第02話
「ふっんっあっぁっ、どっ・・・おっ、いまっ、さとぉっ」
俺の上で必死に腰を動かしながら鈴木が尋ねてくる。ぎゅうぎゅうと締め付けてくる鈴木の中。そんなモン言うまでもない。言うまでもないが、ゾクゾクと駆け抜けていく快感に俺は思わず答えていた。
「いいっ、すげぇ気持ちいいっ! 最高だ、鈴木っ!」
叫びながらも俺は下から鈴木を突き上げる。鈴木も叫び声を上げながら、秘裂の締め付けを更に強くしてくる。
ちょっ、待てっ。もう余裕なんてねぇぞっ。ぎりぎり何とか耐えてんだから、そんなん後少しももたねぇよ。こうなったら、先に何とか鈴木をイカせるしかねぇ。
ギッと歯を食いしばり、腰の突き上げを速くする。ジュブジュブと接合部が水っぽい音を立てた。
「あっあっあっぁっ、私もぉっ! 気持ちいいのっ」
ビクビクと身体を震わせながらも、鈴木は懸命に腰を振る。瑞々しい肌には珠のような汗が浮かび、トレードマークのポニーテールを何度も空中で踊らせた。その姿は普段の健康的な鈴木のイメージとよく合い、それと同時に普段の爽やかな鈴木からは微塵も感じさせないエロさも醸し出している。
って、そんな事解説してる場合じゃねぇよ。鈴木の中は相変わらずきつくて気持ちいいし、鈴木の表情がエロくてやばすぎる。くそ、負けてたまるか!
ゾクゾクと脊髄を駆け抜けていく刺激をなんとか我慢し、必死に腰を突き上げる。その動きに鈴木は跳ねるが、どこか余裕がありそうだった。
「今里ぉっ、いいっ! ああぁっ」
気持ちよさそうに腰を振りながら鈴木は叫ぶ。そして、深く差し込んできたかと思うと、いきなりぐいっと腰を回した。
ちょっ、おいっ、まっ――
「~~~~~~~っ」
いきなり全身に走った鋭角の刺激に耐えきれず、白濁液を鈴木の中に吐き出す。
というか、絞り出された感が強いんだけど・・・
「今日も私の勝ちだね♪ 早漏な今里」
ずるりと力を失った俺の物を引き抜くと、鈴木はあははと笑う。そして、トロリと零れ出してくる白濁液の後始末をすると、ベッドの縁へと腰掛けて俺を見る。
って、おい。なんだよ、その視線。あー、ぜってー馬鹿にしてやがる。七戦七敗。いや、初めて鈴木とした日からの一週間、毎日やってる鈴木との戦績だけど、負け越しも何も一回も勝ててないから仕方ないかも。でも、それを何とかするために毎日やってるんだぜ? いい加減に慣れてきたと思ったら、鈴木はまだまだ余裕あるし。つーか、あれだろ? あの初めてやった日。あん時鈴木も初めてだったとか。鈴木も徐々に慣れてきてるとかそれ以前に、初めてのくせに何あの余裕。俺なんて全くなかったぜ。いや、俺一人でテンパってたんだけどさ。
あーもう、色々むかつく。
「鈴木。ほら、お前の口で俺のも後始末してくれよ」
「はいはい。わかったわよ」
やれやれと言った風な表情を見せ、鈴木は俺の股の間に身体を割り込ませる。そして、完全に力を失った俺の物をぺろりぺろりと舐め始めた。
くぁ・・・やっぱやべぇ。
確か、三日前・・・いや、四日前か。鈴木があまりにも早漏早漏言うのがむかつくので、意味もなくフェラをやらせたのがまずかった。いや、下手だったって訳じゃないけど。
むしろ鈴木の奴、口も初めてのくせにやべえくらいに気持ちよかった。つーか、あんなに気持ちいいモンだとは思わなかった。気持ちよすぎて暴発してしまい、早漏呼ばわりが更に悪化しちまったもんなぁ・・・学校では秘密にするように頼んでおいたからよかったものの、学校でぽろりと早漏なんて言われた日には登校拒否を通り過ぎて、自主退学をしなければならない所だった。
って、ぅあぁぁっ。
そんな回想をしてる場合じゃない。ゾクゾクとした感覚が腰から背骨へと駆け上がってくる。それに反応してビクビクと肉棒が震えた。さっき出したばっかなのに、肉棒は再び力を取り戻し、鈴木の口の中で暴れ出す。
つーか、後始末って言ったのに鈴木は何してくれてやがるんだ。
ギリと歯を食いしばり、襲ってくる快感に耐えながら鈴木を睨む。鈴木は俺の顔を見ながらにやにやと笑っていた。
あー、くそっ。こいつ楽しんでやがる。って、やべぇ。あぁもう、出るっ!
「あああぁぁぁっ!」
ビクビクと腰が震える。鈴木の口内に二回目とは思えない程の量の白濁液を吐き出して、俺はぐったりとベッドへと沈み込んだ。ちゅぽんと音を鳴らして、鈴木は俺の物から口を離す。その端からは溢れかえった白濁液がつうと零れていた。
「・・・鈴木。俺は別にフェラで抜けなんて言ってないぞ」
出し過ぎたからか、それとも眠気からか、いや、その両方か? ずきずきと痛む頭を押さえながら俺は鈴木を睨む。口に出された白濁液は飲むのが当たり前になっている鈴木は俺の視線を受けながらゴクリと口内にたまっている物を飲み込んだ。すっと口からたれている筋を拭き取って、鈴木はにやりと俺を見る。
「えー? 今里して欲しそうにしてたじゃん。っていうか、昨日も一昨日もそれで出してたから今日もそうだと思ってたよ♪」
・・・そんな、楽しそうな表情で言い訳されても説得力ねーよっ。くっそう、頭いてー。
ベッドに沈み込んだまま、顔に手を当て片目を覆う。大きく息を吐き、呼吸を整えながら、ぼうっとする頭を動かし、何ともなしに部屋を見渡した。
綺麗に整頓されてさっぱりとした部屋。だけど、棚に入っているのは漫画やCDはどう見ても男向けの物が多く、申し訳程度に載せられているぬいぐるみや部屋の隅の姿見あたりに漸くここは女性の部屋だというのを感じさせられる。
そう、ここは鈴木の部屋だ。何で俺が鈴木の部屋にいるのかというと、学校だと目立ちすぎるんじゃないかというのが始まりだった。ラブホなんて金はもってないし、うちは両親は海外でいないが、どこぞの悪魔が陣取っている。駄目元で聞いた鈴木の家だったが、両親は共稼ぎで夜遅くまで帰ってこないというのでうってつけだった。
数日前、初めてこの部屋に入った時は随分驚かされたし、今こうして見渡しても、まるで男友達の部屋にいるかのような錯覚を覚える。
「まったく。乙女の部屋をじろじろ見ないの」
「これのどこが乙女の部屋だよ。野郎趣味全開でどっからどう見ても男の部屋じゃねぇか。大体、バットとか木刀とかホッケーのスティックとか、どこのヤンキーの部屋だよ」
よく見ると木刀の柄には洞爺湖とか彫ってある。
・・・わざわざ北海道まで行って買ってきたのか?
もしかして、ホッケーのスティックもサイクロンとか言うんじゃねーの?
「ヤンキーじゃないし。いーじゃん、好きなんだから。それに兄貴達がたまに来ては色々置いてくんだよね」
聞いた話によると、鈴木にはやや年の離れた兄が三人いて、その兄達の影響でそんな趣味になったんだとか。きっと兄達の中には同類がいるに違いない。そんな感じの匂いが鈴木の部屋に置かれている物からは漂っていた。ちなみに三人の兄達は既に家を出ているんだとか。
大分、頭痛も治まってきたので、俺は身体を起こしてブンブンと頭を振る。ふぅーっと大きく息を吐くと、足に力を入れて立ち上がった。
「ん、もう帰るの? まだ大丈夫だよ?」
「いや、そっちは大丈夫でもこっちがな。これ以上遅くなると何されるかわかんねぇし」
現に数日前に殺されかけたし。
「そう。じゃ、また明日ね」
「ああ」
そう言って俺は鈴木の家を後にした。
「・・・・何やってんの?」
「・・・見てわかんない? 目も悪そうだけど、頭もおかしくなったのか?」
「いや、わかるけどさ。何読んでるかって思ったんだよ」
俺に背を向けているアリスの横には漫画が山のように積み上がっている。どれだけ読みふけっていたのか、ワンピ現行全巻に匹敵する量だ。
それにしても頭もおかしくなったって酷くねぇ・・・ってぇ!
アリスが何を読んでいるか気づいた俺は反射的にそこを見る。見つからない様に隠していた押し入れは開かれ、更にダミーに入れておいた本も放り投げられており、見事そこの棚が綺麗さっぱり出されていた。
つーかなんでそこをピンポイントに出してんだよーっ!
「あははははっ。何これ、触手? なにやってんのこいつーっ。やっば、うけるーっ。それにこっちは力の行使の条件がむちゃくちゃすぎるし。笑えるわー」
ぐはぁ・・・それ、俺のお気に入りなのに・・・
「おい、友也っ。お前も見ろっ。こいつおもしれーぞ! つーか、イソギンチャクかこいつーっ」
それも一週間前まで普通にお世話になってたし・・・やっぱ、女から見るとキモいのか?
「おい、友也っ。友也ッ! おいっ!」
でも好きなモンは好きなんだからしょうがないだろ。どっかのBLゲームのタイトルじゃないけどさ。大体、腐女子だって漫画で欲情するだろうし、アイドルとかのグラビアや写真集だって、極論で言うなら二次元だろ素材は紙なんだし。二次元か三次元かの違いだけで、誰だって妄想するだろ。なんで漫画で妄想するだけで軽蔑されるんだ。
「話を聞けぇぇぇぇぇっ!」
ずばぁぁぁんっ!!
がっくりと膝をついて、四つん這いになっていた俺の後頭部に強い衝撃と痛みが走る。俺はぐぅと呻きつつ頭を抑えた。
ぐぁぁぁ・・・何だ今の? 後頭部殴られた? 眼がちかちかする・・・
「いってぇなっ! なにすんだよっ!」
「友也が返事もしないで百面相してるからだろっ! アタシが呼んだらどこにいてもすぐ返事しろっ」
微妙にむちゃくちゃを言い出すアリス。俺の視線はその手元に集中していった。その手には先ほどまで読んでいた本。少年漫画なサイズではなく、A5のしかもフルカラーだからくそ重い、俺のお気に入りの本。それがきゅっと丸められ、アリスの手の中に納められている。
あぁぁぁぁぁぁぁぁっ。くそ高かった上に部数が少なかったからめちゃくちゃ探したあの本がぁぁぁぁっ。
絶望感溢れる俺の心の叫び。そして、俺はまたがっくりと四つん這いになった。そんな俺の後頭部にぞくっと感じる妙な気配。反射的に顔を上げた俺の視界に入ってきたのは、俺のお気に入りを今度は背表紙を向けて振りかぶっているアリスの姿だった。
「うぉわあぁぁぁぁぁっ!」
パァン!
乾いた音が部屋に響き渡る。とっさに突き出した両手が半分凶器と化した本を何とか止めていた。
つーか手が痛い。
「何すんだよ! 何で縦なんだよ! そんなのがそんな勢いでぶち当たったら痛いだけじゃすまないだろっ」
「チェッ」
アリスは小さく舌打ちをし、ポイと本を放り投げる。
「今の『チェッ』って何!? もしかして怪我させるの狙ってたわけ!?」
アリスは俺の叫びを無視して先ほどの場所へと座り、積み上げられている別の本へと食指をのばした。ぺらぺらとページをめくり、先程と同じく、馬鹿みたいに笑い出す。
「誰が馬鹿だぁぁぁぁぁっ!」
ひゅん。
アリスの絶叫と共に本が飛んできて俺の頬をかすめる。恐怖を感じアリスを見ると、ジョジョだったらゴゴゴゴゴゴゴとかドドドドドドドドドとかいう擬音がつきそうな雰囲気を纏って立っていた。
っていうか、馬鹿なんてだれも言ってねぇ。
「言ってなくても、心で思ってたら同じ事だろっ」
ああああ、そうだっ。こいつ心を読めるんだったっ。
「はい、せいかーい♪ じゃあ、これご褒美ねっ」
ブンと振り下ろされる本をすんでの所でかわす。だから縦に持つな! つーか、本で叩くなっ! 本を丸めるなっ!
「あっ、よけるなぁっ!」
「よけるわっ!」
そして、どたばたとここ一週間ばかり繰り返してきた事をやっぱり今日も繰り返していた。
ああ・・・・太陽が黄色い・・・って、何回繰り返すんだよ。
今日もやっぱり寝落ちで三時間位しか寝てない。やっぱり今日も授業中寝るしかねぇのか・・・いや、だが、今日はそんなんでは駄目だ! 寝るのはともかく、今日からはあいつらに手を出していかないと!
パンパンと頬を叩き、ブンブンと頭を振る。その程度では飛ばされない眠気と戦いながら、俺は席に着く。しかし、眠気よりも先に俺に襲いかかってくる物があった。
「うわぁっ!」
「きゃっ」
横から蹴り飛ばされた俺はガシャンという音を鳴らし、椅子ごと教室に倒れる。なんか間抜けな格好を晒しているが、そんな俺に駆け寄ってくる人間は誰もいない。なぜなら、蹴り飛ばしてきた相手が教室を牛耳っている者だからだ。
「いてて・・・」
床に手をついて起き上がる。そんな俺に上から声がかけられた。
「何、今里? こんな公衆の面前で盛ってるの? 女の子を押し倒して。よっぽど溜まってるのね」
嘲笑するような堀池の声。
パシャッパシャッ。
いつの間にか周りにいた椎名の取り巻き達が携帯で俺の姿を撮影する。それを見て、椎名はふいっと背を向けて席へと戻っていった。椎名に任せられたと思ったのか、堀池がしたり顔で俺に向かって話しかけてくる。
「今里~。まさか教室で犯罪行為をするとはね~。ちゃんと証拠も撮ったし、これであんたも終わりだね~」
ひらひらと手の中の携帯を振りながら、堀池はにやにやと笑った。そんな堀池の言葉と掌に伝わる感触に思わず下を見る。椅子から崩れ落ちた俺の身体の下に幸村の身体が敷かれていた。ふにふにと掌に触れる幸村の胸の感触。幸村は組み敷かれたままじっと俺を見上げていた。
柔らかい・・・
「・・・どいてくれる」
幸村は静かに言って、俺の身体をどかす。
「うわっ」
突然身体を動かされたため、俺はバランスを崩し、為す術もなく床へ崩れ落ちた。
「むぎゅぅ・・・」
無様に床に崩れ落ちて妙な声を出す俺の横で幸村は立ち上がるとパンパンと服を叩き、最後にひょいと縁なしの眼鏡を拾い、異常がないかを確かめてからかけた。そして、一瞬俺に視線を落とすと、何事もなかったかのように自分の席へとついた。
「うっわー。今里かっこわるぅ。気持ち悪い声出してるし」
後ろから堀池の声が聞こえる。何でそんな事、こんな奴に言われなきゃならないんだ。
俺はぎりと歯を噛みしめ、堀池へと振り返る。そんな俺の表情を見て堀池は苛立たしげな表情を浮かべた。
「なによその目。あんた、たつきさんに刃向かうの?」
「あ・・・いや・・・その・・・」
じろりと睨んでくる堀池から席に座っている椎名へと視線を移す。静かに席に座っているが、じろりとこちらの状況を観察している。その視線にぞくっと恐怖が走った。
椎名たつきはこの辺りの有力者の娘だ。送り迎えは黒塗りの車。その中には黒いスーツのお兄さん達がいるらしい。そもそも、椎名自身も剣道でその名を馳せている。インターハイで準優勝し、遭遇した通り魔を竹刀で打ちのめして返り討ちにした事もあるとか。
椎名本人にしても、椎名を取り巻く環境にしても、喧嘩を売れば痛い目を見る相手だ。しかも、何が気にくわないのか、椎名は何かにつけて俺を攻撃してくる。反撃できないのを知っていながら、容赦なく打ちのめしてくるのだ。それもあいつだけじゃなく取り巻き達も使っての集団によるいじめだ。教師に言った所で椎名の家を恐れていて何も言えないし、周囲の奴らも自分に飛び火するのが怖いようで、椎名達に何も言えない。それどころか俺に関わってくるのも減ってきている。このクラスでは唯一、鈴木だけが普通に話しかけてきてくれる相手だった。
「だったら、今日の昼。わかってるわよね?」
携帯をひらひらとさせながら堀池は言う。つーか脅しだ。いや、脅し以外の話なんてこいつらにされた事無いけど。ちらりと椎名を見る。椎名はじっとこちらを観察していた。視線が合い、ぞくっと恐怖がわき起こる。
逆らえない。そんな言葉が頭をよぎる。
馬鹿野郎。何のためにアリスから力をもらったんだ。俺には人を操る力があるんだ。こんな奴らに従う必要なんてない。
「い・・・やだ・・・」
勇気を振り絞って声を出す。今までの恐怖がこみ上げて、ギュッと目をつぶりながらいった。
「は? 何か言った? ちょっと聞こえなかったんだけど?」
ぐいっと胸ぐらを捕まれる。恐る恐る目を開くと目の前に堀池のアップがあった。
「もう一度、言ってくれるかな?」
にっこりと笑みを浮かべ、堀池は言う。断らせる気のない顔。その圧力にびくっと心が震えた。
「あ・・・・」
「っはよーっ!」
ガラッと勢いよく扉が開いて、明るい声が教室に響く。場違いな明るい声に教室中の視線が一斉に扉へと向けられた。
「・・・っと、あれ?」
一斉に自分へと向けられる視線に扉を開いた鈴木は目を丸くし、ぽりぽりと頬を掻いた。そのまま教室を見渡し、現在の状況を把握する。その上で、鈴木はすたすたと椎名の後ろの自分の席へと座った。
え? ちょっと。助けてくれないの?
「まーたやってんの? すずちーも暇だねぇ。ね、お嬢?」
「なによ。あんなの、あたしには関係ないわよ」
鈴木はこちらを見ながら椎名へと話しかける。椎名はそんな鈴木の言葉にふんとそっぽを向いた。
・・・なんか、顔を背ける瞬間に椎名の頬が赤く染まってたのは気のせいか? 気のせいだよな。何だって椎名が頬を染める必要があるんだ。
キーンコーンカーンコーン。
鈴木と同じく場違いなチャイムの音が校舎に響く。その音に堀池はちっと舌打ちし、俺を放して席へと戻った。それと同時にがらりと再び扉が開かれ、担任が入ってくる。
「おーし、席に着けー。お? 何だ、今里。そんな所に寝っ転がって。今日も早くも寝る体勢か?」
脳天気なこの体育教師はこのクラスで起こっている事に気づかずに言う。その発言でクラスがわき、俺は爆笑というか嘲笑の渦の中、黙ったままと席へと戻った。
最後の俺で教室の全員が席に着いたのを確認し、担任は連絡事項を伝えていく。その言葉を右から左へと聞き流し、俺はギュッと机の中で拳を握りしめた。
腹が立って仕方ない。椎名にも堀池にも自分にも。意味もなく攻撃してくる椎名や堀池はもちろん、それに刃向かえない自分が嫌になる。何のために力を手に入れたんだ。この地獄のような日々から脱出するため、こいつらに復讐するためだろ。犯すためだろ!
とはいえ、今どうにか出来る訳じゃない。アリスからもらったこの力は一度に複数人には使えない。だから、どうにかして、一対一の状況を作らないとならない。鈴木の時はなんか偶然というかなんというか、放課後に鈴木の方から来てくれたからいいが、殆どの生徒は部活に行ったらそのまま帰る。椎名も堀池も当然一緒だ。つーか、確か、二人とも同じ剣道部だったっけ? あーくそ。堀池がいつも椎名にくっついてるからなぁ。どうにかして二人を引き離さねーと・・・ああもう・・・ねむ・・・ぐぅ。
ドガッ
「うおぁっ!」
唐突な衝撃。その衝撃に目を覚ました時には椅子は均衡点を通り過ぎており、もはや、体勢を立て直す事は出来なかった。ぐらりと衝撃と反対側に椅子が傾き、俺はまたも無様に床に倒れ込んだ。
「むぎゅぅ」
「今里、休み時間に何休んでんのよ。さっさと起きなさい」
後ろからかけられる理不尽な声。身体に走る痛みに耐えながら振り向くと、朝と同じように椎名と取り巻き達が俺を見下ろしていた。
ぞくっと条件反射的に恐怖を感じる。自己防衛本能が働き、瞬時に俺は立ち上がっていた。そんな俺の姿を見て、椎名はにやりと笑い、ぽんと肩を叩いてきた。
「今里、わかってるわよね。いつもの、お願い」
それだけ言って、椎名は自分の席へと戻る。お願いと言っているが、実質は脅迫だ。事ある毎にこうやって椎名は俺を従わせてくる。今まではそれに従わざるを得なかったけど、これからは違う。俺は力を手に入れたんだ。
「今里、私たちの分もよ。わかってるでしょ」
堀池が椎名の言葉を引き継いで言う。にやにやと嫌な笑みを浮かべていた。
なんでお前らに命令されなきゃならないんだ。俺はお前らの召使いなんかじゃないし、これから命令するのは俺なんだよ。くっそぅ。
ギュッと拳を握りしめ、歯を噛みしめたまま堀池を睨む。俺の視線を受け、堀池はスッと笑みを消し、無表情のまま俺を見据えた。
「何その顔? 嫌なの?」
手に持った携帯をひらひらと弄びながら、堀池は静かに言う。ちらちらと視界を出たり入ったりする携帯と堀池の雰囲気にややびびりながらも俺はギリと歯を噛みしめた。
「何よ。何とか言いなさいよ」
伸びてくる堀池の腕。慌てて数歩下がってそれを避けると、踵を返して逃げるように教室を出て行く。当然、あいつらの飯を買ってくる気はない。勢いよく階段を駆け上がり、屋上へとでた。
この学校は屋上を一般生徒に開放している。周りを見渡せば、昼休みをここで過ごそうという連中がそこかしこにいた。その中を通り過ぎて、落下防止用に高くされている柵へと寄りかかる。眼下には中庭が見え、そこにもここと同じくらいの数の生徒たちが思い思いに時を過ごしていた。
そいつらを見ながら時間を潰す。昼休みぎりぎりに戻ればあいつらもなんか言う暇ないだろ。
柵に寄りかかったまま掌を見る。何の変哲もない掌。だけどこの手には力が宿っている。アリスからもらった人を操る力が。
俺は力を手に入れたんだ。命令するのは俺なんだよ。
ぐっと手を握り、拳へと変える。その瞬間、ぐぅと腹が鳴った。
聞かれてないだろうな。
思わず顔を赤くしてきょろきょろと周囲を見渡すが、俺の腹の虫に気づいた奴はいないようだ。ふぅと軽く息を吐いて、ぐでんと柵に身体を預ける。
「ちっ。そのまま教室を飛び出しちまったからなぁ・・・今日の昼は我慢するしかなわぁっ!」
眼下に見えるグラウンドでちょこちょこと動き回ってる生徒達を眺めていたら、ぐいっと襟を引っ張られた。
「ちょっ、えっ、なっ、だっ、わぁっ」
俺はいきなり引っ張られて、引っ張った相手が誰かというのも確認できないまま出入り口の壁に叩き付けられた。瞬間、屋上にあった全ての目がこちらへと向けられる。
「っぅ~~~っ」
叩き付けた相手を見ようとして、息が止まる。目の前では椎名が俺を見下ろしていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
屋上を包む喧噪の中、ここだけが静寂に包まれる。俺は椎名に話なんかないし、俺に絡んできたはずの椎名も何故かただ黙っているだけだった。
どれくらい時間が経っただろう。ふっと椎名の口が動いた。
「今里」
静かな声。だが、それ故に恐怖を押し上げてくる。その手には得物こそ持ってないが、普段運動なんかしていない俺なんかでは椎名に勝てる見込みなんて無い。
「な・・・なに・・・?」
恐る恐る椎名に問い返す。俺はきっとキョドってるに違いない。
「あんた、何でこんなとこにいるのよ」
じろりと俺から離されない椎名の視線。何か言いたげでそのくせ威圧しているその視線は俺の事を金縛りにしてくる。
「今里。あたし、いつものを頼んだよね?」
ぐいっと俺の胸ぐらを掴む椎名。やや抑えめに出される声が、逆に恐怖を湧き上がらせる。助けを求めるように辺りを見回したが、椎名の勇名というか威名はやはり学校中に広まっていたようで、関わろうとしないどころか屋上は既に人がいなくなっていた。
え・・・嘘。いくら何でもそれはないだろ。せめて離れて見てるくらいにしておいてくれよ。
「何よそ見してんのよ」
ぐいっと更に引き寄せられる胸ぐら。椎名の顔が数センチの近さにある。じろりと睨んでくる瞳の圧力にどうしても真正面から視る事が出来なかった。
くそ、何だってこいつはこんなに絡んでくんだよ。俺がお前に何をしたってんだ。ああもう、むかつく。お前なんか俺の能力でいつでも奴隷に出来るんだよっ。って、今、チャンスじゃん? 周囲に誰もいないって事は俺の力を見られる事もないって事だし、なにより誰にも邪魔されない。こんな好条件でやられたままで帰ったら、またアリスにどつかれる。
椎名の目につかないようにそっと腕を持ち上げて、胸ぐらを掴んでくる椎名の腹の辺りで手を開く。一度目を閉じ、これまでの怒りや意地、それと鈴木を操った時の優越感をかき集めて行動力へと変化させた。
「あんた人の話聞いてんの?」
無視されたと思ったのだろう。胸ぐらを掴んだままぶんぶんと揺らしてくる椎名をキッと睨み付けると、椎名が何かするより早く俺は力を行使した。
「椎名たつき、捕まえた」
ぐっと右手を握る。瞬間、椎名の顔からは表情が、身体からは力が抜け、がくんと俺に向かって崩れ落ちた。その椎名の身体を抱きしめるように受け止める。そして、誰か来てもすぐにはわからないように入り口の死角、更に近くの校舎からも見えない位置に移動した。
壁にぶつけないように慎重に椎名の身体を立てかける。まるで寝息を立てているかのように静かな呼吸を繰り返す椎名の姿に、俺は感動に打ち震えた。普段から見慣れている椎名の顔。だけど知らない椎名の貌に瞬間的に心が奪われる。
「~~~~~~~っ!」
ぐっと拳を作り、ガッツポーズを決める。嬉しさのあまり一分近くもやっちまった。
って、こんな事やってる場合じゃねぇ。
一応、目につかない場所に動かしたし、椎名の威名のおかげで屋上には誰もいないけど、誰も来ないと決まったわけではないし、ここを見ないとも限らない。ならば手早く処置を済ませるのが吉だ。
とはいったもののどんな暗示を入れようか。鈴木みたいに普段通りでエロを拒まないってのもいいけど、鈴木と被るってのもなんか鈴木が可哀想だし。鈴木に続いてこいつにまで早漏呼ばわりされそうだし・・・つーか、そんなん悩むまでもねぇか。今までずっと虐げられてきた恨みを思い知らせてやる。
「椎名さん・・・椎名たつきさん・・・聞こえますか?」
「・・・はい」
いつもの椎名からは絶対に出てこない雰囲気と言葉にゾクゾクと心が震える。椎名はぼうっとした表情でうつろな視線をどこかへと彷徨わせていた。
「椎名たつきさん・・・よく聞いてください。あなたは私の命令に逆らえなくなる。どんなに嫌な命令でも必ず従ってしまいます。あなたの意志とは関係なく、あなたの身体が私の命令に従ってしまいますよ。わかりましたか?」
「・・・はい、わかりました」
あの椎名が抑揚のない声では返事をする。それだけであそこがちょっと臨戦態勢になりかけてきた。やべ、ギャップ萌えすげぇ。でも、こいつにはそんなんで済ませられる仕打ちは受けてきていない。お楽しみはこれからなんだぜ。
「では、今から三つ数えると、あなたは普段の椎名たつきさんに戻ります。ですが、今、言われた事は心の奥底に刻み込まれて、必ずそうなります。心の奥底なので普段は思い出す事はできませんが、必ず言われたとおりになります。言ってみましょう。あなたはどうなりますか?」
「はい・・・あたしは今里の命令に逆らえない。どんなに嫌な命令でもあたしの身体が命令に従ってしまいます」
「はい、その通りです。それはあなたの心の奥底に刻まれました。どんな時でも必ずその通りになりますよ。では普段の椎名さんに戻りましょう。一つ、二つ、三つ」
パンッ。
椎名にわかりやすい様に手を叩いて合図する。ビクンッと驚いたかのように身体を震わせた後、椎名は目を覚ました。ぱちぱちと目を瞬いて、自分と周囲の状況を確認する。どんな風に状況を理解したのか、椎名は俺を見上げるとぎろりと鋭い眼光を向けた。
「今里、あんた、あたしに何したのよ」
底冷えのする声にぶるっと身体を震わせる。体中に飛び散った気合いを何とかかき集めて椎名を見返したが、足はがくがくと震え、すぐにでも逃げ出したい気分だった。
しっかりしろ俺。もう椎名は俺の掌の上だ。びびる必要なんてないだろ。好きに――
「うわぁっ」
「あたしの質問に答えなさい。何をしたのよ」
いつの間に立ち上がったのか、椎名が胸ぐらを掴みあげる。さっきと同じ状況が繰り広げられた。かちかちと歯が打ち鳴らされる。内側からわき上がってくる恐怖。さっきまでの優越感などどこかへと消えて行ってしまった。とにかくこの状況から、椎名から逃げ出したい。その一心でその言葉を叫んだ。
「”放せよっ”」
言ってから後悔した。そんな言葉、普段なら火に油を注ぐようなもので反抗的な態度をとれば、被害が最低でも二倍になって返ってくる。今までの最高は五倍くらい。なんて説明している場合じゃない。
俺はぎゅっと目をつぶってこの後に来るであろう拳に備える。が、次に来たのは拳ではなく、解放だった。
胸ぐらを掴まれていた感覚がなくなる。それを不思議に思って目を開けると、椎名が目を丸くして言葉を失っていた。
マジかよ・・・
椎名も驚いているが、それ以上に俺が驚いていた。いや、能力の威力は鈴木の時に思い知ってはいたんだが、普段から悪意を持って接されてる相手、それもリーダー格の椎名が俺の命令を聞いたという事実が驚愕だった。
「え・・・?」
一方、椎名は何故自分が手を放したかわからず、呆然と自らの手と俺とを見比べていた。交互に行き来する視線。その視線と俺が椎名に向けた視線が絡む。瞬間、椎名は烈火の如き激情をその目に燃やしていた。
「今里ぉっ!」
「ちょっ、まっ」
今度は掴みかからず、拳を固めていた。大きなバックスイング。次の瞬間には俺の顔めがけて放たれるであろう拳の威力はいつも食らってるから簡単に想像できる。食らったら立ってられない。つーか、保健室送りだ。
「”動くなっ”」
その拳が放たれるのと同時に慌てて叫ぶ。風を切って突き出されてきた拳は俺の眼前でぴたりと止まっていた。その距離一センチ。ぷるぷると震える拳が椎名の意志ではないと示している。
・・・・びびったぁ~。
はぁ~と大きくため息をつく。正直寿命が縮んだ。
「あ、あんたっ。いったいあたしに何したのよっ!」
拳を突き出している姿勢のまま、ものすごい形相で椎名は俺を睨んでくる。前までだったら腰を抜かしてたり、下手すると泣いてるかもしれなかったが、今は違う。もう、お前は俺に逆らえないんだぜ。
「ん~、魔法みたいなもの・・・・かな?」
ひょいと突き出された拳をよけて椎名へと近づく。そして、固まったままの椎名の頬へと手を触れた。
「椎名はもう俺に逆らう事ができないんだよ」
椎名を征服したという優越感が俺にそんな言葉を言わせ、その言葉を聞いた椎名は目を丸くする。そして数秒の沈黙の後、椎名は徐々に身体を震わせて、最終的には我慢しきれないというように笑い声を上げた。
「あはははははっ! あはっ、あはははっ、あははははははっ!」
拳を突き出したまま笑うというシュールな姿は数秒続き、ひとしきり笑った椎名は笑い疲れたとでも言うようにはあはあと大きく呼吸をしていた。そして、馬鹿にしたような目で俺を見る。
「何、ついに現実と妄想が区別つかなくなった? 魔法とか言ってないで精神病院にでも行った方がいいんじゃない?」
自分の置かれている状況を理解していないのか、普段と変わらない椎名の口調。つーかなんなの? 馬鹿なの? 死ぬの? 何でこんなやつに馬鹿にされなきゃならないの? すげーむかつく。お前が今置かれている状況を理解させてやる。
「これは現実だよ、椎名。今、それを思い知らせてやるよ。椎名、”服を脱げ”」
「は? 何言って・・・きゃぁぁっ」
椎名の悲鳴が屋上に響く。俺の命令に従って、椎名の身体が服を脱ぎ始めていた。
「ちょっ、やっ、何これっ!」
「椎名、うるさい。”大きい声を上げるな”」
「んぅっ!」
のどを詰まらせたかのように椎名の声が途切れる。その間にも椎名の身体は次々と服を脱いでいった。
「ゃぁっ・・・んでっ・・・」
上着、ブラウス、スカートと順に脱いでいく椎名は、恐怖に似た表情を浮かべながら掠れるような声で戸惑いの声を上げる。
「あ、靴下は脱がなくていいよ。でも、下着はちゃんと脱いでね」
靴下に手をかけた椎名に向かって声をかける。ピクと一瞬だけ固まると、靴下にかけた手をブラジャーへと移行していった。
あれ、椎名もスポーツブラか?
椎名が着ているモノは数日前に鈴木に見せてもらったモノと同じようなタイプのモノだった。それをぐいっとシャツを脱ぐように脱ぎ、ぽろんと発展途上の胸を晒す。
「ぃゃぁっ。見るなっ、見ないでっ」
顔を真っ赤に染めて、ぎゅっと目をつぶる椎名。しかし、椎名の感情に関係なく、椎名の身体はショーツもするりと足から抜き取った。椎名の手から離れたショーツはふわりと舞って制服の上へと落ちる。椎名は身につけている物は靴下と上履きという全裸と言っても差し支えない格好になり、頬を真っ赤に染めた。
「へえ・・・さすがは椎名」
椎名の身体に思わす声が漏れる。さらけ出された椎名の身体は余分な脂肪がなく、無駄なく引き締まっていた。胸や尻がでかいというわけではないが、全体的なバランスがよく、鈴木に勝るとも劣らない。健康的ともいえる綺麗な身体がそこにあった。
「見るなぁーーーっ」
蚊の鳴くようなか細い声を上げて、椎名は反射的に胸と股間を手で隠す。その瞬間、予鈴が鳴り、授業が近い事を知らせた。だが、そんな事今の俺には関係ない。目の前には極上の獲物が活き作りにされているんだから。
「椎名、隠したら見られないだろ。”手を下げろ”」
「ゃっ・・・」
俺の命令に必死に抵抗する椎名。だが、その抵抗も僅かにしか効果が出ず、ブルブルと震えながら、椎名の腕は徐々に下ろされ、その全てがさらけ出された。剣道部でも屈指の実力者なのに運動しているとは思えないほどに華奢に見える肢体。きめ細やかな肌が太陽光を反射して光り輝く。
・・・流石はお嬢様。鈴木も綺麗な肌をしていたが、椎名の肌は段違いだ。いったいどんな手入れをしてるんだ。
見惚れてしまった俺はゴクリと喉を鳴らし、手を伸ばした。すべすべの肌は吸い付くような手触りを、引き締まった身体は適度な弾力を伝えてくる。
「すげえ・・・」
思わずこぼれた俺の言葉に椎名は頬をこれ以上ないくらいに真っ赤に染める。かと思ったら、ギリと歯ぎしりの音が聞こえてきそうなくらいにきつく歯を食いしばり、まるで俺を睨み殺そうと言うくらいの勢いでジロリと睨んできた。だけど、それ以上は何もしない。できないのだ。
つ、と手を椎名の身体に滑らせる。肌から伝わってくる感覚に椎名はぴくんと身体を震わせた。俺に触られるのが嫌なのか、俺の指が椎名の体を走る度に椎名の眼光が鋭くなっていく。
「すげえな、椎名。こんなに触り心地のいい肌は初めてだ」
「・・・っ」
うお、怖ぇ。俺の言葉に椎名の眼光がそれこそ鬼のような域に達していた。憎しみなのか怒りなのかよくわからないけれど、視線に力があったら俺はもう殺されていそうな勢いだ。
だけど、椎名にはそんな能力はないはずだし、椎名は俺には逆らえない。その優越感が俺を次の行動へと促した。
俺は椎名の後ろへと回り込み、後ろから抱きしめる。またびくっと椎名の体が震えたが、それだけで椎名の体は動かない。つつっと手を控えめなふくらみへと滑らせる。
「・・・っ!」
ギリ、という音が近くから聞こえた。それとともに椎名の体が固くなる。しかし、辿り着いたふくらみは柔らかく、測ったように俺の手にぴったりと収まった。
「すげえ、ぴったりだ。見ろよ椎名。俺の手とお前の胸、ぴったりだぜ」
「・・・」
ぶるぶると椎名の体が腕の中で震える。俺を拒絶せんとばかりに顔を背けて、瞼をぎゅっと閉じた。
「なんだよ、椎名。それで抵抗のつもりか? 言っただろ、お前は俺に逆らえないんだよ。ほら椎名、”目を開けてしっかりと見ろ”」
「やっ、なっ、ん・・・でぇっ」
椎名の頭が動き、自分の胸元を見下ろす。開かれた視界には俺の手に包み込まれる自分の胸が見えているはずだ。
小振りなその胸をふにふにと揉みしだいていく。鈴木と比べてきめ細やかですべすべの肌は触り心地が非常にいいが、決定的に負けている部分がある。もちろんボリュームだ。鈴木は堀池ほど大きくないが、椎名みたいに小さくもない。触り心地は良くてもあるのかないのかよくわからないような大きさでは揉み心地なんて全然ない。
「椎名、全然胸ないのな。せっかく金持ちなんだからもっと体型に金をかけろよ」
「~~~~っ!」
怒ってるのか恥ずかしがっているのか、耳まで真っ赤に染まる。そんな椎名の反応を楽しみながらふにふにと胸を揉んでいく。
「どうだ、椎名。気持ちいいか?」
「・・・」
ギリという音が耳元で聞こえる。怒りと憎しみを表情に表し、椎名は鋭い眼光を俺へと向けて、力一杯歯を食いしばっていた。
ふふん、そんなに嫌か。嫌だろうなぁ。いつも顎で使ってた相手にこんな風にされてるんだもんな。俺は逆に最高の気分だぜ。
「”答えろよ”。気持ちいいか?」
「ぁ・・・や・・・いいわけ・・・ない・・・でしょ」
「ん?」
「気持ちいい訳ないでしょっ。こんなのっ」
俺の問いに椎名はじろりと睨んで答える。
そうこなくっちゃな。こんなところで気持ちいいなんて答えられたら拍子抜けするところだったぜ。
「オケ、わかった。じゃあ、気持ちよくしてやるよ。”感じろ”」
「ひぅぅぅっ!?」
俺が耳元で命令した瞬間、椎名の体がビクンと震えた。突然の感覚に目を見開いて驚いてる。
「言っただろ、お前は俺に逆らうことができないって。正確にはお前の体が俺の命令に従っちまうんだけどな。ほら、これが証拠だよ」
「あぁぁぁっ、ああっ、なんでぇっ!?」
最高だ。あの椎名が喘ぎ声を上げてる。俺の指に嬲られて、体を震わせ、悶えてる。この俺が、あの椎名を、激しく感じさせてる。最高だ。
びくびくと俺の指の動きにあわせて震える椎名の体。その胸の先、俺の人差し指の当たっている部分が徐々に堅くなっていく。
「椎名、なんか堅くなってきたけど?」
「ひぁっ、だめっ、やぁっ!」
堅くなってきた部分を指で挟み、コリコリと刺激する。その瞬間、椎名の体がビクンと仰け反り、弓なりに俺へと寄りかかった。
「感度いいな。ここ、そんなにいいのか?」
「だめっ、そこっ、あぁっ!」
ぶんぶんと首を振っていやいやをする椎名はびくびくと体を震わせ、はあはあと呼吸を荒くする。
俺は指の動きにいちいち反応する椎名を堪能して、一度離れた。
大体一メートルくらい離れて、椎名を観察する。
椎名は屋上の入り口の壁に寄りかかりながら、はあはあと荒い呼吸を零す。きめ細やかな白い肌はピンク色に染まり、こぼれる息は荒いだけではなく、甘く熱いものも含まれている。だというのにギンとこっちを睨む視線はさっきのままで、いつもの、いや、いつも以上の怒りと殺気を出していた。
正直怖い。今まで見たこともないくらいに憎しみが込められてる。
普段だったら、逃げ出す前、つーかこんな状況になる前にフルボッコにされてるだろう。だけど、今は違う。この場を支配しているのはこの俺だ。怯えるどころか、椎名になにをやらせることもできる。
「いいざまだな、椎名」
「・・・っ」
ギリという歯ぎしりの音が聞こえてくる。憎しみが瞳に籠もり、ものすごい殺気となってこちらへと向けられる。
「あんた・・・あたしにこんな事していいと思ってんの? 後でどうなるかわかってるんでしょうね!」
すげえ、常套句だ。まさか、そんな笑えることを言われるとは思わなかった。
どうなるかって・・・どうするっていうんだよ。そんなんで。
「へえ、そんな格好でどうするっていうんだよ。お得意の剣捌きでぶったたくのか? それとも、堀池たちに命令していじめでもする? 黒服のお兄さんたちに囲まれるのかな? そんなこと言われてそのまま返すと思ってんの?」
「な、なにするつもりよっ」
俺の言葉に自分の状況を思い返したのか、椎名の声に震えが混じる。まあ、後始末は最後にするとして、まだまだこの状況を愉しませてもらうつもりだよ。
「そうだな、オナニーでもしてもらおうか?」
「なっ・・・なにをバカなこと言ってんのよっ、そんな事する訳ないでしょっ!」
「お前こそなにをバカなこと言ってんだよ? 俺は頼んでいるんじゃない、命令してるんだよ。”椎名、足を開いてオナニーしろ”」
「い、いやぁっ、なんでぇっ・・・」
俺の命令を受けて、椎名の体が動いていく。壁により掛かるようにして座り、足をM字に開いていく。
「体がっ・・・だめぇっ」
椎名の意思の表れなのか、ぶんぶんと頭を降りながら股間へと右手を伸ばしていく。
「いやぁぁぁぁっ」
かすかな悲鳴を上げながら、椎名のあそこが開かれていく。くぱぁと開かれたあそこからは熱い液体が溢れ、とろとろとこぼれていく。そして、椎名は左手もあそこへと伸ばすと、くちゅっと水っぽい音を立てて指を動かし始めた。
「はぁっ」
瞬間、ぶるっと体を震わせ、甘い声をこぼす。くちゅくちゅと水っぽい音を響かせ、自分の意志に反して、感じるところを刺激していく。
「ふぅっ、んぅっ、くぅっ、やぁっ」
勝手に湧きあがってくる快感にびくびくと体を震わせ、時折びくっと体を反らせる。椎名は首をぶんぶん振って、必死に抵抗をしているが、そんなものは何の役にも立たない。的確に自分の感じる部位を刺激して、どんどん快感を送っていく。
「やぁっ、なんでっ、こんなぁっ、こんな奴の前でっ、んんぅっ」
叫びとも嬌声ともつかない声が椎名の口からこぼれる。精一杯の声を上げたと思われるその声はしかし、か細く俺の元にやっと届くくらいだ。
「どうした、椎名。こんなところでオナニーなんかして」
「あっ、あんたがっ、ぁぁっ、あんたがさせてるんでしょっ、んんぅ」
「俺がさせた? どうやって? 俺は椎名に触ってないし、そもそもオナニーって自分でやるものじゃん。お前たちにいじめられている俺がどうやって椎名にオナニーさせるんだよ? お前がただの露出狂なだけだろ?」
「ちがぁっ、あっ、んぅっ! こんなっ、んんぅ、あ、あたしっ、そんなんじゃないぃっ」
びくびくと震えながら椎名は答える。全く説得力のないその姿をみるのはすごく楽しい。あの椎名にこんな態度をとれる日が来るなんて、全く夢みたいだ。
「違わねーよ、こんなに濡らしてさ」
「あぁっ! やめっ、やめろっ、んんぅっ!」
爪先で椎名のあそこをつついてやる。瞬間、震えた椎名のあそこから愛液が溢れて、俺の爪先を濡らした。
「ほらみろ、こんなに濡れてんじゃねーか。やっぱりお前がただの露出狂なんだろ?」
「ち、がぁっ、んぅっ・・・なんでぇ、んんぅっ、はぁっ」
ぐちゅぐちゅと音を鳴らすあそこは椎名の指を深くまでくわえている。意志に反して増え続ける快感に、椎名は体を仰け反らせた。
胸を隠すどころか、盛大に晒して椎名は体を震わせる。
「あっ、あぁっ、んんぅっ、くぅ、だっ、めぇっ、んんんぅぅっ!」
ハアハアと荒い呼吸をこぼす。どうやらイッたらしい。
あの椎名が俺の命令でオナッてイクとか最高だ。もうやべえくらいにあそこがギンギンになってる。
「すげえイキっぷりだったぜ、椎名。まさか、イッちまうまでやるなんて思わなかった。最高だわ」
「・・・っ」
ギロリと俺を睨みつけてくる椎名。惜しみないほどの憎しみがその瞳から出ていた。
だけど、椎名の瞳からでてるのは憎しみだけじゃなかった。
「なんだ、泣いてるのか?」
「っ!?」
俺に指摘されて、初めて気づいた椎名は慌てて顔を背ける。だけど、溢れる涙は隠しようがない。一度こぼれた涙は次から次へと溢れだし、ぽろぽろと頬から床へと落ちていく。
「まあ、泣いたからってやめる気はないけどな」
ああ、そんな程度で許したりなんかするか。泣きたい事態なんて何度でもあったんだ。今まで俺が受けてきた痛みはそんなものじゃない。今までずっとこき使われてきた、何の意味もなく蹴りとばされた、クラス中でずっとハブにされてきた俺の憎しみは、溜め込まれてきた憂さはこの程度じゃ晴れない。もっともっと惨めな思いをさせてやらないと気が済まない。
「次だ、椎名。俺のものでもしゃぶってもらおうか?」
「・・・っ」
俺の言葉。その意味を理解して、椎名は目を丸くしてこっちを見つめる。信じられないという風なんだろう。だけど、こっちは至って本気だ。
「だから、さっきも言っただろ。俺は頼んでいるじゃなくて、命令してるんだよ。”俺のちんこをフェラしろ”」
「あ・・・やぁ・・・っ」
俺の命令を受けて、椎名の頭が近づいてくる。しかし、その貌は青ざめ、拒絶の言葉を吐きながら、必死にぶんぶんと頭を振っていた。
だが、そんな椎名の意思を無視して、椎名の体は命令に従っていく。
「やっ、だめっ、やぁっ・・・」
紡がれる声とは裏腹に大きく開かれた口は、ぱくりと俺のものをくわえた。そして、ぺろぺろと丁寧に舐めていく。
「っ!」
やべ、フェラやっぱり気持ちいい。鈴木ほどうまい訳じゃないけど、あの椎名にこんな事させているって言うシチュがいい。
「んんっ、んぅっ・・・あむぅ、ちゅぅ」
嫌そうに目をぎゅっと瞑りながらも椎名のフェラは止まらない。強く閉じられた瞼の端からぽろぽろと涙をこぼしながら、それでも頭をくいくいと動かす姿は本当に素晴らしかった。
ゾクゾクと快感が腰から伝わり、あっと言う間に限界を振り切る。
「くぁっ、でるっ!」
「んんんっ!?」
ぺろりと椎名が俺の物を舐めた瞬間に放出された白濁液は、その勢いに椎名が口を離してしまったためにシャワーとなって椎名に降りかかる。
顔面を中心に白濁液のシャワーを浴びた椎名はどろどろの化粧を施され、見るも無惨な姿だった。
最高の気分だ。あの椎名にこんな風にできるなんて、爽快すぎる。
「おまえはどんな気分だよ、椎名?」
ぎゅっと拳を握り、ふるふると体を震わせる椎名に聞くまでもない質問をぶつけてみる。
「・・・最っ低」
「なんだ、泣いてたんじゃないのか?」
ぼそっと呟いた椎名の声は隠しようもないというか、隠すつもりのない怒気をはらんでいた。
「何でこんな事されなきゃならないのよ、あんたなんかに。こんなのレイプよ。わかってんでしょうね、こんな事してただじゃすまないわよ」
なんだよその態度。惨めに泣いて謝ってくるようだったらやめてやってもよかったけど、そんな気は失せた。そんな逆らう気が起きなくなるまでやってやるよ。
俺は肉棒を出したままごろんと横になる。
そして、それを睨みながらも見ていた椎名を見て命令してやった。
「”俺の上に跨ってセックスをしろ”」
「なっ!?」
俺の言葉に愕然とする椎名。だが、その体は既に命令に従って動き始めている。
「ちょっ、嘘っ、なに考えているのよっ」
「なにって、言った通りだよ。レイプなんだろ? だからレイプっぽく椎名のいただくんだよ」
「ふざけんなっ。何でこのあたしがあんたなんかに犯されなきゃならないのよっ」
「そんなもん、自分の胸に聞いて見ろよ」
今までの人を人を思わないような扱いの日々。あんな扱いを受けて相手を恨んだり、憎しみを持たないような奴は間違いなく聖人だ。俺にはなれない。
そして、そんな扱いの日々を過ごしておいて、あんな扱いを受けた相手が何の感情も抱かないなんて思っている奴はただのバカだ。
そんなバカは俺の言葉に従って腰の上へと足を跨ぐ。そして、俺の肉棒を自分の秘裂へとゆっくりとあてがった。
「やっ、だめぇっ。やめっ、やめてっ。だめっ、どうし・・・っ!」
ぶんぶんと首を振って拒絶していた椎名の声が不意に途切れる。俺の肉棒が椎名の秘裂に侵入を始めたからだ。
椎名の体がゆっくりと下に降りていく。ピッチリと閉じられた椎名の秘裂がメリメリと俺の肉棒に押し広げられていった。
鈴木の時と同じ、いや、それ以上にきつい秘裂は俺の肉棒で無理矢理に広げられていく。その痛みに、椎名は声も上げられずに体をぶるぶると堅くするだけだ。
何かきつい感触に行きあたる。その瞬間、椎名は一層体を堅くして、小さな息を漏らした。
どうやら、ここが処女膜らしい。鈴木も処女だったけど、鈴木の時はこっちもいっぱいいっぱいで、そんなことを気にしている余裕なんてなかった。
椎名は懇願するような、縋りつくような目で俺をみてくるが、椎名の体は自分の意思に反して腰を落としていく。
メリメリときつくなっているのも、処女を喪失する痛みもお構いなしに椎名の体は落ちていった。
「~~~~~っ!」
声にならない絶叫が椎名の口から迸る。男の俺にはわからないけど、もの凄い痛みなんだろう。はあはあと荒い呼吸を繰り返し、目の端に大粒の涙を溜める椎名は見物だった。
いい気味だ、ざまあみろ。
「椎名、今までパシリにしていた相手に処女を奪われる気分はどうだ?」
「・・・」
椎名は俺の質問に答えず、ぶるぶると体を震わせる。ぎゅっと俺の胸の上に置いた手を強く握りしめ、ギロリと上から俺を睨んだ。
凄い迫力だ。少なくとも今までの俺だったら、すぐに逃げ出してしまうだろう。だが、今は違う。椎名は今、俺に逆らう事なんてできないんだから。怖がる必要なんて全くない。
「椎名、睨んでくるのは結構だが、大切なことを忘れてないか?」
「・・・」
「俺は挿れろって言ったんじゃない。セックスしろって言ったんだ。セックスってのはいれるだけじゃなくて、出すまでを指すだろ」
「・・・やぁっ!?」
俺の言った言葉を理解した椎名の体は上下に動き始める。
「やっ、いやぁっ・・・だめぇっ」
俺の腰の上で椎名がぶんぶんと首を振りながら悔しそうに叫ぶ。本人の意思とは裏腹に動いていく体は俺の肉棒を受け入れていく。
既にしとどに濡れていた秘裂はぐちゅぐちゅと音を立て、さっきの命令がまだ効果を発揮しているのか、処女のはずの椎名は溢れてくる快感にびくびくと体を震わせる。
「んんぅっ・・・やぁっ、あんぅ・・・なっ、んでぇっ、こ、ん、なぁっ・・・」
びくびくと悶える椎名の秘裂は肉棒をきゅっきゅと締め付け、鋭角の刺激を与えてくる。ハアハアと熱い息を漏らしながら椎名は体を震わせる。瞬間、きゅっと椎名の秘裂が締め付けを強くした。
「っ!」
ぞくっとした。鈴木程じゃないけど、椎名の中も気持ちいい。ともすればすぐに出しちまいそうな気持ちよさの中、椎名をみた。
椎名も感じているのか、体が上下に動く度にあんあん嬌声をあげてる。
やべえ。あの椎名が俺の上で悶えてるとか最高だ。
「なんでって、お前が淫乱なんだろ?」
「ちがぁんぅっ・・・あっんぅ、んぅっ」
わざとらしく椎名に言うと、椎名は反論しようとしてビクッと体を震わせた。
やべ、笑いが止まらねえ。
きゅっきゅと秘裂を締め付け、肉棒から伝わる快感に打ち震えるその姿では淫乱という言葉をどれだけ否定しても説得力なんかない。
「なにが違うんだよ。初めてのくせにお前が俺の上で腰振ってあんあん悶えてるんじゃねーかよっ」
「ぁっ!」
ズンと椎名を突き上げる。ビクッと体を震わせた椎名はきゅぅっと秘裂を締め付けた。
「ほら、感じてんじゃねーかっ」
「んんっ、ちがっ・・・んぅっ!」
否定の言葉を漏らしながら、椎名は体を震わせる。命令によって動く体が本人の意志に反して快楽を集めていく。そして、快楽を集められた椎名はぞくぞくと身体を震わせ、はあはあと熱い吐息を漏らしていく。突き上げる度にビクンと身体を震わせる中、悔しそうに俺を睨んでいた。 悔しい、でも感じちゃうビクビクッて感じか?
「初めてなのに感じるとか淫乱以外の何者でもないだろっ」
「違っ、あぁっ、んんぅっ!」
椎名が背を仰け反らせ、きゅうっと秘裂が締め付ける。それが俺の肉棒に鋭角な刺激を伝えてくる。
やべ、出そう。きゅっきゅと締め付けてくる椎名の秘裂がすげえ気持ちいい。鈴木といい、椎名といい、何でこんなに気持ちいいんだよ。もしかして、これが標準なの?
くそ、椎名をイカせる前にイッちまったらまずい。間抜けもいいところだ。なんとしてもこっちがイク前に椎名をイカせないと。
「んぁぁっ!」
下から強く突き上げ、椎名の秘裂にグリグリと擦り付ける。その刺激に椎名はビクンと背を仰け反らせ、きゅうっと秘裂を締め付けた。
ぞくっとした感覚が俺の背中を走り抜ける。やべ、マジ出る。待て待て、まだ早いって。だから早漏とか言われるんだろ。我慢しろ俺。
ぎりぎりと歯を食いしばり、必死に出してしまいそうになるのを我慢する。せめて、椎名に先にイカせないといろいろと話にならない。
「んぅっ、あぁんっ!」
ビクッと椎名は身体を震わせてきゅぅっと秘裂を締め付ける。ビクビクと身体を震わせながらも喘ぎ声を漏らし、ハアハアと熱い息をこぼした。
つーか、早くイケよこの野郎! こっちが限界なんだよっ!
きゅうきゅうと締め付けてくる秘裂は鈴木ほど気持ちよくなかったとしても、気持ちいいことには変わりない。そして、それが積み重なっていけばこっちがイッちまう。
つーか、限界だった。
「”イケよっ!”」
「あっ・・・あぁぁぁぁぁぁっ!!」
え、なにこれ、やべぇっ!
そして、俺の視界は真っ白になった。
数秒後、朦朧とした意識の中で目が覚めた。
もう出してしまえと思いっきり椎名の中に突き込んだ瞬間、椎名が絶叫とともにイッた・・・らしい。さっきとは比べ物にならないほどにギュウギュウと締め付けてくる秘裂に刺激されて、我慢を重ねていた肉棒は大量の白濁液を吐き出した・・・らしい。
つーかなにが起こったのかよくわかんねーし。とりあえず、今見てわかることはそれくらいだし。
信じらんない量をだしたみたいだ。鈴木とやったときだってこんなにでなかったんだけど。変なモンまで出してないよね? 赤玉とか出てたら困るんだけど。
椎名は目の前でびくびくと身体を震わせている。目は白目をむいて、半開きになった口からは涎を垂らしている。アヘ顔っていうやつだ。
「・・・っと」
椎名の身体から肉棒を引っこ抜く。瞬間、びくっと椎名の身体が震え、ヒクヒクと蠢いている椎名の秘裂からとろとろとピンク色の液体が零れ出す。
それを見て、不意に笑いがこみ上げてきた。
「は、はは・・・あはははははっ」
すげえ、鈴木だけじゃない。椎名までやっちまったよ!
なにこれ。これがあの椎名? 最高だ。最高の気分だ。
高揚感がパネェ。笑い声で気づかれないように必死に押さえてるのにどんどん笑い声が零れていく。ほんとやべえ。まさにアリス様々だ。
「ん・・・ぅ・・・」
おっとやべえ。笑い声で気がついたか? このまま放置しておいてもいいけど、相手はあの椎名だ。黒服のお兄さんたちに拉致られても怖いから後始末はしておかないとな。
手早く自分の後始末をしてから、椎名へと手を向ける。そして、唐突に理解した。
そうか、これは魂を掴むんだ。そいつがそいつである大元、魂を掴みとる力を与えられたんだ。そいつの力なんて関係ない。魂を掴んでしまえば中身は空っぽになる。その空っぽの身体、それと掴みとった魂に直接言葉を刻み込ませるのがこの力なんだ。
「椎名たつき、捕まえた」
すげー。本当にすげー。こんな力が手にはいるなんて妄想でしかしたことなかった。
「椎名、聞こえるか?」
「はい・・・」
これは催眠なんてものじゃない。絶対的な命令だ。だから、催眠みたいに話しかける必要なんてない。必要なのは刻みつける命令。誘導ではなく断定だ。
「お前は俺にされたことを誰かに伝えることが出来ない。どんな手段でも誰かに伝えることも何かに書き記すこともできない。もちろん、身振りや態度で助けを求めることも出来ない。そして、どんな方法でもお前は俺を危害を加えることが出来ない。それがどのような方法であれ、結果的に俺に危害が与えることになる行動は絶対に取ることが出来ない。わかったな」
「は、い・・・」
椎名が頷くのを確認した俺は椎名の意識を覚醒させる。呆然と遠くを見ていた椎名の瞳の焦点が徐々に合っていき、最後に軽く瞬きをして椎名は完全に覚醒した。
「きゃっ・・・」
眼を覚ました椎名は自分の格好に気がつき慌てて体を隠す。今更そんな事したって、とっくにじっくり見たのにな。
慌てて服を掻き集めている姿が面白いから見ていたら、その視線に気付いたのか椎名の視線が俺に向けられる。椎名はジロリと眼では俺を睨んでいるが、その瞳には敵意だけではなく怯えも混ざっていた。
「な、なんてことしてくれたのよっ。あんた、あたしが何者かわかってるんでしょうねっ」
「ぷっ」
この期に及んでのこの台詞に本気で吹いた。
声震えてるし。そもそも、お前はもう俺に危害を加えられないんだよ。
「何者かって、椎名だろ。俺の奴隷の」
「なっ」
「俺に命令されて処女を捧げた雌奴隷の椎名だ」
「そ、それはあんたがッ」
「俺が? 何かした? 魔法を使われましたとかいうの? それでどれだけの人が信じてくれるかな?」
俺がそう言うと、椎名はギリと悔しそうに歯を鳴らす。ぷるぷると震える体には色んな感情が渦巻いてるんだろうな。
「それにさ、俺がそんな事させると思ってるの?」
「え・・・?」
「椎名は俺に危害を加えることも、誰かに俺の事を伝えることも出来ないんだよ」
「そんな・・・」
「嘘だと思うんだったら試してみればいいさ。ま、無駄だけどな」
そう宣告して、俺は椎名に背中を向ける。
っと、そうそう、忘れる所だった。
「そうそう、椎名。”どんなに嫌でもお前は俺から逃げることは出来ない。学校をサボることも俺からの電話に出ないことも出来ない。ついでに俺の番号を登録しとけ”」
俺は自分の携帯の番号を椎名に伝えてから屋上から出ていった。
階段を下りている時に上から微かに聞こえてきた嗚咽に零れ出る笑みを抑えられなかった。
< 続く >