旧校舎 第一話

第一話

 昼休み。

 僕は本を読むふりをしながら南條芹華の横顔を眺めていた。アーモンド形のパッチリした目に高く通った鼻筋、シャープな輪郭と抜群に整った顔立ちに170cmを超える長身。芹華と談笑している寺島遥も十分美少女と言えるだろうが、芹華の前では見劣りしてしまう。それほどその美貌は際立っていた。

 芹華と遥、美しい二人で目の保養をしていると隣のクラスのブスが割って入ってきた。

「ねえねえ芹華。今度の土曜ひま? 船生の男子がウチと合コンしようって言ってるんだけどさー、芹華も行こうよ」

 ね、ね、とねだるように言う。どうせ芹華目当ての男子だろう。大方、芹華が来るなら合コンしてやるとでも言われているに違いない。ろくに話したこともない女子に芹華がしつこく誘われる様子を何度も目にしてきた。

「ごめん。土曜はもう予定があるんだ」

 大して申し訳なさそうでもなく芹華は言う。多分嘘だろう。ブスもそれを察したのかしつこく食い下がる。

「えー、そんなこと言わないでさ! 船生の男子、イケメンらしいよ?」

「無理。ていうかあたしたち、そんな仲良くないよね? 他の人誘ったら?」

 芹華はばっさりと切って捨てた。さすがのブスも気分を害したのか「あっそ」と捨て台詞を吐いて教室を出て行った。

「いつも大変そうだね」

 一部始終を見ていた遥は苦笑する。僕でさえ見飽きた光景だ。小学校からの付き合いである遥ならなおさらだろう。

 容姿端麗にして成績優秀。この大甕学園のカーストの頂点が芹華であることは疑いようがなかった。

 歯に衣着せぬ物言いをする芹華は一部の女子から蛇蝎の如く嫌われていたが、それ以上に芹華に少しでも近づこうとする男女から絶えず囲まれていた。もっとも芹華はそんな奴ら相手にしていなかったが。

「ほんとめんどくさい。男が欲しいなら自分の力でどうにかしろよって感じ」

「うーん、まあ、あの行動力は見習うべきところがあるかも」

 芹華と親しいと言えるのは遥くらいのものだろう。よくお互いの家に遊びに行くらしい。愛くるしい容姿で、街を歩いていれば頻繁に声をかけられるであろう二人に男の影がないのはレズだからではないかという噂さえ流れていた。

「あんなの見習わなくていいよ。あれは行動力があるんじゃなくて厚顔無恥なだけ」

「厳しいね……」

 遥は今一度苦笑した。おとなしく、恥ずかしがり屋の遥からすると羨ましいところがあるのかもしれない。内気な性格につけこまれ、男子からのしつこい誘いを断り切れないでいるのもよく見る光景だ。毎度のごとく芹華が割って入って追い返しているが。

「おい、桑田。なに南條のことジロジロ見てんだよ」

「ば、ばか! 何言ってるんだよ」

 突然後ろから声をかけられたので驚いて振り返ると同じクラスの設楽がいた。慌てて辺りを見回すと、幸い誰もこちらに注意を払っていないようだったのでひとまず安心する。

「南條は別格だけど寺島も良いよなあ。どっちでもいいから付き合ってくれねえかなー」

「僕らじゃむりだよ」

 自分が冴えない人間であることは嫌というほど自覚している。

「わかってるって。言ってみただけ」

 始業のチャイムが鳴ると設楽はため息をついて席に戻って行った。

 僕は授業の準備をしながらも芹華をモノにする方法を考えていた。

 帰宅して自分の部屋に入ると机の鍵を開けた。中から一冊の本を取り出す。

『誰にでもできる催眠術マニュアル』

 はじめてテレビで催眠ショーを見て以来、僕は催眠術の虜になっていた。人を思うがままに操ることができる、こんな素敵なことがあるだろうか。心理学? 催眠療法? そんなことはどうでもいい。僕は女の子を自由に操りたいだけだ。テレビでやっているようなことはほとんどやらせと言われているが、そうでないことを僕は知っていた。

 物心ついたころから、僕は催眠術の修得に取り組んでいる。催眠術に関する書物は何十冊も読んだし、実技のシミュレーションだって数えきれない程こなした。そして先日、ついに妹に催眠術をかけることに成功した。施術にかかる時間は5分ほどだったろうか、現実は想像していたよりもずっと簡単だった。妹は僕の思うがままに操ることが出来た。しかし妹ではダメだ。妹は僕に似てブスなのだ。操るなら芹華のような美少女でなければいやだ。

 妹に続いて両親に催眠術をかけるのも成功したし、誰に対しても上手くやれる自身はある。問題はどうやって相手と2人きりの状況を作るかということだったが、すでに手はずは整えてある。チャンスは来週だ。

「桑田、寺島。ちょっと来てくれ」

 HRが終わると僕と遥は先生に呼び出された。

「お前ら今日の当直だよな。悪いが、2人で旧校舎までこのリストに書いてある資料を取りにいってくれないか」

「はい、わかりました」

 僕がすぐにリストを受けとったので遥もやむをえずといった感じで頷いた。

 旧校舎は学園から歩いて5分程のところにある。なぜ立ち入り厳禁の旧校舎へ生徒に荷物を取りに行かせるのか疑問に思っているのだろう。もちろんこれは偶然ではない。予め先生を操ってそう指示を出すよう命令しておいたのである。まじめで大人しい遥なら先生から頼まれれば多少理不尽でも断ることがないと見越してのことだ。相談したいことがあるといえば2人きりになれるんだから先生に催眠術をかけるのは簡単だった。

「じゃ、行こうか」

「あ、うん。ごめん、ちょっと待って」

 遥はそう言って芹華の方へ向かうと事情を説明しはじめた。

「ちょっと時間がかかりそうだから、先に帰ってていいよ」

「うーん。ほんとなら手伝ってあげたいんだけど、あたしも今日はちょっと用事あるんだよな……。わかった、先に帰らせてもらうわ。また明日ね」

 芹華がちらっと僕の方を見る。まあこいつなら変なことをすることもないだろうとでも思われたのかもしれない。芹華が手伝うと言い出さないかどうかだけが計画のネックだったのだが幸運に恵まれたようだ。ついに遥と二人きりの状況を作りだすことが出来た。

 旧校舎へ向かう道中ではほとんど人とすれ違うことはなかった。

 元々山を開拓して作られた旧校舎の周りには何もないのでめったに人が通ることはない。

 旧校舎につくと先生から預かった鍵で入り口を開けて中へ入る。

「僕、旧校舎に来るの初めてだよ」

「うん。私も」

 隣を歩く遥の顔をそっと盗み見る。こうして見ると遥はやっぱりかわいい。小ぶりのすっきりとした輪郭が大きく切れ長の目を際立たせている。芹華といつも一緒にいるせいでかすんでしまうが、学年でも指折りの美少女ではないだろうか。

 ここまでの道のりで会話はほとんどなく、資料室へ着くいても黙々と資料を探す。気まずい沈黙が漂う中どう切り出したものかと考えていると突然声をかけられた。

「ねえ、芹華のことどう思う?」

「えっ? 南條さんのこと? どうして?」

 唐突な質問に思わず素で答えてしまう。遥は少し逡巡したあと言葉を重ねた。

「ほら、芹華ってすごく堂々としてるじゃん。言いたいことははっきり言うし。あれ、すごいなって。嫌われるの、怖くないのかな?」

 そんなこと僕にわかるわけがない。一体どうして僕にそんなことを聞くのかと思っていると、ふいに気がついた。ひょっとしたら遥は自分と同じく引っ込みがちに見える僕に同族意識を持っているのかもしれない。それなら期待に答えてやろう。

「うーん、どうだろうね。でも、僕には真似できないな。僕なんかはまずどう思われるかって気にしちゃうから。目立つようなことはしたくないし」

 我ながら情けない発言だと思ったが、遥はどこかほっとしたような表情を浮かべた。

「そうだよね、私もそうなの。だけど、芹華にはもっと自己主張をしろって言われてて」

 やはり。どうやら遥は自分の引っ込み思案な性格をコンプレックスに思っているようだ。そこで同じように内向的に見える僕に声をかけてみたということらしい。ついに取っ掛かりが見えた。

「寺島さんは南條さんみたいに堂々とした人になりたいと思ってるの?」

「うん……。あそこまでじゃなくていいけど、もう少し自分から行動できるようになれたらいいなって」

 はにかんでそっと髪をいじる遥はとてもキュートだ。

「それならいい方法があるよ。催眠術なんてどう?」

「えっ、催眠術? ……それは、えーっと」

 笑いたいような気持ち悪いような、多分そんな気持ちなんだろう。遥は吹き出そうかしかめ面をしようか迷っているような顔になる。

「催眠術って言うと言い方が悪いかもしれないね。催眠療法って言った方がいいのかな。実は僕、心理学に興味があってずっと勉強してるんだけど、催眠術っていうのはほんとは心理学の応用なんだ。欧米なんかでは良く使われてて、催眠療法を受けて前向きな考え方を持てるようになった人も多いんだって。どう、やってみない?」

「うーん……でも……」

「まあ、ものは試しだと思ってさ。全然意味無かったら笑ってくれたらいいから」

 乗り気でない遥になおもしつこく食い下がると、渋々といった感じで頷いた。

「わかった。じゃあ、やってみてる」

「うん。ありがとう」

 やった! 僕は興奮を抑えてポケットから用意しておいたライターを取り出す。

 火をつけると、椅子に座った遥の目の前にそっとかざした。

「寺島さん、この火を見て」

 言われた通り遥はじっと火を見つめる。

「きれいな炎ですね……。この火をじっと見つめているとだんだんと目が吸い寄せられていく。目が離せなくなる」

 遥は心持ちより目になった。ライターの火に集中していることがわかる。

 少し間を置いて言葉を重ねる。

「だんだん炎以外のものが見えなくなってきた……。明るい炎がよく見える……炎だけがよく見える…………」

 遥の口がぽかんと開いた。いつもの理知的な表情がぼんやりとしたものに変わる。ライターを左右に動かすと、まるで火に吸い寄せられたように遥の目も左右にゆれた。

 あと一歩だ。

「炎を見ていると、あなたの魂が囚われていく……。何にも考えられなくなる……頭がまっしろになる……。もうあなたの魂は炎に囚われてしまった。この炎が見えなくなると、あなたは空っぽになってしまう……」

 正面にかざしていたライターを遥の頭上を通してゆっくりと背中の方へ回すと、ライターの火を追う遥の顔が天を仰いだ。椅子から落ちそうになる背を大きく反らし、限界まで首を後ろに傾けてもなお視線を動かして炎を追おうとする。上を向いた遥の目はほとんど白目になっている。ライターを一気に下ろすとついに追い切れなくなった遥の体がガクンと揺れた。大きく反らしていた背の反動のように体を跳ね起こし、がっくりと前に崩れ落ちる。

 自分の膝に顔を埋めた遥の頭に手をやり言う。

「遥、お前はもう何も考えることができない。僕の言うことだけに従う、魂のない人形になったんだ……」

 大体、3分くらいか。

 妹、両親と経験を積むたびに早くなっている。この分だと1分、いや30秒もあれば催眠に堕とすことが出来るようになりそうだ。

 催眠状態でぐったりしている遥の髪をつかみ体を起こす。うつろに開いたその目には何も映っていない。

「立て、遥」

 僕が命令すると遥はおもむろに立ち上がった。

「さて、お前はもっと堂々とした人間になりたいんだったな。よし、お前は大胆なストリッパーだ。お前は自分の肌を見せることが大好きなストリッパーになる。目の前のお客さんに自慢のボディを見せてあげよう」

 スマホから音楽を流すと、遥の目が大きく見開いた。こちらを見て妖艶に微笑む。

 両手で肩を抱くと、遥は爪先立ちになって蛇のように滑らかに体をくねらせはじめた。ときおりこちらに挑発的な流し目を送りながら、焦らすようにゆっくりと服を脱いでいく。まずはソックスから足を抜き取った。ネクタイをほどくとブラウスを脱ぎ捨てる。ファスナーを開いてスカートを下ろすと身につけているのは下着だけとなった。

 遥はくるりと後ろを向くと白いブラジャーのホックを外した。両手を前で交差すると反転し、肩を交互に前後させながらブラジャーを少しずつおろしていく。ブラのベルドだけがひっかかったようになるとするりと床に落ちた。裸の胸を隠すように交差された腕が少しずつ開いていく。2本の指が乳輪を隠すのみとなると、焦れる僕を見て遥はにやりと笑い大きく手を開いた。予想外の、細身の体にしては大きな胸があらわになる。桜色の乳首はピンと起立していた。

 遥は乳房を凝視する僕から隠すように再び後ろを向くと、パンティに手をかける。顔をこちらに向け口角を吊り上げると、お尻をふりながらゆっくりとパンティを降ろしていく。白桃のようなお尻の割れ目が丸見えになるとパンティを一気に引き降ろしすっと足を抜きさった。

 生まれたままの姿になった遥はこちらを向くと腰に手をあて堂々たる仁王立ちで自分の肢体を魅せつける。普段の遥からは考えられないような行動だ。これが催眠術の力か。

 喉がカラカラになる。ごくりと喉を動かす僕を見て遥はちらりと舌を出すと、四つん這いになって女豹ポーズを取った。グラビアアイドル顔負けの色気に思わずスマホを取り出すと興奮のままに何度もシャッターを切る。写真を取られた遥はますます興が乗ったようにこちらへ向けて大きく開脚した。濃い目のヘアで覆われた秘所が全開になる。僕は再びシャッターを切った。

 その後も大胆に自分の身体をアピールする遥を何枚も写真に収めると音楽を止めた。音楽が鳴り止むと同時にブリッジをして自分のボディを見せつけていた遥がピタリと固まる。

「どうだい遥? 大胆になることは気持ちいいだろう。次は羞恥心を捨てるんだ。お前は羞恥心のない犬畜生になる。3つ数えるとお前は犬になるんだ。さん、に、いち……はいっ」

「わんっ! わんっ!」

 遥は四つん這いになると鳴き声を上げた。媚びるような目でこちらを見上げる。口からはだらしなく舌を出し「ハッハッハッハッ」とあえぐような呼吸をしている。

「遥、おすわり!」

「わんっ!」

 遥は言われた通りおすわりをした。右手を出すとポンと右手をのせて「お手」をする。

「ようし。遥、いい子だぁ」

 屈みこんで頭を撫でてやると遥はじゃれついてきた。僕の顔をべろりと舌でなめる。

「きゅんっ、くうぅん」

 どうやら僕のことを大好きなご主人様だと思っているようだ。思いっきり甘えたように身体をすり寄せてくる。僕の体に抱きついてくるたび胸が押しつぶされた。ギンギンになった股間に遥の肌が触れるたび射精しそうになる。

 なんとか身体を引き離すと、本を縛っていた紐をほどいて遥の首にゆるく結びつけた。

「遥、散歩に行くぞ」

 リード代わりに紐を持つと遥は四つん這いで歩き始めた。僕のペースに合わせるよう必死に手足を動かしている。普段運動しない遥は往復100m程歩いただけで息をゼーハーと荒くしていた。額には汗がにじむ。

 かまわず歩いていると急にリードが引っ張られた。振り返ると遥が壁際で止まっている。遥は右足を上げると壁に向かっておしっこをしはじめた。間の抜けた顔でおしっこを続ける遥の足元に透明の液体が伝わっていく。

 ドン引きする僕をよそに、放尿を終えた遥は右足で砂をかけるような仕草をして何事もなかったかのように再び歩き始めた。

 羞恥心をなくしてやるとは言ったがまさかこんなことになるとは。美少女の醜態に異質な興奮を覚える。

 散歩を終えると人間に戻してやることにした。

「遥。僕が手を叩くと君は人間の寺島遥に戻ることが出来る。目が覚めると、君は催眠状態の時のことを何も覚えていない。だけど、君が僕に絶対服従なのは変わらない。僕の言うことは何でも正しいし、何でも従ってしまう。僕の言うことを聞くと君は幸せな気持ちになれる。さあ、目を覚まして」

 僕が手を叩くとおすわりをしていた遥はきょとんとした顔をした。すぐに自分が全裸になっていることを認識すると、こちらを見て絶叫した。

「きゃああ!! そんな、私、どうして!? いや! 見ないで!!」

 遥は両手で身体を隠すようにすると涙目になって懇願した。理解不能な状況と羞恥で激しく取り乱している。

「どうしてって、僕と二人きりの時は全裸になる約束だろ。僕に裸を見られたって全然恥ずかしいことないじゃないか。そうだろ?」

「えっ? あ、あ、あれ……? そ、そうか。そうだったよね……ごめん」

 僕が声をかけてやると、植え付けられた暗示の通り僕の言うことが正しいと思い込んだ遥は落ち着きを取り戻した。僕は続けて言う。

「そうだよ。それと、僕が溜まっているときは口でしてくれるんでしょ」

「えっ、えっ、えっ?」

 僕はベルトを外しチャックを下ろすとイチモツを取り出した。遥は恥ずかしそうに目をそらす。

「ほら、頼むよ。もう僕のちんこはギンギンなんだ。君の口でしごいてくれよ」

「う、うん……。わかった」

 遥は僕のモノをためらいがちに握ると顔をこわばらせた。恐る恐る口に入れる。遥の口にイチモツが含まれると舌が亀頭に触れた。そのまま舌を動かして亀頭を愛撫する。おそらく初めてなのだろう、緩急なくひたすら激しく口と舌で僕のモノを刺激する。初めてのフェラに僕のモノは敏感に反応した。あの遥が、あの清楚な美少女が一心不乱にフェラをしている。快感と征服感が交じり合い僕はあっという間にイってしまった。遥の口いっぱいに精液があふれる。

「うっ……。ごほっ、げほっ……!」

 遥はむせ返った。口の端からどろりと精液が垂れる。

「おいおいダメじゃないか。僕の精液は全部飲み込んでくれる約束だろ?」

「は、はい……」

 遥は涙を流しながらも僕の精液を飲み込んだ。床に落ちた精液も舌を使ってきれいになめとる。

 ヌいてもらってすっきりしたし、今日はこれくらいにしておこうか。

 セックスはしない。僕の童貞は芹華で捨てると決めているからだ。

「それじゃ、服を着て。そろそろ資料を探そうか」

 資料を見つけると僕らは旧校舎を後にした。

< 続く >

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