浸食 後編

後編

【 6 】

 柚実の躰から、最後の下着までも取り払われる。しかしそれらは、今となってはもうジャマなだけのものでしかなかった。垂れ流された愛液で濡れきったショーツはもう意味をなしていなかったし、それ以上にこれから享受する快感のためには、生まれたままの姿に戻るのがふさわしかった。

「姉さん、きれいだ……」

 ベッドに横たわり、全裸の身体を弟の目にさらし、柚実は恥ずかしげにはにかんだ。
 信治の言葉は、けっして嘘などではなかった。肌はこの年頃の少女だけが持つ瑞々しさを湛えており、まだ完全には成熟していない乳房は、仰向けに寝た状態でも形を崩すことなく魅惑的な曲線を保ったままだ。
 ほころび、咲き開きかけた花の蕾がほんの一時だけ持ち得る美しさを、柚実の裸身は見るものに感じさせた。

「よかったわね、信クンに気に入ってもらえて。でも、本当に綺麗よ、柚実ちゃん」

 傍らに立つ早由希も、今では裸になっていた。どんなに美しい女性でもかなわない、一流の彫刻家や画家だけが描ける曲線をもって作られた、理想の曲線。それが現実となって、部屋の中に存在している。
 しかし、嫉妬は感じなかった。なぜなら、今このとき信治の欲望を向けられているのは、柚実なのだから。

「さあ、信クン。お姉さんを、あんまり待たせちゃダメよ」
「うん……」

 覆い被さるように、信治の少女のよう顔が柚実に近づいてくる。目を閉じ、差し出すように軽く開かれた少女の唇に、柔らかな感触が触れた。

「ん……ンンッ」

 唇を割って、少年の舌がもぐり込んでくる。それにどうやって応じていいのかわからないままに、柚実は弟の舌を口の中に受け入れ、たどたどしくも自分の舌を絡めていく。

「姉さ……ふ、んっ」

 それに対する信治の舌の動きも、あまり勝手を知っているようには思えなかった。ひとつひとつの動作を試し、探るように、姉の口内をおどおどと辿っていく。そんなあどけなさが嬉しくて、柚実はいっそう深く彼の舌を吸い上げ、受け入れた。

「ん、ウンッ!」

 舌に神経を集中していた柚実は、突然乳房に加えられた刺激に、身体をびくりと震わせた。信治の手が、彼女の胸を愛撫しているのだ。

(ああ……ノブ、……気持ちいい)

 やわやわと乳房全体を揉みほぐすように、掌で遊ぶ。時折先端でツンと昂まった乳首を指先が捕らえ、その部分を強めに擦られると、胸からぴりぴりと弱い電流が走り、体内に満ちていくようだった。

「姉さん……姉さんっ」
「ふあっ、ノブ……」

 信治が唇を離すと身体を下の方にずらし、柚実の乳房に顔を寄せる。今度は両手を使って姉の胸の膨らみを味わうように玩びながら、片方の頂点に舌を這わせた。柔らかく濡れていて、それでいて僅かにざらついた舌の表面が、少女の敏感な部分をゾロリと撫でる。

「ンンっ……!」

 初めて異性に身を許す恥ずかしさと快感に、柚実は背筋を震わせた。未だ硬さを残した乳房を這い回る弟の手は、こうしてみると思っていた以上に大きなものに感じて、今更ながら彼が男であったことを確認するようだった。
「男」に触られる、「女」としての快感。それは自然と下半身へと流れ込み、股間の肉襞の間からは新たな潤いがにじみ出させる。柚実は燻る掻痒感を誤魔化そうと、もじもじと太股を擦り合わせた。

「信クン。優しく愛撫してあげるのもいいけど、柚実ちゃん、もう早く早くって欲しがってるよ?」

 脇から、二人の行為を眺めていた早由希が、少年に声を掛けた。柚実は自分の恥ずかしい欲求を読みとられ代弁されてしまい、頬をカアッと熱くさせる。彼女の指摘は、まったくに正しいものだった。柚実の下半身を支配する疼きはもう耐え難いところまで来ており、一秒でも早く、なんとかこれを鎮めて欲しかったのだ。
 しかしどうやって彼を受け入れたらいいのか? ねだるように弟を見上げると、やはり顔を赤くしながら彼女を見下ろす弟と目が合った。彼は、彼女を見下ろしながら、コクリと頷く。

「おばさん、柚実ちゃんも信クンが、繋がりたがってます。こんなに素敵なコト、おばさんも手伝ってあげたらいかがですか?」
「あ……はい」

 やはりベッドの傍らで控えていた母が早由希の言葉に従って、二人の下半身の方に移動する。と、太股に掌の感触が置かれ、少女の膝を開こうとした。

「ハァ、ウウンっ!」

 羞恥から反射的に、柚実は脚を閉じようとする。だが綾乃は、安心させるように娘の足を撫でながら、幼子をなだめすかすように声を掛けた。

「柚実、大丈夫よ。信治を、受け入れてあげて。そうすれば、あなたもきっと、気持ちよくなれるから」

 その言葉と優しい手の感触に、柚実の両脚から緊張の強ばりが解けていく。やがて母に促されるように脚を広げると、その間に、信治の華奢な身体がもぐり込んできた。身体と身体が寄り広い面積で重なり合い……少年の温もりが触れた肌から伝わってくる。

「うう……っ!」

 唐突に、彼女の上に乗った少年が、低いうめき声を上げる。どうしたのかと思う間もなく、柚実の下半身の中心にも、ひたりと指が触れてきた。

「ン、ンンンッッ!」

 甘美な刺激を少女に与えながら、指は彼女のその部分をまさぐる。秘裂の両脇に触れると、指で間を広げた。

「信治、いいわ。そのまま、腰を前に沈めていって」

 母親の言葉が耳に届くとほぼ同時に、柚実の処女地の、その表面にペタリと丸い何かが触れた。

(これ……ノブの……)

 昨晩目にした記憶の中の映像が、甦る。早由希の淫らな奉仕を受けて、いきり立っていた弟のペニス。その先端で、赤黒くぱんぱんに膨れ上がっていた、亀頭と呼ばれる部分。それが、今、彼女のまだ開かれていない通路の入り口に辿り着いているのだ。
 ぎゅっと目をつぶり、その瞬間を待つ。恐らくは母親の手に導かれて、信治の身体がずり上がるように動く。股間から、メリメリと引き裂かれる痛みが柚実を襲った。

「うぐゥ……ぅ、い、痛っ……アァァッ!」

 処女を失うことが痛みを伴うものであることは、当然知っていたし、覚悟していた。しかしこれは、柚実が想像し、予想していたものとは、まったく違っていた。これほどの痛みなど考えてもいなかったし、だから心構えだって出来てなどいなかった。

「ハグ…ゥ、お願……いたっ、痛い……ッッ!!」

 あまりの痛みにシーツの上を掻きむしり、溺れる者がそうするように何か縋(すが)れるものを探して、手さぐりする。
 そんな彼女の手を、温かな手が受け止め、ぎゅっと握り締めてくれた。

「あぅ……っ、ウウ……ァア!?」

 涙でにじむ視界でなんとかそちらを確認する。そこでは母である綾乃が、励ますように、娘の手を両手で包み込んでいた。

「頑張って、柚実」

 その言葉に夢中でコクコクと頷き、握られた手にさらに力を入れる。
 苦悶に身をよじる少女に、場違いに思えるほど穏やかな声が降りかけられた。

「痛い? 柚実ちゃん」

 わざわざ見て確認せずとも、こんな時、こんな声を出せる人間など、分かり切っている。そして彼女が、柚実の痛みを承知していることもまた、確かめるまでもないことであった。

「そう、痛いわね。でもね、その痛みは、快楽にも成るのよ」

 無茶を言う。柚実は、心の中でそう返す。こんな痛みが、気持ちいいなどと、そんなわけない。

「痛みと快感は、コインの裏と表のようなもの。ほんのきっかけさえあれば、簡単に裏返るものなのよ」

 フサリと、汗と涙にまみれた柚実の顔に、絹糸のようなサラサラとした感覚が撫でる。痛みで狭まった視界の正面に、早由希の人として何かが欠けているのではないかと思うほどに整った顔が広がっていた。

「柚実ちゃん、“痛みを否定しないで、感じとりなさい。それはあなたにとって、心を溶かす快感になる”わ」

 軽く、くすぐるような口づけをして、早由希が離れる。苦しむ柚実に、“言葉”を残して。
 彼女が顔を引いたあとには、柚実を見下ろす信彦の顔が現れる。覆い被さりながら、自分の行為により苦痛に涙する姉を、心配そうに見下ろしている。その、歪められた眉の表情を見たとき、柚実の中で、何かが動いた。

(ノブも……なんだか、辛そうな顔をしてる)

 そういえば、さっき母親と交わっていたときも、腰を突き上げながら、弟は歯を食いしばり、懸命に耐えるような顔をしていた。

(ああ、そっか)

 彼女の痛みの中心、もっとも敏感なその部分に入っているのは、やはり彼のもっとも敏感な部分なのだ。セックスとは、お互いのもっとも刺激に無防備で、痛みを簡単に起こす場所をすり合わせる行為。であれば、完全に一致することはなくとも、彼女が感じている一部は、信治も感じている苦痛なのだ。
 ――ズクンっ、と。胎内で、何かが身じろぎした。
 それに呼応して、柚実の蹂躙されたばかりの秘所が、ぎゅっと引きつるように中に入り込んだ信治の肉茎を締め付けた。

「――っ!? 姉さん?」

 予期せぬ刺激を股間に与えられ、少年は眉をぎゅっと寄せ、慌てたように声を出す。その声を聞いて、柚実はやはり自分の考えが正しいのだと言うことを知る。

「ハァ……いい、よ。もういいから、動いて、ノブ……」

 荒い息の合間から切れ切れにそう告げられ、信治は戸惑いながらも、ゆっくりと腰を動かしはじめた。

「フゥ、フゥ……あ、あああっ!」

 傷口を捲りあげ、擦りあげる強烈な刺激に、弟に犯される姉が声をあげる。しかしその声は、ついさっきまでのうめき声とは、まったく違うものだった。

(これ……これが、この感覚が気持ちいいってことなの?)

 惑いながらも、痛みと並列して存在する刺激に、心の手を伸ばす――次の瞬間、柚実をそれまでとはまったく違う、閃光のような衝撃が包んだ。

「ハ……ァ、あ、ううぅぅぁあ!?」

 痛みが、消えた。……いや、それは正しくない。痛みは、まだそこに確かにある。ただ、もはやそれは柚実の背筋を震わせ脊髄を溶かす圧倒的な熱量の陰に隠れ、むしろ快感を押し上げる役目を果たすようになっていた。

「う、あ……ノブ、……ノブっ!」

 自分を貫く弟の名を叫びながら、その華奢な背に腕をまわし、しがみつくように抱きつく。少年の薄い胸と少女の乳房の先端が擦れ合い、それがまた新たな快感となって脳を揺さぶる。

「ノブ……はぁ、気持ちいい……イイよぅっ!」
「ああ、姉さん……っ!」

 もう、“コレ”以外、何もいらない。この快楽をずっと得られるのであれば、ほかの道徳だの理性だの、そんなものは自分には必要など無い。そう思わせるほどの悦楽の波が、彼女の全てをさらい、奪っていつくす。
 お腹を中から擦りあげる、熱く硬い肉槍。その凹凸が、彼女の中の柔肉をかき分け、引きずる感触。繋がった部分から溢れ出す、淫らな水音。むせ返るような、二人の汗とそれ以外の何かが混ざり合った体臭。
 五感を通して感じるあらゆる刺激がドロドロにかき混ぜられ、混ざり合い、それら全てが柚実を際限なく高い快楽へと押し上げていく。

「ノブ……はあ、ノブ……ぅっ!」

 アソコから際限なく潤滑液が垂れ流れ、擦れ合う二人の肉と肉の間から、ブジュブジュと淫らがましい音が鳴り、弟の一動作ごとが溢れ出させる快感が少女の脊髄を灼く。
 出来ることであれば、自分の全てをこの弟に擦り付け、刺激を感じたい。そんな望みさえ浮かべながら少年を抱きしめた。
そんな彼女の腕が、横から伸びてきた手によって、不意に抱擁を解かされた。

(え……?)

 そのまま、信治の上体が、離れていく。

「い、や……いやっ、ノブ……ノブぅ!」

 親から引き離される赤子のように啼く少女の視界に、一度はいなくなったはずの早由希の顔が再び寄せられ、現れた。

「よかったわね、柚実ちゃん。気持ちよくなれて」

 抱擁を解かれたとはいえ、未だ信治の猛りきった肉棒は、柚実の中に入ったままだ。少年の腰の律動に合わせて身体を揺らす少女の上に、今度は早由希が覆い被さってくる。

「でも、ごめんね。わたしも我慢できなくなっちゃった」
「さゆき、ちゃん……?」

 スラリと長い脚で柚実の腰を跨ぎ、上に重なるように身体を合わせると、首を捻って後ろにいる信治に声をかけた。

「信クン、お願い。お姉さんだけじゃなくて、わたしのことも、気持ちよくして……ね?」
「早由希ちゃん……」

 戸惑うような、信治の声。だがゆっくりと、つい今まで柚実の躰を貫き、支配し、同時に支えとなっていた肉の起立が、少女の膣中から引き出された。

「あ、イヤッ。 なんで……行かないでよぅ、ノブ……ぅ!」

 柚実の哀願にも関わらず、彼女の体内から快感のくびきがズルズルと引き出されてしまう。後に残された自分では制御などできない疼きと喪失感に、少女はどうしようもなく不安に包まれ、泣いてしまいそうになる。
 そんな彼女を、早由希がそっと抱きしめた。

「柚実ちゃん――いっしょに、気持ちよくなろう?」

 耳元でそうささやいた早由希の背が、突然反り返った。

「ああ……アアッ!」

 柚実を抱く手にギュッと力を込め、気持ちよさそうなため息をもらす、早由希。一瞬の後、柚実は彼女に何が起きたかを悟った。ついさっきまで、柚実が感じていた快感。柚実を貫いていた快楽が、今はこの少女を責め立てているのだ。

「素敵よ、信クン……ああっ、すごく……おっきい、ンンッ」

 さっき母がそうしていたように眉をぎゅっと寄せて、快感の声をあげる美しい少女。弟を彼女に取られてしまった。その心細さと、喪失感と、そして嫉妬とに揺らされ、柚実は懸命にせがむ。

「やだ……ダメだよう、……私にちょうだいよぅ」

 涙を流し、子供のようにぐずりながら首を左右に振る柚実。そんな彼女の唇に、あたたかい温もりが押しつけられた。早由希の、唇だ。そのまま舌が柚実の唇を割り、口の中にもぐり込んでくる。

「んンっ、ウン……!」

 やけに長く感じられる舌が、信じられないほど奥まで口腔内に侵入し、柚実を蹂躙した。舌先が唇を舐め、歯茎をなぞり、舌に絡みつく度に、ゾワゾワとしたさざ波が脳の中の快感を刺激する。柚実はさっきまで泣いていたことも忘れ、ねだるようにおとがいを出しながら早、夢中で由希の舌を受け入れた。

「ハァ、やっぱり……アンッ、思った通り、柚実ちゃんはイヤらしい娘ね」

 そんな少女の様子に満足したように、早由希はいったん唇を離すと、柚実を見下ろしながらからかうように、愛おしむように語りかける。

「はあっ、はあ……初めてのエッチで、もっと入れてって駄々をこねるなんて」
「アア……だって、だって……っ!」
「いいのよ、柚実ちゃん。それでいいの。気持ちいいことを素直にそう言うのは、とてもいいことだわ」

 慈しむように、少女の頬を優しく撫でながら、早由希は彼女に微笑みかける。

「一緒に、信クンに気持ちよくしてもらおう? 順番に、ね」
「ふあっ……また、入って……ッ!」

 一度は抜かれた塊が再び肉裂を割り込んでくる感触に、柚実は熱い息をもらした。自らを内から燃やす火を感じながら、自分でも気づかぬうちに少女は自ら不器用に腰を揺すってより深い悦楽を求めていた。

「いいよう……アアッ、わたし……はじめてなのに、……イイのっ!」
「フフフ、可愛い。――ほら、柚実ちゃんと信クンがあんまりいい顔してるから、おばさんも歓んでるわ」

 首を捻ると、綾乃が子供達の方を見ながら床の上に脚を広げて座り込んでいた。左手で自身の乳房に手を這わせながら、もう片方の手は股間に差し込みモゾモゾと動かしている。

(おかあさん……わたしたちを見ながら、自分で慰めてるんだ)

 恍惚とした表情で、自らの行為にふける綾乃。熱い吐息をこぼしながら、指で秘所をかき分ける。そのたびに、ぬるんだ淫唇から白濁した液が指に絡まりながら溢れ出し、じゅぷじゅぷと音が聞こえてくるようだった。

(あれって、ノブの出した……)

 ついさっき柚実が口にした、イヤらしい匂いのする、甘美なる液体。それが床にこぼれ落ち、シミを作っていく。

(もったいない……私、アレが欲しいのに)

 心に染み込んだ味を思い出しながら、あの淫猥な粘液への渇望に、無意識につばを飲み込む。そんな思いで母の淫猥な姿に目を奪われていた柚実の体内から、熱い肉棒が再び引き抜気取られた。

「ああ、やァ……ッ!」

 不満の声をあげかけた柚実の唇を、再び早由希の唇が塞ぐ。

「フグ、ンンん……んんっ!?」

 柔らかな唇とその隙間から侵入してくる舌とに押さえ込まれた柚実の躰を、新たな快感の波が襲った。早由希が、信治に貫かれながら、柚実の上で身体を動かしている。その動作のたびに揺れる彼女の乳房が柚実の敏感になった乳首を擦り、電流のような刺激を起こしている。さらに伸ばされた手が、信治を失った柚実のその部分をクチュクチュと玩びはじめた。

「んっ……ふンンンッッ!」

 柚実は夢中になって、早由希の身体に自分の身体を押しつけていく。そんな彼女をあやすように、早由希もさらに強く、深く、柚実の官能をかき立てる指使いで応える。
 抜き取られ、刺し込まれ……それを繰り返すうちに、柚実はもはや自分がどんな状態にあるのかさえわからないほどに乱れ、よだれを垂れ流し、快感にむせび泣いた。そしてそれが崖縁まで到達しそうになったとき、柚実の耳に信治のせっぱ詰まったような声が聞こえてきた。

「あ、あ……クゥっっ!」

 信治も、限界が近いのだろう。二人の少女の躰を揺り動かす前後の運動が、徐々に大きく、荒々しく、余裕を感じさせないものへと変わっていく。

「ん……ちゅ、……ふぁっ、アアァッ!」

 それを感じながら、柚実も追いつめられたように、彼のモノを求める。彼の動きの変化は突き込まれた肉壁をより強く刺激し、柚実は簡単に押し上げられていった。もう、あと少し。それで、あっけなく限界が訪れる。

「はあ、ハァ……柚実、信治……気持ちよさそう……ァァ」

 ふと横を見ると、壁により掛かり自らを慰めている母と目が合った。繋がり合った柚実と信治を見て、嬉しそうに、そして彼女たちの官能と同調するように、口元をだらしなく開きながら敏感な部分をいじっている。
 その姿を見たとき、柚実の中に決定的な火が灯された。

「ダメ……ッ、私、このまま……!」
「出……そう、……僕、もうすぐ……イクよっ!」

 そう叫んだ信治の肉槍が、最後に柚実の中に押し込められた。痛いほど、乱暴なほど強く腰を叩きつけ、柚実の胎内の一番奥まで侵入したその場所で、信治がついに爆ぜた。

“ドクッ、ドクッ、ドクッ……”
「あ、アアア……!」

 胎内に熱いものが浴びせかけられ、身体が内側から満たされるのを感じる。信治が柚実の中に、射精しているのだ。そのことが、快感で痺れきった頭にたまらない喜びを与えてくれる。

「ノブ……、嬉しいよぉ……」
(私を、選んでくれたんだ……早由希ちゃんじゃなくて、私の中でイってくれたんだ)

 そんな女としての悦びに、少女の快感も最後の頂点を超え、スパークする。

(あ、ああっ……嬉しい、うれ……し…………)

 全身の筋肉が痙攣を起こしたように勝手にギリギリと収縮し、ガクガクと震えて……そしてその津波が過ぎ去ったあとには、心地よい静寂が訪れる。全ての力を使いきったように、柚実の躰は死体のようにシーツに沈み込んだ。

「はぁ、はぁ……、ノブぅ………」

 指先ひとつ動かせないほどの脱力に支配され、ただ荒い息をつく柚実。母と弟、そして従姉妹の少女の眼差しを受けながら、柚実はこころを痺れさせる幸福感に包まれつつ、疲れきった身体を、心地よいまどろみの中へと委ねたのだった。

【 エピローグ 】

 ゆらゆらと上体を揺らしながら、胎内に入り込んだ若く力強い起立を、うっとりと味わう。

「はあ……、いいわ……もっと胸を、いじって……そう、あアァ!」

 強すぎず、弱すぎず。彼女の嗜好に合わせて教育された通りに、少年の手が従順に早由希の乳房を愛撫する。心地よい快楽に、早由希はほっそりとした背を反らせた。

(ああ……やっぱりこの子、はじめて会ったときに感じたとおりの子だわ)

 少年の腰にまたがり、腰を跨ぐように彼のモノを治め、その感触を愉しんでいる。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 快楽に顔を歪めながら、真っ赤になって彼女に奉仕する信治は、その女の子のように華奢な外観も手伝って、まるで早由希が男になって彼を犯しているような倒錯じみた愉悦を彼女に覚えさせる。
 もちろんそれだけでなく、最も重要なこと、彼女にとって良質な『食料』となるべき資質も、十分に備えていたわけだが。

「はぁ、早由希さん……気持ちいい、です」

 性の快楽に喘ぐ少年から、心地よい波動が立ち上り、それが早由希の身体に染み入るように吸い込まれていく。こうした生命力こそが、彼女が生きていくのに必要不可欠な“食料”であった。
 目を傍らに向ければ、そこでは綾乃と柚実の母娘が身を寄せていた。全裸でお互いの秘所に顔を埋め、快楽をむさぼり合っている。

「ん……ちゅ、柚実……イヤらしい娘……ハァ」
「ふぁっ、お母さん、そこ……アアッ!」

 歳の離れた姉妹のように見える母娘が狂った快感を求めてうごめく様は、彼女の中にある薄暗い心を、とても満足させてくれた。

 ――この家は、『当たり』だった。

 外観も彼女の好みによく沿う姉弟。なにより二人揃って、純潔であったことが彼女にとっては僥倖であった。
 生命力を吸い取るということは、魂の雫を吸い取ることにも似ている。性交という、それらがもっとも表面まで現れる生命の営みを利用して、これを刈り取るのが彼女の在り方である。が、やはりセックスそのものに対して、すり切れたり、あるいは歪みや澱(おり)が溜まった人間よりも、そうした面について純粋な人間の方が、喉に心地よい。

「しばらくは、ここでゆっくりできるわね」

 だが、永くはいられない。
 今は純粋な彼らの魂も、やがてはくすみを帯びてくる。そうなっては、食料として良質とは言えない。だがそれまでは、存分に彼らを操り、絡ませ、喘がせ、その残滓を啜り取ろう。

「信クン、……もっと、もっと強く突いて……アァ、そうっ!」

 肉壁の間をこじるペニスが、大きさを僅かに増したような気がした。少年の眉をぎゅっとひそめ、堪えるような顔を見ても分かる。そろそろ、射精が近いのだろう。
 そう悟った早由希は、腰の向きと動きを調節する。自分の中の敏感なスポットを強く擦れる動作で、自らを少年に会わせて高めていく。

「あ、うう……早由希さん、もうすぐ……っ!」
「まだ……もう少し、……ハァ、もう少しだけ、頑張って……っ」

 自らも大きく腰を振り、指の腹で繋がった場所のすぐ上にある肉芽を刺激しながら、早由希は一気に快感の階段を駆け昇る。

「ん……ああっ、もう……イきそうっ、……出して、信クンっ。わたしの胎内に……来てっ!」
「クッ、うううッッ!!」

 最後のうめき声を上げ、信治の欲棒が柔肉に包まれながらビクビクと震え、爆ぜる。

“ドクッ、ドクッ、ドク……”
「あ、あ、……ああああッッ!!」

 胎内に吐き出される少年の熱いほとばしりに背筋を痺れさせながら、早由希は甘美な恍惚に目蓋を閉じた。

< 浸食:了 >

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