第3話
朝日が、細いカーテンの隙間から差込んでくる。
闇を払拭する、爽快な太陽光を浴びると、それまでのすべての事がリセットされ、昨日までとはちがう、また新たな事が起こりそうな、そんな気がする。
鳥の声が聞こえる。
比較的近くから聞こえるその囀り、誰かマンションの住民が餌付けでもしているのだろうか。
しかしこの日、俺を眠りから目覚めさせたのは、爽やかな太陽の光でもなく、美しい鳥の囀りでもない。
俺の股間を、包み込むようなねっとりとした感触だった。
「ん…」
俺はソファーでそのまま眠りについてしまった身体を起こす。
一晩中の運動と、そう寝心地のよい場所で寝たわけでない事が響いて、身体の節々に抵抗がある。
俺は頭を振りながら目を開け、自分の股間を見てみると、そこには既に俺より早く目覚めて、俺のペニスをしゃぶっている景子の姿があった。
「景子、何をしてるんだ」
俺は景子の髪を掴み、景子の動きを制す。
「あん…ご主人様のが、わたしので汚れていたから綺麗にしていたんです」
そういえば昨日……というか明け方か、シャワーも浴びずに寝てしまったんだっけ。
俺は時計を見る。
習慣とは恐ろしいもので、あれだけ激しく運動し、かつ寝たのも明け方だと言うのに、時計は、いつも俺が起床する時間を示していた。
俺はソファーから降りてフローリングに立つ。
少し身体がよろける、さすがに無理をしすぎたか。
いっそのこと学校を休んでしまうという事も考えたが。
俺はともかく景子を休ませるわけにはいかないか……
景子を見下ろすと、景子はいまだ、物欲しそうな顔で俺を見上げていた。
……まてよ?景子?
俺は重要な事に気付き、景子に言った。
「景子、急いで服を着ろ、そして一度家に帰ってから学校に行くんだ」
一瞬景子がきょとんとした顔をする。
「え……でもまだ時間には余裕が…」
ぐいと景子を立たせる。
「お前、俺の家の前を、何人の生徒が通学賂として利用してると思うんだ、そんな中、お前は堂々と俺の家から出て行くのか?このマンションには同じ学校のやつだって何人か住んでるんだぞ」
あ、と景子はつぶやく。
「わかったならさっさと帰れ」
俺はやや冷たく、景子に言う。
「あっ、あの」
すると景子が切羽詰ったように俺を呼びとめる。
「なんだ?」
「あの……」
景子は少しモジモジとする。
「景子、時間が無いといったはずだ、さっさとしないとそのまま裸で放り出すぞ!」
「まっ、またここに来てもいいですかっ」
景子はかなり真剣な顔をしている。
俺は、ふう、とため息をつくと、ソファーに座った。
そして、膝に肘をのっけて、頬杖をつく。
「景子、今も言ったとおり、俺はあんまりお前がこの家を出入りしてるところを他人に見られたくないんだ」
はい、と景子はつぶやく。
実際、景子はその肉体の特徴ゆえ、かなり印象に残るタイプの人間だ。
特に見たのが男だったらまず忘れないだろう。
「じゃあやっぱりだめなんですか…?」
景子がうっすらと涙ぐむ。
しかし、俺に対する依存度が、極限まで高まってしまったせいだろうか、妙に景子の態度が子供っぽい。
やはり、元々、普段は自我が強いが、一度他人に依存するともう歯止めが効かなくなるという、そういうタイプの人間だったんだろうか。
たしかに、そう考えれば、変に貞操観念が高いくせに、一度火が着けば、とことん乱れる事も理解出来る。
「ダメとは言わない、ただ俺が来いといった時以外、ここへ来ることも、この近所に来ることも禁止する」
俺はきつい目で景子を見て答える。
「はい……」
景子はややうなだれたように返事をする。
景子にしてみれば、今の俺の答えは非常に中途半端なものだったのかもしれない。
「わかったならさっさと帰れ、服は玄関の所に置きっぱなしのはずだ」
「あ、あの……」
景子はまだ何かいいたそうな顔で俺を見る。
「なんだ」
「これ……持って帰っていいですか?」
「これ?」
「これです」
景子はそういって、自分が締めている赤い皮製の首輪を手でなぞった。
俺との奴隷契約との証とも言える首輪をいつでも携帯したいって所か。
俺はため息をついた。
「勝手にしろ」
景子の顔がぱっと明るくなる。
「ただ、鎖は置いていけ、そんな物は持ってたってしょうがないだろう、それと絶対人前で、してるところはもちろん、所持しているところも見せるな」
「わかりました」
景子はそういってさっそく首輪を外す。
そうして鎖を取ると、胸元にそれを抱きしめた。
「ほかになにかあるか?」
俺がそう言うと景子は首を振る。
「だったらさっさと行け、教師が遅刻したら洒落にならないだろう」
「はい」
景子はそう返事をすると、首輪を抱きしめたまま、玄関の方へ小走りで向かった。
俺はそれを見送ると立ちあがる。
とりあえずシャワーでも浴びるか……。
そう思い、俺は浴室へと向かう。
浴室は、トイレとともに玄関近くにあるので、その途中で玄関で着替えをしている景子の姿が俺の目に入った。
俺はふと思う事があり景子に近づく。
景子は、ちょうどその大きな胸をブラの中にしまうところだった。
「あ……」
景子が、俺が近づいてきた事に気付き、少し恥ずかしそうな顔をする。
俺の前であれだけの羞恥をさらしておいて、着替えを見られるのは恥ずかしいってのか?
俺にはよくわからない感覚だ。
景子の軽くカールのかかった髪が、多少ボサボサになっている。
顔ぐらい洗わせればよかったかもしれない。
「あの……ご主人様?」
景子が着替えの手を少し休めて俺の事を見る。
「俺にかまうな、さっさと着替えろ」
「は、はい」
景子は慌てて、着替えを再開する。
ブラウスの襟元をリボンでとめ、スカートとスーツを身に着ける。
そしてポケットからハンカチを取り出すと、眼鏡と顔の汚れを可能な限り拭き取る。
さらに床に落ちていた手提げバッグの中から、ブラシを取り出し、それで髪をすいた。
景子の顔が少しはまともに見られるようなものになる。
そして、手提げバッグに首輪とブラシを入れると、すこしためらうように、俺の事をちらちらと見上げた。
まだ未練があるらしい。
「準備が終わったならさっさと出ていけ」
俺は冷たく景子に言う。
「あ…はい」
景子は玄関の敷居を降り、ヒールを履くと俺の方を振り向く。
「あの…それじゃあご主人様、失礼します」
そういって頭を軽く下げた。
そして、俺は景子のこの行為を見て、心の中で舌打ちする。
やっぱりか……。
俺はそう思うと、拳を握り。
『ドン』
と強く玄関の壁を叩いた。
ビクッと景子が身体を震わす。
「ご、ご主人様…?」
俺は景子に顔を近づける。
そして俺は、今までの俺の行為からは想像もできないような笑顔を浮かべた。
景子は、昨日から今日にかけた中で、一番の戸惑った表情をしている。
俺は、そんな景子に、その表情を崩さないまま言った。
「橘先生?そこの敷居を越えたら、あなたは俺の先生ですよ?」
忘れさせてはいけない。
俺の足元にあるのは境界線、その境界線の向こうとこちら側では、お互いの立場は天と地ほども違う。
「あっ……」
景子が最初に見せたのは悲しみの表情。
今立っているその場では、自分は奴隷として振舞ってはいけないという事実からくる悲壮感。
しかし、そんな事を繰り返していれば、更に俺の機嫌を損ねると理解したのか、キリッとした表情となる、それはいち女教師の表情だ。
ん、と軽く咳き込み、声を整える。
そして俺に向かって言った。
「それじゃあ私は一度家に帰ってから学校に行きます、御影君も遅刻しないように」
俺は、繕った顔を崩し、ふんと笑う。
そして、景子の顎を手に取り、顔を引き寄せた。
「あ……」
景子がトロンとした顔つきになる。
「み、御影君、なにをするの、やめて……」
だが、かろうじて理性をたもっている、といった感じで声を絞り出す。
「………合格だ」
「あ……」
俺は手を放す。
景子はよろよろと扉によりかかった。
「先生、忘れないでくださいよ、あなたは俺の教師なんですから、その生徒に対するあらぬ噂がたたないように十分配慮してください」
「わ、わかり……わかったわ」
景子は、ぼうっとした表情でつぶやくように答えた。
「じゃ、いいですよ、先生も遅刻しないように」
俺は、景子がよりかかっている扉のノブを回し、開ける。
「あ…」
景子はよろけるような格好で外に出される。
俺は、まだどこか名残惜しそうな顔をしている景子をよそに、そのまま冷たく扉を閉めてしまった。
このままだと、いつまでもここに居座りかねない。
さてと……。
俺は靴箱の上においてある時計を見る。
どうやらいつも通りの時間に学校にいくのは難しそうだ。
そんな事を考えながら、俺は浴槽へと向かう。
その途中で思わず膝が砕けそうになった。
俺は壁に手を添えながら歩く事になる。
……景子の方がよっぽどダフだな。
俺は思わず苦笑をしていた。
景子の様子がおかしい。
それは朝のホームルームの時からそうだった。
顔を赤らめ、腰をもじつかせ、どこか視線が熱っぽい。
そう、明らかに『発情』しているのだ。
ただ、それが変なのは、それが、俺を意識している場所で、とかそう言うわけでもなく、ところかまわずに、といった感じであるところだ。
ちょうど今は、3時限目の景子の授業が終了した休み時間。
授業中俺を見て、と言う事なら理由はわかるが、明らかに、この教室にくる前からそんな状態、という感じだった。
勘がいい生徒たちは、景子の様子に関して、所々で噂し始めている。
こう言う時は、男子よりも女子の方が鋭いのが特徴だ。
このまま放って置くわけにもいかないな、と思い、俺は休み時間が終了する間際、景子になにがあったのかを確認するために教室から出ていった。
俺は、自分のある教室のひとつ下の階を歩いている。
次の時間、景子はこの階にあるクラスで景子が授業を行うからだ。
人の目に付かない場所で景子と接触するには、景子が授業に出向いている途中を捕まえるしかない。
やがて4時限目のはじまりを告げるチャイムがなる。
それと同時に、階段を昇りきり、この階の廊下へと景子が現れた。
俺は、景子と視線を合わせないようにして、景子の方に向かって歩く。
「あ……」
景子が俺の事に気付いたようだ、だが俺はあえて景子を無視するようにそのまま歩く。
景子も、俺を見た瞬間は立ち止まったものの、俺の意図を踏んでか、すぐに俺と同じよう、俺と視線をあわさないように、こちらに向かって歩き出した。
しかし、こうして景子の事を凝視しなくても、その様子が異常である事がわかる、歩き方にもどこか、しなを作っている感じだ。
俺はそのまま歩き、景子とすれ違う。
そして、そのすれ違いざまに、景子がピクンと身体を震わせた。
そう、俺はその瞬間に糸を景子に打ち込んだのだ。
『昼休み…体育倉庫に来い』
「え?」
景子が立ち止まる。
俺は、糸を通し『声』だけを景子に送る。
『グランド脇の体育倉庫だ、忘れるな』
景子が俺の方をじっと見ているのが気配でわかる。
だが、俺はそれを無視して糸を抜き取る、そして、そのまま、景子が向かうべき方向とは反対側を目指し、歩いていった。
……さて景子、お前が何をたくらんでいるか、後でたっぷりと聞かせてもらうからな。
4時限目終了のチャイムが鳴る。
級長の号令が終了すると同時に、クラスの男子達が一斉にと教室の外に飛び出す。
どこの学園でも見られる、購買の食品の争奪戦へに向けての行為だ。
俺は、そんな慌しさに目を向けるわけも無く、事の喧騒が収まるのを待つと、ひとり教室を出ていった。
階段を降り、下駄箱で外履きに履き替える。
さすがに、この昼休みが始まってまもないこの時間帯に、校舎から外に出ようと考える人間はいないようだ。
人々のざわめきは、この周辺からは聞こえない。
そして、俺は校舎を出ると、景子を呼び出した体育倉庫に向かった。
どこの学校でもそうだと思うが、体育倉庫は、グラウンドのトラックの脇にあり、その中にハードルや跳び箱、白線引きなどがしまってある。
体育館にも体育倉庫はある、確かになにかを行うなら、衛生的にもあちらの方がいいのは当然なのだが、昼休みともなると、体育館の方は、体育館でボールを使う人間がいたりと非常に人の出入りが激しくなる。
だから、あえて俺は景子にグランドの方の体育倉庫を指定した。
予想通り、体育倉庫に来ると誰もいない。俺は中で待とうと倉庫のドアを開けた。
建付けが悪いため、かなり力を入れないとドアは開かない。
力を入れてドアを開けると、砂煙が舞った。
そして、そのドアをくぐり中に入ると、そこには人影があった。
景子だ、景子がすでに中で待機していのだ。
手には教科書や出席簿を持ったままだ、おそらく授業が終わったら、職員室に戻らずそのままここにきたのだろう。
ちゃんと、時間通りに授業を終わらせたのかも怪しい。
景子の様子は変わりない、相変わらず顔は赤く、上気し発情している感じだ。
いや、俺にここに呼び出された事もあってか、それはさらに強いものになっている、景子の4時限目の授業内容が心配になるぐらいだ。
景子は俺の方をじっと見て、モジモジとしている、どうすればいいのかわからない、と言った感じだ。
そうか、それじゃあお前の枷をはずしてやるよ……
俺は景子ににじり寄る、そして景子に向かって言った。
「景子、いいぞ、この中では奴隷として行動して」
俺がそう言うと、景子はなにか力が抜けたように、その場へと崩れた。
「ご主人様ぁ…」
涙目で景子は俺の事を見上げる。
とりあえず、外の体育倉庫とは言え、昼休みも後半になれば、次の授業の準備で来る人間もいるかもしれない、俺は時間をかけないため、単刀直入に景子に聞いた。
「で、景子、お前は何をやっているんだ」
俺の言葉を聞くと、景子はノロノロと立ちあがる。
「ご主人様……見ていただけますか?」
景子が熱っぽい声で俺に言う。
俺は黙って頷いた。
すると、景子は俺の反対側を向き、そこにあった跳び箱に、前かがみになって右手をつく。
そして、顔を俺の方に向け、左手で赤いスカートを捲り上げた。
「ご主人様……見てください」
景子は腰を突き出し、俺によく見えるような格好をする。
すると、そこに、明らかに普通の状態とは違う光景が現れた。
「……へえ」
景子のちょうど尻の間に、なにかの突起物がパンティーとパンティストッキングを持ち上げるような形で存在していた。
「もっとよく見せろよ」
「はい……」
景子はスカートを、落ちない所まで捲り上げると、ストッキングごと、パンティーをずり下ろした。
ニチャと、ヴァギナとパンティーの間で、愛液の糸が引かれるのが見えた。
そして、身体の上半身を跳び箱にすべて預け、右手も後ろにもっていき、両手で尻たぶを開く。
「どうですか…ご主人様」
景子が開いたそこには、直径3センチぐらいの、黒々としたディルドーがあり、深々と景子のアナルに突き刺さっていた。
なるほど…これを朝から挿れていたのか、そりゃあ発情もするよな…
景子の尻が、小刻みに震えている。
「で、景子、お前はなんでこんな事をしてたんだ?俺はこんな事しろとは一言も言ってなかったと思うが」
景子が顔を赤らめて答える。
「ご主人様に……1日でも早く私のお尻の穴を使っていただきたいと思って…自分で広げました」
そうか、と俺はつぶやき、景子に近づく。
そしてふと疑問に思った事を景子に聞いた。
「景子、こんな物、買う暇はなかったと思うが、それとも俺の奴隷になる前からお前はこう言う物を持ってたのか?」
景子が首を振る。
「昨日…ご主人様のお宅にうかがう前に、学校帰りにお薬と一緒に買ってきました…」
「俺に相手にされない時に使うため買ってきたってとこか」
景子は恥ずかしげに頷いた。
そして、更に俺によく見えるよう尻を広げる。
「ご主人様…これで大丈夫だと思います……どうか、私のお尻の穴を使ってください…」
ふんと俺はつぶやいて景子に挿さっているディルドーを見る。
「俺のはもう少し太いぞ、本当に大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫です、まだもう少し余裕がありますから……」
だが、そのぴっちりとしたはまり具合からは、そうは思えない。
もう少し拡張が必要だな。
「じゃあ景子、大丈夫って証拠を見せろ」
「しょ、証拠?」
「ああ、今からそいつを使ってオナニーしてみろ」
「え?」
「お前、オナニーでアナル使った事ないんだろ、いい機会じゃないか」
俺は、ディルドーの底に指をあて、ズッと中に押し込む。
「ひっ」
そしてそのまま掴んで、出し入れをはじめた。
「ああっ」
景子がビクンと上半身をのけぞらせる。
「こう言うふうにやるんだ」
そして俺は、ギリギリの所までディルドーを引きぬくと、またズブズブと一番奥まで沈めた。
「ひああっ」
景子が身体をビクビクと震わせる、朝からずっと入れていたため、感じやすくなってるのかもしれない。
「さあ、いつまで俺にやらせてるんだ、自分でやれ」
「は、はいっ」
景子はそう言うと背中の方から手を回してディルドーを掴み、自ら動かし始めた。
出し入れするたびに、景子のアナルが捲くれ、ヌプッヌプッという淫美な音が体育倉庫に響く。
「景子、俺とのアナルセックスの予行練習だぜ、俺はそれを見て、どれくらいの強さでおまえとやればいいかって判断をするんだぞ、そんな弱々しい動きでいいのか?」
俺がそう言うと、景子のディルドーを動かす手の動きが、格段に早くなった。
「ご、ご主人様ぁ、もっと強く、もっと激しく景子のお尻の穴を使ってくださいっ」
そのアナルのディルドーの動きにあわせるように、ジュクジュクとヴァギナからも愛液が噴出す。
そして、景子はあいていた片方の手で、愛液をすくうようにヴァギナにも触れようとした。
だが、俺はそれを制す。
「景子、結局そっちに頼るんなら俺は前にしかしてやらないぞ、アナルだけでイケるところをちゃんと俺に見せろ」
「ご、ごめんなさいっ、景子はお尻の穴だけでイキますから、ご主人様、見ていて下さいっ」
景子の動きが更に早くなる。
「ご主人様っ、気持ちいいです、わたし、お尻の穴が気持ちいいですっ」
景子はブルブルと身体を震わせている。
俺は、景子のその様子を見ながらほくそ笑むと、足元に転がっていたある物を拾い上げた。
それはリレーの時に使うバトンだった。
俺は、景子のそばに近づき、バトンの端の方を握る。
そしてそれを景子の尻に振り下ろした。
『パアン』と派手な音が響く。
「あうっ」
景子が動きを止めた。
「ご主人様?」
景子が俺の事を見上げる。
「続けろ」
そういって俺はまたバトンを振り下ろす。
「うっ…はいっ」
景子は再び、ディルドーのピストンを開始する。
俺は、更に何度かバトンで景子の尻を打った。
これは以外にいい道具かもしれない、樹脂製のバトンは中が空洞だ、いくら強く打ちつけても、重い衝撃は発生せず、身体の表面だけにダメージを与える。
おまけに音がかなり大きい。
俺は、何度も景子の尻を打ち据えた。
やがて、数え切れないほどのスパンキングを受け、景子の尻が真っ赤に貼れあがる頃、景子の声がいよいよ切羽詰った物になってきた。
「ご主人様っ、ご主人様ぁっ」
ディルドーの出し入れも、だいぶスムーズな物になってきた。
「わ、わたしっ、もうイキそうですっ」
俺はバトンを景子の尻に打ち下ろす。
「アナルでオナニーして、尻を叩かれてイッちまうのか?とんでもない変態だな、お前は」
俺の言葉に景子が激しく反応する。
「そうですっ、わたし変態です、お尻だけでイッちゃいますっ」
景子がひときわ深く、ディルドーをアナルに突き刺す、そして立っている足がピンと伸びた、まさにイク直前だ。
「よし、イケっ」
俺も今まで以上に力を入れて景子の尻を叩いた。
「あっあああっ!」
ビクンビクンと景子が身体を震わせ、果てる。
「くぅ……」
そして、そのまま、跳び箱に身体を預けて、ぐったりとしてしまった。
大きく肩で息をする景子。
俺は手に持っていたバトンを足元に落し、景子のディルドーを掴む。
「ん……」
そして俺はそれを乱暴に抜いた。
「ふあああっ」
景子が身体をビクリと震わす。
景子のアナルは、ディルドーの大きさうんぬんより、あまりにも長時間拡張をしていた事により、なかなか閉じようとはしない。
俺は中指を、その開きっぱなしの景子のアナルにねじ込む。
「あん……」
そして、昨日やったように、更に人差し指を加え、2本の指を景子のアナルに挿れた。
昨日とは比べ物にならないぐらい、景子のアナルは2本の指を簡単に飲み込む。
俺は乱暴に指をアナルの中で動かす。
「あふうっ」
景子が身体をよじって悶える。
景子のアナルはすでに、きつい時はきついが、緩める時は指の2本ぐらい、ほとんど抵抗無く挿れられるぐらいの物になっていた。
「ご主人様ぁ」
景子が甘えるような声を出してくる。
そうして、俺が指を突っ込んでいるアナルに、自分の指を添え、広げた。
「ご主人様ぁ、見ていただけました?わたし、大丈夫です、わたし、ご主人様のオチンチンお尻の穴に受け入れられます……だから、お願いしますぅ」
俺は景子のアナルから指を抜く、そしてファスナーを下ろし、自分のペニスを取り出した。
「ああっ…」
景子が期待の目で俺のペニスを見る。
「いいぜ、景子、挿れてやるよ」
そう言って、俺は自分のペニスの先を、景子のアナルにあてがう。
景子のアナルが、まるでそれ自身に意思があるように、うごめき、俺のペニスを飲み込もうとする。
「景子、わかってるな、挿れる時は緩めて、抜く時に締めるんだぞ」
「はいっわかってますっ、だからお願いしますっ」
景子は待ちきれないといった感じで腰を押し付けてくる。
俺は両手でその景子の腰をしっかりと掴む、そして自分の腰を押出し、景子の腰を引きつけた。
ズブズブズブと俺のペニスが景子のアナルに埋まっていく。
「あああっ」
景子が跳び箱の端を強く握る。
俺のペニスが一番奥まで挿さると、景子のアナルがこれ以上ないぐらいに俺のものを締め付けた。
俺は中の感触を確かめる、挿れた時の感じからすると、かなり激しくやっても大丈夫だろう。
「景子、どうだ初めて俺のものをアナルに受け入れた感想は」
俺は景子の顔を覗き込む。
「う、嬉しいです……」
よく見ると景子は泣いていた。
「ご主人様に、お尻の穴に挿れていただいて……わたしのお尻の穴を使っていただいて……やっと本当のご主人様の奴隷になれた気がします」
……そういえばそういう事を昨日言っていたな。
景子が更に腰を俺の方に突き出した。
「ご主人様ぁ、もっと思いっきりお尻の穴を使ってください、私の一番の喜びは、ご主人様に使っていただいて、ご主人様に満足していただける事ですっ」
俺は、景子の腰を更に強く掴む
「ああ、俺のためにここまで広げてもらったんだ、もう遠慮はしないぜ、とことん使ってやる」
俺は、一度ギリギリ抜ける間際までペニスを引きずり出すと、それをまた一気に奥までめり込ませる。
それを俺は何度も繰り返した。
「ああっ、ご主人様、もっと使って、わたしのお尻の穴を擦りきれるぐらい使ってぇっ」
俺は腰の動きを早める、抜くたびに景子のアナルが捲くれるが多少のことならお構い無しだ。
「ご主人様っ、気持ちいいです、さっきのオモチャなんか比べ物になりません、気持ちいいっ、気持ちいいっ」
俺は、半ば半狂乱になって悶える景子を見ると、背中に貼り手をくらわした。
パンと大きい音がして、景子がのけぞる。
「ご主人様っ?」
景子がこっちを向く。
「景子、そんなに気持ちいいか、だったらもっとよくしてやるよ」
「え?」
俺はそう言って、足元に落ちていたバトンを拾い上げる。
「景子、両手を後ろにまわせ」
「え…こうですか?」
景子は言われた通りに、両手を後ろにまわす。
「そうしたらこれを両手で握るんだ」
「は、はい」
景子はバトンを両手で握る、こうする事により、景子がバトンを放さない限り景子は後ろ手で縛られたと同じような体勢となる。
「いいか、絶対に放すなよ」
「わ、わかりました」
そして俺は、景子の返事を確認すると、つながったまま景子の両足をもって担ぎ上げた。
景子はまるで子供が小便をさせてもらっているような格好になる。
「あ……」
さすがに景子もこの格好は恥ずかしいようだ。
だが、俺がそのままの体勢で歩き始めると、歩くたびに突き上げられる形になるので景子はそんな事も忘れ、悶え始める。
「あっ……あっ……ご主人様ぁ」
俺は、体育倉庫の中を半分ほど歩き、目的の場所に到達する。
そして、足を引っ掛け、あるものを引きずり出した。
それは、陸上競技につかう、白と黒の模様が入ったハードルだ。
「ご、ご主人様、何をするんですか?」
「まあ、簡易三角木馬ってとこかな」
え?と景子がつぶやくよりも早く、俺は、景子のヴァギナがちょうど、ハードルのバーの上にあたるよう、アナルを貫いたまま、その上に景子を下ろした。
「ああっ、そんな、ご主人様ぁ」
俺はアナルへのピストンを再開する、もちろん、景子のヴァギナが強くハードルにこすれるように。
「ひいいっ」
景子がこれ以上ないぐらいの声をあげる。
「景子、バトンは絶対に放すなよ、泣き言も言うなよ」
「は、はい、ご主人様の好きなようにしてくださいっ」
俺は、ピストンをしながらじわじわと景子を担ぎ上げている両手から力を抜いていく、せっかくの三角木馬だ、ただ普通にこすり付けるだけじゃ面白みがない。
「ご主人様ぁっ、つぶれちゃいます、わたしのオ○ンコつぶれちゃいますぅっ」
「ふん、そんなハードル濡らしてるやつのセリフじゃぁ信憑性がないな」
景子のヴァギナを押し付けているハードルは、たった今はじめたばっかりだと言うのに、もう下の方まで愛液が落ちるぐらいに濡れていた。
「ご主人様、わたしいっ」
「なんだ、気持ちいいのか?」
景子のアナルがぎゅうぎゅうと俺のペニスを締め付けてくる。
「はぃいっ、でも、気持ちよすぎますっ、わたしっ、変になっちゃいます、狂っちゃいますっ」
俺は景子の耳元で囁く。
これ以上ないぐらいやさしく。
「いいぜ景子、好きなだけ変になれよ、俺の奴隷でいる間は、いくらでも変になる事を許可してやる」
「いいんですかっ?」
「ああ…好きなだけ狂いな」
あああっ、と景子は身体を震わせる。
「ご主人様っ、もっと、もっと強く景子のお尻の穴をご主人様のオチンチンでしごいてくださいっ、もっと強くわたしのオ○ンコ押しつけてくださいっ」
俺はその言葉を聞き、景子の抱えていた足から、その体勢を崩さない程度に力を抜く、これによって景子は、ほぼ完全に自分の体重を、ハードルの細い板の部分だけで支える事になった。
そして更にアナルへのピストンを強くする。
景子は今、ハードなアナルセックスとともに、普通に三角木馬にのっている状態で前後に身体を揺すられているような状況を与えられたのだ。
「ひいっ、狂いますっ、もう何も考えられませんっ」
それでも俺はまだ許さない。
今度は更に自分の体重もかけて、景子にのしかかるように腰を動かす。
ハードルが更に景子のヴァギナに食い込んだ。
「ひいいっ、いたいです、苦しいです、でも、それが全部気持ちいいです」
景子の方も、自ら腰を動かして、ヴァギナがこすれるようにしている。
「ご主人様ぁっ、わたしもうだめです、イク事を許してください」
俺は景子の身体を左右に揺らす。
ハードルの、さらにその尖った部分が景子のヴァギナをえぐった。
「ひいっ」
景子のアナルが俺のペニスを締め付ける。
「いいぜ、俺もお前の中に出してやる」
「お願いしますっ、ご主人様のものを、いっぱい景子のお尻の穴の中に流し込んでくださいっ」
「ああ、たっぷりと味わいな」
そうして、俺は体重をかけた状態から、一転、おもいっきり前に腰を突き出す。
そのせいで、景子のヴァギナが、体重がかかってめり込んでいる状態から、一気に30センチくらいずり動いた。
「ひああああっ」
景子の身体がビクンビクンと震える。
俺はそれに合わせて、ありったけの精を、景子の直腸内に注ぎ込んだ。
「ああっ」
景子はおもいっきりのけぞった後、ハードルの上に倒れ込む、こんな状態でも後ろ手に持ったバトンを放さないのは見上げた根性だ。
俺の精は、2度3度と景子の中に放たれる。
「ああ…ご主人様のがいっぱい……私の中に……」
景子はうっとりとした表情をしている、アナルはまだ俺の事を締め付けていて、脈打っている俺のペニスの感触を味わっていると言う感じだ。
俺は景子からバトンを取り上げ、それを放り投げる。
そして俺はまた景子を担ぎ上げた。
「あん」
そのまま俺は景子を運び、先ほどと同じ場所で、景子の身体を跳び箱に預けさせた。
そして、その状態から俺のペニスを景子のアナルから抜き出すと、その跳び箱の上においてあったディルドーを手にとり、俺の精が流れ出ていかないうちに、元あったように、景子のアナルに押し込んだ。
「ああっ」
景子の身体がブルブルと震える。
俺は、パシンと軽く景子の尻を叩く。
先ほどのスパンキングのせいで、景子の尻は、まだ真っ赤に腫れていた。
「景子、せっかく中に注いでやったんだ、どうせなら家に帰るまでそのまましまっておきな」
景子はディルドーの底をなでる。
「ああ……ご主人様のがいっぱい…私の中に……」
景子はいまだ、恍惚の表情が収まらずに、その気分は夢心地と言った感じだ。
そんな景子に俺は言う。
「景子、今日最後の仕事だ、俺のを綺麗にしろ」
景子はその言葉を聞いてふらりと立ちあがる、そして俺の足元にひざまずいた。
「ご主人様……綺麗にさせていただきます」
そして景子は俺のペニスをしゃぶり始めた。
尿道の中からカリの裏まで丁寧に舐めとっていく景子。
そんな景子に俺は言う。
「景子、お前の望む通り使ってやったんだ、礼ぐらい言ったらどうだ」
「はい……」
景子が俺を潤んだ瞳で見上げた。
「ご主人様…今日は景子を使っていただいてありがとうございました…景子は幸せです、また今度も使ってください……」
そう言うと、景子は再び俺のペニスを口に含んだ。
俺は景子の頭に手を置く。
景子は嬉しそうに鼻をならした。
……さて…これでいい感じに景子は仕上がったな、もうこれ以上手を加える事もないだろう
……となると次は
俺は景子の頭においた手の指先から糸を出す。
それは鮮やかな光を放ち、まるでもっと力を使いたいと誇示しているようにも見えた。
―――新しい獲物か!
すでに……次の獲物として標準をあわせていた女がいた。
その女の名前は「北条茜」
俺の、2つ隣のクラスの女だ。
やや赤茶けたショートカットの髪に、細身のしなやかな体躯。
凛とした雰囲気を纏い、成績も優秀で、どちらかと言えば異性もさる事ながら、同姓に人気のでそうな、そんなタイプだ。
聞いた話では、かなり有名な大学教授の娘らしい。
そのせいか、生徒会副会長などという肩書きも持っていた。
そう言った要素を含めて、この学校内ではかなり目立つ存在だったのだが、俺は今までこの女に接触を持つような事をしなかった。
たしかに美少女、という名称にふさわしい容姿を持つ女だったが、それゆえ、目立つような行動を取ることをよしとしない俺は、あえて彼女に興味を持たないようにしてきのだ。
しかし……。
ヒュンと俺は指先から糸を出す。
糸は螺旋状に昇り、天井の方まで到達した。
この糸の力があれば……。
誰にも気付かれることも無くあの女を俺のものに出きる。
景子のように、俺の言うことに絶対服従の奴隷にすることが出来る。
俺は糸をしまう。
そして、ちらりと時計を見た。
時刻は午前8時をまわった、教室に差込む朝日も、だいぶ明るいものになってきている。
そう、俺は既に学校の教室に待機し、北条茜を待っていた。
北条も俺と同じ、始業時間よりもだいぶ早く学校にくるタイプの人間なのだ。
俺は机の上に置いていた足を下ろし、座っていた自分の席から立ちあがる。
そろそろ北条がこの教室の前を通り、自分の教室へと向かう時間だ。
俺は教室のドアに近づいていく、そしてドアに手をかけた。
しかし、そこで、俺はふと動きを止めた。
これから俺は北条を、景子にしたように俺の奴隷にするつもりだ、だが―――
なにか心に引っかかるものがあった。
それは北条に対する俺の特殊な感情。
これからあの女を俺の奴隷にできる事への高揚感とも、ましてや青臭い恋愛感情とも違う……。
何か…惹かれる。
確かに魅力ある女であることには間違い無いのだが……。
それとは何か異質のもの。
それは、前々からほんのわずかながら感じていた物だが、この糸の力を手に入れてからいっそう強くなっていた。
そして、俺の勘が、それが危険なものだという事を告げている。
ドアにかけている手に、じっとりと汗がわく。
しかし、俺はそんな自分をあざ笑った。
何をビビる事がある?
この糸の力は十分というほど理解したはずだ、不安な事などない。
やがて廊下の先にある階段の方から、リノリウムを、上履きのゴム底で踏み鳴らす音が、かすかに聞こえてきた。
北条茜に間違いない、部活動の朝練があるわけでも無いのに、これだけ早く学校にくる酔狂な人間は、そう多くはないだろう。
俺は音も無くドアを開けると廊下にゆっくりと出る。
そして、不自然さの無いように、北条の方へ歩き始めた。
階段を上りきった北条は、右手に鞄を持ち、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる、俺のことなど気にかける様子も無いといった感じだ。
しかし、改めて思うが、確かに人気になるだけの事はある。
その整った顔立ちは透明感を纏い、まさに可愛らしさと、美しさのちょうど中間に位置している。
そして、天然であろう赤茶けて朝日に透けるその短い髪が、紺がベースの制服に映え、どこか神秘的なものを感じさせていた。
だが、それとともに感じる、背筋をピリピリと刺激するような緊張感。
俺はかすかに笑う。
かまうもんか。
俺はそう思い、北条のことなど眼中にないように、目をそらしながら歩く。
そして、北条との距離が20メートルほどに縮まったとき。
俺は力を発動させた。
ザッと紫色に染まる廊下。
天井、壁、床、すべてが紫の世界へと変化する。
その中で俺は顔をあげた、そして北条の顔を見る。
そう、糸を打ち込むべきポイント見定めるために。
しかし―――
「!」
俺は思わず歩みを止めてしまった。
―――みえない!?
そう、今まで、どんな人間だって見えていた、紫のベールの向こう側に見えていた、糸の太さと同等の、ほんの小さな、額の中心のポイント、だが。
それが、どういう訳かこの北条茜に限っては見ることが出来なかった。
俺はさすがに狼狽し、その場に立ち尽くした。
北条の方は、そんな俺の様子などおかまいなしといった感じで、俺の脇を通過する。
いや、通過しようとした。
―――え?
北条が、俺のすぐ脇で止まったのだ。
そして俺の方を向く、その目がまるですべてを見透かしたように、俺を射抜いた。
北条の口が開く。
「御影…弘樹君だったわよね」
俺は北条を見下ろす。
これだけ近づきながらも、やはり北条の額にはポイントが現れない。
北条に対して何も言えない俺。
そんな俺に対する北条の視線が更に鋭くなる。
そして、俺にこう告げた。
「あまり―――調子に乗らないほうがいいわよ」
「―――っ」
俺は2、3歩引き下がる。
この女は俺の力を知っている?
背筋に冷たい物が走った。
微動だにせず、俺を見つめつづける北条。
そして北条は続けてこう言った。
「このままだと、そのうちに人がくるわ……放課後に、今のこの場所で」
そういうと、北条は再び正面を向き、自分の教室に歩いていった。
俺はしばらくその場に立ち尽くす。
頬を冷たい汗が流れる。
そして俺は、拳を強く握り締めると、ガンと廊下の教室側の窓サッシを殴りつけた。
ちっ………。
じわりと拳に痛みが広がる。
あの女……。
背筋の寒さはまだ取れない。
あの俺を射抜く視線が脳裏にこびりついている。
俺に指図するってのか……。
俺にある感情が芽生えてくる。
それは、緊張感と恐怖感と供にある、高揚感にも似た感情。
また、自虐的な笑いがこみ上げてきた。
―――上等じゃないか
冬の日の入りは早い。
放課後の教室は、授業が終わり小一時間もしないうちに夕暮れへと染まる。
カラリと窓を開けると、グランドに連呼する部活動の生徒たちの掛け声が飛びこんできた。
俺は、その窓を空けたまま自分の席に座る。
自宅がこの学校からそう離れていない俺に対し、放課後いつまでたっても教室に残っていることを疑問に思う奴は少なかった。
俺は机にうつぶせ考える。
北条茜、あいつは何者だ?
なぜあいつには糸を打ち込むポイントが現れない?
俺のこの能力は、糸をポイントに、正確に打ち込んでこそ、その力が発揮される、その大前提がある以上このままでは、俺は北条に何ひとつすることができない。
どんな原理でそれを防いでいるのか……単なる体質なのか、それとも意図的に行っているのか。
いや……
『調子にのらないほうがいいわよ』
あの時の北条の態度、あれは明らかに俺のこの能力を知っているというものだった。
だとしたら、意図的に防いでいるといった方が正しいだろう。
そして……
そもそも、なぜあいつはこの能力を知っている?
俺は思考をめぐらせる。
おそらく……
頭の中で、なにかチリチリと火花が散るような感覚がした。
俺はそれを感じ取ると立ちあがる。
確かに、北条がどうやって防いでいるかわからない、だが―――
もうひとつの疑問の方については、俺はあらかた予想がついていた。
なぜあいつは俺の能力を知っているのか。
今、俺が頭の中で感じているものが、その証拠といえるかもしれない。
頭の奥で生じるかすかな刺激。
これは、感じているのだ。
北条が近づいている事を。
俺は自分の手元を見る。
もし、本当に俺の能力が通用しないのなら、肉弾戦に持ちこむしか勝機はない。
防具になるか……?
俺はそう思い、皮製の学生鞄を手に取った。
そしてドアの方へと向かう。
こうなったらもう開き直るしかない、わからないことがあるなら本人に聞けばいい。
俺は勢い良くドアを開けた。
廊下は、教室と変わらず、その全体を夕日の朱に染めていた。
俺は教室から出ると、その廊下の対面側に行き、背中を窓の縦のサッシに預ける、そして、バサッと鞄を足元に落とした。
目の前には、曇りガラスの向こうの、夕日に染まる俺の教室。
俺は首を横に向ける、この階の、すべての教室の出入り口が見渡せた。
頭の中のチリチリという衝撃が強くなる。
近い―――
やがてカラ、という音とともに、俺の教室の、2つ隣の教室のドアが開く。
そして、そのドアの向こうから、北条茜が現れた。
ピシャッとドアを閉めると、北条はまるで、朝の再現のように、俺など眼中にないがごとく、俺の方に向かって歩き出した。
その様子からは、とてもこれから俺と対峙するとは思えない。
北条は、そのままゆっくりと歩いてくる、教室をひとつ越え、そして―――
俺の前で止まった。
無言のまま、北条は俺の方を振り向く。
振り向いた拍子に、揺れた赤茶けた短い髪が、教室の方から差込む夕日の光に透けて、神秘的な輝きを放っていた。
そんな北条が俺に向かって口を開く。
「単刀直入に言うわ」
北条はあのすべてを見通すかのような目で俺を見る。
「あなたのその力、今すぐに返してくれるなら、あなたをこのまま無傷で帰してあげる」
……やっぱりか。
間違いなくこの北条は俺のこの能力を知っている、そして―――
「返さないって言ったら?」
俺は木の枝で鼻をくくるような返事をする。
「その時は……」
すうっと北条が右手を上げる。
……間違いない・
そして俺に向けて手のひらをかざした。
「無理やりにでも返してもらうわ」
……コイツは
カッと北条の手のひらが光を帯びる、そしてその手のひらか出てきたものは、真紅の―――
『俺と同じ力を持っている!』
―――赤い糸!
俺は腰を沈めて戦闘態勢を取る。
北条は一切表情を変えない。
ただ、その夕日の朱色をも圧倒するような、赤い光を放つ糸を、手のひらから俺に向けているだけだ。
すぐに攻撃はしてこない、余裕のつもりか。
「もう一度言うわ、あなたの糸の力、今すぐ返しなさい」
ふん、と俺は悪態をつく。
「返せって事は、これはお前の物なのか?」
北条は少し間を置いて答えた。
「……似たようなものよ」
俺は、会話の合間を縫って、能力を発動させる。
北条の糸をも覆い尽くすような紫のベールがあたりを包んだ、しかし。
ちっ……。
朝と同じように、北条の額にはポイントが現れなかった。
「どうやら、わかってくれないようね……」
ヒュッと北条の糸が鎌首を上げる。
だが、俺はそんなのお構いなし、と北条を見上げる。
こうなったら……
スルッと俺も右手中指から紫の糸を出した。
俺はうすら笑いを浮かべる。
―――適当にあたりをつけてぶち込んでやる!
ビュッと垂れ下がっていた紫色の糸が、北条の額めがけて飛び立たった。
北条へ高速で向かう俺の糸。
しかし、北条はこの様子を見ても何も動じない。
俺にコイツの糸が見えているのだから、この女にだって俺の糸が見えているはずだ。
だが相変わらず、北条はよけようとも、またその手のひらから出した糸で俺を返り討ちにするような動作もみせず、ただその動きを眺めていた。
所詮は当てずっぽうと、たかをくくっているのか!?
一直線に北条の額へと向かう俺の糸。
しかし、それは違った。
まさに俺の糸が、北条に到達しようとするその刹那。
『ピィン』
この世のものとは思えないような澄んだ音が響いた。
「!」
そしてそれと同時に、俺の糸が弾かれ、はね返された。
そのままふわりと地面に落ちる俺の糸。
北条は微動だにせず、俺を見つめている。
なんだ?何が起こった?
北条が、何かをしたという様子はまるでない。
そう、俺の糸は、北条の手前に、既に存在していた『なにか』に弾かれ、はね返されたのだ。
「あなたには見えないの?」
北条は狼狽する俺に話し掛ける。
「なに?」
「あなただったら見えるはずよ、感覚を研ぎ澄ませてみれば」
感覚を研ぎ澄ます?
俺はそう言われて、紫のベールを解き放った、そして神経を集中させる。
なにか…あるのか?
ポイントを隠し、俺の糸を弾き返すような何かが……。
俺は更に意識を集中させる、そう、まるで俺や北条の糸を凝視するような感覚で。
「―――!」
やがて、俺の目には見えてくる。
俺と、北条の間にある物。
それは……この夕日の朱をも凌駕するような強い光を放つ―――
赤い壁!
そこには、この長い廊下の端から端までをすべて覆う程の、巨大な1枚の赤い壁が存在していた。
何だこれは……俺の糸はこれに弾かれたのか。
「わかったでしょう、あなたは絶対に私には敵わない」
俺の頬を汗が伝う。
なるほど……確かにこりゃ……糸を使った戦い方じゃ勝ち目がないな。
俺はそう思い、糸をしまう。
そして、俺の後ろの壁に立てかけておいた鞄の取っ手に足の踵を引っ掛け、ひょいと蹴り上げ、右手に持った。
やっぱり肉弾戦か。
苦笑しながら、俺は北条を見上げる。
「……どうやら降参するとかそういう考えは、あなたには元からないみたいね」
俺は前かがみになり、鞄の取っ手を持ったまま肩にかける
このまま鞄をあいつの糸に叩きつけ、そのままの勢いで壁に肩から体当たりする。
それが俺の作戦だ。
クリアしなければいけない問題は2つ。
糸を叩き落せるようなスピードで俺が動けるか、あの壁は俺の体当たりごときで通過できるものなのか。
「だったら……もう、私も容赦しないから、覚悟していてね」
北条が、かすかに笑った。
それは俺が偽りの仮面を脱いだときによくする、冷たい笑いに似ている気がする。
ふん、俺は心の中でつぶやく。
いい子ぶってもそいつが本性か。
所詮は同じ糸の力に魅入られた者同士ってことだ。
「いくぞ」
俺は鞄を大きく振りかぶった、そして―――
鞄を蹴り上げるときに、ついでに踵を外しておいた上履きを、北条に向かって蹴り上げた。
「!」
鞄に目が行っていた北条は、さすがに面食らったような顔をする。
北条が靴をよけた。
靴はそのまま、北条の顔の脇を通過して、後ろの教室のガラスを砕いた。
いける!
俺は今ので確信した、コイツの壁は糸の能力だけを防ぐものだ、それ以外の物は普通に通過する!
北条の赤い糸の先端を確認する、そして俺は鞄を糸に向かい振り下ろした。
これでヤツの糸を叩き落し、そのままの勢いで北条に突っ込む、俺の作戦通りだ。
しかし―――
振り下ろした鞄に違和感を覚えた。
糸を叩き落す感覚が無かったのだ。
かわされたか!?
俺はそう思い、北条の糸の位置を確認する。
―――えっ?
しかし、糸は初めの位置から、1センチたりとも動いてはいなかった。
鎌首を持ち上げ、俺を見下ろすようにその場で漂っている。
まさか……これは…。
体勢を整えた北条がゆらりと赤い糸を操る。
すると、赤い糸は天井の方まで立ち昇り、更に高い位置から俺を見下ろすような形になった。
そして、ブン、と北条が腕を振り下ろす。
ビュンと赤い糸が俺に向かって滑空してきた。
「ちっ」
俺は再び鞄を構え、糸を防御する体勢を取る。
そしてその体勢を保ちながら、俺は先ほど、この鞄で赤い糸を叩き落そうとしたときの事を思い出した。
俺はあの時確実に、鞄を糸が存在する場所に振り下ろした、しかし叩き落す感触は無く、それでいて、糸もその場を動いた形跡はなかった。
背筋に寒気が走る。
もしかしてこの糸は。
俺は鞄を、俺に向かってくる糸に向かって突き出す、しかし―――
次の瞬間、赤い糸は俺の鞄を音もなく貫いた。
貫いた?いや違う、これは―――
そんな俺に向かって、北条がぽつりとつぶやいた。
「……ごめんなさい」
北条はスウっと手のひらを横に動かす。
赤い糸が北条の手の動きに合わせて動く。
「私の糸は―――」
そう、まるで鞄を横切るように。
そうか、この糸は―――
「すべての物質を通過するの」
次の瞬間、北条の糸が俺の額に突き刺さる感覚が、全身を貫いた。
< 続く >