僕に預けてくる。

「はい、ご主人様。私は、これからもあなたを信じます」

 頬に誓いの口づけをしてくれる。僕らはそのまま長いキスをした。
 唇を吸い、舌を絡ませ、指を絡ませ、濃厚にキスをした。
 そうすると、もっともっと彼女を抱きたいって気持ちが強くなっていく。

「今日これからマキの家に行ってもいい?」
「はい、喜んで」

 ちゅ、と唇を合わせながらマキはそういってくれる。
 カノジョの家に訪問。マキちゃん先生と放課後デート。
 僕の期待が、早くも股間で膨らんでいく。マキはそれを優しく手で擦ってくれる。
 
『え~、お兄ちゃんまだ帰らないの? 今日はカリンも部活ない日なのに~!』

 耳の中で、KARINだけが見当違いな不満を垂れていた。



 そして僕は、カノジョの家に案内された。
 そう、カノジョ。
 僕の生まれて初めての恋人は、学校の副担任だ。

「すっごいな……」

 意外にも高級なマンションで、たっぷりとしたスペースとお洒落な家具に囲まれている。
 先生ってこんなに給料もらえる仕事なのかと、驚くほどだった。

「私のじゃないんです。大学入学したときに、父がお祝いにって買ってくれたんです」

 それ、すっごいお嬢様なんじゃないかな。どういうお仕事してたら入学祝にマンションをあげられるのかな。ちなみに僕の進学祝いは擦ると消えるボールペンだったけど。
 マキは、確かに育ちの良さそうな感じの人だけど。
 美人でスタイルよくて頭も良くってお金持ちって、なんだかホント、すごい人と付き合うことになっちゃったんだな僕は。

「その……ご主人様をお招きするのに、片付いてなくてすみません。あの、次からは、いついらっしゃっても良いように、きれいにしておきますので」

 いや、付き合うというより、従えるんだ。
 恥ずかしそうに部屋を案内している彼女を見ていると、あらためて信じられないことしちゃってるなって思う。
 学園のアイドル教師のマキちゃん先生が、じつはドMで生徒の僕の奴隷になっちゃったなんて。
 ショートのさらさらした髪。メガネがもったいない美人。そして、超グラマラスなボディ。真面目でちょっとドジで、でも笑顔がすごく可愛い頑張り屋さん。
 彼女が、お尻を叩かれて喜ぶ変態だってこと、知っているのは僕だけなんだ。

「あ、そうだ、コーヒーでもお煎れします。私ってば気が利かなくて……」
「マキ」
「はいっ!?」

 緊張気味の空気を押し切るように、あえて低い声で彼女の名を呼ぶ。
 びくりと肩を振るわせて、急いでマキは僕の前に立った。
 じっと僕の言葉を待つ彼女は主人に忠実な犬みたいで、その真剣な顔を可愛いと思う反面、真っ直ぐな瞳が照れくさくもあるんだけど、僕は、一呼吸置いて自分を落ち着かせて言う。

「コーヒーは後でいい。それよりも、脱げ。今すぐここで」
「は……はいッ!」

 いまだ不慣れな主従命令に、2人とも顔を真っ赤にする。
 それでも、マキは言われたとおりにスーツの上着をまず脱ぎ、ソファの背もたれにかけ、そしてベルトを外していく。
 スタイルの良い彼女が脱いでいく姿は、いつ見てもきれいだった。
 僕はカメラを構えてブラウスのボタンを外す彼女を撮影する。

「あ……」

 シャッターを切った瞬間、彼女の体がぷるっと震えた。

「そのまま続けて」
「は、はい……んっ」

 僕のカメラのシャッターがそのまま性的な刺激となる彼女の肉体は敏感に反応し、白い肌に朱をさした。

「んっ……ご主人様が、撮ってる……んっ、私が裸になるとこ、見てらっしゃる……あぁっ」

 僕のカメラは彼女の快楽。
 赤色の派手なブラジャーが外された。
 まだモデルとカメラマンだったときから、彼女は毎日のように新しい下着を僕に見せてくれていて、女の人ってずいぶん下着をたくさん持ってるんだなって思ってたんだけど、このゴージャスなマンションを見て納得いった。
 彼女は、僕に見せるために新調していてくれたんだ。僕のために。
 やがてブラも外した彼女に、正面を向いて立つように言う。
 恥ずかしがりながらも、その抜群の体を僕のカメラの前に晒してくれた。

「……きれいだよ。マキの体は本当にきれいだ」
「んんんっ!」

 甘い囁きとシャッター音に、マキは軽いエクスタシーに達したようだった。
 
「はぁっ、はぁっ、はぁ……ご主人様ぁ、はぁっ、はぁっ」

 それでも僕の命令どおりに、立ったままの体勢は崩さない。
 荒い呼吸に合わせて上下するおっぱいときれいな乳首が、僕を誘惑している。
 今すぐにでも飛びかかってしまいたいけれど。

「……後ろを向いて」
「はい……」

 下着に包まれた大きなお尻。昨日はこれを何度も何度も引っぱたいたっけ。
 心なしか、まだ赤いような気がする。

「パンツも脱いで」
「は、はい。……で、ですが、それだとご主人様に、私の、ア、アヌスをまたお見せしてしまうことに……」
「見せて」
「……はい」

 泣きそうな声を出して、僕にお尻を突き出すようにして、パンツをするりと下げていく。
 僕はその瞬間を狙って連写モードにしたシャッターを切っていく。
 カシャカシャカシャカシャカシャ。

「きゃあああああッ!?」

 お尻を突き出したまま、びくびくんっと大きく震えてマキの体が崩れ落ちる。
 ちょっと驚かせてしまったかな?
 でも、おかげでものすごいスライドショーが作れる。

「あ、あ……ご主人様ぁ……」

 パンツを半下げにしたまま、切なそうな瞳でマキが僕を見つめる。
 いよいよ我慢できなくなった僕は、ズボンを下着ごと下ろす。

「あ……ご主人様の……オチンポ……」

 マキは「にへら」とだらしない笑顔を見せる。エッチな欲しがりな顔だ。

「ここに座って」
「はいっ」
「今日の授業はすごくよかった。がんばったよね」
「そんな、私なんて。全部ご主人様が見ていてくださったおかげですし……」
「でも他のクラスの授業も上手くいったんでしょ? 学校で話題になってたよ」
「う、噂になるほどダメ教師だったってことですよね、それって……で、でも、それもご主人様のおかげなんです! 私、他のクラスの授業でも『ご主人様が見ててくださる』って思えば、緊張感も集中力も全然違うことに気づいて、それで上手くいったんです」
「僕のこと考えてたの、授業中?」
「あ……はい、ずっと考えてました……やだ、恥ずかしいこと告白しちゃいました……やん」

 逆に、それでよく失敗しなかったよな。

「失敗を意識しないで、集中して周りをよく見る。今まで全然出来なかったことなのに、ご主人様がどこかで見ててくださるんだって思うだけで、驚くくらいに自然に出来る気がして……本当に、信じられない気持ちでした」

 信じられないと思ったのは、僕とか他の生徒の方だったんだけど。
 今までのマキと、僕と関係するようになってからのマキで何が違うんだろう。
 愛の力とか、そんな単純な話でもないような気がするけど。

『ようするに、今までのマキちゃん先生は「頑張れない子」だったの。不安やストレス、自己嫌悪その他もろもろ。これまでの彼女が持っていたのはネガティブなものだけだった。自分自身を一番信用してないし、本音を言うと誰かに依存して生きていきたい。ていうか学校行きたくねー。マキちゃん先生の生意気なボディと頭脳の中身は、じつは“真逆”だったんだね』

 ここが自分の解説コーナーと思ったのか、耳の中でKARINが勝手にしゃべり始める。

『マキちゃん先生は自分が認識してなかっただけで、ストレス障害の症状を起こしていたんだよ。教師を目指して就職したくせに、学校や授業といったものを無意識に拒否・回避してたの。意識が半分止まってたようなものだよ』

 つまり、本人は「こんなに頑張ってるのに」と思っていても、行動や思考はそれほどまでに働いていなかったということか。
 他人からはどうしようもないドジと見られていた彼女の失敗も、じつは無意識の拒否行動だったんだ。

『でも、そこでお兄ちゃんという理想の男性が現れて、無理やりオンナにさせられて、「俺のためにやれ」なんて叱られちゃったからね。まあ、アプリでいろいろ細かい部分で調整もしたけど、結局は惚れた男のために稼がなきゃってことですから。マキちゃん、ようやく自分に合った目的と、本物の集中を手に入れたの』

 初恋の先生への憧れと罪悪感を上手く処理できずに、ただ「1人で頑張るしかない」と思って教師を続けていたけど、そこに「僕のためにやる」という目的が生まれて、初めて本来の力が発揮出来るようになったというわけだ。

『はっきり言うと、根っからの奴隷体質なんだね』

 結局はそういうことなんだろうな。
 ちなみに、僕が四六時中入れっぱなしのこのイヤホンのことは特に気にしないよう、マキにはKARINの方からアバター経由で命令している。
 ご主人様が妹(しかも人工知能)の指示を受けて動いていると知ったら、さすがのメス奴隷も幻滅するだろうし。

『だからさー、偉い偉いって褒めるのもいいけど、それ以上に叱ってやらないとダメだよ。マキちゃんの状況はこの数日でものすごく目まぐるしく変化したの。今まで苦労した分をねぎらってあげたいのはわかるけど、そればっかりじゃまた不安にもなるよ。マキちゃん先生にとっては、褒められるのと同じくらい、ううん、それ以上に叱られるのが嬉しいんだからね』

 そうなんだ。
 僕はマキのために厳しくていじわるなご主人様にならないといけない。
 

「マキ」
「は、はいっ!」

 僕のペニスに見とれてボーッとしていたマキは、慌ててメガネを直して僕を見上げる。

「今日のマキは本当によくやった。ご褒美をあげなきゃいけない」
「え、そんな、私なんて、その……」

 もじもじと床にのの字を書くマキ。
 こんな昭和っぽい照れ方をする女子ってまだいたんだな。
 だけど僕は、冷酷な表情を作って言う。
 
「でも、そのあとトイレで僕が声を出せって言ってもなかなか出さなかったよね?」
「あ……はい、でもあのときは……」
「あれあれ? 口答えするのかな?」
「しません! まったくするつもりございません! 完全に私の落ち度でした申し訳ございません!」
「むむっ」

 土下座しちゃった。
 付き合い始めて間もないカノジョを土下座させちゃった。
 全裸女性の土下座って、かなり凄惨な光景だった。逆にこっちの胸が焼けそうだ。僕、この人のことめちゃくちゃ大好きなのに。
 心にビキビキとひびが入るのを感じる。
 抱きしめてごめんなさいしたい。

『騙されないで、お兄ちゃん! これは敗北を装った攻撃だよ。お兄ちゃんの鍛練が試されてるんだよ!』

 いや、騙そうとはしてないだろ。
 しかしご主人様って、メンタル強度が高くないとできない職だ。これぐらいのことで引いてはいられない。
 歯を食いしばって、マキの後頭部に足を乗せる。

「うひっ」

 マキは、くすぐったそうに笑った。
 騙されるとこだった。ちょっと引いた。

「……お仕置きするよ」
「はいっ! よろしくお願いします!」
「ベッドの上に四つんばいになって」
「はい!」

 マキは、飛び込むように寝室へと僕を案内して、さっそくベッドの上に手をついてお尻をこっちに向けた。
 お仕置きと言えばお尻ペンペン。彼女は僕の命令を待たずして待機の姿勢になる。

「いいお尻だね」

 丸くて豊かな肉付きのお尻を褒めると、マキは頬を染め、「ご主人様の特産物ですから」とわけのわからないことを言って嬉しそうに微笑む。
 さらにお尻を突き出すようにして、ふりふりと僕のお仕置きをねだるようにアピールしてきた。
 
『……なんだ。やっぱりマキちゃんってばお仕置きでもご褒美でもどっちでもいいんじゃん。ラブラブだね』

 そう言われるとちょっと照れくさい。
 もちろん、すごく嬉しいけど。

『ふーんだ。じゃ、KARINはスパイダソリティアでもやってよ』

 KARINの声が途絶えて、替わりにシュタタタタとカードを配られる音がする。
 カリンがよく僕のPCやスマホで遊んでいるカードゲームだ。Windowsなら最初から付属されてる単純なトランプの数字合わせゲーム。しかし妙な中毒性があり、カリンがこれを始めると数時間は動かなくなる妹殺しな遊戯だ。
 遊ぶのは勝手だけど、音消せよ。

「それじゃ、お仕置きするよ、マキ」
「はい! ご主人様よろしくお願いします!」

 嬉しそうにお尻を振る僕の奴隷。
 そういや、いつの間にか僕の呼び名が「ご主人様」に固定されてることに今さら気づいた。
 コタロウ様じゃなくて、ご主人様。より主従関係の強さを感じる。僕は一人の女性を支配してしまったんだと考えると、血が熱くなるような興奮と喜びを感じる。

「マキ」
「はい、ご主人様」
「マキ!」
「はい、ご主人様!」

 ハーレムなんて作れるかどうかなんか、やる前からうじうじ煩悶してた昨日の自分が情けなく思える。
 このカメラとアプリと、そして今は黙々とスパイダソリティアに夢中になってる人工知能妹がいれば、何でも出来そうな気分になってくる。

「お仕置きしてやりたいところだけど、やっぱりご褒美もあげないとね」
「え?」

 ギンギンに反り返ったペニスを、お尻ごしにチラチラと見せつけながら僕は言う。

「ちゃんと授業も出来たし、トイレでもちゃんと声を出したんだから、ご褒美はあげないと。でも、お仕置きもしなきゃいけないし。どうしようかな。マキはどっちがいい?」
「どっち……と言われましても、私はご主人様の思うままに……」
「マキに選ばせてあげるよ。どっちが欲しい?」
「あぁ、でも、私は、その、あの」

 ペニスと手のひら。
 視線を泳がせながら、彼女の頬は赤らみ、落ち着かなさそうにお尻は揺れて太ももがモゾモゾ擦れる。
 やがて、蚊の鳴くような声で彼女は言う。

「できれば両方いただけたら、マキは……嬉しいです」

 恥ずかしそうにおねだりする彼女の可愛さに、思わず口元が緩んでしまう。
 そして、ますますペニスが猛っていく。

「僕の奴隷は欲張りだな」
「あぁッ、すみません、ご主人様! 私、やっぱりお仕置きの方で―――」

 僕は黙って彼女の後ろに膝立ちになり、彼女のソコに照準を合わせる。

「お尻をあげて、マキ」
「あの、ごめんなさい、ご主人様、私はお仕置きだけでも……ッ」
「いいよ。両方あげる」
「あぁぁぁッ!?」

 ズズッ、とマキの中に潜っていく。
 きつい入り口を通り抜けると、一気に奥まで入っていって、壁につんとぶつかった。

「んんんっ! あっ、あっ!」

 そこに触れているだけでマキは感じてしまうらしく、びくびくんとお尻を痙攣させ、シーツに爪を立てた。
 あぁ、気持ちいい。そして何より、すごい幸福感。これがセックス。好きな人と繋がる喜びだ。
 でも、それだけじゃ僕らは満足できない。
 僕らのセックスは、2人の関係の確認でもある。

「まだだよ、マキ。次はお仕置きだから」
「あぁ、はっ、ご主人様、申しわけ、ありませんが、少し待って――」

 敏感な彼女は挿入されただけでもう軽くイッてしまっているらしく、小さな痙攣を続けながら僕を振り返り懇願する。
 でもダメだ。こんなに叩きがいのありそうなお尻が目の前にあるのに、おとなしく待つなんて出来っこないだろ。

 ――パシン!
 
 手のひらいっぱい彼女の肌が当たるように指を広げ、そして赤く跡を刻むつもりで叩く。

「きゃあぁぁッ!?」

 喉を反らせて彼女は叫び、そして膣をぎゅううと締めつけてくる。
 
 ――パシン、パシン!
 
 続けざまに叩く。
 何度も叩く。
 そのたびにマキは悲鳴を上げてお尻を緊張させ、そして僕のペニスに心地よい締めつけを送ってくれる。
 腰をゆっくり抽挿しながら、感触を楽しむ。
 マキのお尻。悲鳴。膣感。ご主人様冥利に尽きる体と従順さで僕に仕えてくれる奴隷を、思うまま貪る快楽。
 こんなの知ってしまって、僕は彼女から離れることなんて出来るだろうか。
 たぶん出来ない。マキちゃん先生は、これからもずっと僕の奴隷にし続ける。
 いつか彼女に僕の子どもを産ませたいって、本気で思う。

「あぁっ! んんっ! ごしゅじゅんひゃま、あぁっ、すごい、ご主人様! 私の中、えぐってる! 素敵、素敵ですっ、こんなお仕置き、こんなご褒美、もう、私、一生奴隷でいさせてください! だめ、もう、ご主人様なしでは、もうだめです、私! こんなの、こんなの教えていただいたら、もう、ご主人様のモノにしていただくしか、あぁ、何でも、何でもしますから、ずっとこれを、私に、この奴隷に、恵んでくださいませ! 私の、全てをお捧げしますから、どうか、どうか、ご主人様、あぁ、私を、可愛がって、ください、イジメて、ください、私を、あなたの穴奴隷に、してくださいぃ!」

 夢中になって腰を動かしているうちに、マキはベッドに上半身を沈め、お尻だけを突き出した格好でヒィヒィ泣いていた。
 乱暴なセックスなのに、彼女は何でも受け入れて喜んでくれる。きっと僕がこれからどんなことをしても、彼女は喜んで受け入れてくれる。
 僕は本気で愛されてるんだ。クラスの副担任に、美人な大人に、みんなのアイドルに。
 お尻に指を食い込ませて腰を動かす。自分勝手なセックスに没頭し、勝利感と征服感に酔う。
 僕の口から落ちたよだれが、マキのお尻にぽたりと卑猥なスジを描く。
 頭がボーッとしてきた。夢のようなシチュエーションと快楽に、

『お兄ちゃん、野獣のようなえっちしてるとこゴメンね? KARIN、ちょっと手詰まりっぽいの。スペードの6、どっち置いたらいいと思う?』

 マキのお尻に、スパイダソリティアの画面が浮かび上がる。
 痣でもなく、投影でもなく、皮膚に描いたようにトランプの図柄が並んでいく。
 そういや、このアプリには『肌補正』機能があったっけ。それを強化させたってことだろうか。KARINのやつが勝手に。

『どっち動かしても良さげなんだけど、次がないんだよねー』

 まだ組札が一つもない。山札は結構崩されている。
 KARINは場をよく見ないですぐに山札崩すからな。オープンカードばかり重ねてどうにもならなくなってから、僕にヘルプを頼んだりすることがよくあった。

「それにしても、今はよせよッ! これ本当にイライラする光景だ!」
『ごめんねー。でもまだどうにか逆転そうな気がするんだよー』

 マキのお尻にトランプが並んでいる。
 しかもスペードの6をチカチカ点滅させていて、すごい機能だなってちょっと感心してしまうけど、そんな機能をエッチの最中に使わなくたっていい。ていうかマジ勘弁して欲しい。

『お兄ちゃーん』

 いつもの猫なで声がイヤホンから響く。
 マキは何も知らずに、スケベな実況と僕への忠誠を織り交ぜて叫んでいる。
 興奮と苛立ちを、僕は右手に込めて叩いた。

「6じゃなくて、まずこの2をどけろ!」
「あぁん! 申しわけございません!」
『あぁん、そっかー。さすがお兄ちゃんだねー』

 伏せ札を塞いでいるハートの2の位置を思いきり叩く。
 マキは意味わかってないくせに泣きながら僕に詫び、KARINはのほほんとした声で感心する。
 ハートの2が移動して、伏せられた場札がオープンになる。6だ。

「こっちの6をここに移動!」
「あぁ、ご主人様、申しわけございません、申しわけございません、うあぁっ」
『あぁ、お兄ちゃん、さすがだよ、さすが。うぇーい』

 カードが次々に動いていく。本当に滑らかな表示だ。思わず引きこまれていく。

「K来たな、よし、これで一組完成!」
「ありがとうございます!」
『ありがとー。その調子で頼むよー』

 マキのお尻に浮かぶトランプをペチペチ叩き、スパイダソリティアSMつまりSSSMプレイを続ける。
 カードは次々に展開を変えていき、移動カードを尻叩きで指定するたびにマキは喜んで膣を締め付け、それをご褒美に僕もソリティアにはまっていく。
 なんなんだこのプレイ。まったく意味がわからない。もはやエロとも言えないしMCとも言えない。もしもこれをネット小説化するならばSSSMSSと略すしかないような奇妙な状況だ。
 それでもマキはご主人様に尻を叩かれながら犯されることを喜び、僕も彼女との濃厚な交わりと一人トランプゲームを楽しんだ。
 
「こっちの7をいったんこちらへ、そして空いたQの下にこっちのJを、すると8が空くから7をここに戻して、10の下に9を移動、さらに8をここに置いて場札オープンだ!」
「はぁん、ご主人様! もっと、もっと叩いてくださいぃ!」
『はぁーん、なるほどねぇ。お兄ちゃんはソリティアの天才だよねー』

 パチンパチンとマキのお尻が波打ち、キュッキュと膣が締まっていく。
 スペードのAがちょうど彼女のアナルの位置に表示されていて、それを動かすのがもったいないような気持ちになりながらも、ゲームはどんどん進んでいく。
 そして、僕の射精欲も比例するように高まっていく。
 同時にイこう。僕とマキとスパイダソリティア、みんな同時に達してやろう。
 変な目標を立ててますますセックスもゲームも激しくなっていく。めくれていくカード。大きくなっていく喘ぎ声。場が片付いていくにつれて、真っ赤になったマキのお尻がきれいに表示されていく。
 教師と生徒の奇妙なセックスはますます奇妙な事態になっていくのに、この体の美しさは逆に鮮明になっていく。
 どんな交わり方をしても彼女が僕のオンナで奴隷で、これからも僕が好きにしていい体であることは変わらない。

「あぁッ、すごい、すごいです、ご主人様! 私、もう、もう、気がおかしくなってしまいますっ。ください、私に、あなたの奴隷に、ご主人様の熱い精液をお恵みください! ご主人様の赤ちゃん液で、私の子宮を満たして、孕ませてください! ご主人様の赤ちゃん! ご主人様の赤ちゃん! あぁ、あぁ、欲しい、欲しい、体が、全身で、赤ちゃん求めてますっ。ご主人様のオンナになれって、私の子宮が、命令してるんです! あぁ、きゅんきゅんする、きゅんきゅんします! お願いです、ご主人ひゃま、あぁ、私、わたひ、ご主人様の精液欲しくて、体がおかしくなりそうですぅ!」

 僕は最高のセックスに恵まれた。最高の女性をモノにした。
 場札はどんどん減っていく。僕も射精寸前、そしてマキもさっきからイキっぱなしだ。
 僕もイク。もうすぐイク。
 Jをここに持ってきて、QとKと繋いで完成。残りはあと一組。待ってろよ、KARIN。もうすぐ揃う。もうすぐ出る。たっぷり出すぞ。マキちゃん先生の子宮に注ぐぞ。ソリティアのクリアと同時に僕たちは―――。
 
『お兄ちゃん、ソリティアあきたからキャンディクラッシュしていい?』
「ホント勝手なスマートフォンだな、どこ製だよウゥっ!?」
「あぁぁぁぁッ!?」

 絶叫ツッコミでイッてしまった。
 僕のキャンディたちもデリシャスなクラッシュを始め、マキちゃん先生のドーナツ(子宮口)まで降ってきて、僕のゼリーフィッシュたちがわらわらと群がり食べていく。という光景が見えた気がした。
 より深いエクスタシーに到達した彼女はお尻を突っ張らせて痙攣を始め、そのお尻上ではソリティアクリアの『おめでとう!』メッセージとトランプが飛び交い、アソコからはゼリーがシーツまで垂れていく。
 よくわからない脱力感と疲労に、僕もそのまま覆いかぶさるようにして、マキちゃん先生のお尻の上に沈んでいく。
 そこに、キャンディクラッシュの画面が浮かんだ。

『お兄ちゃん、見て見て。変なスイーツ出てきたっ』
「……どう見てもアナルだな」
『それはアナルだよ、お兄ちゃん』

 もう、妹相手に最低なボケしてしまうくらい、僕は疲れ切っていた。



「……あの、私、今度の土日は出かけてこようと思うんですけど、お許しをいただけますか?」

 2人でベッドで肌を合わせ、心地よい疲労感と満足に微笑みあい、そして学校のことや自分たちのことを話していると、唐突にそんなことをマキは言い出した。

「いいけど。僕の許可なんて別にいらないでしょ?」
「でも、その、やっぱりご主人様のそばを離れるときは報告と許可だと思うんです。奴隷的には」
「あ、そ、そうか。じゃ、えっと、許可する。いってらっしゃい」
「ふふっ、ありがとうございます」

 ぎこちない主従会話も少しずつ慣れてきて、2人のルールを作っていく過程も楽しく思えてきていた。
 ご主人様なのか恋人なのか自分たちでもよくわかってない部分もあるけど、ある意味、これが僕たちなりのイチャトークってやつなんじゃないかとも思う。
 それにしても、マキは休みを使ってどこに行くつもりなんだろう。

「高校時代の恩師に、ご挨拶しに行こうと思います」

 嬉しそうに微笑む彼女に、ようやく思い至った。
 ゴリラ先生。
 マキが教師を目指すきっかけとなり、そして初恋と罪悪感の対象だった人。

「本当は教師になったらすぐ行こうと思ってたんですけど、なかなか勇気が出なくて。その、私も教師になりましたって報告できる自信がなかったんです」

 失敗ばかりだった頃には会えなかったんだろう。
 少し恥ずかしそうにマキは僕の肩に顔を埋めた。

「でも、今なら会いに行けそうな気がするんです。お会いして、教師になったことを報告して……もう一度、ちゃんとお話ししたい人なんです」

 僕は黙って彼女の話を聞いていた。
 まだ濃厚にセックスの匂いを残すベッドで、彼女は、教師の顔になった。
 自分の責任と向き合える大人の女性に。

「そして……その、できれば、こ、恋人が出来たことも報告できればいいなって思ってるんですが、お許し願えませんでしょうか!」

 しかし僕の話になった途端、「たはーっ」と真っ赤になって、立派な教師の顔が、あっという間に蕩けた女の子の顔になった。
 心の奥がむずかゆくなるような甘酸っぱさに、僕も思わず口元が緩む。

「僕も一緒に行こうか?」
「い、いえいえいえ、それにはおよびません! その、一応、私もリア充してますってことを報告したいだけですので!」

 慌てふためくマキにますますニヤけてしまう。あぁ、可愛い。抱きしめたい。
 でもまあ、確かに生徒を連れてって彼氏だって報告するわけにはいかないよね。
 これからもマキと会うときは周りの目を気にしないといけないんだよな。そこは注意しないと。
 ちょっと真顔になっちゃった僕を心配したのか、マキは余計に慌ててすがりついてくる。

「あの、あと、これだけは誤解しないでほしいんですけど、相手は本当に尊敬する恩師で、変な気持ちはありませんから! 私、その、ご主人様が初恋ですから! 本当に!」

 ゴリラ先生に対する気持ちが恋だったことは、僕とKARINだけの秘密だ。
 自分自身の無意識下でストレスと不安になっていた真の初恋を、彼女は知ることはないだろうし、僕もきっと教えることはない。
 そのうちに彼女が自分で思い出し、気づいてくれればいいなって思ってる。ゴリラ先生と会って、話して、辛かった過去が良い想い出として清算できれば、いつか自分の気持ちに気づくはずだ。
 早くその日が来ればいいなと、嫉妬でも負け惜しみでもなく心からそう思う。たとえ僕が何番目の恋であっても、今の関係が変わるわけじゃないから。

「ご主人様が私の初めてで……最後の人なんです」

 潤んだ瞳に僕の顔が映っている。
 僕が唇を近づけるとマキも目を閉じて緩く唇を開く。そして互いの唇が触れる寸前、「あ、そうだ」と急に彼女は言ってベッドから出て行った。
 そして、カードとメモを持って戻ってくる。
 
「これ、この部屋のカードキーと暗証番号です。持っててください」

 つまり、合鍵? あのマキちゃん先生の、この部屋の合鍵?
 キス出来なかった不満もあっという間に吹っ飛び、いよいよ僕も彼氏みたいだなって思って、恥ずかしいのと嬉しいのでついついデレデレしてしまう。

「いいの?」
「はい。私がいないときも好きに使ってください。冷蔵庫に少し食べ物ありますし、現金はリビングのチェストの引き出しです」
「え、いやそんな情報までは……」
「使ってください。私のご主人様なんですから、私のものは何でも好きにしてくださっていいんです。他の女を連れ込んでくださってもかまいませんよ、ふふっ」

 さすがにそれは冗談だろって思ったけど、ニコニコとまっすぐに僕を見る彼女の表情には邪心のない本気しか見て取れなかった。

「私たちは恋人ですけど、主人と奴隷です。私がちゃんと奴隷になれてるかどうか、いつでも試してください。私も知りたいんです。この気持ちでどこまでいけるか。もっとも、私は自分を信じてますけど。どんなことがあっても、どんなことされても、私はご主人様の奴隷を全うするって」

 マキは、きらきらした瞳で僕を見つめて微笑む。

「私は、奴隷としてあなたと結ばれていたいんです。あなたにとっての女の1人で構いません。でも奴隷だけは、やめさせないでください」

 僕たちのハーレム計画の第一号。マキちゃん先生が最初のハーレムメンバーになった瞬間だった。
 いろいろあったけど、紆余曲折の意味が身にしみてわかった数日間だったけど、本当に彼女を選んでよかったと思う。
 彼女を好きになれてよかったって、心の底から嬉しくなっていく。
 
「マキ」

 僕は立ち上がり、彼女の肩を抱き、もう一度唇を近づける。
 
「大好きです、ご主人様」

 マキは目を閉じて、甘い吐息を吐いて唇を突き出す。
 そして、今度こそ―――キスをする寸前に、僕のスマホが鳴った。

「え、電話、誰から……あ、母さんだ」
「あっ、ど、どうぞ出てください」

 慌てて通話を押して、耳に当てた。
 でも、聞こえてきたのは母さんの声じゃなかった。

『ママがいつまでもイチャついてないで早く帰れって』

 ぶつっ。
 無愛想な一言コールで通話は切れる。
 ていうか、電話表示までいじるんじゃないよ。どこまで厚かましいアプリだよ。もう電話も信用できないじゃないか。

「えっとごめん。今日は帰るね」
「はい、そうですね……すみません、遅くまで引き止めてしまって」

 本当はもう一回戦いっときたかったけど、なぜかKARINの機嫌が悪いようなので帰ることにした。
 マンションを出てからも、KARINはずっと後頭部を見せてままだった。
 ウサ耳をタップしてつんつん揺らし、彼女の機嫌を伺う。
 
「なに怒ってんだよ?」
『怒ってないもん』
「いや怒ってるだろ」

 なんか、子ウサギたちもすみっこでプルプル震えているし。
 
『KARINが怒ってるように見えるんなら、お兄ちゃんにやましいことがあるんでしょっ』
「いやないよ」
『あるでしょ! 家で待ってるカリンを無視して、先生とばっかイチャついてー!』
「それで怒ってんの?」
『怒ってないっ!』

 いろいろと難しい年頃のアプリだ。
 とりあえず、約束どおりにカリンにアイスを買って帰ることにした。
 



「うそ、ガリガリ君リッチだよ!? なんで!? なんでカリンの誕生日でもないのにおごってくれるの!? なんか良いことしたっけ?」

 帰ったら僕の部屋で寛いでた妹に、買ってきたアイスを与える。カリンは嬉しそうにアイスを咥えて、僕の周りをぐるぐるする。
 スマホの中のKARINも、現実のカリンも、落ち着くことを知らないやつだ。

「嬉しいよぉ。お兄ちゃんはリッチでやさしーねぇ。一緒に舐めよ?」
「いいよ。カリンが全部食べな」
「んふふー、やだ。お兄ちゃんと食べるの」

 わがまま(?)言って、僕にアイスの棒を持たせて、顔をくっつけてくる。
 お互いの舌を伸ばして一本のアイスを舐める。僕が椅子に座っているから、カリンは膝の上は乗ってきた。そうして僕の首に腕を回し、キスするみたいにして舌をぺろぺろさせる。
 当然、アイスがなくなってきたら、ただのキスになってしまう。カリンはいつも以上に激しくアイスを舐め、齧り、あっという間に棒だけになったアイスは机に置いた。
 舌と舌を絡ませあうキス。兄と妹のするような代物じゃない。男と女の関係でしか交わされないキスだ。
 
「んっ、ちゅっ、ありがと、おにーちゃん、んっ、ちゅっ、お兄ちゃん、優しいから好きっ。ちゅっ、んんっ、ちゅ、好き、んんんっ」

 好き、という言葉が胸に響く。
 マキちゃん先生のこと、KARINのこと、ハーレムのこと。何も知らない妹にキスをさせている自分。
 こんな僕に無防備になついてくるカリンの前に、いろんなことがグルグル渦巻く。
 
「んっ、んっ、はぁ、んっ、はん、ちゅっ、お兄ちゃん、んっ」

 カリンの体が火照ってきているの感じて、僕は彼女の体を離した。
 なんだか、僕まで顔が熱くなっていた。

「ん、どしたの? もっとしよ?」

 小首を傾げて近づいてくるカリンの鼻を、僕はぶーっと指で押す。

「何するのー?」
「はい、キス終了。そろそろお風呂に入るから離れて」
「えー!? もうちょっといいじゃん。チューしよ、チュー。ね? ね?」
「だめ。キスは1日5分まで」
「足りないよ、まだまだ全然だよ。カリンに必要なチューは1日1時間だよー。ね、お願い、先っちょだけでいいから!」
「1時間もチューしたら唇が腫れるだろ。いいから、カリンも自分の部屋に戻れよ」
「ええー。お兄ちゃん、冷た~い」

 ぶー、とほっぺたを含ませるカリンは、まるっきり小学生の頃から変わらないように見える。
 アプリのKARINには本当に世話になっているが、こっちのカリンはそのことをまるで気づいていないし、相変わらず無邪気な子どもであることに安心すら感じる。
 でも、いつまでもこのままじゃいられないことはわかってる。カリンもそのうち、大人の女性になって僕から離れていくだろう。
 せめてそれまでは、兄として守ってやらなきゃって思うんだ。
 少し甘えん坊だけど、可愛くて優しい僕の妹。いずれ美しく成長した彼女の兄であることを誇りに思う日が来るだろう。
 人工知能を介したこの数日のドタバタの中で、僕はそのことを確信した。
 カリンは、きっとすごく「イイ女」になるんだろうなって。

「……なんか、お兄ちゃん変」
「変?」
「オーラが昨日までと違うというか……なに、余裕? 男子力? 前はもっとキスにも必死さとかハングリーさとかを感じさせていたはずなのに……」

 僕の顔を怪訝そうに眺め、クンクンと僕の匂いを嗅ぎ始める。
 口、首、胸元、まるで犬みたいにカリンは僕の体臭を探っていく。
 
「ッ!?」

 そして、いきなり顔を離したかと思ったら、みるみる真っ赤になっていき、慌てて廊下に飛び出していった。
 
「ママーッ! ママ、ちょっと来てーッ! お兄ちゃんから非童貞臭がするーッ!」
「うわぁぁッ、そんな容疑で母さんを呼ぶなぁ!」

 いつかカリンを誇りに思う日が来ると、さっき断言したばかりだけど撤回する。
 もう少し様子を見てから言おうと思う。



 夜、ベッドの上でカメラをいじる。
 部屋に僕を招き、服を脱いでいくマキの写真。アナルまでばっちり写っている。
 アプリの方に転送してKARINに見せる気にもならず、かといってPCに残すのもカリンに見られることになりかねないので、明日SDカードでも買っておこう。そして今度はフェラしてるとことかも撮ろうと思う。
 すごいカメラとアプリだ。予想外のナビゲーターまでついてきちゃったけど、僕の生活は間違いなく大異変を起こしている。
 ハーレムなんて夢のまた夢のはずだったのに、確かな一歩を今日僕は踏み出した。
 あと何人、僕は女の子をものにしてしまうんだろう。
 赤瀬川さん、会長、アオイ、チーちゃん、リサ先輩。
 アバターとして保存している女の子たちのほかにも、いくらでも美少女や美女はいる。
 興奮と不安と、罪悪感と期待で心臓がドキドキする。僕はこれからどんな学校生活を送るんだろう。
 きっと、エッチで楽しいことばかりだ。僕だけの特別な学校生活になるんだ。
 わくわくしてきて、そして興奮ばかりが増していく。

 ぴこりん。
 
 通知メッセージの音にドキリとしてしまった。
 熱くなったほっぺたを撫でながらスマホを覗くと、通知画面にKARINが緑色のアイコンを掲げて揺らしていた。
 
『お兄ちゃん、LINE来てるよー。コダマって人から』
「え、コダマ先輩から?」
『うん、写真部グループの人。あとアップデートが3件あったから、やっといたからね』
「あぁ、ありがと」
『べ、別に、ついでだったからだもん!』

 なぜツンデレ?
 ていうかなんとなく流しちゃったけど、なんでお前が通知画面にいるんだよ。本当にスマホを司ってるんじゃないよ、厚かましいアプリだな。
 そんなことより、コダマ先輩から連絡くれるって珍しい。僕からメッセージ送っても、どうでもいいと思えば楽勝で無視する人なのに。何かあったのかな。
 KARINの持ってるアイコンをタップする。
 先輩のからのメッセージは、相変わらず短い一言だった。
 
“撮ってるか?”

 最近はマキちゃん先生のことで一緒に部活する機会が少なかった。僕の写真を見てもらう機会もなかった。
 飄々としているようで、後輩思いの先輩だ。名義貸し程度のお気楽な顧問の代わりに、いつでも僕の頼れる指導者でいてくれる。部活以外の時間でも、部活以外のことでもだ。
 ありがたいことだと思う。そのぶん、ハーレムのことばかり考えて浮かれていた自分が恥ずかしくなるけど。
 
“撮ってます”
“見せてみ”

 厳しい顔したコダマ先輩が目の前にいるような気分になって、ひやりとした。
 もちろん、僕だってマキのスケベな写真ばかり撮ってるわけではなく、ちゃんと学校の様子や帰り道の光景も撮影している。
 でも、コダマ先輩に見せられるような出来のはなかなか撮れていない。
 最近のベストショットとして思い出せるのは、どうしたってあの時の一枚だけなんだけど、自信があるだけにコダマ先輩に見せるのは怖いような気がした。
 
“早くしろコタロー”

 モデルとカメラマンの関係。
 何より僕の被写体への想い。
 きっとコダマ先輩は、全部じゃなくとも、かなりの部分で僕の気持ちを読み取ってしまうだろう。
 でも。
 写真部の一員として、コダマ先輩の弟子として、今の僕が自信を持って見せられるのはこれだけだった。
 そして、どうせなら。
 恥ずかしついでに、恥ずかしいタイトルまでつけて堂々と晒してやろうかって、半ばヤケクソになって僕は送信した。
 
 数式で埋まった黒板。
 拍手と笑顔で沸き立つ教室。
 そしてその黒板の前で、満面の泣き笑いを浮かべる我らがマキちゃん先生。
 タイトルは――――『仰げば愛おし』
 
 それからしばらく、ドキドキして待ち続けた先輩からの返信は、一言だけだった。
 というより、言葉じゃなかった。
 
 親指を立てたスタンプひとつ。
 
 情けないことに涙がにじんだ。スマホを握りしめて、ほっと息を吐く。
 ハーレム作りなんて、だいそれたことを始めてしまった。これから僕の学校生活がどういう風に変わっていくのか、僕自身にも想像できない。
 だけど、先輩のLINEが勇気をくれた。僕のしていることはともかく、マキちゃん先生の笑顔に間違いはないって、僕の尊敬する先輩が保証してくれた。
 僕は僕らしいハーレムを作っていこう。
 大切な人たちと、これから出会う人たちと、へんてこな相棒と一緒に、誰ひとり不幸にならないご都合主義な物語を目指すんだ。

「だけどその前に……出てこい、KARIN!」
 
 先輩のスタンプに、返信ができなかった。
 僕のLINEスタンプが、全てKARINスタンプに改造されていたからだ。

< おわり >

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