(1) 不愉快な一日だった。 汗が滴り落ちるような暑い日、というだけではない。そんな日に限って、血の匂いの充満した部屋に足を踏み入れなければならなかったからだ。時間が経って黒ずんだ血溜りは、大きく床に広がっていた。避
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「何か言いたそうね。騎士グレイ・マフリー」
この街の警備隊隊長マリア・デ・ラ・トリニダートは、緑色の瞳に憤怒の色を浮かべたまま俺の名前を呼んだ。
俺より十も若いが、その年よりも幼く見える童顔だ。細く折れそうな小柄な体躯と相まって、まるで小娘に罵倒されているかのような錯覚を覚える。