生物室の解剖

「ううぅ~。何もここじゃなくても良いじゃーん」

 吉野裕気(よしのゆうき)は生物室で一人文句をたれる。裕気は授業中に眠りこけていた罰として、一人で生物室の清掃を命じられていたのだった。生物室での実験中に寝ていたのだから、当然と言えば当然だが、
 辺りに散見されるホルマリン漬けの生物達が裕気の声を震わせる。裕気はホルマリン漬けの瓶にビクビクし、なるべく瓶から遠い位置をそわそわしながら掃いていた。

「おいおい、そんなんじゃいつまで経っても終わんないぞ」
「ひぃやぁっ!?」

 突然響いてきた声に裕気は素っ頓狂な声を上げる。慌てて振り向いたその先には一人の男子生徒が立っていた。男子生徒は裕気の反応がツボに入ったのか、腹を抱えて笑っている。その生徒は隣のクラスなのだが、選択授業では隣の席で裕気は何度か話した事があった。

「もぉっ、なによっ。そんなに笑う事無いじゃないっ」
「い、いや、悪い。まさかそんなにびびってるとは思わなかった」

 裕気が頬を膨らませて怒ると、男子生徒はわき上がってくる笑いを必死にかみ殺しながら裕気に謝る。そんな男子生徒を裕気はふくれっ面のままじろっと睨んだ。

「で、何よ本当に。まさか、あたしの事を笑いに来ただけとか言わないわよね?」
「いや、千秋に様子を見て来いって言われてさ。ちゃんとやってるのかって」

 男子生徒は裕気の視線に苦笑を浮かべ、大嘘を吐く。男子生徒の言葉に裕気はむぅと更に頬を膨らませた。

「なに? 千秋の奴、あたしを信じてないのぉ? そんなんだったら自分で様子を見に来いって言うのよ」
「ま、それに関しちゃ同感だけど。ちゃんとやってたかって言うと微妙そうだな」

 男子生徒はちらりと裕気を見る。掃除当番が掃除をしているので大した汚れなどは目立っていないが、教室の真ん中に陣取った裕気は明らかにその周辺しか掃除していなかった。そんな男子生徒の視線に裕気は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

「う、うるさいわね。後でやるわよっ」
「そうか? 折角手伝ってやろうかと思ったんだが、そう言う事だったら・・・」
「手伝ってっ」

 男子生徒の台詞を途中で遮り、裕気はパンと合掌して拝み倒していた。そんな裕気の行動に男子生徒は裕気に見えない様ににやりと笑みを浮かべると、掃除用具入れから自分の分の箒を取り出し、掃除を始めた。
 シャッシャッと乾いた音が二人だけの教室に響く。外から聞こえてくる部活の声が教室内の寂しさを強調していた。

「・・・なぁ」
「・・・なに?」

 そんな中、男子生徒は呆れた様な声を出す。その声に裕気も固い声で返した。

「お前、何で寝てたんだよ」

 男子生徒はさっきからずっと教室の真ん中だけを掃除している裕気をじっと見る。その視線に裕気は慌てて、身振り手振りをした。

「な、なんでって。眠いから寝てたのよ。わるい!」
「いや、悪いだろ。しかも実験の時に寝てるとか見つけてって言ってるもんだろ。教室での座学では起きてるくせにさ」

 逆ギレに近い言動。そんな裕気の言葉を軽く受け流し、男子生徒は正論を叩きつけた。自分でも無理があると思っていたのか、裕気は明後日の方向をみて言う。

「あ、もうこんな時間。さっさと終わらせて、部活行かなきゃ」
「お前、帰宅部じゃなかったか・・・」

 はぐらかした言葉は男子生徒によってばっさりと切られる。

「・・・ごほん」

 男子生徒の言葉に一瞬固まった裕気は咳払いして気を取り直すが、男子生徒は裕気にジト目を向けた。その視線を受けて裕気はまた焦り始める。

「さ、さっさと終わらせて帰ろうよ」
「・・・」
「手伝ってくれたお礼にジュースを奢っちゃうよ」
「・・・・・・」
「足らない? えーい、こうなったらクレープもつけちゃうぞっ」
「・・・・・・・・・」

 無駄にテンションを上げて交渉をしてみた裕気だが、変わらない男子生徒の態度に大きくため息を吐いた。

「やっぱり言わなきゃ駄目?」
「いや、別に良いけど」

 男子生徒の言葉に覚悟を決めていた裕気はずるっとこける。

「なによっ、もう! だったら、そんな思わせぶりな態度しないでよねっ」

 裕気は男子生徒に向けて怒鳴ると、再びその場を掃き始めた。その姿を男子生徒はじっと見る。先程から立ち位置が全く変わらない裕気の行動は見ていてとても効率が悪い。まともに動くのは教室の中心から教卓へ向けてだけで、兎に角それ以上動こうとしない。教卓以外の壁側は教室の中心でしゃがみ込んで必死に腕を伸ばしてゴミを掻き集めている。男子生徒はそんな裕気の姿を見て一つの仮説を立てた。

「もしかして、ホルマリン漬けが怖いのか?」

 男子生徒の仮説に裕気の体がギクッと止まる。

「な、な、な、何言ってんのよ、そそそ、そな事、あるわけないっしょ」

 ギギギと言う音がしそうな感じに男子生徒へ振り向いた裕気はどもりながら言葉を押し出す。明らかに怪しくなった裕気の言動に男子生徒は呆れていた。

「図星なのかよ・・・だから、毎回実習がある度に寝たふりをしてたんだな。怖いんだったらなんでこっちを選択したんだよ」
「う、うるさいわねっ。数学が難しそうだったから文系を選んだのよっ。そしたら、生物が入ってるとか詐欺よっ。なんで文系と理系の選択なのに生物と物理も分けるのよっ」

 逆ギレした裕気が男子生徒に食いかかる。そんな裕気の様子に男子生徒はくっくっと笑い出した。

「も、もしかして、国語と数学の選択だと思ったの? おまえ、ちゃんとプリント見なかったろ。そんなんでこんな事になってるとか・・・最高すぎるっ」
「う、うっさい、うっさいっ! なによもうっ、馬鹿にして!」

 裕気は男子生徒に怒鳴ると、鞄を持って帰ろうとする。男子生徒はにやにやとしながら近くのホルマリン漬けの瓶を手に取ると、裕気の後ろへと近づいた。

「おい、待てよ。忘れもんだよ」
「え・・・?」

 男子生徒の言葉に違和感を感じた裕気が振り向くと、その目の前にホルマリン漬けの蛙があった。

「ひ・・・・っ」
「はい、もう動けない」

 裕気が恐怖に竦み、固まった瞬間に男子生徒は言葉を差し込む。

「え・・・・」
「声を上げる事も出来ない」

 ピタリと止まる裕気の体。その事実に裕気が戸惑った瞬間に更に男子生徒は声を重ねた。

「っ・・・・っ・・・」

 目を大きく見開いて、恐怖に顔を歪める裕気。男子生徒はホルマリン漬けの瓶を手近な机に置くとその瞳に向けて指を二本近づけていく。

「・・・・っ!!」

 十センチ、五センチ、三センチと近づいてくる男子生徒の指。その恐怖に耐えきれなくなった裕気がぎゅっと目を瞑った瞬間に、男子生徒は裕気の瞼を押させて声を重ねた。

「はい、目を開ける事が出来ない」

 静かな断言。男子生徒は裕気の瞼を押さえたまま後ろへと回り、くるくると裕気の頭を回し始めた。

「怖かったね。でも大丈夫。目を塞いだから怖い物は何も来ないよ。耳から聞こえてくるのは心地いい言葉だけ。だから大丈夫。何も怖くない。ほらとっても気持ちいい」

 裕気の頭をくるくると回しながら、男子生徒は言葉を重ねていく。

「ほら、耳から聞こえてくる言葉が頭の中へと詰まっていく。それはとても心地いい。だけど、すぐに入らなくなっちゃうね。なぜなら、頭の中にはキミが居るから。怖かったよね、嫌だったよね。もっともっと気持ちよくなりたいよね?」
「うん・・・・気持ちよく・・・なりたい」
「じゃあ、頭の中のキミを出してしまおう。頭の中のキミはさっきの恐怖を覚えている。だから怖いんだ。怖いのは嫌だよね。もっと気持ちよくなりたいよね。だったらキミを頭の中から出してしまおう。そうすれば心地いい言葉だけが頭に残り、とっても気持ちよくなる。さあ、耳から心地いい言葉が入ってくるよ。そうするとキミが頭の中から出ていく。怖い思いをしたキミが反対側の耳から出ていく。耳から聞こえてくる言葉はとてもとても気持ちいい。この言葉に従っていればキミはいつでも気持ちいいままでいられる。怖い事は何もなくなる」
「従えば・・・気持ちいい・・・怖く・・・ない」

 男子生徒は裕気を手近な椅子に座らせる。裕気はふらふらと椅子の上で上半身を揺らしていた。

「そう、気持ちいい。怖くない。あなたは私の言葉に従っていればずっと気持ちいいままでいられる。怖い思いもしない。だから、ずっとこのまま私の言葉に従ってしまう。私の言葉は絶対に疑わない。私の言葉は全て本当の事なんだ。だから、とても気持ちいいし、怖くない」
「はい・・・従う・・・疑わない・・・本当の・・・事」

 わずかに開かれた口からぽつりぽつりと零れる言葉。その言葉が零れるのを確認してから、男子生徒は次の言葉を紡いでいく。

「今から三つ数えると、あなたは目を覚まします。ですが、あなたの中には言葉が詰まったまま、キミはまだその辺りに漂ったままなのであなたの中には居ません。だからあなたは私の言葉を疑わないし、従ってしまう。なぜならあなたの中には私の言葉が詰まっているからです。わかりましたか?」
「はい・・・・わかりました」

 男子生徒は裕気が返事するのを確認した後、三つ数えてパンと手を叩いた。
 ぴくんと裕気の体が震え、その瞳がすっと開く。ぱちぱちと二、三、瞬きをするとふるふると軽く頭を振った。

「ん・・・あれ?」
「どうした?」

 男子生徒の問いに裕気は額に手を当てて悩む。

「あたし・・・どうしたんだっけ・・・? 千秋にここの掃除を言われて・・・それで・・・」
「おいおい、なに寝ぼけてんだよ。『お前は今までここで眠ってただろ?』」

 男子生徒の言葉に裕気は一瞬驚いた貌をしていたが、すぐさま合点がいった様な貌になる。

「え・・・あ~、うん。そうだった、そうだった。あたし寝ちゃってたんだよね。ごめんごめん」
「しっかりしろよ。お前のために俺も残ってんだからさ」
「わるいっ」

 裕気は男子生徒に軽く謝ると、ぐるっと周囲を見回した。

「で、何であたし残ってんだっけ?」
「補習だよ、補習。お前、今日の実験の時寝てただろ。だから、『お前だけ居残りで解剖実験をするんだよ』」

 解剖という言葉に裕気の顔が一気に曇る。そして、パタンと机に伏せったかと思うといきなり寝息を立てていた。

「くぅ~・・・」
「寝るなっ」
「冗談だって・・・でも解剖でしょぉ~」

 男子生徒の突っ込みに何事もなかったかの様に起き上がった裕気は、それでも嫌そうな顔を隠そうとしない。

「大丈夫だよ。別に蛙を解剖する訳じゃない」
「いや、でも解剖だよ?」
「大丈夫大丈夫。『今からやる解剖は楽しくて気持ちいいものだからさ。』それなら怖くないだろ?」
「まあ、あんたがそういうなら・・・」

 男子生徒の言葉に納得したのか、裕気はポリポリと頬を掻きながら男子生徒を見る。

「で、何の解剖をするんだって?」
「お前」

 裕気の問いに、男子生徒は裕気を指して答えた。

「あ、そうなの?」
「そうだよ。『お前の性器を解剖して中を見るんだ』」
「でも、それじゃ、あたし見れないじゃん。鏡でも前に置いとくの?」
「確かにそれもいいんだが、『今日は俺が観察するんだ。』そのために俺は残ってやってたんだから」
「そっか。わかった。じゃあ、あたしは何をすればいいのかな?」

 男子生徒の無茶苦茶な言い分を鵜呑みにして、裕気は屈託のない笑顔を向ける。男子生徒はそんな裕気の様子ににやりと笑みを浮かべて指示を出していく。

「ああ、じゃあ、ショーツを脱いでそこに上がって」
「うん」

 裕気は男子生徒の言葉に二つ返事で答えると、すっとショーツを脱ぎ、指示通りに机の上に上がった。

「うん、そのまま足を開いてさ。そうそう・・・っと、このままじゃスカートの影でよく見えないな。裾を口で咥えてくれる?」
「こう?」

 裕気は男子生徒に言われるがまま、机の上で自らの性器を曝していく。裕気の性器は毛が生えて無く、つるりと綺麗な物だった。

「そうそう、いい感じ。じゃ、いくよ」

 男子生徒は裕気に向かってそう言うと、ぺろりと自分の指を舐めて裕気の膣へと手を伸ばした。

「んっ」

 ぴくんと裕気の体が震える。未だ使われた事のないそこは硬く、くにくにとほぐしながらでないと中を見る事は適わなかった。

「ちょっと硬いな。まあ、毛も生えてないし、使った事も無いんだろ?」
「わ、わるかったわねぇっ。あたしはまだ処女よっ。ちょっ、変な所を触らないでよっ」

 男子生徒の指の動きにびくんと裕気の体が跳ねる。感じ始めているのか、頬はやや赤らんでいた。

「何のための解剖だよ。いろんな所を知るためだろ? だったらどこ触られても、文句を言わないで我慢してろよ」
「む、そりゃそうだけど・・・っ」

 ひくひくと動く裕気の膣。男子生徒は裕気の様子を見ながらその縁をすっと撫でていく。その動きに裕気の体がびくっと震えた。

「ちょっ、やっ、あっ、もうっ」
「ふむ、感度はいい、と。しかし、濡れ方が足らないな。オナニーした事無いのか?」
「んっ、あっ、友達からっ、聞いた事あるけどっ、怖くて、まだやった事っないぃ」

 男子生徒の明け透けのない質問に体を震わせながら裕気は答える。裕気の返答に男子生徒は感心しながら顔を向けた。

「へえ、でも、やり方は知ってるんでしょ?」
「うっんんぅ。友達から聞いたしっ、雑誌にも載ってたひゃぁん」
「じゃあさ、ちょっと見にくいから手伝ってくれないかな?」
「いいけどぉっ。な、何をすればいいのっ、っ」
「大したことじゃないさ。オナニーをしてくれればそれでいいから」
「んんっ、わかっ・・たぁ」

 裕気は男子生徒の言葉に二つ返事で答えると、制服の中へと手を差し入れてブラジャーのホックを外す。そして、緩くなったブラジャーの中の盛り上がりに手を伸ばしていった。

「ふぅんっ」

 既に立ち上がっていた乳首に触れた瞬間、裕気の口から息が漏れる。ぴくっと裕気の体が震え、胸を捏ねくり回す度に裕気の膣も震えていった。
 裕気の体が震えるのにあわせて、とろり、とろりと膣の奥から愛液が溢れ出してくる。男子生徒はそれを指に絡めると、そっと裕気の膣の中へと差し込んだ。

「ひぃあぁっ」

 びくっと裕気の体が震える。その瞬間、男子生徒の指を咥え込んだ裕気の膣がきゅっと締まった。

「おお、いい締め付けだな。さすがは処女」
「ど、どうっ・・・ちゃんと観察してる?」

 脳に届く快感に体を震わせながら裕気は問う。しかし、その問いに男子生徒は顔を曇らせた。

「いや、それがな。どうにもぴっちり締まっていて上手く観察が出来ないんだ。まあ、吉野が処女だから仕方ないんだが。だから、ちょっと切開しようと思うんだが・・・」
「ちょ、切開って。なにするのよっ」

 男子生徒の言葉を聞いた裕気の貌に不安が広がる。そんな裕気に男子生徒は優しく微笑みかけた。

「大丈夫。切開って言ってもちょっとだけだから、別に痛くないよ。注射みたいな物だから」
「え・・・そうなの?」
「うん。それとも吉野は注射もだめなの?」

 馬鹿にする様な男子生徒の視線。そんな男子生徒に裕気はむぅと頬を膨らませる。

「失礼ね。これでも幼稚園の頃はたった一人、注射で泣かない子って褒められていたのよっ」
「じゃ、大丈夫だな」
「大丈夫に決まってるでしょ。注射でも切開でもさっさとしなさいよね」
「わかった。そうと決まれば早速準備だ」

 よし、と男子生徒は頷くといそいそとズボンを脱いでいく。突然、目の前に出された肉棒に裕気は面食らった。

「ちょっ、な、何出してるのよ変態っ」
「何言ってるんだよ。『これが注射だろ』」

 食ってかかる裕気に余裕たっぷりに男子生徒は宣告する。その言葉に裕気は一瞬目を丸くするが、すぐに納得して頷いた。

「え、あ、そうよね? あたしったら何言ってんだろ」
「全くしっかりしてくれよ。吉野の協力がないと準備も出来ないんだからさ」
「あはは、ごめんね。で、準備ってあたしは何をすればいいの?」

 裕気は恥ずかしそうにはにかんで男子生徒に聞く。その裕気の前に肉棒をつきだして男子生徒は説明を始めた。

「簡単だよ。吉野はこれをしゃぶってくれればいいんだ。しっかり舐めてくれれば準備が出来るから」
「うん、わかった。これをしゃぶればいいんだね。んっ」

 裕気はうんと頷くと、ぱくりと目の前に曝されていた肉棒を咥え込む。そして、アイスでも舐める様にぺろぺろと舐め始めた。

「ああ、間違っても歯は立てるなよ」
「んっ」

 上からかけられる男子生徒の言葉に、裕気は肉棒を咥えたまま上目遣いで頷く。その動きが微妙な刺激になって男子生徒に快感を与えた。

「ん、そう。その調子」
「ん、ふぅっ・・んっ。ちゅっ・・・ぷぅ・・」

 上から下から裕気は舌を絡みつかせる。男子生徒の肉棒を口の奥深くまで飲み込んで、こくこくと頭を振る。その度に男子生徒の体がびくっびくっと小刻みに震えた。男子生徒の反応を見ながら裕気は口を動かしていく。

「ちゅっ・・ぷぅ。ん・・・ふぅ・・・」

 裕気の舌の動きが男子生徒へと刺激を与え続ける。時に優しく、時に激しく、様々な動きを魅せる裕気に男子生徒はゾクゾクと体を震わせた。あっという間に男子生徒の肉棒が硬くなり、力強く立ち上がる。

「吉野、もう良いぞ」
「ん」

 男子生徒の言葉に頷き、裕気は口を離す。ぷはっという息と共に絡みついた唾液がぷつんと切り離された。男子生徒は体を移動して、肉棒の先を裕気の秘裂へと宛がう。秘裂から溢れてた愛液がくちゅと音を立てた。

「じゃあ、行くぞ」
「うん」

 男子生徒の言葉に裕気はきゅっと目を瞑る。そんな裕気を見ながら男子生徒は腰を進めた。メリメリと閉じられていた秘裂が開かれて、男子生徒の肉棒が裕気の中へと推し進められていく。

「~~~~~~~~っ」

 裕気が苦痛に顔を歪める。必死に痛みに耐えようと力んだ体はギュッと男子生徒の肉棒を締め付け、内部から押し出そうとした。
 男子生徒はそれにも構わず無理矢理押し込んでいく。プチプチと膜を破り、裕気の奥へと押し込んだ。

「痛い痛い痛い痛いっ! どこが注射みたいなものよっ、全然痛いじゃないっ!」

 あまりの痛みに涙を浮かべて裕気は男子生徒へと抗議する。そんな裕気を見て男子生徒はしれっと言った。

「何言ってんだよ。『麻酔が効いてるんだから痛くないだろ』。それにさっきも言った通り、『解剖は楽しくて気持ちいいもの』なんだから『解剖の一工程である切開も楽しくて気持ちいい』に決まってるだろ」
「何言ってるのよっ、そんなこ・・・と・・・? あれ、痛く・・・ない?」

 突然消えた苦痛に裕気は呆然とする。力みの消えた裕気の体に男子生徒は腰を大きく叩きつけた。

「ひゃあぁんっ!?」

 痛みの代わりに溢れ出た快感に裕気は素っ頓狂な声を上げる。電気が流れたかの様にビクビクと震えた体が裕気の受けた快感の大きさを表していた。

「どうだ? 吉野? 痛いのか?」
「んんっ、ううんっ、きもっ気持ちいいぃっ。すごっ、ぁぁぁぁぁぅっ」

 机の上で裕気の体が跳ねる。きゅうっと締まる秘裂の求めに応える様に男子生徒はズンズンと腰を動かした。男子生徒が動く度に裕気は甘い声を吐き出しビクンと体を震わせる。男子生徒の肉棒には真っ赤な血液が絡みついていたが、裕気の反応にはもはや痛々しさなど何処にもなかった。

「ああっ、んぅっ、ひぃぅっ、ああぅっ」
「行くぞ、血止めの薬液を出すからなっ」

 ビクビクと裕気の体が震え、きゅうっと秘裂が締まる。男子生徒はその求めに応えて秘裂の奥深くまで肉棒を突き刺すと、秘裂の中に白濁液を吐き出した。

「ぁぁぁぁぁぁっ、でてるっ、でてるぅ。頭が真っ白になるぅぅぅぅっ」

 絶叫と共に裕気は机の上で硬直し、その数秒後にガクンと脱力する。それを見とってから男子生徒は裕気の中から肉棒を抜き出した。

「ぁんぅ」

 ぴくんと震える裕気の体。男子生徒はそんな裕気を見ながら次の命令を下した。

「ほら、切開してこれで見やすくなったはずだからさ。吉野、自分で広げてくれよ」
「あ・・・うん」

 裕気ははあはあと荒い呼吸を漏らしながら、弱々しく男子生徒を見ると、ゆっくりと体を動かし、自らの手で秘裂を押し開く。その秘裂からとろとろとピンク色の液体が零れた。

「こ・・・れで・・・よく・・・見える?」
「ああ、よく見える。これで観察が出来たよ」

 ひくひくと蠢く秘裂を自分から開く裕気に男子生徒はにやにやと笑みを浮かべる。その笑みを勘違いしたのか、裕気はほぅと安堵の息を吐いた。

「よかっ・・・たぁ・・・これで解剖実験も終わりだね」
「ああ、そうだな。じゃあ、後始末をするか」

 そう言うと男子生徒はそっと裕気の瞼を閉じる。そして、声を重ねていった。

「さあ、こうするとさっきと同じとても気持ちいい状態になる。ほら、とてもとても気持ちいい。私の言葉を聞いているととても気持ちよくて仕方がない。私の言葉に従っていれば怖い事なんて何もない」

 男子生徒の言葉が染み込み、裕気の体から力が脱けていく。

「私が出て行ってから一分経つとキミは自分の体の中へと戻っていく。だけど、今あった事は憶えていない。キミは千秋先生に言われて一人で生物室の掃除をしていた。でも、掃除に疲れてしまい、キミは思わず眠ってしまった。机に零れた液体はキミの涎だ。涎を零してしまったなんてとても恥ずかしいからすぐに処分してしまおう」

 男子生徒の言葉に裕気はこくんと微かに頷いた。

「それと、これはキミの鍵だ。この鍵で開けるとキミはいつでもこの気持ちいい世界へと来る事が出来る。とても気持ちいいからキミは何度でも来てしまう」

 男子生徒は自転車の鍵を裕気に見せる。裕気はその形を脳に刻むかの様にじっと見ていた。そんな裕気の瞼を再び閉じて、男子生徒は声を続ける。

「さあ、今あった事が綺麗に消えていく。頭が真っ白になっていく。何も考えられなくなる。もう、何も考えられない。キミはもう何も考えられない」

 裕気の体が完全に脱力したのを確認して、男子生徒は更に続けた。

「いいかい。さっきも言った通り、私が出て行って一分でキミは元に戻る。だけど、今あった事は何も憶えていない。一人で掃除をしていたんだ。わかったね」
「はい・・・」

 ぼそりと微かに声を漏らす。そんな裕気を確認して、男子生徒は生物室を出て行った。

 一分後、ぴくんと電源が入った様に裕気の体が震えて、裕気は意識を取り戻した。

「ん・・・あれ・・・?」

 ゆっくりと体を起こした裕気は自分が机の上にいる事に気付き、机から下りた。

「やっば、寝ちゃった。もう、こんな所の掃除をさせるからだよ。千秋めぇ~」

 むぅと自分に罰当番を課した教師に逆恨みの様な思いを馳せ、そして、机の上に広がったピンク色の液体に気付いた。

「って、わぁっ。こんなに『涎』を零してるとか。だ、誰も見てないよね・・・」

 羞恥心に頬を赤く染めながら、裕気はきょろきょろと辺りを見回す。外から部活に精を出す生徒達の声が響いてくるが、幸いに生物室周辺に人気はなかった。
 それを確認すると裕気はそそくさと『涎』をティッシュで拭き取る。そして、そのティッシュを丸めるとぽいとゴミ箱に捨てた。

「も、もう、これでいいよね。一応、掃除はしたし」

 辺りを見回した時にホルマリン漬けの標本を見てしまった裕気は本音をひた隠しにしながら、言い訳を口にする。そして、そそくさと後片付けをすると、逃げ出す様に生物室を飛び出していった。

< 了 >

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