サイの血族 19

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 新しいアイテムを手に入れたと頭の中の声が告げていた。

 しかし、どのようなものかは教えてくれない。そのときになったらわかると言うのだ。

 どんな能力か楽しみになった隼人は歩を早める。梨花がくれたリストの中にあった浜松市の東の住所を確認して目的地をそこに決めた。

 東京を出てから半月あまり、連日歩くことで心なしか体力が付いてきたように思える。足取りが軽いのだ。実際、日に焼けた顔は精悍さを増していた。これは多くの女と交わった自信のせいかもしれないし、サヒとしての自覚がそうさせるのかもしれなかった。勘の鋭い女など、すれ違ったときに振り向いてしまうほどのオーラを隼人は放っていた。

 日が沈む前に隼人は書かれた住所に着いた。建て売りらしい一戸建てだった。

「ごめんくだ・・・・・・・サイ!」

 チャイムを押したとき、植え込みの手入れをしていた女の姿を見て、思わず隼人は手をかざして「サイ」を唱えていた。

 懐かしい顔だった。学校の近所にある肉屋の娘だ。男子が下校時にそこのコロッケや唐揚げを買い食いしに行くのは、腹を満たす目的以外にこの女の顔を見に行くためだったと言っても過言ではない。はたちを少し超したくらいだろうか、くりっとした大きな瞳、溌剌とした笑顔とエプロンを盛り上げるバストは男子たちの人気を集めていた。隼人も例外ではなかった。ひと月ほど前にいなくなってしまい、結婚して余所へ行ってしまったとウワサされていた。まさか、こんなところで会えるとは思わなかった。

 リストには平松亜希子と名前がある。考えてみれば隼人はこの女の名前すら知らなかった。

「亜希子さん・・・ですね?」

「は・・・い・・・」

 女は「サイ」にかかったとき独特の口調で答える。

 あらためて見る亜也子は美しかった。店の中から隼人に向けた笑顔がこれから自分のものになるのだと思うと鼓動が早まってくる。同時に梨花とはどういう関係だったのかが気になる。近所だから知り合いだったとしてもおかしくはないが、わざわざリストに入れた理由は何だったのだろう。隼人はあれこれと想いを巡らせた。

「家の人は?」

「いません・・・」

「え? どうして?」

 聞けば、亜希子は母方の祖母が身体を悪くして入院したので、その面倒を看るためにここに住んでいるらしい。結婚したのではなかったのだ。学校のウワサなどあてにならないものだと思った。

 どうせ、新しい能力を試すための相手だ。今夜の宿と肉体を提供してもらえば、それで終わり。知った顔だっただけに思い入れはあるが、それ以上ではない。

 それに美香と彩、加代と関係を持ってから隼人には黒い欲望が芽生えていた。美香が彩を縛ったとき、いや、彩の抗う姿を見たときなにかが弾けた。そして、自分を精霊だと思わせて加代の上着を剥ぎ取ったときの興奮が忘れられなかった。亜希子を相手に「サイ」を使って強姦ごっこがしてみたくなった。嫌がる相手を無理矢理感じさせてしまうというシチュエーションを想像するだけで興奮した。記憶を消してしまえば後腐れもない。

 どこかで歯車が狂ってしまったのかもしれないと思いながら、隼人は亜希子を促して家の中へ入った。

「亜希子さん。僕は肉屋で見かけて亜希子さんを追ってきたストーカーだ。これから疲れてソファーで眠っているところを襲われてしまう。君は足がすくんで逃げられなくなり大きな声も出せなくなる」

 リビングで隼人はそう言った。テレビで見た催眠術の手法を真似しようと思った。

「僕がみっつ数えると亜希子さんはソファーで眠ってしまう。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」

 そこまで言ったとき亜希子はソファーに倒れ込んで目を閉じた。

 大きくカールした栗色のセミロングヘアー。襟元にレースをあしらった淡いグレーのカットソー、薄青のエプロンのようなロングのワンピースの下にはピンクのタイツというガーリーな恰好は梨花の趣味と似ている。

 その寝姿を見て隼人はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 ソファーの傍らにひざまずいて静かにワンピースのボタンを外しはじめるとオーデコロンかボディシャンプーの控えめだが南国の花のような香りがした。

 タイツに包まれた下半身が露わになっても亜希子は気がつかない。

 健康的な脚線美に隼人は見惚れた。

 そっとカットソーを捲り上げていくと花柄のブラジャーが見えた。フロントホックを外すとふくよかなバストが自重で左右に開く。

 桃色にも見える小ぶりな乳首に触れたとき亜希子は目を開いた。

「ヒュッ」と息を飲む音がして驚愕の表情で亜希子は隼人を見る。

 大きく見開かれた眼には恐怖が見て取れた。

「だ・・・だれか・・・たすけて・・・」

 暗示が効いているので大きな声が出せない。

 両手で露出した胸を隠そうとした隙に隼人はヒップの方へ手をまわしてタイツを脱がせてしまう。

「い、いや! たすけて・・・」

 ソファーから転がり落ちた亜希子は立ち上がって逃げようとするが両足首にまとわりついたタイツのせいで床へ倒れてしまう。

「逃げられるものか」

 うつ伏せに倒れた亜希子に跨った隼人はボタンが外れたワンピースを剥ぎ取ってしまう。

「いやぁ~っ!」

 大声を出しているつもりなのだろうが悲鳴も家の外には漏れない程度のものだった。

 這うようにして逃げようとするが、思うように身体を動かせないらしい。

「いや・・・どうして・・・ああっ・・・」

 悲鳴が泣き声に変わった。

 隼人はカットソーを捲り上げ、亜希子の頭だけ抜くと裾の部分を持って、両手を縛り上げるような恰好にしてしまった。

「いやっ! おねがい・・・たすけて・・・たすけてください・・・」

 懇願する亜希子の声を無視して隼人は豊かなバストを鷲づかみにした。

「はうぅぅっ!」

 亜希子の身体が硬直した。隼人が軽いオーガズムを送り込んだのだ。

「くっ・・・うううっ・・・いや・・・どうして・・・」

 自分の気持ちを裏切るような身体の反応に亜希子は嗚咽する。

 隼人は向きを変えてシルクのショーツを下ろす。

「おねがいします・・・ゆるして・・・ください・・・おねがい・・・」

「だめだね。こうしてやる」

 許しを請う亜希子の言葉によけい興奮した隼人は丸く張りのある双丘の間に手を差し込んだ。

「ああっ! いやぁっ!!」

 指先が硬くなった肉芽に触れたとき隼人はまたオーガズムを送り込む。

「あんっ! ああんっ! だめ・・・なのに・・・」

 余韻で声を震わせながら亜希子は喘ぐ。

「見ず知らずの男に襲われてこんなに感じちゃうなんて亜希子さんはすごくエッチな女なんだね」

「ちが・・・います・・・う、う、う・・・」

 勝ち誇ったように言う隼人の言葉を否定しながら、亜希子は下半身に宿った疼きに戸惑っていた。それは、まるで小さな炎が全身に燃え広がっていくようで、今までに経験したことのない快感だったのだ。

「さてと・・・よく見せてもらうよ」

 隼人は亜希子の身体を仰向けにするとショーツとタイツを一緒に足首から抜き取った。

 脚を開かせると淡く生えたヘアーの下には肉厚の花びらがあった。

「ああ・・・おねがい・・・やめて・・・」

 まるで力が入らず、隼人の視線に反応して疼きを増す身体を亜希子は呪いながらそう言った。

「だって、もう、こんなになってるよ」

「いやぁっ!」

 隼人が指先で秘肉を開くと蜜が溢れ出た。

 亜希子はビクンと痙攣しながら叫ぶ。

「あっ! だめっ! ああっ・・・やめて・・・あああっ!」

 クチュクチュと蜜と肉が奏でる音の合間に亜希子の喘ぎが響く。

「いやっ! いやぁぁぁっ!」

 隼人が人差し指と中指を蜜壺に挿入させると、亜希子は腰を浮かせるようにして叫んだ。

「感じてるくせに」

「やめて・・・いやぁぁぁ・・・」

 不敵な笑みを浮かべる隼人を見て亜希子は涙を流した。

 その表情が隼人の興奮をそそる。股間が痛いほど膨らんでいた。

 隼人はTシャツを脱いでジーンズをパンツと一緒に下ろした。

 そして自分のものを見て驚いた。

「これだったのか・・・」

 どす黒く膨れ上がった屹立は自分のものじゃないようだった。太さも長さもいままでよりひとまわりは大きい。それに浮いた血管は瘤のように硬く、禍々しささえ覚えるほど逞しい。仁王像を連想してしまうようなジュニアを隼人は呆然として眺めていた。

 卓越したサヒだけが持つ女を狂わせる逸物だと頭の中の声がささやく。

「あ・・・いや・・・」

 恐怖に似た感情に支配されながら亜希子は隼人の股間から目が離せないでいた。後ずさりしようとしても身体が動かない。

「そうか・・・」

 隼人はしゃがんで屹立に手を添える。それは自分でも驚くほど硬く、熱く、そして脈打っていた。

「やめて・・・それだけは・・・ゆるして・・・」

 にじり寄る隼人に亜希子はうわごとのような口調で懇願する。

「だめ! だめぇぇぇっ!!」

 蜜口に先端が触れたとき亜希子は叫んだ。

 しかし、隼人は操られるように腰を進めていく。

「うあぁぁぁぁっ!!」

 先端が埋没したとき不思議な喘ぎとともに亜希子は背中をのけ反らせた。

 いままでにはないような「気」が屹立から発散しているのがわかった。隼人も痺れるような感覚を後頭部に感じていた。

「あ、あうっ! あつ・・・いっ! いや! いやぁぁぁっ!」

 結合が深くなるにつれて亜希子の声のトーンが上がっていく。

「はうんっ! あああああっ!!!」

 屹立が根本まで収まり、先端が子宮口をとらえたとき、亜希子は絶叫した。それは暗示が解けてしまったのかと思えるくらい大きく、そして甘い声だった。意識してオーガズムを送り込んでいないのに亜希子は絶頂の波にさらわれていた。

「あうっ! だ・・・め! また・・・あうぅぅっ!」

 挿送にシンクロして亜希子が喘ぐ。

 硬直と弛緩を繰り返すたびに絶頂を迎えているのが手に取るようにわかった。

 それでも亜希子は抗う言葉をやめない。

「こうしてやる!」

 隼人は両手でバストをつかんで、そこからオーガズムを送り込みながら激しく挿送した。

「いやぁぁぁぁっ!!!」

 絶叫と同時に亜希子の内部が収縮した。子宮口の硬い肉が屹立をくわえこむような動きをしている。

「うおぉぉぉっ!」

 獣のような咆哮をあげて隼人も達した。

「気」をともなった荒れ狂う奔流が亜希子の子宮を直撃する。

 亜希子は大きく眼を見開いて隼人を見つめながら硬直した。

 そして、何度も大きな痙攣を繰り返して最後に意識を失った。

42

「あく・・・ま・・・」

 目を覚ました亜希子は震える声でそう言った。

 小惑星の爆発のようなフィニッシュからしばらく経ってからのことだ。

 狂気のような欲情が抜けた隼人はソファーに座って呆然としていた。自分のしたことが信じられなかった。自分自身が禍々しい屹立に支配されているようだった。罪悪感の反対側に恐ろしいほどの快感の深さがあった。

「そう・・・僕は人間じゃなくなっちゃったみたいだ・・・」

 つぶやくように言う隼人を亜希子が見つめていた。

「あなたは・・・だれ・・・なの・・・?」

 亜希子の言葉に刺や恐怖は感じられない。こんなことをしても「サイ」は好意を相手に植えつけてしまうようだ。隼人は後悔した。たしかに強姦ごっこはおもしろい。が、これは本当の強姦ではなかったか。楽しむなら、抵抗する言葉を言わせるように暗示をかければいいだけの話だ。

「ごめん・・・僕はどうかしてた。悪魔って言われてもしょうがないね」

 自分の能力に我を忘れてしまったと思った。新しいアイテムを試したい一心で亜希子の身体を踏みにじってしまった。一族には世俗の常識など無用という言葉を拡大解釈してしまったとも思った。狩りのように女を襲って手に入れるのは男の本能かもしれないが、そのまんま欲望を発散させるのが「サイ」の役目じゃないことが身に染みてわかった。

「僕にはサヒの資格なんかない・・・」

 うなだれた隼人を、まだ身体が自由にならない亜希子が不思議そうに見つめている。

「ごめんね。それで許されることじゃないってことくらいわかってる。でも、あやまりたいんだ。僕には亜希子さんの記憶を消すことしかできない。それで罪が消えるわけじゃないけどね・・・」

「記憶・・・消す・・・どうして・・・?」

「だって・・・僕は・・・亜希子さんにひどいことしちゃったから・・・」

「あんなの・・・初めてだった・・・自分が女だって思い知らされたの・・・」

「えっ・・・?」

 亜希子の意外な言葉に隼人は顔を上げた。

「あなたは強い雄。奪われるのは女の幸せ。だれでもいいわけじゃなく・・・あなたに奪われて・・・私は雌だって・・・わかったの・・・」

 気がつくと亜希子は立ち上がっていた。

 ふとももの内側に隼人が出したものが糸を引いていた。

「最後に・・・あなたのすべてが私の中へ流れ込んできた・・・あなたは私を奪っただけでなく私を目覚めさせた・・・あなたがどんな人なのか流れ込んできたときにわかった・・・」

「そんな・・・さっきは僕のことを悪魔って言ってたじゃないか・・・」

「ううん。悪魔みたいって言おうとしたの。でも、うまくしゃべれなかった」

「亜希子さんがそう言ってくれて少し楽になった。でも犯した罪は消えない」

「私はあなたを目覚めさせる女・・・」

「えっ・・・?」

 口調がガラリと変わった。巫女のようなトランスに陥った亜希子が意外だった。これじゃあ、まるでご神託だと思った。

「これも修行。あなたは私を通過することで罪を知った。同時に思いやる心も知った。私はそのための女」

 眼が完全に逝っていた。

 一瞬、隼人は亜希子も一族の女じゃないかと思った。しかし、どうやら違うようだ。いままで隼人の頭の中にいた「声」が亜希子に乗り移っているのだ。

「これが修行の最終段階。あなたは『サイ』のすべてを手に入れた。あとは吉野を目指すのみ」

 それだけ言うと亜希子は崩れるようにしゃがみ込んだ。取り憑いた「声」が抜けたのがわかった。

 どうやら最後のアイテムは「サイ」としての肉体と最低限の禁忌だったようだ。

「亜希子さん、ごめんね。そして、ありがとう」

 隼人はぐったりとしている亜希子を抱き起こしてソファーに座らせた。

 亜希子の眼は虚ろでなにも聞いていないようだ。

「抱いてやれ。満足させてやれば、その女は元に戻る」

 頭の中で声がした。

「戻ったんだね」

 隼人は自分の中に語りかける。

「うむ。お前の精と一緒にあの女の中へ入った。一族ではない女にとって負担が大きすぎたようだ。このままでは虚けのままだ。抱いて、もう一度精を注ぎ込まなくてはならない。精はお前の情だ」

「わかった。心を込めて抱けばいいんだね」

「そうだ。わかったようだな」

「うん」

 隼人は返事するとカットソーの縛めを解き、ブラジャーも外して亜希子を全裸にした。そして、ソファーに座って身体を抱き寄せた。

 まだ虚ろな眼を見つめると亜希子はかすかに笑ったようだ。頬のエクボが愛らしかった。そのまま顔を近づけて唇を重ねる。

 舌先で歯茎をなぞりながら手のひらでバストを包み込んで親指で乳首を愛撫する。

 やがて亜希子は舌の動きに呼応するように自分の舌を絡めてきた。

 人形に心が宿ったようだった。

 隼人は気持ちを込めて愛撫を続ける。

 あの甘い香りが漂ってきて心なしか肌に熱を帯びてきたように感じた。

 唇を首筋に移動させて舌先で耳の後ろまで舐めあげると亜希子は甘いため息を漏らした。

「亜希子さん、ひどいことしちゃってごめんね。そして、もう一度ありがとう」

 耳たぶを口にふくむようにして隼人が言うと亜希子の身体が震えた。

 能力が熟成したのか、意識してオーガズムを送り込むのではなく、行為によって亜希子の反応を引き出さないと元に戻らないと本能的に悟っていた。

 指先を股間へと移動させる。

 まだ隼人が出したものが残っていて蜜壺は潤っていた。それを塗りつけるようにしてクリトリスを愛撫しながら舌先を乳首に移す。

 亜希子はときおりヒクンと身体を震わせるものの、その可憐な唇からは喘ぎは漏れてこない。

「挿れろ。逸物の力を知るがいい」

 あまりの反応の薄さに焦りはじめたとき頭の中で声がした。

 まだじゅうぶんではなかったが挿入可能程度に硬度を増した屹立を蜜壺にあてがうと亜希子が隼人のことを見つめているのに気がついた。

「亜希子さん・・・元に戻って・・・」

 隼人はそう言って腰に力を入れる。

「あ・・・ん・・・」

「声」が抜けてから初めて亜希子は声を出した。

 コロッケを売っていたときの笑顔を思い出しながら隼人は結合を深めていく。

「あ・・・ああ・・・」

 しかし、根本まで挿入しても亜希子の反応は芳しいものじゃなかった。

「ごめんね・・・亜希子さん・・・」

 そう言いながら隼人は亜希子の身体を抱きしめる。

 滑らかな肌が弾力と体温を隼人に伝えてきた。その感覚に隼人の屹立が硬度を増していく。

「うあっ! ああんっ!」

 屹立に熱を感じたとき亜希子の口から甘い喘ぎが漏れた。

「亜希子さん。僕は隼人。『サイ』っていう古来からいる一族なんだ。修行のために亜希子さんにひどいことしちゃった。僕はずっとコロッケを売ってる亜希子さんに憧れていたんだよ。矛盾してるかもしれないけど、こうして亜希子さんのことを抱かないと亜希子さんは元に戻れないんだ。だから、こんどは心を込めて亜希子さんのことを抱くよ。僕の気持ちをわかって」

 余分なことかもしれないけど、隼人はそう言わないと気がすまなかった。

「ああっ・・・あなたは・・・ああんっ!」

 亜希子の瞳に光が戻った。同時に熱い喘ぎが口から漏れる。

「あんっ! す・・・すごい・・・あああっ! 感じちゃう!」

 亜希子の腕が隼人の背中にまわされた。それに気をよくした隼人は挿送を開始する。

「あうぅっ! こんなの・・・ああっ! 壊れちゃう・・・」

 隼人は屹立がさっきのように膨れ上がっているのを自覚していた。硬くなった血管の隆起が亜希子の襞を絡めるようにこすっているのがわかった。

「うあっ! うあぁぁぁっ!!」

 その刺激に亜希子は我を忘れて喘いだ。

 隼人は勃起が最高潮に達したとき屹立自体から「気」を放つのだと感じた。だから心の中で感謝と謝罪を述べながら挿送を続ける。

「ああんっ! あ、あなたは・・・いいの・・・わかったから・・・もっと・・・もっとして・・・ああっ!」

 言葉よりはるかに強く、しかもダイレクトに気持ちや意思が屹立を通して伝わっていく。これが「サイ」の力なのだと隼人は思った。

「こ、こんなの・・・はじめて・・・ああっ! だめ! もうだめ!」

 亜希子は激しく痙攣した。

 ここまで来て、やっと亜希子の身体を楽しむ余裕が隼人に出てきた。豊かなバストはマシュマロのように柔らかく、その感触を手のひらで味わいながら乳首を口にふくんだ。

「はうぅぅぅっ!」

 絶頂まで押し上げられたまま、また亜希子は新たなピークを迎えて悶えた。蜜壺の内部がキュキュッと収縮する。

 男子の憧れだった亜希子が我を忘れて腹の下で悶えていると思うと隼人も高まってくる。

 ふと「腹の下」でよりも、その姿を余すところなく見たいと思った。

 亜希子の膝を持ち上げて胎児のような姿勢にさせて上半身を抱き上げて仰向けになると、亜希子はつながったまま隼人を跨る体位になった。

「ああっ・・・くぅっ! ふ、ふかい・・・」

 自分の体重で屹立を深く飲み込んだ亜希子はそう言って悶える。

 隼人が腰を下から突き上げるとかたちのいいバストが揺れ、甘く長い喘ぎが亜希子の口から漏れる。

 上気した肌から湯気が立っているように見える。

 あまりの艶めかしさに隼人は腰を律動させた。高い喘ぎ声にシンクロして揺れるバストが美しかった。

「ああっ! またなの! もう・・・死んじゃうぅぅっ!」

 ひときわ深い絶頂を迎えた亜希子は背中をのけ反らして叫んだ。

 隼人も限界だった。

 数度に分けて「気」のこもった精を勢いよく放出してしまう。

 その脈動を感じた亜希子は天井を見上げたまま硬直した。

43

 亜希子に起こされて気がついた。

「あれ・・・」

 どうやら意識を失ってしまったのは隼人の方だったらしい。

 隼人の顔を覗き込む亜希子の表情は慈愛に満ちていた。

「いま何時?」

「九時少し前です。ぐっすりとお休みでした」

 亜希子が微笑む。

「お疲れでしょう。夕食の支度が出来ています」

「あの・・・亜希子さん・・・どういう・・・」

「あなたに抱かれたとき、すべてがわかりました。旅の途中で私がお役に立てたことも・・・」

「そうだったんだ。ごめんね。僕は欲望に駆られて亜希子さんにひどいことしちゃった」

「もう、いいんです。それに私も教わりました。お願いです。どうか私の記憶をなくさないでください。近い将来、実家でまたあなたに会えるのを楽しみにしていたいのです」

「そんなことまでわかっちゃったんだ・・・」

「不思議ですね。言葉よりたしかなものが身体の中へ入ってきました。梨花さんだって待っているはずですよ。私を仲間はずれにしないでください」

「わかった・・・僕だって亜希子さんの記憶を奪うのは本意じゃない。でも、辛い思いをさせちゃったなら消した方がいいと思ってたんだ」

 隼人は能力が進化したことを実感した。言葉を使わなくても意思を伝えられる。それどころか記憶なども伝えられるようだ。まだ知らなかったために亜希子にすべてを注入してしまったが、自分の意志で内容はコントロールできると頭の中の声が教えていた。形を変えた一物がそれを可能にしているらしい。

 また離れることが出来ない女が増えてしまった。しかし、それが亜希子なら本望だし、「サヒ」としての甲斐性だとも思う隼人だった。

< 続く >

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