Love Fishing

 ボクの名前は、作泰三(つくり たいぞう)、自称・天才発明少年。
 ボクのことを、子供だと思ってバカにしてもらっちゃ困る。
 たった今できあがったのが、この釣り竿。
 これは、ただの釣り竿じゃない、なんたって、これが釣り上げるのは、魚じゃなくて、人間なんだから。
 この釣り竿の本体は、このリールの部分とつながった小型装置だ。
 これは、相手に、ボクのことを好きにさせて、ボクの言うこうとは必ず聞くようにさせる信号を発生させる装置だ。
 その信号は、この、特別なグラスファイバー製の糸を伝わり、相手に引っかかった針の先から、相手の体に入り込んで、脳に直接作用する仕組みだ。
 ちょっと難しかったかな、つまり、この釣り竿を使って引っかけた相手は、ボクの思いのままってわけ。
 しかも、相手をどういうかたちでボクのことを好きにさせるかも、スイッチひとつで変えることができるスグレモノだ。

 さて、じゃあ、さっそく使ってみるか。
 今の時間は、母さんも家にいないし、実験には好都合だ。
 2階にあるボクの部屋のベランダからは、家の前の道が見わたせる。
 え?ベランダから、釣り竿持って下をのぞいてる子供がいたら怪しまれるって?
 チッチッチ、この竿は、人目につかないように、ちゃんと透過性の高い素材で作ってあるんだ。
 ときどき、変なふうに光を反射するかもしれないけど、よーく見ないと気付かれないようにちゃんとできている。なんたって、ボクは天才発明少年だからね。
 よし、向こうから歩いてきた学生服のお姉さんを狙って……。
 ――ヒュッ!
「カァ!カァ!」
 うわあ!間違えてカラスに引っかけてしまったあ!
 なんか、カラスがすり寄って来るんだけど……。
 これって、鳥類にも効くんだ。ボクってホントに天才かもしんない。
 まあ、あわてず、さわがず、こういうときは、やっぱりボクの発明品の、このハサミで切ってしまえば問題ない。
「カァ!カァ!……カァー!」
 ふう、やっと飛んでいってくれた。
 くそう、針を1本損しちゃったじゃないか。あんまり予備は作ってないのに……。

 今度こそ、うまくやってやるぞ!
 よし、今度はあっちから来るOLさんを狙おう……。
 ――ビュンッ!
 しまったあっ!勢いつけすぎて、その向こうのおじさんに引っかかってしまったあ!
「ご主人さまっ!」
 うわ!おじさんのくせに、なに気色のワルイ声出してるんだよおっ!
 ああ!突然大声で変なこと言うから、OLさんが走って逃げちゃったじゃないか!
 え、と……ハサミハサミ……と。
 ふう、おじさんは、きょとんとした顔で、頭をふりながらあっちの方に行ってくれたぞ。
 ぐすん、針をふたつも無駄にしちゃった……。
 でも、あきらめるもんか。

 よし、向こうから来たのは……あれも、スーツっていうの着てるよな、じゃあ、やっぱりOLさんかな?なんか感じが違うけど。
 こんどこそ、よーく狙って、落ち着いて……。
 ――ヒュン!
 よし!うまく引っかかった!OLさんは、赤い顔で、ぼーっ、とボクの方を見てる。
 ようし、家に入れてあげるとするか……。

「ジュース持ってきたよ、泰三クン」
 と、宏美(ひろみ)さん、このお姉さんの名前だけど、がジュースの入ったコップをふたつ持って入ってくる。
「ん、ありがとう、宏美さん」
 話を聞いてみたら、宏美さんは、OLさんじゃなくて、大学生らしい。
 なんでも、シューショク活動、とかいうのをやっているそうだ。
 ボクにはよくわからないけど、なんか、とても大事なことらしい。
「ねえ、シューショク活動っていうのしなくていいの?宏美さん?」
 やっぱり、ちょっと気になって、宏美さんに聞いてみる。
「いいのよ、そんなの。だって……」
 宏美さんは、机の上にコップを置くと、ボクのそばに座る。
「だって、私は泰三クンのところにいたいんだもの」
 そういうと、ぎゅう、とボクを抱きしめてくる。
「宏美さん……むうう!」
 宏美さんが、ボクに顔を近づけて来たとおもったら、ボクの口の中に、宏美さんのベロが入ってくる。
「む!むむむっ!」
 宏美さんのベロが、ボクの口の中で動いて、なんかキモチ悪い。
 どうして、大人は、好きな人にこういうことをするんだろう?
「んん……ぷはぁ……泰三クン……」
 やっと口を離すと、宏美さんは、ボクの頭を胸に押しつけるようにして抱きかかえる。
 キスっていうのは気持ちよくないけど、宏美さんのおっぱいがあたる感じは気持ちイイなぁ……。
「んー、宏美さんのおっぱい、気持ちいい」
「もう、泰三クンったら……じゃあ……」
 顔を真っ赤にしてボクを見ていた宏美さんが、いったんボクを離して、服のボタンを外していく。
 ふーん、これがブラジャーっていうやつか……。
 宏美さんは背中の方に手を回して、ブラジャーも外す。
「……泰三クン……これならどうかしら?」
 そう言うと、宏美さんは、もう一度、ボクの頭を抱きかかえる。
 なんだろう……スベスベしてて、ふにゃふにゃしてて、なんだかすごく気持ちいい。
「うん、すごく気持ちイイよ、宏美さん」
 それに、すごくいい匂いがする……。
 女の人のおっぱいって、いったいどういう素材でできてるんだろうなぁ……。
 そう思って、手を伸ばして宏美さんのおっぱいをフニフニする。
「ああ!た、泰三クン!」
「え!?ど、どうしたの?宏美さん?」
 なんか、声の感じが変わったので、ちょっと心配になる。
「ん……ちょっと、気持ちよかったから……」
「ふーん、こうすると気持ちいいんだ。じゃあ、もっと気持ちよくなってよ」
 そういって、さらに宏美さんのおっぱいをプニプニする。
「ひゃん!あああ!」
 すると、宏美さんが大声を上げる。
「ど、どうしたの!?」
「な、なんか急に、すごく気持ちよくなってきちゃって!はあん!」
 あ、そうか、今の宏美さんは、ボクの言ったとおりになるんだった。
 だから、ボクが気持ちよくなって、て言っただけで気持ちよくなるんだな。
 まあ、ボクもこんなに気持ちいいんだし、宏美さんにも、もっと気持ちよくなってもらおう。
「じゃあ、ボクがもっともっと宏美さんのおっぱいさわるから、宏美さんももっともっと気持ちよくなってよ」
 そう言って、ボクは宏美さんのおっぱいを、プニャ、とつかむ。
「ひゃああ!」
「ね、どんどん気持ちよくなって、宏美さん」
 ボクは、宏美さんのおっぱいに、ほおずりしながら言う。
 ん?さっきまでふにゃふにゃだったのが、なんだか、かたくなってきた気がする。
 汗をかいてきたせいもあるんだろうけど、なんだかムチムチした感じ。
 でも、これはこれで気持ちいいや……。
「ああん!た!泰三くぅん!」
 ほおずりするたびに、おっぱいの先っぽが、コリコリとほっぺたにあたる。
「ひゃ!……きゃ!」
 そのたびに、宏美さんが短く声をあげる。
 これって、おっぱいが出てくるところだよなぁ。
 じゃあ、赤ちゃんの頃、ボクは母さんのここをチュウチュウしてたんだ。
 そんなことを考えていると、たまらなくなって、つい宏美さんのおっぱいの先っぽをくわえて、チュウー、と吸ってしまう。
「ひゃあああ!た!泰三クン!ひあ!あああああああああっ!」
 すると、宏美さんの体が、ビクビクビクッってなったかと思うと、急に、クタッ、となる。
「ど、どうしたのっ!?大丈夫!?」
 そのまま、ハァハァと息苦しそうにしている宏美さんが心配になって宏美さんの顔をのぞきこむ。
「泣いてるの?宏美さん?」
 宏美さんの目には涙がいっぱいたまっていた。
「ううん……泣いてるんじゃないのよ、泰三クン……とっても気持ちよくなると、女のコはみんなこうなるの」
 ふーん、そうなんだ。
「ああ……泰三クン、すごく気持ちよかったわ……」
 そういうと、宏美さんは腕を伸ばして、またボクを抱きしめる。
 よかった……宏美さんも気持ちよくなってくれて……。
 宏美さんのおっぱいにうもれて、ぼーっ、とそんなことを考えるボク。

「……はっ!」
 ふと我に返って、ボクは時計を見る。
 16時45分……!もうすぐじゃないか!
「宏美さん!ちょっとそこで待ってて!」
「え!?う、うん」
 宏美さんは、ボクの言うことなら、なんでも聞いてくれるから都合がいい。
 ボクは、釣り竿を持ってベランダに出る。
 うちの前の通りは、OLさんもよく通るけど、近所に学校が多いから、制服姿のお姉さんもたくさん通る。
 とくに、夕方のこの時間は、お姉さんがいっぱい通っている。
 でも、狙っているのはそれじゃない。
 ……来た!
 ボクが、この釣り竿を作った目的は、彼女……ボクのクラスのアイドル、高崎こずえちゃんだ。
 いつも、この時間になると、ピアノ教室の帰りにここを通るのをボクは知っていた。
 だから、こずえちゃんを捕まえるためにこの釣り竿を作ったんだ。
 よし、よーくこずえちゃんを狙って……。
 ――ヒュッ!
「あっ!」
 ああ、間違えた!
 ――ピュン!
「きゃ!」
 あ!また違う!
 ――ビュッ!
「ひゃん!」
 もう!全然違うじゃないか!
 くそー!今まで知らなかったけど、ボクって、ものすごく釣り下手くそじゃないかーッ!!!
 ああ!こずえちゃんが行ってしまう!
 ――ヒュン!
「ああ!」
 また間違えた!
 ――ビュン!
「うわん!」
 違う!全然違うよ!
 ――ヒュルルッ!
「ええっ!」
 ああ!くそ!だめだ!

 ……結局、こずえちゃんを捕まえることはできなかった。

 だけど……。

「ああ……泰三クン……」
「ご主人さまぁ……」
「うふ……泰三ちゃん……可愛いわ……」
「泰三さま……」
「泰三さぁん……」
 今、ボクはたくさんのキレイなお姉さんに囲まれている。
 みんな、上は服を脱いでいる。
 ボクは、かわるがわる、お姉さんたちのおっぱいにさわり、ほおずりし、チュウ、と吸いつく。
「ねぇ、みんな、もっと気持ちよくなってね」
「あああ!泰三クン!」
「ふあああ!ごしゅじんさまぁ!」
「あああ!気持ちイイっ!」
「ひああああん!い、イイのっ!」
「あはああん!」
「うふんんん!」
 ボクの言葉で、みんな気持ちよくなってくれる。
 こずえちゃんは捕まえられなかったけど、これはこれでいいような気もする。
 ハッ!どうしよう!母さんが帰ってきてこんなの見たら、きっと叱られる!
 ……そうだ、母さんも釣り上げちゃえばいいんだ!
 これで万事オーケーじゃないか。

 あ、でも、いい子のみんなは絶対真似しちゃダメだよ。
 こんなことしてもいいのは、天才発明少年のボクだけなんだから。

 教訓
 投げ釣りは、竿の扱いが難しいので、初心者がいきなりやってもうまくいきません。
 
 ――チャンチャン!

< 完 >

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