○○なあたし05 最終話?の5

最終話?の5 やっぱり、あたしは○○です

 涼が、ゆっくりとあたしを押し倒す。
 ブラの肩紐をすべらせて、涼の唇が、その縁を追いかけるようにして。
 ゆっくりと。
 ブラで、一番隠れて欲しいところ、見えてきて。
 そこを

「はうぅっ!」

 くちびるが、かすった。
 とおもったとたん、びくんとした。

「……」
「…………」
「……………………ふふっ」
「……うぅ……」

 そんな、ちょっとした刺激の後。
 涼は、ブラを取ったその手であたしの両手首を押さえ、馬乗りのまま。
 あたしは、涼に両手首を押さえられ、身体を隠せないまま。
 涼の視線に、耐えていた。

「綺麗だよね、都ちゃんの身体」
「……ううぅぅぅっ」 

 唸ってみるけど、にっこにこの涼は、全く動じない。
 涼の目線は、はっきりと、あたしの上半身を捉えている。
 顔とか。肩とか。脇とか。
 そして何より、……胸とか、その先を。
 いつものにこやかな、それでいて、……「初めて」のあたしでも分かるくらいに、燃えるような涼の視線。

「……恥ずかしいよぉ……」
 駄々をこねたら、
「やーだ。もっと見る」
 駄々をこね返された。

 はあああぁぁぁぁっ……

 溜息のような、息が漏れる。
 のどが、ふるえる。
 恥ずかしい。
 恥ずかしい。
 でも。

 何で、こんなに、さっきよりも、熱いんだろう。

「はあっ……はぁっ……」

 息が上がる。
 胸に……胸の先に刺さる視線が、そこを本当に触っているような錯覚。

 ぶるっ。

 身体が、きゅっとなる。
 熱くて。
 もどかしくて。

 さっきは、くちびるで触ってくれたのに。
 あのまま、もっと、触ってくれたら。
 あたし、どうなるんだろう。
 もっと、びくん、ってしそう。
 ヘンな感じに、なりそう。

 ……なって、みたい?

「……都ちゃん」
 ……見透かされたように。
「さっきの続き、して欲しい?」

「うん……っ」
 のどが、勝手に動く。
「どこを?」
「…………ぜんぶ」
「どこを?」
「……………………むねの、さき」
「……」
 ふぅ、と笑った涼が、

 じるっ

「はあっ!! ううぅぅぁぁっ!」

 びくんびくんする。
 びりびりする。

「あっ! ううあぁぁぁぁっっ!! ……はぅぅぅぅぅっっ!!」

 じゅるっ、ぴちゃっ。
 なめられて、すわれて。
 あたま、ぴかぴかして。

「あ、やっ、やっ、まって、まって!」
「あっ」

 こわい。と思って。
 涼が、ぴたっと止まる。

「大丈夫? 怖かった?」
 すかさず、あたしを抱きすくめる。
 ガチガチになったあたしの身体に、合わせるように、しっかり。
「……ちょっと、こわかった……なんか、からだが、ヘンなかんじ、で」
「……僕は、怖くない?」
「うん、ちがう」
 涼は何も怖くない。あったかい。
 でも、どうなるのかが、怖い。
 流から聞いたくらいしか、知らないから。

「はい、まず、深呼吸しよう」
「……」
 すぅ。
 はぁ。
 言われるままに、深呼吸する。
 ……やっと落ち着いてきた。
「さっきの、どんな感じだった?」
「………………びくびく、って」
「うん、大丈夫」
 涼が即答する。
「都ちゃん、それがエッチな感覚なんだよ。
 後は慣れるだけ」
「……ほんと?」
「うん、だって」
 と言うと涼は、あたしの右手を、……
「ぅっ!」
「ほら、わかるでしょ?」
 ……ショーツに触れさせた。
 すぐに手を引いてしまったけれど、つん、と軽く突き抜けるような全身の感覚と、指に触れた、……びちゃっ、とした……

 かああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
「あ……あのっ…………」
「?」
 恥ずかしい! 恥ずかしいっ!! 恥ずかしいっっっ!!!!!

 そこがそうなることがどういうことか、くらいは、あたしも知っている。
 流に聞いた。
 けれど、湿った、とかいうレベルじゃなかった。べっちょりと、濡れていた。
 ……こんなになるなんて、思わなかった。知らなかった。

 こんなのまるで、あたしがいやらしいみたいじゃないかっ!

 っていうようなことを、実際は1分くらいかけて涼にたどたどしく話すと、
「………………」
 何故か涼がうつむいた。笑いを堪えていたような気もしたけれど、よく分からない。
 そして。
「……あのね、都ちゃん」
「……はい」
「都ちゃんはやっぱり、いやらしいんだと思うよ」
「否定しろよっ!」
 思わず突っ込んだ。
「違う、都ちゃん」
「へ?」
 いきなり否定された。
「都ちゃんは、僕の婚約者なんだ。
 だから、都ちゃんがいやらしいということは、都ちゃんが僕とのエッチで、いっぱい気持ちよくなれるっていうことなんだ。だから、喜んで欲しいんだ」
「……」
 不意を突かれた。
「僕は都ちゃんに気持ちよくなって欲しいんだ。だから、都ちゃんは、自分がいやらしい、って受け入れて欲しい。都ちゃんは、『淫乱だ』って」
 その恥ずかしい言葉を、涼は、真剣な表情であたしに語る。
「…………………………」
 恥ずかしい。
 恥ずかしい。
 ……でも、涼とすることが気持ちいいのは、きっといいことで。
「都ちゃんは、淫乱になって欲しい。それで、目一杯気持ちよくなって欲しい。そしたら、僕はすごく嬉しい」
 ………………だから、
「…………………………ん」
 「デリカシー」という単語が一瞬浮かんだけれど、そこは我慢してあげることにした。

「……都ちゃん、次から、僕にされて何か感じたら、とにかく『気持ちいい』って口に出して言ってみて」
「へっ!?」
「慣れるためだから。自分で自分に、それが『気持ちいい』って教え込むんだ。そのうち、絶対に本当に気持ちよくなるから」
「…………うん」
「で、ダメな感じがしたら、『気持ちよすぎる』って言って。止めるから」「………………うん」
「じゃあ、」
 んちゅぅ、とキスされた。涼が、覆い被さるように。
 涼の舌が割り込んできて、ディープキス。
 少し冷めてきていた身体と心に、あっという間に、熱が注がれる。

 何秒か、何十秒か。

 ふと、涼の舌が離れるのに釣られて、あたしは涼を見つめる。
 涼の目が、合図する。
「…………気持ちいい」
 言ってみる。
 もう一回。
 そう合図した涼は、また、舌をにゅるん、と滑り込ます。

 涼の舌が、だんだんと、あたしの頭を、とかしていく。

「ぷふぁ……きもちいい……」
 また、言ってみる。
 すると、
「ふぁっ!」
 耳を、吸われた。
「あ、あっ! きもちい、気持ちいい!」
 びくんびくんして、反射的に、口走ってしまう。
 もっと、してほしい。
「もっと、もっと……あ、きもちいい……きもちいいっ」
 びくんとするたびに、むねの先が、おなかの奥が、つん、とする気がする。
「あうっ……気持ちいい……」
 こんどは、首もと。
 なめるように、くすぐるように、キスされる。
 気持ちいい。心地いい。
 首もとのキスは、びくびくするし、心があったかくなる。
「もっとして」
 思わず、おねだりする。
「ん」
 もっとしてくれた。
 あったかい。

 そんな涼のキスに、うっとりしていると。

 そろり。

 ゆっくり、下りていくのがわかる。
 くちびるが。
 首からはなれて。

 ぞくっ。

 くる、と思ったら、カラダが、ふるえた。
 もやもやする。
 わかってる。
 さわってほしい。
 なめてほしい。
「きもちいい……」
 きっと。
 きもちいい。
 まってる。
 びくんて、したい。
 ほしい。
 ほしい。
 ほしい。

 ちゅるっ

「はうっ……!」

 びくんっ!

「…………きもちいいっ!!」
 ぺろん
「あっ! きもちいい!」
 ちくび、なめられた。

 びくん、てして。
 これ、きもちいいんだ、って、やっとわかった。

「きもちいい、ほんとにきもちいい!」
 ぺろぺろされて、かまれて、すわれて。
 きもちいい、きもちいい、って、いいつづけて。

 あたま、ぴかってする。
 あなかのおく、かぁっ、とした。

「あっ! きもちよすぎちゃうっ!!
 ……………………あ」

 ぴたっ、と、涼の動きが止まって。
 考えて、気づく。

 しまった。

「……ごめん、そういうことじゃ……」
「うん、何となくそんな気した」
 優しい目で見つめている、涼。
 あたしは、「ダメな感じ」がしたんじゃない。
 本当に、気持ちよくなりすぎると思ったのだ。

「続けるよ」
 涼が言う。そして。
 上半身を起こした涼は、あたしの――ショーツに、手をかけた。

 ゆっくりと、引きはがされていく、ショーツ。
 あたしが恥ずかしがっている間に、涼も下半身をさらけ出して。

 ……ペンダントと指輪を残して。
 あたし達は、生まれたままの姿になる。

「隠さないで。見せて」
「……やだぁ……」
 一番恥ずかしいところを手で隠したら、涼に叱られた。
 涼があたしの手を剥がしにかかる。抵抗する気には、ならなかった。

 涼の両腕に導かれて、あたしは、左右の手で、左右の膝を抱え上げる。
 死ぬほど恥ずかしいはずなのに、おなかの奥の熱さを意識すると、なぜか、「そこ」を広げたくなってしまう。
 明かりに煌々と照らされたそこを、涼の視線が責め立てる。
「んっ」
 ぴくん、とカラダがまたふるえる。
 熱い。
 アツい。
「舐めるよ」
 なめて。
 って思ったしゅんかん、
「へうぅっ!」
 なめられた。
 アタマを、つん、とした感じが、つきぬける。
 じゅる、じゅる。
「あっ! そこ! いい! きもちいいっ!」

 涼がきもちよくしてくれると、あたしのおなかのおくが、もっと、あつくなる。
 じゅるる。
「あ……ぁ……ああっ……」
 声が、とまらない。
 ふと、

 さっきまで、はずかしかった気がする。

 と、思った。
 けど、
 おなかがあつい。
 と思うと、どうでもよくなってしまう。

 あたしが、おなかのアツさに、引きずりこまれていく、感じ。
 あたしが、あたしでなくなっていく、感じ。

 こわい。
 けど、こわいのが、なつかしい、気がした。

 そして、
「ひぅうん! ぅああああああっ!!」
 いちばんムズムズしてたところを吸われたしゅんかん、
「きもちいいよぉ! もっとしてぇ!」
 こわいのも、どうでもよくなった。

「……都ちゃん」
「…………うぇ?」
 涼によばれて、少し、思考をとりもどす。
 ずっときもちよくて、頭がぼうっとしていた、気がする。
 涼は、あたしの目の前で、にこっ、と笑っていた。
「僕、もう我慢できない。入れるよ」
 何を。と思って。
 それがわかったとたん、
「ぅっ!」
 あついものが、あたしの入口に、こすれて。
 おなかのおく、さっきよりもっと、アツくなってて。

 だめ、アタマが、とけていく。

 それが、ささったら、アツいところに、とどくのかな。
 アツいところ、ぐりっ、てしてくれたら、きもちいいだろうな。

「ふふ、都ちゃん」
「……ぁ……」
「お○んちんがすごく欲しい、って顔になっちゃってるよ?」
「……うぅぅ…………っ!? っ!!!!」
 にゅるっ、と。
 はいって、きて。
 みしっ、て。
 ひろがって。
 こすれて。
 あつくて。

 とどいて。

「ああっ! あああっ!! ……あああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 ……あたしは、とんでいった。

 はぁ……はぁ……はぁ…………はあぁぁぁ……

 意識が吹き飛ばされたような気がして、しばらく。
 やっと、戻ってくる。

「イッたんだ?」
「……うん」
 イク、っていうのは知っていた。もちろん流からだ。
 そして、これがイクってことなんだ、というのも、すぐにわかった。

 お腹の奥にあった、ものすごく熱いものが。
 入ってきた、涼のものに、突き破られて。
 風船みたいに、ぱぁん、って割れて。
 ほんの少しの、イクんだ、って思わせる「間」のあと。
 あたしが、真っ白に塗りつぶされていった。
 痛いって聞いていたけれど、全然そんなことはなかった。

 こんな感じなんだ、と、一通り味わって。

 それから。

「……つながってる……」
 そう。
 涼と、繋がったんだ。
 繋がって、イッたんだ。

 初めては、好きな人と。

 涼とつきあう前から、何となく、そうなったらいいな、とは思っていた。でも、実際にそうなってみると、大切な人とつながることは、とても素晴らしいことだと思えた。
 とにかく、うれしい。こんなに幸せになれるんだ。
 さっきのプロポーズを受けた時とは全く違う、幸せ。
 どう言ったらいいんだろう。
 性欲が、満たされた?
 違う。そこまで生臭い表現じゃない。
 ……オンナになれた悦び。
 ああ、これだ。
 大好きな涼の手で、オンナになれたっていう、満足感だ。
 あんまりかわいくない、と思っていたあたしでも、こんな最高の形で、オンナになれたんだ、っていう。

「……うぅぅぅ……」
 嬉しくて、気恥ずかしくて。思わず、涼に強く抱きつこうとして、
「うっ!」
 ほんの少し。身体の中が擦れて、声が出てしまう。
 刺激をやりすごして、思わず考える。

 こんなにビンカンなんだ。

「都ちゃん、楽しそうだね?」
「……うるさい」
 意地悪だ。
 「嬉しそう」じゃなくて、「楽しそう」って言うあたりが。
「気持ちいい?」
「……うん」
 恥ずかしいけど、嘘なんかつけなかった。
 気持ちいい。
 涼のそれは、熱くて、固くて、大きくて。
 それもそうなんだけれど、何よりあたしのそこにぴったりと、ハマっている感じがする。
 ……まるで、入っている方が自然な感じであるかのように。

「都ちゃん、おま○こ、締め付けられる?」
「え? ……はうっ!」
 涼に言われて、こうかな、って感じでやってみると、びりっ、とした快感が突き抜ける。
 まるで、涼のそれを、あたしの……そこが、「つかむ」みたいな。
「都ちゃん、おま○こって言葉、知ってるんだ」
「うるっせえ!」
 その言葉は知らないふりをした方がよかったんじゃないか、と気づくのと同時に、涼に突っ込まれた。
「……流が、そういう話好きだから」
「うん、もちろんわかってるよ」
 それは事実だし、涼も流の趣味は分かっているはずなので、納得してもらえる。
「でさ、締め付けると、お○んちんの形、わかるでしょ」
「……うん」
「この形、おま○こで良く覚えておいて欲しいと思って。
 これが、都ちゃんとこれからずっと、付き合っていく形だから」
 これからずっと。
 何気ないその一言が、あたしが婚約者であることの証し。
 その扱いに免じて、
 つかんで、離して。
 つかんで、離して。
 気持ちよくなりながら、あたしは涼の形を覚えていく。
 ああ、この辺出っぱってるな、とか。
 この辺が特に固いんだな、とか。
 ついでに、あたしのこの辺が擦れると、ぞくっとするな、とか。
 気持ちいいな、とか。
 もっと……気もちよくなりたいな、とか。
「あはぁ……っ」
「気持ちいい?」
「きもちいい……」
 つかんで、はなして。
 つかんで、はなして。
 きもちいいから、くりかえす。
 つかむたびに、おなかの中が、またアツくなってくる。
「都ちゃん」
「え?」
「動いていい?」
 うごく。
 イミが分かって、
「うん!」

 きもちよくなれる!

 と思ってしまったあたしは、かんぜんに、エッチにハマってしまいそうな気がした。

 ずりっ、とひきぬかれて、
「ぅ……」
 おなかがさみしくなって。
 ぐちゅっ、とおしこまれて、
「はうぅっ!」
 って、きもちよくなって。

 涼がエッチにうごいて、あたしはエッチになる。

「もっとしていい?」
 ぶん。と、うなずく。
「う……あっ! あ、あ、あ、あっ!!!」
 ばち、ばち。
「あぁっ! あっ! うっ! ぅぅぅぅぅぅううううっ!」
 ぴか、ぴか。
 あたま。おなか。
「あああっ! き……もち、いい! いいよぉ!!」
 おかしく、なりそう。
「とけちゃう! あそこ、とけちゃうぅっ!」
「どこがっ?」
「……えっちなとこがっ! …………?」
 涼が、ゆっくりになる。
「都ちゃん。いやらしいことしてるんだから、いやらしい言葉で言おうよ」
 はやく、なる。
「あ、あ、あ!! おま○こ! おま○こがとけちゃううぅ! ひぅっ!」
 びくんっ!
 ぐりっ、て、おくをえぐられて、いきがとまる。
「これ、気持ちよかった?」
 ぶん。
 うなずく。
「都ちゃん、すっかり、『僕とのセックス大好き』って顔に、なっちゃってる!」
「うん! すき! せっくすすき! 涼とせっくすすき! こんなの、すごいっ!」
「このまま、最後まで、するから!」
「うん!」
 ……ひにん。
 しといて、よかった。
「ああっ! いいっ! いいっ! もっと! もっとそこしてっ!! そこっ!」
「ここ、上の、方、好きだよねっ?」
「うんっ! そこ、ぞわぞわするっ! はぁんっ! あんっ! あ! やぁっ! あ、だめ! また、さっきみたいにっ!」
「イキそう?」
「うん! イキそうっ! もうすぐくるっ! くるっ! くるよぉっ」
「いいよ、そのままっ! 僕も、もう出る!」
「はぁぁあ! はぁっ! あ! イク! イク! イクイクぅぅぅっっっ!!!!! ……………………あっ、ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
「っ……!!」

 あたしが目を覚ますと、トイレの水が流れる音が聞こえた。

「おはよ、都ちゃん」
「……ん」
 ……カーテンの僅かな隙間から、外の明るさを確認する。
 まだ、真っ暗だった。
 時計を見る。
 まだ、日付が変わったばっかりだ。

「よっ」
 裸のままの涼がベッドに入ってきて、裸のままのあたしを抱き寄せる。
 布団をかぶっているから、涼には見えないはずだけど。

「都ちゃん、気持ちよさそうだったね」
「……う~~~~~……っ!」
 いきなりそれかよ! という突っ込みは、喉から出ない。
 キスで口を塞がれる。
「……気持ちよかった?」
 …………こく。
 嘘はつけない。
 気持ちよかったです。
 すっごく。
「エッチ、好きになりそう?」
 ………………こく。
 …………というか、なってます。
 あんなに、気持ちいいなんて。
「淫乱になれそう?」
「……う~~~~~~~~~~」
「はいごめんごめん、言い過ぎました」
 そう言って、涼はあたしを抱きしめる。
「かわいかったよ」
「…………」
 かわいくなんか、とは言わない。
 いくらあたしでも、涼よりはデリカシーはあるつもりだ。
 黙って、褒められておく。
「いつもかわいいけど」
「……かわいくなんか「こら」
 口が滑った。怒られた。
「都ちゃんはかわいいの」
 有無を言わせない、涼の断定。
「都ちゃん、都ちゃんは僕の婚約者なんだから。
 都ちゃんと僕はもう二人で一つだって自覚して欲しい。
 僕を思うなら、自分を下げないでくれ」
 …………こいつ。
 ふたりでひとつとか。
 そんなこと言われたら、言うこと聞くしかないじゃないか。
 できるかわからないけど。
「よし、じゃあ、クリスマス特別企画」
「はい?」
「『来年のクリスマスの都ちゃん』に対して、僕の婚約者としての目標を表明して下さい」
「……むぅ」
 厳しい教育だなあ。
 ……う~ん。
「……………………もっと、自信を持てるように、頑張ります?」
「ます?」
「……ますっ!」
「よしっ」
 納得してもらえたらしい。
「ついでに」
 ん?
「エッチな方面で、来年の都ちゃんに言いたいことは?」
「はいっ!?」
「今の都ちゃんがどうしたいか聞いておこうって思って。
 本能のまま行く?」
「…………えぇぇ……?」
 それはヤバい。
 こういう時、流みたいに、本能むきだしだったらそう思ってしまうかもしれない。
 でも、今のあたしには無理だ。…………今の?
 ちょっとした違和感を抱えながら、……でも、と思う。

 涼にしてくれたのは、本当に、気持ちよかった。
 涼が好きなようにしてくれるなら、ついていきたい、という気もする。
 でも、そんなことを口にするのは、……恥ずかしくて。

「……とりあえず」
「ん?」
「…………あんまり、ハマり過ぎないように、って……」
「ふふ、そう」
 楽しそうに、涼が笑う。

 そして、口には出せないけれど。
 あんまり、恥ずかしい女の子……淫乱な子に、ならないようにね。来年のあたし。
 お願いだから。

「『都ちゃん淫乱モード』」

 ……………………………………………………………………………………。

「で、1年後の都ちゃんはエッチな方面、どうお答えになりますか?」
「てっめえ!!!」
 はじめっからそれやりたかったんだろ!
「あと何だよそのキーワード!」
「え? だってその通りでしょ?」
「うっせえ! 別にそんなこと! ……」
「本当? 1年前の都ちゃんに、本当にそう言える?」
「……」
 ………………ぐぅの音も出ない。
「ぐぅっ」
 いや、それ意味ないから。と現実逃避する。
「はい都ちゃん、1年前の都ちゃんに一言」
「……………………ごめんなさい」
 ハマっちゃいました。
 そして。
 催眠を解かれて、分かった。
「……あたし、淫乱になりました……」
「お、そこまで言うか」
「うぅ……」

 催眠を解かれた瞬間。
 頭の中の回路がカチッと戻って。
 次はどうやってもらおうとか。
 今日が終わったら、次にエッチできるのは何日後だろう、とか。
 ……エッチな考えが、流れ込んできた。
 すっかり当たり前になってしまった、エッチなことを度々考える日常。

 そうか、昔のあたしはそんなにピュアだったんだ。
 そう思ったら、認めるしかなくなった。

「……あたし、お嫁に行けない……」
「いやさっき決まったでしょ!? お嫁行き」
 うるさい。
「それに都ちゃんがどうなっても僕が責任とるよ!?」
「知っとるわそんなこと!」
 勢いでそんな大事なこと言うなっ!
 ぐっ、と、涼があたしを抱き寄せる腕に力を込める。
「……都ちゃん、まだ僕のモノとしての自覚が足りない」
 ……ぞくっ。
 耳元で、とびきり低い声で告げられて、思わず硬直する。
 有無を言わせない、涼の断定。
 さっきとは同じようで違う……ように聞こえて、本当は同じだってわかりきっている、「ご主人さま」の言葉。
「……あたしをどうするつもりよ」
「そりゃあもう、淫乱でどMで変態な都ちゃんが頭を真っ白にして悦んじゃうようなことを」
「……」
 淫乱。どM。変態。アタマ真っ白。悦ぶ。
 いやらしい単語で一瞬、頭がいっぱいになる。
「都ちゃんはもう僕の婚約者だからね。
 ってことは、都ちゃんはもう一生、僕としかセックスしない、ってこと。
 つまり、これまで以上にもう、都ちゃんは僕のモノだってこと」
 ……涼としかセックスしない。涼のモノ。これまで以上に。
「だから、もっといろんなこと、やってあげたい。やりたい。……いい?」
 いろんなこと。
 大事なことを聞かれている気がする。
 でも、考える前に答えは決まっていた。

 だって、ドキドキして。
 おなかが熱くて。

 淫乱でどMで変態なあたしが、
 頭を真っ白にして悦ぶこと……
 いっぱいしてほしくて。

 考えてる時間が、もったいない。
 だから。

「……あたしを一生、大事にしてね?」
「え? 当然。都ちゃんが不幸になるようなことは、絶対しない。
 ……僕は、都ちゃんと一緒に幸せになりたいんだ」

 何を言ってるのか分からない、という顔をした後、急に真剣な顔をして、涼が応える。

 ……ああ、そうだよね。当然だよね。何聞いてるんだろう、あたし。

「……だって、都ちゃんは僕の婚約者だから」
「ごめん、今あたし、ヘンなこと言った」
「いや。……もう、外でエッチなこととか、絶対しない」
「そりゃ当然だけど」

 そういうことじゃない。
 涼はきっと、外であたしに催眠をかけて、最後に大げんかになった時のことを言ってるんだと思う。
 でもそうじゃなくて、
「……今、あたしが涼の婚約者って、頭から飛んでた」
「え? ……………………ああ」
 口に出した直後、言わなきゃ良かった、と後悔する。
 多分今、女の子としてあり得ない失態を演じたと思う。ましてや、口に出したら……
「そんな大事なこと忘れちゃうくらい嬉しかったんだ」
「……うっっせえよお前!!!」
 やっぱり、涼がからかってこないわけがなかった。あたし、割と本気で涙目。

 「去年のあたし」、本当にごめん。そう思う。
 あたしはもう、こんな子になってしまいました。
 淫乱で。どMで。変態で。
 「婚約」という女の子の夢の言葉を、性欲で頭から吹き飛ばしてしまうくらい、エッチなことが好きで。

 だけど。

「いいんだよ、それが。……僕は、都ちゃんのよろこぶ顔が見たいんだ。だから、都ちゃんでもっと遊びたいんだ」
 楽しそうに。
 ほんの少し目をぎらつかせて。
 あたしによろこんで欲しいって。
 支配と奉仕が同居する、そんな涼の笑顔を見ると。

 そんなあたしは、やっぱりとっても――幸せだ、って、思うんだ。

< つづく >

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