僕は二流の大学に通う、平凡な男だ。
外見も、頭も趣味も。
でも趣味に関してはあまり大きな声じゃ言えない。
僕の趣味は写真撮影。
それだけなら、平凡だろ?
でも僕が撮るのは綺麗なもの・・・特に女の人。
まあ世間が言う『カメラ小僧』だろうか。
レースクイーンやアイドルの水着写真は山のようにある。
インターネットで、公開もしている。
水着の写真撮影なら、行ける範囲なら何処へでも顔を出してるんだ。
こんな事、親や友達には言い難いだろ?
もっとも僕の場合、似たような友達しかいないけど・・・。
そんな僕には不思議な体験があるんだ。
いつものように僕は各ホームページを彷徨っていたんだ。
これは新しい発見の為に、定期的にやっているんだ。
すると、ちょっとしたミスから変なところへ迷い込んでしまったんだ。
「あ~あ・・・」
行きたいところを見つけたのに、中々舞い戻れなかったんだ。
「くそ~」
ブツブツ文句を言っていると、またしても別のところへ行ってしまった。
今度はさっきまでとは打って変わって、一つのサイトしかなかったんだ。
「あれ~どうやったらこんなとこに来るんだ?」
不思議だった。
小説によくある、別世界にワープするというそんな話みたいだったんだ。
『禁断のボーダーライン』としか書かれていなかったんだ。
初めて見た光景だった。
普通、紹介文やら何やらある筈なのに・・・。
宣伝が皆無というところに、何故か興味をもってしまい、僕はクリックしたんだ。
【ようこそ。ここは禁断のボーダーラインを越えるページです。希望する人は申し込み欄を書いて送信して下さい。】
それだけしか書いてなかったんだ。
「何だろう、これ?」
何の虚飾も無く、まるで来た者は必ず申し込むと言わんばかりなんだ。
悪徳商法などにしては簡易すぎる。
禁断のボーダーラインて何だ?
いけない事をしようという事くらい、想像は出来たよ。
僕は「取り敢えず、申し込み欄を見た。
【趣味、年齢、希望サービス、メールアドレス】
しかない・・・普通、名前とか聞く筈なのに・・・。
かなり胡散臭いが、希望サービスを見て、僕はびっくりした。
サービスには最上級、上級、普通の三つがあり、値段は順に三十万・二十万・十万だったんだ。
しかも・・・後払い・・・。
こんな悪徳商法、ある訳が無い!・・・と僕は応募したんだ。
勿論最上級サービスで・・・三十万なら、ギリギリなんとかなるし。
返事が来たのは二日後だった。
期日と場所を指定してあり、此処に来るように、とあったんだ。
その場所とは・・・何と『日本カーエクスビジョン』が行われる会場、日にち・時間も同じだったんだ。
「要するに日本カーエクスビジョンに来い、て事なのかな?」
僕はどうしてそんな場所を選んできたのか、分からなかった。
一応説明しておくけど、これは車十台と美女十人が競演するビッグイベントなんだ。
ほとんどの人間は車か美女を目当てに集まってくるんだ。
かく言う僕も美女目当てで集まる人間の一人。
少し悩んだけど、僕は行く事にした。
まさか、会場に放火したり爆弾を投げ入れたりしないだろうって思った。
遂に運命の日はやって来た。
僕は結局、いつもの時と同じ格好、同じカメラを持って出掛けたんだ。
何をするのか、不安と期待が入り混じった気持ち・・・当日になってもそうだ。
指定された場所、入口の正面に立つ木・・・どうして相手はこの事を知っているんだろう?
来た事があるのかなぁと考えつつ、僕は仲間になるべく顔を見られないように気をつけていた。
二十分くらい経ってからだろうか、肩を叩かれたので僕は振り向いた。
そこに立っていたのは、地味な服を着た若い男だったんだ。
「ボーダーラインのサービスの種類と金額は?」
僕は目を丸くした。
まさかそんな事を聞かれるとは思わなかったんだ。
「え~と・・・最上級で、三十万円?」
何とかそう答えると、彼はニッコリした。
「OK。それじゃ行こうか」
歩き出した彼の後を僕は慌てて追った。
会場内に入ると、既にショーは始まってしまっていた。
「急ごう!」
何としても前に行きたい僕は、彼を促した。
それなのに、彼は少しも動かないんだ。
「まあ慌てない慌てない」
落ち着いてるどころか、欠伸までする始末だった。
もう彼女達の自己紹介が始まっているというのに。
「心配しなくても、大丈夫だって」
彼はゆっくりと歩き始めた。
仕方ないから、僕は彼と並んで歩いたんだ。
歩いている間、彼は一言も口を聞かなかった。
ただ、彼の周りから嫌な空気が流れていたんだ。
僕は不気味だったけど、結局は彼に従うしかなかったんだ。
彼は突如歩くのを止めた。
早くしないと自己紹介が終わってしまうのに!
彼が何かブツブツ言い始めたので、僕はびっくりして彼の方を見た。
何か会場内を嫌な空気が包み込んでいき、そして会場内の雰囲気が変わっていくのは、何となくだけど僕は感じる事が出来たんだ。
「じゃあ行こう」
そう言って、彼はまた歩き出した。
僕達が歩いていくと、前にいる人達が皆どいていくんだ。
不思議に思ってその人達の顔を見ると、皆虚ろな目をしていたんだ。
ギョッとして、後ろに下がったら、やっぱり虚ろな目をした人にぶつかったんだ。
僕は不気味なあまり、謝る気にもならなかった。
ゾッとして彼に問い詰めたんだ。
「何を?何をしたんだよ?」
僕が肩を揺さぶっても、彼は涼しい顔をしていて、
「道を開けてくれるように頼んだだけだよ」
なんて言ったんだ。
嘘だ・・・絶対に嘘だ!
頼んでなんてなかった!
あれは絶対何かをしたんだっ!
「これもサービスだ」
そう彼に言われ、僕は一瞬考えてしまった。
「サービス?サービスならこの人達は大丈夫?」
本気でそう思ったんじゃないよ。
そう思い込みたかったんだ。
「何ともないよ」
彼は全く動揺してなかった。
問い詰められても、こんなに冷静なんて普通じゃない。
やっぱり大丈夫なんだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・きっと大丈夫なんだよね・・・・・・そう信じるしかなかったんだ。
信じる、と言おうと思ったら、彼は遥か前に進んでいたんだ。
いくらなんでもあんまりだよ。
だって・・・彼は僕に『サービス』する為にいるんだろ?
そう言えばどんなサービスなのか気になったけど・・・やっぱり先に追いかけたよ。
最前列で彼は僕を待っていたんだ。
ちなみに、今ステージ?の上にいるのは、十人だけ。
自己紹介はまだ続いていたんだ。
え?マイクを使ってるのに声は聞こえないのかって?
残念ながら、このイベントはマイクを使ってないんだ。
使ってたとき、進行に支障をきたすような事が相次いだらしいんだ。
今は美女十人以外、誰も上にいない。
迂闊に上がると、ブーイングが起きるんだ。
・・・なのに、彼は上がろうとしていたんだ。
「ちょっと待てよ、何をする気だ?」
彼は僕を見て言った。
「う~ん・・・イベントジャックかな?」
・・・イベントジャック・・・???・・・・・っ!!
「だ、駄目じゃないかっ!」
僕は多分我を忘れていたと思う。
「そんな事をして言いわけがないよっ!」
彼は憎たらしい程落ち着いていた・・・気がする。
「何で駄目なんだ?」
など言ってた筈だから・・・。
「これもサービスだ、上がれ」
冷たく、有無を言わせない口調だった。
僕はビクッとしたけど、上がる事にしたんだ。
サービスと言うからには大丈夫に違いない・・・そう信じていたんだ。
気付いたら、僕は彼女達と同じところに立っていたんだ。
「すいません」
声を掛けられ、振り向くと、そこには綺麗なお姉さんが立っていたんだ。
彼女は美しい顔に困惑を浮かべていた。
「勝手に上がられると困るんですけど・・・」
そんな彼女も、とても綺麗だった。
思わず写真に撮りたくなったくらいだ。
それなのに、彼は冷たかった。
「少し黙っててくれ」
なんて言ったんだ。
非常識な男に堪りかねて注意しにきた筈なのに。
流石の彼女もムッとした顔になったんだ。
でも彼女が何かを言う前に、例の嫌な空気が彼女を、他の九人を包んでいったんだ。
そうすると、彼女達に異変が起こった。
彼女達の顔から、何て言うか・・・生気・・・輝きが消えていったんだ。
僕はびっくりして、彼女達の事を見つめてしまった。
彼女達の顔から、どんどん血の気が失せていくんだ。
そしてやがて・・・他の人達と同じく、虚ろな目付きになったんだ。
「な、何をしてるんだよっ?」
僕は彼を問い詰めた・・・彼は無視して、会場の人達の方へ向いた。
僕は彼しか見なかった。
いくらなんでも自分と彼以外の人間が、揃いも揃って虚ろな表情なんて、想像するだけでも嫌だったんだ。
そもそも彼は平気なんだろうか・・・でも平気じゃないとこんな事しないだろう・・・ 彼は一体何者なんだろう。
そんな僕をよそに、彼は変な事を始めたんだ。
「お前達は今日の事は何も見ない、何も記憶しない、何も思い出さない」
言い聞かせるように彼は言ったんだ。
そして・・・次の瞬間、僕は二度と忘れられないようなものを見たんだ。
虚ろな表情なまま、全員同時に頷いたんだ。
僕は肩が震えるのを感じた・・・。
さらに、それは続いた。
「今日の事は何も見ない、何も記憶しない、何も思い出さない」
全員で合唱を始めたんだ・・・。
これって洗脳なんじゃないだろうか・・・。
いや・・・記憶しないと思い出さないってどう違うんだろうって思ったよ。
けど、口にする事は出来なかった。
彼は合唱が終わるとこっちを向いた。
「始めよう」
なんて言ってた・・・もう始まってるのに。
「あの人達には何をしたんだい?」
洗脳か、催眠術か、やっぱり気になったんだ。
「記憶の干渉など」
彼はあっさりと言ってくれた。
そんな説明で誰が納得するものか!
「具体的に教えてよ」
僕は思いっきり睨みつけてやったんだ。
すると、彼はあっさりと兜を脱いだよ。
「トランス状態に落とし、暗示をかけたんだよ」
トランス状態・・・?暗示・・・?
「それって・・・催眠術?」
僕の頭に真っ先にそれが浮かんだんだ。
「ちょっと違うけど・・・まぁ似たようなものだな」
説明になってないじゃないか・・・。
「メインはあっちだろ?」
彼が示す先に、十人の美女が立っていたんだ。
「メインてま、まさか・・・」
いくらなんでもここまでくれば気付くよ。
「そ、そんなの駄目じゃないか?人として間違ってるぞっ!」
「俺は何をするか言ってないぞ」
僕はぐっと詰まってしまった。
た、確かに彼は何も言ってない・・・。
「それに、だ。『越えたい』と申し込んだのはお前だろうが」
そ、そ、そうだ・・・。
あれから過ちが始まったんだ・・・。
「心配しなくても捕まらない」
彼は諭すように言ってくれた。
「ほ、本当に?」
そういう問題じゃないくらい、分かってたよ。
でも、引き返せなくなってるんだ。
今更止めようと言っても、彼は認めないに決まってるんだ。
「全部サービスだから安心しろ」
サービスか・・・サービスなら大丈夫かな・・・。
「で?何をしたい?」
な、何をって・・・。
「あ~んな事やこ~んな事も出来るぞ」
あ、あ~んな事・・・僕は思わず唾を飲み込んでしまった。
「で、で、でも・・・」
「好きにしたいんだろう?」
そ、それは・・・こんな綺麗な人達を好きに出来る・・・
彼の言葉が甘く僕の脳に響く・・・
「思い通りに出来て、しかも誰にも咎められないんだぞ?」
思い通りに出来る・・・誰にも止められない・・・
「やるか?止めるか?どっちだ?」
やるか・・・やめるか・・・やるか・・・・・・か・・・やる・・・
「やるよ」
僕は決意したんだ。
誰にも咎められないのに、止める必要はない・・・これもサービスだから大丈夫・・・そうに決まってる。
僕はカメラを取り出した。
「おい、何をする気だ?」
彼はびっくりしていた。
何でそんな顔をしたのか、僕には分からなかった。
「写真を撮るに決まってるじゃないか」
そう言うと、彼は頭を抱えたんだ。
「そんなの後からでもいいだろ・・・」
彼はそう言うと、僕からカメラを取り上げたんだ。
「まずは一人目」
彼はそんな事を言いながら、手を引いて一人のお姉さんを僕の前に連れて来た。
大きくパチッとした目、すらっとした鼻、猫を連想させる美人だった。
愛くるしい、気が強そうな顔には生気が感じられず、大きな目も虚ろ。
それを見てると、何かゾクゾクしてきたんだ。
ほ、本当に思い通りになるのか・・・もしそうなら・・・僕は・・・
とにかく僕は彼女の顔に触れたくなったんだ。
そして手を出した瞬間、僕は彼に手首を掴まれたんだ。
「な、何だよ」
「まだ準備は終わってないって」
彼はそう言うと、彼女に何か耳打ちをしたんだ。
彼はボソボソ言った後、手を三回叩いたんだ。
すると、段々と彼女の顔に生気が戻って来たんだ。
彼女は瞬きすると、辺りをキョロキョロ見回したんだ。
「あ、あれ・・・?あたしは・・・」
彼女は明らかに困惑していたんだ。
そんな彼女に彼は声を掛けたんだ。
「御主人様に挨拶は?」
そんな事を彼が言ったから、僕はとてもびっくりしたんだ。
彼はとても真剣な顔だったんだ。
「え・・・?あ・・・その・・・こんにちは」
彼女はそんな風に挨拶してきたんだ。
あ、憧れの人に挨拶されてしまった僕は、ジーンと来てしまった・・・。
「あ、あの~・・・」
うわっ・・・な、何か不安そうにこっちを見てる・・・。
気が強そうなのに・・・そんなイメージがあったのに・・・。
そ、そんな彼女も・・・い、良い・・・堪らなくイイッ!
僕はそんな思いに支配されてしまったんだ。
「ほらっ、取り敢えず服を脱がないと」
・・・僕の妄想を砕く悪魔の声が・・・。
何なんだよ・・・それじゃあマネージャー見たいじゃないか。
僕は思わずそう思ってしまったんだ。
彼女は頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯いた。
恥ずかしそうな彼女も、とてもチャーミング・・・。
彼女は何も言わずに服を脱ぎ出したんだ・・・御主人様って僕じゃないのか?
そう思ったけど、ボタンが外れる音・・・そして服がパサッと落ちる音に僕は目が釘付けになった。
彼女が身に付けている下着は上下とも真っ赤だった。
白くきめ細かい肌に、魅惑的な赤い下着・・・。
胸は小ぶりだけど、形が良かった。
腰や尻のラインも見事で、足もひきしまって優美だった。
そんな彼女が恥ずかしそうにもじもじしているのは、たまらなかった。
男なら・・・前進あるのみだあぁぁっ!!
そう思い彼女に近づいたんだ。
僕の棒いや、分身はとっくに固くなっていたんだ。
彼女を僕は押し倒したんだ。
「きゃあっ!」
即座に彼女が悲鳴をあげた。
「え・・・?」
僕はそんなの予想してなかったので、立ち止まってしまったんだ。
「い、いや・・・」
彼女は震えて僕の方を・・・怯えた目で見たんだ。
「どういう事?」
僕は涼しい顔して立っている、彼に聞いたんだ。
「いや簡単に出来たらつまらないだろうから、セックスの方は嫌がるようにしといたんだ」
彼は顔色一つ変えず、むしろ意外って風に僕を見てきたんだ。
「嫌なのか?」
そう訊かれ、ちょっとムッときたよ。
当たり前だよ、これじゃ・・・
「これじゃレイプと同じじゃないかっ!」
僕は思わず叫んでいた。
僕はレイプなんてする気は全くなかったんだ。
「そ~言われてもねえ・・・」
彼は肩を竦めたんだ。
「操ったりする事自体、レイプまがいだと思うけど?」
「うっ・・・確かにそうかもしれないけど、嘘でも彼女が喜んでいる方が良いに決まってるじゃないか」
そう言うと、彼は溜め息をついたんだ。
「分かった分かった・・・少々趣味を俺よりにし過ぎたか・・・」
そう言うと彼は、彼女に近づいたんだ。
「何をする気なんだ?」
当然の疑問だった。
「もう一度術をかけ直す」
その答えは、僕の予想通りだったんだ。
「駄目だよ」
僕は手を彼の肩に手をかけて止めたんだ。
これ以上かけたら・・・
「何故止める?」
か、彼の口調が何か違っていた・・・。
怒らせたかもしれない、と思いながらも僕は言葉を続けたんだ。
「だって催眠術って短時間に同じ人に多用したら駄目なんだろ?」
彼は驚いた顔をしたんだ。
失礼だと思ったよ。
僕にだってこれくらいの知識はあるんだ。
「俺の場合は大丈夫だ」
彼はそう断言したんだ。
「何で?何でそう言えるの?」
僕は少し涙声になっていた。
「俺の場合は、まず最初に絶対服従を植え付ける。『どんな事も絶対に従う』ように命令してあるんだ。だから、どんな命令してもそれらは二次的なものでしかない。いちいち色んな命令をするより、負担は軽い」
・・・???つまり、他の場合より負担は軽くなるって事以外、僕には全く分からなかった。
そんな事、あんな短時間で命令できるんだろうか・・・もし本当にそんな事が出来るなら、目の前にいる男はもの凄いんじゃ・・・。
僕はそう思ったけど、結局それ以上考えない事にしたんだ。
「催眠状態に戻れ」
彼はそう言うと、今度はゆっくり二回叩いた。
すると、彼女の顔から生気が消え、段々と虚ろな目になったんだ。
「これから俺が言う事を復唱しろ、いいな?」
その言葉に、彼女は力なく頷いたんだ。
「お前はとてもセックスがしたくなる・・・」
「あたしはとてもセックスがしたくなる・・・」
「お前は何をされても気持ち良くなる・・・」
「あたしは何をされても気持ち良くなる・・・」
彼の言葉を暗示する彼女・・・それはとても異様な光景だった。
「お前は人前でセックスをするのが好きだ」
「あたしは人前でセックスをするのが好き・・・」
「でも今は他の九人がいるから駄目だ」
「でも今は他の九人がいるから駄目・・・」
「そしてお前は主人には逆らえない」
「そしてあたしは御主人様に逆らえない・・・」
そこまで言うと、彼は彼女に何事が耳打ちしたんだ。
頷く事も、復唱する事もなく、彼女は聞いていたんだ。
また彼が三回手を叩くと、彼女は元通りになった。
そして彼は僕を見て言った。
「好きにしていい・・・禁断のラインを越えろ」
僕は彼女に突進し、キスをした。
彼女の唇はとても柔らかくて、僕は甘い息と共にそれを堪能した。
彼女は積極的に舌を絡めて来、僕の服を脱がせた。
「んんっんんんっ」
服を脱がされてしまうと僕は我慢が出来なくなり、彼女を押し倒した。
一気にブラを外そうとすると、彼女の白い手が阻んだ。
「だ、駄目・・・」
彼女は弱々しい声で、拒絶した。
「み、皆が見てるから・・・」
彼女はとても恥ずかしそうに言った。
だが、それが逆に僕の心に火をつけた。
「それがどうしたんだ?」
どうせ誰も認識はしてないんだ。
僕は構わず彼女のブラをむしり取った。
どうせこの感情も彼に植え付けられたんだ。
プルンッと、彼女の胸が現れた。
「いや・・・」
そう言って彼女が手で隠すのを僕は強引にどかせた。
乳首はとても綺麗なピンク色をしていた。
僕は音を立てて、それを吸った。
「あっ・・・駄目ェ・・・」
そう言いながらも、吸いつづけていると彼女は段々と喘ぎ始めた。
僕は固い部分を舌で弄びながら、もう片方を揉み始めた。
とても柔らかく、弾力があった。
「あっ・・・んっ・・・あんっ・・・あっ・・・」
両方を責められた彼女は、間違いなく感じていた。
でも僕は、首を振りる彼女を見て、声を出すまいとしているような気がしたんだ。
僕はふと思いついて、強弱をつけて揉んでみた。
「はぁ・・・はぁ・・・あっ・・・あんっ・・・」
段々彼女は首をそらすようになってきた・・・気がしたけど、僕にはもうどうでも良かった。
僕は彼女の下を覆っているものを剥ぎ取った。
彼女はもう、全く抵抗しなかった。
露になった割れ目を指でなぞってみた。
「あ・・・んっ・・・」
結構濡れてきていた。
僕は彼女の足を開き、割れ目に吸い付いた。
「あ・・・駄目・・・」
彼女の声を無視し、舐めた。
「あうっ・・・あんっ」
愛液は少しずつだが、溢れてくる。
僕はピチャピチャと音を立て、何度も何度も舐めた。
「あっ・・・あんっ・・・あんっ・・・あんっ・・・」
やがて愛液で中が溢れると、僕は熱く固くなった分身を挿入した。
「ああ・・・熱い・・・」
そうもらした彼女の中は、狭くて気持ち良かった。
僕の分身はグイグイと締め付けられた。
遂に僕は一線を越えたのだ・・・皆の前で。
僕はピストン運動を開始すると、段々と突くのを早くした。
「あんっあんっあんっあんっ」
彼女も大きな声を出していた。
駄目でも人前でするのが好き、と言われた所為かなんて考える余裕はなかった。
「イ、イクーっ!!」
彼女がそう叫ぶと同時に、僕の頭が真っ白になり、分身は精液を放出した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息のまま、僕達は繋がっていた。
「良かったか?」
彼は僕の方を見ながら、そう訊いてきたんだ。
僕はバツが悪くなって、慌てて立ち上がったんだ。
「答えろ」
そう言われて、僕は答えるしかなかった。
「良かったよ・・・」
そう言うと彼はニヤリと笑った。
「それじゃお前にも術をかけてやろう・・・サービスだ」
僕はそう言われ、ふらりと立ち上がった。
サービスなら安心だと思ったんだ。
立ち上がった僕を見て、彼はまた笑ったんだ。
「お前に『サービスならどんな事でも安心』て刷り込んでおいたんだが、ここまで効くとはな」
「え?」
何を言っているのか、僕にはさっぱり全く分からなかった。
刷り込む?何処に?何時?・・・どうして・・・?
僕の頭はぼうっとしてきて、目もかすんできた。
「お前は女達を抱いた後、家に帰るんだ。そして時間が経つにつれて段々と今回の事を忘れていく・・・夢かどうかも分からないように」
彼の言葉が遠くで聞こえた・・・。
「やがてはほとんどの事は忘れる。女達を抱いたという事以外は全てだ。
夢かも分からない鮮明な記憶を持ったまま、生きて行け。・・・これも消してもいいが、詐欺になるからな。ま、どうせ俺の事は目が醒めた時点で忘れているだろうがな・・・」
僕は全部で十人の美女と淫行に耽っていた。
・・・これらの事は、夢かどうか分からない。
でも、鮮明な記憶が残っていて、とても夢だとは思えない。
彼女達の感触、喘ぎ声、あの快感・・・。
確かめようにも彼の顔も覚えてない。
どうやって連絡を取ったのかも。
やがて彼の存在すら忘れてしまうのだろうか。
< 終 >
思いつきで書いた上、都合によりいい加減な箇所等があって読みにくいと思います・・・ごめんなさい。
おわかりになった人もいるかと思いますが、主人公が言う「彼」はアイツの事です。
後でやらせる事を、こっちで先にやっています(汗)。