ホントの私

(1) 「うん。この辺がいいかな」  芝生を踏みしめながら、男は周囲を見渡して言った。眩しげに両目を細めていた。  遠方で鳴く野鳥の声が響いてきた。広々と開けた空間を、暖かい春の風が通り過ぎていた。  『N市総合運動公園

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傀儡の舞 1-4

(31)  アップテンポの曲が、フロアの上に響いていた。音楽に合わせて、女子部員の体が躍動する。一瞬一瞬で描かれては消えていく、花火にも似た刹那的な美しさが、そこにあった。 レオタードに身を包んだ五人の女の子達の一糸乱れ

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806 後編

後編 (16) 「ああ…ああ…いい……」  千秋は全裸になり、ベッドの上で喘いでいた。   「私…私ぃ…悪い子になっちゃった……」  自己嫌悪にとらわれる。オーナーと清香の情事の翌日、結局学校には行かなかった。真面目な千

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806 前編

前編 (1)  平日の昼間。電車の中は、余り混んではいなかった。春の暖かい日差しの中ゆったりした雰囲気が漂う車内で、手にした資料を見つめる親子がいた。 「やっぱりどこも高いわね。東京のお部屋って」  母親がため息交じりに

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傀儡の舞 1-3

(21)  夕方ホームルームが終わると、鈴菜はすぐに教室を出ようとする。 「鈴菜ぁ、今日もリハビリか?」  まだ部活が始まるまで、少し時間があった。早夜子は自分の席に座ったまま、クラスメイトと雑談していた。そのまま首を伸

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傀儡の舞 1-2

(11)  鈴菜はそっと自分の体を抱きしめた。伝わってくる感触に、何の違和感もない。  そろそろ消燈の時間だった。白いチェック柄のパジャマ姿のまま、自室のベッドに腰掛けていた。どうしても、休む気になれなかった。  朝にな

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傀儡の舞 1-1

プロローグ  座席の前の液晶パネルが、飛行機の現在位置を知らせてくる。まだアラスカ辺りだ。日本に到着するまで、まだまだ時間がありそうだ。こんな時は眠るに限るのだが、どうしても眠れない。四年ぶりの帰国に、どうも俺の神経は昂

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成田離婚 後編

後編 (10)  若菜の股間からは、崎野の精液がポタポタと漏れていた。若菜は半失神していた。その顔は、天国を散歩しているかのように幸せそうだ。若菜の子宮はあまりに気持ち良かった。名器と言っていい。精も根も搾り取られて、崎

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成田離婚 中編

中編 (5) 「妻の、若菜さんの様子はどうでしょうか?」  やれやれ、まだ自分の嫁にさん付けか。  崎野は、浩太郎からの国際電話に苦笑した。  浩太郎は今ハワイにいた。一人、新婚旅行のアリバイ作りをする手はずになっていた

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成田離婚 前編

前編 プロローグ  珍しく晴天に恵まれた六月の朝、一台の高級外車が、高速道路を疾走していた。  エンジン音は快調そのもの。車内は揺れもしない。 「すごいなぁ。キャディラックなんて初めて乗ったよ」  革張りの豪勢な後部座席

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恵の先生

「お久しぶりです。春野先輩」  その女の子は喫茶店に入ってくると、目当ての人物を見つけるなり駆け寄ってそう言った。 「恵(めぐみ)さんも元気そうね」 「それだけが取り柄ですから」  恵と呼ばれたその女性は、可愛らしく舌を

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トラップ

「天地気功道場・・・?」  A4サイズのチラシの一番上に、大きな文字でそう書いてあった。 『人生が変わる!』 『病は気から。がんも治る!!』  その下には怪しげな宣伝文句が続いている。  風間紫春(かざま むつき)は、チ

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