エピソード 3 「炎の戦姫」(前編)
―――――19世紀後半、アメリカ。
そこは一攫千金を求める鉱山夫、強盗団、賞金首等が幅を効かす荒くれ達の楽園だった。
・・・しかしだからといって、法の力が全く通用しなかった訳ではない。町に常駐する保安官や政府から派遣される州警察は治安を守るため必死に戦っていたし、民間からも腕に覚えのある人々が賞金稼ぎとして賞金首に懸けられた懸賞金を狙っていた。
もっとも賞金稼ぎ自体もアウトローすれすれの危険な連中が多かったのだが。
プロローグ
ンチュッ、チュバッ、チュッ、レロレロ・・・薄暗い部屋の中に淫靡な音がこだまする。部屋の中には粗末なべッドがおいてあり、男が腰掛けている。
さらにその男の足元には一人の少女が跪き、熱心に男の陰茎を舐めしゃぶっていた。
部屋の明かりはランプのみで薄暗いためはっきりとは見えないが、濡羽色の美しい黒髪とインディアンがよく巻く細い布製のバンダナは確認できる。
少女のフェラチオは熱狂的でそれは既に奉仕といってもいいものだった。男の陰茎にむしゃぶりつき、涎をだらだらたらして竿や玉袋を舐め回し、亀頭に何度もキスをしながらその小さな口で剛直を飲み込んでゆく。
まだ幼さの残る美少女が娼婦並みのテクニックでチンポに奉仕する姿はとても淫猥で、男に自然と口を開かせた。
「しかし変われば変わるもんだよなぁ。・・・この間まで俺の命を狙ってた部族の英雄とはとても思えねぇぜ」
男の股間から名残惜しそうに口を離し、男に媚びた視線を向け少女は弁解する。
「あれはユーナ間違ってた。もっと早くご主人様の偉大さ気づいてれば、あんな事しなかった」
たどたどしい英語でそう言うと、不安げに眉を寄せる。
「・・・ご主人様、ユーナの事嫌いになったか?」
「いいや。でもいいのかよ、俺はお前の仲間皆殺しにした張本人だぜ?」
「過去の事は過去の事。仲間たちは残念だけど、ご主人様の偉大さ分からなかったから殺されて当然」
ニヤニヤと笑いながら尋ねる男に、ユーナは生来の生真面目さで真剣に答える。
嘲笑とはいえ、心から愛するご主人様に笑いかけて貰えるのは今のユーナにとって無上の喜びだった。
「今、ユーナはご主人様のチンポに奉仕するのがとても幸せ。ユーナの心も体もご主人様のモノ」
「そうかよ。んじゃま、続けていいぜ」
「はい!」
ユーナは嬉しそうに返事をすると再び男の股間に顔を埋め、先ほどよりより熱心に奉仕を続ける。
「おい、そろそろ出そうだ。口ん中出してやるから大きく開けて舌突き出せ」
言われた通りにするユーナの口めがけ、男の欲望の塊が飛び出す。
どくっ、どぴゅうぅっ、どくっ、どくっ・・・。
かなりの量の精液だが、ユーナはそれを一滴もこぼすまいと必死に飲み下していく。
しばらく口のなかで味わった後、ゆっくりとそれを飲み込む。
「ん・・・あぁ・・・ご主人様の精液とても美味しい。・・・ユーナとても幸せ・・・」
精液を飲んだだけで軽くイってしまったユーナだがじっとりと汗ばんだ体で再び男の性器に口をつける。
「ご主人様、ユーナ、後始末する」
そう言ってぺろぺろと男の陰茎を舐め、尿道に残った分もちゅうちゅうと吸い出していく。
自分に絶対の忠誠を誓うインディアンの美少女を見下ろしながら、男は考えていた。
(せっかく手に入れた〝力〟だ。せいぜい有効に使わせて貰うぜ・・・・・・)
第1章
バァンッ!!
場末の安酒場のスウィング・ドアが勢いよく開けられる。逆光で開けた人物の顔はよく見えない。
扉が軋む音がするより早く、それを開け放った人物は流れるような動きで一つのテーブルに向かった。
そのテーブルには嫌がるウェイトレスを膝に乗せ、その豊満な体を弄りながら下卑た大笑いを響かせていた鬚ヅラの大男が座っていたのだが、今は突然の状況の変化に対応できずポカンとしている。
扉を開けた人物は滑るような動きで男の眼前に立つと、次の刹那、男の右足甲をウエスタンブーツの踵で思いっきり踏みつけていた。
「ぐぅっ!」
男が背を丸めた瞬間に左手は男の膝の上で硬直しているウェイトレスを突き飛ばし、右手は腰のガンベルトに伸びている。
相手が体勢を立て直しかけた時には、既に男の眉間には銃口が突きつけられていた。
「ホールドアップ、OK?」
ニヤリと笑う。女性の声だ。
酒場のこのテーブルまでは太陽の光も届かない。男の目にも自分に銃を突きつけている女の姿がよく見えた。
年の頃は17、8だろうか。背中の半ばまで伸ばした燃えるような赤い髪をうなじの所で無雑作に束ねている。癖っ毛で所々ピンピン跳ねている赤毛はチロチロと這い回る炎を連想させた。
笑えば可愛いであろう、やや吊り上った大きな茶色の瞳は今は油断無く男を見据える猫科の猛獣のようだ。
やや華奢な体つきながら胸は充分に標準サイズで、抱きしめると折れてしまいそうな腰の括れと相まって得もいわれぬ色気を醸し出している。
そして右手に握られた拳銃、黄金色に輝くそれは少女には不似合いな程、長い銃身を持っていた。
「バントライン・スペシャル・・・」
男がボソリと呟く。
「それにその赤毛・・・まさか、てめぇ・・・」
言いよどむ。まるでその名を口にする事自体が不吉であるかのように。
「・・・山猫(リンクス)・レミィか?」
男の声音には出来る事なら違っていて欲しいと願うニュアンスが多分に感じられたが、レミィは笑ってそれを受け流す。
「ご明察。・・・私が誰だか分かってるなら用件も当然分かるわよね」
観念したように下を向く男に対し、レミィは言葉を続ける。
「あなたはたった二つの道しか選べない」
これはレミィが捕まえた賞金首に必ず掛ける言葉で、いわばレミィの決め台詞と言っていいものであった。
「このまま大人しく捕まって、何年かの懲役の後自由になるか・・・それともこのまま額に三番目の目を開けられるかよ。・・・どっちがいい?」
けろりとした顔で言うレミィに男の答えは一つしかなかった。
町の中心にある保安官事務所、そこでレミィは引き渡した男の懸賞金を受け取っていた。
「それにしても警戒が足りないんじゃないの?」
言いつつ可愛らしいしかめっ面を作ってみせる。こうしてみると年相応の美少女に見える。・・・腰に提げている物騒な物を除けばだが。
「いくら小物だからって、賞金首を町の中に入れたままほっとくなんて」
保安官のクリステル・オーバーレインは美しい顔をわずかに歪める。
「本当にご免なさい、レミィ。確かに警戒不足だったわ」
真正面から正直に謝り、しゅんとしている美人保安官の姿に今度はレミィが慌てる。
「い、いやクリスがサボったりしてるって言いたかった訳じゃないのよ!なにかどうしても外せない仕事があったんでしょ?力になるから手伝わせてよ!」
普段レミィが姉の様に慕う美人保安官は、その言葉を聞いて僅かながら笑顔になる。
「ありがとう、レミィ。・・・でも気持ちだけ受け取っておくわ」
そして再び目を伏せる。その表情は憂いを帯びてなお、女神のように美しい。
しかしレミィは気づいていた。クリスのこの表情は決まってなにか大事件が起こり、なおかつそれを一人で解決しようとしている時の顔なのだ。
三年前保安官助手をしていた頃、前保安官が殺害された時のように。
「・・・ねぇ、クリス私に何か隠してる事あるでしょ」
わざと真正直に聞いてみる。長年の付き合いでレミィはクリスの扱い方を心得ていた。こういう時の腹を探りながらの質問はクリスに対しては逆効果だ、きっとのらりくらりとかわされてしまうだろう。直球勝負に限る。
クリスはしばらくレミィを見つめていたが、ややあって大きな溜め息をつくと話をきり出した。
「・・・まだ確実な情報とはいえないんだけど・・・」
そこで言葉を切り、探るような視線を向けてくる。レミィは黙ってうなずいてみせる。
クリスは諦めたように話をつないだ。
「この近辺の町でレックス・ガルシアーノの目撃情報があるの・・・」
その名前を聞いた瞬間、レミィの瞳孔が大きく開く。鼓動が激しくなる。膝が震える。立っていられない。
ようようの事でクリスの机に片手をついて体を支え、本人にとってだけ冷静に聴こえる声をだす。
「確かなの?」
クリスは困ったように首を振る。
「だから確かじゃないんだってば。・・・でも複数の目撃証言があるのは事実よ」
「どこ!どこの誰が言ってるの!お願い、教えてクリス!」
今にも掴みかからんばかりのレミィを押しとどめ、半ば無理矢理椅子に座らせながら、クリスは優しく諭すように話し出す。
「いい?レミィ。あなたがどんなにガルシアーノを憎んでいるか、私はよく知ってるつもりよ。でもまだ何人かの目撃情報が出ただけだし、その目撃情報も似ている他人かもしれないって程度のあやふやなものなの。それにあなたの追っているガルシアーノと本当に同一人物なのかもまだわからないし・・・」
レミィはクリスの言葉をほとんど聞いていなかった。憎しみのあまり、それどころではなかったからだ。
代わりに六年前のあの日のことが昨日のように思い出される。
レミィの家庭は裕福だった。隊商を組んで町から町へ移動するキャラバンとして財を成し、旅行気分でレミィも両親と一緒に旅する事は珍しいことではなかった。護衛もたくさんいたし、何の危険もないはずだった。・・・少なくともあの日までは。
あの悪夢の日、護衛や隊商の仲間達が苦しみもがき死んでいった。飲料用の樽の一部に毒が入れられていたのだ。幸いレミィや一部の運の良い人間はその水を飲んでいなかったものの、その混乱に乗じて襲ってきた強盗団によって結果的に隊商は全滅した。
そして幼いレミィは確かに見たのだ。強盗団の首領と楽しそうに会話し、命乞いをする両親を惨殺する父の腹心にして隊商の護衛団団長だった、レックス・ガルシアーノの姿を。
レミィもあと一歩で命がなかったのだが、またしても幸いな事に近隣の町で有名だったその強盗団が近々大きく動くという情報を入手して、付近のパトロールをしていた州警察や近隣の町の保安官が救援に駆けつけ、命だけは救われたのだった。
親戚もなかったレミィは当時保安官助手になりたてだったクリスのつてでとある孤児院に入れられ、そこで三年を過ごす事になる。
しかしレミィの心に深く刻まれた憎しみは決して消える事はなかった。なぜなら強盗団は壊滅し、そのほとんどが死ぬか逮捕されるかしたのだが、その死体の中にも当然逮捕された連中の中にもレックス・ガルシアーノの姿はなかったのだから。
レミィが賞金稼ぎを志したのも自分でガルシアーノを捕まえたかったからだが、どれだけ調べてもガルシアーノの足どりはようとして知れなかった。だがここ最近レックス・ガルシアーノという賞金首が暴れまわってるという情報は掴んでいた。そしてその手配書に描かれている人相書きはレミィの覚えているレックスの容姿にとてもよく似ているという事も・・・・・。
「・・・だからあやふやな情報に踊らされるよりはここはしっかり情報を吟味して、確実と思えるようになってから行動したほうがいいと思うの」
クリスの説得はまだ続いていた。
「分かったわ、クリス」
そういってレミィは立ち上がる。その台詞を聞いてクリスは心底嬉しそうな表情を浮かべたが、クリスの説得は半分もレミィの頭の中には入ってなかった。
レミィはレミィで自分なりの理屈で冷静になる必要性を認めたのだ。怒りに任せて行動するとろくな事にならない。三年間の賞金稼ぎ生活でレミィはいやという程その事を学んでいた。
「今日はもう自分の部屋帰るね」
心配そうに自分を見つめているクリスに向かってそう言うと、町にとってある宿に帰るために保安官事務所から出て行く。
・・・しかし事務所から往来にでた瞬間、突然の悪寒がレミィの全身を包んだ。
三年間に渡って磨き上げられた修羅場の経験による勘が何かの危険を告げている。
(何?なんだか分かんないけどなんかヤバい!)
咄嗟に身を翻し、事務所に飛び込もうとする。だがちょうどその時レミィを見送りに事務所から出てきたクリスと正面衝突してしまう。体制を崩し地面に尻餅をついたレミィの耳にパァン! と聴きなれた音が響いた。同時に右腕に何かが当たった衝撃が走る。
(撃たれた!?・・・でも、なんか・・・)
レミィ自身は弾が当たった事は無かったが、賞金稼ぎ仲間から撃たれたときの話はたまに聞く。しかし、聞いていた話と今の現実には大きな隔たりがあった。撃たれたというのに痛みも熱さも無い。それどころか腕の中に潜り込んだ弾が目に見えないほど細かくなって全身に拡散するような奇妙な感覚をレミィは味わっていた。
(いや、考えてる場合じゃない!)
まだ座り込んだままのクリスに覆い被さるようにして、一緒に事務所の中に飛び込む。
そしてすぐ傷を確認する。・・・だがそこに傷はなかった。弾が当たったであろう場所は未だジンジンと痺れが残るものの全くの無傷である。納得のいかない気持ちはもちろんあったが、今は右手が動くかどうかが最優先だ。
(問題ない)
と、レミィは判断した。この程度の痺れなら支障なく銃を扱える。
「大丈夫なの!?レミィ!」
既に愛用のピースメイカーを抜いて外の警戒をしていたクリスがちらりとレミィを振り返る。
左手でOKサインを作り、レミィもホルスターからバントラインを引き抜いて外の警戒にあたる。
しかしそれから一時間以上が経っても、襲撃者はおろか新たな銃撃も無かった。
その更に二時間後、レミィは宿屋に戻り自分の部屋のベッドに横になっていた。クリスは保安官事務所に泊まったらどうかと引き止めたがレミィは断った。
もし襲撃者が自分を狙っていたのだとしたらクリスを巻き込みたくなかったし、そしてあの襲撃者は多分自分を狙っていたのだという半ば確信めいた勘が働いたためだ。
そしてその勘は的中する事になる。深夜ガラスを破ってレミィの部屋に手紙が投げ込まれたのだ。用心しながら窓から外を覗いてみたが、そこにはもう誰も居なかった。
大き目の石を巻き込んでぐしゃぐしゃに丸められた手紙には簡潔な一文が添えられていた。
【明日、正午オークランド牧場にて待つ レックス・ガルシアーノ】
その名前を目にしたレミィの体に震えが走る。
「ナメた真似してくれるじゃない・・・・・・どんな服着て行こうかなぁ」
口に出した後レミィは自分の発言の異常さに気づいて思わず赤面する。
「何考えてるのあたし、バカじゃない?これって決闘の申し込みなのよ。デートに行くんじゃないんだから」
しかし、デートという単語に反応してレミィの顔はますます赤らむ。
「そりゃあ、あたしだって女の子なんだからデート位してみたいけど、よりによってレックスとなんて絶対イヤよ!」
ガルシアーノの呼称がいつの間にかファーストネームになっている事にレミィは気づいていない。
「きょ、今日はもう寝よう。明日は早く起きて下見に行かなきゃならないもんね」
賞金稼ぎとしては信じられない無用心さだが、特に気にしなかった。これも普段のレミィからすると考えられない話だが、レックスは夜襲などする男ではないという不思議な信頼感があった。
その夜レミィはワクワクしてなかなか寝付けなかったが、これは憎い仇敵とやっと対決できるからだと自分に言い聞かせようやく眠りについた。
正午、オークランド牧場。町から一時間程の場所にあるこの牧場は、経営者が破産したため今は荒れ放題になっている。
枯れた干し草がいくつか乱雑に積みあがり、牧場を囲む木の柵や牛舎は壊れて朽ちかけ無残な姿を晒している。
町の人々が『お化け牧場』と呼ぶ理由も判ろうというものだ。
レミィは二時間前に到着していた。何処にどんな罠があるか分かったもんじゃないし、伏兵が潜んでいる可能性もある。
それらがそう信じ込もうとしている表向きの理由だったが、レミィの口元はいつの間にか綻んで、今にも歌でも歌いだしそうな表情を浮かべていた。
(あ~あ、早く来ないかなレックス。来たらいっぱい・・・)
(ん?あれ?いっぱいって何だろう?いっぱい何をするんだっけ?)
混乱する頭でレミィは必死に考える。
(あ!そうだ。いっぱい殺すんだ。お父さんとお母さんを殺して、隊商の皆の命を奪った憎いアイツをいっぱい殺してやる!)
支離滅裂だが自分の拠り所となる理屈を見つけてレミィは安心する。
(さぁ早く来なさい、レックス。あなたには二つの道を問う事はしない。皆の命の分、いっぱい・・・・・何回も何回も殺してあげる)
事実上、人は何回も死ねないものだが、レミィはそれこそが自分の憎しみの深さなのだと思う事にした。
そしてついにレックス・ガルシアーノがやって来た。
その顔はレミィの記憶の中のレックスと寸分違わぬものだった。レミィの心に言いようの無い安心感が広がる。
レックスは二人の女性を引き連れて来た。
一人はインディアンの少女で年は15、6才位だろうか、黒髪を真ん中から分け左右で三つ編みにしている。ハッとする程の美少女だが、今はレミィに刺すような剣呑な視線を向けている。
しかしそんな視線にはレミィは慣れっこだった。彼女が混乱したのは、もう一人の女性が彼女の親友だったせいだ。
「クリス!?」
思わず叫ぶ。
「あら、久しぶりね、レミィ。・・・って昨日会ったばっかりだっけ」
そう言って、腰まで届くストレートの金髪と南の海のように澄んだ碧眼を持つ美人保安官はにっこりと微笑む。
それはレミィにとっていつものクリスだった。・・・だが状況が異常すぎる。
「えっ?どういう事?クリスがレックスを捕まえてくれたの!?」
その問いかけに、笑顔のままでゆっくりクリスは首を振る。
「私みたいな卑しい牝奴隷が偉大なご主人様を捕まえるなんて・・・。レミィ冗談でもそんな恐れ多い事言わないで」
「!」
レミィは唖然とする。あの高潔で正義感に溢れるクリスがそんな事、言う筈が無い。
でも目の前に立っているのは間違いなくクリスだ。混乱の極みに達したレミィはほとんど八つ当たり気味にレックスに叫ぶ。
「クリスに何をしたの!!」
それまで酷薄に微笑みながら二人のやりとりを見物していたレックスが初めて口を開く。
「・・・お前にしたのと同じような事さ」
「どういう事!?」
レミィの問いかけを無視してレックスは語り続ける。それはまるで古くからの友人に懐かしい思い出を話すような口調だった。
「実際、最近大活躍の賞金稼ぎの名前を聞いて、それがあの隊商の生き残りのレミィお嬢様だと分かった時には俺もずいぶん昔を懐かしんだもんだぜ」
「お前は知らないだろうが、結構前からお前の事は狙ってたのさ。・・・ところが隙なんかありゃしねぇ」
そこで言葉を切り、側らに立つクリスを抱き寄せる。そして背中越しに手を廻し、その柔らかく大きな胸を揉みしだく。
レミィが信じられなかったのは、クリスが抵抗するどころか自らレックスにしなだれかかり、その荒々しい愛撫に身を任せた事だ。
そして何故かレミィの胸がズキンと痛む。
「・・・んぅ・・・・あふぅ・・・・あぁん・・ご主人様ぁ・・・・」
クリスの顔は上気し、汗が噴き出している。瞳は淫蕩に蕩けきり、出来る限りその豊満な胸をレックスにぐりぐりと押し付け、舌はレックスの耳といわず首といわず舐めまわす。
その様子をクリスとは逆側に立っていたインディアンの少女が顔を赤らめ太ももをもじもじさせながらうらやましそうに見ている。
・・・ここに全くの第三者がいたなら、レミィがその少女と同じような表情を浮かべている事に気づいたかもしれない。
「こいつはよくやったよ。昨日お前が保安官事務所に飛び込みかけた時体張って防いでくれなかったら、またしばらくチャンス窺う破目になるとこだったからな」
そう言ってクリスの胸を力一杯ひねり潰す。
「あおぉぉっ!・・・・・んぅっ・・・ああっ・・・・ご、主人、様っ・・・・もったいない、おっ、言葉、・・あっ!りがとうございますぅぅぅん・・・・・あはぁぁぁ・・・」
常人なら痛みにしかならないような愛撫もクリスにとっては至高の快楽だった。その上レックスに褒められたという精神的な喜びが合わさり、クリスは激しい絶頂に達し、ヒクヒクと細かい痙攣をしながらその場に崩れるように座り込んでしまう。
いつも清潔にしていた保安官制服のズボンははっきりと分かる位、太ももまでぐっしょりと愛液で濡れそぼっていた。
「・・・さて、それじゃあそろそろ始めるか」
全身を震わせ荒く息をつくクリスを一瞥し、レックスはレミィに気安く声をかける。
「は、始めるって、何をよ!」
レミィは明らかにたじろいでいた。クリスの裏切りはもちろんショックだったが、それ以前に今自分がレックスに対して抱いている気持ちに整理がつけられなかったためだ。胸が高鳴る。レックスの顔をまともに見られない・・・。
「何って決闘だよ、決闘。そのために来たんじゃねぇのか?」
からかうように言うレックスの言葉にレミィは耳まで赤くなる。
(そ、そうよ。決闘するためにあたしはここに来たんだ。両親や隊商の皆の仇を取るために!それに・・・クリスをなんか変なふうにして、あんな恥ずかしい事させたのも許せない!・・・そうよ、レックスをやっつければみんな上手くいくんだ!そのためには決闘して、そして絶対勝たなくちゃ!)
いつの間にか殺すという単語がやっつけるに柔らかく変換されていたが、レミィがそれに気づく事はなかった。そして一生懸命考えた戦う理由が理屈としては認識しているものの、感情では決して納得していないという事も。
「位置はそのままでいいだろ。お互い抜き撃ちの勝負といこうぜ。・・・おい、お前らちょっと離れてろ」
その言葉を聞き、レックスのそばに控えていた二人の女性は流れ弾の飛ばない方向に歩いていく。クリスはまだふらふらしていたが。
「あいつらは只の立会人だ、この勝負に手出しはさせねぇから安心しろ。・・・それと・・・クリスがなんかおかしいって分かんだろ?」
(結構、紳士的なんだ)
決闘の場面には似つかわしくない事を考えていたレミィは、レックスの言葉に慌てて肯く。
「それも俺を殺せば元に戻るから、気にすんな。・・・・・・それじゃあこのコインが落ちたと同時に・・・・・いくぜ?」
二人の間をヒュウッと音をたてて一陣の風が舞った。
レックスが左手に持っていたコインを指で弾く。コインはまるでスローモーションをかけられているかのように、クルクルと回りながらゆっくり落ちてくる。
そしてコインが地面に当たる音がした瞬間・・・・・・・・・・・銃声が轟いた。
< 続く >