ガツンβ

(『ガツン』はジジ様の作品でした)

 チチチチッ、チュンチュン、ピーヒャララララララ

 耳に届く小鳥達のさえずりは、まるでまどろむ俺を誘なおうとしているかのようだ。
 少し開いたブラインドの隙間から射し込む朝の陽光も、ゆったりと流れていた脳の血流をやさしく促してくれる。

「ふぅ....」

 頭を一つ振り、少しだけ残る昨夜のバーボンを追い払った俺は、ゆっくりとベッドがら立ち上がった。
 乱れたシーツの隙間から少しだけ覗く彼女の真っ白な腿は、今も尚清楚な輝きを保ち続けていたが、そこに微かに残る乾いた滴の跡は昨夜の激しい情事と、ほろ苦い出会いの1ページを思い起こさせるには充分だ。

 そう、あれは、いつものように俺に刻みこまれた運命に従い、いつものようにあの忌まわしい”音”を探し街を彷徨っていた時...。
 ならば、俺がその”音”に導かれ、それに囚われた者の前に姿を現したのはやはり必然だったのだろう。
 その男から救われた彼女が、俺という恋のラビリンスに迷い込んでしまったのも....。

「でさぁ....なのよ。笑っちゃうよね~」

「へーっ、そーなんだ。笑える~」

 いつもと同じ朝の通学風景。いつもと同じ何気ない会話に没頭する女子校生二人、泰子と克美は始業ぎりぎりのその時間帯の割にはゆったりと歩いていた。

「でねでね、あのコったら....なんだって。すごくない?」

「.....ぁう...んあふぅ....」

「すっごーい!じゃぁさ、今度二人で....しちゃったり?」

「...んぁぅぅっ....あ、あ~ん......」

「あっ、それいいね。決定!いつにしよっか?」

「あ、あふぅ、あんあんあん....うぅぅん、もっともっと~ん」

「そうねぇ....ん?今週末はデートが入ってるんで.....だったらどうかな?」

「あっ、あっ、あぅっ、そ、そこ、もっといっぱい...あぅっ!あ、あぅあぁっ!」

「えっ?いつだって?」

「だから来週の.......」

「あっ、イクイクイク、イっちゃうーーーーーっ!!」

 平凡な通学路に反響するごく平凡な喘ぎ声に克美の言葉は掻き消されてしまった。だがそれをもう一度促す前に、泰子はツカツカと道路の端に歩み寄ると

「あーーっもうっ!うるさいっ!朝っぱらからサカってんじゃないわよっ!」

 言うなり電信柱の影から覗く真っ白な尻を蹴っ飛ばした。

「きゃうっ!」

 組み敷いた男の上で一心に上下していた尻に”adidas”のマークをくっきりと残しながらも、その腰が止る気配は無い。

「.....ったく」

「ホント迷惑よねぇ、こんな道ばたで...。でもガツンじゃ仕方無いわよ。ほら、そんなのに構ってたら遅れちゃうよ」

 克美に諭され、そのカップルに今も忌々しげな視線を向けながら泰子は渋々振り返った。

 よく見ると道路のあちこち、ゴミ箱の影、曲がり角の向こう、垣根の裏側からも淫靡な喘ぎは溢れ出し、まるで街中にスピーカーでも付いているかのようだ。

 そんな、ようやく歩き出した二人に後ろからそっと声を掛ける男が一人。

「あ、あのぅ....」

 訝しげに眉を寄せながら二人はうざったそうに振り向き男を睨み付けた。

「なに?!」

「あ、あの、その、実は私....ガツンでして....」

「え........えーーーーーっ!やだぁ、ウッソーー?!まぢ?」

「はぁ、ざんねんながら....それでちょっと一発させていただけないかと....」

「そそそんなぁ.....だから早く行こうって言ったのにぃーーっ!」

「それで...どっちなのよ?」

「はぁ....?」

「だから私と泰子のどっちが相手なのって聞いてんのよっ!」

 男は申しわけなさそうな目で恐る恐る泰子を指さした。

「え、えぇぇっ!?いやよ!いやいや!私こんなさえないオタク野郎とヤるなんてずぅえったいイヤッ!」

 克美は泰子にバレないように「ほっ」と息を一つ吐くと急遽見せかけの心配顔を作り上げ、うずくまる泰子の肩をポンポンと叩く。

「泰子、仕方ないよ、ガツンなんだから....んじゃ私遅刻するから先に行くね。あ、先生には言っといてあげるから。ガツンだったら出席扱いにしてくれるし、ゆっくりするといいよ。じゃぁね~♪」

 それだけを残し克美は逃げるようにその場から走り去ってしまった。
 置き去りにされた泰子はというと、友情と言う物の裏側を垣間見たような湿った気分のまま、脂ぎった男の顔を睨み付けていた、表面上は...。おそらくそれは今の彼女が振り絞った精一杯の強気なのだろう。

「ちょ、ちょっと!それ以上近寄らないでよねっ!」

「ガツンだガツンだタラリラッタラー♪」

 などと呟きながら泰子の言葉など意にも介さず、じわじわと迫り来る男。

(う、ぐ、くそぉっ、こうなったら力ずくでも脱出してやる。私が世界で初めてガツンから逃れた女になってやるのよっ!)

 そんな悲壮な決意と共に、泰子は手にした鞄を胸に必死の形相で身構えた。

「わわわ、わたしこれでも処女なんだから、それ以上近づいたら舌噛んでやるっ!」

「そ、そんな事言われても...ガツンなんだから仕方ないじゃないかぁ。無駄な抵抗はしない方が君の為だと思うよ。警察も裁判官も僕の味方なんだから、ね?」

「そそそんな....りふじんな....」

「だいじょうぶだよ~。僕のちんこはちっちゃいから痛くないし、2分で終わるからね~」

 男は恥ずかしげもなくそう言い放つとスパッとズボンとパンツをずりおろした。
「キャッ」などと言いながらとっさに目を覆った指の隙間からそっと覗いてみると、そこに見え隠れする股間にそそり立って...いるのかどうかよく分からない物体は、泰子に男の悲哀という物を感じさせた。

(ひょっとしたら終った後もわたし、処女でいられるかも....?)

 そんな安堵が浮びもしたが、だからといってこんな男に神聖な処女の地を荒されるのは鳥肌モンであるのは間違いない。彼女にとって、その”ちっちゃいちんこ”は今も尚恐怖の対象でしかなかった。

 ずりっ、ずりっ....

 男がズボンとパンツを足首に纏わらせたまま、歩きにくそうに迫り来る様は、まるでゾンビのようだった。
 そして指にオナニーたこの出来た図太い指が今正に泰子の白い太腿に触れようとしたその時!

 ガツンッ!

 堅く目を閉じていた泰子の耳に届いたその音は、心臓を鷲掴まれるようでありながら、なにか安らかな物も感じさせてくれた。

(ああ、とうとう私にもガツンが....理不尽なこの街でも必死で守り通してきた処女を捧げてしまう時がきたのね。きっと自分から大きく股を開いてこのオタクヤローの上に跨ってヒィヒィよがりまくるんだわ)

 しかし、悲壮な決意をもって恐る恐る見開いた彼女の目に写ったのは.....ピューピューと頭から血を吹き出しながら地面に倒れ伏す男の骸だった。

(え?何?どうなってんの?今のは...ガツンじゃないの...?)

 泰子はしばし状況を理解出来なかった。そんな彼女が呆然と見つめる血溜りの上に落ちる怪しい人影....。

 放心状態の泰子をその男は至極得意げな顔で見下ろしていた。僅かに片側に吊り上がる唇はまるで「ふふん」とでも言っているかのようだ。

 まか不思議なスタイルのその男は網タイツにもっこりパンツ、ぴちぴちのチビTの胸には黄色い文字で”G”のマークが輝いている。『ガツン退散!』と書かれた血まみれの金属バットを腰に差し、背中に翻る真っ赤なマントは風も無いのに何故かはためいている。だがそんなモノよりもその男を決定的に怪しげにしているのは、額にぽっちの付いた上半分だけのSM用全頭マスクだ。そのぽっちからエメリウム光線が出るのかどうかは分からないが、時折緑色の光を発しているのが男の不気味さをより一層醸し出していた。

 泰子はガツン以上に得体の知れないその男を目の当たりにし、恐怖に張り付いた喉へゴクッと唾を流し込むと、ようやく掠れた声を絞り出した。

「ど、ど、どどどどどうなってんのよ?こここれってあんたがやったの?あ、あんた誰?ってか何?」

 その言葉を待ってましたとばかりに一層片頬を吊り上げた男は、今度は本当に「ふふん」と鼻息を漏らし、足を大きく開くと股間を突き出すようにしながらビシッと右手が胸に、左手は大きく振り上げられた!

「羞恥とプライドをかなぐり捨ててぇっ!か弱い乙女をガツンの魔の手から救うべくやってきた私わぁっ!」

 男の左手がぐるーりと廻されたその時!胸の”G”から神々しいばかりのフラッシュの光が飛び出した!

「ガツン研究室特務実行部第67機械化小隊、ガツンレンジャー38号だっ!」

「えーーーーーーーっ!!あんたみたいのが後37人以上いるのぉーーーーーっ?」

「な、ん、だ、と、ぉ!つっこむトコロが違うんじゃないのか?お前にはそれが一番気になる事なのか?そうなのか?いいんだな?それで良いんだな?」

「じゃぁその胸の仕掛けはどうなってんのぉ?」

「ふふん、これはな、この脇の所にスイッチがあってこうやってぐるりと腕を廻すと....ってそれもちがーうっ!もっとガツン研究室って何?とかあなたの正体は誰?とか聞くべき事は他にあるだろうがっ!」

「ガツンケンキュウシツッテナニ?」

「なんで棒読みなんだ。嫌々言ってるなら答えてやらんからな」

「....がつんけんきゅうじょってなに?」

「ふん、ちっとはマシになったな。よかろう、そんなに言うなら答えてやらんでもない。ふふん、ガツン研究所とわぁっ!この街でガツンの理不尽に悩まされている人々を救う為ぇっ!日夜血の吹き出すような努力をもってぇぇぇっ!ガツンのかいめいにぃっ!取り組んでいる者達だぁっ!わたしわぁっ!その中でもぉっ!特に危険で難しい任務を任されたぁっ!エリート中のエリートなのだぁぁぁぁぁぁっ!」

 腹の底からの叫びをご近所中に轟かせ陶酔の極みと言った表情で男がようやく瞼を開くと、校門へと必死に駈けてゆく泰子の後ろ姿があった。

「あっ!こらっ!まだ話は終わっとらんじゃないかぁぁぁっ!」

 そう声を張り上げながら男は一気に後を追い、駈け出した。
 血走った眼(だと思われる)で追いかけてくる男に一層恐怖心を煽り立てられ、泰子は駈ける。駆け続ける。

(はぁはぁはぁ....もう少し、もう少しで....校門にまで辿り着けば、きっとみんなが助けてくれる。こいつはガツンじゃないんだから、きっと....)

 対する男も必死だったが、重装備に加え慢性運動不足の男がいくら駈けてもその距離は一向に縮まらず、見えそうで見えないトコロまでスカートを蹴り上げながら走る泰子の姿はどんどんと小さくなっていく。

「はぁはぁはぁ....もう少し、もう少しで....」

 何がもう少しなのかは分らないが、そのスカートの裾からなにやら白い物が見えた時、彼の気力が1上がった。ピコーン!

「くそっ、こうなったらぁぁぁ、かそくそぉぉぉぉぉぉぉちっ!!」

 男の奥歯の辺りでカチッという音が鳴る!するとたなびくマントの中から聞こえていた『ぶぃぃん』という機械音がどんどんと大きくなってゆく。そう、その業務用扇風機の力を借りて男の速度が飛躍的に上がったのだ!だが扇風機とそれを動かす為のバッテリーを捨てればそれ以上に早く走れるという事は考えてはいけない。なぜなら彼は機械化小隊なのだから。

 カチッ、カチッ

 続けざまに押されるスイッチ。その度に機械音は大きくなり、それはまるで獲物に襲いかかる肉食獣の咆吼を彷彿とさせた。

 後10メートル、8メートル....今の泰子にとって目の前に徐々に近づく学校は、救いの手を差し伸べるべく待受ける平成の駆込み寺といったところか。だがそんな泰子の願いも空しく、セーラー服の裾を捕まれ押し倒されたのは、正にその手が鉄の門扉に掛ろうという寸前のところだった。

「へっ、へへへへへっ、ねぇちゃん、かんねんしな.......じゃない。おまえ俺がせっかく説明してやってんのに逃出すとはどういう了見だっ!」

「ごごご、ごめんなさい。だって、早く行かないとち、遅刻しちゃうし....」

「ぬわぁにぃ。おまえ俺が命がけで助けてやったってのにそれを無視して遅刻だとぉ!普通こういう場合はお礼として一割を差出すもんだろうがぁっ!」

 確実に勘違いしている男に対しても反論する勇気を失ってしまっていた泰子は、大あわてで鞄から財布を取り出した。

「すすすすみません。お、おれい、しますから....あ、あの、いくら払えば...?」

 その言葉に一旦はごくにこやかに財布を覗き込んだ男だったが、中に千円札が一枚しかないのを確認すると、突然キレたように怒りだした。

「ぶわぁっかもぉぉんっ!命を賭して任務を全うしている俺への謝礼をカネで済ませようというのかぁぁぁぁぁっ!下餞だ!下餞極まりない!お礼と言えば落とし物の一割、俺が助けたのはお前なんだからお前の体の一割で払うのが常識と言うものだっ!」

 その言葉に泰子は全てを悟った。

(ああ、やっぱり....この男も私の体が目当だったのね。ああ、おかあさま、どうして私をこんなに可愛く生んでしまったの?どうして私はこんなにも魅力が溢れてしまうの?ああ、なんて不幸なわたし...)

 その財布にあと5千円入っていたなら、彼女の人生は変わっていただろうか?そんな事になど思いも寄せず、少女漫画風に瞳に星を輝かせながら天に祈りを捧げる泰子だった。

「ふん、ようやく常識と言うものが理解出来たようだな。それではさっそく....」

 そう言った男は、やおらその太股を裏返し、純白のショーツに唇を付け甘い蜜をちゅぅちゅぅと吸上げ始めた。
 はぁはぁと荒くなま暖かい息づかいが彼女の下腹からセーラーの裾を通り胸元にまで這い登ってくる。

 その言い知れぬおぞましさを胸に刻み付けながら、泰子はさっきまでの事を思い返していた。

(こんな、こんな事ならガツンにやられた方がまだ諦めもついたのに....さっきのちっちゃいちんこだったら処女のままでいられたかもしれないのに....)

 泰子はそっと校門の内側を眺める。そこではガツンにやられた泰子の担任女教師が体育教師のハゲおやじとなにやらSMプレイを楽しんでいるようだ。

 バシッ
 女教師 「だ、大丈夫ですか?ご主人様!」
 体育教師「大丈夫だ。・・・それより早くこのムチで俺を叩くんだ」
 女教師 「そ、そんな。ご主人様を叩くなんて・・・」
 体育教師「貴様!!メス犬の分際でこの俺に逆らおうと・・・」
 女教師 「わ、わかりました。えい!(バシッ)」
 体育教師「ぐあっ!・・・ククク、いい声で鳴くじゃないか(自画自賛)」
 バシッ
 体育教師「ギャウ!ふはは。そうだ、今から犬みたいにワンワン鳴いてやろうか?それがいい。大声でわめき散らすんだ!それっ」
 バシッ
 体育教師「キャウン!ワンワン!」
 女教師 「あら。コレなんだか楽しいかも。(バシッバシッ)」

 などと訳の分らない事を叫んでいる二人が、今の泰子には羨ましくさえ思えた。だがそれと同時に無性に激しい怒りもこみ上げる。

(そう、そうよ!いくらこの男がいかれたヤツだろうと、ガツンじゃないんだから諦めるのはまだ早いわ)

 ようやく反抗の決意を固めた泰子がふと気付くと、輝くばかりの純白のショーツはいつの間にか足首までずり下げられ、さっきの男とは比べモノにならない程の極太が泰子の未開の地に割り入ろうとしているではないか。
 その先端をぐりぐりと割れ目に押しつけ、はぁはぁと吐息を漏しながら首筋をなめ回す男の耳に、泰子の小さな、ほんの小さな囁きが吹込まれた。

 すると、突然に男の剛直は萎れ、項垂れた!同時に男の断末魔の悲鳴が辺りに響き渡る。

「うぐっ、ぐわぁぁぁぁぁっ!....かっ、はぁっはぁっはぁっ、おっ、お前....どうして、一介の女子校生が何故そんな大技を......」

 男は頭を大きく振りながらそれでも必死にちんこをしごきたて、なんとか挿入できる程にまで回復させると、再突入の態勢を整えた。

「くぅ、今度こそぉ.....」

 必死の形相で挑み掛る男に泰子の必殺技が再び襲いかかった。

「デビ夫人の大股開き....」

「ぐあぁぁぁぁぁっ!!やめろ!やめてくれぇぇぇぇぇっ!」

 男の下半身が頽れる。

「松嶋菜々子松嶋菜々子松嶋菜々子松嶋菜々子」

 そう声を張上げながら泰子の股間にしおれたちんこをこすりつける男。

「柴田理恵と光浦靖子のくんずほぐれつ」

「くぅぅっ、仲間由紀恵仲間由紀恵仲間由紀恵仲間由紀恵」

「細木数子の甘えた流し目」

「ぐわっ、松浦亜弥松浦亜弥松浦亜弥松浦亜弥」

 一進一退の攻防は続けられ、その度に男のちんこは上へ下への大騒ぎだった。だが、泰子が隠し持っていた最終兵器が炸裂した時、辛うじて保たれていた男の闘争心は根こそぎ粉砕されてしまったのだ。

「野村沙知代のバキュームフェラ」

「ひでぶっ!.........く、ぅ...わ、わかった、もういい、俺の負けだ....もう、やめてくれ....」

 泰子の胸に勝利者のみが味わえる高揚感が広がりゆく。それと共に安堵の吐息もはき出された。

「ふふん、これに懲りたらもう二度とおんなのこを襲おうなんて思わないことね。これからあなたは女子校生を押し倒す度に野村沙知代を思い出すのよ」

 その言葉は言霊となって男の深層心理に焼付けられてゆく。この男はもう二度と女子校生をまともに見る事すら叶わないだろう。泰子はそう思っていた。男が次に発した言葉を耳にするまでは....。

「そんなことをするわけがないのデスよ(血涙)。わたしは元々らう゛らう゛すきなのデスから(えー)」

 その(えー)を聞いた瞬間、泰子の心は556のアイスキャンディよりも固く凍り付いた。

「そ、そんな...その(えー)は、まさか...あの、あのでんせつの”おうさま”....や、やめてっ!触手でわたしを犯さないで!おしりの穴をいっぱいに広げないでぇぇぇぇっ!!」

「な~にを言ってるんでぅか。それは大きな誤解というものでぅ」

「ひっ!!い、いやぁぁぁぁぁぁっ!やめてやめてやめて。わたしを壊さないで!私を私のままでいさせてぇぇぇぇぇぇっ!!あなたのいうとおりにしますからぁっ!」

「ふふふふっ、ようやく分ったかね?世間の常識と言うものが。世の中には抗えない力というモノがあるのだよ。あーはっはっはっはっはっはっはっ!」

 男は再び勝誇った顔でちんこを尽きだした。
 その称号を持つ者だけが許される王者の威厳で見下す視線に強要され、泰子は恐る恐るに口を開く。今も項垂れているちんこに向いその可憐な唇がそっと近づいてゆく。

 にゅるん......

 半ば強引に押込まれたそれを押し返そうと懸命に動かした舌と唇が、男の官能を僅かに呼び覚ました。

 じゅるっ...じゅぼっじゅぼっ、にゅっちゃにゅっちゃにゅっちゃ....

 髪を掴まれ、強引に前後する頭。顎先から喉を伝い、制服の内側に不快な感触と共に流れ落ちる涎と涙。
 そして汗と先走りの生臭い匂いに吐き気をもよおしながらも、男に対する恐怖に押され、懸命に振り乱される髪。だが最終兵器炸裂の後遺症だろうか。先程のような硬度を未だ取戻さないそれをしごきつつ男は今もぶつぶつとアイドルの名前をつぶやき続けていた。

 そんな時、もじゃもじゃと鼻をくすぐる陰毛の向うに、物陰からこちらを見つめる三人の男を見つけた。泰子は最後の望みと言わんばかりに彼らに哀願の視線を投げかける。

 だが彼らは楽しそうにこちらを眺めるばかりだった。「おいおいあれでらう゛らう゛なんだってよ。きっと俺たちの認識が間違ってるんだぜ」などと言いながら常につかず離れずの距離を保ちながらにやにやと傍観し続けている。やはり彼ら小庶民達には伝説の王達を止める事など出来はしないのだろう...。

 泰子の最後の望みも絶たれ、最早今の彼女に出来る事は貝のように心を閉ざす事だけだった。

 そんな悲哀の表情が男に復活の力を与えた。堅くそびえ立つ極太を二~三回泰子の口でしごきたてると、再び彼女を押倒し、太股を裏返す。股間に再びそそり立った極太があてがわれ、ぐいぐいと体重をかけながら男は突入体制を整えていく。

(ああ、さようなら、清らかだったわたし.....さようなら少女の刻.....)

 ぐりぐり、めりっ....未開の裂目が徐々に広がりゆく。

「い、いたっ!いたたたたたたたっ!」

 特大の亀頭が僅かに呑み込まれ、固く閉ざされていた肉の扉がこじ開けられてゆく。そしてその少し奥で男の侵入をくい止めていた清純の証が今正に破られんとしたその時、よく耳に馴染んだあの音が泰子の耳を心地よく通り過ぎていった。

 ガツンッ!

(え....ま、またなの?こ、こんどはどうなるの?まさかこれ以上悪くなるなんて事が....)

 泰子は万感の思いを込めてそっと瞳を開いてみた。
 すると、先程までの狂気はどこかへ消えてしまったかのように男は呆然としている。取り去られたマスクの中から現れたのも、ごく平凡なサラリーマンのような顔立ちだ。

「え.....こ、ここは?.....あ、あれ?室長じゃないですか。こんな所でなにしてるんですか?あ、あ、あっれぇ、なんで僕のちんこがじょしこーせーのこかんに.....?」

「ほほほほほ。やっと見つけたわ。まさかこんな所で闘っていたとはね」

 見上げると、男の後ろに白衣を着た金髪の美人女性が立っている。右手には先程まで男が握っていた金属バットをぶら下げ、高らかな笑いを轟かせていた。
 自分は果して助かったのか?若干胡散臭いこの女性は、一体何者なのか?緊張の糸をゆるめる事なく、泰子はそっと尋ねてみた。

「あ、あなたは...誰?私を...助けてくれたの?」

「おーほほほほほほ。ま、そんなトコロかしら?私はガツン研究室長の才媛ティストよ。この変な男は私の部下兼被験体なんだけど、ガツンが頭部打撲によって消滅する確率を研究していたらいつの間にかこんなんなっちゃったのよ。ま、いわばこいつもあなたもガツンの犠牲者の一人といったところかしらね?」

 自らの責任を全てガツンのせいにしようとする彼女の論理はさておき、とりあえず泰子の危機は去ったかに見えた。

「あ、あのぉ...もしよろしければわたし、もうおいとましてもよろしいでしょうか?」

「ん?ああ、ま、いいんだけどね。でもあなた、さっき私が見たトコロによると”危機一髪”って感じだったじゃない?そこを助けてもらってお礼の一つもないってのは少し非常識じゃないかしら?」

 お礼.....お礼と言えば一割。一割と言えば.....
 泰子の背筋に悪寒が走る。と同時に今まで押さえつけてきた壮絶な怒りが爆発の勢いで吹き出した。今日の一連の事件の発端は誰かと言うことを全く忘れてしまっている彼女に対しても....。

「おっしゃるとおりですわね。じゃ、私があなたの部下に受けた仕打ちの一割をお返しいたしますわ?ふふふふ」

 全く温度の感じられない笑みを満面に浮かべ、泰子はその女にツカツカと歩み寄ると、その手から金属バットを奪い取り、一本足打法で振りかぶった。

 ガツンッ!

 次の瞬間、その金髪女性は地面の一部と化していた。どくどくと流れ出る紅い液体は泰子の心を粛々と癒してくれる。

「ちょ、ちょっと君っ!なにをするんだっ!暴力はイケナ....」

 ガツン、ガツン、ガツンッ!

 地面の盛り上がりが一つ増えた。

 しばし憤慨の表情を崩さずそれらを眺めていた泰子だったが、そのおびただしい血溜まりにようやく満足したように踵をかえすと、校門の向こうへと歩き去っていった。

 その瞳には恍惚の色さえ浮かべながら.....。

 だが...その為ばかりではないだろう。彼女がそれに気付けなかったのは....。
 そう、遠ざかるその骸から微かに聞こえるその音に......。

 ピッ.........ウィィィィィィィィィィィィィン.....
 ギ、ギィィィ....ガシャン....ギィィィ、ガシャン!
 カチッ...ウィン..ウィン、ウィンウィンウィン......ブォォォォォォォォォォォォォン

 もしその時、彼女の心の琴線がもう少し張りつめていたなら....
 もしその時、彼女の意識が昼ご飯に囚われていなかったなら....

 彼女の人生は、違う物になっていたのだろうか.....。

「ん.....ん~.....」

 朝の光に彩られた彼女の細い背中がすぅっと伸びる。毛並みの整った猫を思わせるそのしなやかな仕草に俺は、言い知れぬ衝動を押さえつけねばならなかった。

「お目覚めかい?マイハニー」

「うふ、うふふふふふ」

 彼女の笑顔はそれだけで俺の暗い過去を洗い流してくれるかのようだ。
 この清らかな笑顔を守る為に、俺は今日も命を掛けよう....。

「昨夜はごきげんな夜だったぜベイベー。あんなに燃え上がったのは久しぶりだ。出来ればもう1ラウンドといきたいトコロだが、もう夜が明けちまった。この街にはまだまだ俺を必要としている女がたくさん居るんでね。行かなくちゃならない.....」

「あは、あはははははは。ガチュンガチュン.....」

「そう、いいコにしていればまた今夜にでも抱いてあげよう。もうあれ程燃えられるかどうかは分からないがね?」

「あは、あははは、あはははははははははは。お○んこ、おま○こ....」

 真っ赤に染まったシーツは彼女が大人への階段を一つ上った証なのだろう。
 それを見せつけようとでもいうのか、自ら大きく開いた花弁をまさぐる彼女が大量に湧き出す愛の証で俺に誘いを掛けてくる。だがそんな事で自らに課せられた任務を忘れる程俺は浅はかじゃない。俺は、俺には、背負うべき十字架があるのだから....。

 チュッ

 彼女のぱっくりと割れた額に軽く口付け、俺はその部屋を後にした。
 僅かに引かれる後ろ髪を振り払い、俺は今日も街を彷徨う。

 あの忌まわしい音に苦しみ続ける住人達を救うために。
 理不尽な性の対象として抗う術を失った少女達を守るために。
 ガツンレンジャーは今日もゆく。

 走れガツンレンジャー!
 闘えガツンレンジャー!
 みんなが君を待っている?

< おわり >

 ガツンッ!.........ハッ、俺は...な、何を......
 あっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!皆さんになんて失礼なネタを書いてしまったんだぁぁぁぁぁぁっ!
 勝手に登場人物の方々、勝手に借用キャラ&ネタの作者の方々、そして原作者のジジさん、すみませんでしたぁぁっ!
 でもガツンだから仕方ないよね?

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