黒い虚塔 第2話

第2話

「……と、いうわけで、私の商品の企画案に関しては以上です」
 一夜明けて、今日は、商品開発部の新商品開発に関するプレゼンの日。
 報告しているのは、極東エリア担当第1製作課に回された倍紋さん……。
 ここは、第2製作課が閉鎖されて、いまや、事実上ひとつの課だけで極東エリア全体をカバーすることになっている。
「わかったわ。じゃあ、いくつか質問させてもらうけど、これって、どういう状況で使うのよ?」
 ……昨夜あんなことやってたなんて、微塵も見せないよな、部長は。
 ちなみに、倍紋さんの商品案は、一緒に入った相手を虜にする傘。名付けて<相合い傘>。……はぁ。
「それはもちろん、雨の日に、傘が無くて困っている相手を誘って……」
「それで、喜んで相合い傘してくれる相手なら、素直に口説いた方が早いんじゃないかしら?」
「いやいや、駅前で困っている相手に『どうしました、お嬢さん?お困りのようですが、私の傘にどうです?』ていう感じで、それから二人に恋が芽生えるのです」
「そんな、30年くらい前のメロドラマみたいな展開がそうそうあるわけないでしょ!」
 ……部長のおっしゃること、いちいちごもっともです。
「だいいち、そのアイテム、雨の日にしか使えないじゃない!」
「い、いえ、ちゃんと日傘バージョンもこっちに……」
「日傘で相合い傘する人がいるわけないでしょーッ!」
 ……はぁ、これも却下だな。

 で、不毛なプレゼンも終了し……。
「なに?人間界からクレーム?」
 いまや、独立したチームになっている、ディー・フォン担当の部署から報告を受ける。
「はい。新型アプリの案内を出すメールへの返信の形で来たのですが……」
 報告によると、そのクレームは、ディー・フォンを使って、女の子を取り込もうとしても、何の反応もなかった、という内容だ。
 ……ついに来たか。
 そもそも、ディー・フォンには、プロテクト機能があって、いったん誰かのディー・フォンに取り込まれた対象は、他のディー・フォンでは取り込めないことになっている。
 それに、悪魔による洗脳や支配には、基本的に同様の効果があるため、デー・フォンおよび、それに準じる手段で悪魔の支配下にある相手は取り込むことはできない。
 まあ、そうでないと、同じ相手を巡って取り込み返し合うという、不毛な状況になるからだ。
 その点、<魔獣バトラー>は、それを逆手にとって、取り込んだ魔獣同士を戦わせて、勝った方が、データ移譲の形で負けた方をもらうというやり方で人気が出たわけだ。
 まさか、人間でそれをやるわけにもいかない。
 しかし、こういう事態は、人間界への、ディー・フォンの供給量が増えれば、いずれ発生することは容易に予想できた。
 だからこそ、ディー・フォンは、それに魅せられた人間が耐えられずにすぐに身を滅ぼすよう、過激な機能になっているはずだ。
「で、そのクレーム言ってきた人間って、ディー・フォンを買ってからどのくらいの期間経つんだ?」
「11ヶ月です」
 ……ディー・フォンが発売された直後からじゃないか。
 とっととくたばってくれよ、まったく。
「しかたないな。ディー・フォン購入1周年記念の特典として、このアプリを送ってくれないかな?使い方マニュアルのファイルも入ってるから一緒に送っておいて」
 そう言って、アプリの入ったROMを渡す。
 このアプリの名は、<マインド・ハッカー>。
 対象のプロテクトを外して、ディー・フォンで登録済み、もしくは洗脳済みの相手を取り込むことを可能にする。
 ただ、まだ試作段階もいいところで、使い方が難しい。
 このアプリを機能させたディー・フォンで、相手に電話をかけるか、添付ファイルの形でメールを送る。
 もちろん、相手の魂を取り込んでいるわけではないから、ディー・フォンとしてではなく、普通の携帯としてだ。
 もし相手が電話に出るか、添付ファイルを開くかすると、その相手を取り込むことが可能になる。
 つまり、<マインド・ハッカー>を使って相手を取り込む前提として、その相手の電話番号かメールアドレスを知っておく必要があるのだ。
 電話番号は、もちろん固定電話でもいいが、取り込みたい相手が出るとは限らないので、携帯の方が望ましい。
 添付ファイルを送るメールアドレスは、携帯でもパソコンでも構わない。
「あ、そうそう。向こうには、ディー・フォンで相手を取り込めない理由は正確に説明しなくていいから。そういう相手がたまにはいて、そういう相手はこのアプリで取り込める可能性がありますよ。という感じの説明で。それと、このアプリを配るのは、そういうクレームがあったときだけでいいから」
「了解しました」
 そう、このアプリはばらまく必要はない。そんなことをしたら、プロテクト機能の意味がなくなるし、無駄な混乱を招くだけだ。
 まあ、こういう事例がそんなに多く出ることもないだろうし、それをクレームの形でこっちに持ってくる奴はさらに少ないだろう。
 ディー・フォンを何年も使い続けることができる人間なんか、そうざらにはいないだろうし、<マインド・ハッカー>を配られた奴も、そんなにして人の女まで奪ってて、いつまで保つもんだか。
 ……それにしても、出世するのはいいけど、その分こういった仕事が増えるもんだから、なかなか自分の時間がとれないな。
 まあ、明日は休みだし、ひさしぶりに試作品のテストでも行くかな。
 ……なんか、部長のデスクのあたりから、しきりに秋波が送られているような気がするんですけど。

 結局、昨日も仕事の後に部長とナニすることになってしまった……。
 おかげで、人間界来るのが遅くなってしまったじゃないか。
 ……まあ、気を取り直していこう。
 意識を集中して、自分の中のそれを確認する。
 赤い糸を改良した、球状の核がそこにあった。
 これは、その核から小さな玉を分裂させることができる。それを相手に埋め込めば、その相手を操れる。
 この玉を相手に触れさせると埋め込むことができるから、最悪、投げてぶつけるだけでもいい。
 また、糸と違って、繋げておく必要はなく、遠隔操作ができる。
 この玉は、使用者の精神力に応じた数を作り出すことができるから、同時に多数を操ることもできる。
 機能は赤い糸の零距離使用と同じ、思念を送ることによる認識誘導に、命令による強制操作もできるようにした。
 さらに、今は自分仕様に、この眼鏡とリンクさせて、操る相手をモニタリングできるようにしてある。
 
 さてと、とりあえずターゲットを探すかな……。

 ――1軒目のホテル。
「ん!うん……ふん……あ……あん……」
 バックで犯されながら、奈美(なみ)とかいったか、ショートヘアの女が鈍い喘ぎ声を上げる。
 玉を埋め込んで、そのまま強制操作でホテルに連れ込んだ女だ。
 いわば、魂を縛ったような状態だから、その反応は鈍いが、それでも、充分グチョグチョに湿ってきている。
 さ、これからお遊びと行きますか。
【さあ、正気に戻るんだ、奈美】
 僕は、命令モードで奈美を正気に戻す。
「ん……え?や!いやああああぁ!な、何で!私こんなっ!」
 正気に戻り、自分の置かれた状況に気づいて、悲鳴を上げる奈美。
 そこにすかさず思念を送る。
{この男は大嫌いだが、この男に犯されるととても気持ちがいい}
「いやああっ!ああ!やめっ!やめてっ!あうん!」
 悲鳴を上げて拒絶しながらも、艶のある叫びが混じってくる。
{こんなに嫌いな男に犯されているのに、どんどん気持ちよくなって、もっとこの男としたくなる}
「あああ!や!はあっ!ど!どうして!?はうん!いや!だ、だめ!」
 困惑しながら嬌声を上げる奈美。
「やっ!だめっ!なのに!はうん!はああっ!や、やめてっ!いやっ!やめてぇっ!ああん!ううん!……え?」
 だんだんとよがり声が多くなってきたところで、腰の動きを止める。
「な……?どうして?」
「おまえがやめろと言ったじゃないか」
「そ、それはそうだけど……」 
「おまえは僕のことが嫌いなんだろう?」
「あ、あなたなんか大嫌いよ!」
「じゃ、これでいいんじゃないか?」
「そ、そうよね……」
 そう言いながらも、自分で動かないように押さえつけられている奈美の腰は、ブルブルと震えている。
「それじゃ、このままやめてしまおう……」
「ダメ!やめないで!」
 そのまま、腰を引いてモノを引き抜こうとする素振りを見せると、切羽詰まったように奈美が叫ぶ。
「どうしたんだ?やめて欲しいんじゃなかったのか?」
「そ、そうだけど……」
「僕のことは大嫌いなんだろう?」
「そ、そうよ……」
「じゃあ、やめてしまった方が……」
「だめぇ!それはダメなのぉ!」
 四つん這いにさせられている屈辱感もあるのだろう。顔を真っ赤にして、涙を浮かべながら、奈美がこっちを振り向く。
「つ、続けて下さい。……お願いします」
 奈美の目から、涙が一筋こぼれる。
「ふん、いいだろう」
「ふあああぁ!はあん!ひああっ!」
 再び腰を動かすと、奈美は早速嬌声を上げて喘ぐ。腰を押さえつけていた手を緩めると、貪るように自分で腰を動かし始める。
「ひあああん!ど!どうして!私!あんな事!はああんっ!言っちゃったの!」
 涙を流しながら、奈美は首を振って悶える。
「いやっ!だめっ!なのに!どうして!こんなに気持ちいいの!」
 ガクガクと頭を振りながら、自分も激しく腰を振り僕のアレを、さらに奥深く受け入れようとする。
「ああん!はあっ!くうっ!こ!こんな男に!ひああん!はああああああぁ!」
 ギュ、とアソコの締め付けがきつくなってくる。
「奈美!そろそろいくぞ!いいか!」
「ダメ!なっ!なかはダメなのにっ!あああ!でっ!でもっ!ほ!欲しいのっ!ひああああぁ!」
 拒絶と欲情のない交ぜになった叫び。
 どのみち、激しく腰を振りながら、僕のモノを締め付ける自分の動きを、奈美自身どうしようもできない。
「行くぞ!奈美!」
「だめえええぇぇっ!くうううううっ!ひぃぃいいああっ!いやああああああっ!」
 拒絶の言葉を吐きながら絶頂に達する奈美。
 しかし、体は反らしたまま僕のモノを深く受けとめ、アソコの中は蠢き、まとわりついてきて、精液を一滴も逃すまいとする。
「ああぁぁぁ……なんで、わたし……こんなに……」
 奈美の、涙でグシャグシャの顔が蕩けているのは否定しようがなかった。

 ――2軒目のホテル。
「はあん!ああん!ああ!はっ!ああん!」
 僕の目の前で、ウェーブのかかった赤毛が跳ね上がる。
「あふん!ふうん!あ!し!倭文さん!あああ!」
「……」
 背後から僕に抱きかかえられた格好で喘ぐ紫織(しおり)―彼女の名前だが―を、ベッドの隅から、うずくまり、膝を抱えたままの奈美が見ている。
「ああん!いいのっ!すごくいい!ああん!倭文さんっ!」
 もう全身、汗で濡れ、髪を振り乱して腰を上下に動かす紫織。
「あうん!!はあっ!ああん!はあっ!はっ!はっ!はあっ!」
 背後から胸をつかんだ手に力を入れると、紫織の腰の動きがどんどん早くなっていき、締め付けもきつくなる。
「あ!あ!あああ!あああん!ふあああああああああっ!」
 紫織を抱える俺の腕を、ギュウ、とつかみ、身体をこわばらせて、精を受ける紫織。
「はあああああぁぁ!あああぁぁ……ううん…んん…………きゃ!」
 僕に寄りかかって余韻に浸っていた紫織を、這い寄ってきた奈美がいきなり突き飛ばす。
「な、なにするのよ!」
 抗議の声を上げる紫織は無視して、奈美は俺の上に跨る。
「どうしたんだ、奈美、僕のことは嫌いじゃなかったのか?」
「あ、あんたなんか大嫌いよ!」
「だったらそこをどきなさいよ!倭文さんは私の……」
「大嫌いだけど!どうしようもないのよーっ!」
 紫織の言葉を遮って叫ぶと、奈美は自分からいまだに堅さを保っている僕のアレをあそこに宛い、中にねじ込むように腰を落とす。
「はあああん!」
 一声大きく喘ぐと、腰を捻るように動かしていく。
「んんん!あああ!はうん!ああん!」
「ちょ、ちょっとあなたねぇ……あ!?……」
【奈美をもっと気持ちよくしてやれ、紫織】
 奈美に突っかかろうとする紫織に、命令を送る。
「はあん!ああん!んん!……きゃあ!」
 いきなり後ろから紫織に胸を揉まれ、奈美が甲高い声をあげる。
 掛けたままの眼鏡には、奈美と紫織、二人を示す印が動いている。
 まず、照準を合わせたままの紫織に思念を送る。
{紫織は、奈美と身体を合わせているとどんどん気持ちよくなっていく}
 次に、奈美の方に照準を合わせる。
{奈美は、紫織と身体を重ねながら倭文に犯されると、もっともっと気持ちよくなる}
「ひやあああ!」
「あふううん!」
 奈美と、紫織同時に大きな声で喘ぐ。
「あ、イイッ!いいわっ!あなたの体っ!柔らかくてっ!気持ちイイの!」
 紫織は、背後から奈美の胸をまさぐりながら、その背中に自分の胸を押しつけ、奈美の首筋をチロチロと舐める。
「あふう!いやあぁっ!こ!こんなのっ!イヤなのにっ!す!すごく気持ちイイっ!」
 奈美も、相変わらず口では拒絶しながらも、押し寄せる快感に飲み込まれていく。
「あん!んふう……んん!ん……ぴちゃ……あふう!」
「な!なんでッ!こんなにっ!気持ちイイのっ!あああ!いやああッ!ああん!」
 絡み合ったままどんどん高まっていく紫織と奈美。
 では、次の段階だ。眼鏡にモニタリングされているふたり同時に照準を合わせ、命令を送る。
【紫織、奈美、二人同時にイクんだ】
「んんんん!なっ!きゅ!急にっ!ああっ!すごいのっ!ああああああああーッ!!」
「いやあッ!ひいあああッ!ど!どうしてッ!いやああああああーッ!!」
 ふたりは、急激な快感の上昇に、困惑しながらも絶頂に持っていかれる。
「あああぁぁ……私……どうしちゃったの……何でこんなに……」
「ふうう……んふ……すごいわ……ん……はむ……」
 自分の体の変化に混乱したままの奈美の耳たぶを、背後から紫織が愛おしげに口に含む。
 そこには、発情した牝の姿があった。

 ――3軒目。
「あうっ!し!倭文くんのがっ!お!大きくて!」
 栗毛のポニーテールの女が、僕の体にしがみついてくる。
 この女、知佳(ちか)、には、僕のことを、同級生の倭文くん、と認識させている。
「あん、イイ!すごくイイよ!倭文くん!」
 僕の頭を抱きかかえるようにして、甘い声をあげている知佳。
 しかし、僕は身動きがとれない。というのも……。
「ねえ、倭文さん……次はワタシにぃ……」
「あ、涼ちゃんずるい!次はワタシだってば!」
 左右から僕の腕を抱えて、おねだりしている黒髪の双子は、涼子(りょうこ)と舞子(まいこ)。
 まだ、少し幼さの残る顔立ちながら、僕の腕にしがみついて、見上げてくる瞳は、完全に淫蕩な女のそれだ。
 しかたないな……。
 涼子と舞子に照準を合わせ、思念を送る。
{倭文の指をアソコに挿れられると、ペニスをいれられるのと同じくらい、いや、それよりももっと気持ちよくなる}
 そして、左右の手の指を、涼子と舞子のアソコに突き入れる。
「「きゃうん!!」」
 その瞬間、双子の声がハモる。
「「はうっ!ああん!し!倭文さん!す、すごいいいっ!」」
 まるで、ステレオで聞いているような感覚だ。
「あああ!んん!すごい!気持ちイイよっ!倭文くん!」
 目の前で体を跳ねさせている知佳と合わせて、僕の視界には3人……いや、あとふたり……。
「あ……ああん……ふんん……紫織さん……」
「ん……奈美ちゃん……ん……くちゅ」
 さっきの続きとばかり、ふたりで絡み合う奈美と紫織。
 もちろん、そうさせているのは僕だが。
 そのふたりに照準を合わせ、さらに思念を送る。
{奈美と紫織は、倭文に見られながら絡むのがたまらなく快感になる}
「ひああ!ああああっ!はううう!」
「あうん!ああ!し!倭文さんが見てる!」
 ふたりの絡み方が急に激しくなる。
「ああああああ!し!紫織さん!わたしっ!なんでっ!こんなにっ!気持ちいいのっ!」
「んんんん!当たり!前でしょッ!倭文さんがっ!見てるんですものッ!」
「そ!そんな!紫織さん!わ!わたしっ!もう!なにが!どうなってるのか!何もわからないっ!ただ!気持ちイイのッ!」
「んふう!そ!それでっ!いいのよっ!奈美ちゃん!」
 そして、俺の両脇では。
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!キモチいいっ!しゅ!しゅごくイイのっ!」」
 さらに……。
「ううん!し、しとりくんっ!わっ!わたし!もうガマンできない!!」
 部屋に響く嬌声の五重奏。
 そろそろいいか……。
【全員、一斉にイクんだ】
「「ひぐぁあ!う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーッ!!」」
「あああ!しとりくんっ!わたしっ!イク!イっちゃうのおおおおぉっ!」
「あああ!倭文さんが見てるぅうううううっ!」
「そ!そんなっ!気持ちイイっ!わ!わたしもっ!イっちゃうのおおおおおぉっ!」
 それぞれに絶頂の叫びをあげて果てる。
 
 
 しょせん、女は快楽を引き出すための道具だ。
 ……それでいいじゃないか。
 常に主導権はこっちが握り、思うがままに扱う。
 そこには、余計な感情などはない。ただ、自分が楽しむだけだ。
 女たちの方も、それで快感を得ているんだから、それはそれでいいだろう。
 ……それを、あいつは相手に情を持つから、女に主導権を握られる。
 それが、僕とあいつの大きな違いだ。
 
 さてと、もう少し続けるか……。

「116人か……僕の精神力じゃこれが限界だな」
 ビルの屋上から街を眺める……が、景色はまともに見えない。
 眼鏡には、無数の小さな印が蠢いている。
 あまりに数が多いため、ひとつひとつのフォントが異様に小さい。
「ゴチャキャラシステムだな、まるで。」
 最大、どれだけの人数に玉を埋め込むことができるかやってみたが、さすがにこれだけ数が多いと、僕でも把握しきれない。
 今のままじゃ、普通の人間だと、せいぜいまともに制御できるのは6人前後、頑張って10人超というところか……。
 それでも、操っている相手を把握しやすいように、もう少しモニタリングシステムの改良が必要だろう。
「さて、そろそろ戻るか」
 しかし、この人数分の玉を回収して、記憶消すのって結構面倒くさいな。
 一瞬、このまま放っておくのも面白いかとも思ったが、さすがにこの人数だと大問題だろうな。
 下手をすると天界をはじめ、知られちゃまずいところに気付かれかねない。そんなリスクは犯す必要もないだろう。
「ふう……こいつのテストはまた今度だな……」
 ついでに実験するつもりだったカードをしまい込み、僕は玉の回収作業に取りかかることにした。

< 続く >

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