囚われのたいきくん 1-2

1-2

 立ち上がってベルトを抜いて、制服のズボンを脱いで畳んで足元に置いた。
 そして下は下着のまま、また椅子に腰を下ろす。
 彼女も立ち上がって、僕の後ろに回ってきた。

「ねぇねぇ、今日のやつってさ、あれでいいんだよね? 先週やった、内接する円の半径がなんたらかんたらってやつ。しかしたいきくんは頭いいからいいよねぇ…。……それに」

 そこまで言って、彼女は深く息を吸い直した。

「……私が何をしても、それは宿題のお手伝い…。だから安心して身を任せよう…。宿題、早く終わらせなきゃだもんね? だから、私が手伝ってあげる……。安心して私のすることに身を任せるよ……。必ずその通りにする……」

 彼女は後ろからしなだれかかってきて、耳元で囁くように僕へと語りかけてくる。

「えっと……、そうだね、先週のやつ。ちょっと考えればそんなに難しくないからさ」
「頭いいってのには沈黙の肯定かー。優等生はさすがっすなぁー」
「そんなことないよ。別に優等生じゃないし……」
「……たしかに、優等生はすぐこんなに硬くしないかもねー」

 後ろから寄りかかったまま、彼女は下着越しに股間を撫でさすってくる。

「そうかな? まぁ、いいや……、んっ……」
「……ふふ、体のほうはしっかり期待しちゃってるんだぁ?」

 彼女のひんやりとした左手が、竿を扱き撫ぜていく。
 そんな下半身を下に見ながら、僕は数学の宿題を進めていく。

「……っ、…ふぅ……。よし、一問目出来た。………っはぁ……」
「”たいきくんは”一問問題が終わる事に、……感度が上がっていくよ、ほら」

 いつの間にか今度は彼女の右手が、学ランの第二第三ボタンの間から服の中に入ってきていた。
 右手はそのままワイシャツのボタンもするりと外し、さらに深く潜り込んで乳首を弄リ始める。

「……ぅん、………っはぁ、……ふ…く、……」

 どんどんと股間に熱が溜まっていく。

「どんどん硬くなってきたねぇ。……あ、先っぽからヌルヌル出てきた。うわぁやっぱりネトネトする~」

 右手も一度胸から離して僕のその先から出てきたのを両手にこすり付け、彼女は『気持ち悪~い』なんて言いながら指をペタペタさせてはしゃいでいる。
 そうこうする内に二問目が終わり、三問目に取り掛かる。
 でも、そこで離れていた手がまた僕のそれに添えられて―

「――ふぅっ!!」

 全身にまるで強い電流が走ったみたいだった。
 先程とは違ってヌルヌルした感触が広がり、なんだか変な感じがする。

「うわぁ、すっごい熱くなってるねぇ……。特にこの先っぽとか」
「くぅ……っ!」

 あぁ、字が崩れちゃった。消さないと……。

「もう、ダメじゃんせっかく手伝ってあげてるのに~」
「ご、ごめん」
「ふっふっふ、謝ってもだーめ。おしおきだよ?」

 消しゴムをかけようとしたところに、また耳元で彼女の囁きが聞こえた。

「ほら、意識だけ元に戻る」

 パン、と乾いた音が聞こえて、……聞こえて―

「え? あ、……う、うわあああああああ!!」

 待って、なんで! これ、ちょっ、……何が!?
 いきなりのことに頭が回らない。

「何がって、さっき言ったでしょ? ただのおしおきだよ」
「おしおきって、そうじゃなくて! いったいなんなんだよこれ!!」

 思わず力んじゃって変にうわずった声が出た。
 今すぐにズボンを持ってトイレにでも逃げ込みたいのに、
 なぜだか、体が……動かない。

「そんな慌てなくても、別に私何もしないって。それで、今たいきくんにはね、私の催眠術にかかってもらってるの」

 催眠、術……? そういえば、お昼になんか言ってたような……。

「今うちに誰もいないとは言っても、男の子に暴れられたらさすがにか弱い女の子としては困っちゃうからさぁ、ちょっと大人しくしてもらってるんだ。……ごめんね?」

 彼女は僕の後ろからもたれかかったままで、時折からかうように耳に吐息を吹き掛けてくる。

「そんなこと言われても、いいから早くこれ解いてよ!」
「そんなに体が動かないのがこわい? いや、普通にソレを隠したいか。……すごいカッチカチになっちゃってるけど」
「なんでもいいから、早く!」
「だから慌てなくても大丈夫だってば。そんなことよりさ、宿題しなくちゃなんじゃないの?」
「そんなことって、もういい加減に―」
「たいきくんはそんなことより宿題をしないといけない。何がなんでもやらなくちゃならない。ああ大変だ、早くやんないと!」

 そうだった。催眠術なんかかけられてすっかり忘れてた。
 早く術を解いてもらわないとだけど、それよりも宿題をやらなくちゃいけない。

「ああもう、さっさと宿題終わらせるから、そしたら解いてよ!?」
「まったく、たいきくんは私が何しようが宿題をやらないといけないの!」
「そうだよ! わかってるならちょっと黙ってて!」
「へーい」

 彼女がちょっかいを出すのが好きなのはわかってるけど、こういうときくらいはほんとに勘弁してほしい。

「……えっと、この問題は……、……ぅぐ……っはぁ、…うぅっ!」

 彼女は案の定、さっきみたいにまた僕のを擦りはじめる。
 そして空いたもう片方の左手で首筋をゆっくりと撫で上げ、終いにはその人差し指を口の中に入れてきた。

「んんっ、……えぁ…………うぶっ……」

 ヌルヌルが苦いがそんなこと構ってはいられない。
 なんとか四問目が終わり、最後の五問目に取りかかる。
 字がよれよれだがどうでもいい。
 もう少しで、宿題が終わる。

「お、あと一問だー、すごいね。……まぁすごいのはこっちもか」

 そう言って今度は左手の平で先っぽをぐりぐりしてくる。
 体が熱い。首や股のベトベトが気持ち悪い。
 でも、それももう終わる。五問目は簡単な証明問題だった。

「もう終わりそうだー。それじゃ、たいきくんは宿題が終わるとまた意識だけ元に戻るよ。でもまた体は全然動かない、さっきの状態に戻ります。絶対そうなっちゃうよー」

 ……よって、題意は満たされた、っと。

 ふぅ、やっと終わった、………え?

「あ、あれ? なんでズボン脱いで……、え、ちょっ、何これ!? 体が動かない!」
「うん、やっぱりたいきくんはかかってる時のことを覚えてないタイプだよね」
「いや、何言って、っていうかこれなんなの!?」
「ふっふっふー、何を隠そう、これこそが催眠術なのだ!」
「ちょっと! ぐっ……そこ触っちゃ! やめ…うぅっ!」
「ずっと軽く弄ってただけだったからぐりぐりいいでしょ? 宿題と一緒にこっちも捗っちゃって、ふふっ、ビクビクしてるね」

 優しげな口調とは裏腹に、彼女の手は積極的に扱き上げてくる。

「でも、私がするのはここまで。あとはたいきくんが好きなようにしていいよ。……ほら、たいきくんはもう体が動かせるようになるよ。そう、たいきくんはいつもみたい体が動かせるし、いつもみたいにオナニーするの。だってすごいムラムラしてるから。いつもエッチなモノ見てる時みたいにすごいムラムラしてるから、いつもみたいにオナニーをしちゃう」

 …………いつも、……みたいに……。

「あれ、どうしたの? いきなり寝そべって」
「…………」
「あぁ、たいきくんって寝そべってしてるんだ。……にしても他人ん家のリビングに寝っころがって堂々と自家発電って、なかなか大胆だねぇ。そうだ写真撮っとこ」
「ふぅ……っはぁ……はぁ……」
「はいチーズ! ……うんうん、いい感じに撮れてる。けどいつもなんて暗示のせいかぼうっとしちゃってるのはものたんないなぁ……。いやこれはこれでありかも……?」
「……んっ、……っふぅ…………」
「ほらたいきくん、いいものをあげるぞー。嗅いでみて? すごくいい匂いがするよー。鼻に当ててね、深呼吸するとぉ……幸せな気持ちでいっぱいになっちゃう。ほら、すごいいい香りでしょ?」

 そう言いながら彼女は、自分のパンティを手に取らせ彼の鼻先に押し付ける。
 勿論今はいているものではなく、洗いたてのものだ。

「うわーすごい見た目だねぇこりゃあ。ヤバさマックスですなぁ。……パシャりっと」

 スマホには女の子の家で下半身を露出し、鼻に少女モノの下着を当てて自慰に及ぶ、どこからどう見ても変態野郎の姿が鮮明に写し出されている。
 眼がおぼろげなのがまた陶酔感を表わしていて、『引くわー』って感じである。

「これで一切覚えてないってんだから、あーもうたまんない。動画も撮っちゃお……」

 下半身が疼く。
 彼は、今起きている異常を何一つ認識できていない。

「しかしけっこうイカないもんなんだなぁ。早そうな癖して意外と遅いのかな? それとも具体的にオカズがないせいで達しないのかな?」

 体が熱い。
 男の人の熱が、凄まじい勢いが伝わってくる。

「またいったん意識が戻ってくるよー。でも身体は動かせない。全身力が抜けて動かせない。……3、2、1、……はい!!」

 ついでに肩をゆすってあげると、ちゃんと覚醒できたようで彼はまた慌て始めた。

「私、たいきくんがこんなにも変態さんだなんて知らなかった。ドン引きー」
「ちょっと待って、なんでこんな……っ!?」
「ちょっと部屋に戻ってる隙に私のパンツ握りしめてそんなことしてるなんて、ほんと最低。ツイッターにでも写メアップしちゃおっかな?」
「待ってってば! 本当にごめん、自分でも覚えてなくって! お願いだから許して…」
「じゃぁなんで私のパンツ握りしめておちんちん出したまま動かないの? 謝るなら謝るなりの態度ってものがあるんじゃない?」
「なんでって、身体が動かなくって……!! 本当に、ごめん。なんでもするから、だから許して……!!」

 彼は寝そべったまま泣きそうになっていて、たまらなく背筋がゾクゾクとした。

「おちんちんって、お父さんのしか見たことなかったけど、そんなになるんだね。すごく気持ち悪い」

 そう言って彼女は手を伸ばして、爪の先でいきり立つその棒の天辺をこすった。

「んん……!!」

 細い指に、白濁とした粘液がふりかかる。
 彼女はそれを少年に見せつけ、崩れた顔にこすりつけた。

「ねぇ、なにこれ? なんか出てきたんだけど、これってせーえきだよね? いっちゃった? いっちゃったわけ? 私の手汚れちゃったんだけど、どうしてくれるの? ねぇ?」

 体が熱い。
 心臓がバクバクとなっている。

「ねぇ……、だまってないでなんとか言ったらどうなの? この、変態」

 ぎゅっと閉じたまぶたに彼の精液をなすりつけていく。
 彼の唇に、鼻に、とろっとした粘液を塗りつけていく。

「……さて、こんなところでいいかな? わかってくれたかいたいきくん、レディを手ひどく扱うと痛い目をみるんだってことが」
「へ……? なにが……?」
「”ルフナの香り”」

 そう言っただけで、精液だらけのままの彼の顔から力が抜けた。
 さすがにやり過ぎたかと精液を拭ってやる。
 使うのは握らせていた下着だ。とくに不快感はない。
 大方拭き取れた後、しっかりとウェッティで拭きあげる。
 自分の指についたものまで綺麗に拭き取ると、次はカーペットに垂れたものを
 ティッシュで拭いた。

「ちょっと暴走し過ぎちゃったかなぁ……。これもたいきくんが可愛すぎるからいけないんだよ……。私は悪くないもーんだ」

 いざ立ち上がってみてそこで初めて、彼女は下半身のぬめりを感じた。
 ついつい内股に足をよじると同時にくちゅりと音がして、思わず赤面してしまう。
 だが、自分のことよりもまずは後片付けをしなくてはならない。

「……たいきくん、聞こえる? 今、たいきくんは下すっぽんぽんだよ? 風邪引いちゃうとよくないからパンツとズボンをはこうね? そうしたら―」

 いくつかの暗示と記憶の操作を行い、解けないようにと祈りながら彼を覚醒させる。
 覚醒させると言っても暗示下のままだが。

「ん、たいきくん起きた? もう、勉強するにしても夜更かしは良くないぞー。勉強のし過ぎを中和するためにもゲームをしよう! 宿題終わったしね!!」
「あ、あれ……、もう終わったの? 思ってたより早いね」
「思ってたよりだなんて失礼な。それほどまでに私は燃えているのだよ! この雪辱を晴らさんがために!! さぁだからゲームをするのだー」
「ちょ……待って―」
「まーちーまーせーんー!!」

 少年は腕を取られ、引きずられるようにして彼女の部屋へと運ばれていった。

< つづく >

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