営業活動記録 File1-3

File1 監視カメラ①(後編)

 僕はいつの間にか、呼吸が荒くなっていたのに気付いた。薫が僕の目の前で大胆にM字開脚している。
 こんなに雌の色気を出している薫は初めて見た。

「どうかこの雌メイドをお使いください……」 

 薫は両手をおまんこに当てて少し広げる。僕に見られているだけで興奮しているみたいで、顔は淫らに赤くなっている。
 秘所から一筋の蜜が流れた。僕はそれに引き寄せられるように彼女の指の中に顔を寄せた。
 一口すする。

「あっ……あんっ♪ お姉様っ、前戯は不要でございますっ! はぅ……んっ」

 舌を奥の方まで入れた。しとどに流れ出る愛液からは彼女の言葉通り、すぐに入れて欲しいと強請られてるみたいだ。

「はぁぁぁ……お姉様、お上手です……薫、イっちゃいます……」

 僕は顔を上げて、薫の顔を見た。
 薫は恍惚とした表情で、左手の人差し指を軽く口で挟んでいる。

「あっ……お姉様……ください……お姉様のおチンポ様、ください……」

 僕はもう我慢できなくなって薫を押し倒した。
 うまい具合に頭に枕がくるように調整していたらしい。薫は青い枕の上に頭を乗せ、熱い吐息を吐いた。
 僕は彼女の豊満な胸を揉み砕いた。彼女は声を抑えることもなく、寧ろ僕に聞かせて更に興奮してもらえるように喘いでいるようだ。
 僕がおっぱいから手を離して今度は腰部分に手を当てると、待ってましたと言わんばかりに足を大きく広げる。
 
「はぁぁ……はぁー……お姉様……」

 期待に満ちた目で、潤んだ瞳で僕を熱望する薫。
 僕は薫とは舞女時代に何度もセックスしてるけど、ここまで反応がいい薫は勿論初めてだ。
 直接見なくても、挿れる場所は手に取るように分かる。

 腰を改めて強く持つと、一気に奥に入れた。

「あ……あぁぁぁぁぁああああああ!! おねえさまあぁあぁぁぁあああ!!!」
 
 絶叫だ。僕の肉棒がぎゅうううっと締め付けられる。
 僕だってスイッチが入ってからは、ずっと焦らされていたようなものだったから気を抜くとすぐに射精していそうになる。それに舞女の上級生は皆、性技が卓越している。なぜなら卒業後に裏工作をするにあたり男を篭絡させるには女の武器を使うのが一番手っ取り早いからだ。
 女生徒は普段の授業から自主学習に至るまで、男を悦ばせる術を勉強している。生徒一人一人にペニバンやディルドも支給されているのだ。如何にターゲットを気持ちよくさせるか、興奮させるか、快楽をコントロールして主導権を握れるかは男を傀儡するにあたって重要な事の一つだ。

 そんな学園のトップオブトップは当然そっちの技も在学生中ナンバーワン。僕は強く目をつぶって押し寄せる波を押しとどめ、収まったところで薫の雌穴を乱暴に突いた。OGの僕だって簡単に負けるつもりはない。
 一突きする度に叫び声を上げてアへ顔を晒す僕の薫を見ていると、また頭の中でスイッチが切り替わる音が聞こえてきた。

 カチ、という時計のような音が再び脳内に響く。

 すると、どす黒い感情が滲み出てきた。
 薫はぼくの……俺のモノ。誰にも渡さない。凄まじい独占欲が俺を襲った。 

「イグっ! イッちゃう!! おねえさまイッちゃいますぅっぅぅぅ!!!」

 主人の許可なく勝手に逝こうとしている。不快だ。おねえさま、と呼ばれるのも何故かすごく不愉快。

「だめだ!! 俺が逝くまで絶対逝くな!」
「はいいぃぃいぃぃ!!!」
 
 俺に命令されるのが嬉しいのか、薫は乳首をビンビンに立てている。
 薫はシーツを強く握りしめた。全身に力を込めているのが分かる。俺の命令どおりにイカないように我慢しているんだろう。
 
 そして俺と言った途端、更に薫が欲しくなった。薫がより”異性の女”に見えてくる。
 彼女をずっと独占していたい。
 俺はピタリと動きを止める。

「あはぁぁぁぁぁぁ……おねえさまぁ……」

 激しくして欲しいのか、薫は膣を締めたり緩めたりして、肉棒に刺激を与えてくる。
 でも動いてやらない。さっきから女扱いされることに、俺は酷く嫌悪感を覚えていた。

「これからは俺をお姉様じゃなくて、せめて兄様と言えよ。女扱いされんのは嫌だ」

 悠様の口調より更にぶっきらぼうに言ってやると薫は幸せの絶頂という顔から、一気に血の気が引いたような顔に変貌した。

「あ……あああ……」

 その顔を見ているとゾクゾクする。
 俺は興味なさげに薫を見た。軽く舌打ちをする。

「んだよ。抜いて欲しいのか?」

 俺がわざと腰を引こうとすると、泡を食って腰回りを両足で挟み込んでホールドしてきた。

「ちがっ……違います詩奈兄様! 出来の悪い妹で申し訳ありません!!」
「お前男より女、姉の方がいいんだろ?」 
「ちがいます!!」

 ぶんぶんと頭を振ると、俺の手を必死に握った。

「姉がいいのではなくあなたがいいんです! あなたのためだけに私は生きているんです!! どうか! どうか薫を捨てないでください……お願いです……。私はどうしようもないほど馬鹿で、あなたのおちんぼ様もまともに気持ちよくできない愚図です。でも! あなたが私の全てなんです! どうか…………」

 ぽろぽろと涙を流す薫。いい。いいよ薫。ゾクゾクする。
 俺は手で薫の涙を拭ってやった。そのまま頬に手を当てて、少し背伸びして口づけをする。

「え……?」

 突然冷たくされたと思ったらキスされる。上に下に振られる感情に追いついていない様子。

「お前は俺でいいのか? 女みたいな童顔で高い声なのに。しかも俺とか言うんだぞ?」

 薫は首を捻り、何を言っているのか分からないという顔をしてみせる。

「私は詩奈兄様の物です。兄様が殿方として扱われたいと言うのなら、薫は兄様に従うだけです。それに」

 少し興奮した様子で、続けてぼそっと口にした。

「とっても可愛いらしい御顔と御声でそんな男口調をされたら、ギャップでときめいてしまいます……」

 凛々しい姉御肌の面影が全くない甘い声、雌の顔をしているのが藤原薫なのだとしたら、可愛らしい顔と声の面影がない、雄の顔をしているのが天城院詩奈なんだと思う。
 今の自分の顔を鏡で見たわけじゃないけど、絶対雰囲気が男よりになったと確信を持って言える。

 だって、こんなあからさまなぶりっ子に嵌ってしまってるんだから。
 
「にいさま? そんな目で薫を見ないでください……」

 薫は潤んだ瞳で俺を誘う。

「薫、発情してしまいます、んんっ!!?」

 俺は薫の瑞々しい唇を塞いだ。
 腰の動きも再開し、唇を離すと強く膣を叩き始める。

「あっ、あっ、あっ! 兄さま! 兄さまぁ!」

 俺を姉ではなく、完全に兄として男として受け入れてくれる薫。それがとても嬉しかった。
 さっきのように雑に叩くんじゃなくて、愛情を持って荒々しく薫の弱いところに叩き込む。最初は俺の様子を窺うように喘いでいた薫も30回も突けば本気の喘ぎ声が出てきた。

「あ゛っ!? そこっ! んおお゛っ!? しゅごっ! さっきよりしゅごいぃぃぃ!!」

 もう俺は射精を我慢するつもりなんかさらさらない。

「にいさま! っ!? くる!! にいさまのくるぅぅぅ!! かおるもイグ! イギますぅぅ゛ぅ゛!!」

 俺の限界を感じ取り、薫の肉壺が俺の精液を搾り取りに来た。
 
「きてぇえぇえええぇええええ!! イッグぅう゛う゛っぅぅぅぅ!!」

 耐える意味もない。俺は薫の奥に男の欲望を吐き出した。 

 
「……あ……あはぁ…………ぁ…………」 

 案の定というか、薫は思いっきり気絶した。
 考えてみれば神様みたいな存在(だと思ってる相手)とまともに喋れて誘惑して、普通にセックス出来る薫も中々に常人じゃないなと思った。

「あー。鏡花達も洗脳しないといけないのに……」

 早く薫を起こさないと。

「兄貴、その服カッコいいぜ!」

 妙に距離が近い。生まれ変わった俺専属のブラコン不良妹、薫は、俺の背中に抱きついて頬ずりしてくる。
 今着たばかりの男物のシャツを褒められる。

 エロイ手つきで俺の体をまさぐってくんな。脱衣所で。

「折角風呂入ったばかりなんだからこれ以上はもうヤらないよ」
「もう一発ぐらいやろうぜ? 兄貴をもっと気持ちよくさせる自信あるし」

 すっかり不良口調に戻った薫だけど、これは俺のリクエストだ。
 イケメンな金髪美少女の薫の外見に似合うのは、やはりこっちの口調だと思う。

 舞女の制服に身を包んだ薫は相変わらずゆるゆるな恰好で、俺にいちゃついてくる。

「さっさとこの家出るぞ。早く有栖に香奈枝に鏡花を3人も洗脳しなきゃいけないんだから」

 ぶっきらぼうな口調がしっくりくる。自分でも驚きだが人が変わったみたいだ。
 そして背中越しに感じる大き目な膨らみが強めに押し付けられた。
 コイツブラしてないな。

 耳元で囁かれる。

「別に明日でも良くね? もっとお前の妹を味わえよ……」

 そのままキスしにくるけど、俺は薫の顔を押しやり離れる。

「悠様のためにアイツらの記憶も戻さないといけないから。早く行くぞ」
「ちっ。兄貴の想い人のためなら仕方ねーな。安心しろ! 私が一肌脱いでやるよ!」

 薫には改めて俺の主人の事、屋敷の事を大雑把に説明した。
 こんな口調してるけど、俺が一番に愛してるのは……言うまでもないよな?

 そしてこんな不良口調なのに、嫉妬もせず、あっさりと俺の一番を諦めている薫。
 これは仕方ない。なぜなら。

「薫」
「あ?」

 薫は眉を吊り上げ、けんか腰になった。膝を落としてメンチを切るように上目遣いをしてくる。

「”戻せ”」
「……はい。詩奈兄様♪」

 そのままうっとりとした上目遣いに表情を一変させた。

 なぜならお淑やかなブラコン妹メイドの薫が、今の素なんだから。カッコイイ雰囲気が一転して甘ったるい空気に変わるのが面白い。

「どうやって一肌脱いでくれるんだ?」
「はい、薫にお任せください。既に三人を一か所に集めさせています。個別に思い出してもらうよりも、早く楽に済むでしょう」

 いつの間にそんな事を。俺の役に立てて、嬉しにそうにくすくす笑う薫。

「私、兄様の自慢の妹メイドですから♪」

 薫は淑やかでいながら目の奥に強気な意思の強さを感じさせる、典型的な舞女学生の顔つきをした。 

「私は三人から嫌われていようとトップオブトップ。舞女において姉に逆らえる妹なんて存在しません」

 そんな強気な彼女は俺にだけはぽきりと折れる。絶対服従の証とばかりに両膝をついて、俺の足先にキスをした。

「んふ……ちゅ……。……さぁ……参りましょう。舞専女子高等部のクラスルームへ。あなたの妹達が待っています」

 薫は姫を守るナイトのような優雅さで、俺の手を取った。

―――――――――――――――

 俺たちが舞女の学園に着くと、薫は俺にこう言った。

「兄様、今は春休みだから校内に生徒はいませんが教師はいます。私が追い払いますので、しばらく御隠れください」
「俺は死ぬのか」
 
 軽いボケを挟みつつ、俺は真面目に考える。
 今の薫の命令に背けるのは学園で二人だけ。教頭先生と校長先生だけだ。この二人が邪魔してくるようなら俺が前に出る。だけど俺が前に出ることで下手に騒ぎになっても困る。なぜなら、俺がいることがバレたら一斉に忘却暗示がかかる可能性があるからだ。
 そういう訳で当面は薫に任せることにした。

「そのまえに、分かってると思うけど口調は昔に戻せよ? 下手に騒がれたくない」
「もちろんで……当たり前だろ。私は藤原薫。悠様を盲信する愚かな雌メイドだぜ」

 そう言い放った薫は首尾よく先生達を教職寮に追い払う。余りの手際の良さに感服した。俺が靴から来客用のスリッパに履き替える間にもう薫は3人ぐらい追い払っていた。
 薫は速攻で教頭室に入室する。俺もこっそり後ろについて、部屋のすぐ側に待機した。
 彼女たちの声が漏れてくる。

「今までどこにいたんだ馬鹿者! 今日は始業式の打ち合わせだから遅れるなと言っただろう……が……」

 な、懐かしい。

 教頭先生の大伴 凛(おおとも りん)の声がする。気付かれないようにこっそり部屋を覗いてみた。
 凛先生はふかふかな一人用の黒の革椅子に背筋を伸ばして浅く座っている。冷徹な表情で薫をしかりつけていた。

「凛センセ。悪ぃけど今日はVIPが来てるんだ。大人しく帰ってくれねー?」
「……!」

 俺の記憶の中ではいつもクールで冷静な教頭先生は、叱りつけている最中から目を丸くして驚いているようだった。凛先生は黒髪ボブの、武人肌で綺麗なお姉様である。確か今年、31歳だっけ? 凛先生はいつも白の対丈を着ている和服美女だ。校長先生と共にずっと舞女を支えてきた初代OGにして歴代5番目の美女。
 当然1・2・3位が俺達で、4位は校長である。

「そうか。巫琴には私から伝えておこう。もう行け」
「話がはえーな。まだ何も言ってねぇぞ」
「この学園でお前を洗礼出来る奴は私と巫琴ぐらいしかいない。そして巫琴が何の相談もなく突然私と同格になぞさせるわけがない。VIPとはつまり、悠様のお屋敷からどなたかいらっしゃっているのだろう?」

 色んなことを完全に看破されてしまい、思わず苦笑している様子の薫。
 舞女きっての才女は、薫の雰囲気から自分と同格の存在になったと瞬時に気付いたらしい。校長、御京院 巫琴(ごきょういん みこと)の右腕として15年以上この学園に尽力しているのだ。こんな頭の可笑しい学園を、外部に一切気付かれることなく運営し続けてきた手腕は伊達ではない。

「同格とは久しぶりに会うからな。ゆっくり話したい気持ちはある。だがその御方を待たせてるんだろう? 早く行け」

 しっしと追い払う素振りを見せる凛先生。
 本人には悪いけど、あの厳格な凛先生が俺に会ったらどうなってしまうのか、猛烈に気になってしまった。

「久しぶりですね、教頭先生。相変わらず怜悧な美人で羨ましいです」
「あーあ。私が全部捌こうと思ってたのによぉー」

 という訳で迷いなく、ノックもせずに教頭室に入ってしまった。
 むくれている様子の薫。勿論今の薫は演技をしているだけなので、本当の感情、リアクションは別だろう。

「え……」

 目を見開き、驚きの表情を浮かべる凛先生。

「お…………おお、お久しぶり……です、天城院様、本日は、いかが、なされましたか?」

 ビシ! という音が聞こえるぐらい畏まる凛先生。
 彼女は豪華なイスに座っていたけど、俺の姿を目に入れた途端勢いよく立ち上がり直立不動になる。
 目に見えて緊張している様子だ。

 それもそのはず、凛先生からしたら俺は超格上の存在だからな。

「凛先生は他みたいに記憶を失わないのか?」
「ひゃ……! は、はい! 学園において悠様との繋がりは最低限必要でございますから! 私と巫琴の二人だけは忘却スイッチの対象外なのです!」
「おー、それは知らなかったぜ」

 俺も知らなかった。俺が知らないだけで凛先生や巫琴先生はお屋敷の人と懇意なのだろうか。

「それじゃ凛先生は怜様達と話したことがあるの?」
「い、いえ! 奥方様方はこんな年増豚に構っていられるほどお暇ではありません。お屋敷の皆様と連絡を取り合っているのは巫琴です。私は洗脳電波装置の簡単な維持管理をするために、忘却スイッチの対象から外れているに過ぎません」

 冷静に考えてみればそうだ。舞女側にも洗脳電波を管理する人間って必要なんだよな。あのハカセ様がまともに管理するとは思えないから。

 凛先生を苛めてあげるのもいいけれど、鏡花達を犯す分の体力もあるからスルーしてあげる。運が良かったな。

 俺たちは改めて巫琴先生に話をしておくよう伝えて、校長室に向かう。
 1分歩いて次の目的地に着いた。なんでこんな周りくどいやり方をしているかと言うと、俺のミッションはあくまで鏡花達と薫を洗脳することだけ。他の舞女関係者に関しては何も言われてないのである。

 下手に他の人たちを洗脳して、後でお仕置きを食らうのは嫌なのだ。いくら薫が教師を追い払ったって、誰も来ないとは限らない。
 そういう意味で校長の巫琴先生に話を通しておけば、この学校を自由に使える。心置きなくクラスメート達と向き合えるってわけ。

「お待ちしておりましたわ。大伴よりお話は伺っております」

 薫と一緒に校長室に入ると、校長の巫琴先生が出迎えてくれた。
 部屋の配置に既視感を覚えたけど、これ、悠様の部屋と同じだ。家具まで同じ。
 どうぞ、と黒の高級そうなソファーに誘導されたので、俺たちは遠慮なく深々と座った。
 巫琴先生はガラスの机を挟んで向かいのソファーにお行儀よく座る。

「薫の指示どおり、有栖達は3学年の教室で待機しているようです。ここから歩いて2分ですのですぐ着くでしょう。施術中、万が一にでも周りに邪魔が入らないように私達が見張っております」

 隣に座っている薫は少し緊張しているようだ。彼女にとって格上が目の前にいるから仕方ないのかもしれない。

 御京院 美琴。どこか神秘的な雰囲気を身にまとう彼女の身長は俺よりかなり低い。多分150㎝ないだろう。赤目のツリ目が妙な色気を出しているが、見た目は完全に10歳ぐらいのお嬢様だ。手を出したら完全に犯罪という外見。髪型は黒髪ロングストレートで、前髪を分けて額の中央部分を出している。黒のケープに中はグレーのカーディガン、そして白のワイシャツを着こんでいる。そして胸元には赤いリボンを付けている。スカートは黒基調で、縁に白いギザギザがくっついていて、細い脚は黒タイツに包まれている。

「話が速くて助かる。じゃあ、早速……」

 俺が薫に引かせていたキャリーケースからSRを取り出そうとすると、薫が止めた。

「待て兄貴。校長、どうして私達が鏡花を洗脳すると知ってんだ? 私達は教頭にんな事言ってねーぞ」

 巫琴先生は見下したような笑みを浮かべた。

 巫琴先生は昔からそうだ。格上の俺相手だから丁寧な口調をしているが、本当の彼女は勝気で自信家で傲岸不遜な性格をしている。でもそれが許されるほどの圧倒的な知能、美貌(童顔に美貌というのが適当かは分からないが)、先見性を備えている。

「あら、賢いわね。ええそうよ。私は貴方達の目的も方法も知っているわ。私はちょっとした未来を視れるのよ」

 現役生の頃に聞いたことあったけど、まさか未来視の噂が本当だったとは……。

 でもムカつく。圧倒的格上の俺に対して、なんてことない顔して対峙しているのが気に食わない。 
 凛先生は俺にペコペコだったからある程度満足したけど、生意気な巫琴先生……巫琴は調教したくなる。

「巫琴、フェラしろ」
「お断りしますわ。私の純潔は悠様に捧げると決めてるの」
「ふーん。いいから脱げよ」
「はっ」

 巫琴はせせら笑った。この女、俺相手にも素を出してきた。

「断る。私は貴方の物じゃない、悠様の物よ。貴方と私はせいぜい常務と執行役員程度の上下関係に過ぎないわ」

 長い髪をたなびかせ、足を組む。威風堂々と構える巫琴。

 むむ。このロリババア手強いな。
 俺が口を開きかけると薫が高級そうな机の上に、かかと落としをした。
 凄い音が鳴ったから机のガラスが割れるかと思った。ていうかヒビが入っている。

「兄貴の命令が聞けねーのかよ、なめてんじゃねーぞゴラァ!」
「悠様のご命令が私の意思。私は貴方達に指図されるような矮小な存在ではない」
「……それは兄貴への侮辱と受け取っていいんだな?」

 今にも殴り掛かりそうな雰囲気の薫を手で制す。

「……なら今回のミッションは強力してくれるんだな?」
「悠様直々の勅命なのだから当然よ。貴方に全面的に協力します」
「そうか」

 ならいいか、と俺は思ったが、薫はどうもそうじゃないらしい。
 薫はこそこそと俺に喋る。

「おい兄貴。コイツをSRで洗脳しちまおうぜ」
「駄目だな。巫琴は俺達の命令を聞かない。巫琴にSRを被らせる術がない」
「そんなの私がノしてやればいいだろ?」

 指をぽきぽき鳴らす薫。俺たちの会話が良く聞こえたようで、巫琴も相変わらず上から物を言ってきた。

「辞めなさい。貴方も大切な貢ぎ物なのだから傷物にしたくないの」
「まるで自分が勝てる前提なのがムカつくな、やってみなきゃわかんねーぜ?」
「くすくす。かかってらっしゃい、踊ってあげる」

 巫琴が立ち上がった。
 彼女から醸し出される異様な雰囲気に似た雰囲気を俺は知っている。怜様や優子様が本気を出す時の独特な空気感と同じだ。
 
「多分この女ハッタリじゃなく強い。薫じゃ太刀打ちできないと思う。だから薫、もういい」
「ぐ……兄貴が言うなら…………」

 薫は渋々引き下がってくれた。

「いい判断ね。ほら早くしないと悠様が待ちくたびれてしまうわ。私は念のため巡回に出ますから、この部屋は好きに使いなさい」

 最後まで高飛車な巫琴は俺に近寄り、耳元に口を寄せてきた。

「せいぜい頑張ってくださいませ、詩奈お兄様?」

 巫琴は満足げな表情を浮かべて、部屋を出ていった。 

「はぁ……」

 食えない女がいなくなり、俺は思わず一息ついた。今度こそγとεSRを取り出した。
 εは全て青色のVRで、右耳付近にローマ字で番号が振り分けられている。
 俺はγを被り起動し、3体のεも起動した。

 すると目の前の風景が変わり、3体のεの映像が届く。今回は映す先が同じなので、映像は一体分だけ届くように設定を変更する。任意で通常の目の前の風景も見えるように設定する。

 ε、見た目は完全に青色のVRなのに、なんと俺の意思にあわせて自動で動いてしまう。
 どういう構造で動いているのかさっぱり分からないが、とにかく滑るようにして移動できるのだ。ゴ〇ブリかよ。

「それじゃ、行け」 

 俺が呟くと、3体は俺の脳波から行き場所を感知して校長室を出ていった。

――――――――――――――――――――――――

「おっそい!! 何やってんのあの馬鹿!」
 
 最初のイライラ娘は三条 有栖(さんじょう ありす)。彼女の特徴を一言で言うと、低身長ロリ巨乳だ。舞女の平均バストサイズFの巨乳に童顔。茶髪は地毛で瞳も茶色。毛先を顎のラインに合わせたショートボブはその幼い顔立ちを更に魅力的にさせている。身長は巫琴より3、4㎝は高い。なんとも低次元の戦いだが。

「落ち着いてくださいませ有栖お姉様。お可愛い御顔が台無しですわ」

 次の窘め娘は西園寺 鏡花(さいおんじ きょうか)。彼女は生粋のお嬢様気質で舞女らしい舞女学生。つまり普段はお淑やかだけど、かなり気が強い。怒る時は黒髪ロングが逆立ってる気がして本当に恐い。綺麗な赤い目が怖い。三人娘の中では一番背が高い……が薫ほどではない。

「…………」

 最後の無言小説熟読娘は葉室 香奈枝(はむろ かなえ)。紫がかった黒縁の眼鏡を掛けている。黒髪ロングストレートは腰まであり、鏡花よりちょっと長めだ。舞女学生は黒髪ロングの娘が多いのである。彼女も可愛いらしい華奢な童顔だが、意外と身長は高い。161㎝ほどで悠様とほぼ同じくらいだ。
 そして彼女の最大の特徴は乳が貧しいこと。俺がいた時舞女では珍しいBカップだった。今もそのサイズ感は変わっていないようだ。

 三人とも薫と同じ舞女の制服に身を包んでいる彼女たちは、薫のような緩々な恰好ではなくきちんと着こなしている。

「あんたは何でそんなに落ち着いて小説読んでられんのよ! 来週始業式よ?! 準備で忙しいってのになんで待機させられなきゃいけないの!!」

 有栖が、無言で小説を読んでいる貴重な眼鏡っ子の本を取り上げた。
 急に読むものが目の前から消えた香奈枝はムッとした様子。黄色い瞳を有栖に向ける。

「有栖ねーさま」
「何よ」
「薫おねーさまに会いたいからってうるさい」

 クール系貧乳美少女は結構毒舌だ。こんなんでも三人ともしっかり悠様には屈服しているのだろうから舞女の教育は恐ろしい。
 図星をつかれたのか、カーッと顔が赤くなる元気系勝気美少女。

「はぁ!? 誰があんな女に会いたいって??? 裏切り女の顔なんか二度と見たくないわ!」
「有栖お姉様、薫お姉様が裏切ったのなら、トップオブトップのままでいられる筈ありませんわ。冷静になってくださいませ」

 鏡花が諫めようと、有栖の肩を掴んだ。その拍子に鏡花の大きな胸が揺れた。
 鏡花のおっぱいは俺が会った女の中で一番デカい。っていうか最後に会った時よりまたデカくなってる。それに胸下まである流れるような黒髪ロングストレートとルックスは、二次元から飛び出てきたみたいだ。そんな綺麗系お嬢様が西園寺鏡花である。
 
「いーやぜーったいおかしい。いつか尻尾つかんでやるんだから」

 有栖が地団駄を踏みながら苦々しい顔をする。
 対照的に鏡花がにこやかな顔を浮かべた。

「全舞女学生の模範となるべきトップオブトップがそんな愚かな事、するはずありませんわ。悠様への背信行為など舞女としてあるまじき行為です。もし本当に薫お姉様が裏切ったのなら、鏡花は絶対に許しません。楽に殺しはしませんわ。とっっっても苦しみながら、自分の過ちに懺悔し続けて苦しみ逝っていただかないと。うふふ」

 中々に恐いことを言ってのける鏡花。悠様の物になりた過ぎて学園中に姉を作った伝説のびっちは、実はこの子だったりする。

 普通ならドン引きする彼女の発言だけど、二人は当然といった風に頷く。

「どうかん。でも一昨年からずっと同じ事ばっかり言っててもうあきた」

 香奈枝の髪はとてもよく手入れされていて、昔からサラサラ濡れガラス。また触りたいなぁ。今度は異性として下心満載で触りたい。

「当たり前でしょ? あたし達は悠様の雌メイドなんだから」

 この学園の生徒で薫の次にルックスのいい子は? と聞かれたら迷いなく有栖を推すレベルで可愛い系の美少女。歴代6番目のルックスと言っても過言ではない。
 だけど俺が在学していたときの有栖は出来の悪い子だった。昔は俺たちの後ろを申し訳なさそうにくっついてきた不肖の妹だったのに、今となってはこの態度のデカさ。変われば変わるものだ。

「まぁ俺が全員上書きするんだけど」
「兄貴、かっこいいぜ!」  

 薫が俺に抱きつき褒めたたえてくれた。

「で、誰がセカンドになるんだ? もう卒業式終わったからランキング更新の時期だろ、やっぱり鏡花?」

 俺はεからの映像、音声を確認しながら、横にいる薫に問いかけた。

「鏡花? ……ああ、兄貴が転校する前は鏡花が私達の次にランキング高かったもんな」
「その言いぶりは鏡花じゃないんだな、ってことは香奈枝か、無口だけどポテンシャルは高かったもんなぁ」
「兄貴、分かってて言ってるだろ。鏡花が有栖お姉様っつったろ?」

 薫もΔSRを被り、映像を共有している。εの盗撮モードならΔでも受信できるようだ。
 その薫が口を尖らせて結論を言ってしまった。

「やっぱり俺の幻聴じゃなかったのか……」

 すぐに悠様に恋してしまう、あのダメダメな有栖がなー。
 
「兄貴が転園直前に頭撫でたことあったろ? それで有栖、覚醒しちまったみたいなんだわ」
「有栖がセカンド、か……、あ、あれ?」

 ε越しに、全員が特待生バッジを付けているのが見える。薫は面倒がって付けてないけど、皆の胸元に弁護士バッジに近い形状のボタンを付けている。

「どうした兄貴?」
「みんな、特待生になったのか?」
「ああ、そうだぜ。兄貴も含めてウチの学年は5人全員特待生だ。私らの世代は豊作なんてもんじゃねーな。サードの鏡花と、フォースの香奈枝も、去年の今頃から順位動いてねーんだぞ」

 俺が転園する前、鏡花17位じゃなかったっけ……。
 たった半年ちょいで、上級生を追い抜かしてトップ4独占とは。

「とりあえず皆の現状は分かった。それじゃあ薫、任せられる?」

 俺が彼女たちに直接顔を見せたら暗示が入ってしまう。だからεを被せるのは現状薫任せなのだ。

「もっちろん! 私に全部任せてくれ兄貴!!」

 俺に抱きつく力を強める薫。
 俺はお返しとばかりに薫の撫で心地のいい頭をニ、三度ぽんぽんと叩いてあげた。

「あふ……」

 うっとりとした様子でΔSRを外す薫。
 そっと俺の頬に口づけをして、Δを手に持ちふらふらと校長室を出ていった。

「さて、どうなるかな」

――――――――――――――――――――――――

「おーっす。おつかれー」

 堂々とドアを開けて教室に入った薫。大丈夫なのかそのテンションで。

「……! ふん……」

 有栖は薫を見て頬を少し染め、顔を反らした。
 有栖はイスに座ったままだが、彼女とは対照的に鏡花と香奈枝が勢いよく立ち上がり、薫を取り囲む。

「薫お姉様、待ちかねておりましたわ~」
「薫ねーさま早く準備しないと間に合わない」

 しかし香奈枝は薫と目を合わせず、薫の袖をぞんざいに引っ張り外で連れ出そうとする。
 逆に鏡花は薫と目をしっかりと合わせ、抱きつき、唇を重ねた。

 鏡花は薫より身長が低いが、差は5㎝もない。鏡花が少し顎を上げれば簡単に届く距離だ。

「ちゅ……」

 最初は軽く重ねる程度のキスだったが、次第に感触を味わい尽くすかのように顔を動かす。鏡花の表情からは何かを確かめている様子なのが読み取れる。
 
「ん……ふふ。好き。大好きです。今日も大好きでしたわ」

 僅かに離れ、薫の水気のある部分の唇を舐めとり淫靡に笑った。
 やっぱり鏡花が一番怖い。自分の体を実験に、記憶が飛ばないか、本当にまだトップオブトップなのか実験したのだ。
 三者三様の反応を見せるクラスメイトに対して、相対する薫はいつもの事のように平然としていた。

「うおぉぉ……。俺だったら絶対嫌だこの空間……」

 実際に見るまではなんだかんだ言って、薫の事が好きな有栖達が頬を膨らませて不機嫌になっている程度を想像していたけど、予想以上の不仲ぶり。三人と薫との間にバチバチ電流が走っているみたいだ。

「うぃしょっと」
「……チッ」
「ちょっと話があるんだ。聞いてくれ」
「かしこまりましたわ。薫お姉様」
「チッ」

 薫は香奈枝をお姫様抱っこをすると、元々座っていた場所に再度座らせた。有栖も嫌そうに顔をゆがめ舌打ちをしたが、意外だったのは香奈枝も隠れて舌打ちしていたこと。
 普通お姉様にお姫様抱っこなんかされたら嬉し過ぎて感じてしまうんだけど、香奈枝は何とも微妙な表情をしていた。

「何でしょうか」

 セカンドとして、一応三人の代表なのか有栖がそっけなく聞いた。

「ああ、被って欲しい物がある」

 そう言うとεを通してチラッと俺にアイコンタクトをしてきた。

「薫、この空気で出していいの!? ……ぐっ。信じるぞ」

 何の策もない真っ向勝負。俺は凄まじく嫌な予感を感じつつ、先ほど薫が開けたドアからSR三体を侵入させた。
 薫はなんてことない顔して、堂々とεSRを三人に見せつける。悪く言えばゴキブリ、良く言えばスノボーのように滑りながら移動する妙な機械。当然VRの事を知らない世間知らずのお嬢様達は怪訝そうに見つめた。……VRを知っていても怪訝そうに見つめるだろうが。

「何よこれ。いくら姉の命令だからってこんな物騒なモノ被る訳ないじゃない」
「同感ですわ。お姉様が規則を破るのは勝手ですし、それを咎めるつもりもございません。ですがわたくし達に規則を破らせようとするのであれば、拒否いたします」
「これ使って、何させるき……?」

 口々に反対の声が挙がる。当然の反応だろう。
 だが薫は努めて冷静な様子でこう言った。

「これはSRと言います。”天城院 詩奈兄様”の素晴らしいお考えを刻み付けていただける素敵な洗脳アイテムですわ」

 勝利を確信したかのようにニコリと笑って三つのεを持ち上げ、大切そうに撫でた。

「……お、おい! そんな事言ったら……あああ!!」

 俺は思わず立ち上がったが既に遅かった。ε越しに映しだされたのは。
 
「あんたその名前はまさか!!!」

 有栖も立ち上がり机を蹴っ飛ばした。そしていつかの薫と同じように詰め寄り胸倉を掴んだ。  

「悠様申し訳ございません。申し訳ございません申し訳ございません申し訳ござ」

 鏡花はこの先の展開が読めてしまったのか、既に目を虚ろにして口早に懺悔している。

「……い……いや……っ」

 耳を抑え、机に突っ伏する香奈枝。
 ほどなくして三人の身体から力が抜ける。虚ろな表情となり、ゆらりと立ち上がる。
 元々立っていた有栖は薫から手を離し、下がった。

「「「……私は偉大な悠様のメイドを知ってはならない。下々の私は雌、私は雌私は雌雌雌雌雌雌雌雌。私は悠様の忠実なメイド。悠様のために生きるメイド悠様専用のメイド悠様悠様悠様悠様…………!」」」

 薫とほぼ同じ文言を唱えて忘却に入った。

 その瞬間薫は素早くεを三人に着けて回った。

「そ、そんな無茶苦茶なやり方アリかよ……!?」

 もしかしたら忘却中に触られたら殺すよう仕組まれているかもしれない。
 忘却中に不穏な行動を取られたら殺すよう仕組まれているかもしれない。
 何がトリガーであの悪夢と同じ結末になるか分かったもんじゃないのに……。ハラハラしながら薫を見守った。
 俺が映像を通して見ている一体のSRが鏡花に付けられた。
 俺の視界は虚ろな目をしている鏡花しか映らなくなったから視界を通常モードに切り替えた。

「これで、よし……と。詩奈兄様。ご足労いただけますでしょうか」

 それでも音は拾ってくれているようだ。すっかり素に戻った薫から呼び出しを食らった。
 果たして大丈夫だろうか。こ、殺されてないだろうか。

 駆け足で教室に飛び込むと机やイスが無造作に端に避けられていて、丁度中央の位置に鏡花達3人が力なく突っ立っていた。成功してしまったようだ。

「詩奈兄様っ!」

 いつの間にかΔを被っている薫が飛びついてきた。
 褒めて褒めてと言わんばかりに甘えてくる薫に軽い興奮を覚え、ご褒美を兼ねて彼女の口に舌を入れた。

 しばらく濃厚な接吻を楽しんで口を離す。

「はぁ……。……兄様、三人はウェイトモードに入っております。今しばらくお待ちくださいませ」

 薫はイスを持ってきて俺を座らせた。薫はいそいそとγSRを俺に付け始め、付け終わると起動させる。
 そして薫は後ろから抱きしめてきた。俺に彼女の胸の感触を楽しみながら、改めて目の前の光景を見た。

「やっぱり鏡花の掛かりが一番深いな」

 鏡花は既に直立不動状態。白い光が消えている。

「………………………………」
「私は、白い光を集中して見る。私は、白い光を集中して見る私は、白い光を集中して見る私は白い光を集中して見る私は白い光を集中して見る私は白い光を集中して見る」
「私は…………しろい光を……集中してみると……気持ちいい…………私は…………しろい光を……集中してみると……気持ちいい…………」

 ほかの二人はまだブツブツと呟いている。人によってかかり具合に差があるようだ。先に鏡花で遊んであげよう。

 ところでεはΔからは命令できるけど、γからは命令できない。この仕様が意外と面白い。
 どういう事かというと、俺の被っているγからはΔにしか命令を送れない。だけどΔからはεに命令を送ることができる。俺からεへは直接命令を送れないけれど、Δを、薫を通してなら送ることができるんだ。
 εはΔを被っている人間との信頼関係がないと使えない代物だけど、徹底的に堕とした薫ならどんな命令も嬉々として自分の命令として送り出してくれるはず。

 俺の目の前に文字列が並ぶ。

 ・ハブモードを起動しますか?

 俺は無言でタップする。

「あっ……」

 後ろから吐息が漏れた。
 すっ、と薫が直立する気配がした。
 薫は既に二度ウェイトモードになっている、これであっという間にウェイトモードだ。

 ・ハブモードの移行に成功しました。
 ・文字を書いてください。
 ・それともウェイトモードからシンクロモードに移行しますか?  はい

 薫をハブにしているから同時に薫含め四人一気に書き換えることができる。
 でも、まだウェイトモードに入れていない有栖と香奈枝に命令をかけても無駄……どころか下手に刺激を与えてしまうと覚醒しかねないので、二人を命令から外した。

 それじゃあ早速鏡花には俺の事を思い出してもらおうか。

 ”悠様の存在を忘れさせるほどの洗脳がしたい!”/p>

 俺がそう強く願うと、薫を通して鏡花のSRのバイザーが白く光った気がした。
 俺の目の前に、再び文字列が並んだ。

・隠しモード(Ver.ハブ)が解除されました。ラストリモートコントロールモードに移行する場合は、次に表示される文章を、強い意志を持って叫んでください。

「”ラストリモードっ!”」

 表示された文章をノリノリで叫んだ。同時に、俺の事を思い出せ、と強く願った。
 鏡花のバイザーから、Δと同じ触手型のコードが出てきた。黒色のコードは容赦なく鏡花の耳を犯していく。
 別に鏡花の痛がる姿を見たいわけではないので、事前に痛みを快楽に変換するよう願った。

「……ふぅっ……んっ……んっ……」

 鏡花の吐息が熱を帯びていく。
 ばちっ、ばちっ、っと電流が流れる音が聞こえる。
 悠様の存在を、そして忠誠心を消し去るのではなく、あくまで俺を思い出してもらうだけだからか、先ほどの薫のような酷いことにはならないみたいだ。

「はあっ……はぁー……はぁー」

 時折身体がビクつき、その度に悩まし気な音が漏れた。時間にして1、2分程度だろうか。すぐにコードが収縮し、バイザーの中に納まった。
 鏡花と感動的な再会……の前に、悪戯をしてみよう。

・舞女の暗示を一部上書きし、天城院詩奈の記憶を呼び戻すことに成功しました。
・ラストリモードからシンクロモードに移行しますか?  はい

 シンクロモードの移行をタップ。視界が一気に暗くなる。
 シンクロは薫の思考、そして薫を通して鏡花の思考を直接上書きすることが出来る。

「西園寺鏡花は、金縛りにあったかのように、声は出せるけど動けなくなる。俺に触られる度に薫への罪悪案が強くなっていく。あと藤原薫は鏡花に謝られる度に鏡花を性的に苛めたくなる。鏡花と薫はこの暗示を覚えていないけど、心の奥深くに刻まれて、絶対にその通りになる」

 先ほどみたいに文字を書くのではなく、意識を強く持ち口に出した。

・成功しました。ナップモードに移行しますか。はい
・Δのみ、ナップモードに移行しますか。はい
・続けて、命令を重ねますか。
・設定を保持してゲームを終了し、アーリーモードに移行しますか?

 暗闇に白い文字が浮かび上がった。

 俺は、薫だけナップモードに移行する。
 ここら辺の機能は前と同じで、ナップモードはすぐにシンクロモードに戻れる。
 香奈枝はともかく、有栖はまだ時間がかかりそうだから引き続き鏡花で遊ぼう。

 俺の目の前が明るくなり、意識のない鏡花達が目の前にいるのを確認する。

「薫、クリア」
「はい兄様」

 俺は後ろに立っていた薫に一声かけた。
 クリア、というのは視界をクリアにしろ、という意味。今のままでは鏡花の視界は真っ黒だから、俺の姿を見えるようにして欲しいのだ。
 ついでに薫の視界もクリアにしてあげた。これはただ念じればそうなってくれるので楽。

「兄様、ありがとうございました」

 薫は俺の正面に回って腰を90度に曲げる。
 ただ視界をクリアにしただけでそこまで感謝されても。そんな俺の気持ちを知ってか知らずかこう続けた。

「詩奈兄様のこと、鏡花に思い出させていただきましてありがとうございました。これで私、また皆と仲良くできます」

 あ、そっちか。確かに今の今まで、薫にしてみれば針の筵だっただろうしなぁ。
 俺は立ち上がり、薫の体を起こして抱きしめる。

「薫、今までゴメン。辛かったよな」
「兄様……」

 少し涙ぐんだ様子で、俺の抱擁を受け入れた。しばらく抱きしめると、俺たちは鏡花の目の前に立ち、鏡花をシンクロモードからナップモードに移行させた。

「ん……ふ…………!!」 

 鏡花の瞳に生気が戻る。俺の姿を視認した途端、目を見開き、口が半開きになる。

「あ……あぁあぁぁぁぁ…………」
「久しぶり、鏡花。元気してたか?」
「鏡花、詩奈兄様よ? 私達のお兄様。思い出せた?」

 鏡花の目から涙がぽろぽろと落ちてくる。その顔にはやや疑問符がついていた。

「……詩奈……兄様……?」
「ん。今は兄として、男として扱われたいんだ。つーか俺じゃなくて、何か薫に言うことはない?」

 俺は鏡花の大きすぎる胸を揉んだ。両手で揉んでも優に余る大きさだ。寧ろ俺の手が埋もれている。
 鏡花は俺に揉まれ出すと、チラチラと薫に目線を向け、申し訳なさそうな表情をする。

「んふ……。はい……。あ、あの薫お姉様。今まで失礼な態度を取り続けて申し訳ございませんでした。なんとお詫びすればいいか。あっ、詩奈お兄様そんな強く揉まれたら、いけませんわ……」

 薫は鏡花に謝られると、ぴくんと反応した。
 鏡花の背中に回り込み、俺と一緒に胸に触る。薫は乱暴に制服をはだけさせ、ワイシャツのボタンを外した。紫の大きなブラが目に入る。薫がブラジャーを外し、後ろに放り投げた。
 
 薫はSっ気たっぷりに鏡花の右耳を甘噛みした

「いいんですよ鏡花。悪いのは私です。兄様を慕うばかりに覚えてはいけない御方を覚え続けた私が悪いんですから」
「あふぅ……薫お姉様、だめです……鏡花は耳が弱いんです……っ……え……身体が動きませんわ……?」
「鏡花は罰として、しばらく俺たちにもてあそばれること。分かった?」
「は、はい……かしこまりましたわ……詩奈お兄様、薫お姉様、本当に申し訳ございません…………んはぁ!?」

 薫の目が妖しく光り、鏡花の耳をすすった。

「鏡花の耳美味しいです。鏡花、詩奈兄様はあなたのおっぱいに興味があるみたいですよ? 教えてあげなさい。この牛乳(うしぢち)は何カップに成長したんですか?」
「う……詩奈お兄様……嫌いにならないでくださいませ……じぇ、Jカップです……」

 涙目になりながら答える鏡花。嫌いになんてなる訳がない。俺は鏡花の大きすぎるメロンおっぱいに顔を埋め、鏡花の大きなお尻を撫でまわした。女性特有の甘い香りが俺を包む。

「お兄様! 鏡花のおっぱいお気に入りになられましたか? ぁ! もっと、もっと鏡花に溺れてくださいませっ! ああ……申し訳ありませんでした……ふぁぁぁ!??」

 薫は左手を太ももへ。そして右手でスカートの中をいやらしくかき混ぜた。

「あら? どうしてココがくちゅくちゅ鳴っているんですか? 鏡花は大好きな詩奈兄様と大嫌いな薫に触られてそんなに興奮しているんですか?」
「あっ、んあっ!? お兄様、お姉様、だめですっ! お二人の事お慕いしております、申し訳ございません。申し訳ございませんっ! ああぁぁあ!!」
「兄様、鏡花の準備は既に整っているようです。ほぉら」

 俺はいったん彼女の巨大な肉乳から離れた。その様子を見た薫は鏡花のスカートをたくし上げる。そこに現れた濃い紫色のショーツはそういった行為に慣れた、大人の女性の色気を感じさせる。
 薫はショーツを降ろした。透明な液が糸を引いて切れる。淡い茂みの奥に縦筋の割れ目がうっすらと見えている。

「お姉様いけませんわ……こんな、無理やりだなんて駄目です……」
「嫌がってない癖に。兄様の熱っついの、欲しくて仕方ないんですよね?」
「そ、そんな訳ありませんわ……」
 
 薫は鏡花の腰辺りまでしゃがみ、両手で鏡花の両足を肩幅より広く開けさせ、膝を軽く曲げさせた。俺が挿入しやすいように身長に合わせた形だ。そして両手を股間に持ってくると小陰唇を開いた。
 そこは既に、受け入れる体制が完全に整っていた。薫は鏡花の勃起し皮がむけているクリトリスを優しく触りながら、ゾッとする甘い声で命令をした。

「鏡花、お強請りなさい」
「んっ、ふっ、ふぅっ! はい! はいお姉様ぁ!」

 薫は何度も鏡花を責めているから彼女の弱点を知り尽くしているのだろう。
 一瞬で鏡花を色欲に沈めた薫は少しずつ指の動きを早めていく。

「お兄様くださいませぇ! 鏡花はお兄様のおちんぽ様が欲しくてたまりませんわぁぁぁ!! あああっ!」

 そのまま果てそうな鏡花はしかし、薫の見事なコントロールのお陰でギリギリで逝かせてはくれなかった。
 俺はズボン、下着を脱ぎ、彼女の奥にあてがった。対面立位だ。

「挿れるよ」
「きて! 来てくださいませ! あっ、ああああああああ!」

 俺は一気に奥まで挿入した。襞がまるで意思を持っているかのように熱く締め付けてくる。まさしく名器だ。

「鏡花、鏡花っ!」
「申し訳ございませんっ!! ぎもぢいいです! 申し訳ございませんっ!!」

 相変わらず身体が動かない鏡花は首を左右に振り、ロングの髪を振りながらされるがままになっている。立ち上がった薫はうっとりと俺を眺めながら、その手は再び鏡花の豊満な乳部をこねくり回してる。

「可愛いです鏡花。もっと感じなさい、もっとお兄様と悠様のモノになるんです」
「申し訳ございません! 申し訳ございません! すごいですわぁっ!! 悠様の雌になるぅぅう!」

 鏡花は出し入れする度に俺たちに謝ってくる。連鎖反応で薫は更に激しく鏡花の弱点を責めた。
 鏡花の焦点が徐々に虚ろになっていく。限界が近いようだ。

「”シンクロモード”」

 あえてシンクロモードに移行した。
 二人は瞬時に無表情になっていく。膣も全く動かなくなる。俺は自分のモノを抜く。

「薫は俺と同じぐらい鏡花に恋する。鏡花は意識が戻ると右足がバレエのように垂直に上がる。そうすると俺のチンポを受け入れた時すぐに逝きそうなぐらい感じる。二人は俺に逝けと言われないと絶頂できないし、俺に逝けと言われたら強制的にイク。”ナップモード”」

 どうやらタップせずとも声だけで反応してくれるらしい。最初から声で操作すれば良かったと若干後悔した。

「……今のご命令は……!? …あ、本当に脚が勝手に……?!」

 鏡花は戸惑う。勝手に右足が真上に上がっていくのだ。鏡花は別にバレエや体操を習っているわけではないはずだが、顔の横に足がくっついた。

「いたいです! お兄様! 痛い痛いっ!!」
「鏡花、大丈夫です。痛いのなんてすぐ忘れちゃうぐらい、気持ちよくしてあげますからね! ちゅ!」

 鏡花が目から涙を溜めている。顔を真っ赤にした薫が勢いよく鏡花にがっつき唇を重ねる。先ほどよりも丁寧に愛撫を続けて痛みを和らげようと快楽を与えていた。

「もっと気持ちよくなるからな」

 薫は唇を離して、鏡花の髪に顔を埋めた。
 俺はバレリーナのような鏡花の中に入れた。片足上げ対面立位だ。

「んおっ!? おおおおおおっ!!?」
「鏡花、可愛い……好きです。鏡花、薫の事ももっと見て……」

 鏡花は絶叫した。上は薫がキスの嵐、下は俺が何度も何度も突き上げる。脚の痛みなどとうに忘れたかのように快楽に溺れているようだ。薫は胸や乳首を激しく弄りだす。

「イグッ! イグイグイグっ!! お兄様イグゥゥゥちゅうっぅぅぅぅ!!」
「鏡花好き好き好き私の事もっと見て! ちゅうっぅ!」

 鏡花は絶頂寸前だ。でも俺が命令をしないと逝けない。鏡花は白目を剥きながら二人の愛しい人に激しく愛されていた。

 俺も限界だ。二人の頭を掴み俺の顔に近づけ、可愛い妹達の耳に口を寄せた。
 鏡花の最奥を突く。射精感に身を任せた。

「”逝け”」
「ゆう゛さ゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!」
「兄様っ……! ……っ!」

 薫が激しく身を奮わせて、へなへなと床に座り込んだ。
 俺の精を全て飲み込んだ鏡花は身体を動かすこともできず、首が折れたかのように真後ろに倒れた。鏡花が一番に敬愛しているのが虚像の悠様だから、絶頂の瞬間誰に思いを馳せるかというと悠様なのだろう。

「……兄様ぁ、すごかったですぅ……」

 薫が四つん這いになって俺の足に頬を擦り付けた。

「おぉぉ……ぉ……」

 鏡花は壮絶な表情のまま気絶してしまったようだ。俺は彼女を床に寝かせて、有栖と香奈枝の様子を見る。

「と…………もー……ど……」
「…………」

 二人とも先ほどの乱痴気騒ぎなど気にすることがないかのように、直立不動していた。
 俺の様子を上目で窺っていた薫が声をかけてくる。

「詩奈兄様、ようやく有栖の準備も済んだようです」
「だな。”シンクロモード”」

 視界が闇に包まれた。気絶状態でも暗示にかかるか疑問だが、早速暗示を入れてみよう。

「鏡花は気絶から目ざめる。目覚めると身体は自由に動けるようになり、有栖と香奈枝の洗脳を嬉々として手伝う。”ナップモード”」

 視界が開けた。薫は立ち上がり、俺の右肩におっぱいを押し付けた。両手を回して俺の左肩を優しくつかむ。

「兄様、そんな命令しなくても変わらないと思いますよ?」
「念のためだよ。念のため」

 そして床に倒れていた鏡花の目に光が戻る。
 緩慢な動きで床に手を突き、俺の姿が目に入ったようだ。

「詩奈お兄様……」

 先ほどの薫と同じように四つん這いになりながら俺の足元まで来た。彼女が動くたびに大きすぎる胸がぷるぷる振動している。

「鏡花はお兄様のモノです。ご自由にお使いくださいませ」

 鏡花は綺麗な土下座を披露すると、俺が履いているスリッパをぺろぺろと舐め始めた。

「それじゃあ鏡花、有栖と香奈枝の記憶を取り戻してもらうけどいいね?」
「れろ……勿論ですわ。沢山お手伝いいたします」

 その恍惚とした表情に嘘はないだろう。

「鏡花、立っていいぞ。薫の逆側に立て」
「かしこまりましたわ」
「詩奈兄様は当然だけど、鏡花も可愛いです。またいちゃいちゃしましょうね?」
「はい、薫お姉様。更に鏡花を可愛がってくださいませ……」

 俺はハブの接続先に香奈枝と有栖を再追加し、意識を集中させて念じた。

「”ラストリモードっ!”」
「外から見るとこうなっていたのですね。面白いですわ」
「ナップモードからラストリモードを起動すると意識がそのまま残るみたいですね」

 鏡花と薫は意識が残っているようだ。クラスメートのバイザーからコードが伸び、耳に侵入する様を他人事のように眺め面白がっている。

「お前らもああだったんだからな?」
「はい、詩奈兄様。とっても素敵でした。もっと兄様のモノにしてください」
「わたくしも! 鏡花ももっとお兄様のモノになりたいですわ!」

 横から二人が屈み、俺の頬にキスを落としていく。有栖と香奈枝の事などまるで気にしていない。
 やがて二人は俺の目の前でお互いの洋服を脱がせ合う。

「兄様、鏡花ったらまた発情してますよ。私達に抱かれたがってます」
「そういう薫お姉様こそ、ここがこんなに濡れてますわ。ああ……ご奉仕したいですわ……」

 二人は俺に見せつけ合うようにしてペッティングを始めた。有栖達の施術が終わってもまだ、お互いに密着してまさぐっていたぐらいだ。

「”シンクロモード”」

 今度は一気に四人を変える。薫と有栖達の仲直りも、させてやらないとな。

 かちり。

「あっ……」

 ぼーっとする。
 私、確か薫の家で薫を洗脳して、あれれ、ここどこ?

「……へ?」

 そうだ、私、あのあと大伴先生とか、御京院先生に会って、鏡花を堕として……あれ、私なんで今まで俺とか言ってたんだろう……? あ、私じゃない、僕だ。

「ていうかこれ……うわぁー」

 目の前の光景、登場人物を整理する。トップオブトップの金髪イケメン不良天然美少女藤原薫。サードの爆乳マゾヤンデレおっぱいお嬢様西園寺鏡花。セカンドの茶髪反抗期つっこみいじられロリ巨乳三条有栖。フォースの貧乳辛口無口メガネっ娘葉室香奈枝。
 四人ともいつの間にかSRを外していた。鏡花と薫は裸のまま。香奈枝も洋服を脱ぎかけている。一人有栖が顔を真っ赤にして慌てていた。どうやら僕の姿は見えていないみたいだ。

「いやー今日の始業式の準備大変だったな、メチャクチャ汗かいちまったぜ! 風呂入るぞふろー」
「そうですわね。ですが薫お姉様ったら体育館であんなにはしゃぐものですから、後輩の妹達に下着を見られておりました。お姉様はもう少し慎みというものを覚えるべきだと思いますわ。香奈枝もそう思いますわよね?」
「うん。ありがたみがない。……ほら早く有栖ねーさまも制服脱いでお風呂入る」
「いやいやいや! ちょっと待ちなさいってば! ここ教室でしょ??? なんで二人とも脱いでるんですか!? 香奈枝まで脱ぐなっての!」

 三人とも怪訝な顔をして有栖を見る。

「有栖、お前なに言ってんだ? 教室??」
「ええと、ここは脱衣所ですわよ? ほら早く御召し物を御脱ぎになってくださいまし」
「へんじん……」

 三人からほうぼうに責められ、顔を赤くして狼狽える有栖。

「ちがっ……! あ、あんたらどうしちゃたの!? こんなの下級生に見られたら特待生失格よ! 薫ねえさんも! やめてください!」
「うふふ。分かりましたわ。有栖お姉様ったら、薫お姉様に脱がせてほしいんですわ。有栖お姉様はお姉様方には甘えんぼなんですから」
「ちがわい! 教室で脱ぎ始めてありもしないお湯に入ろうとするあんたたちを止めてるのよ!」
「はい、ぬぎぬぎ」
「香奈枝さわんなーっ!!」

 香奈枝は有栖にくっつきボタンを外し始める。薫がゆっくりと有栖に近づく。
 有栖は薫の綺麗なすべすべ白い肌に釘付けになる。元々羞恥心で赤かった顔が茹蛸みたいになる。
 薫は有無を言わせず、といった風に軽くキスをすると、強引に有栖の制服を脱がせた。

「薫ねえさん。んっ。や、やめてください……。恥ずかしいです……」
「一緒に風呂入ろうぜ? お前の可愛い姿みせてくれよ」

 二人の様子を見ていると不仲とはとても言えないだろう。先ほどのバチバチした雰囲気など始めからなかったかのようだ。
 薫と香奈枝、そして後から鏡花も加わり有栖のちっこい身体を触り始める。上着を薫が放り投げ、ワイシャツを香奈枝が丁寧に脱がせる。ミニスカートを鏡花がゆるりと落とした。

「みんなやめ、ねえさん駄目です。皆の前でおっぱい触らないでください……こ、こんなところで……。えあ、あれ……?」

 有栖が目をぱちくりすると、不思議そうに辺りを見回した。

「だついじょ……?」

 僕の目からはまごうことなき教室だが、彼女の視界も脱衣所に見えるようになってしまったようだ。

「最初から言ってんだろ? ほら最後は自分で脱げよ」
「あ……ごめんなさいねえさん。んしょ……。でもこんなのおかしいよ……」

 有栖がピンクの下着を脱ぎ、他の三人と同様裸になる。

「くすくす。それでは行きましょうか?」
「ははっ。そうだな。風呂場へ行くぞ?」

 あ、薫と鏡花は分かっててやってるやつだこれ。

「はーい」
「はい、ねえさん。で、でもさっきまでは絶対教室で……なんでいきなり……」

 疑うことなく先導する薫に着いていく香奈枝と、首を捻りながら身体を隠すようにして着いていく有栖。
 4人は廊下を出ていってしまう。僕も追いかけると、4人は廊下で掛け湯を浴びているかのような所作をしていた。

「ね、ねえ鏡花、あんたどうしてタオル巻かないの? いつもは巻いてるでしょ?」
「うふふ。そんな気分なんです。ね? 薫お姉様?」
「そうだな。お前の身体洗ってやるよ」
「ぁん♪ お姉様……私も、薫お姉様の御身体にご奉仕いたしますわ」
「あ、わたし、おトイレ行ってきます」

 薫と鏡花がいちゃいちゃし出す。有栖はその様子を少し羨まし気に見つめていた。

「よいしょ」

 香奈枝がどこかから銀色のバケツを取り出した。その上にまたがると廊下のど真ん中で放尿した。

「ん……」

 目を細め気持ちよさそうにしている。黄金色の放物線がバケツに当たり音が鳴った。

「んっ……」

 彼女の(よく言えば)スレンダーな身体がぶるっと震えて、尿が切れた。
 僕はその不可思議な光景に心を奪われ彼女に近づき、腰まである長い髪を撫でた。

「んっ……? あ、片付けないと……」

 少々の違和感を持ったようだけど、僕に触れられた事には気づかなかったようだ。バケツを本物のトイレに持っていき、便器に流した。ご丁寧にトイレットペーパーで股を拭いている。
 よいしょとバケツの中身を流し、洗面所で普通に手を洗う。裸で。異常な行動の中、普通の行動も混じっているのが不思議だ。

 裸でなんてことない顔をして手を洗っている彼女を見て、僕の息子も大きくなってきた。

「ちょっとだけ。ちょっとだけだから……」

 僕は後ろから近づき、細い腰を掴む。既に大きくなっているモノをあてがうと、香奈枝も受け入れるかのように洗面台に手を突き、立ちバックの体勢になってくれた。
 まだ何もしてないのに、既にソコは受け入れが可能なほど濡れていて温かい。

「……? あ、顔も洗わないと……んっ……」

 鏡越しに突然の刺激に顔をゆがめる香奈枝の表情が映った。僕は普通じゃあり得ないシチュエーションに興奮して何度も出し入れする。

「香奈枝っ! 香奈枝!」
「んっ、んっ。あ、ここまっだ汚れてあぅ! るっ……」

 喘ぎ声を挟みながらも洗面台から離れず、僕に抱かれていることにも気づかずに念入りに顔を洗っている。
 僕は彼女の美しい黒髪に惹かれ、後頭部に顔を埋めて大きく香りをかいだ。女性らしいシャンプーの香りが僕を包む。

「?! ああっ! な、なに? 気持ちいいっ! 頭いいっ、おまんこいいっ!?」

 香奈枝の反応が変わった。髪の毛をちゅーちゅー吸ってみる。

「かみのけいい! なんで、なんでぇ!?」

 普段無口な彼女が取り乱して感じている。さっきまでの僕は、どうやら香奈枝の髪を性感帯にしてしまったらしい。膣も僕を気持ちよくさせようと積極的にうねうね動きだし、射精を促している。フォース、学園4位の巧みな性技術に僕もたまらず出てしまう。

「出す! 出すよ香奈枝!」
「はへぇ……あえぇぇ……? んんんんんっ!!」

 同時にイってくれたみたいだ。びくんびくんと香奈枝が大きく震える。折角洗った顔が涎でぐちゃぐちゃになってしまった。僕が抜くと香奈枝が大きく呼吸をし、何事もなかったかのように鏡を見て再度顔を洗い、髪を整えた。
 ぼそっと香奈枝が呟いた。

「ゆう様、香奈枝達の事見てくれてるかな。香奈枝、卒業してからもがんばる。ゆう様、これからも見守ってください……」

 香奈枝は丸い目を、黄色い瞳を閉じて熱心に念じている。その姿を見て、僕は胸の奥がずきりと痛んだ。
 香奈枝はその場を立ち去りかけたけど、僕は何とも言えない感情を抑えきれず、どうしようもなくなって彼女に抱きつき唇を奪った。強く強く自分の唇を押し付けた。

「さてお風呂お風呂……んむ!? ……んぇ!!」

 香奈枝は僕を見ながら目を見開きぽけーっとしている。訝しんだ僕は彼女の口から僅かに離した。

「僕の事、見えてる?」
「……詩奈……おねーさま? う、うそ……」
「いやホントだよ。ごめん香奈枝が可愛くって犯しちゃった」
「え……? あ、今の……、全然気づかなかった……。うん。おねーさまならいい。ゆるす。有栖ねーさまなら許さない」
「あはは……」

 僕は香奈枝に頭を撫でられ、抱きしめられた。

「ひさしぶり、おねーさま。元気だった?」
「ん。悠様達と楽しくやってるよ」

 ぱっと僕を離す香奈枝。戸惑いの表情がありありと浮かんでいる。

「……消えない。おねーさま私達に何したの?」
「ちょっとね。悠様のご命令なんだ」

 ちょっと嘘ついたけどまぁいいよね。
 そう言われた香奈枝は感激したみたいで、涙がぽろぽろ流れている。

「あ……あぁ……ゆう様が、ゆう様が私達に……うれしい……」
「香奈枝、薫の事どう思ってる?」

 僕は涙をぺろぺろ舐めながら聞いてみた。しょっぱい。香奈枝は罰の悪そうな顔をする。

「う……。今は尊敬してる。だいすき。……でも前の私達はわるくない。詩奈おねーさまのこと覚えてちゃ駄目」
「それ、僕のせいなんだ。薫の事、許してあげて?」
「今はもう怒ってないよ? でも、その、ごめんなさい言わないと」

 そう言うと香奈枝はトタトタと三人に合流しに行った。

「お、きたきた。おせーぞー」

 からからと嬉しそうに笑う薫。
 香奈枝は薫の正面に立つと、顔を上げて軽くキスをした。

「おねーさま、ごめんね」
「! きにしてねーよ!」

 勇ましく香奈枝を抱きしめる薫。幸せそうに笑っていた。

「あらあら、あの捻くれた香奈枝があんなに素直に謝るだなんて。明日は雪でも降るかもしれませんわ」
「……あたし、香奈枝からキスなんてされたことないんだけど……」
「有栖お姉様、嫉妬しないでくださいませ。それではお湯に入りますわよ?」
「……ん」

 満足げな表情の二人に反して、少し頬を膨らませている有栖。僕がいない間、3人の間に何があったのかは想像に容易い。
 4人は再び同じ教室に入った。

 みんな、部屋の中央部に近づき、恐る恐るゆっくりと足を延ばす。それぞれ膝を曲げ、地べたに座った。

「あ゛ぁーきもぢー」
「うふふ。そうですわね」
「……あー」
「? このお湯、あったかくない……?」

 一人を除いて、満足げな表情を浮かべている。まるで本物のお風呂に入っているかのように、肌の色に赤みが差し始めてきた。
 教室の真ん中で輪になって裸になっている四人組は各々の座り方でリラックスしている。
 薫は胡坐で風呂場の縁に寄っかかっているかのように腕を横に広げている。現実では空気椅子みたいに横に広げているだけだけど。鏡花はお行儀がよくお嬢様のように足を揃えて座っている。大きく深呼吸をすると乳房の先端がぴくりと動いた。香奈枝は女の子座りをしつつまったりしていて、有栖は体育座りをしながら難しい顔をしている。
 
「しかしすげーなこれ。マジでお風呂だわこれ」
「本当ですわね。詩奈お姉様の偉大さが身に沁みますわー」

 気持ちよさそうに目を細める二人。

「詩奈お姉様……?」

 鏡花の言葉に有栖が反応した。僕は忘却暗示が入るのかと警戒したけど、有栖は懐かしそうな顔をして目を細めた。

「詩奈お姉ちゃんのことだから、きっと悠様のこと骨抜きにしちゃってるよね! あたし達も卒園したら悠様の御側にお仕えしたーい!」

 愛する妹の期待に応えられてなくて申し訳ないけれど、とにかく忘却はしなかった。安心だ。
 有栖の発言を皮切りに、4人が仲睦まじく僕の思い出話に花を咲かせ始めた。

「ミッションクリア……だね」

 その光景を見て、誰が不仲だと思うだろうか。どうやら僕の……私の依頼は達成したようです。

「私も輪に入りましょうか……っ」

 そう思いましたが、有栖と香奈枝と鏡花が興奮した様子で盛り上がっています。

「あたし、どこになるのかな!? やっぱテレビタレントとか?」
「有栖ねーさまはアイドルだって教頭先生がぼそっと呟いてた」
「あーそっちかー!」
「有栖お姉様は歌もお上手ですしね。テレビを通して洗脳も夢ではないかもしれませんわ。わたくしの情報網によると、香奈枝がテレビタレントですってよ! 最初はおバカタレントとして売り出すとか」
「がり勉に見えて実はおバカな私にぴったり。これがぎゃっぷ効果。んー鏡花は頭いいし、大企業かお役所かな……? んん、薫おねーさまどうしたの?」
「……あ、いやなんでもねーよ」

 薫は既に舞女の洗脳が解けています。三人の盛り上がっている様子についていけてないのは明白です。
 微妙な表情をして回りを見渡しています。私の反応が気になるのでしょうか。

「薫ねえさんはアメリカの国防総省、ぺんたごん? なんですよね、よくわからないけど凄いです! 外国で色々な雄を化かして寝て、ペットにして、その身を挺して悠様帝国の礎になるって尊敬します! あたしは裏工作とか、上手くできないし……」

 私にとって決定的な台詞を有栖が言いました。今まで分かっているつもりではありました。つもりではありましたが、こうして当人達の口から聞くと重みが違います。

「そっか。ようやく分かりました」

 私、彼女達を解放してあげたかったんです。最初は薫が苦しんでいるのを見て、私の事忘れてもらおうと思いました。次に有栖、鏡花、香奈枝の記憶に私を埋め込んで、薫と仲良くなってもらおうと思いました。

 でも、本当にそれでいいのか、心の奥底で疑問に思ってたんです。だって皆を仲直りにさせて、今までどおり悠様の傀儡人形になるだけの人生を歩ませる。それが本物の悠様の願いだなんて到底信じられなかったからです。私だって悠様のことを見続けてきたんです。悠様が私に本当にしてほしいこと、もうポンコツメイドの詩奈でも分かります。

 私は4人に近づき、そっとバイザーを被せました。3人は気付く素振りを全く見せません。香奈枝だけは私の存在を認知しています。ですが悠様の命令を盾にすると、されるがままになってくれました。SRを起動し、4人はあっという間にウェイトモードからシンクロモードへ。

「このままではさよならを言えませんしね。皆は天城院詩奈が見えるようになる。”ナップモード”」
「兄様? 次はなんで遊びますか?」
「詩奈お兄様……?」
「ああっ!? 詩奈お姉ちゃん! ウソ、ずっと、ずっと会いたかったです……」

 有栖が涙ながらに私に抱きついてきます。私は彼女の頭を撫でてあげました。鏡花は黙って微笑んでくれていました。香奈枝はぼーっと私を凝視して、薫は私にすり寄ってきます。

「みんな、本当にお久しぶりですね。元気そうで嬉しいです。ねぇ薫、これからする事、貴女なら分かってくれますよね?」
「? 何をするおつもりですか?」
「答えてください」

 真剣な表情に薫がたじろぎます。薫は目を閉じ、覚悟を決めたかのように答えました。

「……私は兄様と……貴方の主の味方です」
「ありがとう。やっぱり薫は私の親友です」

 ”舞女の洗脳教育を全て解いて、皆を解放したい!”/p>

 覚悟を決めた私は、全身全霊で今までの舞女教育の洗脳解除を願いました。そうすると、SRが最後の機能を教えてくれました。

 悠様達見ててください。これが私の答え。これが正真正銘、最後のリモートコントロールモードです!

「”……ラストリモードォォォッ!!!”」

 4人のバイザーからいつものコードが伸びていきます。
 するりと耳の中に入ります。せめて痛みではなく、快楽を。とびっきり気持ちよくしてあげます。

「ぇ……? あっ」

 私の突然の怒号にぽかんとした彼女達でしたが、最初に違和感に気付いたのは有栖でした。耳への不気味な感触、快楽、ばちりと頭に響く電流。
 有栖はビクつき私から離れ、瞳がぐるんと上を向きます。

「イギッ!!? ぎもぢいいぃぃぃぃ!!?」
「さっきのよりすごいですわぁぁぁ!!」
「っ……ぅ……!」
「な、なんで私まで……? あっあっ」

 4者4様の反応を見せてくれました。薫以外の3人はあまりの刺激の強さに立って、あるいは座っていられず、仰向けに倒れていきます。倒れると痙攣をしながら背中、腰を浮かせました。

 バチ、バチ、バチ、バチ!!
 時折強い電流が流れ、その度に四人の喘ぎ声が大きくなります。

「そういえば、有栖はまだ抱いてあげられませんでしたね」

 一人だけのけものは可哀想そうです。”私”で申し訳ありませんが、使ってあげますね?

「有栖、四つん這いになって来なさい。鏡花香奈枝、有栖の胸を愛撫して。薫は有栖のお尻を舐めて」
「はい詩奈お姉様ぁ゛っ! 有栖お姉様気持ちよぐぅ! なっでぇえ!!?」
「ぅぐ……! んむっぅ゛……!?」
「あっあっあっ、れろ、れろれろじゅぅぅううう!!」
「ああああ゛っ!」

 有栖は四つん這いになって私の目の前まで来て顔を上げました。必然的に薫達も寝っ転がったり、四つん這いになったり。
 皆快楽のあまり意識が飛びかけながら、骨の髄まで染み込んだ舞女の性技術を持って有栖を気持ちよくしています。

 私が念じるだけで、有栖は犬のように仰向けになり腰を浮かせてくれました。私を受け入れる体勢は完了です。
 鏡花と香奈枝は有栖の両脇にぴったりくっつき、びんびんに立っている乳首を執拗に舐めながら有栖の足を片足ずつ掴んで開き、私が挿入しやすいようにしてくれました。薫は有栖の小さな体にしては大きいお尻を両手で持ち上げ掴み、嘗め回しています。

 ごめんなさい有栖。今の私はもう悠様の事考えながらじゃないと勃たないです。私、別に絶倫じゃありませんし。
 私は薫の上にまたがる形で別の御方のえっちなシーンを思い浮かべながら噴水のように湧き出しているソコにおちんちんをあてがいます。

「ごわれる! ごわれ……ああああああああ!」
「あっ……は。気持ちいいです悠様……。あっ、悠様もっと激しくキスしてください! 悠様詩奈を愛して!」

 私は完全に妄想の世界に浸り、有栖をオナホのように扱います。こんなものセックスではありません。自慰です。私は、ただ自分が気持ちよくなるためだけに腰を動かしました。
ああ、悠様が私を後ろから抱きしめています。悠様が私にキスしています。悠様がいやらしく私のおちんちんをしこしこしてくれています!

 極上のオナホは私をあっという間に搾り取っていきます。悠様の事を考えながらオナニーしているのですから、到底耐えられる訳ありません。

「悠様のお手てに出します! ああ! 出ちゃうのぉ!!」
「イグッイグッイグッ!! お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!!!」

 ……今日一番出てしまったかもしれません。私は全てをオナホの中に出し尽くすと、ふらふらと後ろに下がり、ペタンと座り込みました。私が射精の気持ちよさに呆けていると、薫はふらふらと私の足元に縋りついてきました。

「にいさま…あぅぅ!…げすの……なんでぇぇ……?」

 薫は自分が何をされるのか分かったようです。涙をぽろぽろ流しながら身体全体を震わせています。私は正座になり、太ももの上に薫の頭を乗せました。

「悠様わずれだくないにょおぉぉぉぉ!! ま゛だイッグゥゥゥッゥゥゥ!!!」
「ぎえる……今までのわたくし、ぜんぶきえちゃいますううううう!! ゆうさまぁぁぁああ! いやぁあぁぁぁ!! いぐぅぅぅぅうぅうううう!!」
「ゆう゛さ゛ま゛…………いや゛ぁぁ…………っ!!!!」
「にいさま……!!!」

 私は、舞女の悪しき洗脳から皆を解放してあげるのです。
 初等部から全部の記憶を忘れちゃうから、人格と性格が変わらない程度のそれっぽい普通の女子高生としての記憶をぶち込んであげます。ラストリモードに、SRにこんな機能があったということはやっぱり最初からそのつもりだったんですね。ご丁寧に4人それぞれの記憶が用意されていました。

 みんな、自分の人生は自分で決めないとだめですよね。
 自分の人生をフラットな頭で振り返って、皆自身の考えでこれからの人生を決めてね。
 虚像の、偽りの悠様の操り人形じゃない、大人の女性として。

「さようなら」
「……ぅあ…………しい……な…………」

 最期、薫が妹ではなく親友としての表情を私に見せてくれました。涙がつーっと流れ出るのを感じます。膝枕をしていたままだったので私は薫の少し癖のある綺麗な金髪を撫であげ、ふわりと笑いかけました。

「想い出は…………また、作ればいいんですから」

————————————————————–
 
「今回もなんとかなりましたね、お姉様」
「アレは私とハカセの合作なんだから当然よ。悠も喜ぶんじゃない? でもほんとこの子ポンコツ。……途中舞女の話を延々し出した時は本気で脳みそ握りつぶしてやろうかと思ったわ」
「ふふふ。何回も”ラストリモート”しちゃいましたね」
 
 どうも邪念です。私は葉入怜お姉様と共に、モニターに映し出されてる四人の泣きアへ顔を鑑賞しつつ、反省会に興じていました。

 私達としては、あのSRが最初で最後のリモートサポート(遠隔支援)のつもりだったんです。あとは全部一人で頑張れという意味であの商品を差し上げ、舞女の洗脳電波を上書きするモードをラストリモードと名付けたんですけれど……。どうやら意図が全く伝わらなかったようです。仮に伝わっていたとしても私達がフォローする展開に変わりはなさそうですけどね。

 それで何で私達が逐一状況を確認することができていたかというと、詩奈君の側でこっそり監視していた、超小型高性能ドローンからの映像のお陰です。
 蚊と同じくらいの大きさのドローンは映像は16K・音質最高峰で臨場感たっぷりに現場の様子を伝えてくれました。蚊よりも音を出さない優れもので、透明加工もしているからかポンコツメイド君は最後まで気づきませんでした。

 それと私の家宝をくしゃしゃにした罪は必ず償わせます。メイドなのに家事が駄目ってホントポンコツです。

 唐突に湧いた怒りが収まらぬ中、私は別の事を考え視線だけお姉様に向けます。

「そうね」

 モニターからすっかり興味がなくなったお姉様。今回の話はこれで終わりのようです。
 なら次は悠さんとの仲直りですね? 

「今回こそは悠が謝ってくるまで許さない」
「またまたそんな事言って。いつも折れるのはお姉様からじゃないですか。あの時だってほんとは」
「知らない」

 あ、逃げ……こほん。出て行ってしまいました。全く、だばーなデレデレなのに妙なところでツンツンしてるんですよね。お姉様って。
 なんだかんだで悠さんお気に入りの詩奈君を何度も手助けしちゃってますし。相変わらず悠さんにド甘い人です。

 ……で沙雪さんはいつまで私達の思考をのぞき見してるんですか?
 悠さんといちゃいちゃしながら相変わらず器用な方ですね。

 と思うと、すーっと沙雪さんの気配が遠くなっていきます。やれやれ。

 私とお姉様と沙雪さんの間柄なら口に出さずとも、アイコンタクトと簡単なボディーランゲージで何を言いたいか大体分かります。分からなければテレパスで会話すればいいので、今までの会話は実は全て不要です。
 でもそれは私と沙雪さんとお姉様との三人だけの秘密。外でこっそり聞き耳立てているメイド長にも情報は与えておかないといけないのです。

 さて、転校手続きをしなければ。急がないと春休みが終わってしまいます。

————————————————————–

 一週間ほど後のことです。

 私は自室でのんびり余暇を楽しんでいると、メイド長クリスの気配を感じ取りました。革のブーツ特有のこつこつとした音が遠くから少しづつ鳴り、私の部屋の前で立ち止まります。と、丁寧なノックを受けました。

「いいですよー?」
「失礼いたします。メイドのクリスです。……変わったお客様方がおいでなのですが、いかがいたしましょうか?」
「……それ、クリスが自分で判断できるんじゃないですか?」

 今回の一件全部知ってるくせに。少し呆れ気味に返しますと、飄々とした顔で返答されました。

「私はメイドでございますから」
「それじゃあー」
「旦那様が優子に全て任せると。奥方様も同様に」

 はいはい、二人で仲良くしてるんですね。ったく。

 私はクリスに客室の前まで案内してもらいました。
 
「クリス、ここまででいいですよ。ありがとうございました」
「いえ。失礼いたします」

 はてさて、鬼が出るか蛇が出るか。
 4つの客室からはそれぞれ別の気配を感じます。

 緊張してドキドキしているロリ気配。なんか普通でつまらないですね。
 無になってぼーっとしている貧乳気配。中々大物ですね。
 そして……やっぱり一人はいると思ってました。悠さんを想って一人Hしてる爆乳気配です。実に分かりやすくてよろしい。

 それでは初めにリーダーの方にお話を伺いましょうかね。 
 気配を探るまでもなく、うぉらぁぁぁ!! と中で叫んでいる部屋に向き合います。 
 これまた悠さん好みの変わった娘ですね。合格です。

 でもまぁこういうのは第一印象が大事なのですよ。私は普段では絶対出さない声帯に変えて、お上品にノックをします。こんこんこんこん。

「っしゃぁぁぁ!!!!」

 中から気合の入った声が聞こえます。

「失礼いたしますわ」

 お上品に扉を開けた私の目にまず飛び込んできたのは、金色で『天上天下悠様独尊』と背中に大きく書かれた刺繍でした。文字が目立つように後ろに登り龍が描かれています。そして服全体に桜の花びらがあしらわれている青い服。

 はい、特攻服です。

 彼女の金髪セミロングは少し高い位置にポニーテールでまとめられています。
 今回は前髪の僅かな部分を残して、髪全体をポニテにまとめているようですね。
 不良娘は私に背中の文字を存分に見せつけた後、振り向きました。
 正面左には『愛羅武勇』 右には『悠様』(はーと)と金色と銀色で刺繍されています。
 前はボタンで止めることなく、全開にしています。黒いチューブトップブラジャーが光沢していて、くびれのある細いウェストや綺麗で少し筋肉質なお腹が丸出しです。
 
 天然美少女不良娘は不適に笑みを浮かべると、挑戦的な態度で腕を組みました。

「私は藤原薫! 悠の専属メイドになりにきたんだぜっ!!」

 これは悠さんのおうちに、四人もクラスメイドが増えた時のお話でしたとさ。

< 監視カメラ①_完 >

3件のコメント

  1. 読ませていただきました!
    続きが読みたいです!
    楽しみにしています!

    1. ゆき様

      ありがとうございます。
      pixiv様にメッセージをくださった方と同じ方でしょうか?
      本作品と直接的なつながりはないお話でよろしければお蔵入りにしていた作品があります。
      多忙のためいつになるかは分かりませんが、折角お声がけいただきましたので時間が出来たら手直しして公開しようかと思います。

  2. 紅夢抄様

    返信ありがとうございます!
    同じです!
    嬉しいです!
    読みたいです!
    お忙しい中、本当にすいません。
    ありがとうございます!
    楽しみにしています。

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